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教職志望者における労働条件の相対的軽視―就業動機と性差にも着目して―

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資 料

教職志望者における労働条件の相対的軽視

―就業動機と性差にも着目して―

若 松 養 亮

・矢 田 陽 美

**

問題と目的

ワーク・ライフ・バランスや働き方改革が叫ば れる昨今,教師の労働環境が問題となっている (江澤,2020)。部活動や保護者対応,事務作業な どで,残業の多さも過労死ラインと報じられてい る(朝日新聞,2019a, 2019b)。教員採用試験の 受験者が減っている問題(朝日新聞,2019a)も 指摘され,質の高い教師を採用し,長く仕事を続 けてもらうためにも労働条件の改善は喫緊の問題 と言える。小橋(2013)も,仕事の多さや休日の 負担といった教師の職場環境と,「情緒的消耗感」 や「脱人格化」といったバーンアウトとの相関を 報告している。米国でもGrant, Jeon, & Buettner (2019)が情緒面で消耗した教師は離職の意思を 示し,労働条件の悪さを報告した教師は職場を去 る傾向にあると報告している。 他方,教職を志望する学生はこうした労働条件 面を考慮しようとしているであろうか。学生たち は,得てして教職の仕事内容から得られるやり がいに強く期待して志望している。例えば眞原 (2001)は,「わかった・できた」という相手の喜 びが直に伝わってきて嬉しくなる,内面に深くか かわることに価値を見出すといった姿を,坂井 (2005)は実習後に教職志望度を高めた主な理由 として「子どもとの関わりの中で楽しさややりが いを感じた」「教育実習に充実感・満足感を得た」 ことを挙げている。しかしそのように教育への興 味や使命感を強くもつあまりに,労働条件を十分 に検討・考慮できていない可能性がある。教師に なった人が時間や手間を惜しまずに働いてしまう 背景として,本田(2008)は教職も含めたヒュー マンサービス職にある「奉仕性」という要素が 「自己実現系ワーカホリック」(阿部,2006)に陥 らせると指摘した。すなわち顧客(教職では子ど もたち)への最大限の奉仕という気高い動機自体 が働きすぎの要因となるということである。現職 の教員である江澤(2020)も「私たち教師は『子 どものため』であれば,なんでもしてやりたいと 思ってしまうのです」と述べている。教職志望者 においても,教育実習等を契機にこのような心性 が高まり,志望意識を支えているとすれば,労働 条件を度外視した職業選択に至る可能性は大き い。実際,Zhang, Whitford, Hsu, & Wang(2020) は,大学で特別支援教育を専攻する意思を目的変 数として回帰分析を行った結果,性別,働いてみ た経験,トレーニング経験,価値・コミットメン ト,ソーシャルサポートは有意な説明変数であっ たが,ハード要因(給与,労働量,安定性,雇用 機会の認知)は関連が有意ではなかった。 労働条件は,Super(1957)の職業価値の分 類で言う「外来的」(extrinsic)なものと言える。 これは仕事の内容と関わる「内在的」(intrinsic) なものと二分類を構成し,同様の構成が,日本 でも若林・中村・斎藤(1986)の因子分析にお いても見られている。内在的な価値に関しては, Super と 同 時 期 に Rosenberg(1957) が people-oriented valueとself-expression valueの2種類を 提唱した。日本でも尾高(1953)がそれとほぼ対 応するものとして「役割の実現」,「個性の発揮」 を,外来的な価値に対応する「生計の維持」と併 せて,「職業における3つの分」(「分」とは「側面」 の意)として挙げている1 この枠組みで言えば,教職を志望する学生は, *  所属……滋賀大学 ** 所属……(株)キャリアパワー (2020年6月3日受稿,2021年3月2日受理) 連絡先: 若松養亮 520–0862 大津平津二丁目5–1 滋賀大学教育学部 [email protected] 原 著

