航 空 サ ー ビス に お け る経 済 的 規 制 と社 会 的 規 制*
経済評価 のための政策研究
澤
野
孝 一 朗**
1.は じ め に 日 本 の 航 空 サ ー ビ ス 市 場 は,こ の20年 の 問 で 大 幅 に 変 化 し た.従 来,日 本 の 航 空 サ ー ビ ス 市 場 は,政 府 に よ っ て 厳 し く規 制 さ れ た 市 場 で あ っ た.そ の 政 策 の 基 本 的 な 方 針 は,各 航 空 会 社 に 就 航 路 線 を 割 り 当 て,航 空 運 賃 を 認 可 に よ っ て 規 制 し,新 規 航 空 会 社 の 参 入 を 原 則 と し て 認 め な い と す る も の で あ っ た.し か し 行 財 政 改 革 の 流 れ の な か で,規 制 緩 和 の 必 要 性 が 叫 ば れ, 航 空 サ ー ビ ス に お い て も 順 次 に そ の 緩 和 が 実 施 さ れ て き た.こ の 規 制 緩 和 の 議 論 に お い て,経 済 的 規 制 や 社 会 的 規 制 と い う 分 類 が 行 わ れ,そ れ ぞ れ の 規 制 緩 和 が ど の よ う な 経 済 効 果 を 持 つ の か に 関 し て,多 く の 関 心 が 持 た れ て い た.本 稿 で は,日 本 の 航 空 サ ー ビ ス を 事 例 に し て,経 済 的 規 制 や 社 会 的 規 制 と は 何 か,そ し て そ の 規 制 緩 和 が 持 つ 経 済 効 果 は ど の よ う な も の な の か を 明 ら か に す る こ とが 目 的 と な っ て い る. 日 本 の 規 制 緩 和 に 関 す る 研 究 と 議 論 は,加 藤 〔6〕,植 草 〔3〕,八 代 〔33,34〕 が 代 表 的 で あ る.こ れ ら 先 行 研 究 の 議 論 の 中 か ら,経 済 的 規 制 と社 会 的 規 制 の 定 義 と,そ の 改 革 の 方 向 性 が 明 ら か に さ れ て い る.経 済 的 規 制 と は,経 済 活 動 の 効 率 性 を 高 め る こ と を 目 的 と し て,政 府 が 企 業 参 入 や 価 格,生 産 量 に 規 制 を 課 す こ と で あ る.こ の 経 済 的 規 制 に 関 し て は 経 済 学 的 な 根 拠 が 明 確 で な い た め,原 則 と し て 撤 廃,例 外 的 に 特 段 の 事 情 が あ る 場 合 に は 最 小 限 の 規 制 を 実 施 す る こ と が ほ ぼ 合 意 さ れ て い る.一 方,社 会 的 規 制 と は,国 民 の 安 全 ・衛 生 ・健 康 の 確 保, お よ び 自 然 環 境 保 全 な ど を 目 的 と し て,労 働 環 境 製 造 方 法 や 製 品 ・サ ー ビ ス の 品 質 な ど に 規 制 を 課 す こ と で あ る.こ の 社 会 的 規 制 の 緩 和 に 関 し て は,現 在 の 段 階 で は 十 分 な 合 意 が あ る と *こ の論 文 は,日 本 経 済 学会 ・秋 季 大 会(明 治 大学)報 告 論文 「航 空 運賃 にお け る特 別 措 置 の役 割 一 航 空 機燃 料 税 と空港 ・管 制 サ ー ビス 利 用料 」の一 部 を大 幅 に加筆 修 正 した もので あ る.本 稿 の作 成 にお い て, 浅 田義 久(明 海 大学),山 崎 福 寿(上 智 大 学)の 各 氏,お よび学 会 セ ミナ ー の参 加 者 よ り有 益 な コ メ ン トを 頂 い た.こ こに記 して 感 謝 い た し ます.本 稿 中 の誤 りは,す べ て筆 者 の責 にあ ります. **名 古 屋 市 立 大学 大 学 院 経 済 学研 究 科 〒467-8501愛 知 県 名古 屋 市 瑞穂 区瑞 穂 町 字 山 の畑1 Tel:052-872-5754,Fax:052-871-9429, Email:[email protected]は 言 え な い.こ れ は,現 行 の 安 全 基 準 等 を保 った ま ま で,社 会 的 規 制 の緩 和 を実 施 す る 必 要 が あ るた め,そ の 規 制 緩 和 の 範 囲 や 方 法 につ い て 合 意 が得 られ て い な い た め で あ る. さ ら に近 年 で は,こ の 経 済 的規 制 と社 会 的 規 制 の 関 連 が 注 目 され る よ うに な っ て きて い る. 従 来 で は,安 全 等 の 確 保 の た め に 経 済 的 規 制 を実 施 す る 必 要 が あ るの で あ っ て,別 個 に社 会 的 規 制 と して 分類 す る こ と に は無 理 が あ る とす る議 論 が あ った.し か し現 在 で は,過 剰 な 社 会 的 規 制 の 存 在 や 過 去 の 企 業保 護 政 策 の 帰 結 が,新 規 企 業 の 参 入 を 阻 む 要 因 とな っ て お り,競 争 政 策 の 観 点 か ら社 会 的 規 制 の 緩 和 の 必 要 性 が 議 論 さ れ る よ う に な っ て い る(山 内 〔36,37〕).本 稿 で は,こ の 規 制 緩 和 の 流 れ と議 論 に 関 して,日 本 の 航 空 サ ー ビス を事 例 に して,経 済 評 価 の た め の 政 策 研 究 を行 お う と考 え て い る. 日本 の 航 空 サ ー ビ ス は,2000年 の 航 空 法 改 正 を契 機 に した航 空 自 由化 に よ って,大 幅 な 政 策 転 換 を実 施 した.従 来 で は,原 則 と して許 認 可 に基 づ く行 政 運 営 を行 っ て い た が,航 空 自 由化 以 後 に は,自 由 な企 業 活 動 の 保 障 と最 低 限 の 規 制 に よる 事 後 的 な チ ェ ック機 能 を重 視 す る方 向 へ と変 化 した.こ の 日本 の 航 空 サ ー ビ ス に 関 す る 規 制 緩 和 の研 究 と議 論 は,戸 崎 〔27〕,中条 〔23〕,山内 〔39〕,藤井 〔30〕が代 表 的 で あ る.こ れ らの 議 論 に お い て,航 空 会 社 間 の 自 由競 争 を認 め る航 空 行 政 の転 換 は,航 空 自 由化 に よ りほ ぼ 達 成 さ れ た と考 え られ て い る が,企 業 間 競 争 を 阻害 す る 原 因 とな る羽 田 空 港 の 発 着 枠 制 約 の重 要 性 が 理 解 され て い る.ま た近 年 の 政 策 評 価 の 流 れ の な か で は,公 共 政 策 は 実 施 後 に そ の 有 効 性 が 評 価 され る こ と と され て い る(金 本 〔7〕).特 に 日本 の 航 空 サ ー ビ ス で は,2000年 に実 施 され た航 空 自 由化 政 策 が,近 年 そ の 評 価 対 象 と な っ て い る.本 稿 で は,日 本 の 航 空 サ ー ビ ス の 規 制 緩 和 に 関 し て,こ れ ま で実 施 され た 政 策 評 価 や そ の 議 論 を利 用 して,公 共 政 策 の 評 価 研 究 を行 お う と考 え て い る. 本 稿 か ら得 られ た結 論 を要 約 す る と,次 の とお りで あ る.日 本 の 航 空 サ ー ビス の経 済 的 規 制 に 関 し て は,1980年 代 後 半 か ら段 階 的 に実 施 され,1997年 ま で に は 競 争 的 な 市 場 環 境 が 整 備 さ れ,2000年 の 航 空 自由 化 に よ っ て 規 制 は撤 廃 され た.航 空 自 由化 以 後 は,特 に新 規 航 空 会 社 の 参 入 促 進 を 念 頭 に 置 い た競 争 政 策 が 実 施 され て い た も の の,2001年 の9.llテ ロ 発 生 に よ る航 空 不 況 後 に は,航 空 行 政 は再 び既 存 航 空 会 社 の 経 営 支 援 を重 視 した 方 向 に転 換 し,航 空 自 由化 が 目的 と した 競 争 政 策 が 変 質 した 側 面 が あ る.社 会 的 規 制 に 関 して は,早 くか ら新 規 航 空 会 社 の 参 入 障 壁 と して の 規 制 の 存 在 が 理 解 さ れ て お り,1990年 代 後 半 に は整 備(航 空 機 安 全 関 係) や免 許(乗 員 関 係)に 関 す る規 制 緩 和 が 実 施 され た.ま た 近 年 で は,新 規 航 空 会 社 の参 入 を 阻 害 す る要 因 と して,羽 田 空 港 の発 着 枠 制 約 が 理 解 さ れ て お り,航 空 管 制 の効 率 化 とい う形 で の 規 制 緩 和 を 実 施 して,そ の 制 約 を緩 和 す る政 策 努 力 が 行 わ れ て い る. 本 稿 の 構 成 は,次 の とお りで あ る.2節 で は,航 空 行 政 の 機 能 とそ の議 論 に関 して ま とめ, 3節 で は経 済 的 規 制 と社 会 的 規 制 の 効 果 に つ い て 簡 単 な モ デ ル を利 用 して 議 論 を行 う.4節 で は,航 空 自由化 の 政 策 評 価 を念 頭 に 置 い て,経 済 的規 制 とそ の改 革 につ い て 検 討 し,5節 で は 社 会 的 規 制 とそ の 改 革 に 関 す る議 論 を行 っ て い る,最 後6節 は,本 稿 の結 論 の 要 約 と今 後 に残
され た 課 題 に つ い て述 べ て い る. 2.航 空 行 政 の 機 能 と そ の 議 論 本 節 の 目的 は,日 本 の 航 空 行 政 の 機 能 とそ の 政 策 変 遷 の 概 要,そ し て政 策 評 価 に 関 す る先 行 研 究 の 特 徴 を 明 らか に す る こ とが 目的 で あ る.以 下 で は,は じめ に航 空 行 政 を主 管 す る 国 土 交 通 省 航 空 局 の概 要 と機 能 を説 明 し,そ の 後 に 日本 の航 空 行 政 の あ り方 と改 革 の 方 向性 に 関 す る 議 論 を ま とめ て い る. 国 土 交 通 省 航 空 局 の 機 能 日本 の 航 空 サ ー ビ ス及 び 空 港 の 維 持 管 理 は,国 土 交 通 省 航 空 局(以 下 で は 航 空 局 とい う)が 担 っ て い る.こ の 航 空 及 び 空 港 行 政(以 下 で は航 空 行 政 とい う)を 規 定 す る 基 本 法 は,航 空 法 (昭和27年7月15日 法 律 第231号)で あ る.そ して 主 に空 港 整 備 や 航 空 路 整 備 に要 す る費 用 は,利 用 者 負 担 の 原 則 に 基 づ く空 港 整 備 特 別 会 計 に よっ て 賄 わ れ て い る.以 下 で は,航 空 法 の 目的,航 空 局 の組 織 とそ の機 能,そ して 空 港 整 備 特 別 会 計 の概 要 と 目的 につ い て 説 明 して い る. 