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デラウェア州会社法における取締役の忠実義務の拡張: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

大川, 俊

Citation

沖縄大学法経学部紀要 = Okinawa University JOURNAL

OF LAW & ECONOMICS(17): 1-23

Issue Date

2012-03-23

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/9612

(2)

【論文】

デラウェア州会社法における取締役の忠実義務の拡張

TheExpandingDirectorsDutyofLoyaltyinDelawareCorporateLaw 専 門 分 野 : 商 法 ( 会 社 法 ) キーワード:信認義務、誠実性、忠実義務の拡張 大 川 俊 * ShunOKAWA I は じ め に 近年、デラウェア州判例法においては、伝統的な信認義務(fiduciaryduty)法理の枠組みのう ち、注意義務(dutyofcare)及び忠実義務(dutyofloyalty)のいずれにも含めることができな い取締役の行為を、取締役が誠実に(ingoodfaith)行動していたか否かという新たな基準によっ て審査する試みがなされている。デラウェア州会社法において、これは取締役の「誠実'性(good faith)」又は「誠実義務(dutyofgoodfaith)」の問題と理解され、誠実‘性概念の意義や誠実‘性基 準の適用要件、伝統的な信認義務法理の枠組みにおける誠実義務の位置づけ等が議論されている'。 このような状況の下、前稿2では、デラウェア州判例法の展開を跡付けることにより、誠実性 概念を巡る諸問題を検討した上で、同概念の出現により伝統的な信認義務法理の枠組みがどのよ うに変容しつつあるか、その方向‘性と問題点を把握した。その際、デラウェア州判例法において、 誠実性基準は、(1)監督義務僻怠の取締役の責任、(2)報酬等を決議した取締役の責任、(3)会社売却 時の取締役の責任という3つの局面における審査基準として機能し、その結果、従来注意義務の 領域と考えられてきた問題が忠実義務の問題として処理されるという、いわゆる「忠実義務の拡

張(expandingdutyofloyalty)^」という現象が生じ、伝統的な信認義務法理の枠組みが変容し

つつあることを確認した。 本稿は、前稿において確認された忠実義務の拡張という現象の意義、及びそれに対する学説の 評価を明らかにし、若干の考察を加えることを目的とするものである。まず、伝統的な信認義務

法理の枠組みの下での取締役の責任の判断構造を確認する(Ⅱ)。次に、誠実性概念がどのような

理論的背景の下に出現し、同概念がどのような意義及び機能を有するかを確認する(Ⅲ)。そして、 以上の考察を基に、デラウェア州会社法における忠実義務の拡張の意義、及びそれに対する学説 の評価を明らかにする(Ⅳ)。最後に、本稿での考察を纏め、若干の私見及び今後の課題を提示す る(V)。 、。

(3)

Ⅱ 伝 統 的 な 信 認 義 務 法 理 の 枠 組 み 1.信認義務 アメリカ会社法において、取締役は会社の業務執行者として、会社(及びその所有者としての 株主)に対して信認義務を負う4.取締役の信認義務は、取締役の過った事業経営や不公正な自己

取引(self-dealing)において問題となり5、その責任は本質的に公正基準(fairnesstest)Rによっ

て審査される。しかし、取締役が会社の業務執行を行う際の行為及び判断について、その多くは 経営判断の原則(businessjudgmentrule)の適用の可否の問題として把握されることから、同原 則が適用される事案においては、裁判所が取締役の責任の実体的な判断を行うことはない7°従っ て、取締役の信認義務違反の責任の判断において公正が問題となるのは、経営判断の原則が適用 されない場合に限定される8. 2.注意義務と忠実義務 取締役が会社に対して負う義務は、一般に注意義務及び忠実義務に大別される9-注意義務とは、 ある者がある行為をするにあたって他人に損害を与えるリスクを伴う役割を引き受けた場合にお いて、その者が注意深くその役割を果たす義務をいい、会社法においては、取締役が株主から経 営を委託された地位にある者として経営判断を行う際に問題となる'0.他方、忠実義務とは、ある 者がその地位を利用して受益者の利益よりも個人の利益を優先させてはならない義務をいい'1,会 社法においては、取締役が会社の利益よりも個人の利益を優先させるような自己取引を行っては ならない義務がその例とされる'2. 忠実義務は、会社の最善の利益に反する取締役の行為、及び他の株主には提供されない個人的

利益の獲得を阻止するという点において注意義務とは異なる'3.注意義務は、粗末な(poor)意思

決定や注意の欠如に関する義務であり、個人的利益とは関係がない'4。従って、注意義務が問題と なる局面において、取締役の経営上の決定は、取締役と会社の利益が一致し、かつ、会社が取締 役の判断を信頼できる状況があることを前提として、一定の要件の下、経営判断の原則の保護を 受ける'5.他方、忠実義務が問題となる局面においては、取締役と会社の利益が異なることから、 この前提は当てはまらず、取締役の行為や意思決定に対して経営判断の原則が適用されることは ない'6. 3.経営判断の原則 取締役の注意義務違反の責任は、一般に、不法行為法(tortlaw)におけるネグリジェンス

(neghgence)基準'7によって審査されるが18、その際、経営判断の原則19が適用され、取締役はグロス.

ネグリジェンス(glossnegligence)がなければ責任を負わない20・

デラウェア州判例法においては、Aronsonv・Lewis事件21(以下「Aronson事件」という。)が、 経営判断の原則を、ある経営上の決定を行うにあたり、その決定が十分な情報に基づいて、会社 の最善の利益のために行われたものであることを、取締役が誠実かつ正直に信じていたとの推定 であると定義する22。そして、その要件は、(1)ある経営上の決定が利害関係のない取締役によって 行われたこと、及び(2)当該取締役がその決定を行う前に合理的に利用可能な情報を取得していた ことであるとされ、同原則の下での取締役の責任はグロス・ネグリジェンス基準に基づいて審査 される(以下「Aronson基準」という。)"。 経営判断の原則が適用された結果、裁判所は取締役の決定を尊重し、後知恵でその決定を批判 − 2 − 一

(4)

することはない。他方、株主が、取締役の詐欺(fraud)、違法行為(illegality)、利益相反行為(conflict ofinterest)等を立証した場合、経営判断の原則による推定は覆され、取締役の責任が認められ る別。一般的には、取締役の決定が業務上の目的を欠き不合理である場合や、利益を得る可能性が 全くない場合、その他、利害関係のある取締役や会社と利益相反関係にある取締役による決定に ついては、経営判断の原則による保護は否定される弱。また、一般に、監督義務僻怠等の取締役の 不作為についても経営判断の原則の適用はないと考えられている妬。 4.基本定款による免責 裁判においては、経営判断の原則を覆す立証責任は、取締役の責任を追及する株主側に課せら れる27・この点、株主の側において、取締役会の決定が十分な情報に基づかないこと(Aronson基準)

を立証し、経営判断の原則による保護が認められなかった事例としてSmithv・VanGorkom事件配

(以下「VanGorkom事件」という。)がある。VanGorkom事件において、デラウェア州最高裁は、 「取締役は、会社を売却し、1株あたりの売却価格を決定する際のVanGorkom氏の役割、及び 会社の本来的な価値について十分な』情報を有していなかった。このような状況において、少なく とも、事前の‘情報がなく、危機的で緊急の事態であったわけでもないのに、取締役が2時間の討 議によって売却を承認したことは、グロス・ネグリジェンスにあたる。29」と述べ、経営判断の原 則による保護を認めなかった。 デラウェア州判例法においては、VanGorkom事件のように、株主が経営判断の原則を覆す諸 事実が立証されたケースは稀であり、一般に、経営判断の原則の下、取締役の責任は認められな い場合がほとんどである30.従って、VanGorkom事件に対しては、取締役会の意思決定の質や 水準31を基礎として経営判断の原則の適用の可否を審査したものであり、それゆえ取締役の信認義 務違反に基づく責任追及の可能性を増大させるものであるとして、学説上、多くの批判が加えら

