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戦略的意思決定プロセスの組織化に関する理論的研究

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Academic year: 2021

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戦略的意思決定プロセスの組織化に関する理論的研

著者

文 智彦

雑誌名

埼玉学園大学紀要. 経済経営学部篇

18

ページ

43-56

発行年

2018-12-01

URL

http://id.nii.ac.jp/1354/00001143/

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基づいてなされ、戦略決定のプロセスよりも 決定の内容が問われることが少なくない。こ のことは実践上の問題であるだけでなく、経 営学などのアカデミックな領域における理論 の不十分さを示していると考えられる。この ような問題に関連して、戦略的意思決定プロ セスを設計するためのインプリケーションを 提示することが本稿の目的である。  本稿では第一に、コンティンジェンシー・ アプローチ(contingency approach)に基づ く決定プロセスのモデル化に関わる諸研究の 限界を明らかにする。これらの研究は、モデ ルを類型化し、その活用について明らかにし てきたが、そこではコンティンジェンシー要 因を考慮した適切なモデルの選択という点を 重視している。そして環境要因を含む多様コ ンティンジェンシー要因と類型化されたモデ はじめに  成功する企業と失敗する企業の違いの要因 は何であろうか。その要因として経営環境、 企業の体質、モチベーションやリーダーシッ プの欠如、戦略の不在ないし間違った戦略の 存在、等々多様な要因が考えられるが、適切 な戦略の不在あるいは間違った戦略の存在は 戦略的意思決定プロセスの問題であると捉え られる。このプロセスでは、「戦略を決定する こと」と「戦略を決定するプロセスを設計す ること」が意思決定主体の重要な役割となる。 このことは、戦略決定がうまくいかないとき、 決定内容自体だけでなく、決定のプロセスを 熟慮する必要があるということを意味するが、 経営の実践において、戦略の決定はトップ・ マネジメントやリーダーなどの力量や経験に

Theoretical Study on Organizing of Strategic Decision-Making Process

 

文   智 彦

BUN, Tomohiko  コンティンジェンシー・アプローチに基づく決定プロセスのモデル化に関わる諸研究 は、モデルを類型化し、その活用について明らかにしてきたが、各モデルがいかに形成 されるのかについて詳細には論じてこなかったという限界がある。それゆえ戦略的意思 決定プロセスを「非構造化された」プロセスととらえ、戦略的意思決定プロセスが新規性、 複雑性、変更可能性によって特徴づけられるという観点に基づきつつ、戦略的意思決定 プロセスをミクロレベルでとらえ、意思決定主体のアクションおよびテクニック、スキ ルなどを含むアクティビティについて理論的に実践的に活用可能なものにするためのイ ンプリケーションを提示する。 キーワード : 戦略的意思決定プロセス、アクティビティ・ベースト・アプローチ、意図型プロセス、創発型 プロセス