航 空 法 で は,そ の 目的 と して 「航 空 機 の航 行 の 安 全 及 び 航 空 機 の 航 行 に起 因 す る 障 害 の 防 止 を 図 る た め の 方 法 を 定 め,並 び に 航 空 機 を運 航 して営 む 事 業 の適 正 か つ 合 理 的 な運 営 を確 保 し て そ の 利 用 者 の 利 便 の増 進 を 図 る こ と に よ り,航 空 の発 達 を 図 り,も っ て 公 共 の 福 祉 を 増 進 す る こ と を 目的 す る(第1条)」 と述 べ られ て い る.す な わ ち 航 空 局 の基 本 的 機 能 は,航 空 機 の 安 全 航 行 と そ の 障 害 の 防止,航 空 事 業 者(以 下 で は航 空 会 社 とい う)の 事 業 運 営 の 確 保,そ して 航 空 サ ー ビ ス 利 用 者 の利 便 向上 に あ る. この 行 政 目的 お よ び 政 策 を実 施 す る た め に,航 空 局 は 次 な る組 織 部 局 を 有 して い る(国 土 交 通 省 組 織 令 の 航 空 局 関係 機 関).管 理 部(総 務 課 ・国 際 航 空 課 ・航 空 事 業 課 ・予 算 管 理 官)は, 航 空 運 送 事 業 に 関 す る 許 認 可 を担 当 す る部 局 で あ り,航 空 サ ー ビス に 関す る 主 な経 済 的 規 制 を 担 う部 門 で あ る.飛 行 場 部(管 理 課 ・計 画 課 ・成 田 国 際 空 港 課 ・環 境 整 備 課 ・建 設 課 ・関 西 国 際 空 港 中部 国 際 空 港 管 理 官)は,飛 行 場 建 設 や そ の維 持 管 理 と航 空 機 騒 音 対 策 を担 当 す る部 局 で あ る.前 者 の 飛 行 場 建 設 は公 共 財 と して の 空 港 の観 点 か ら,後 者 の 航 空 機 騒 音 対 策 は 騒 音 の 外 部 不 経 済 性 の 観 点 か ら政 策 を 実 施 して い る1).技 術 部(運 航 課 ・航 空 機 安 全 課 ・乗 員 課)は, 航 空 機 の 航 行 方 法 や 航 空 機 整 備 の 監 督 航 空 従 事 者 の ラ イセ ンス や 教 育 ・育 成 を担 う部 局 で あ り,航 空 サ ー ビス に 関 す る主 な社 会 的 規 制 を担 う部 門 で あ る.管 制 保 安 部(保 安 企 画 課 ・管 制 課 ・運 用 課 ・無 線 課)は,航 空 交 通 管 制 を担 う部 局 で あ り,航 空 交 通 に お け る燈 台 的役 割(公 1)日 本の航空機騒音対策の概要 については,澤 野 〔18〕としてまとめている.
共 財)を 持 つ 部 門 で あ る.そ の他 に,地 方 航 空 局 や 航 空 交 通 管 制 部 な どの 地 方 支 分 部 局 と航 空 保 安 大 学 校 な どの 施 設 等 機 関が あ る. 航 空 局 が 所 管 す る特 別 会 計(空 港 整 備 特 別 会 計)は,航 空 需 要 の 増 大 に対 処 し て空 港 の 整 備 の促 進 と維 持 運 営 の 円滑 化 を 図 る た め,そ の経 理 を明 確 に す る こ と を 目的 と して,昭 和45年 度 に 設 置 さ れ た もの で あ る.主 な歳 入 項 目は,空 港 使 用 料(着 陸 料 ・航 行 援 助 施 設 利 用 料)・ 一 般 会 計 か ら繰 り入 れ られ る 航 空 機 燃 料 税 ・国有 地 の 土 地 貸 付 料 収 入 等 ・地 方 公 共 団 体 負 担 金 ・財 政 投 融 資 で あ る2).主 な歳 出 項 目 は,空 港 整 備 事 業 ・環 境 対 策事 業 ・航 空 路 整 備 事 業 な ど で あ る. 航 空 局 の 多 くの 事 業 は,こ の 特 別 会 計 制 度 の枠 内 で実 施 され て い る. 航 空 行 政 の あ り方 と改 革 の 方 向 性 に 関 す る 議 論 現 在,航 空 行 政 お よび 航 空 局 の 組 織 につ い て,多 くの 改 革 とそ の 議 論 が 実 施 さ れ て い る.こ こで は,航 空 局 の 組 織 に 関 して,ど の よ うな 改 革 議 論 が 行 わ れ て い るか を 整 理 し,そ の 方 向 性 を ま とめ る こ とが 目的 で あ る.ま ず 航 空 事 業 課 に代 表 され る管 理 部 で は,主 に航 空 事 業 の 振 興 に 力 点 の あ る 組 織 で あ る が,2000年 の 航 空 自由 化 に よ る経 済 的 規 制 の 撤 廃 に よ り,当 面 の 課 題 は解 決 さ れ た と考 え られ て い る.し か し近 年 に議 論 さ れ る テ ー マ は,カ ボ ター ジ ュ規 制 の 撤 廃 に 関 す る 問題 で あ る.カ ボ タ ー ジ ュ 規 制 とは,国 際 条 約 に基 づ き,一 つ の 国 の 領 域 内 で 貨 客 の 航 空 機 へ の積 込 み と積 降 しが 行 わ れ る運 送 に つ い て,当 該 国 の航 空 会 社 が独 占す る こ とが で き る 規 制 で あ る.こ の 規 制 につ い て は,航 空 事 業 の 振 興 や 競 争 政 策 の促 進 の 観 点 か ら,そ の 撤 廃 が 議 論 さ れ て い る(Ito〔1〕,空 港 競 争 編 集 委 員 会 編 〔10〕,中条 〔26〕).ま た 関 西 国 際 空 港 の 社 長 が,特 区 な どの 例 外 措 置 を利 用 して規 制 の 適 用 を外 し,関 西 空 港 の 国 内 線 就 航 促 進 を図 る こ との 要 請 を検 討 した こ とが あ る(中 日新 聞,2004年1月29日,朝 刊.).し か し こ の カ ボ タ ー ジ ュ規 制 の撤 廃 につ い て は,日 本 で は特 に進 展 は見 られ ない. 飛 行 場 部 は,主 に飛 行 場 の 建 設 と管 理,そ して 航 空機 騒 音 の 防 音 対 策 を担 う部 門 で あ る.特 に 飛 行 場 の管 理 につ い て は,近 年 に は空 港 経 営 と い う側 面 が 注 目 され て お り,滑 走 路 の 維 持 管 理 か ら タ ー ミナ ル ビ ル運 営,周 辺 地 域 の 駐 車 場 経 営 の 一 体 化 が 模 索 さ れ て い る.日 本 の 大 半 の 空 港 で は,飛 行 場(滑 走 路)は 国 営,タ ー ミナ ル ビ ル は 地 元 地 方 自治 体 を含 む 第 三 セ ク ター, 周 辺 駐 車 場 は 政 府 の 外 郭 団 体 が 管 理 運 営 に あ た っ て い る 場 合 が 多 い.こ の た め3つ の 部 門 の 一 体 化 を含 め,空 港 の 民 営 化 が 議 論 さ れ て い る(中 条 〔22〕,添田 〔20〕).そ して 一 体 化 し,民 営 化 した 空 港 間 の 競 争 を促 進 し,空 港 使 用 料(着 陸 料)の 引 下 げ や魅 力 あ る 空 港 サ ー ビ ス の 実 現 を 目指 す 議 論 が 注 目 され て い る(空 港 競 争 編 集 委 員 会 編 〔10〕). 技 術 部 は,主 に航 空 安 全 の 実 現 を 目的 と して,運 航 方 法 や 航 空 機 体,乗 員 資 格 に 関 して 社 会 2)着 陸料 ・航行援助施設利用料 ・航空機燃料税 などの空港使用料の概要 とその仕組みにつ いては,澤野 〔14, 16〕 としてまとめている。
的規 制 を実 施 す る こ とが 主 要 な任 務 で あ る.た だ し航 空 機 騒 音 の 防 止 を 目的 と し た社 会 的 規 制 も一 部 含 ま れ て い る.近 年,こ の 航 空 安 全 と社 会 的規 制 に関 して は,経 済 的 規 制 と の 関 連 が 議 論 され て い る.特 に組 織 や そ の業 務 に 関す る 改 革 議 論 は ない が,経 済 的規 制 が 撤 廃 さ れ た 航 空 自由 化 以 後 に は,そ の役 割 の 重 要 性 が よ り大 き くな っ て い る. 管 制 保 安 部 は,交 通 整 理 を通 じて,航 空 安 全 の 実 現 を 目的 とす る組 織 で あ る.し か し必 ず し も国 営 で 管 制 サ ー ビ ス を行 う必 要 性 が 明 確 で ない た め,航 空 管 制 の 民 営 化 が 議 論 され て い る(中 条 〔22〕).規制 改 革 ・民 間 開放 推 進 会 議 の3ヵ 年 計 画(2004年 閣 議 決 定)で は,航 空 管 制 の 民 間 開 放 が2005年 度 中 に実 施 す る方 針 が示 され て い る. 以 上 の よ うに 航 空 局 の 業 務 は,飛 行 場 関係 と航 空 管 制 関 係 は民 営 化 の方 向性 が 示 さ れ,航 空 事 業 の 振 興 を 図 る管 理 部 と,航 空 安 全 の 実 現 を 目 的 とす る技 術 部 が,主 要 な 責 務 と考 え られ て い る.し か し航 空 事 業 の振 興 と航 空 安 全 の実 現 に は トレー ド ・オ フ関 係 が あ る こ とが指 摘 さ れ て お り,組 織 目的 か ら航 空 事 業 の振 興 を外 す,も し くは 別 組 織 に 再 編 す る こ とが 望 ま しい とす る 議 論 が あ る(Schiavo〔2〕).ま た事 業 官 庁 は,消 費 者 利 益 よ り も生 産 者(監 督 企 業)利 益 を 重 視 しが ち な 側 面 が あ る の で,航 空 自 由化 以 後 に は消 費 者 利 益 や保 護 に 関 す る問 題 は競 争 当 局 (公 正 取 引 委 員 会)が 担 い,事 業 官 庁 は航 空 会 社 の管 理 監 督 に専 念 す べ きだ とす る機 能 分 担 論 もあ る(中 条 〔24,26〕,Ito〔1〕).次 節 で は,航 空 サ ー ビス の規 制 につ い て,モ デ ル を 利 用 し た 分析 を行 う こ と とす る. 3.モ デ ル 本 節 で は,規 制 の 経 済 学 の 考 え 方 を利 用 して,経 済 的 規 制 と社 会 的 規 制 の 効 果 につ い て 明 ら か にす る こ とが 目的 で あ る.以 下 で は,は じめ に政 府 の 規 制 対 象 と な る企 業 とそ の行 動 に関 す る モ デ ル を提 示 す る.次 に経 済 的 規 制 の 効 果 とそ の緩 和 につ い て 考 察 し,最 後 に社 会 的 規 制 の 効 果 とそ の緩 和 につ い て 議 論 して い る. 企 業 の 生 産 技 術 と政 府 の 社 会 的 規 制 い ま あ る代 表 的 企 業 の 行 動 を 考 え る.以 下 で は,は じめ に費 用 最 小 化 問題 か ら導 出 され る費 用 関 数 を求 め,そ の 後 に 企 業 の利 潤 最 大 化 問 題 か ら導 出 され る供 給 関 数 の 形状 につ い て 説 明 し て い る.こ の 企 業 は,2つ の 生 産 要 素xi(i=1,2)を 利 用 して,あ る生 産 量qを 産 出 し よ う と考 え て い る.い ま2つ の 生 産 要 素 価 格 をwi(i=1,2)と す る と,こ の 企 業 の 支 出 費 用Cは,以 下 の とお りで あ る.