れた32。また、企業社会からも、取締役(特に独立取締役(independentdirector))の責任追及の

可能性が増大するとの危機感が示された。そこで、デラウェア州は、定款によって取締役の責任 を免除することを認める規定を設け、これに対応した。すなわち、デラウェア州会社法102条M7) は、基本定款において事前に定めることにより、(1)忠実義務違反の行為、(2)不誠実な作為・不作 為、意図的な不正行為、適用される法律を知りながらそれに違反する行為、(3)違法な配当の支払い、 (4)取締役が個人的に不正な利益を得る行為以外の行為については、取締役の信認義務違反の責任 が免除されることを認める33。そして、現在、ほとんどの州においてデラウェア州会社法102条b

(7)と同様の規定が設けられ、多くの会社が基本定款における免責規定を置いていることから34、取

締役の注意義務違反に関する責任が認められることは少ない。 Ⅲ 誠 実 性 概 念 1.理論的背景 伝統的な信認義務法理の枠組みの下、取締役が会社に対して負う義務は、一般に注意義務及び 忠実義務に大別される。注意義務は、会社と取締役の利益が一致している場合における注意の欠 如の問題であり、忠実義務は、自己取引等、会社と取締役の利益相反の問題であると整理される。 このうち、注意義務違反の審査については、基本的に、経営判断の原則による保護及び基本定款 による免責が認められることから、取締役の責任が認められることは少ない。従って、これらの

(5)

枠組みの下で取締役の責任を根拠付けようとした場合、原告たる株主には、より厳密な司法審査 の利益を得るため、取締役の行為を経営判断の原則による保護及び基本定款による免責が認めら れない忠実義務違反として‘性格付けようとするインセンテイブが働く35。 このような状況の下、例えば、監督義務僻怠等の取締役の不作為について、これを仮に注意義 務違反の行為と整理した場合、経営判断の原則による保護及び基本定款による免責が認められ、 会社の損害を回復する機会が奪われることとなり、妥当ではない。また、報酬等を決議した取締 役の行為については、会社との直接的な利益相反の関係が生じることから、経営判断の原則によ る保護や基本定款による免責は認められず、忠実義務違反における公正基準によって審査され

るのが原則である36・しかし、報酬等を決議した取締役の行為の全てにつき、画一的に忠実義務違

反として処理すると、取締役の報酬請求権が不安定なものとなるばかりか、取締役のなり手がい なくなる等、会社にとって不利益が生じることにもなりかねない37°従って、利益相反の実質的な 危険がない場合には、経営判断の原則による保護や基本定款による免責を認めるような仕組みを 構築することが会社と取締役の双方の利益にかなう場合もある38。 そこで、近年、デラウェア州判例法においては、このような不都合を解消するため、デラウェ ア州会社法等の制定法上の文言の解釈39を通じて、取締役が誠実に行動していたか否かという新た な基準によって審査する試みがなされており、ここに誠実性概念が出現した理論的背景がある。 2.誠実性概念の意義、誠実性基準の適用要件 このような理論的背景の下、デラウェア州においては、以下のような裁判例の展開により、誠 実性概念の意義や誠実‘性基準の適用要件が明らかにされてきた。 まず、デラウェア州判例法においては、Aronson事件をリーディング・ケースとする一連の裁 判例により、誠実‘性基準は経営判断の原則が適用される前提条件であるとの理解が確立してい る40。すなわち、Aronson事件判決は、「経営判断の原則は、ある経営上の決定を行うにあたり、 その決定が十分な'情報に基づいて、会社の最善の利益のために行われたものであることを、取締 役が誠実かつ正直に信じていたとの推定である。41」と述べ、経営判断の原則が適用されるためには、 その前提として、取締役会の経営上の意思決定に対する各取締役の誠実性が求められることを明ら かにした。そして、その後も、VanGorkom事件42、Grobowv.Perot事件43、Citronv.Fairchild

Camera&InstrumentCorp.事件44、Cede&Co.v.Technicolor,Inc.事件45(以下「Cede事件」と

いう。)、Cinerama,Inc.v.Technicolor,Inc.事件46(以下「Cinerama事件」という。)、Emerald

Partnersv.Berlin事件47(以下「EmeraldPartners事件」という。)等においてAronson事件判決

の立場が踏襲された。 しかし、これらの裁判例においては、単に経営判断の原則の適用を排除するための前提として 誠実‘性が求められることが述べられたに過ぎず、その際の誠実‘性概念の意義や誠実』性基準の適用 要件等については必ずしも明らかにはされなかった。この点を明らかにしたのは、監督義務僻怠

の取締役の責任が問題となったInreCaremarkInternationalInc.DerivativeLitigation事件(以

下「Caremark事件」という。)と報酬等を決議した取締役の責任が問題となったInreTheWalt

DisneyCompanyDerivativeLitigation事件49(以下「Disney事件」という。)である。

まず、Caremark事件において、デラウェア州衡平法裁判所は、「…取締役の義務には、取締役 会が十分であると判断した'情報収集及び報告に関するシステムが存在することを確保するよう誠 − 4 −

(6)

実に努める義務が含まれ、ある状況の下でその努力を怠ったならば、少なくとも理論上は、取締 役は、適用される法原則を遵守しなかったことによって生じた損害について責任を負う可能性が ある。50」と述べ、十分な監督を怠ったという不作為が信認義務違反にあたることを認めた。そし て、その内容については、「…一般に、Graham事件や本件におけるように、会社の損害に対する 取締役の責任の主張が、会社の活動が違法なものであることを知らなかったことに基づく場合に は、取締役会による継続的又は構造的な監督権を行使しなかったこと(例えば、合理的な‘情報提 供及び報告システムを確保する努力を全く行わなかったこと)によってのみ、取締役が責任を負 うための要件としての誠実性の欠如が立証される。5'」と述べ、取締役には他の取締役等の違法行 為を防止するための内部統制システム(internalcontrolsystem)を構築すべき義務があり、同義 務を怠ったことが誠実'性の欠如(lackofgoodfaith)に該当することを明らかにした。 次に、Disney事件判決は、Caremark事件判決が述べた「誠実性の欠如」を「不誠実(bad faith)」と呼び、不誠実概念の類型化を通じて、誠実性概念の意義及び誠実性基準の適用要件を明

らかにした。すなわち、Disney事件において、デラウェア州最高裁は、まず、「信認義務に求めら

れる行為のうち、少なくとも3つのカテゴリーが『不誠実』の候補に挙がる。第1は、いわゆる『主 観的な不誠実(subjectivebadfaith)』であり、これは侵害という意図が含まれた動機に基づく行 為が含まれる…。このような行為は伝統的かつ典型的な不誠実を構成する…。第2は、他の2つ のカテゴリーの反対に位置づけられるものであるが、注意の欠如が認められる行為、すなわちグ ロス・ネグリジェンスに基づく行為、又は害意(malevolent)のない行為である…。ここに、グロス・ ネグリジェンスが不誠実を構成するか否かという問題が提起されるが、その答えはノーである。 …第3は、他の2つのカテゴリーの中間に位置するものである。すなわち、これは、不誠実とは 義務を怠ること、又は意図的に責任を無視することであると定義づけたデラウェア州衡平法裁判 所の判断の意味を明らかにすることである。その際、誠実義務違反の行為を、基本定款の免責規 定によっては免責されない行為として扱うことが適切かどうかということが問題となる。52」と述 べ、原審53においてデラウェア州衡平法裁判所が示した不誠実概念の意義及び要件を分析した。そ の上で、デラウェア州最高裁は、「信認義務に求められる誠実性とは、注意義務及び忠実義務を含 むだけでなく、…会社又は株主の利益に対する真実の誠実さ(faithfulness)や献身(devotion) が求められる全ての行為を含むものである。誠実性の欠如は、例えば会社の最善の利益を追求 する以外の目的で行われる意図的な行為、適用可能な制定法に違反する意図で行われる行為、義 務の意識的な無視など、よく知られた義務に直面した際に意図的にそれを行わないことが想定さ れる。54」と述べ、不誠実に該当する3つの場合を類型化した。 以上、デラウェア州判例法においては、Aronson事件をリーディング・ケースとする一連の裁 判例において、誠実性概念は経営判断の原則が適用される際の前提条件であることが認められて いる。そして、誠実性概念の意義については、Caremark事件判決が、監督義務履行の際、取締 役はいわゆる内部統制システムを適切に構築することを内容とする誠実義務を負う旨を明らかに する。また、これを受けて、Disney事件判決が、不誠実な行為を、1会社の最善の利益を追求す る以外の目的で行われる意図的な行為、(2)適用可能な実定法に違反する意図で行われる行為、(3) 義務の意識的な無視など、よく知られた義務に直面した際に意図的にそれを行わないことである と定義する。さらに、誠実‘性基準の適用要件については、Disney事件判決が、①主観的な不誠実

