8-1
概ね 3.5m 未満 概ね 3.5m 以上 バス停に接する民有地
設置可能 設置可能
設置不可
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ 両方無し
上り
下り
合計 74
40
114
3
2
5
117
55
172
546
604
1150
合計
740
701
1441
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
ベンチ・上屋 (114)
ベンチ・上屋の一方 (179)
両方無し (1150)
210
184
171
1262
1061
950
317
174
105
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
西鉄以外の団体等が ベンチ・上屋のいずれかを
整備しているもの (61)
195 1080 124
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ
上り
下り
合計
合計
14
5
19
21
11
32
7
3
10
42
19
61
バス停留所におけるベンチの普及に関する研究
―福岡市における高齢者居住密度の高い地区を事例として―
エドワーズ 優希
1. 序論
1.1 研究の背景と目的
日本の高齢者人口(65 歳以上)は 2017 年現在全体
の 27.7%であり、2040 年には 36.5%にもなると予測
されている。自家用車の利用率が一般成人と比べ低い
高齢者にとって公共交通の需要は高く、他の公共交通
機関と比べ停留所数の多い路線バスは特に日常生活で
の移動に必要不可欠であるため、高齢者が自立した活
動を長く継続するには路線バス利用の際の利便性は
大きな課題であると言うことができる。前回の研究1)
ではこの背景に基づき、改善が比較的容易と考えられ
るバス停留所の利便性に着目した。バス停留所近辺の
高齢者人口が多い地域ほど改善の必要性が高い場所で
あると仮定し、対象地域全体の停留所周辺で人口傾向
を把握した上で現状の把握を行った。
本研究においては前回得た停留所周辺の高齢者人口
に関するデータを利用しながら対象地域内でのサンプ
ル数を増加させ、バス運行会社以外によって整備され
た停留所等にも着目することで、現段階でどこまでの
整備が可能となるかの考察、及び更なる改善への提案
に繋げることを目的とする。
1.2 研究対象
研究対象は福岡市全域のバス停留所、特に市内の路
線のほとんどを運行する西鉄バスの停留所を対象とす
る。他の地方中枢都市ではバス乗車人員が次第に減少
しているのに対し、福岡市(西鉄バス)ではほぼ横ば
いであり乗車人員が維持されている。加えて、バス停
留所をはじめ身近な場所にベンチを設置する際に補助
金が支給される「ベンチプロジェクト」が福岡市にお
いて行われている。 以前は市のみによる補助であっ
たが、平成 30 年 1 月からは、西鉄バスのバス停付近
の民有地に設置されるベンチについては西日本鉄道株
式会社も、市と同様の購入補助を行うとしている。
1.3 研究方法
前回の研究において GIS と基本住民台帳から得たバ
ス停勢圏内の人口データ、及び今回現地調査で得た各
停留所における整備状況を利用しつつ、対象地域内の
停留所において整備の程度の現状把握を行う。高齢者
の外出を促進する要素としてバス停留所のものを含む
ベンチが挙げられていること2)3)
、上記の福岡市のベ
ンチプロジェクトの存在から、課題だけでなく更なる
改善のための基盤も大きいと考えられるベンチの有無
を主な項目とする。雨天時のベンチの利用のしやすさ
等も考慮し、上屋についても同様の調査を行う。また、
GIS と西鉄バス時刻表から得たバスの平均運行本数、
一部の停留所においては実測した歩道幅員のデータも
含め、分析及び今後の課題改善への考察を行うものと
する。
2. 西鉄を主体とする整備
2.1 現在の整備に関する調査
本章においては、西鉄が主体となり整備を行ったバ
ス停留所に着目し集計、分析を行う。
福岡市内の各バス停留所において、2016 年 6 月か
ら 2017 年 1 月にかけ目視で確認を行った整備状況の
単集計を表 1 に示す。
データを得ることができた市内 1441 箇所(上下を
区分して集計し、上り 740 箇所、下り 701 箇所)の停
留所において、ベンチと上屋の両方が整備されたもの
は上り 74 箇所と下り 40 箇所の計 114 箇所、ベンチの
みが整備されたものは上り 3 箇所下り 2 箇所の計 5 箇
所、上屋のみが整備されたものは上り 117 箇所と下り
55 箇所の計 172 箇所、両者ともに整備されていない