また こ の 企 業 が 持 つ 生 産 技 術 は,生 産 関 数fに よ っ て 表 現 で き る と考 え る.こ の 生 産 関 数 は, 通 常 の性 質 を満 た す もの と仮 定 す る(f>0,f<0).こ こ で 企 業 の 生 産 性 を規 定 す る2つ の 外 生 的 要 因 を 考 え る.一 つ は革 新 な生 産 技 術 を示 す 指 標sで あ り,こ の指 標sを 持 つ こ とは,生 産 要 素 の 追 加 的 な投 入 に よ っ て,よ り効 率 的 な生 産 が行 え る もの と考 え る.も う一 つ は 政 府 の 社 会 的 規 制 の 存 在 を示 す 指 標rで あ り,こ の 指 標rを 持 つ こ と は,規 制 基 準 の 達 成 の た め の 追 加 的 な生 産 要 素 投 入(も し くは 浪 費)を 行 う必 要 が あ る た め,生 産 効 率 を 引 き下 げ る 要 因 と考 え る.こ こ で 指 標sと 指 標rは,そ の要 素 が あ る場 合 に は1,要 素 が ない 場 合 に は0で あ る と して 考 え る.こ の と き企 業 が 持 つ 生 産 関数 は,以 下 の とお りで あ る. この 企 業 は,(2)式 の制 約 の も とで(1)式 の 支 出 費用 を最 小 に す る よ うな 生 産 要 素xi(i=1,2)の 組 合 せ を求 め よ う と考 え て い る(費 用 最 小 化 問 題). この 費 用 最 小 化 問題 を解 くこ とで,企 業 の 要 素 需 要 関 数 を求 め る こ とが で き,こ の解 関 数 を 目的 関数 で あ る(1)式 に 代 入 す る こ とで,費 用 関 数 を導 出 す る こ とが で き る.こ の と き費 用 関 数 は,以 下 の とお りで あ る. 上 式(3)式 で は,生 産 要 素 価 格wi(i=1,2)は 一 定(定 数)と 考 え,費 用 関 数 は 近 似 的 に 単 位 費 用 関 数c(s,r)と 生 産 量qの 積 と して 表 現 で き る も の と考 えて い る. 次 に こ の企 業 は,(3)式 の 費用 関 数 を所 与 と して,利 潤 最 大 化 問 題 を解 き,最 適 生 産 量 を求 め よ う と考 え て い る.い ま利 潤 π,生 産物 価 格pと す る と,こ の企 業 の 利 潤 は 以 下 の とお りで あ る. この(4)式 に つ い て,利 潤 が 最 大 に な る よ う な生 産 量qを 求 め る こ と で,供 給 関 数p=c(s,r) を 求 め る こ とが で きる.ま た こ の 市 場 で は,通 常 の特 徴 を持 つ 需 要構 造(需 要 関 数)を 持 つ も の とす る. 経 済 的 規 制 の 効 果 とそ の 緩 和 経 済 的 規 制 と は,経 済 活 動 の効 率 性 を高 め る こ とを 目的 と して,政 府 が 企 業 参 入 や価 格,生 産 量 に規 制 を 課 す こ とで あ る.い ま社 会 的 規 制7を 定 数 と考 え,経 済 的 規 制 の 効 果 に つ い て の み注 目す る.い ま参 入 規 制 を実 施 して い る場 合 を考 え,そ の 市 場 で 経 済 活 動 を行 っ て い る企 業 は,既 存 企 業 と呼 ぶ こ と とす る.こ の 既 存 企 業 の 最 大 の 特 徴 は,革 新 的 な 生 産 技 術 を持 っ て い な い こ と で あ る(s=0)と 仮 定 す る.こ の既 存 企 業 の 限 界 費 用 は,cI=c(s│s=0)と 表 現 す る. 次 に参 入 規 制 を撤 廃 し,ど の よ う な企 業 で も 自 由 に 経 済 活 動 を 行 う こ とが で き る場 合 を考 え
る.こ の 市 場 に 参 入 し よ う と考 え る 企 業 の特 徴 は,革 新 的 な 生 産 技 術 を持 っ て い る(s=1)と 仮 定 す る.こ の 新 規 参 入 企 業 の 限 界 費 用 は,cE=c(s│s=1)と 表 現 す る.こ こで 生 産 関 数 の 仮 定 か ら,新 規 参 入 企 業 の 限 界 費用cEは,既 存 企 業 の 限 界 費 用cIよ りも小 さ い(cE<cI).こ こ で 市 場 にお け る 参 入 と退 出 の 自 由 が 保 障 さ れ て い れ ば,こ の 市 場 で は 新 規 参 入 企 業 が 既 存 企 業 と 取 っ て 代 わ る こ とで,価 格 は低 下 し,生 産 量 は 拡 大 す る(新 規 参 入 に よ る市 場 拡 大 効 果).そ し て社 会 的 余 剰(消 費 者 余 剰)で 計 測 され た社 会 厚 生 も,同 じ く拡 大 す る(新 規 参 入 に よ る厚 生 拡 大 効 果). 日本 の 航 空 サ ー ビ ス市 場 に お い て,経 済 的規 制 とそ の緩 和 は,以 下 の 形 で 実 施 され た.当 初, 日本 の 航 空 サ ー ビ ス市 場 は,エ リア(路 線)ご と の ブ ロ ッ ク市 場 を設 定 して,そ の ブ ロ ッ ク市 場 に1社 の み を就 航 させ る規 制 体 系 で あ っ た.ま た航 空 サ ー ビ ス 市 場 自体 に は 新 規 参 入 を認 め て い なか っ た の で,こ の 規 制 は外 生 的 に規 定 され る輸 送 需 要 を ブ ロ ッ ク市 場 と し て各 社 に配 分 す る方 式(生 産 量 規 制)で あ っ た.た だ し この 方 法 で は,各 ブ ロ ッ ク市 場 に お い て独 占 が 形 成 され る た め,政 府 は許 認 可 運 賃 制 度 に よ る価 格 規 制 を 実 施 して い た. 航 空 サ ー ビス の 規 制 緩 和 の 第 一段 階 は,新 規 参 入 を 規 制 し,価 格 規 制 を保 っ た ま ま で,各 ブ ロ ッ ク市 場 に既 存 企 業 の 参 入 を認 め た こ とで あ る(路 線 参 入 規 制 の 緩 和).あ る ブ ロ ック 市 場 に お け る輸 送 需 要 は,短 期 的 に は 一 定 で あ る の で,複 数 の 既 存 企 業 の 間 で 一 定 の パ イ を 取 り合 う競 争 と な る.こ こ で 政 府 は価 格 規 制 を実 施 して い る た め,ブ ラ ン ドや 付 帯 的 サ ー ビ ス の 競 争 に よ っ て乗 客 を獲 得 す る 非 価 格 競 争 が 行 わ れ た. 規 制 緩 和 の 第 二 段 階 は,新 規 参 入 を規 制 した ま ま,価 格 規 制(販 売 規 制)を 緩 和 した こ と で あ る(航 空 運 賃 の 自 由化).同 じ くあ る ブ ロ ッ ク市 場 に お け る輸 送 需 要 は,短 期 的 に は 一 定 で あ る の で,複 数 の 既 存 企 業 の 間 で乗 客 獲 得 競 争 が 発 生 す る.た だ し既 存 企 業 に価 格 設 定 の 裁 量 が あ るた め,従 来 の非 価 格 競 争 か ら価 格 競 争 へ と移 行 し,航 空 運 賃 は 既 存 企 業 の 限 界 費 用 〆 と等 しい水 準 とな る. 最 終 段 階 は,革 新 的 な 生 産 技 術 を持 つ 新 規 参 入 企 業 の 市 場 参 入,及 び既 存 企 業 の市 場 退 出 の 自由 を認 め る こ と で あ る(新 規 参 入 の 自 由化).こ の と き市 場 にお け る 自 由 な参 入 と退 出 が 保 障 され て い れ ば,航 空 サ ー ビ ス の担 い 手 は既 存 企 業 か ら新 規 参 入 企 業 に取 っ て 代 わ れ,航 空 運 賃 は新 規 参 入 企 業 の 限 界 費 用cEと 等 しい水 準 とな り,航 空 運 賃 は 低 下 す る.そ して この と き, 航 空 サ ー ビ ス 市 場 に お け る市 場 拡 大 と厚 生 拡 大 が 実 現 す る こ と とな る3). 3)ス カイマークエアラインズ(SKY)は,2003年4月 に,全 日本空輸(ANA)が 採算の合わない路線 とし て撤退する羽 田一 徳島線 と羽田一青森線 を継承 した.こ の とき全 日本空輸(ANA)の 大橋社長は,「我々 のコス ト構造か らするとそんな低 い運賃で飛 ばすわけにはいかない.経 営体質が違 う」 と述べている(日 本経済新 聞,2002年10月24日,朝 刊.)。