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上述のように教職の内在的な価値を重視している と考えられる。すなわち子どもの成長やその地域 の教育への貢献といった「役割の実現」,子ども が好き,教えることで自分らしさを活かそうと いった「個性の発揮」である。そこで本研究では 尾高の枠組みを用いて,労働条件と「役割の実現」 「個性の発揮」とを対比させた場合,重点をどの ように置いたキャリア選択を行うかについて,教 職を進路の選択肢として想定している学生(以 下,教職想定者)をそうでない学生(非想定者) と比較する。非想定者たちが想定する教職以外の 職業はさまざまであろうが,業種は明瞭でも職種 が必ずしも限定できないために内在的な価値を重 視しにくく,また先述の「奉仕性」の点で,教職 想定者よりも労働条件を重視する可能性が高いと 予想できる。この予想を検証することを本研究の 主たる目的とする。 ただ,労働条件よりも「役割の実現」「個性の 発揮」を重視する人は,そもそも働くこと自体に 対して内発的な動機を強くもつ人かもしれない。 教職の非想定者にもそうした人は少なからず存在 するであろう。そこで上述の研究目的に先立ち, まず労働条件の重視・非重視が内発的な就業動機 の高低と関連していることを示し,そのうえでそ れを統制して,教職の想定者と非想定者の比較を 行う。内発的な就業動機を統制しても,教職の想 定者と非想定者のあいだで労働条件の重視に関し て差が生じるならば,教職に固有な仕事内容に, 労働条件を重視しないことと関わる特有の要素が あることになる。 上述の分析を行うにあたっては,性差にも着目 する。そもそもキャリア選択には男女差が見られ る。例えば男性は正規職・フルタイムで定年まで 働ける職業を求める(菰田・伊藤,2003)が,女 性が就職を考える場合には,どのような働き方を していくかをまずは考える(谷田川,2016)。そ れは現状として,後に子育てや家事を男性より多 く担う(内閣府,2019)ことや,配偶者の転勤に 伴って転居や生活スタイルの変更を迫られる(藤 野,2017)といったことからである。そうした現 状を反映してか,将来予想する生き方にも男性と 差が生じる(Adachi, 2016)。また民間企業への 就職の場合,総合職・一般職のコース選択や,出 産に伴う働き方が複数あるからでもある(武知, 2008)。したがって女性と男性では「どのように 働くか」への関心に違いがあると考えられる。以 上のことから,上述の2つの分析には性別も要因 として加える。 調査の対象は,教職を想定する学生が多く在籍 する教員養成学部生とした。それは,教員免許取 得が卒業要件にあり,教育実習も必修であること から,教職の非想定者も「教職は選ばない」と意 識的に判断するプロセスを経ているためである。 その意味で,本研究が想定する母集団も教職を想 定する大学生全体ではなく,あくまで教員養成学 部である。したがって「教師という進路の選択肢 を検討していない」という非想定者はいないと言 える。学年は主免の教育実習を終えた3年次生と したが,その理由は選択に必要な情報を入手し, 最終的な意思決定が間近な人を対象にするためで ある。 本研究の第1の意義は,教職を目指す学生が労 働条件を十分に検討・考慮しないことを示すこと で,キャリア支援の留意点を提起するという実践 的意義である。また大学・学部選択時点から職業 を見通すことが期待される教員養成学部生を対象 とすることで,入学前の進路指導にも示唆をもた らす。ただ教師の労働問題は,仕事量の多さや教 員数の不十分さ,部活動や地域行事への参加な ど,個人の意識よりも職場の構造的な課題(善 明,2005; 水元・粉川・紅林,2020)と言えるで あろう。その改善・緩和を目的とした働き方改革 が現在進められつつあるが,教員数の増加や部活 動の外部指導員の雇用のようにコストや質の維持 の問題,セキュリティなどの制約から,一朝一夕 の解決・改善は難しいと思われる。とすれば,教 員やその志願者が個人レベルでもその課題にどう 対応するかを意識する必要がある。本研究の文脈 で言えば,入職前から労働条件にも留意して職業 を考えなければならない。もし教員個々人が労働 条件に頓着せず現状を容認するなら,過酷な労働 条件が職場環境のなかで温存され,多忙さと密接 な学校組織文化(水元ら,2020)も見直されな い方向に作用することも危惧される(Shimahara, 1997)。日本労働組合総連合会(2015)も児童・ 生徒の年代からの労働教育の必要性を述べてい る。またキャリア教育の文脈では,「勤労観・職 業観等の価値観」「キャリアプランニング能力」 と関わる。 本研究の第2の意義は,キャリア意思決定過程 における内在的・外来的価値の関わり方を明らか にするという学術的なものである。教職,教員養 成学部という特定の職業や学部のデータではある が,内発的な就業動機をもつこと,および仕事内 容の内在的価値に強く惹かれることが外来的価値 の軽視に結びつくことはこれまで明示的に示され

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ておらず,キャリア意思決定過程の解明にとって 新たな知見となる。

