加保
貴奈
†a)山口
陽
†芝
宏礼
†大島
心平
††中川
匡夫
†上原
一浩
†Multi-Band Concurrent RF Frontend for User-Centric Wireless System
Takana KAHO
†a), Yo YAMAGUCHI
†, Hiroyuki SHIBA
†, Shinpei OSHIMA
††,
Tadao NAKAGAWA
†, and Kazuhiro UEHARA
†あらまし スマートフォンなどのモバイルトラヒックの増加やモノのインターネット(IoT)による無線セン サの増加が予想されており,無線通信は大容量化のためマルチバンド化・高周波化が求められている.様々な無 線システムに柔軟に対応するため,著者らは統合アクセスポイントとネットワーク側でのソフトウェア信号処理 を行う「フレキシブルワイヤレスシステム」を提案してきた.本論文ではフレキシブルワイヤレスシステムにお けるアクセスポイント回路部の課題について述べる.マルチバンド化,アンテナ数増加時における部品点数の削 減を目指し,広帯域・低雑音受信フロントエンドIC と低温焼成セラミック(LTCC)を用いた小型モジュール を内蔵した300 MHz 帯,900 MHz 帯,2.4 GHz 帯,5 GHz 帯の 4 バンド受信モジュールと 4 バンドアクセス ポイント装置を試作し,マルチバンド一括・広帯域・低雑音特性を実現した. キーワード マルチバンド,フレキシブルワイヤレスシステム,SiGe BiCMOS,LTCC,マルチプレクサ
1.
ま え が き
近年スマートフォンや無線
LAN
(
Local Area
Net-work
)の普及によりモバイルトラヒックが急増してお
り,通信事業者はアクセス及びバックホール回線の更
なる大容量化が求められている.通信の大容量化には
シャノンの定理で示されるように無線帯域幅の増加が
有効であるが,モバイル通信に適した数
GHz
以下の
周波数は稠密に割り当てられており,今後の通信容量
の増大にはマルチバンド化と高周波数化が必須となっ
ている.また,
2.4 GHz/5 GHz
帯の無線
LAN
におい
ては端末及びアクセスポイント数が爆発的に増加して
いる他,モノのインターネット(
IoT
)として自営無
線のセンサシステムの普及も見込まれている.このよ
うな様々な無線通信システムをユーザの置かれた電波
†日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所,横須賀市NTT Network Innovation Laboratories, NTT Corporation, 1–1 Hikarinooka, Yokosuka-shi, 239–0847 Japan
††小山工業高等専門学校,小山市
National Institute of Technology, Oyama College, 771 Nakakuki Ooaza, Oyama-shi, 323–0806 Japan
a) E-mail: [email protected]
環境を分析して最適化し,ソフトウェア信号処理の技
術を用いて収容する統合プラットホームとして,著者
らはフレキシブルワイヤレスシステム(
FWS
)を提案
している
[1]
.
また通信大容量化のアプローチとして基地局のア
ンテナ数を増やし
MIMO
やビームフォーミングを行
う取組みも提案されている
[2], [3]
.しかしながら
RF
(
Radio frequency
)回路部の部品点数は一般的に(ア
ンテナ数)
×
(バンド数)に比例して増加するため装
置の低コスト化における課題が多い.また,無線エリ
アのスモールセル化による大容量化も検討されており,
アクセスポイントの設置場所などの制約から装置の小
型化も求められている.
本論文ではアクセスポイントの小型・低コスト化に
つながる,部品点数の削減を目指したマルチバンド送
受信機構成について提案し詳細を述べる.
2.
において
提案する
FWS
について述べ,
3.
で試作したアクセス
ポイント受信部,
4.
において送信部,
5.
においてア
クセスポイント装置の評価結果を示す.
図 1 フレキシブルワイヤレスシステム Fig. 1 Proposed Flexible Wireless System.
2.