社 会 的 規 制 の 効 果 とそ の 緩 和 社 会 的 規 制 と は,国 民 の 安 全 ・衛 生 ・健 康 の 確 保,お よ び 自然 環 境 保 全 な ど を 目的 と して, 労 働 環 境 製 造 方 法 や製 品 ・サ ー ビス の 品 質 な ど に規 制 を課 す こ とで あ る.い ま革 新 的 な 生 産 技 術sを 定 数 と考 え,社 会 的 規 制 の効 果 につ い て の み 注 目す る.い ま社 会 的 規 制 を実 施 して い る場 合 を考 え,そ の 市 場 で 経 済 活 動 を行 っ て い る企 業 は,規 制 企 業 と呼 ぶ こ と とす る.こ の 規 制 企 業 の 最 大 の 特 徴 は,生 産 活 動 に社 会 的 規 制 が 課 せ られ て い る こ と(r=1)と 仮 定 す る.こ の 規 制 企 業 の 限 界 費 用 は,cR=c(r│r=1)と 表 現 す る. 次 に社 会 的 規 制 を撤 廃 し,企 業 が 規 制 な く して 自 由 な 経 済 活 動 を行 う こ と が で き る よ う に な っ た 場 合 を 考 え る.こ の 社 会 的 規 制 が 課 せ られ な い(r=0)企 業 は 自由 企 業 と呼 び,そ の 限 界 費用 はcF=c(r│r=0)と 表 現 す る.こ こ で生 産 関 数 の仮 定 か ら,自 由 企 業 の 限 界 費 用cFは,規 制 企 業 の 限 界 費 用cRよ りも小 さい(cF<cR).こ こ で 市 場 に お け る 自 由 な 企 業 間 競 争 が 保 障 さ れ て い れ ば,生 産 物 価 格pは 自 由企 業 の 限 界 費 用cFと 等 し く な る.す な わ ち 経 済 的 規 制 の 緩 和 と同 様 に,価 格 は低 下 し,生 産 量 は 拡 大 し(社 会 的 規 制 の 緩 和 に よる 市 場 拡 大 効 果),ま た 社 会 的 余 剰(消 費 者 余 剰)も 拡 大 す る(社 会 的 規 制 の緩 和 に よ る厚 生 拡 大 効 果). 日本 の 航 空 サ ー ビ ス市 場 に お い て,社 会 的 規 制 とそ の緩 和 は,以 下 の 形 で 実 施 され た.当 初, 航 空 サ ー ビ ス の 安 全 性 を担 保 す る に は,各 社 の 営 業 収 益 を制 度 的 に保 障 し(経 済 的 規 制 の 実 施), 厳 格 な航 空 安 全 基 準 の 設 定 と そ の 遵 守 を求 め た.特 に価 格 規 制 に お い て は,原 価 に等 しい 航 空 運 賃 の 設 定 の み を許 容 す る こ とで,安 全 投 資へ の 原 資 を確 保 させ た. 第 二 段 階 で は,経 済 的 規 制(特 に 新 規 参 入 規 制)の 緩 和 に伴 う社 会 的 規 制 の 緩 和 の流 れ で あ る.従 来 に は,既 存 企 業 の 保 護 育 成 を重 視 し,そ の企 業 体 制 の 中 で 航 空 安 全 の 実 現 や騒 音 等 の 環 境 保 全 策 を 実 施 して い た.こ の た め 保 安 や保 全 の た め の 要 員 や 施 設 ・ノ ウ ハ ウが 既 存 企 業 に 集 中 し,結 果 と して新 規 参 入 の 阻 害 要 因 とな って い る こ とが 明 らか に な っ て きた た め で あ る. こ こか ら必 要 以 上 に高 い 航 空 安 全 基 準 は な い か につ い て 議 論 が 行 わ れ,い くつ か の項 目 につ い て は 規 制 緩 和 が 実 施 され た4). 最 終 段 階 で は,政 府 は 基 本 的 な 達 成 す べ き安 全 基 準 を提 示 して,そ の達 成 に関 して は 企 業 の 裁 量 に任 せ,そ の 結 果 や 審 査 結 果 を公 表 し,消 費 者 の 判 断 に委 ね る方 向 の 規 制 緩 和 で あ る.こ の規 制 緩 和 は,現 在 まだ 議 論 の段 階 で あ り,将 来 的 な 指 針 に と ど ま っ て い る.次 節 で は,経 済 的 規 制 と社 会 的 規 制 に 関 し て,規 制 緩 和 と政 策 の 展 開,そ の 評価 につ い て ま とめ る こ と とす る. 4)た だ し日本の航空サー ビス市場では,基 本的施設(エ ッセ ンシャル ・フ ァシリテ ィ)の 制約か ら企業間 競争が不十分であった側面があ り,社 会 的規制の緩和が市場拡大効果や厚生拡大効果を持ったかは十分に 明 らか となっていない。
4.経 済 的 規 制 と そ の 改 革 一 航 空 自 由 化 の 政 策 評 価 一 本 節 で は,航 空 サ ー ビス の 経 済 的 規 制 に 関 して,そ の 規 制 緩 和 と政 策 の展 開 につ い て 明 らか に す る こ とが 目的 で あ る.以 下 で は,は じめ に2000年 に 実 施 され た 航 空 自由 化 前 ま で の 航 空 行 政 の 変 遷 とそ の 評 価 に つ い て ま とめ る.そ の 後 に,航 空 自 由化 以 後 の航 空 サ ー ビ ス市 場 の 動 向 につ い て 整 理 し,航 空 サ ー ビ ス の 規 制 緩 和 と航 空 行 政 に関 す る 変 化 を 明 らか にす る.最 後 に 航 空 自 由化 に 関 す る政 策 評 価 の概 要 と,そ の 評 価 結 果 に 関 す る先 行研 究 の特 徴 につ い て ま と め て い る. 航 空 自 由 化 以 前:規 制 緩 和 と そ の 議 論 日本 で は,2000年2月 に施 行 され た改 正 航 空 法 を 契 機 に,許 認 可 に よ る 航 空 サ ー ビ ス 規 制 か ら,原 則 と して 航 空 会 社 の 自 由 な 経 営 判 断 に 基 づ く路 線 運 航 と事 後 的 な行 政 監 視 を重 視 す る行 政 機 能 の 変 革 が 実 施 され た.こ の 行 政 機 能 の 変 革 は,一 般 的 に は 航 空 サ ー ビス の 規 制 緩 和 や 航 空 自由 化,航 空 ビ ッ グバ ン な ど と呼 ば れ て い る.し か し航 空 局 は,こ の2000年2月 を 契 機 に行 政 機 能 の 転 換 を急 激 に実 施 した の で は な く,1980年 代 後 半 か ら漸 進 的 に 改 革 を実 施 して い た (榊 原 〔13〕).以下 で は,1986年 の 航 空 憲 章`)(45-47体 制)の 廃 止 か ら2000年 の航 空 自 由化 まで の 期 間 を 「漸 進 的 な 航 空 規 制 緩 和 時 代 」,そ れ 以 後 の 期 間 を 「完 全 な航 空 自 由化 時代 」 と呼 ぶ こ と とす る. 表1は,航 空 自由 化 以 前 まで の 航 空 政 策 の 変 遷 とそ の 動 向 を年 表 と して ま とめ た もの で あ る. 1986年 か ら始 ま る漸 進 的 な航 空 規 制 緩 和 の 流 れ は,次 の と お りで あ る.参 入 政 策 で は,路 線 の 複 数社 就 航 を促 す トラ ッキ ン グ政 策 が 推 進 され,1997年 に は トラ ッ キ ング基 準 が 廃 止 され,航 空 会社 の 経 営 判 断 に よっ て 路 線 就 航 が で きる よ う に な っ た.航 空 会 社 の新 規 参 入 につ い て は, 1998年 の ス カ イマ ー クエ ア ラ イ ンズ(SKY)と 北 海 道 国 際 航 空(ADO)の 参 入 を 機 会 と して, 新 規 参 入 政 策 が 立 案 され る よ うに な る.運 賃 政 策 で は,航 空 運 賃 の 設 定 目安 と な る標 準 原 価 制 を 制 定 の 後,営 業 割 引 運 賃 設 定 の 弾 力 化(1994年)や 幅 運 賃 制 度 に よる 割 引 運 賃 の 許 容(1996 年)が 進 め られ,徐 徐 に 航 空 会 社 の 運 賃 設 定 の 裁 量 権 を高 め て い った(金 本 ほ か 〔8〕).ま た 航 空 運 賃 の 引 下 げ を意 図 し た空 港 使 用 料 に 関 す る特 別 措 置 も実 施 され,沖 縄 路 線 特 別 措 置(1997 年)や 第2種 空 港 特 別 措 置(1999年)な どが あ っ た. 5)航 空憲章 とは,1970(昭 和45)年 の閣議了解 と1972(昭 和47)年 の運輸大 臣通達によって,国 内線運航 に関 して各航空会社 の役割分担 を規定する ものである(45-47体 制).し か しこの規制は,1985年 の運輸省 政策審議会(航 空部会)の 最終答 申によって廃止 された.こ の答申の内容は,次 の とお りである.(1)45-47 体制の廃止,(2)全 日空の国際線定期便参入,(3)日航の多客国内ローカル線参入,(4)日航 の完全民営化.こ の期間における航空サー ビスの規制緩和 については,山 内 〔36,37〕を参照.