(7)

(すなわち動機において侵害の意図が含まれる行為)、②注意の欠如(すなわちグロス・ネグリジェ ンスの行為)又は害意のない行為、③義務の僻怠又は意識的に責任を無視することであると一般 化するが、②については、グロス・ネグリジェンスの行為は不誠実を構成しないとする。従って、 誠実性基準による取締役の責任の判断においては、取締役の責任を追及する株主が、①「主観的 な不誠実」及び③「義務の僻怠、意識的な責任の無視」を具体的に立証しなければならない。 Ⅳ 忠 実 義 務 の 拡 張 1.監督義務履行の際の取締役の誠実性 (1)意義 誠実性基準は、伝統的な信認義務法理の枠組みの下、注意義務及び忠実義務のいずれにも含め ることができない事案、言い換えれば、経営判断の原則による保護又は基本定款による免責を認 めることができない事案において、妥当な解決を導くための基準として機能する。この点、デラウェ ア州判例法においては、Aronson事件を契機とした一連の裁判例が誠実‘性基準と経営判断の原則 との関係を提示し、また、Caremark事件判決が監督義務履行の際の取締役の誠実義務を認めた ことを受けて、Disney事件判決が報酬等を決議した取締役の信認義務違反の審査基準として不誠 実概念の意義及び誠実性基準の適用要件を明らかにしたことが重要な展開であった。 しかし、これらの裁判例においては、そもそも伝統的な信認義務法理の枠組みにおいて誠実義 務がどのように位置づけられるのか、言い換えれば、注意義務及び忠実義務と誠実義務との関係 をどのように解すべきかについては必ずしも明らかではなかった55。すなわち、この問題について は、誠実義務を伝統的な注意義務及び忠実義務と等しい位置にある独立した信認義務の1つであ るとしたCede事件判決56や、注意義務違反の分析において取締役の監督義務の僻怠について言及 し、適切な内部統制システムを構築すべきことを内容とする誠実義務を認めたCaremark事件 判決57、報酬等を決議した取締役の信認義務違反を審査する際、事案の解決には影響を及ぼさない として、誠実義務の位置づけを判断しなかったDisney事件判決等、その立場は分かれていた。 この問題に対して1つの結論を示したのがStonev.Ritter事件記(以下「Stone事件」という。) である。すなわち、Stone事件において、デラウェア州最高裁は、「誠実義務については、特に重 要な以下の2つの視点が導かれる。すなわち、第1に、誠実義務は、注意義務及び忠実義務を含 む信認義務の『3つの組(triad)』であると表現される。しかし、誠実義務は注意義務及び忠実義 務と同等の位置にある独立した信認義務を構成するものではない。注意義務及び忠実義務のみが、 それに違反した場合、直接に責任を負う基礎をなすのに対して、誠実義務は責任を負う際の間接 的な基準でしかない。第2に、忠実義務は、金銭的又はその他の認識しうる利害対立を含む事例 に限定されない。そこには誠実義務も含む。…取締役は、会社の最善の利益のために行動してい ると誠実に信じることができない限り、会社に対して忠実に行動しているとはいえない。59」と述べ、 ①誠実義務は注意義務及び忠実義務と同列の1つの独立した信認義務ではないこと、②伝統的に 会社と取締役の利益相反の状況における義務と理解されていた忠実義務に誠実義務が含まれるこ とを明らかにした。 Stone事件判決は、誠実義務を独立した1つの信認義務であると理解したCede事件判決以降の 一連の裁判例とは異なり、誠実義務を忠実義務の要素(一部)と位置づけたことに重要な意義が − 6 −

(8)

認められる。そして、その背景には、事案の具体的な解決において、Caremark事件判決を契機と して生じた監督義務僻怠の取締役の責任の審査基準をどのように位置づけるかという問題があっ た。すなわち、取締役の監督義務は、取締役会が何らかの意思決定を行った結果、会社に損害が 発生した場合において、その構成員である取締役が漫然とこれを放置すること等、十分な監督を 行わなかったという不作為の問題であって、通常の取締役会決議における作為を問題とする注意 義務とはその'性質を異にする60.そこで、このような不作為を原因とした信認義務違反の具体的な 審査基準を確立する必要があった6'。 このような状況の下、情報収集及び報告のための内部統制システムを利用した監督を怠ったこ とが誠実義務違反にあたることを明らかにしたのがCaremark事件判決であり62、さらに、その際 の誠実義務の性質を明らかにしたのがStone事件判決である。すなわち、Stone事件判決は、まず、 どのような状況において誠実義務が問題となるかにつき、Caremark事件判決の立場を維持し、「… 次の場合に取締役の監督義務僻怠の責任を認める。①取締役があらゆる報告や情報システム又は 統制を全く実行していない場合、②そのようなシステムまたは統制を実行していたとしても、注 意が要求されるリスクや問題について取締役が知らないことにより、それらの運営をモニターし 監督することを意識的に行っていない場合である。いずれの場合においても、…取締役が義務が あることを知りながら行為をせず、その結果、意識的に責任を無視したことが立証されるならば 取締役は、信認義務に求められる誠実‘性を尽くさなかったことによって、誠実義務に違反す

る。63」と述べ、監督義務履行の際、取締役は適切な内部統制システムを構築することを内容とす

る誠実義務を負う旨を明らかにした。その上で、誠実義務の‘性質については、「誠実に行動すると いう要求は、『忠実義務の副次的な(subsidiary)要素』、言い換えれば、『忠実義務に求められる 本質的な(fundamental)状況』であることを基礎として、誠実に行動しなかったことが責任を生 じさせる要件となる。Caremark事件判決やDisney事件判決が明らかにしたように、不誠実な行 為を立証することが、取締役の監督義務違反の責任を生じさせる基礎となる。そのため、そのよ うな行為による信認義務違反は、忠実義務違反の行為となる。64」と述べ、忠実義務の要素である 誠実性の内容を、「忠実義務に求められる本質的な状況」と位置付けた65° 以上、デラウェア州判例法においては、取締役会のモニタリング機能及び各取締役の監督義務に 関連して、特に従業員等の違法行為を防止するための内部統制システムを構築することを内容と する積極的な義務があるか否かという問題が生じ、それに対する1つ結論を示したのがCaremark 事件判決及びStone事件判決であった。そして、特にStone事件判決においては、取締役は、監 督義務を尽くす際、内部統制システムを構築することを内容とする誠実義務を負い、その性質は 忠実義務の要素であることが明らかにされたが、このことは、伝統的な信認義務法理の枠組みに おいて、従来注意義務のカテゴリーとして論じられてきた監督義務を忠実義務の問題として再構 成したものと評価することができ、ここに忠実義務の拡張という現象の萌芽を見ることができる。 (2)学説の評価 このような状況の下、Stone事件判決の意義、及びそれを契機として生じた忠実義務の拡張につ いて、詳細な分析を行ったのがHillである。その見解は以下のように纏めることができる。 究極的に、取締役や役員(officer)が会社に対して負う義務は、会社の最善の利益を積極的に 追求するという意味における信認義務のみである66.その下で、忠実義務、注意義務、誠実義務が

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議論される67.伝統的な忠実義務は、取締役や役員が会社の利益を犠牲にして自己の利益を図るこ

とにより生じる重要な利害対立を問題とする68.注意義務は、取締役や役員が他者の利益を図るこ とに積極的には努力しないという人間としての本質的な傾向を問題とする69°しかし、裁判所はそ のようには考えないかもしれないが、このような分類の根底には忠実義務を内容とする信認義務(a fiduciarydutyofloyalty)という状態がある70.