フレキシブルワイヤレスシステム
提案する
FWS
は多種多様な無線システムを統合的
に収容し,新規無線システムに対してもソフトウェア
無線技術を用いて信号処理ソフトウェアのアップデー
トにより即時に対応可能な統合無線プラットホームを
目指している(図
1
)
.様々な無線システムが稠密に割
り当てられている
VHF
帯から
6 GHz
の電波に柔軟
に対応でき,かつ複数バンドを一括送受信するフレキ
シブルアクセスポイントと,光アクセス回線を介して
ネットワーク上に設置した様々な無線システムの信号
処理を一括してソフトウェア処理する構成を検討した.
ユーザの環境にあわせたカスタマイズや,端末数増
加による干渉回避などを行うため,ユーザの電波環
境の情報をネットワークに取り込み分析することでサ
ポートすることも目指している.膨大なデータ量とな
る広帯域な電波データを伝送するための電波データ圧
縮伝送技術や信号分離技術にも取り組んでいる
[1], [4]
.
複数の無線方式の同時利用を実現するため,フレキ
シブルアクセスポイント受信系
RF
の技術として,広
帯域・低雑音フロントエンドモジュールと,異なる周
波数帯域の無線信号の受信利得を適応的に制御する広
帯域適応ダイナミックレンジ制御技術を検討した.
同様に複数の無線方式の同時利用を実現する送信系
の
RF
技術として,マルチバンド同時増幅時のデジタ
ル歪補償技術を検討している.一つの最終段増幅器を
数バンドで共用することで装置の汎用性を高めること
を検討した.
Volterra
級数による非線形モデリングを
行い,バンド間に生じる奇数次の相互変調歪と高調波
歪の補償特性を確認した
[5]
.
3.
アクセスポイント受信部
従来のソフトウェア無線機や携帯電話などで報告さ
れているマルチバンド無線機は,切替えやチューナブ
ル機能を有し,同時に受信できるバンドは一つという
報告が多い
[6]
.しかし提案するフレキシブルアクセス
図 2 提案する無線受信機構成の例Fig. 2 Proposed receiver access point.
ポイントは,マルチバンドの無線信号を同時に送受信
することを目指している.上述のようなマルチバンド
一括受信機を実現しようとした場合,
(a)
広帯域なア
ンテナや
LNA
を並べ,広帯域な無線信号を直接デジ
タル化する方法,
(b)
単一バンドの受信機を複数並列
に並べる方法などが考えられる.しかしながら,
(a)
は
ADC
(アナログ・ディジタル変換器)のサンプリ
ング周波数を
10
数
GHz
以上と高くする必要があり,
かつ受信
RF
信号電力の広いダイナミックレンジに対
応するには高分解能であることが必要となり非常に高
機能の
ADC
が必要である.更にデジタル化した際の
データ量が非常に多くなるため信号処理部分の負荷が
大きくなる問題もある.
(b)
は
RF
回路部の部品点数
の増加及びハードウェアが大きくなること,バンド変
更や追加などに対応できないという課題がある.そこ
で装置規模を抑え,かつバンド数増加や変更にも対応
できるマルチバンド受信機の構成について検討を行っ
た.図
2
に提案する受信機構成例を示す.まず広帯域
またはマルチバンドアンテナで複数帯域を同時受信し,
広帯域なマルチプレクサを用いることで大まかなバン
ド分けを行う.周波数変換器の局部発振器(
LO
)信号
の周波数を変更することで受信する帯域を選択する.
またマルチバンド一括受信ミキサ
[7]
を使うことで更
にバンド数の増加に対応する.
提案するフレキシブルアクセスポイントの低コスト
化へ向けた課題抽出のため,
M2M
と
Wi-Fi
に対応し
た周波数
300 MHz
,
900 MHz
,
2.4 GHz
,
5 GHz
の
4
バンドを同時送受信する装置構成を検討した.更に,
部品点数の削減と低コスト化に向け
RF
部のフロント
エンド回路を
0.25 μm SiGe BiCMOS MMIC
チップ
で,マルチプレクサを低温焼成セラミック(
LTCC
)
でそれぞれ集積化し,図
3
のように小型実装した小型
図 3 提案するマルチバンド無線モジュール構成の例 Fig. 3 Proposed compact multiband receiver
mod-ule.