表1経 済 的 規制 の緩和 と航 空政 策(航 空 自由化 以前) 注1)路 線 規 制 の欄 の 「ダブ ル(ト リ プル)ト ラ ック 」 とは,路 線 輸 送 需 要量 が あ る一 定数 以 上 に な った 場合, 同 一路 線2社(3社)に よ る運 航 を認 め る路 線 就航 規 制 で あ る. 注2)路 線 規制 の 欄 の 「需給 調 整 規 定 」 とは,航 空 サ ー ビ ス市 場 も し くは路 線 にお ける 需要 に見 合 っ た水 準 に供 給 を規 制 す る(参 入 を抑 制 す る)規 定 で あ る. 注3)航 空会 社 の 欄 の 「SKY」 は,ス カ イマ ー クエ ア ライ ンズ の 略称 であ る.ス カ イマ ー クエ ア ライ ンズの 歩 み につ い て は,柳 田 〔35〕を参 照. 注4)航 空会 社 の欄 の 「ADO」 は,北 海 道 国際 航 空 の略 称 で あ る. 注5)航 空会 社 の欄 の 「SNA」 は,ス カ イネ ッ トア ジア航 空 の 略称 であ る. 注5)運 賃 政 策 の欄 の 「標 準 原価 制 」 と は,平 均 原価 に等 しい運 賃 を課 す規 制 制 度 で あ り,平 均 原価 とは路 線 別 の航 空 会社 の 原 価平 均 で あ る(山 内 〔39〕). 注6)運 賃 政 策 の 「営 業 割 引 運賃 の 届 出化 」 とは,50%以 内 の営 業 政 策 的割 引 運 賃 を認 め る こ と と,事 前 購 入 割 引 等 を届 出の み に よって 認 め る政 策 で あ る. 注7)運 賃 政 策 の 「幅運 賃 制 度」 とは,上 限価 格 に標 準原 価 を,下 限価 格 を標 準 原価 の75%に 設 定 し,そ の 幅 内 で航 空 会社 が 自由 に運 賃 を決 定 して,届 け 出 る こ とが で き る制 度 で あ る. 注8)運 賃政 策 の 「事 前 届 出制 」 は,2000年2月 の改 正 航 空法 施 行 に よっ て実 施 され,4月 搭 乗 分(2000年4月) か ら改 訂 され て い る. 注9)特 別措 置の 欄 の 「沖縄 路 線 特 別措 置 」 とは,那 覇 空港 を離発 着 す る こ とを条 件 と した公 租 公 課 の軽 減 措 置 で あ る.こ の 特 別措 置 の 効 果 と成 果 に つ いて は,澤 野 〔14,15,16,17〕 を参 照. 注10)特 別 措 置 の欄 の 「第2種 空港 特 別 措 置」 とは,第2種 空 港(主 な地 方 都 市 に所 在 す る 空港)を 離 発 着 す る こ と を条件 と した 着 陸料 の 軽 減措 置 で あ る. 注ll)特 別 措 置 の欄 の 「羽 田特 別措 置 」 とは,札 幌 ・伊丹 ・関西 ・福 岡 ・那 覇 を使 用 空港 とす る こ とを条 件 と し た着 陸 料 の軽 減 措 置 で あ る. 出所)筆 者作 成
この よ うな 政 策 の 進 展 の 中 で,1997年 の トラ ッキ ン グ基 準 の廃 止 は,羽 田 空 港 に お け る既 存 の発 着 枠 に 関 して,航 空 会 社 が 自由 にそ の行 き先 地 を 選 択 で きる よ う に な っ た た め,路 線 参 入 規 制 は事 実 上 この 時 点 で 廃 止 さ れ た.ま た従 来 の 運 賃 政 策 の 経 過 か ら,航 空 運 賃 の設 定 に関 し て も航 空 会 社 の 裁 量 が 大 き く な っ て い た.こ の た め1997年4月 は,事 実 上 の 航 空 自 由化 が 実 施 され た 時期 と して考 え られ て い る(金 本 ほ か 〔9〕). これ ら漸 進 的 な航 空 規 制 緩 和 時代 にお け る 政 策 に 関 す る評 価 は,以 下 の とお りで あ る.参 入 政 策 の 評 価 と して,村 上 〔31〕は,分 析 対 象 を1980∼91年 の 国 内 航 空 会 社3社 と して,1986年 の航 空 憲 章 廃 止 が 航 空 運 賃 に どの よ う な影 響 を与 え た か を分 析 し,こ の政 策 実 施 に伴 う不 経 済 性 に よ り航 空 運 賃 が 高 騰 し た こ と を 明 らか に し て い る.ま た 村 上 〔32〕で は,分 析 対 象 を 1989∼92年 の 複 数 の 航 空 会 社 が 就 航 す る路 線 と して,ト ラ ッキ ン グ増 加 政 策 の 評 価 を 行 い,航 空 会社 の 経 営 を必 ず し も効 率 化 す る 要 因 とな って い な い こ とを 明 らか に した. 運 賃 政 策 の 評 価 は,高 橋 〔21〕と 山 内 〔38,39〕 が 代 表 的 で あ る.高 橋 〔21〕は,1996年 の 幅 運 賃 制 度 導 入 に 関 して,航 空 運 賃 デ ー タ を利 用 した 評価 を行 い,航 空 運 賃 が 非 常 に多 様 化 し た側 面 を 明 らか に して い る.山 内 〔38,39〕 は,主 に2000年 の航 空 自 由化 まで の 航 空 運 賃 を分 析 対 象 と し,国 内 航 空 各 社 の イ ー ル ド(一 人 キ ロ あ た り営 業 収 入)が 持 続 的 に低 下 して い る こ と を明 らか に して い る. 近 年 で は,航 空 局 の 実 施 した参 入 政 策(ト ラ ッ キ ング 政 策)と 運 賃 政 策(幅 運 賃 制 度)の 両 者 の 要 因 を 同 時 に考 慮 した 研 究 が あ り,大 橋 ほ か 〔5〕 や 山 口 〔40〕な どが 代 表 的 で あ る.大 橋 ほ か 〔5〕は,分 析 対 象 を1985∼99年 の 国 内 航 空 会 社3社 と して,幅 運 賃 制 度 の 実 施 や トラ ッ キ ン グ増 加 政 策,羽 田発 着 枠 の増 加 が,航 空 会 社 のパ フ ォー マ ンス に どの よ う な影 響 を 与 え た か を分 析 した.こ の 分 析 結 果 で は,国 内航 空 会 社3社 問 の 寡 占 的行 動(ク ー ル ノ ー競 争)を 仮 定 した 場 合,上 記 政 策 の 実 施 は航 空 会 社 の 限 界 費 用 に 影 響 を与 え,結 果 と して 消 費 者 余 剰 を増 加 させ た こ と を明 らか に し て い る.山 口 〔40〕は,分 析 対 象 を1980∼98年 度 の 国 内航 空 会 社3 社 と し て,基 本 的 な分 析 手 法 は大 橋 ほ か 〔5〕 に依 拠 した 上 で,先 の 政 策 要 因 に航 空 社 会 資 本 や オ イ ル シ ョ ッ ク変 数 を追 加 し,参 入 政 策 や 運 賃 政 策 の 規 制 緩 和 は 消 費 者 余 剰 を増 加 させ た こ と を明 らか に して い る. 最 後 に空 港 使 用 料 の特 別 措 置 の 実 施 に 関 す る分 析 は,澤 野 〔15,17〕 が あ る.澤 野 〔17〕で は,分 析 対 象 を1987∼2001年 の 路 線 別 航 空 運 賃 と して,沖 縄 路 線 特 別 措 置(1997年)や 第2種 空 港 特 別 措 置(1999年)の 実 施 が,航 空 運 賃 に どの よ うな 影 響 を与 え た か を分 析 し,運 賃 規 制 が 実 施 さ れ て い る期 間 で は航 空 運 賃 の 低 下 が 観 察 さ れ る もの の,運 賃 規 制 が 原 則 撤 廃 され た 航 空 自由 化 以 後 は 逆 に航 空 運 賃 が 高 騰 して い る こ と を示 した.ま た 澤 野 〔15〕で は,空 港 使 用 料 の特 別 措 置 が あ る種 の路 線 補 助 とな っ て い る 側 面 に注 目 し,沖 縄 路 線 特 別 措 置(1997年)の 実 施 が,那 覇 空 港 を離 発 着 す る航 空便 数 増 加 の 一 因 とな っ て い る こ と を示 して い る6).