ものは上り 546 箇所と下り 604 箇所の計 1150 箇所と
なった(事例 : 図 1)。財政的理由や歩道幅員の狭さ
による物理的要因等が考えられるが、整備が行き届い
ているバス停留所の割合は低いことがわかる。また、
ベンチのみである事例数と上屋のみである事例数に大
きな差が生じたが、上屋の方がベンチと比べ必要とさ
れる最低歩道幅員が狭いことが一因と考えられる。経
済的要因としては、ベンチよりも上屋の方が設置費用
が高額であるため、関連性は低いと考えられる。
表 1 西鉄整備状況の単集計(単位:箇所)
8-2
2.2 人口及び運行本数との比較
整備の有無と他要素との関連を確認するため、自宅
からの利用の際の利便性と関連する周辺高齢者人口及
び、経営面で重要性が高いと考えられる平均運行本数
のデータを用いて比較を行う。G I S と基本住民台帳か
ら得たバス停勢圏内の高齢者人口・総人口に関するデ
ータ及び、G I S と西鉄バス時刻表から得たバスの平均
運行本数(各路線において、平成 29 年度の平日上下
の平均を使用)を用いて、前項の整備状況に関するデ
ータの分析を行った。なお、バス停勢圏については前
回同様に既往研究 4)
を参考とし、高齢者の歩行可能
距離を 250 mと仮定する。歩行による負担を基準とす
るため、バス停留所からの直線距離ではなくバス停留
所からの歩行距離が 250 mである範囲をバス停勢圏と
して扱っている。
各バス停留所をベンチと上屋両方が整備されている
もの、上屋あるいはベンチの一方が整備されているも
の、両方が整備されていないものに分類し、グループ
ごとに各停留所勢圏内の高齢者人口、総人口及び各停
留所の平均運行本数の平均を算出すると、整備が充実
しているグループほど高齢者人口、総人口、平均運行
本数は増加する傾向が見られた(表 2)。
総人口と高齢者人口は相関するため、総人口及び平
均運行本数が多い箇所ほど整備が優先的に進んでいる
ことがわかるが、商業施設やオフィス街に接する場所
等人口が少なく平均運行本数が多い場所も認められる
ことから、主に平均運行本数に相関しているものと考
えられる。
2.3 まとめ
結果としては勢圏内高齢者人口が多い場所ほど整備
が進んでいるという状況が把握できたが、整備されて
いる停留所の絶対数は多くはないこと、運行本数との
関連性の方が強いと考えられる結果から、西鉄バスに
よる整備のみで高齢者を着眼点とした改善を進めるこ
とは、経済的要因等から難しいと言える。
3. 西鉄以外を主体とする整備
3.1 整備の定義
西鉄以外の団体等が整備を行ったベンチ及び上屋を
指す。ベンチについては、埋め込みやビスによる地面
15
概ね 3.5m 未満 概ね 3.5m 以上 バス停に接する民有地
設置可能 設置可能
設置不可
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ 両方無し
上り
下り
合計 74 40 114 3 2 5 117 55 172 546 604 1150
合計
740
701
1441
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
ベンチ・上屋 (114)
ベンチ・上屋の一方 (179)
両方無し (1150)
210 184 171 1262 1061 950 317 174 105
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
西鉄以外の団体等が ベンチ・上屋のいずれかを
整備しているもの (61)
195 1080 124
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ
上り
下り
合計
合計
14 5 19 21 11 32 7 3 10 42 19 61 表 2 西鉄整備状況と他要素との関連
表 4 西鉄以外による整備と他要素との関連
図 2 西鉄以外による整備の事例 図 1-a 整備の無い事例(干隈) 図 1-b 上屋のみの事例(荒江四角)
図 1-c ベンチのみの事例 (美野島南公園前)
図 1 バス停留所事例
図 1-d ベンチ、上屋が整備 された事例(赤坂門)
図 2-a 集合住宅による整備(福凌町) 図 2-b 駐車場による整備(高取)
図 2-c 大学による整備(香蘭短大) 図 2-d 市による整備(金山団地口)
概ね 3.5m 未満 概ね 3.5m 以上 バス停に接する民有地
設置可能 設置可能
設置不可
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ 両方無し
上り
下り