図 4 試作したマルチバンド無線機モジュール構成
Fig. 4 Proposed multiband receiver module, (a) lower frequency band IC, (b) higher frequency band IC.
LTCC
モジュールに
3
バンドのフィルタと
MMIC
の
集積を目指した.
今後アクセスポイントは
MIMO
用のアンテナ数が
増加していくことが予想されるが,同一システムの複
数アンテナの送受信系を一つの
MMIC
チップにまと
めることはチップ内部での
RF
信号の回り込みにより
経路間のアイソレーションが確保できず,チャネル間
干渉が大きくなるという課題がある.一方,提案する
マルチバンドの
1
チップ
MMIC
化の場合,チップ内
で扱う
RF
周波数と
LO
周波数が異なるため,チャネ
ル間のアイソレーションを確保できる.例えば
MMIC
内の
RF
信号の別経路への漏れ込みが
−30 dB
,
LO
信号の別経路への漏れ込みが
−30 dB
とすると,同
一システム間は
−30 dB
だが,異なる周波数の場合は
−60 dB
程度のアイソレーションが取れる.
3. 1
受信フロントエンド
IC
歩留まりを考慮しチップ面積が
3 mm
角以下とな
るよう三つの受信系を集積化した.図
4
に試作した
受信フロントエンド回路のブロック図を,図
5
にチッ
プ写真を示す.
0.3
∼
3 GHz
を受信する低周波数側
IC
と,
3
∼
6 GHz
を受信する高周波数側
IC
を試作した.
受信フロントエンド
IC
は性能と価格面から
0.25 μm
SiGe BiCMOS
プロセスで試作を行った.広い利得制
御機能を得るため
RF
帯域で可変利得低雑音増幅器
(
VGLNA
),可変減衰器を用いた他,ミキサ部にも利
図 5 受信フロントエンド IC (a) 低周波数側 (b) 高周波 数側Fig. 5 Developed receiver frontend ICs, (a)lower fre-quency band IC, (b) higher frefre-quency band IC.
得制御機能を分散し,合計で
80 dB
以上の利得制御の
実現を目指した.
VGLNA
は図
6
のようにバイポーラトランジスタ
を入力側インピーダンス整合回路として用いること
で広帯域性と低雑音性を得た.
2
段目増幅器において
NMOS
をフィードバック抵抗として可変させること
で
0
∼
14 dB
の範囲で連続的に利得を制御できる
[8]
.
ダウンコンバージョンミキサとしては高い入力線形
性をもち,ドレイン電圧の印加が不要であるレジス
ティブミキサを用いた.かつ,複数の
LO
信号を同時
に一つのミキサに入力し,複数の無線帯域の信号を
同時に
IF
帯へダウンコンバートするマルチバンド一
括受信ミキサとしての使用を検討した.このミキサ
は
LO
信号の相対電力を個々に制御し,ミキサの変
換利得をバンドごとに制御することで受信信号の電
力差を縮め,
ADC
のビット数を低減する.従来のミ
キサは
LO
信号の
1
次の成分と
RF
信号との掛合せ
た成分を
IF
として取り出すが,提案ミキサは
LO
信
号の
3
次の非線形成分を用いることが特徴である
[9]
.
二つの
LO
信号をそれぞれ
LO
1= A
1sin(ω
1t + φ
1)
,
LO
2= A
2sin(ω
2t + φ
2)
とするとその合成値の
3
次
非線形成分は以下のように表せる.