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用可能なものにするためのインプリケーショ ンを提示する。 1.戦略的意思決定プロセス研究におけ るコンティンジェンシー・アプロー チの限界  戦略的意思決定プロセスに関する諸研究に おいては、主として戦略的意思決定プロセス の分類、各プロセスと環境との適合性、各プ ロセスのコンフィギュレーション、等々が論 じられてきた。総合的に見ると、戦略的意思 決定プロセスの類型化・分類化が提示され、 状況に応じてどのタイプを採用すべきかいう ことが論じられ、とりわけ、二分法に基づき 環境とプロセスの適合関係について論争がな されてきた。  例えば、Mintzberg(1973)、Miles&Snow (1978)、Hart(1991, 1992)、等々による諸研 究が提示した類型においては、それぞれの特 徴を示すフレームワークや、それら類型と適 合する環境や組織規模等のコンティンジェン シー要因との適合関係などが検討されている。  このように、戦略的意思決定プロセスの多 様な「モデル」が提示されてきたが、同時に、 この中に重要な議論が含まれる。その中の一 つは、多様なアプローチを合理的・公式的・ 分析的な意図型ないし計画型アプローチと、 非合理的・非公式的・行動的な漸進型ないし 創発型アプローチとに二分し、それらの優劣 を論じることである。これらのプロセスは、 意図型もしくは計画型モデル(the intended or planned model)と創発型もしくは漸進型 モデル(the emergence or incremental model) という二つのモデルに分類されたのである。 前者は、トップ・マネジメント主導、合理性、 計画、分析、包括性、等々の特徴を持ち、後 ルとの適合関係を明らかにしようとしている。 このアプローチにおいては、類型化されたモ デルがいかに形成されるのかについて詳細に は論じてこなかったという限界があると考え られる。  第二に、戦略的意思決定プロセス設計の裁 量幅は、組織構造の決定よりも流動性、一過 性、即時性、一時性、多様性が高いという認 識に基づき、戦略的意思決定プロセスについ て論じているアクティビティ・ベースト・ア プローチ(activity-based approach)に依拠 する諸研究をについて考察する。Mintzberg, et al(1976)は、戦略的意思決定プロセスを 「非構造化された(unstructured)」プロセス ととらえている。このことはこのプロセスが まったく同じ形式に遭遇することがなく、組 織における事前に決定され明示化された秩序 立った対応が存在しないプロセスであるとい うことを意味している。つまり戦略的意思決 定プロセスが新規性、複雑性、変更可能性 (open-endedness)によって特徴づけられる ことを示唆しているのである。このような観 点に基づくなら構造洗練的で構造変動的な過 程によって創出される 「構造生成」 という視 点を取り入れなければならないと考えられる。  第三に、以上のことを顧慮しつつ、戦略的 意思決定プロセスを形成するため必要な課題 について明らかにする。特に、戦略的意思決 定プロセスをミクロレベルでとらえ、意思決 定者のアクションや相互作用に焦点を当てた アクティビティ・ベースト・アプローチに基 づき検討する。そしてこのアプローチに基づ きレパートリー・ビルディング(Schön: 1983) という概念を考察し、意思決定主体のアク ションおよびテクニック、スキルなどを含む アクティビティについて理論的に実践的に活

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プロセスのタイプがいかに設計されるのかに ついて、理論的にも実践的にも、インプリケー ションを提示するものではない。そこでは比 較的マクロな諸要素からなる諸モデルの分類 を開発し、それらの有効性を検証しようとす る傾向にあったが、それぞれのモデルにおけ る詳細な諸活動、例えば計画策定中に含まれ る詳細な活動、およびそれらの相互作用関係 を捨象する傾向にあり、これらの研究動向に おいてはプロセス設計の有効なインプリケー ションを示すことは出来なかったのである。  組織は基本的に、「自律と統制」や「硬直性 と柔軟性」、など相矛盾する属性が共存する 複雑なシステムである。戦略的意思決定プロ セスも同様に、合理的な計画や非合理的な創 発が混在する複雑なプロセスであると捉える なら、二分法に基づくモデル研究の展開は実 践的にも理論的にも限界を持つ。  戦略的意思決定プロセス形成のためのイン プリケーションを明らかにするという本研究 の目的に照らし合わせてみると、上述のよう な見解の問題点は二分法に基づくモデルの提 示そのものにある。二分法はあくまでも学術 的 な 世 界 で の 便 宜 的 な 方 法 に 過 ぎ な い (Jarzabkowski: 2005)。意思決定プロセスを 二分法的に分類することは、多様なモデルの あり方を否定すると同時に、プロセスの設計 を単純化するがゆえに、実践的に活用できな いという問題をはらんでいる。例えば、計画 型モデルはトップダウン、公式的コミュニ ケーション、分析等々の要素を含み、創発型 モデルはボトムアップ、非公式的コミュニ ケーション、直観、等々を含んでいるとされ るが、これらはただ割合の問題とも捉えられ る。またトップが外部との接触や思考実験に 基づき創造した戦略を従業員に示し説得し納 者は、ミドルないしロワー・マネジメント主 導、非合理性、創発、直観、無秩序、等々、 前者と反対の特徴を持つ。  このような明確な相違がある二つのタイプ は、どちらが有効なモデルであるのかを明ら かにするために、それぞれどのような環境に 適合しているのかに関する論争をよび、その 中で相矛盾する仮説が提示されている。  一つは、「安定した環境において、組織は合 理的な意図型モデルを採用すべきで、不安定 な環境においては、漸進的な創発型モデルを 採 用 す べ き で あ る 」 と い う 仮 説 で あ る (Mintzberg, 1973, 1978, 1994, Quinn, 1978, 1982, Fredrickson, 1983, Fredrickson & Mitchell, 1984)。これに対して、「安定的な環 境において、組織は漸進的な創発型モデルを 採用すべきで、不安定な環境では合理的な意 図型モデルを採用すべきである」という仮説 である。(Bourgeois & Eisenhardt, 1988, Eisenhardt, 1989)。これらの論争は、デザイ ンスクールの再検討(reconsidering the design school) に 関 連 し たMintzberg (1990, 1991, 1994)とAnsoff(1991)の論争や、ホンダの アメリカオートバイ市場での成功に関する分 析 に 関 す るPascale(1984, 1996) お よ び Mintzberg(1996)対Goold (1996)の間で論 争も生んだが、明確な答えが提示されたわけ ではない。また一度あるプロセスを採用する と、そのほかのプロセスを採用することが困 難であるがゆえに、慎重に戦略的意思決定プ ロセスを「選択すること」がリーダーの役割 であると論じられている (例えば、Burgelman, 2002, Cristensen&Raynor, 2003)。このような コンティンジェンシー・アプローチは、類型 化されたある戦略的意思決定プロセスを前提 とした論理展開がなされており、選択すべき