誠実義務は、伝統的な忠実義務違反には含まれないが責任を負う可能性のある(culpable)行為

に関する概念的な枠組みを提供する71.その枠組みとは、「構造上のバイアス(structuralbias)」、

「疑わしき動機(suspectmotive)」、「違法を招く行為(conductinvolvingillegality)」の3つのカ テゴリーに分類される72。 「構造上のバイアス」とは、伝統的な忠実義務違反の行為ではないが責任を負う可能性のある行 為に関するカテゴリーである。このカテゴリーには、仲間(crony)を雇い報酬を与えるという思 惑を有していたCEOを軽率に就任させた事例としてのBrehmv.Eisner事件羽が含まれる74.そ れは、伝統的な忠実義務違反の行為とは明らかに異なる行為である75。すなわち、このカテゴリー には、会社にとって重要な意思決定を批判的に検討すべき義務、及びCE○の提案に無批判に賛成

しない義務が含まれる布。「疑わしき動機」は、より直接的に自己の利益を追求する行為であるが、

伝統的な忠実義務違反の文脈においては分析されてこなかった行為に関するカテゴリーであり、 買収提案に対する取締役会の対応が1つの例である7%そこには権利侵害(entrenchment)、又は 少なくとも契約の無効要素を契約から分離すること(severance)が、常に可能性のある動機とし て存在する沼。その他、自己の利益を志向するという動機を設定することも可能である79.敵対的 買収に対する防衛策を講じる際、取締役には自己の利益を志向し権利侵害を行う動機が少なから ず存在する80。「違法を招く行為」は、Stone事件やCaremark事件において主張された、違法行 為を防止する注意(diligence)の欠如を原因として責任を負う可能性が生じる行為、又はMiller v.AT&T事件8'が顕著な例である違法行為の遂行(commission)に関するカテゴリーである。こ こでは、他の2つのカテゴリーとは異なり、取締役と株主との間の利害対立は明確には生じない。 違法行為は、会社の利益を最大化する目的で行われることもある82. 以上、Hillは、取締役の信認義務とは会社の最善の利益を追求するという忠実義務を主たる内容 とする義務であるとした上で、そのような観点から、誠実義務違反の行為を忠実義務違反の行為 との対比において、①伝統的な忠実義務違反の行為ではないが非難されるべき行為としての「構 造上のバイアス」、②より直接的に自己の利益を追求する行為としての「疑わしき動機」、③Stone 事件判決やCaremark事件判決において問題となった違法行為を防止するための注意の欠如等の 「違法を招く行為」に類型化した。 しかし、Hillの見解に対しては、Stone事件判決に批判的立場をとるStephenM.Bainbridge(以 下「Bainbridge」という。)から、以下のような批判がなされている。すなわち、伝統的に、忠実 義務違反の行為を原因とする会社の損害の救済方法は、不法に取得した利益(ill-gottengain)の 剥奪であると考えられてきたが、会社の犠牲において金銭的な利益を得ていないケースにまで忠 実義務違反の問題を拡大することは、不法に取得した利益の剥奪という本来の意味での救済方法 が利用されなくなる危険がある田。また、忠実義務の拡張は、会社の損害に対する適切な救済方法 を見いだす際の理論上の困難さを生じさせ84、かつ、損害との因果関係は要件ではないと判示した − 8 − ■ ■ 一

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Cede事件判決との理論的な対立をもたらす鴎。 これに対してHillは以下のように主張する。すなわち、確かに、会社の損害の回復は忠実義務 違反の行為に対する典型的な救済として機能しているが、デラウェア州最高裁は、忠実義務違反 のケースにおいて、「公平な救済と金銭的な救済を適切に構築する」必要があると述べている86。 それゆえ、損害の回復は、利用可能な唯一の救済ではなく、報酬等の支払いに基づく損害の救済 も適切に検討されるべきである87.実際、代理に関する一般的な法原則においても、本人が不法に 取得した報酬の支払いに基づく損害とその回復との関係は、いずれも妥当な救済であると考えら れている88。 そもそも、忠実義務の拡張は、伝統的な信認義務法理の枠組みのうち、注意義務違反及び忠実 義務違反のいずれにも含めることができない取締役の行為について、どのような位置付けの下に 誠実性基準を適用するかという問題を背景に出現してきた。この点、従来より、デラウェア州判 例法は、経営判断の原則による保護及び基本定款による免責という形で取締役の権限と責任との バランスを適切に図ってきたことを理由に89、誠実性という新たな概念を持ち出すことは、いたず らに議論を混乱させ、好ましくないと考えるのがBainbridgeである。他方、Bainbridgeとは異 なり、誠実‘性基準の導入について一定の評価を与えた上で、取締役の行為及び動機を詳細に分析し、 同基準の3つの適用場面を明らかにしたのがHinである。両者の見解の対立は、会社の損害に対

する適切な救済方法という点において先鋭化するが、後述のLyondell事件判決90が、伝統的には

忠実義務の問題とは考えられてこなかった取引の文脈において誠実性基準を考慮し、忠実義務の 拡張という現象が新たな展開を迎えようとしていることからすると、Huの見解のほうが、デラ ウェア州判例法の流れに沿ったものであるといえ、かつ、理論上も必要な分析的視点を提供して いると解する。 2.会社売却時の取締役の誠実性 (1)意義

誠実義務は忠実義務の要素であるというStone事件判決の理解は、その後、Lyondell事件91を

契機として、会社の売却やそれに伴う支配権の移転が問題となる「取引(transaction)」の領域 にまで拡大した。従来、デラウェア州判例法においては、M&Aにおける取締役の信認義務違反 の責任は、純粋な注意義務の問題と理解され、経営判断の原則による保護や基本定款による免責 を基本としつつ、追加的にUnocal基準92やRevlon基準93等の高度かつ限定的な審査基準が形成

されてきた94.この点、Lyondell事件も、基本的にこの流れを踏襲するものであるが、取締役は

株主の利益のために最適な会社の売却価格を得なければならないというRevlon義務の審査過程に おいて、取締役が誠実に行動していたか否かが問題とされた。すなわち、Lyondell事件は、既に Stone事件判決において確立した忠実義務の要素である誠実義務を、M&Aの領域において求めら れるRevlon義務との関係において検討したものであり、ここに忠実義務の拡張という現象の新た な展開をみることができる。 Lyondell事件におけるデラウェア州最高裁の判断は以下の通りである。すなわち、Lyondell 社の取締役会は、同社が買収の対象になっている(inplay)ことへの対応として「成り行きを みる」との立場を決定したが、このような取締役会の決定に対して、デラウェア州最高裁は、ま ず、Revlon基準を適用し、株主の利益のために最適な会社の売却価格を得なければならない義務

(11)

(Revlon義務)は、単に会社が買収の対象となったことによって生じるのではなく、実際に会社 の売却という取引に応じる時に初めて生じるとして、Revlon義務が適用される時期を明らかす

る95.次に、デラウェア州最高裁は、「…Lyondell社の定款には注意義務違反の個人責任から取締

役を保護するというデラウェア州会社法102条(b)(7)に基づく基本定款による免責規定が含まれてい る。それゆえ、本件は、Lyondell社の取締役の行為が、基本定款によっては免責されない忠実義

務に関するものであったか否かという問題に帰着する。96」と述べて、本件の争点を忠実義務の問

題であると整理する。その上で、デラウェア州最高裁は、「…Disney事件判決において、当裁判

所は不誠実と認められる行為の範囲を議論し、そこには損害を発生させる意図だけでなく意図的 に義務を怠ることをも含むと結論づけた。…数ヶ月後、Stone事件判決において、・当裁判所は『監 督』の文脈の中で不誠実の概念を検討し、Caremark事件判決の判断を採用した。Caremark事件 判決においては、会社の損失に関する取締役の責任を追及する訴訟が、取締役が会社内において 適切な行動をとらなければならない義務を無視したことを原因として提起された場合には、取締 役会が監督権を継続的・体系的に行使しなかったことのみが責任を認めるために必要な誠実‘性の

欠如にあたるとされた。Stone事件判決において、当裁判所は不誠実を定義したDisney事件判決

とCaremark事件判決の判断は十分に整合的であると述べた。Stone事件判決においては、『責任 を課すための要件として、信認義務の不履行を取締役が知っていることが求められる。9mとされ、 取締役の内心の状態(mentalstate)に関する立証の困難さが認められている。98」と述べ、Stone 事件判決において示された忠実義務の要素としての誠実義務に関する判断を踏襲し、結論として は、取締役会の「成り行きをみる」との立場は、誠実義務には違反しないと判断した。 (2)学説の評価 Lyondell事件については、ChristopherM.Bruner(以下「BrunerJという。)が、取引の文脈 において審査の対象になる不誠実の意義を詳細に検討している。その見解は以下のように纏める ことができる。