LO
3 sum= A
31sin
3(ω
1t + φ
1)
+ 3A
21A
2sin
2(ω
1t + φ
1) sin(ω
2t + φ
2)
+ 3A
1A
22sin(ω
1t + φ
1) sin
2(ω
2t + φ
2)
+ A
32sin
3(ω
2t + φ
2)
上記の式を展開すると
A
1A
22sin(ω
1t + φ
1)
の成分
が含まれる.これは
LO
1の
1
次成分と,
LO
2の振幅
の
2
乗に比例する.つまり,
LO
1の電力が小さいと
きにでも
LO
2の電力が大きければ,この成分が優位
となり,周波数変換を行うことができる.かつ,
LO
1図 6 可変利得低雑音増幅器の回路図 Fig. 6 Variable gain low noise amplifier.
図 7 マルチバンド一括受信ミキサ (a) 回路図 (b) IF 出 力の LO 電力制御特性
Fig. 7 Proposed multi-band mixer (a) circuit, (b) conversion gain control by LO input power.
図 8 マルチバンド一括受信ミキサ (a) 提案する相対電力
制御 (b) LO 電力制御のみ
Fig. 8 Measured IF output power versus RF input power of mixer. (a) proposed relative power control, (b) with power control.
の
1
次に比例する線形制御特性が得られる.図
7
にミ
キサにおいて
300 MHz
帯と
900 MHz
帯の
RF
信号を
同時に
10
∼
30 MHz
帯の
IF
帯へ変換し,
300 MHz
帯
LO
(
LO
1)電力を制御した測定結果を示す.
LO
1電
力の
−60 dBm
から
0 dBm
の範囲において,
IF
1の変
換利得を線形に制御できている.このとき
900 MHz
帯
RF
信号の変換信号である
IF
2の電力に影響を与え
ていない,つまりバンドごとの独立利得制御ができて
いる.また,
LO
信号電力の総和がある一定以上の電
力を入力するため,
RF
信号に対する線形性も高いと
いう特徴がある.図
8
にミキサにおいて提案する相対
電力制御を行った場合と
LO
信号電力を増減した場合
との
RF
信号入出力特性の比較を示す.提案する相対
図 9 低域側 IC の測定結果 (a) 変換利得と NF,(b) 変 換利得制御特性(2.4 GHz CW 入力時) Fig. 9 Measured receiver front-end IC (a) conversiongain and NF, (b) conversion gain control ver-sus RF input power of 2.4 GHz CW input.
電力制御は
LO
電力を
0 dBm
以上に維持しており
RF
信号に対する線形性が高い.
図
9 (a)
に低周波数側
IC
内の利得及び
NF
測定結
果を示す.
300 MHz
から
3 GHz
の範囲で利得
20 dB
以上,
NF
は
3.1 dB
以下の低雑音と,広帯域かつ低雑
音を実現している.図
9 (b)
に
VGLNA
及び後段に配
置した
RF
帯ステップアッテネータによる変換利得制
御の評価の一例として,入力
RF
周波数
2.4 GHz
の測
定結果を示す.
3. 2
広帯域低損失マルチプレクサ
部品点数の削減のため,
LTCC
でマルチプレクサ
を集積化し
IC
パッケージング機能ももたせることを
検討した.
300 MHz
,
900 MHz
,
2.4 GHz
帯に分ける
トリプレクサを設計した.回路小型化のため積層イン
ダクタと積層キャパシタの集中定数素子を用いた構成
を採用した.積層インダクタは自己共振周波数を有す
るが,この点を考慮して設計を行った.帯域通過フィ
ルタ部においてバンドリジェクション用共振器を構成
する際には,自己共振のキャパシタンス成分を共振器
の一部として積極的に活用した.低損失化は
GND
と
の距離を考慮したインダクタの層構成により実現し
た.図
10 (a)
にトリプレクサの回路構成,図
10 (b)
に
LTCC
の断面図を示す.
LTCC
基板は,比誘電率
7.9
,
tan δ 0.0015
の一般的な基板を想定した.
PAD
用線路
2
層,
GND
面
2
層を上下に設けた他,基板内部に設
けた
12
層の導体層で構成した.トリプレクサ部の形
状は
5.0 × 3.5 × 0.64 mm
3と小型化を実現した.図
11
にオンウェハ測定時の
S-parameter
測定結果を示す.