航 空 自 由 化 以 後:政 策 目 標 と そ の 変 質 2000年 の 航 空 法 改 正 を契 機 に す る航 空 自由 化 に 関 す る政 策 目標 は,次 の よ う に う た わ れ て い る.「 この 航 空 法 の 改 正 は,規 制 緩 和 等 の 競 争 環 境 の整 備 に よ り,航 空 会社 間 の競 争 を促 進 させ, もっ て 「安 全 か つ 低 廉 で 利 便 性 の 高 い 航 空 輸 送 サ ー ビ ス の 提 供 」 を図 ろ う とす る もの で あ り, 改 正 航 空 法 施 行 後 は,航 空 会 社 に お い て は,市 場 原 理 の も と,市 場 の 状 況 に 応 じた 自由 な 経 営 判 断 に基 づ き,多 様 な 運 賃 ・サ ー ビス を設 定 し,か つ これ を随 時 変 更 す る こ とが 可 能 とな る. (「航 空 輸 送 サ ー ビス に係 る 情 報 公 開及 び 運 賃 ・料 金 制 度 の 具 体 的 な運 用 の 在 り方 に つ い て 」運 輸 省 航 空 局 監 理 部 航 空 事 業 課,1999年10月26日.)」 この 政 策 目標 の 実 現 を 目的 と して,参 入 政 策 で は需 給 調 整 規 定 と呼 ば れ る 経 済 的 規 制 の 撤 廃,運 賃 政 策 で は 認 可 制 度 か ら事 前 届 出 制 移 行 に よ る運 賃 規 制 が 原 則 と して廃 止 され る こ と と な っ た.こ の航 空 自 由化 以 後 の 経 緯 は,表2 に お い て ま とめ られ て い る. しか しこ の 完 全 な航 空 自 由化 の 時 期 に お い て,言 及 し な け れ ば い け な い重 要 な点 は,劇 的 な 外 生 的 構 造 変 化 が 発 生 した こ とで あ る.こ の構 造 変 化 と は,9.llテ ロ勃 発 及 び 米 英 軍 イ ラ ク戦 争,新 型 肺 炎SARS発 生 に よ る劇 的 な 航 空 不 況 で あ る.こ れ ら事 件 の 発 生 は,航 空 利 用 客 の 大 幅 な 減 少(需 要 シ ョ ック)と 航 空 機 燃 料 価 格 の 高 騰 に よ る 運 航 費 用 の 増 大(コ ス ト ・プ ッシ ュ) を招 き,航 空 会 社 の 採 算 を大 幅 に 悪 化 させ る こ と に な っ た.こ の 結 果,航 空 サ ー ビ ス市 場 で は 企 業 再 編 が 進 み,既 存 企 業 で は 日本 航 空(JAL)と 日本 エ ア シ ス テ ム(JAS)の 統 合(JJ統 合) と全 日空(ANA)の 企 業 ネ ッ トワ ー ク強 化 を,新 規 参 入 企 業 で は北 海 道 国 際 航 空(ADO)と ス カ イ ネ ッ トア ジ ア航 空(SNA)の 経 営 不 振 とそ の経 営 再 建 を 引 き起 こす こ と に な っ た7). この 航 空 不 況 と い う構 造 変 化 の 発 生 は,航 空 局 の 航 空 自 由化 政 策 を変 質 させ る こ と に な っ た. まず 参 入 政 策 で は,東 京 国 際 空 港(以 下 か ら は羽 田 空港 とい う)の 発 着 枠 の 取 扱 につ い て で あ る.日 本 の航 空 サ ー ビス 市 場 に お い て,新 規 参 入 を 阻 害 す る要 因 と し て様 々 な 要 因 が 議 論 され て い た が,究 極 的 に は混 雑 空 港 で あ る 羽 田空 港 の発 着 枠 に 制 約 が あ る こ と(ボ トル ネ ック 問題) が 主 因 で あ る こ とが 理 解 され,航 空 局 で は暫 定 的 な が ら新 規 参 入 企 業 に配 慮 した 配 分 を 実 施 し て い た(2000年 羽 田 空 港 の発 着 枠 配 分 ・5年 期 限).し か し航 空 不 況 に よ る構 造 変 化 に よ っ て, 航 空 局 は既 存 企 業 の 経 営 支 援 策 を打 ち 出す 必 要 に迫 られ る こ とに な っ た.こ れ が 「航 空 事 業 経 営 基 盤 強 化 総 合 対 策 プ ロ グ ラ ム(航 空 局 監 理 部 航 空 事 業 課)」 で あ る.こ の な か で2000年 に配 6)こ の空港使用料の特別措置 は,経 済特 区効果の一種 として考 えることがで きる.経 済特区効果の計量評 価 の手法 については,鈴 木 〔19〕がその詳細 を説 明 している. 7)航 空 自由化の実施 において,既 存企業が新規参入企業の参入促進に協力す ることが うたわれていたが, 航空不況 による構造変化で,既 存企業が協力する余力 を失った点や,新 規参入企業 の運航を容認する余力 を失い対抗的な競争 に入った意識変革の側面な どが,新 規参入企業の経営不振の間接的 な要因 として考え るこ とがで きる.
分 さ れ た 羽 田 空 港 の 発 着 枠 に 関 し て,既 存 企 業 と 新 規 参 入 企 業 間 に お け る 再 配 分 が 実 施 さ れ た (2005年 羽 田 空 港 の 発 着 枠 回 収 と 再 配 分 ・5年 期 限).羽 田 空 港 の 発 着 枠 は1便 分 で 年 間20億 一30億 円 の 売 り上 げ を 稼 ぐ ドル 箱(日 本 経 済 新 聞,2002年4月24日,朝 刊.)で あ る の で,そ の 再 配 分 は 航 空 会 社 の 経 営 に 大 幅 な 影 響 を 与 え る 要 因 で あ る.こ こ で 航 空 局 は,羽 田 空 港 の 発 着 枠 配 分 に 関 し て,新 規 参 入 政 策 と 既 存 企 業 の 経 営 支 援 策 と い う2つ の 面 で ト レ ー ド ・オ フ に 直 面 す る こ と に な っ た. も う 一 つ は,運 賃 政 策 に つ い て で あ る.2000年 施 行 の 改 正 航 空 法 で は,航 空 会 社 の 運 賃 設 定 の 自 由 を 認 め る 一 方 で,不 適 切 な 場 合 に は 航 空 局 が 変 更 命 令 を 出 す こ と が で き る こ と と さ れ て い る.航 空 局 が こ の 変 更 命 令 権 を 行 使 す る 意 志 が あ る か は 不 明 で あ る が,こ の 命 令 権 行 使 の 意 志 の 有 無 は,航 空 会 社 の 運 賃 収 入 及 び 運 賃 政 策 に 大 幅 な 影 響 を 与 え る 要 因 で あ る8).し か し 航 空 局 自 体 が 航 空 会 社 の 経 営 支 援 を 念 頭 に 置 く 以 上,こ れ ら 命 令 権 行 使 に は 慎 重 に な ら ざ る を 得 な い 側 面 が あ る.こ の た め 近 年 で は,競 争 政 策 を 掌 る 公 正 取 引 委 員 会(以 下 で は 公 取 委 と い う) に よ る 航 空 運 賃 設 定 の 是 非 に 関 す る 関 与 が 高 ま っ て い る9). 航 空 自 由 化 の 政 策 評 価:そ の 成 果 と 問 題 点 こ の よ う に 近 年 に 実 施 さ れ た 航 空 自 由 化 政 策 は,当 初 に 想 定 さ れ た 政 策 目標 の 実 現 の た め の 8)2002年12月 に着 陸料 改 定 に 関 して,航 空 会社 が そ の 改 定分 を運 賃 転 嫁 す る こ と を表 明 した こ とに対 し て 変 更命 令 を出 す こ と を検討 した こ とが あ る(日 本 経 済 新 聞,2002年12月27日,夕 刊.). 9)近 年 の航 空 サ ー ビス 市 場 に お け る競争 政 策 で は,航 空 券 の販 売 習 慣 に も関心 が 集 ま って い る(山 内 〔39〕). これ は,日 本 で は航 空 券販 売 に占 め る旅 行 代 理店(travel agency)の 役 割 が 非 常 に大 きい た め で あ る.こ の 理 由 は,大 き く分 けて2つ の理 由 が あ る.第1は,日 本 の旅 行 サ ー ビス は,旅 行 パ ック商 品依 存 度 が 高 い た め,航 空 会社 が一 定 座席 数 を恒 常 的 に旅 行代 理 店 に卸 売 りす る習慣 が あ る こ とで あ る.ま た 日本 で は, 大 手旅 行 代 理 店 だ けで 旅 行パ ック商 品市 場 をほ ぼ 占有 す る 寡 占構 造 に もあ る.こ の ため 新 規 参入 企 業 は, 大 手旅 行 代 理 店 と取 引 で きる か否 か が,航 空 サ ー ビス 市 場 で生 き残 れ る か否 か を規 定す る要 因 とな って い る.ス カ イマ ー クエ ライ ンズ は,当 初 に は地 方 の 中小 旅 行 代理 店 と しか契 約 で きな か った が,そ の後 に 大 手 旅行 代 理 店 と契約 を結 べ る よ う にな っ た経 緯 が あ る(戸 崎 〔28〕).第2は,既 存 の航 空 会 社 と路 線 就航 先 で あ る地 元 旅行 代 理 店(及 び地 元 バ ス鉄 道 会社 ・観 光 会社)の 垂 直 統合 も し くは垂 直 的 な 関係 であ る. 既 存 の航 空 会社 は,集 客 の た め に,路 線 就 航 先 の 地元 バ ス 鉄道 会 社 や 観光 会 社 と共 同 出資 した旅 行 代 理 店 を設立 し,航 空 券 の販 売 か ら空 港 カウ ンター で の チ ェ ッ クイ ンまで を委託 す る場 合 があ る.ま た一 般 に 地 方 で は,航 空 サ ー ビ ス を稀 に しか 利 用 しな い人 の比 率 が 高 い た め,事 前 に旅 行 代理 店 で 航 空 券 を発 券 して 空 港 に 向か う こ とが 多 い.こ の場 合,地 元 バ ス 鉄 道会 社 や 観光 会 社 を窓 口 とす る顧 客 を既 存 企業 が 囲 い 込 む こ とが で きる た め,新 規参 入 企 業 に とっ て競 争制 限的 な 要 因 と な るこ とが あ る.そ の 例 と して,ス カイ マ ー クエ ラ イ ンズ は,新 規 に就 航 したが 苦 戦 してい る羽 田一 徳 島 線 の営 業 施 策 につ い て,「特 に,徳 島 の よ うな地 方 都 市 で は,古 くか らのつ きあ い な どが極 め て重 要 です か ら,地 元 に営 業 支店 を展 開 し,地 道 な営 業 努力 に よ って 道 を 開拓 して ゆ く必 要 が あ る と思 い ます 」と述べ てい る(柳 田 〔35〕).この よ うに航 空 サ ー ビス に お け る流 通市 場 政 策 は,重 要 な意 味 を持 って い る.こ の 点 の分 析 につ い て は,中 条 〔22〕,山内 〔39〕 を参照.