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2.戦略的意思決定プロセス研究におけ るミクロ要因分析-アクティビティ・ べースト・アプローチを中心に  アクティビティ・ベースト・アプローチは、 社会科学における「実践的転回」という潮流 をくむ「実践としての戦略」という考え方を ベースにするアプローチである。  Weick(1979)によれば(訳8頁)、組織 を理解しようとするなら、組織について記述 する際に、名詞を根絶すべきで、代わりに動 詞や動名詞(あるいは進行形)を使用するこ とで組織現象を過程として理解する必要があ る。そしてこの過程を構成するものは、絶え ず変化する相互に関与する個々人の利害であ り活動である。このような過程というイメー ジにマッチするように組織化を次のように定 義している。組織化とは、「社会的相互作用と いう営みを順序良く結びつけるためのレシピ の集合」(訳58頁)である。ここでいうレシ ピ(処方箋あるいは処理法)は、イナクトメ ント、淘汰、保持という三つの過程からなっ ている。そして「組織化とは意識的な相互連 結行動によって多義性を削減するのに妥当と 皆 が 思 う 文 法 と 定 義 さ れ る 」( 訳 4 頁 )。 Johnson(2007) は、Latour(2005) が 指 摘 したように、社会現象を絶えざる生成過程と してとらえながら、「現象が生き続けるための 実践家のスキル、コツ、偶然的な出来事など を明らかにすることが研究対象となる」(訳 60ページ)と主張している。  「実践としての戦略」という考え方は、以 上のような「組織化・戦略化」という概念を 取り入れながらプロセスを動態的に捉え、実 践におけるミクロなアクティビティを研究対 象としている。そこでは「戦略の構成やエナ 得させ承認を得たというプロセスはトップダ ウン型なのかボトムアップ型なのか。あるい は現場からの提案をトップが取捨選択し、承 認を与えることはボトムアップ型なのかトッ プダウン型なのか、ということは一概に確定 することはできない。このことと関連してま た、決定プロセスの設計という意味でこれら の諸見解が指摘していることは、各モデルに は必要な諸要素があり、それらの一貫性を もって「組み立てる」というものである。こ のことの問題は、必要な諸要素とそれらの適 切な組み合わせが事前に存在しているという ことを前提としており、それを前提としてい るということは、必然的にマクロな諸要素を 対象として絞り込むということになり、すな わちミクロな諸要素および諸要素間の相互作 用や、より実践的なツール・テクニックにつ いて深く論じられていないという限界をもつ。 それゆえより実践的な視点から具体的な意思 決定プロセスを明らかにするために、諸要素 (あるいは諸属性)を「組み合わせる」とい うことを考慮すべきであろう。ここでいう「組 み合わせる」とは、諸要素を探索しあるいは 創作し、それらを擦り合わせながら結合させ るということを意味する。おそらくいまだに、 戦略的意思決定プロセスに関わる諸要素は明 確でなく、それらの組み合わせのための能力・ スキル・テクニック等も明らかにされていな いと考えられる。それゆえ、意思決定は実際 には誰によってどのようにいつなされている のか、そこで求められるスキルや活用されて いるツールやテクニックは何であるのか、 等々についてのよりミクロな組織実践につい て検討する必要があると考えられる。