まず、Brunerは、Lyondell社の取締役によるサマリー・ジヤッジメントの申立てを斥けたデ

ラウェア州衡平法裁判所の判断について、次のように分析する。すなわち、デラウェア州衡平 法裁判所は、2008年6月29日には、「取締役会がより積極的に売却の手続を進めなかったことが、 Stone事件判決が認めたところの忠実義務の要素としての誠実義務違反を構成する。…Lyondell 社の取締役会が実際に交渉し、積極的に売却の過程に関わったことを示す証拠は認められない。99」 と述べた。また、同年8月29日には、「違法行為に対する継続的かつ体系的な監督を怠ることが不 誠実にあたると判断したCaremark事件判決の文脈とは異なり、会社の売却という取引の文脈に おいては、取締役は1回限り(場合によってはそれ以上)の行為を行うにすぎない。そのため、 取締役は、会社(及び株主)に対する信認義務を尽くすために、注意深く(diligently)かつ誠実 に(faithfully)売却のプロセスに従事するか否かを選択する。'㈹」と述べた。以上が、Revlon義 務履行の際の誠実‘性基準に関するデラウェア州衡平法裁判所の理論的な立場である'0'。 次に、Brunerは、デラウェア州最高裁の判断について以下のように分析する。すなわち、一般 に、デラウェア州最高裁の判断は、Revlon基準が適用される局面において、不誠実を原因とする 損害賠償責任を追及する方法を制限したものであると考えられている'02.不誠実概念については、

Disney事件判決が、「義務の意識的な無視'03」という比較的厳密な内心の状態(stateofmind)に

− 1 0 −

(12)

関 す る 要 件 を 示 し た が 、 そ の 理 由 は 、 厳 密 で な い 要 件 に よ れ ば 損 害 賠 償 を 求 め る 原 告 側 の 立 証 責任が、経営判断の原則による保護又は基本定款による免責よりも軽度なネグリジェンスの要件

へと低下するからである'04.このような観点から、Lyondell事件において、デラウェア州最高裁は、

取締役が実際に会社の売却という取引に応じる時に初めてRevlon義務を負うことを明らかにした ものであり、その意味するところは、取締役が実際に会社の売却という取引に応じるという限定 的な局面において「義務の意識的な無視」が立証されなければ、取締役が責任を負うことはない

ことを示すことにあった'05。従って、Lyondell事件におけるデラウェア州最高裁の判断は、原告

にとって立証責任の観点から非常に高いハードルを課すものであった'06. Lyondell事件における取締役会の「成り行きをみる」という立場は、義務を尽くすということ

が全体的又は総合的に欠如していたことを意味する'07°この点、Disney事件判決における「義務

の意識的な無視」に関する基準を文字通り「何もしない」と解釈するならば、取締役が信認義務を「引 き受けることを完全に怠った」こと、又は、信認義務を尽くすことを「全く試みなかった」とい う場合にのみ、不誠実が認められると考えるべきである'08.義務を「完全に引き受けない」ことや、 義務の履行を「全く試みない」ことは、単にある行動をとるという実際の行為的側面をとらえて、

不誠実であると判断することではない109.義務を尽くす際の真の意図(genuineintent)に焦点を

当てた上で、取締役に対しては、少なくとも最低限の試みを行っていたかを、それぞれの事案ご

とに考慮する必要がある''0.Lyondell事件において、デラウェア州最高裁は、義務を「引き受ける」

又は「試みる」との文言を用いたにもかかわらず、取締役会の「成り行きをみる」という行動に ついて、義務を尽くす真の意図があったか否かに関する判断は行わなかった''1・

デラウェア州判例法においては、一般に、立証責任の所在という観点からは、Disney事件判決

が示した「義務の意識的な無視」に関する基準は原告に親和的であり、Caremark事件判決が示 した「義務の履行を全く怠るなどの体系的・継続的な僻怠」に関する基準は原告に親和的ではな

いと考えられている''2.この点、Lyonden事件においては、デラウェア州衡平法裁判所は前者を

採用し、最高裁は後者を採用した。Brunerは、このようなデラウェア州衡平法裁判所と最高裁と の審査スタンスの相違を分析した上で、理論上はM&A等の取引と監督義務の僻怠という文脈を 区別する必要があるという理由から、監督義務の僻怠の文脈におけるCaremark事件判決やStone

事件判決の立場ではなく、「義務の意識的な無視」に関する基準を明らかにしたDisney事件判決

の立場に基づいて不誠実の検討を行ったデラウェア州衡平法裁判所の審査スタンスを支持してい る。そして、その際、Brunerは、「義務の意識的な無視」に基づいて不誠実を考慮する際、義務 を尽くすという行為に内在する真の意図に関する分析もまた行われなければならないと主張する。

隠蓑開鄭竺駕重職室鴬驚鯛妻ヵ鶏墓鯉懸墨鷺

取締役の真の意図(すなわち動機)をも考慮すべきとするBrunerの見解は、このようなHil1の 分析と整合し、理論上一定の示唆を提供するものであると解する。

(13)

V お わ り に 忠実義務の拡張は、まず、取締役のどのような行為が誠実義務違反の行為に該当するかという 観点から、Disney事件判決が明らかにした不誠実概念の意義及び誠実性基準の適用要件の解明 と、それを基礎としたStone事件判決に対する評価の問題を端緒として議論されてきた。その際、 注意義務違反及び忠実義務違反のいずれにも該当しないと考えられる取締役の行為によって会社 に損害が発生した場合の救済方法として、経営判断の原則又は基本定款による免責規定を適用す るのか、新たな概念としての誠実性基準を適用するのかという議論が生じ、前者の立場をとる Bainbridgeと後者の立場をとるHillの見解の対立がみられた。この点については、不誠実に該当 する取締役の行為及び動機を詳細に分析し、「構造上のバイアス」、「疑わしき動機」、「違法を招く 行為」という3つのカテゴリーにおいて取締役の不誠実という状況が生じることを明らかにした Hillの見解が、立証責任の所在を理論的に明らかにするという意味において、必要な分析的視点 を提供していると解する。 また、不誠実概念を明らかにしたDisney事件判決、及び誠実義務を忠実義務の要素であると位 置付けたStone事件判決の立場は、その後のLyondell事件におけるデラウェア州衡平法裁判所及 び最高裁の判決においても踏襲され、忠実義務の拡張という現象がM&A等の取引の領域にまで 拡大した。Lyondell事件については、デラウェア州衡平法裁判所と最高裁との審査スタンスが異 なっていたが、Brunerは衡平法裁判所の立場を支持し、誠実義務違反の行為の審査においては、 単にある行動をとるという実際の行為面のみを捉えるのではなく、取締役の真の意図(動機)を も考慮しなければならないとの主張を行った。このようなBrunerの見解は、Hillが分類した「疑 わしき動機」というカテゴリーにおける不誠実な状況に関する分析と理論的に整合するものであ る。従って、Brunerの見解は、Hillの見解をさらに深化させたものと位置付けることができ、不 誠実概念や忠実義務の拡張の議論に関してさらなる理論上の示唆を提供するものであると解する。 さらに、このようなHillやBrunerの立場の根底には、取締役と会社(及びその所有者として の株主)との信認関係(fiduciaryrelationship)に関する以下の理解があったと解する。そもそも、 アメリカ法においては、ある者がその関係の範囲内において他人の利益のために行動する関係を

信認関係と呼び''3、これは受託者(trustee)が受益者(beneficiary)のために財産を管理する信

託法(trustlaw)上の関係''4や、代理人(agent)が本人(principal)の利益を図る義務を負う代

理(agency)における関係''5等、通常、高度な義務が要求される関係を指し、会社法においては

取締役と会社との関係が信認関係であるとされる116。それゆえ、Hillが指摘したように、このよう な信認関係を基礎として導かれる取締役の義務は、究極的には、取締役が会社の利益のために行 動しなければならないことを内容とする信認義務のみであり''7、その内容は、第一義的には、取締 役がその行為を通じて会社に対して「忠実(loyalty)」及び「忠誠(fidelity)」を尽くす義務、す

なわち忠実義務(fiduciarydutyofloyalty)である''8.このような観点から、Hillは、忠実義務は、

取締役が会社の利益を犠牲にして自己の利益を図ることによって生じる利害対立を問題とし、他 方、注意義務は、取締役が会社の利益を図ることに積極的には努力しないという人間としての本 質的な傾向を問題とすると整理するが''9、そこには、信認関係の本旨に立ち返り、忠誠や忠実を尽 くしているか否かという取締役の意識又は動機を基準とした分類を行うべきという思考があった と解する120。その意味で、信認関係やそこから導かれる取締役の意識や動機を問題としたHillや -−12−

(14)

Brunerの見解は、単純にあらゆる局面において経営判断の原則の適用の可否という視点から取締 役の責任を判断する方法よりは、一定の理論的根拠に基づく解決策を提示することができると解 する。 近時、デラウェア州判例法においては、例えば、InreTheGoldmanSachsGroup,Inc.