方 法

1. 調査の概要および倫理的配慮 国立大学の教員養成学部で2017年11月に質問 紙調査を実施した。この大学の立地は人口減少が 比較的緩やかで,教員採用数も比較的多い県であ り,卒業生の65%前後が教員(臨時講師を含む) になっている。 実施に際しては,第 2 著者(当時学部 4 年次 生)が3年次生配当の教職課程の必修授業の教室 を訪問,説明と配付・回収を行った。3年次生の 出席者207名に配付し,193名から回収した。配 付に際しては,協力の有無は成績に関係しないこ と,無記名であり個人が特定されないこと,回答 したくなければ中断や部分的無答も許容すること を説明し,記入済みの用紙を提出した人を回答に 同意したと見なした。調査用紙全体に無答であっ た1名を除き,192名を有効回答と見なして分析 対象とした。うち女性は115名(59.9%)であっ た。回答者たちは調査時期までに主免の教育実習 (4週間)を終えている。 2. 調査に用いた尺度 (1)職業選択条件尺度 尾高(1953)の「職業における3つの分」のう ち,内在的価値に対応する「個性の発揮」と「役 割の実現」に相当する内容について各3項目と, 労働条件の3項目を対比する一対比較の形式で18 項目を作成して,選択条件間の相対的な重視を尋 ねた。この形式で問うたのは,実際の職業選択で は条件そのものの重要性よりも,絞り込みの必要 性から条件間の相対的な軽重が問題となるからで ある。対比される「2 つの分」は,菰田(2007) の職業価値観尺度のなかで,「個性の発揮」は「自 己価値」因子を,「役割の実現」は「社会的評価」 因子を参考に作成した(項目はTable 1の表ひょうそく側を 参照)。 これらと組み合わせた労働条件の3項目は「w1. 転居を伴う転勤をしなくてよい」(以下「転勤」), 「w2. 働きに見合った給与が得られる」(以下「給 与」),「w3. プライベートな時間を確保できる」 (以下「時間」)であった。これらは,労働政策研 究・研修機構(2007)の調査で「離職者が求職の 際に重視した条件」の上位から「個性の発揮」や 「役割の実現」に含まれる項目(例えば「仕事の 内容」)や,就職前には把握しにくい項目(例え ば「職場の人間関係」),具体的な就職先の選択に は用いても職業を選択する段階にはあてはまりに くい項目(例えば「経営理念・社風」「将来性・ 安定性」など)を除いて設定したものである。ま た例えば「勤務地」のように,質問項目の表記を 体言止めにしなかった理由は,回答者の理解しや すさを考慮したためである2 設問では「あなたは職業を選ぶにあたって,次 のAとBのうちどちらの条件を優先しますか。次 のそれぞれの組み合わせで1~5から選んでくだ さい。」と教示して,A側またはB側に交互に労 働条件を配し,もう一方に個性の発揮,または役 割の実現の項目を配した。ただし決めた進路に後 Table 1 職業選択条件尺度における評定平均と SD 労働条件 w1. 転居を伴う転勤を しなくてよい w2. 働きに見合った 給与が得られる w3. プライベートな 時間が確保できる 行で平均 個性の発揮 p1. 自分の個性や長所を活かして働ける (1.18)2.59 (1.17)2.81 (1.21)2.86 2.75 p2. 仕事によって自分の成長が感じられる (1.28)2.61 (1.15)3.24 (1.20)3.16 3.00 p3. やりがいのある仕事ができる (1.26)2.55 (1.21)3.05 (1.22)2.87 2.82 役割の実現 r1. 相手に喜んでもらえる仕事ができる (1.23)2.79 (1.17)3.25 (1.21)3.17 3.07 r2. 人の役にたつ仕事ができる (1.21)2.64 (1.33)2.96 (1.22)3.08 2.89 r3. 他人から尊敬される仕事ができる (1.26)2.76 (1.09)3.58 (1.16)3.30 3.21 列で平均 2.66 3.15 3.07 SDをカッコ内に示した。 評定平均値は数値が大きいほど労働条件(表頭)を優先することを示す。

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付けで整合させて評定されることを避け,あらた めて自身の職業選択の条件を見つめ直してもら うために,「将来就こうとしている職業がある場 合は,『その職業を選べなくなってしまい,新た に自分が就く職業について考える』と仮定して, 今,思い描いている職業にとらわれずに一から考 える場合を想定して回答してください」と併せて 教示した。回答の選択肢は「1. Aの条件を優先す る」「2. どちらかといえばA」「3. どちらともいえ ない」「4. どちらかといえばB」「5. Bの条件を優 先する」であった。 (2)就業動機尺度 内発的動機だけでなく,自律的・他律的動機づ けを含むDeci & Ryan(1985)の枠組みでつくら れた永作・新井(2003)の自律的高校進学動機尺 度を参考に12項目を作成した(項目はTable 3を 参照)。「あなたが大学(院)卒業後に働くことに (働くとしたら),次のそれぞれの理由がどのくら いあてはまりますか」と教示し,「5. あてはまる」 ~「1. あてはまらない」までの5件法で尋ねた。 (3)進路の選択肢としての教職の想定 「あなたが大学卒業後に希望する進路は,今の ところ,以下のうちどれですか。可能性があるも のにいくつでも○をつけてください」と教示し, 「ア. 学校教員(幼稚園・保育士を含む)」に○を つけた人を教職想定者,そうでない人を非想定者 とした。教職想定者は152名(79.2%)であった。 この他には「イ. (教員以外の)公務員」,「ウ. 大 学院等への進学」,「エ. 企業への就職」,「オ. ど こにも就職・進学しない」,「カ. その他」を提示 した。