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と企業がおかれた環境との間の適合について 検討している。彼女らは急速に変化する環境 の下でマイクロコンピュータ産業における4 つ の 企 業 の 戦 略 的 意 思 決 定 を 調 査 し て、 Mintzberg(1973)、Fredrickson(1984)など の示唆する先述した研究結果と矛盾するいく つかの命題を提示している。彼らは、調査し た企業が計画を立てるために、どのように産 業、競争者、標的市場、企業の強さと弱さ、 そして選択肢を分析しているのか、また、い かにしてCEOが革新的で危険な決定をする のか、さらに彼らがいかにしてグランド戦略 を設定するのか、等々を考察している。そし て合理的アプローチと漸進的アプローチのど ちらが急速に変化する環境下に適しているの かについて、Mintzberg(1973)、Fredrickson (1984)、その他の見解と対照的に、急速に変 化する高い不確実性の下では合理的な意思決 定が効果的であると、結論づけている。  Regnér(2003)は、いかにマネジャーが 実践において戦略を創造し開発するのかにつ いて考察して、周辺とセンターで全く異なる 戦略活動を明らかにしている。  彼が示す周辺における戦略的な活動の重要 な特徴は、(1)いかにマネジャーが戦略につ いて情報収集するのかという戦略活動と知識 同 化 活 動(knowledge assimilation activities) は、外部の多くのアクターに向けられていた こと、(2)戦略活動は、戦略的な問題に関し て探索的な(explorative)な質問に基づいて いたこと、(3)(2)の特徴と関連して、戦 略的な問題あるいは、推論とセンスメーキン グ特性を知る方法が新しい観察や経験に基づ いており、新しい戦略解釈を時間をかけて 行ったこと、(4)推察が新しい観察と経験や、 より帰納的なセンスメーキングに基づいてい クトメントにおける人間的エージェンシーを 理解するためには、戦略実践者のアクション や相互作用に関する研究に再び焦点を当てる ことが必要である」(Jarzabkowski, et al.[2007], p.6)とされている。この分野で戦略は「状 況化され社会的に成し遂げられた活動として 概念化され」(p.7)、戦略化は「行為者のア クションや相互作用、交渉および、行為者が 活動を成し遂げる際にもたらしたある状態の 実践からなる」(p.7-8)ものと定義づけられ ている。これらの見解は、理論的にも実践的 にも明らかにすべきことは、プロセスの創出 における意思決定主体の役割はなんであるの か?、戦略的意思決定プロセスがどのように してデザインされるべきであるか?、よりミ クロな諸要素・要因は何であるのか?、それ らの多様な相互作用関係はどのようなものな のか?、等々であるということを示唆してい る。  次に、この分野の初期の研究について概観 する。  Langley(1991)は、公式的分析の活用と 合理的で包括的な意思決定モデルの採択の間 に必ずしも同価値性があるというわけではな いということ、そして意思決定の社会的イン タラクティブで政治的な面から公式的分析を 分離することは不可能であることを、指摘し ている。あるいは、公式的分析が意図型と創 発型の両方のプロセスに必要であること、そ して、公式的分析に適したプロセスがあるの でなく、それに適合する何らかの問題状態が あるということを、主張していると考えられ る。  Bougeois&Eisenhardt(1988)とEisenhardt (1989)は、帰納的な事例研究を使用したア プローチによって、戦略的意思決定プロセス