広帯域かつ低損失な通過特性を得ている
[10]
.
3. 3 4
バンド受信モジュール
図
12
に 試 作 し た
4
バ ン ド 受 信 部 の ブ ロック 図
を 示 す.赤 線 部 分 を
FR4
基 板 に 実 装 し
5 cm
角 へ
図 10 トリプレクサ (a) 回路図,(b) LTCC の断面図 Fig. 10 (a) Proposed LTCC triplexer, (b) side view
of LTCC.
図 11 トリプレクサの S-parameter 測定結果 Fig. 11 Measured S-parameter of LTCC triplexer.
図 12 4バンド受信モジュールのブロック図
Fig. 12 Proposed quad-band receiver block.
集積化した(図
13
).
4
バンド化にあたり,前述の
LTCC
トリプレクサと市販のデュプレクサ(太陽誘
電
FI168P245010
),市販の
5 GHz Wi-Fi
用帯域通過
フィルタ(
TDK DEA255375BT-2076A1
)を組合せ
4
バンドのマルチプレクサを形成した.受信フロント
エンド
MMIC
を
1 cm
角の
LTCC
へワイヤボンディ
ングで実装し(図
14
)
,
MMIC
への信号配線,電源配
線を
LTCC
の配線層で作成することで
MMIC
のパッ
ケージとして用いて部品点数を削減し,メタルキャッ
プで封止し
FR4
基板へ実装した.
図
15
に受信モジュール部の
NF
測定結果を,図
16
に変換利得の測定結果を示す.周波数変更に柔軟に対
応する広帯域な通過特性を得ており,ターゲットの自
図 13 4バンド一括受信モジュール(基板サイズ 5 cm 角)Fig. 13 Quad-band receiver module (5 cm× 5 cm).
図 14 1 cm角受信モジュール写真 (a) 低周波数側 (b) 高 周波数側
Fig. 14 Receiver module (1 cm× 1 cm), (a) lower frequency band, (b) higher frequency band (5 GHz).
図 15 雑音指数測定結果 (a) 低周波数側モジュール (b)
高周波数側モジュール(I, Q 出力)
Fig. 15 Measured noise figure of receiver front-end modules, (a) lower frequency band module, (b) higher frequency band.
図 16 4バンド受信モジュールの変換利得測定結果
Fig. 16 Measured conversion gain of developed quad-band receiver front-end module.
を実現しており,損失となる外付けバランが不要であ
る.また,
LTCC
,ワイヤボンディング,メタルキャッ
プを用いた
1 cm
角のモジュール化で
NF
の増加は
1
∼
2 dB
程度であった.
4.
アクセスポイント送信部
送信部は受信部と異なり,電波法上スペクトラムマ
スク等の不要放射の規制があること,最終段増幅器の
電力効率の低下などもあり,
300 MHz
から
6 GHz
の
範囲の広帯域化と部品の共用化は難しいと考えた.し
かし,比較的近い周波数においては増幅器を共用する
ことにより部品点数を削減できるメリットがあると考
え,
300 MHz
と
900 MHz
の信号の同時増幅に取組ん
だ.丁度
3
倍の調波関係にあり,
3
次非線形歪の影響
が大きく歪補償が必要である.図
17
に試作した
4
バ
表 1 外部技術との比較Table 1 Comparison with other wideband receiver ICs.
図 17 4バンド送信回路部のブロック図
Fig. 17 Block of quad-band transmitter.
のアップコンバータ構成とした.デジタル歪補償を行
う際のフィードバック回路として試作した広帯域受信
SiGe BiCMOS MMIC
を
LTCC
及び
FR4
基板に実
装し,
4
バンドを一括フィードバック可能な構成とし
た(図
18
).このフィードバック回路を用いた
2
バン
ド同時増幅時のデジタル歪補償は広帯域な増幅器単体
と組合せて評価し有効性を確認した
[13]
.