結 果

1. 職業選択条件尺度の分布と因子構造 分析にあたって,すべての項目で労働条件側を 優先するほど評定値が高くなる方向に揃えた。そ のうえでそれぞれの組み合わせにおける評定平均 と標準偏差をTable 1に示した。性差はすべて有 意ではなかったことから,ここでは全員を対象と した数値を示した。 評定の中間値である3.0を基準に見ると,労働 条件の項目(列で平均)ではw1(転勤)が重視 される程度が2.66と最も低い。他方,w2(給与) が相対的には最も高いが,3.15とそれほど3.0を 大きく超えているわけではない。対比された「個 性の発揮」p1~p3,「役割の実現」r1~r3(行で 平均)を見ると,最も低い(重視されている)の は個性の発揮のp1(個性・長所を活かす:2.75) であり,最も高い(軽視されている)のは役割の 実現のr3(他人から尊敬:3.21)であった。 次に全18項目に対して最尤法による因子分析 を行った。固有値1.0を基準に得られた解にプロ マックス回転を施した。いずれの因子にも高く 負荷しなかった項目2と4を除外して再度分析を 行った結果をTable 2に示した。因子パタンは対 比された労働条件ごとにまとまっていることか ら,各労働条件をそのまま因子名に冠した。内的 整合性を示すクロンバックのα係数は.921~.871 と十分に高かった。因子間相関は.567~.666と中 程度であるが,労働条件ごとに区別して回答され たことが見て取れる結果であり,このことから因 子的妥当性のある尺度だと言える。なお因子得 点に対して性差の比較(t検定)を行った結果は, いずれも有意ではなかった。 2. 内発的就業動機の尺度構成とその高低 2 群 による労働条件重視の比較 教職想定者と非想定者の比較に先立って,労働 条件の相対的な軽視が内発的な就業動機にも依る ものであるかを検討する。なお労働条件の相対的 軽視の指標は,因子得点ではなく評定平均を用い た。その理由は単に差が見られるかだけでなく, 評定平均値が中間値の 3.0(「どちらともいえな い」)を有意に下回るかも加味して考察するため である。 比較する群分けのために就業動機尺度に対して 最尤法による因子分析を行い,固有値1.0を基準 に得られた3因子解にプロマックス回転を施した (Table 3)。因子Iは,働くことそのものに魅力を 感じている項目が高く負荷していることから「内 的動機づけ」因子,因子IIは働くことに周囲の目 や圧力を感じている項目が高く負荷していること から「他律的動機づけ」因子,因子IIIはIほどは 働くことそのものに魅力を感じてはいないが,II のように外的な圧力からではなく,働くことの必 要性は感じている項目が,中程度とは言え負荷し ていることから「自律的動機づけ」因子と命名し た。因子IとII・IIIがそれぞれ「それ自体が目的 か手段か」の対比となっており,IIとIIIは手段 のなかでも「他律(非自己決定的)か自律(自己 決定的)か」の対比となっている構図はRyan & Deci(2000)の動機づけのモデルに沿ったもの であり,因子間相関も最も他律的であるIIと最も 自律的であるIが負の相関であること,IIIとの相 関が同じ「手段」サイドにあるIIの方が「目的」