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Regnér(2003)によって記述された外部の 人々と接触する周辺のマネジャーと違って、 彼らは内部の人々である。しかしながら、指 摘すべきは、内部の人材との接触の目的が「開 拓」ではなく「探索」であるということであ る。この点に加えて、Bourgeois & Eisenhardt (1988)とEisenhardt(1989)が述べたように、 成功したCEOは他の企業で働き、そして、カ ウンセラーとして最も経験がある経営陣を抱 えていた。これらの人々は現在内部の人材で あるが、他の企業で働いた経験が探索のため のアドバイスを可能にしているのではなかろ うか。一般的に、探索的な活動は周辺のマネ ジャー固有のものではなく、Regnér(2003) のケースにおいて、周辺のマネジャー固有の ものであるということが観察されたというこ とは特殊ケースであると考えられるのである。  いずれにせよ高い不確実性下における探索 のために、マネジャーは(周辺であれセンター であれ)、創発型のプロセスを採用するかも しれないが、可能な限り多くの情報を収集す るには多様な方法があることをこれらの諸研 究は示唆しているのである。さらに、これら の多くの活動を理解することが意思決定者の 重要な仕事であることを示している。  アクティビティ・ベースト・アプローチに 関わる意思決定主体の多様なアクションやテ クニックを明らかにした研究も提示されてい る。  Rajagopalan, et al(1997)によれば、経営 者のアクションは、内外の監視、情報収集・ 分析、等々の合理的アクションと選択された 代替案への内外の準備を形成する政治/権力 アクションからなる。合理的アクション(内 外の監視、情報収集・分析、等々)は、多様 な情報源活用、代替案の同時的検討、迅速な たこと、等々である(p.67-70)。  周辺における戦略的な活動のこれらの特徴 の詳細は、次の通りである。  調査した企業のマネジャーは、産業コンサ ルタント、競争者、顧客、供給元などへ向かっ ており、ここには全く異なる産業やコンテク ストが含まれる。そして、マネジャーは、新 技術、新しい市場と新しい地理的市場を厳密 に調べ取り込み、また、戦略的な問題につい て知り学ぶために、実験と手続き的な方法を 用いて探索的な質問をした。また新しい観察 と経験に基づき、試行錯誤や非公式の質問、 ヒューリスティックス等々を活用し新しい戦 略解釈を生み出していた。マネジャーらはス タートから解釈のための確立したパターンや 構造を持たなかったので、新しい観察と経験 またはより帰納的なセンスメーキングに基づ き、知識構造構築に奮闘していた。  他方で、Regnér(2003)によれば、周辺 と対照的に、センターのマネジャーは、産業 と開拓に焦点を当て、既存の共有知識構造を 使用して、既存の戦略を改善した。  彼は、多様な経営セッティング(周辺とセ ンター)に基づく戦略的意思決定プロセスの 二つの異なる特徴を示し、そして、「一般に、 帰納的で探索的な戦略アクションは、曖昧さ と複雑さによって特徴づけられる戦略コンテ クストにおいて演繹的で開拓的なものよりも 適用可能性が高く、逆もまた真である」(p.79) と結論付けている1)

 Bourgeois & Eisenhardt(1988)とEisenhardt (1989)は、リアルタイム情報を集めるために、

トップ階層に位置するマネジャーがどれくら い頻繁に会議で、対面コミュニケーションで、 または電子メールを活用し多くのマネジャー にコンタクトするかについて、記述している。