ShareholderLitigation事件判決'2'が、報酬計画の承認という意思決定についてDisney事件判決

が示した「義務の意識的な無視」に関する基準を適用し、また、InreAlloy,Inc.Shareholder

Litigation事件判決'22が、会社の売却という取引の文脈において、基本定款による免責が認められ

ない不誠実概念について検討するなど、忠実義務の拡張及びその基礎にある誠実性基準による審 査が、デラウェア州判例法における1つの方向性として定着しつつある。そこで、今後も、この ような視点から、デラウェア州判例法の展開やそれに対する学説の評価を詳細に検討する必要が あるが、その際、Hillが示した不誠実に関する3つの行為類型や、Brunerが主張する「義務の意 識的な無視」に関する真の意図(動機)に関する分析的視点に依拠した考察を行うことが、アメ リカ会社法における取締役の信認義務法理の水準を明らかにするために重要であると解する。 沖 縄 大 学 法 経 学 部 講 師 誠実性又は誠実義務の問題を扱った主要な文献は、他の箇所に掲げたもののほか、以下の ものがある。艶e,e.g,,ChristopherM.Bruner,GoodFa虻ノI,StateofMi"αα"dtノleO砿e『 BoundariesofDirecto7〃abilityinCorporateLauノ,41WakeForestL.Rev.1131(2006), MelvinA.Eisenberg,T/leDutyofGoodF上z虻ノiinCorporateLauノ.31Del.J・Corp.L、1 (2006),AndrewS.Gold,ADecisionTノleoryA〃『oacノItotheBusinessJudgmentRule: ReflectionsonDisney,GoodFaitノI,α"dJudicialUnce花amty,66Md.L・Rev.398(2007), SeanJ.Griffith,GoodFaitノIBusinessJudgment:ATheoryofRノletoricm助叩orateLaw Jurisprudence,55DukeL.J.1(2005),DavidRosenberg,Maki昭馳nseofGoodFaitノZ加 Delauノa7e⑰叩orateFiducia剛Lauノ:A⑰"tractαγjα凡A卯macノi,29Del.J.Corp.L.491 (2004),HillaryA.Sale,Delauノa7e'sGoodF上lith,89CornellL.Rev.456(2004),Stephen M.Bainbridgeetal.,TheCo"ひe増enceofGoodFaitノZα"dOvers噌拡55UCLAL.Rev. 559(2008),HillaryA.Sale,MonitoringC上iremark'sGoodFaitノI,32Del.J.Corp.L.719 (2007),LeoE.Strine,Jr.etal..Loyaltyも助沌Demα"d:TheDefiningRoleofGoodFaitノ2m ⑰叩o、加凡Law,98Geo.L.J.,(availableathttp://ssrn.com/abstract=1349971).また、 わが国において、この問題について言及したものとして、柴田和史「経営判断の原則・研究序説」 柴田和史・野田博編著『会社法の実践的課題』(法政大学現代法研究所、2011年)57頁、片山 信弘「取締役の注意義務と司法の審査」大阪学院大学法学研究32巻2号(2006年)181頁、同「ア メリカ会社法における取締役の誠実義務」同33巻1.2号(2007年)79頁、同「デラウェア 会社法における取締役の誠実義務」同35巻2号(2009年)113頁、同「取締役の信認義務の活 ‘性化」同37巻1号(2010年)1頁、南健‘悟「リスク管理と取締役の責任一アメリカにおける AIG事件とCitigroup事件の比較一」商学討究61巻2.3号(2010年)209頁、同「企業不祥 事と取締役の民事責任(二)一法令遵守体制構築義務を中心に一」北大法学論集61巻4号(2010

*1

(15)

年)53頁等がある。 拙稿「デラウェア州会社法における取締役の誠実性概念の展開」沖縄大学法経学部紀要15号 (2011年)1頁。 本論に入る前に、「忠実義務の拡張」という用語ついて一言しておく。Ⅳにおいて詳述する ように、忠実義務の拡張という現象は、Stonev.Ritter事件(Stonev.Ritter,911A.2d362

(Del.2006).)(以下「Stone事件」という。)が誠実義務を「忠実義務の副次的な(subsidiary)

要素」又は「忠実義務に求められる本質的な(fundamental)状況」と定義した伽.at

369-370.)ことを受けて、学説上、Stone事件判決の意義や誠実義務の‘性質が"expanding

dutyofloyalty"の問題として議論されるようになった(その端緒となったのがClaireA.

Hill(以下「H肋という。)の次の論文である。ClaireA.Hilletal.,Disney,GoodFaith,

andStruc伽『αIBias,32J.Corp.L.833at855(2007).,ClaireA.Hilletal..Stonev.Ritter α"dt加戯pα"dingDutyofLoyalty,76FordhamL.Rev.1769(2007).)。そして、その後、 LyondellChemicalCo.v.Ryan事件(LyondellChemicalCo.v.Ryan,970A.2d235(Del. 2009).)(以下「Lyondell事件」という。)が、会社の売却という取引の分野において誠実‘性 基準を適用したことにより、現在、忠実義務の拡張という現象が新たな展開を迎えようとし ている。そこで、本稿では、Hillの呼称に倣って、これらの展開を「忠実義務の拡張」と呼 ぶこととする。 See,e.g.,Del.CodeAnn.tit.8,141(a)(2001). ArthurR.Pintoetal.,Understα"(伽g助叩orateLauノ:at89(2nded.2004).本書の邦訳は、 アーサー.R・ピントほか著〔米田保晴監訳〕『アメリカ会社法』(レクシスネクシスジャパン、 2010年)を参照した。 取締役会、個々の取締役、各委員会の判断につき、取締役の行為の公正が認められればそ の責任が問われることはない(カーテイス・』・ミルハウプト『米国会社法』(有斐閣、2009年) 65頁)。デラウェア州判例法において、公正基準は「完全な公正基準(entirefairnesstest)」

と呼ばれ、さらにそれは「価格の公正(fairprice)」及び「取引の公正(fairdealing)」とい

う2つに分類される(Weinbergerv.UOP,Inc.,457A.2d701at711(De1.1983).)。前者は浪 費(waste)等の限定された場合に問題となり、後者は会社として公正な意思決定をしたか否 かを問題として、当該取引につき、利害関係がなく(disinterested)、独立した(independent) 取締役によって意思決定が行われたか否かが審査される(〃.)。 カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(6)66頁。 カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(6)66頁。 See,e.g.,RobertC.Clark,助叩o7ateLauノ,at123-157(1986).,JesseH.Choperetal.,Cases a凡dM上iterialso〃⑰叩oration,at74-179(6thed.2004).。 なお、取締役が注意義務を尽くす際、「通常の慎重な者(ordinaryprudentperson)」とい う行為基準(standardofconduct)が判例法において認められ(Selheimerv.Manganese Corp.ofAmerica,224A.2d634,at640(Pa.1966).).、アメリカ法律協会の「コーポレート・ ガバナンスの原理:分析と勧告」や模範事業会社法がこれを一般化する(TheAmerican LawInstitute(ALI),PFmciplesofCorporateGove『"α"ce:A"α妙sisandRecommendα伽7ZS, 2 3