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サイドにあるIより大きな正の相関であることか ら,この尺度の因子的妥当性は担保されていると 見ることができる。これ以降の分析では,因子I の因子得点を内発的な就業動機の指標として使用 する。 因子 I の因子得点をもとにできるだけ等しい 人数になるように2群に分けて,「内発」群およ び「非内発」群とした。性別の要因が交絡しな いよう,併せて2要因の分散分析を行った結果を Table 4に示す3。なお交互作用はいずれにおいて も有意でなかったことから表からは省略した。内 発的就業動機の主効果はいずれの労働条件におい ても有意であり,各労働条件を相対的に重視する 程度は内発群が非内発群より弱いことがわかっ た。効果量も「転勤」は中程度であるが,「給与」 「時間」は大きかった。さらに各群の平均値に1 サンプルのt検定を施したところ,内発群では男 性の「給与」を除いて 3.0 より有意に低いこと, 非内発群では「給与」「時間」において男性・女 性ともに3.0より有意に高いことがわかった。な お性別の主効果はいずれも有意ではなかった。 Table 2 職業選択条件尺度の因子パタンと各項目の評定平均ならびに標準偏差 I II III h2 Mean(SD) I. 転居を伴う転勤がないことの重視(α=.921) 18. 個性や長所を活かすvs要転居の転勤なし .869 .043 -.067 .737 2.59(1.18) 6. やりがいのある仕事vs要転居の転勤なし .855 .007 -.025 .715 2.55(1.26) 9. 他人から尊敬vs要転居の転勤なし .817 -.257 .250 .687 2.76(1.26) 15. 人の役にたつ仕事vs要転居の転勤なし .798 .294 -.201 .788 2.64(1.21) 3. 自分の成長vs要転居の転勤なし .688 -.176 .277 .585 2.61(1.28) 12. 喜んでもらえる仕事vs要転居の転勤なし .643 .313 -.080 .670 2.79(1.23) II. 働きに見合った給与の重視(α=.883) 8. 喜んでもらえる仕事vs働きに見合った給与 -.073 .825 .055 .673 3.25(1.17) 17. やりがいのある仕事vs働きに見合った給与 -.086 .820 .099 .701 3.05(1.21) 5. 人の役にたつ仕事vs働きに見合った給与 .091 .646 .102 .606 2.96(1.33) 11. 個性や長所を活かすvs働きに見合った給与 .180 .581 .012 .508 2.81(1.17) 14. 自分の成長vs働きに見合った給与 -.031 .432 .430 .589 3.24(1.15) III. プライベートな時間の重視(α=.871) 7. 自分の成長vsプライベートな時間 .052 -.044 .796 .635 3.16(1.20) 16. 他人から尊敬vsプライベートな時間 .068 .070 .672 .581 3.30(1.16) 1. 喜んでもらえる仕事vsプライベートな時間 -.084 .261 .539 .475 3.17(1.21) 10. 人の役にたつ仕事vsプライベートな時間 .006 .330 .527 .624 3.08(1.22) 13. やりがいのある仕事vsプライベートな時間 .116 .342 .398 .572 2.87(1.22) 因子間相関 III .607 .567.666 剰余 項目 2. 他人から尊敬vs働きに見合った給与 3.58(1.09) 4. 個性や長所を活かすvsプライベートな時間 2.86(1.21) Table 3 就業動機尺度の因子パタンと各項目の評定平均ならびに標準偏差 I II III h2 Mean (SD) I. 内的動機づけ(α=.816) 7. 働くことが楽しそうだから働く .845 .089 -.046 .676 3.52 (1.03) 3. 働くことが好きだから働く .823 .076 -.127 .629 3.23 (1.07) 11. 働くことに生きがいを感じるから働く .782 -.018 .140 .677 3.63 (1.03) 9. 自分が気に入った進路を見つけたから働く .430 -.171 .253 .322 3.71 (1.01) II. 他律的動機づけ(α=.781) 8. 働かないと周りから変な目で見られるから働く .084 .901 -.064 .754 3.18 (1.16) 6. 働いていないと恥ずかしいから働く .093 .697 .165 .575 3.42 (1.18) 4. 親など周りの人が働けと言うから働く -.036 .644 -.148 .389 2.61 (1.15) 2. 働かないと悪い気がするから働く -.051 .488 .176 .334 3.31 (1.21) III. 自律的動機づけ(α=.575) 1. 働くことは大切なことだと思うから働く .142 -.022 .598 .403 4.25 (0.87) 10. 働かないと自分が困るから働く -.111 .157 .594 .432 4.51 (0.70) 5. 働くことは自分にとって必要だと思うから働く .227 -.107 .478 .310 4.37 (0.74) 12. 大学(院)を出れば働くのが当然だから働く -.220 .259 .402 .334 3.66 (1.16) 因子間相関 III -.204 .188.320

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3. 内発的就業動機を統制した分析 ここでは,前節で関連があることが明らかに なった内発的就業動機を統制するために共変量と して投入し,教職想定・非想定,および性別を独 立変数,労働条件尺度の因子ごとの評定平均を従 属変数とした共分散分析を行った。それに先だっ て行った平行性の検定ではいずれの独立変数も共 変量との交互作用は有意でなく,また回帰の有意 性の検定では,先のTable 4にも示されたように, 内発的就業動機の主効果はすべて有意となったこ とから,共分散分析の前提が満たされることが確 認された。共分散分析の結果はTable 5に示した (交互作用はいずれも有意でなかったため略)。 「給与」「時間」においては教職の想定の主効果, 性別の主効果がいずれも有意となった。効果量は 「時間」における教職想定の効果のみ中程度で,他 は小さいものであった。差の方向を推定周辺平均 から見ると,労働条件を相対的に重視する程度は 教職想定者が非想定者より弱く,また男性は女性 より強かった。加えて,推定周辺平均では示され ない,各群の評定平均値を見るために,Figure 1 には内発・非内発×性別×教職の想定の8群にお ける,各労働条件を相対的に重視する程度の平均 を示した。群の人数や標準偏差も加味して値の高 低を検討するために1サンプルのt検定を行い,3.0 より有意に高いと判定されたセルには下線を,有 意に低いと判定されたセルには四角枠を付けた。 これによると,「給与」「時間」を相対的に重視す る程度は教職想定者が非想定者より弱く,内発群 の教職想定者は4セル中3セルにおいて3.0より有 意に平均値が低かった。ただし非内発群の人たち が労働条件を相対的に重視する程度は,教職想定 者が確かに非想定者より弱いものの,想定者にお いても3.0より有意に高い平均を示したセルが少な からず見られた。