合計 74 40 114 3 2 5 117 55 172 546 604 1150
合計
740
701
1441
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
ベンチ・上屋 (114)
ベンチ・上屋の一方 (179)
両方無し (1150)
210 184 171 1262 1061 950 317 174 105
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
西鉄以外の団体等が ベンチ・上屋のいずれかを
整備しているもの (61)
195 1080 124
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ
上り
下り
合計
合計
14 5 19 21 11 32 7 3 10 42 19 61 表 3 西鉄以外による整備状況の単集計(単位:箇所)
概ね 3.5m 未満 概ね 3.5m 以上 バス停に接する民有地
設置可能 設置可能
設置不可
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ 両方無し
上り
下り
合計 74 40 114 3 2 5 117 55 172 546 604 1150
合計
740
701
1441
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
ベンチ・上屋 (114)
ベンチ・上屋の一方 (179)
両方無し (1150)
210 184 171 1262 1061 950 317 174 105
勢圏内平均高齢者人口 勢圏内平均総人口 各停留所平均運行本数
西鉄以外の団体等が ベンチ・上屋のいずれかを
整備しているもの (61)
195 1080 124
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ
上り
下り
合計
合計
14 5 19 21 11 32 7 3 10 42 19 61 図 2-e 公園による整備(多々良大橋) 図 2-f 銀行によるベンチの整備(脇山口)
8-3
これらの事例をバス停勢圏内の高齢者人口、総人口
及び平均運行本数と照らし合わせると、西鉄が整備を
行った箇所のような相関は見受けられなかった(表
4)。隣接する施設が整備を行っている場合については、
あくまで隣接しているバス停留所に対して整備を提供
している、あるいは施設利用者や住人の為に整備され
ていると考えられる結果となっている。市が主体とな
って整備を行っている事例については、高齢者が多い
場所や待ち時間の長い場所で重点的に行われていると
いう、西鉄へのヒアリングで得られた回答を反映して
いる結果となった。
また、形状における違いとしては、西鉄あるいは市
が整備しているバス停留所は一部を除き設備が歩道上
に在ったことに対し、近隣の施設・店舗が整備を行っ
ている場合は民有地に入り込む形で行われている。
4. 歩道幅員等から見る課題改善の可能性
への固定が成されている等、移動させることができな
いベンチを対象とする。移動のできる簡易なベンチに
ついては厳密には撤去対象となるため、除外するもの
とする。
3.2 調査の集計及び事例
データを得ることができた 1441 箇所の停留所にお
いて、西鉄以外の団体等によってベンチと上屋の両方
が整備されたものは上り 14 箇所と下り 5 箇所の計 19
箇所、ベンチのみが整備されたものは上り 21 箇所と
下り 11 箇所の計 32 箇所、上屋のみが整備されたもの
は上り 7 箇所と下り 3 箇所の計 10 箇所となった(表 3)。
これらは福岡市が主体あるいは補助となって整備を行
ったもの、隣接する施設(学校、公共施設、商業施設、
集合住宅等)により整備されたものに分類することが
できた(図 2)。
3.3 まとめ
15
図 3 現在の整備状況及び補助制度を利用できると考えられる停留所 ★
★
★ ★
★ ★
★
★ ★
★ ★ ★
★
★
★ ★ ★
★
★
★★
★ ★ ★ ★
★★ ★ ★★★
★ ★
★ ★ ★★
★
★ ★
★
★
★
バス平均運行便数
~99 100 ~ 199
200 ~ 299 300 ~ 399 400 ~
整備のないバス停
上屋が整備されたバス停 ベンチが整備されたバス停
バス停留所の整備状況
上り 下り
西鉄以外が整備 しているバス停 ベンチの整備が可能と 考えられるバス停
8-4
4.1 ベンチ整備の条件
本章では設置費用が低く、市あるいは西鉄バスから
購入費の補助を受けることも可能であるベンチの整備