45

6

789

10 − 1 4 −

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§4.01(1994).,ModelBus.Corp.Act8.SOfaHb)(2000).)。デラウェア州判例法において は、Graham事件(Grahamv.Allis-ChalmersManufacturingCompany,188A.2d125(Del. 1963).)が「通常の‘慎重な者」に関する行為基準を採用する。 Black'sLawDictionaw,at581(9thed.2009). See,ModelBus.Corp.Act8.30(a)(2000.デラウェア州判例法においては、Guthv.Loft, Inc.事件判決(Guthv.Loft,Inc.,5A.2d503(Del.1939).)が、「会社の役員や取締役は、個 人的な利益を図るために信託的及び信認的地位を利用してはならない。」(Id.at510.)と述 べ、忠実義務の意義を明らかにする。また、一般に、忠実義務には、会社に損害を与える行 為を「慎む(refrain)」という消極的な義務が含まれると同時に、会社の利益を「積極的に

(affirmatively)」保護する義務が含まれる(CarterG.Bishop,DirectorialAbd加加〃α"。

tノleTaxonomicRoleofGoodFaithinDelauノα花の叩o『αteLaw,2007Mich・St.L.Rev.905, at924(2007).)。ある行為を‘慎む義務は、ある者に背信的(betrayal)行為をさせない義務で あり、積極的に会社の利益を保護する義務は、献身(devotion)の概念に含まれると考えら れている(〃.)。 ArthurR・Pintoetal.,supranote5at221-222. 〃・at222. カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(6)77頁。 カーテイス。J・ミルハウプト・前掲注(6)77頁。ArthurR.Pintoetal.,s叩ranote5at221.なお、 忠実義務が問題となる局面は、一般に、①取締役が会社の有する潜在的な事業機会(corporate opportunity)を侵奪する場合、②取締役と会社との利益相反取引(conflictofinterest)が 行われる場合、③役員報酬(executivecompensation)等に分類される(RobertC.Clark, supranote9at142.,StephenM.Bainbridge,助叩orateLaw(2nd&2j加刀),at151(2009)., カーテイス。J・ミルハウプト・前掲注(6)77頁)。例えば、前述したGuth事件判決は、「ある 会社が財政的に引き受けることができる事業機会があり、それが当該会社の役員や取締役に とって利用可能であるならば、そのような事業機会は、その性質上、当該会社の営業と同種・ 同様のものであり、実際上の利益が伴うものであり、会社が関心と合理的な期待を有するも のであり、その機会を捉えることによって当該会社の役員や取締役の個人的利益が会社の利 益と衝突し、役員や取締役に対して、法が彼らの利益のためにその機会を利用することを許 さないものである。」と述べ、会社の事業機会の侵奪に関する要件を明らかにする(Guthv. Loft,Inc.,supranote12at510.)。 ネグリジェンスは不法行為の一類型であり、その成立要件は、行為者がある状況の下で、① 相当の注意義務(dutyofduecare)を負いながら、②その注意義務に違反し、③それが原因 となって、④損害が生じることであると考えられている。行為者の作為・不作為、他人に対 する相当の注意義務、他人に不合理な被害の危険を生じる注意義務違反という3要素が、過 失ある行為(negligentact)を構成する。田中英夫ほか編『英米法辞典』(東京大学出版会、 1991年)580頁。 See,StephenM.Bainbridge,s叩γαnote16at96.不法行為法におけるネグリジェンス基準に よって取締役の注意義務違反の責任を審査したものとしてGraham事件(Grahamv.Allis-11 12

34561111

17 18

(17)

ChalmersManufacturingCompany,supranote10.)がある。 See,ALI,PrinciplesofCorporateCover・"α"ce:Analysisα"dRecommenda伽"s.4.01(c) (1994).,ModelBus.Corp.Act8.30(a)-(b)(2000).なお、柴田・前掲注(1)57頁も参照。 CharlesD.Lewis,TheBusinessJudgmentRuleandCorporateDirecmrs〃abilityfor Misj刀α"αgement,22BaylorL.Rev.157,at162(1970).,WilHamT.Allenetal..Realigning theStα"dardofRevieuノofDirectorDueCar.eWitノIDelawarePolicy:ACritiqueofVan GorkomanditsProge〃αsaStα"血rdofRevie即Problem,96Nw.U.L.Rev.449,at450 (2002).,CarterG・Bishop,s叩7,αnote12at916. Aronsonv.Lewis,473A.2d805(Del.1984).事実の概要は以下の通りである。駐車場設備の リース業等を行っていたMeyersParkingSystem社(以下「Meyers社」という。)の取締役 であったFink氏(Meyers社の47%の株式を所有していた。)は、取締役退任後、Meyers社 から多額の報酬を受ける雇用契約を締結し、無利息の融資も受けていた。Meyers社の株主 は、これらの契約により過大な金銭がFink氏に支払われたにも関わらずFink氏は高齢であり 雇用契約に基づくサービスがほとんど提供されなかったことを理由に、このような金銭の支 払いは会社資産の浪費(wasteofcorporateassets)にあたると主張し、事前請求'(pre-suit demand)を行うことなく株主代表訴訟を提起した。これに対して、Meyers社及びその取締 役らが事前請求が行われていないことを理由に訴え却下の申立て(motiontodismiss)を行っ た。本件の解説として、伊勢田道仁「代表訴訟提起の事前請求が免除される場合と経営判断 原則」商事法務1211号(1990年)27頁がある。なお、本件については拙稿・前掲注(2)3頁も参照。 Aronsonv・Lewis,s叩7.anote21at812. Itf Shlenskyv.Wrigley,237N.E.2d776at780(111.App.Ct.1968). ArthurR・Pintoetal.,supranote5at211. '私 カーテイス.J-ミルハウプト・前掲注(667頁。 Smithv.VanGorkom,488A.2d858(Del.1985).事実の概要は以下の通りである。Trans Union社の会長兼最高執行役員であるVanGorkom氏が、企業買収の専門家JayA. Pritzker氏に対して同社を売却しようと企図し、取締役会の決議を得ようとしたところ、出 席取締役らが1株あたりの売却価格の算定にあたり会社の本来的な価値や緊急の事情等に関 する十分な』情報を得ないまま約2時間の討議で同社の売却を承認した。これに対して、Trans Union社の株主が取締役らに対して損害賠償の訴えを提起した。本件の解説として、神崎克 郎「会社の売却と取締役の注意義務」商事法務1164号(1988年)36頁がある。なお、本件に ついては拙稿・前掲注(2)3-4頁も参照。 SmithV・VanGorkom,supranote28at872-874. カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(6)67頁。 裁判所は、取締役の決定の内容を検討することには消極的であるといわれる(ArthurR. Pintoetal.,s叩ranote5at211.)。 See,e.g.,DanielR.Fischel,TheBusinessJudgmentRuleα"dthe1ソ吃insUnionCase,40 19 20 21