考 察

1. 労働条件重視の測定について 職業選択条件尺度において,仕事の内容と関わ る内在的な「個性の発揮」と「役割の実現」に相 当する内容を外来的な労働条件と対比した結果, 労働条件ごとに因子が分かれた。これはともに内 在的な価値である「個性の発揮」と「役割の実現」 の相違が,外来的な価値と対比すると小さいと受 け取られるためであろう。尾高(1953)も「個性 を発揮してこそ役割の実現は可能なのであり,ま た役割を実現し得てこそ個性の発揮は意味あるも のとなる」と述べているように,両者に重なる部 分も想定される。浦上(2015)の尺度では,両者 は0.4台の相関があると報告されており,この両 者の相違よりも内在的な価値か外来的な価値かと Table 4 内発的就業動機×性別で労働条件重視の評定平均に対して行った 2 要因分散分析 男性 女性 主効果 内発 非内発 内発 非内発 内発 性別 〈42〉 〈32〉 〈53〉 〈62〉 1. 転居を伴う転勤がないことの重視 2.33 3.07 2.32 2.99 F(1, 185)=22.19*** F(1, 185)=0.07 (1.02) (1.04) (0.89) (1.03) ηp2=.109 [.038, .195] ηp2=.000 [.000, .023] 2. 働きに見合った給与の重視 2.75 3.63 2.59 3.36 F(1, 185)=36.36*** F(1, 185)=2.39 (1.06) (0.93) (0.83) (0.88) ηp2=.164 [.077, .257] ηp2=.000 [.000, .061] 3. プライベートな時間の重視 2.67 3.55 2.73 3.50 F(1, 185)=38.54*** F(1, 185)=0.00 (0.98) (0.89) (0.80) (0.90) ηp2=.172 [.083, .265] ηp2=.000 [.000, .003] 〈 〉内には各群の度数,( )内には各群の標準偏差を示した。 *** p<.001 各群の平均値が3.0から有意に高い(下線)か,低い(四角枠)かも示した。 Table 5 内発的就業動機を共変量,教職想定と性別を独立変数とした共分散分析結果 教職の想定 性別 想定者 非想定者 主効果および効果量 男性 女性 主効果および効果量 1. 転居を伴う転勤がないことの重視 2.61 2.95 F(1, 184)=3.15† 2.85 2.72 F(1, 184)=0.50 (0.17) (0.08) ηp2=.017 [.000, .069] (0.16) (0.11) ηp2=.003 [.000, .036] 2. 働きに見合った給与の重視 (0.07)3.01 (0.15) ηp3.42 F(1, 184)=5.732=.030 [.001, .092] (0.14)* 3.42 (0.09) ηp3.01 F(1, 184)=5.952=.031 [.001, .093]* 3. プライベートな時間の重視 (0.07)3.02 (0.15) ηp3.60 F(1, 184)=13.262=.067 [.014, .144] (0.13)*** 3.48 (0.09) ηp3.14 F(1, 184)=4.672=.025 [.000, .083]* 各独立変数について推定周辺平均と標準誤差(カッコ内)を示した。 † p<.10 p<.05 *** p<.001

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いう対比が職業の意思決定においては際立つので あろう。 この職業選択条件尺度による測定は,これまで 意思決定を行った際の判断ではなく,「思い描い ている職業にとらわれずに一から考える場合」と 教示しているので,調査時点までに形成された 「職業の意思決定をする構え・態度」を反映する と考えられる。例えば教職想定者の多くは,子ど もに接することや授業の達成感などから手応えや やりがいを感じており,それらが内包する内在的 な価値を重視して評定したために非想定者との間 に差異が生じた可能性がある。学生たちは,今後 に最終的な意思決定をしたり,一旦決めた選択に 迷いが生じた際にも,ここでの評定と同じスタン スで対処することが予想される。 3種の労働条件のうち相対的な重視の程度が最 も弱いのは「w1. 転居を伴う転勤をしなくてよ い」であった。その背景としては,「給与」「時間」 と比べて日常的な問題になりにくいこと,回答者 の年齢や独身という境遇からまだ身近な問題にな りにくいこと,また転勤は必ずしも回避されるほ どマイナスな条件ではないなどの可能性が考えら れる。今回は3種類の労働条件を取り上げたが, それぞれに重視される程度や差の出方が異なると ころがあり,労働条件としてまとめて論じるので はなく,個々に検討する必要性が示された。 2. 内発的な就業動機と労働条件の相対的軽視の 関連 内発的な就業動機が,3種類すべての労働条件 の相対的軽視と関連が見られた。しかも「給与」 「時間」では,単に両群に差が見られただけでな く,内発群は「どちらともいえない」より低く, 非内発群は「どちらともいえない」より高い重視 の程度で労働条件を考えていた。働くことに内発 的に動機づけられる人たちは,「楽しさ」「生きが い」という報酬が感じられる分,労働条件という 外来的な報酬には“譲歩”すると考えられる。他 方,内発的な就業動機が弱い人は,働くことが生 計維持や余暇などの手段であるために,それを少 しでも有利にと考えることから,労働条件を優先 すると考えられる。 人生の多くの時間を占める「働く」という役割 に対して内発的な動機をもつことには,もちろん 望ましい側面もある。在学中も合目的的に勉学や 実習等に取り組み,成長や充実感を得るであろう し,就職後も困難に向き合い,努力することに動 機づけられることから,就職後のコミットメント やパフォーマンスと正の関連を示すことが,ワー ク・エンゲイジメントのメタ分析(Halbesleben, 2010)から推測できる。しかしその内発的な就業 動機が意思決定時に労働条件を相対的に軽視する ことに結びつくことが本研究で示された。これは 高校や大学でキャリア・プランニングをさせるう えでは,留意すべき課題となろう。 3. 教職の想定と労働条件の相対的軽視の関連 内発的な就業動機の効果を除いても,教職を 想定している人は非想定者よりも「給与」「時間」 を相対的に重視する程度が弱いことが明らかに なった。非想定者のなかにも別の職業を内発的な 就業動機で想定している人はいるであろうが,そ れでも教職を想定している人は,それらの労働条 件をより重視しない。すなわち教職固有の特性が そのことと結びついている。その特異性の背景と して次の3つの可能性が考えられる。 第1に,教職では給与や私的な時間に匹敵する 心的な報酬が得られるという確信が他の職業より Figure 1 教職想定×性別×内発的就業動機別の労働条件重視の評定平均値 各群の平均値が3.0から有意に高い(下線)か,低い(四角枠)かも示した。エラーバーはSD。