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ル・システム、インセンティブ・システム、 人的資源管理システムなどの設計とかかわり、 これらのマネジメント・システムをトップ・ マネジメントが望む意思決定やアクションの 前提に合致するように構築することにより、 多様な意思決定問題に対処するのである。イ ンフォーマル組織はマネジメント・システム をサポートする。とくにリーダーが組織メン バーへ挑戦に対する感情や情熱を与えること や、サポートや協調を動員する組織メンバー 間のネットワークを作り上げることが重要な リーダーシップのあり方であるという。  またPettigrew(1973)によって、具体的 な政治行動としては、連携の形成、ロビー活 動、選任、議題の保留、議題のコントロール、 情報の戦略的活用、外部の専門家の雇用など のアクションが指摘されている。  さらに、議論の場(たとえば会議)の改善 について、Mankins&Steele(2006)は、世界 の主要企業156社の調査により、経営委員会 (CEO、COO、CTO、人事担当執行役員等)と、 事業部門や職能部門のマネジャーとの戦略立 案会議は、定期的なプレゼンテーションの場 であったが、ほとんど意思決定プロセスとし て機能していなかった述べ、「戦略立案プロセ スと意思決定プロセスの一体化」のための改 革について明らかにしている。たとえば提出 する戦略関連資料の制限、一週間前まで資料 提出、会議の構成変更、「検討(発表)と承認 (説教)」から「議論と決定」などの改革など が明らかにされている。  権限と責任(あるいは決定権)の改善に関 して、Rojers&Blenko(2006)は、グローバ ル対ローカル間、本社対事業部門間、部門間、 社外対社内間などの関係において、最終権限 が誰にあるのかはっきりしない、提案への拒 社内合意形成、意思決定のためのタスク フォースの形成などのことであり、政治/権 力アクション(選択された代替案への内外の 準備を形成)とは交渉、連携構築、主要な人 員の再配置などのことである。  このような意思決定者の合理的アクション とかかわる問題として、戦略的意思決定プロ セスにおける計画型モデルの再設計に関する 議論がある。Gray(1986)は、計画プロセ スにラインマネジャーを参加させること、事 業単位を正しく定義すること、詳細に行動ス テップを描くこと、戦略計画と他の組織コン トロール・システムを統合すること、など指 摘し、またWilson(1994)は、計画を継続的 な組織学習の問題とし、そして権限委譲によ る迅速で柔軟な変化への対応、企業文化の変 質、計画スタッフの信頼性の維持、質的職務 にもとめられる管理者によるコミットメント の時間枠の維持、全社戦略と事業戦略の各役 割の明確化、スキャニングおよびモニタリン グシステムの改善、戦略計画とオペレーショ ン計画間の連結強化などを指摘し、さらに Grant(2003)は、戦略計画プロセスの分権 化や戦略計画システムの役割の変更、トップ・ マネジメントが戦略実行により深くかかわる かたちでの役割変更などを指摘している。  Chacravarthy&White(2002)は、「目的設定」、 「マネジメント・システムの設計」、「イン フォーマル組織」における意思決定者のアク ションについて考察している。目標を設定す るということにより、トップ・マネジメント は、企業のマネジャーが環境における機会や 脅威を知り、そのコンピテンシーをテコ入れ したり新しくし、その組織慣性を克服する道 筋に影響を与えることができる。マネジメン トの設計は、戦略計画システムやコントロー

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じるべきであり、それが介入すべきポイント やその演ずる特定の役割は、考慮される決定 の特徴(たとえば、良構造か悪構造か等々) によって決まり、さらに意思決定集団におけ る人々が天の邪鬼過程への真剣なコミットメ ントを行うときにのみ活用すべきであると結 論づけている(p.106、訳105ページ)。  以上、多様なアクティビティについてみて きたが、重要なのは、これらのアクティビティ が何のためにいかして活用されるのか、さら にどのような文脈の中で活用されそれらはい かにコンフィギュレートされるのか、等々を 検討する必要がある。 3.アクティビティ・ベースト・アプロー チの意義と課題  戦略的意思決定プロセス研究におけるアク ティビティ・ベースト・アプローチは、コン ティンジェンシー・アプローチが詳細に分析 してこなかったプロセスのミクロ要因とその 動態について分析するという新たな地平を切 り開いたと考えられる。さらに、プロセスの 設計という点からみて、従来のアプローチが モデルありきという立場からの処方箋であっ たのに対して、アクティビティ・ベースト・ アプローチは、以下に述べるようにプロセス を社会的相互作用と捉え、環境に従った最適 解としてのプロセスが存在するのではなく、 流動性、一過性、即時性、一時性、多様性と いう性質に依拠したプロセスが動態的に現れ るという視点を提供するものである。  戦略的意思決定プロセスを社会的相互作用 プロセスとして捉える考え方には、以下のよ うなBuckley(1967)の見解がベースにある と考えられる。彼は、シンボリック相互作用 論の視点を包含しつつ、Campbellの一般シ 否権を持つ人が多すぎる、助言者が多すぎる、 等々、意思決定プロセスで発生しがちな問題 があるとし、グローバル対ローカル、本社対 事業部、部門対部門、社内対社外パートナー などにおいて発生する権限と責任問題につい ての改善案を明らかにしている。  決定ルールに関して、Eisenhardt&Sull(2006) は、「変動が激しい市場にあっては、柔軟に構 えてチャンスをつかまなければならない。た だし柔軟な中にも規律が必要である」(100頁) として、「その分野でチャンスを追求するため のガイドライン」としての以下のようなシン プル・ルールを明らかにしている。ハウ・トゥ 型ルール-追求するチャンスと、対象から外 すべきチャンスとの選別に集中することを目 的とする。優先順位のルール-遭遇したチャ ンスと速度を合わせ、また会社の多部門とも 足並みをそろえることを目的とする。タイミ ングのルール-過去のものとなったチャンス からいつ撤退すべきかを決めることを目的と する。  意 思 決 定 支 援 ツ ー ル の 構 築 に 関 し て、 Schwenk(1988)は、天の邪鬼(=悪魔の代 弁者:devil’s advocacy)による構造的コンフ リクトの活用について考察している。「基本 的な天の邪鬼という方法の手続きは、一人か それ以上の人々が有力な戦略に対して異論を もちだしたり、戦略の前提となっている仮定 に挑戦したり、可能ならば対案を指摘するた めに用いられる手続きである」(p.95、訳93 ページ)。かれは諸研究のサーベイを通じて、 この方法は、一定の規則に従うならば、戦略 的意思決定を改善できると指摘し、天の邪鬼 は特定の代替戦略と一体化した「批判のため の批判」というよりも、プロセス・コンサル タントや有力な戦略の客観的批判の役割を演