について着目する。市の補助を受けて歩道上で整備を
行う場合は充分な歩道幅員、市及び西鉄の補助を受け
民有地上で整備を行う場合は隣接する土地での設置場
所確保が必要となる(図 4)。また、設置するベンチ
については強風で飛ばされない、寝転がり防止のため
に肘掛け付きのものとする、といった規定が存在する
( 図 5)。それぞれの制度で最大 5 万円までの購入費補
助が成されるとされており、両方の制度を同時に利用
すれば、最大 10 万円の自己負担が軽減されることと
なる。
周辺高齢者人口が多い箇所に着目するため、ベンチ
が整備されていないものの内、勢圏内の高齢者人口が
多い停留所 159 箇所(上下を区分して集計した合計)
において、歩道幅員及び隣接する敷地について現地調
査を行う。歩道幅員については、市から設置可能条件
として広報されている幅員が「概ね 3.5m」であるため、
基準を 3.5m とする。隣接する敷地については調査で
得られた事例をもとに、商業施設、公共施設、団地等
において、特別な工事を行わなくともベンチの設置ス
ペースを確保できるものを設置可能と見なす ( 図 6)
。(上記の条件を満たしている場合でも、通行量等
の関係から承認されない箇所が存在する可能性があ
る。)
4.2 改善の余地についての考察
調査結果から159 箇所中、「歩道幅員が 3.5m 以上
である」「隣地にベンチを設置する余裕があると考え
られる」、これら二つの条件の内少なくとも一方を満
たすと考えられる停留所は 51 箇所となった。これら
の停留所の位置は図 3 に合わせて示している。
このことから、福岡市及び西鉄バスの補助制度を活
用することで、少ない負担でバス停留所にベンチを設
置できる箇所が相当数あることが言える。しかしその
一方で、歩道幅員が狭く接する土地も一般住宅である
など容易な設置は不可能と思われる箇所も多くあり、
そういった場合についても異なる形の補助等が必要と
言えるのではないだろうか。
5. 総括
まず現状についての報告として、
1. 西鉄による整備の成されていないバス停留所は調
査対象の 8 割に上る。
2.勢圏内の高齢者人口とバス停留所の整備の充実度
は結果的に相関するものの、主な相関はバスの平均運
行本数との間にあると考えられ、高齢者の利用を着眼
点とした場合、西鉄のみによって整備の充実を図って
いくことは困難と思われる。
3.西鉄以外の団体等が行っている整備については、
あくまで接している停留所に設備を提供しているもの
であると考えられる。
ということが確認できた。
また、これからの改善の余地については、
4.調査を行った事例の約三分の一において、市ある
いは西鉄バスの補助制度を活用したベンチの設置が可
能であると考えられ、公的な整備を行う余地のある場
所はまだ多くある。
よって、補助制度の存在がバス停留所の整備を押し
上げる可能性を持っていると言うことが確認できた。
しかしその一方で、歩道幅員や接する民有地の土地
利用により整備が不可能である箇所も多くあることが
示され、民有地における建物と一体的に整備すること
への補助等、より一層整備を充実させるには更なる取
り組みが必要になると考えられる。
15
概ね 3.5m 未満 概ね 3.5m 以上 バス停に接する民有地
設置可能 設置可能
設置不可
ベンチ・上屋 ベンチのみ 上屋のみ 両方無し
上り
下り
合計
74
40
114
3
2
5
117
55
172
546
604
1150
高齢者人口 総人口 平均運行本数
ベンチ・上屋
ベンチ・上屋の一方
両方無し
210
184
171
1262
1061
950
317
174
105
高齢者人口 総人口 平均運行本数
西鉄以外の団体等が ベンチ・上屋のいずれかを
整備しているもの
195 1080 124
図 4 補助制度利用の条件概要
図 5 設置可能であるベンチの例
参考文献:
1) エドワーズ優希・趙世晨・箕浦永子:バス停留所の利便性に 関する研究 - 高齢者密度の高い地区を中心として -,日本建築学 会研究報告九州支部 3, 計画系 (55),413-416,2016 年 3 月 2) 水野映子 :高齢者の外出の現状・意向と外出支援策 , 3)北川博巳・土居聡・三星昭宏:歩行空間における高齢者のた めの休憩施設設置に関する研究,土木計画学研究・論文集 No.17 ,2000 年 9 月
4) 佐藤栄治・吉川徹・山田あすか:歩行換算距離を用いた施設 配置と住み替えによる地域生活継続可能性の検討―地形条件と 高齢化を勘案した地域施設配置モデル その 2―,日本建築学会 計画系論文集,第 73 巻第 625 号,2008 年 3 月
図 5-a マリナタウン第二 図 5-b 茶山団地前