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強いことである。これは教育実習などの実体験を 通して「授業を頑張れば頑張るほど,反応がか えってきて,やりがいを感じた」,「教師はつらい ことが多いけれども,その分,喜びも大きいと いうことが実感できた」との所感(若松,2012) や「時間をかけていいかげんな対応をしないこと で子どもはちゃんと見てくれている,とボラン ティアなどを通して感じた」「授業は全力でやっ た。全力でやれば子どももわかってくれると思っ た」(若松,2013)といった教師効力感(Gibson & Dembo, 1984)に相当する発言に表れている。 教職以外の職業でも何らかの心的報酬の見通しは もてるが,職種を特定しない採用形態や十分な実 体験がないことから,その確信の程度には相違が 見られるのではないか。 教職想定者の特異性の第2の可能性は,教職以 外を想定している人が,まさに教師の労働条件の 悪さを問題視して教職志望をとりやめていること である。丸岡(2019)が教職以外を考えている学 生に教職の課題と問題点の自由記述を求めたとこ ろ,教師の労働環境の課題と見られる回答が最も 多かった。若松(2013)の聞き取りでも「割に合 わない」「ずっと続けていく自信はない」などの 発言が散見される。とすれば,就業動機は内発的 ではあっても,労働条件には敏感になっている, あるいはそもそもそういう人が教職を避けている ことが考えられる。教員養成学部の場合には特 に,周囲から教職に就くことを期待されているだ けに,非想定者はよほどのデメリットを教職に感 じていると考えられる。それが労働条件とは限ら ないが,この結果からはそうした人が少なくない と思われる。 第3に,教職非想定者は内容的に惹かれる職業 をまだ見出していない可能性が挙げられる。教員 養成学部では,教職を想定しない人は意思決定の 進みが相対的に遅く,また関与の程度も低いこと がわかっている(若松,2014)。教職以外の選択 肢は無限にあり,かつ教職ほど仕事内容が就職前 に明瞭ではない。とすれば非想定者は,仕事内容 の点で想定者が教職に惹かれるほどの魅力を感じ る職業を見出しにくく,主要な労働条件である 「給与」と「時間」からまず絞り込むといった方 略をとる人が多いのではないか。 なお「給与」「時間」における差を比べると, 内発的就業動機で比較したTable 4ではその差の 大きさ(F値)や効果量はほとんど違いが見られ ないが,教職想定の効果を見たTable 5では「時 間」における差がより大きかった。教職は長時間 労働がよく指摘されるだけに,彼らが思い描くや りがいと相まって,そうした仕事であればプライ ベートな時間を犠牲にすることを厭わないと思え る人が,教職想定者となった可能性がある。若 松(2017)において報告された小学校教員採用者 の発言「教員の勤務時間の長さに不安・不満はあ るが,塾でアルバイトをしていても感じるのは, ちょっと残ってポチポチやることが楽しめなかっ たら教師は向いていないんだろうなあと。」から もそのことが推察される。 本分析で見られた「時間」「給与」における想 定者と非想定者の差から危惧されることは,教師 の働きすぎや不十分な見返りという問題が温存さ れる可能性である。本研究では教職を選んだ時点 における労働条件の軽視を直接問うてはいない が,教職想定者はそれでも非想定者に比べてこれ らの労働条件を重視しない回答をしていた。これ が,多くの教職想定者の「職業の意思決定をする 構え・態度」であるとすれば,教職選択に際して も労働条件で「譲歩」しており,教員の労働環境 や待遇の問題は見直されにくいであろう。しかし 言うまでもなく人のキャリアにおいて働くことは 一部の役割に過ぎず(Super, 1957),他の役割を 犠牲にしないためにも「時間」「給与」にも目を 向けさせることは,学生へのキャリア支援として 留意されるべきであろう。 4. 性別と労働条件の相対的軽視の関連 内発的就業動機を共変量とした教職想定と性別 の2要因による共分散分析では,「給与」「時間」 を相対的に重視する程度は男性が女性よりも有意 に強かった。女性は,就職を考える際に「働き方」 をまず考えるといわれる(谷田川,2016)が,そ れが労働条件の相対的な重視には直結しないこと になる。「給与」については,伝統的な性役割の うえでは男性が女性よりも家計維持のための収入 を期待されること(本田,2002; 三木,2016),女 子学生に見られる傾向として,「自分で稼ぐ」と いう意識が薄く,将来のパートナーへの経済的依 存願望が強いこと(Nishio & Matsunami, 2012), また女性が就業を継続する場合にはかなりの確率 で共働きとなり,生計維持に必要な額の収入に留 意する必要性が小さいことなどがその背景とし て考えられる。「時間」については,男性は女性 に比べて職業を一生のものと捉えている(中村, 2011)ために,定年までの長期間にわたってプラ イベートな時間を仕事のために減らすことを警戒 しているという解釈も可能である。