市 場 環 境 が 大 幅 に変 化 した こ とに よ り,政 策 目標 が 変 質 せ ざ る を得 な く,ま た 公 取 委 とい う別 の 政 府 機 関 の 関 与 が 高 ま っ た とい う変 化 が 発 生 した.こ の た め 航 空 自 由化 に 関 す る 政 策 評 価 は,こ の よ う な外 生 的 な構 造 変 化 の 影 響 を 除去 した 上 で,「安 全 か つ 低 廉 で利 便 性 の 高 い 航 空 輸 送 サ ー ビ ス の 提 供 」 が 実 現 され た か を 評 価 し な け れ ば な ら な い と い う難 題 に 直 面 す る こ と に な っ た. 2000年 の 改 正 航 空 法 に よ る航 空 自 由化 に 関 す る 政 策 評 価 と して は,内 閣府 政 策 統 括 官 編 〔29〕 と国 土 交 通 省 〔11〕の2つ が あ る.内 閣府 政 策 統 括 官 編 〔29〕で は,航 空 サ ー ビス の規 制 緩 和 に 関 して消 費 者 余 剰 を計 算 し,1993年 度 か ら2002年 度 の 累 計 で,国 内 航 空 運 賃 の 低 下 に よ っ て2,739億 円 の 余 剰 が 発 生 した こ と を報 告 して い る.ま た 国 土 交 通 省 〔11〕は,自 ら実 施 した 航 空 サ ー ビ ス の 規 制 緩 和 に 関す る 政 策 評 価 で あ り,そ の 評 価 項 目は 多 岐 に わ た っ て い る.こ の 評 価 結 果 で は,「 規 制 緩 和 後,特 に大 きな 問 題 は生 じて お らず,ま た,運 賃 の 多 様 化 や価 格 競 争 を 通 じ て,利 用 者 の 利 便 の 増 進 に つ なが っ て い る もの と思 わ れ る 」 と さ れ て い る.し か し この 評 価 書 に お い て も,劇 的 な構 造 変 化 と な っ た 航 空 不 況 の 取 扱 い に 苦 慮 して い る こ とが 明 記 され て い る.ま た 公 取 委 の 関 与 の 高 ま りに 関す る 点 につ い て は,特 に 明 示 的 な分 析 は な い.次 節 で は,航 空 サ ー ビス の 社 会 的 規 制 の展 開 につ い て 説 明す る こ と とす る. 5.社 会 的 規 制 と そ の 改 革 一 運 航 ・整 備 ・乗 員 及 び 航 空 管 制 を 中 心 に一 本 節 で は,航 空 サ ー ビス に お け る 社 会 的規 制 と そ の緩 和 につ い て 明 らか に す る こ とが 目的 で あ る.以 下 で は,は じめ に運 航 ・整 備 ・乗 員 に関 す る 規 制 とそ の緩 和 の流 れ につ い て 説 明 し, そ の 後 に航 空 管 制 の 規 制 緩 和 と羽 田 空 港 に お け る発 着 枠 増 設 問題 との 関連 を 整 理 して い る'°). 運 航 ・整 備 ・乗 員 に 関 す る 規 制 と そ の 緩 和 航 空 サ ー ビス にお け る 主 要 な社 会 的 規 制 は,飛 行 方 法 を規 制 す る運 航 関係,機 体 の安 全 性 を 担 保 す る た め の 航 空 機 安 全 関係,そ して操 縦 者 の 資 質 を確 保 す るた め の乗 員 関係 の3つ で あ る. これ ら社 会 的 規 制 は,航 空 サ ー ビス の 安 全 性 確 保 の た め に は必 要 不 可 欠 と考 え ら れ て きた 規 制 で あ っ たが,近 年 で は そ の 規 制 緩 和 が 実 施 され て い る.こ の 規 制 緩 和 の理 由 は,大 き く分 け て 航 空技 術 に 関 す る革 新 に よ る もの と,経 済 的 規 制 の緩 和 に伴 う競 争 政 策 促 進 の 観 点 か ら実 施 さ れ る もの の2つ の 側 面 を含 ん で い る.特 に後 者 の 競 争 政 策 の 観 点 か ら は,過 去 の 航 空 会 社 の 保 護 政 策 の 結 果,航 空 安 全 の 担 い手 で あ る要 員 ・施 設 ・ノ ウハ ウ等 が 既 存 の航 空 会 社 の 集 中 して 10)社 会 的規制に関す る議論は,山 内 〔36,37〕がある.ま た航空サー ビスの社会的規制 は,技 術的規制 と も呼ばれるが,本 稿では社会 的規制 として表記することとする.
お り,そ れ らの 資 源 を新 た に確 保 で き な い た め,企 業 の 新 規 参 入 を阻 害 す る 要 因 とな っ て い る とす る見 解 が あ る(中 条 〔24,26〕).こ の航 空 サ ー ビス にお け る社 会 的 規 制 の 緩 和 の 実 施 は, 競 争 政 策 の 進 展 に配 慮 し なが ら も,航 空 技 術 の 進 歩 で担 保 で きる 部 分 の み に つ い て実 施 す る方 向性 が 確 立 され て い る. 表3は,航 空 サ ー ビス にお け る社 会 的 規 制 の 緩 和 と,航 空 政 策 の 進 展 を 年 表 の 形 で ま とめ た もの で あ る.ま ず 運 航 関係 で は,2000年 航 空 法 改 正 の 際 に運 航 安 全 関 係 の機 器 搭 載 が 義 務 化 さ れ,そ の 後 に は 飛 行 方 法 や 飛 行 ル ー トに 関 す る規 制 緩 和 が 予 定 され て い る(上 下 飛 行 間 隔 ・直 行 ル ー トな ど).こ れ らの 規 制 緩 和 に よ っ て,飛 行 間 隔 で は 年 間 約16億 円(日 本 経 済 新 聞, 2005年2月1日,朝 刊.),直 行 ル ー トで は 年 間約50億 円(日 本 経 済新 聞,2004年3月31日, 朝 刊.)の 費 用 削 減 が 試 算 さ れ て い る.次 に 航 空 機 安 全 関 係 で は,1997年 に検 査 基 準 関 係(耐 空 証 明 ・形 式 証 明 ・予 備 品 証 明 の合 理 化)と 整 備 関 係(修 理 改 造 工 場 ・整 備 改 造 認 定 事 業 場 の 認 定 期 間 延 長)に 関 す る規 制 緩 和,2000年 に は 航 空 機 整 備 の 従 事 者 資 格(航 空 整 備 士 ・航 空 運 航 整 備 士)に 関 す る 改 正 が 実 施 され て い る1').最 後 に乗 員 関 係 で は,1994年 か ら1997年 にか け て, パ イ ロ ッ トの 訓 練 方 法 に 関 す る規 制 緩 和(シ ミュ レー タ ー化),身 体 検 査 基 準,年 齢 制 限 の 引 き 上 げ,証 明 申請 の簡 略 化 が 実 施 され,2003年 で は さ らに パ イ ロ ッ ト訓 練 ・資格 認 定 に お け る規 制 緩 和(シ ミュ レ ー ター 化)が 実 施 され て い る. これ らの航 空 サ ー ビス にお け る社 会 的 規 制 の 緩 和 に つ い て,一 部 分 につ い て そ の計 量 評 価 を 実 施 し た もの が あ る'2).運 輸 政 策 研 究 機 構 〔4〕 で は,1997年 実 施 の 航 空 機 検 査 に 関 す る規 制 緩 和 と,1994∼1997年 実 施 の 航 空 機 操 縦 士 資 格 に 関 す る規 制 緩 和 につ い て,そ の 効 果 を 分 析 し て い る.た だ し厳 密 に規 制 緩 和 の 実 施 が,ど の よ う な 経 済 効 果 を有 し た か を 評 価 す る の で は な く,あ る一 定 の 仮 定 の も とで 効 果 規 模 を計 算 す る方 法 を取 っ て い る.以 下 で は,数 多 くの 規 制 緩 和 に 関す る 経 済 効 果 を計 測 して い るが,消 費 者 の受 益 す な わ ち 航 空 運 賃 に 与 え た影 響 につ い て の み 検 討 す る こ と とす る. まず1997年 実 施 の 航 空 機 検 査 に 関 す る 規 制 緩 和 で は,検 査 費 用 が1億 円,航 空 機 稼 動 に関 す る 機 会 費 用 が10億 円 の合 計11億 円 が 費 用 節 約 され る と試 算 さ れ た.こ こ で1985∼1996年 に お け る デ ー タ を利 用 して,費 用 節 約 分 が 航 空 運 賃 に転 嫁 され る割 合 を35.6%と 計 算 し,規 制 緩 和 に よ る費 用 節 約 分 の 内,全 体 と して4億 円 分 だ け航 空 運 賃 に還 元 され る(平 均 して0.Ol%だ け 航 空 運 賃 が低 下 す る)と して い る. また1994∼1997年 実 施 の 航 空 機 操 縦 士 資 格 に 関 す る規 制 緩 和 で は,訓 練 等 の 実 機 か ら シ ミュ レー タ ーへ の 移 行 に よっ て 人 件 費 が660万 円 減,航 空 機 燃 料 費 が3億 円減,航 空 機 稼 動 に関 す る機 会 費 用 が21億 円 減,シ ミ ュ レ ー ター の 減 価 償 却 費 で2億 円 増 の合 計22億 円 が 費用 節 約 さ 11)2000年 における航空整備士 および航空運航整備士 に関する改正経過につ いては,戸 崎 〔28〕を参照. 12)社 会 的規制の緩和 を計量的に分析 し,そ の効果を評価 した研究 は非常に少 ない.近 年,自 動車検査制度 の規制強化が,交 通事故に与 える影響を評価 した非常 に興味深 い研究 として斉藤 〔12〕がある.