5. 4
バンドアクセスポイント装置
試作した受信モジュールと送信部を
IF
回路及び
LO
信号源も追加し,
4
バンドアクセスポイント装置を試
作した.外観写真を図
19
に示す.なお,送信及び受
信部は共通の
100 MHz
の基準信号源で
LO
信号を同
期させた.目標値と測定結果を表
2
にまとめる.マル
チバンドモジュールでも単一バンドの市販品と同程度
の性能を目指した.
300 MHz
,
900 MHz
,
2.4 GHz
の
3
バンドにおいて
NF 5 dB
以下と低雑音を実現した.
図 18 マルチバンド一括フィードバック回路Fig. 18 Multi-band feedback circuit.
図 19 4バンドアクセスポイント装置の写真
Fig. 19 Quad-band transceiver.
表 2 アクセスポイント装置受信部測定結果
では
RF
部,
LO
部,
IF
部で合計
80 dB
以上の利得
制御特性を得た.また,同一電力の
4
波の
RF
帯
CW
信号同時入力時のバンド間アイソレーションを測定評
価した.
300 MHz
,
900 MHz
の経路から
2.4 GHz
へ
のアイソレーションは
60 dB
以上,
2.4 GHz
の経路か
ら
300 MHz
,
900 MHz
の経路へのアイソレーション
は
55 dB
以上という結果となった.
5 GHz
帯は同じ
FR4
基板上に実装しているが,
LTCC
モジュールは
分かれているため,リーク信号は検出されず,
70 dB
以上のアイソレーションを確認した.
6.
む す び
無線通信のマルチバンド化及びアンテナ数増加時に
課題となるアクセスポイントの部品点数の増大を抑え
るため,マルチバンドかつ広帯域な信号を一括送受信
する装置構成を提案し試作評価した.受信側において
フロントエンド
SiGe BiCMOS MMIC
と
LTCC
分
波器を用いた小型モジュールを内蔵した
4
バンド受
信モジュールを試作した.バイポーラトランジスタを
整合回路として用いる広帯域低雑音増幅器,マルチバ
ンドを一括周波数変換し,かつバンドごとの独立利得
制御を実現するミキサ,広帯域かつ低損失で
IC
パッ
ケージを兼ねた
LTCC
分波器を内蔵し,システム変更
への柔軟性を確保した.
MMIC
と
LTCC
実装時にお
いても広帯域な周波数特性の劣化は少なく,
300 MHz
から
2.4 GHz
用の低周波数側受信モジュールにおいて
変換利得は
20 dB
以上,雑音指数は
5 dB
以下を実現
した.
4
バンド同時受信時のアイソレーションは同一
MMIC
チップ内の受信で
2.4 GHz
以下で
55 dB
以上
となることを確認した.
文
献
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reconstruction method for simultaneously received multi-system signals in flexible wireless system,” IE-ICE Trans. Commun., vol.E95-B, no.4 pp.1085–1092, April 2012.
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[13] I. Ando, G. Tran, K. Araki, T. Yamada, T. Kaho, Y. Yamaguchi, and T. Nakagawa, “Experimental valida-tion of digital pre-distorvalida-tion technique for dual-band dual-signal amplification by single feedback archi-tecture employing dual-band mixer,” IEICE Trans. Electron., vol.E98-C, no.3, pp.242–251, March 2015. (平成 27 年 9 月 30 日受付,28 年 1 月 6 日再受付, 4月 6 日公開)
イクロ波集積回路の研究に従事.博士 (工 学).2010-2012 東北大学電気通信研究所 客員准教授.2014-2015 九州大学システム 情報科学府客員准教授.現在,NTT 未来ねっと研究所主任研 究員.1998 APMC 国際会議 Japan Microwave Prize 受賞.
2003度学術奨励賞受賞.2015 本会通信ソサイエティ論文賞 受賞.2013-2014 電子情報通信学会東京支部委員,2014 同学 会エレクトロニクスソサイエティ論文編集委員,2015 和論文 誌 C 2015 年 10 月小特集号編集幹事,総務省情報通信審議会 ITU部会専門委員,IEEE 会員.