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ただし今回見られた性差は,内発的就業動機と 教職の想定をどちらも統制した比較において見ら れた,効果量が小さなものであった。実際の意思 決定への影響の大きさも含めて,引き続きの検討 が必要である。 5. 本研究の制約および課題 本研究では3つの労働条件を取り上げたが,多 くの労働条件について仕事内容の項目と一対比較 させることは調査項目数の制約からできなかった ため,3種類に代表させて比較を行った。さらに 「勤務地」という示し方ではなく,「転居を伴う転 勤をしなくてよい」という具体的かつ一方向のみ を示すワーディングで項目化した。特に「勤務 地」については,「給与」「時間」と異なり,教職 想定による差が見られず,性差も見られなかった が,転勤を望む人もいたかもしれないし,転居を 伴う転勤は教員でもあり得る。また今回は具体的 な企業の選択向きの項目であるとして用いなかっ た「将来性・安定性」は,公務員か民間かの選択 でも考慮されることはある。これらの制約をふま えて今回の結果を見るとともに,他の労働条件に ついても検討する必要があろう。またこの尺度へ の評定は,調査時点まで回答者のなかに形成され た「職業の意思決定をする構え・態度」を反映す るものと位置づけてきた。したがって,実際に教 職が選択されたときにも同じように労働条件が相 対的に重視されていなかったことを確認しておく ことは必要であろう。 キャリア意思決定過程において,内在的価値に 惹かれることが「時間」「給与」という労働条件 の相対的な軽視に結びつくことが本研究から明ら かになったが,そのメカニズムやプロセス,およ び入職後の適応との関係の解明は,今後の課題で ある。近年の新入社員が「働く目的」として「楽 しい生活をしたい」を最も重視していること(社 会経済生産性本部,2019)や「やりたいこと」志 向(下村,2002)を合わせて考えると,その傾向 は教員養成学部生だけに限らない可能性もある。 働き方改革が名実をともなったものとなるうえで も,キャリア意思決定過程にある人の労働条件へ の構えや態度は,今後注視されるべきトピックで あると言えよう。 注 記 1 尾高の分類は提唱されてから長い年月が経過してい るが,近年では春日井(2008)による「子どもの社 会的自立を援助するとは『自己実現』,『社会貢献』, 『経済的自立』を図るプロセス」(p. 28)との主張に も見られるように,現代にも通用するものである。 2 労働条件のうち「w1. 転居を伴う転勤をしなくてよ い」については,「転勤がない」から「転勤が多い」 までの連続体のなかから,現実的であり(「転勤が ない」職業はほとんどない),転勤でかかる負担の なかで比較的明瞭に線引きができる落とし所として 「転居を伴う」を用いた。 3 Table 4において4群の度数がアンバランスに見える が,内発群が95名,非内発群が94名とほぼ等しい 人数である。男性では内発群がやや多く,女性では 非内発群がやや多いという偏りが性別内の人数の多 少に結びついている。 引用文献 阿部真大 2006 搾取される若者たち 集英社新書. Adachi, T. 2018 Work-family planning and gender

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付 記 本研究は,第2著者の卒業論文としてなされた研究 を第1著者の責任で再分析し,まとめたものです。 謝 辞 研究に協力してくださった皆様,および査読いただ きました先生方に感謝申し上げます。

Relative Disregard of Labor Conditions among Candidates of Teacher:

Focusing on Work Motivation and Gender

Yosuke WAKAMATSU(Shiga University) Minami YADA(Career Power Co., Ltd.)

The present study investigated relative disregard of labor conditions among candidates of teacher. They are tend to be attracted to worthwhileness or precious value of teaching profession, so such relative disregard was predicted to occur among them. A questionnaire was administered to 192 junior students who belong to faculty of education. As the main question, subjects were asked to rate importance scales between labor conditions(3 kinds: not need to transfer, fair salary, and private time)and attractiveness in his/her job contents(each 3 items ×2 categories: making the most of his/her individuality and playing his/her part in the job). The main results are as follows:(1)Students with high intrinsic work motivation relatively disregarded of all kind of labor conditions than the other students.(2)Under controlled intrinsic work motivation, teacher candidates relatively disregarded of fair salary and private time.(3)Female students relatively disregard fair salary and private time more than male. Mechanism of relative disregard for teacher candidates and suggestion for career formation support were discussed.

Key words: labor conditions, career decision making, intrinsic work motivation, teacher candidates, faculty of education

参照

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