表3社 会 的規 制 の緩和 と航 空政 策 れ る と試 算 した.こ こで 先 と 同 じ く費 用 節 約 分 が 航 空 運 賃 に転 嫁 され る割 合 を35.6%と し,規 制 緩 和 に よ る 費 用 節 約 分 の 内,全 体 と して8億 円 分 だ け 航 空 運 賃 に 還 元 さ れ る(平 均 し て 0.03%だ け航 空 運 賃 が 低 下 す る)と して い る. この よ うに 航 空 サ ー ビス にお け る 社 会 的規 制 の 緩 和 は,航 空 運 賃 に対 して 非 常 に小 さい 影 響 しか 与 え な い.加 え て先 の 試 算 に は,い くつ か の 問題 点 が 含 ま れ て い る.上 記 の 規 制 緩 和 の 効 果 試 算 で は,規 制 緩 和 に よ っ て航 空 会 社 の運 航 費 用 が 節 約 さ れ,そ れ が ほ ぼ 自動 的 に航 空 運 賃 に転 嫁 さ れ る との 仮 定 を置 い て い る.こ の 費 用 節 約 に よ る運 賃 転 嫁 の 有 無 は 自明 で は な く,2
節 の モ デ ル で 議 論 さ れ た よ う に各 路 線 の 競 争 状 態 に依 存 す る.運 輸 政 策 研 究 機 構 〔4〕 で も明 記 され て い る が,1997年 当 時 で は 日本 の 国 内 航 空 サ ー ビ ス市 場 は 完 全 に 自由 化 さ れ て お らず, 企 業 間 お よ び 路 線 内 に お け る競 争 が 十 分 に働 い て い な か った.こ の 場 合,節 約 さ れ た 運 航 費 用 は航 空 運 賃 に 転 嫁 さ れ る こ と は な い た め,こ れ ら の規 制 緩 和 の実 施 は事 実 上 の 航 空 会 社 へ の 経 営 補 助 と い う形 に帰 着 す る.こ の た め 航 空 サ ー ビ ス に お け る社 会 的 規 制 の緩 和 は,航 空 運 賃 対 策 とい う よ りも,そ の規 制 の 存 在 や 歴 史 的経 緯 が,新 規 参 入 の 阻 害 要 因 とな ら な い こ と を論 拠 に 実 施 さ れ て い る もの と考 え られ る. 航 空 管 制 の 規 制 緩 和:羽 田 発 着 枠 の 増 設 と の 関 係 航 空 管 制 に つ い て は,情 報 通 信 技 術 の 進 歩 と と もに,そ の 近 代 化 と高 度化 が 進 め られ,運 航 効 率 の 向 上 が 図 られ て い る13).先 の 上 下 飛 行 間 隔 や 直 行 ル ー トの 設 定 が 可 能 とな る背 景 に は, この 情 報 通 信 技 術 の 進 歩 に よ る航 空 管 制 機 能 の 高 度 化 が 寄 与 して い る.近 年,航 空 管 制 につ い て 問 題 と な る の は,羽 田 発 着 枠 の 増 設 との 関 係 で あ る.日 本 の 国 内 航 空 サ ー ビス 市 場 で は,羽 田 空 港 が 国 内 ハ ブ機 能 空 港 と な っ て い る た め,航 空 会 社 の 就 航 希 望 が 殺 到 し,新 規 航 空 会 社 に 配 分 で き な い 現 状 が あ る.こ の た め 羽 田発 着 枠 の 配 分 の有 無 が,新 規 参 入 を規 定 す る要 因 と な っ て お り,そ の 増 設 が 急 が れ て い る. 現 在,羽 田 空港 は2009年 を 目途 に新 滑 走 路 の 建 設 が 進 め られ て い るが,そ れ ま で の期 間 は他 の 手段 に よ っ て 発 着 枠 を増 設 す る 必 要 が あ る.こ の手 段 が,羽 田 空 港 に お け る飛 行 場 管 制 の 効 率 化 で あ る.表2で 示 され た2002年10月,2003年7月,2005年 実 施 予 定 の 羽 田発 着 枠 の 増 設 す べ て は,航 空 管 制 の効 率 化 に よっ て 実 施 され て い る.し か し近 年,航 空 管 制 に 関す る ミス が 相 次 い だ た め,2005年 実 施 予 定 の 増 設 は 延 期 さ れ て い る.ま た2006年 に は誘 導 路 を延 長 す る こ とで,発 着 枠 の 増 設 を行 う こ と と して い る. また 羽 田発 着 枠 の 増 設 問 題 は,航 空 機 騒 音 対 策 に 関 す る規 制 緩 和 と も関 連 して い る.飛 行 場 へ の 出 発 進 入 経 路 は,航 空 機 の 安 全 性 と周 辺 地 域 へ の 騒 音 対 策 の 両 面 か ら規 制 さ れ て い る. 2001年 に は,ノ ー ス バ ー ド運 航 と呼 ば れ る 羽 田空 港 の 北 側 進 入 に 関 す る検 討 が 実 施 され たが, 小 型 機 定 期 便 の 運 航 に 関 す る 具 体 的 な検 討 は 当 面 見 送 る こ と と さ れ た.ま た2009年 開 設 予 定 の新 滑 走 路 の 運 用 につ い て,千 葉 県 は航 空 機 騒 音 の増 加 を理 由 と して 飛 行 ル ー ト設 定 に 難 色 を 示 し,そ の後 に 修 正 され た 経 緯 が あ る.こ の よ う に航 空 機 騒 音 対 策 に 関す る 規 制 は,航 空 サ ー ビス にお け る社 会 的 規 制 の 一 つ で あ るが,騒 音 問 題 は 地 域 的 な利 害 対 立 を含 む こ とが 多 く,そ の 規 制 緩 和 は 容 易 に行 え ない もの と考 え られ て い る14). 13)航 空管制の仕組み については,澤 野 〔15〕を参照.
6.結 論 この 論 文 の 目的 は,日 本 の 航 空 サ ー ビ ス に お け る経 済 的 規 制 と社 会 的規 制 の 概 要 に つ い て ま とめ,規 制 緩 和 の動 向 と航 空 サ ー ビ ス市 場 の 変 化 を明 らか に す る こ とで あ る.経 済 的 規 制 とは, 経 済 活 動 の効 率 性 を高 め る こ とを 目的 と して,政 府 が 企 業 参 入 や価 格,生 産 量 に規 制 を 課 す こ とで あ る.日 本 の 航 空 サ ー ビ ス市 場 で は,1986年 よ り経 済 的規 制 の 緩 和 が段 階 的 に 実 施 さ れ, 1997年 に は 実 質 的 に規 制 は 撤 廃,最 終 的 に2000年 の航 空 自 由化 に よっ て,競 争 的 な市 場 環 境 が 整 備 さ れ た.し か し2001年 の9.11テ ロ後 の 航 空 不 況 とい う需 要 シ ョ ック の 発 生 に よ り,航 空 行 政 は既 存 航 空 会 社 の 経 営 支 援 の 側 面 が 強 くな り,航 空 自 由化 以 後 の競 争 政 策 が 変 質 した 側 面 が あ る. 社 会 的 規 制 と は,国 民 の 安 全 ・衛 生 ・健 康 の 確 保,お よ び 自然 環 境 保 全 な ど を 目的 と して, 労 働 環 境 製 造 方 法 や 製 品 ・サ ー ビス の 品 質 な ど に規 制 を課 す こ とで あ る.日 本 の航 空 サ ー ビ ス市 場 で は,新 規 航 空 会 社 の 参 入 障壁 と して社 会 的 規 制 の 存 在 が 指 摘 され て お り,1994年 か ら 整 備(航 空 機 安 全 関係)や 免 許(乗 員 関係)に 関 す る 規 制 緩 和 が 実 施 さ れ た.さ らに新 規 航 空 会 社 の 参 入 を 阻 害 す る 要 因 と して,羽 田空 港 の 発 着 枠 制 約 も指 摘 され て お り,航 空 管 制 の 効 率 化 とい う形 で の 規 制 緩 和 を実 施 して,新 規 に 配 分 す る発 着 枠 を増 設 し て い る.こ の よ う に漸 進 的 で あ りな が ら も 日本 の 航 空 サ ー ビス 市 場 で は,経 済 的 お よ び社 会 的 な規 制 緩 和 が 実 施 され て お り,競 争 的 な 市 場 環 境 の 整 備 が 進 め られ て い る. 最 後 は,今 後 に残 され た 課 題 で あ る'5).本 稿 で は,航 空 サ ー ビス に お け る規 制 緩 和 政 策 を評 価 す る た め に,そ の 政 策研 究 を行 う こ とが 目的 で あ っ た.し か し各 政 策 に 関 す る評 価 お よ びそ の研 究 に 関 して,明 確 に 合 意 さ れ た 事 項 を 明 らか にす る こ とは難 しい.こ の 理 由 は,各 研 究 に お い て 想 定 して い る航 空 サ ー ビ ス の 市 場 構 造 が 異 な る こ と と,数 量 的 な評 価 手 法 が 確 立 して い な い た め で あ る.今 後 に は,日 本 の 航 空 サ ー ビ ス市 場 を明 示 的 に 考 慮 した モ デ ル を設 定 し,そ の モ デ ルが 持 つ 含 意 を 数 量 的 に評 価 す る計 量 的 な分 析 手 法 の 構 築 が 期 待 さ れ て い る. また 日本 の 航 空 サ ー ビス 市 場 で は,羽 田空 港 の 発 着 枠 制 約 が 競 争 的 な市 場 環 境 の整 備 の 大 き な 障 害 とな っ て い る こ と は理 解 さ れ て い る(ボ トル ネ ッ ク問 題).こ の 制 約 さ れ た 発 着 枠 の 配 分 に関 して,航 空 局 で は 政 策 評 価 枠 と い う配 分 枠 を設 定 し,各 航 空 会 社 の 成 果 に基 づ い た 発 着 枠 配 分 を行 っ て い る.こ の 政 策 に 関 して,航 空 局 が 設 定 す る評 価 基 準 が 航 空 会 社 に どの よ う な 14)航 空機騒音対策の仕組み と概要 については,澤 野 〔18〕を参照.ま た羽 田発着枠 を規定するその他の要 因として 「空域」 という問題 がある。現在,首 都 圏周辺空域の管制権は在 日米軍の横 田基地(東 京都)が 持ってお り,そ の空域利用は幾分制限 されてい る.最 近,横 田基地の管制権移管 と軍民共用化が企図 され ている.し か し軍民共用化に伴 い,周 辺地域の航空機騒音が高まる可能性が あ り,今 後の展開は不透明な ままである. 15)こ の点の議論 は,浅 田義久(明 海大学),山 崎福寿(上 智大学)の 各氏か ら頂いたコメン トに よるところ が大 きい.こ こに記 して感謝いたします.
誘 因 を与 え る の か とい う点 や,配 分 され た発 着 枠 の価 値 の 計 測,お よ び そ の 配 分 政 策 に 関 す る 経 済 評 価 の 方 法 につ い て は,今 後 に 残 さ れ た 重 要 な課 題 で あ る と考 え られ る.
参 考 文 献
[ 1 ] Ito, Takatoshi., Political Economy of tion Policy in Japan : Case of Airline Services,
CPRC discussion Paper Series CPDP-6-E,
petition Policy Research Center, Fair Trade
Commission of Japan, 2003.
[ 2 ] Schiavo, M., Flying Blind, Flying Safe, Avon
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