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は他方で、プロセス創出をいわば自己生成的 なものであると捉えており、そこで意思決定 主体の役割は取り扱われていない。戦略的意 思決定プロセスがどのようにしてデザインさ れるべきであるかということを明らかにする ためには、意思決定主体がこのプロセスをど のように組織化するかあるいはどのように適 切なプロセスを形成させるかが問われなけれ ばならないと考える。  この点に関して以下で、Schön(1983)が 提示した基本ツールとテクニックのリテラ シーを得ることのできるレパートリーの構築 (repertoire building)という観点を決定プロ セス研究に取り入れたLiedtka(2000)の見 解に基づき検討したい。  構造洗練という視点と同様の観点から、 Liedtka(2000)は、「計画プロセスのジェネ レイティブモデル(generative model of planning process)」 を提示している。このモデルには、 認知ループと行動ループ(the cognitive loop and the behavioral loop)を含む。ここでい う認知ループはバーチャルな世界で将来をデ ザインするプロセスであり、成功的な認知プ ロセスは広範に参加的で会話ベースでなけれ ばならない(p.198)。行動ループは、物理的 世界での変化を成し遂げるために、新しい能 力の開発するプロセスである。両者は、多面 的な可能性を予想することとその中の最も魅 力的なものに従って行動することの繰りかえ されるサイクルを描く。このサイクルを維持 するために不可欠なものが伝統的な計画プロ セスに欠如していたと考えられる戦略思考と すでに備わっていたと考えられる戦略プログ ラミング・アクティビティである(p.201)。 Liedtkaはこの戦略思考を含めスキルやリー ダーシップについて論じている。 ステム論やMaruyamaの第二サイバネティッ クの議論をふまえ、機械的モデルないし有機 体的モデルと区別される社会-文化的モデル を「 本 来 的 に 構 造 洗 練 的 で 構 造 変 動 的 (structure-elaboration and changing)な も の で あるという基本的な洞察」(p.18、訳22ページ) を導き、このような「システムの所与の形態、 構造、状態が洗練され、変化していく諸過程 を指す」(p.58、訳74ページ)言葉として、「構 造生成(morphogenesis)」という用語を用い ている。そこでは、「相互作用する人々や集団 が一体どのようにして状況を定義し、評定し、 解釈し、理解し、そして行為するのか」(p.23、 訳29ページ)という基本的な問題があり、社 会-文化的システムを個人や集団間の相互作 用によって多様な形で生成されるものである ととらえられているのである。このことは、 ある状態へ到達する多様なルートがあること と関連する「等結果性」を超えた「多結果性」 とよぶべき原理が働いている、と論じている 理解できる。いいかえれば、社会-文化的シ ステムは、制度や文化などの構造特性によっ て決定されるのではなく、個人や集団の相互 作用によって創出されていると考えるのであ る。  このことからプロセスを分類しモデル化す ることは一定の限界を持っていると考えられ、 プロセスのモデル化は、ある典型的な様式を 示すものではあっても、ここに至る過程につ いて、言い換えれば、いかにプロセスを形成 するのかについては何らインプリケーション を提示するものではないのである。このこと は、モデル先行ではなく、社会的相互作用の 結果がモデルであるという捉え方を示唆して いると考えられる。しかしながらこのような 視点だけでは不十分である。このような視点