23456782222222

29 30 31 32 − 1 6 −

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Bus.Law.1437(1985).,BaylessManning,Reflec加ソzsα"dPracticalTipsonL娩加Tノze Boa池roomafterVt"1Gorkom,41Bus.Law.1(1985).,LeoHerzel&LeoKatz,SmitノZU. V上mGorkom:TheBusinessofJut増加gBusinessJudgment,41Bus.Law.1187(1986). Del.CodeAnn.tit、8,102(b)(7)(2001). LisaM.Fairfax,Sparet/leRo必動〕o〃胡eDirector?Re血alizingDirectors'FiduciaryDuty tノ"℃ugノILegal〃αbility,42Hous.L.Rev.393at405(2005). ArthurR.Pintoetal.,supranote5at221. カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(6)92頁。TelxonCorp.,v.Meyerson,802A.2d257 (Del.2002). カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(6)92頁。 カーテイス・』・ミルハウプト・前掲注(6)92頁。 デラウェア州会社法145条は、誠実に行動している取締役のみが法律上の損害賠償責任を免除 される資格を有する旨を規定する(Del.CodeAnn.tit.8,145(2001).)。また、同141条(e)は、 会社の帳簿記録、及び役員やアドバイザーからの報告を誠実に信頼した取締役だけが、株主 からの訴訟に対して完全に保護される旨を規定する(Del.CodeAnn.tit.8,141(e)(2001).)。 さらに、同144条(aX1)及び(2)は、利害関係のある当事者間の取引について、当該取引が利害関 係のない取締役や株主によって誠実に承認された場合には、法の審査を受けることはない旨 を規定する①e1.CodeAnn.tit.8,144(aXl)(2)(2001).)。 柴田・前掲注(1)65頁。 Aronsonv.Lewis,supranote21at812. SmithV・VanGorkom,supranote28. GrobowV.Perot,539A、2dl80(Del.1988). Citronv.FairchildCamera&InstrumentCorp.,569A.2d53(Del.1989). Cede&Co,v.Technicolor,Inc.,634A.2d345(Del、1993). Cinerama,Inc.v.Technicolor,Inc.,663A、2d1156(De1.1994). EmeraldPartnersv.Berlin,787A.2d85(Del.2001). InreCaremarkInternationalInc.DerivativeLitigation,698A.2d959(Del.Ch.1996).事 実の概要は以下の通りである。ヘルス・ケア産業に従事するCaremark社が、医療提供者と の間で様々な契約を締結し、医療提供者に対して紹介謝礼禁止法(Anti-ReferralPayments Law)に違反する謝礼を支払っていたが、これについて起訴された結果、総額25億ドルの賠 償金を支払ったことについて、Caremark社の取締役らに対して株主代表訴訟が提起され、 和解がなされた。本件の解説として、伊勢田道仁「従業員の違法行為と取締役の監視義務」 商事法務1526号(1999年)44頁がある。なお、本件については、拙稿・前掲注(2)7頁も参照。 InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,906A.2d27(Del.2006).事実の概 要は以下の通りである。1995年10月、WaltDisneyCompany(以下「Disney社」という。) は、MichaelS.Ovitz氏(以下「Ovitz氏」という。)との間で、Ovitz氏を社長として5年間 雇用する契約を締結した。同契約には、契約の終了とOvitz氏への退職金の支払いについて、 Ovitz氏に「十分な理由(goodcause)」がないにも関わらず同契約が終了された場合(「十分 33 34 35 36 37 38 39

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な理由のない解任(non-faulttermination)J)には、5年の満期である2009年9月末日まで の未払給与に加え、残存1年度あたり7,500万ドルの追加の金銭及び300万株のストック・オ プションを付与するという内容が含まれていた。同契約に定める「十分な理由」とは、○vitz 氏がグロス・ネグリジェンスに基づく業務執行を行ったこと、不正行為を行ったこと、又は Ovitz氏が自発的に退職したことであった。Ovitz氏は、Disney社に雇用された数ヶ月後に

は他の会社を探し始め、その後会社を退職したい旨をDisney社に申し出て、自身の退職を

「十分な理由のない解任」として扱うよう依頼した。Disney社はこれを承認し、同社の取締

役会は「十分な理由のない解任」の場合に該当する退職金等の支払いを承認した。そこで、 Disney社の株主は、「十分な理由のない解任」を承認した同社の取締役に対する信認義務違 反に基づく責任を追及する株主代表訴訟を提起した。本件の解説として、釜田薫子「取締役 の経営判断と誠実義務」商事法務1787号(2006年)45頁がある。なお、本件については、拙稿・ 前掲注(2)7-8頁も参照。 InreCaremarkInternationalInc・DerivativeLitigation,supranote48at970. Id.at971. InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,supranote49at64-66. InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,907A.2d693(Del.Ch.2005). InreTheWaltDisneyCompanyDerivativeLitigation,supranote49at67. ClaireA.Hilletal.,Stonev.Ritte『α"dt加恥pα"dingDutyofLoyalty,supranote3at l769.なお、この問題は、伝統的な注意義務及び忠実義務のいずれにも含めることができない 事案を解決するための基準であるという誠実性基準の性質からすれば当然に生じうる問題 であったといえよう。 Cede&Co.v.Technicolor,Inc.,supranote45.その他、Cinerama事件(Cinerama,Inc.v. Technicolor,Inc.,s叩ranote46.)、Malonev.Brincat事件(Malonev.Brincat,722A.2d5 ①e1.1998).)、EmeraldPartners事件(EmeraldPartnersv.Berlin,supranote47.),Malpiedev. Townson事件(Malpiedev.Townson,780A.2d1075(Del.2001).)もCede事件判決と同様、 誠実義務を独立した1つの義務であることを認めていた。 InreCaremarkInternationalInc・DerivativeLitigation,s叩『αnote48. Stonev.Ritter,s叩mnote3.事実の概要は以下の通りである。2004年、銀行業を営む AmSouthBancorporation(以下「AmSouth社」という。)とその100%子会社である AmSouthBankは、連邦銀行機密法(thefederalBankSecrecyAct(以下「BSA」という。) 及び資金洗浄防止法(Anti-Money-LaunderingAct(以下「AML」という。)に違反する投 資取引を行ったことにより、政府や行政機関からの調査を受け、4,000万ドルの罰金及び1,000 万ドルの反則金を支払った。そこで、AmSouth社の株主は、同社の取締役に対して、BSA 及びAML違反を防止するための十分な内部統制システムの構築を怠ったことが信認義務に 違反するとして、株主代表訴訟を提起した。本件の解説として、近藤光男「従業員に対する 監視と誠実義務」商事法務1807号(2007年)35頁、拙稿「取締役の誠実性と内部統制システム」 法律論叢80巻4.5号(2008年)213頁がある。なお、本件については、拙稿・前掲注(2)8-9 頁も参照。

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Stonev.Ritter,supranote3.at370. カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(6)95頁。 カーテイス.J・ミルハウプト・前掲注(6)95頁。なお、デラウェア州判例法において、取締役には、 会社の業務に関する事柄を詳細に把握することまでは期待されていないが(Rabkinv.Philip A.HuntChem.Corp.,1987WL28436at*3(Del.Ch.1987).)、会社の活動について‘情報を得 て、一般的なモニタリングの権限を行使し、取締役会に定期的に出席し、財務諸表を定期的 にレビューし、会社の業務がどのように行われているかに関する基本的な理解は求められて おり、これが取締役の監督義務の一般的な内容である(StephenM.Bainbridge,s叩ranote 16at163.)。しかし、デラウェア州判例法においては、このような一般的な取締役の監督義務 を超えて、取締役会が従業員等の行為を積極的にモニタリングする義務があるか否かについ ては必ずしも明らかではなかった(Id.)。この問題について、内部統制システムという概念を 用いて1つの結論を出したのがCaremark事件判決である。 カーテイス.J・ミルハウプト・前掲油6)95頁。 Stonev.Ritter,supranote3at367-370. Id.at369-370. なお、Caremark事件判決に対する評価は、既にデラウェア州衡平法裁判所がGuttmanv. Huang事件(Guttmanv.Huang,823A.2d492(Del.Ch.2003).)(以下「Guttman事件」と いう。)において行っていた。すなわち、Guttman事件判決は、「Caremark事件における判 断は、会社が法令を遵守しているか否かをモニタリングする際の取締役の注意を問題とした が、そこでの判断は、取締役が誠実に義務を尽くさなかったことによる忠実義務違反の立証 が求められる監督義務僻怠の責任の審査基準を述べたものである。…すなわち、取締役は、 その行動が会社の最善の利益に合致すると誠実に信じていない限り、会社に対して忠実であ ることはない。そのような理由から、信認義務の『3つの組』を提案したCede事件判決にお いても、誠実義務は忠実義務と定義されることになる。」(Id.at506.)と述べ、監督義務履行 の際の取締役の誠実義務は忠実義務に含まれることを明らかにした。Stone事件判決は、こ のGuttman事件判決を引用して誠実義務の性質を明らかにしたものである(Stonev.Ritter, s叩ranote3at369-370.)。 ClaireA・Hilletal.,Dis凡鋤GoodF上lith,AndSか邸c加ralBias,supranote3at855. J私 〃. 、 、この点、伝統的な忠実義務が問題となるケースには、市場よりも低い価格で会社資産を譲 り受けるとか、会社の機会を奪取するといった、本来会社に所属すべき利益を取締役や役員 が取得することが含まれる(ClaireA.Hilletal.,Stonev.Ritteγα"dt加助pα"α加gD泌妙of Loyalty,supranote3at1779.)。会社においては、その資産の売却から得られる全ての利益 と同じ程度に取締役や役員の時間や注意を利用する権利がある(Id.at1779-1780.)。受認者 (fiduciary)であることの意味は、その関係の範囲内において他人の利益のために行動するこ とである(〃.)。忠実義務違反や注意義務違反の問題における行為は、取締役や役員が本人 59 60 61

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参照

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