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が重要であり、このことはマネジャーの思慮 深い洞察を必要とすると考えられる。それゆ え次に、戦略的意思決定プロセスを設計する マネジャーの能力を検討すべきであろう。  Eisenhardt(1989)は、合理的対創発的と いう「二分法の限界」を示唆しながら、「人々 は部分的に合理的であるが、またその限界を 補うために賢明な問題解決戦略に関わること ができる」(P.573)としている。そして認識 についてのこの見解に関連して、成功したマ ネジャーが熟達する二つの矛盾する特質の共 存を論じている。マネジャーとは、「...『数字』 の人として知られていて、そして、『M.B.A以 上』で、(...)『直観的』として、また『水平 思考家』として記述され、そして、『ビジネス のすべてで最高の感覚』を持ちながら、」 (P.555)、「(...)一度に頭の中に多くを考察で きる」(P.556)人物である、としている。こ れらの諸研究は、プロセスの二分法を克服す るために、矛盾する特質を処理する多くの能 力をマネジャーは熟達しなければならないこ とを示唆しているのである。  次に、矛盾する特性の共存のためにマネ ジャーの特質を考察する。  Langley(1991)に従えば、公式的分析が より生産的であるか否かは、決定状況により 依存しており、あるいはこれらの状況に対応 していかに分析を活用するのかにかかってい る。従って、「これらの状況を診断することを 学習し、資源を無駄にすることなく生産的で ある方法を見出すよう努めるべきである」 (P.96)。ここでは、プロセスの二分法を克服 するために、マネジャーが公式的分析のよう ななんらかの工夫(device)を採用する「状 況を診断する能力」に熟達しなければならな いことが示唆されているのである。  このようなジェネレイティブモデルには、 ①コンフリクト解決、②戦略的代替案の形成、 ③その評価という三つの強化されたスキル セットの開発が求められる(p.201)。そして、 成功的なプロセスは広範に参加的でダイア ローグベース(participative and dialogue-based) でなければならない。仮説の生成・評価プロ セスは、対話と弁証(the dialogic and dialectic) の結合および探究と支援(inquiry and advocacy) の結合を通じて成し遂げられなければならな いとされている。  Liedtka(2000)はまた、Schön(1983)が 提示した基本ツールとテクニックのリテラ シーを得ることのできるレパートリーの構築 (repertoire building)というプロフェッショ ナルな領域におけるトレーニングを戦略計画 プロセスに援用している。この「レパートリー 構築」という考え方に従って、マネジメント において「レパートリー構築の目的は、マネ ジャーに有用なテクニックを身に付けさせ、 それにより状況に適した所与のテクニックを 自由に選ぶということである」(p.202)とし、 このテクニックにツールやフレームワーク、 スキル等々を含めている。彼女はまたリー ダーのあり方として、戦略思考者だけではな く、すべての組織メンバーが戦略思考スキル の 助 力 者 で あ り 開 発 者(the enablers and developers) であることを提案している。す なわち、彼女は、「広範に参加的で対話ベース であること」、「包括的なオプション、自由な 選択、正しい仕様」、「戦略コンテント形成に おいてと同様に、プロセス形成においても試 行錯誤」、「スキル」、等々が重要であると主張 しているのである。  戦略的意思決定プロセスの設計の実践のた めには、これらの活動をいかに活用するのか

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マスターしなければならない、と主張してい る。  Langley(1991)のいうところのツール・ 装置に含められる多様な制度、ルール、規律、 スキル、テクニック、等の連動性や適合性を 解明し、理論的にも実践的にも妥当なプロセ ス設計の基本原理へと展開すること、および プロセスにかかわる即興やレパートリー・ビ ルディングという考え方に依拠した基本原理 についての組織メンバーによる理解と実行の 促進のための施策を明らかにすることが今後 の課題である。 1)Langley(1989、1991)、Bougeois&Eisenhardt (1988)、Eisenhardt(1989)およびRegnér(2003) らの諸研究には、意思決定主体のミクロな諸活動 に注目するという共通点がある一方で、Langley やEisenhardtらはプロセスの二分法を批判的に捉 えているが、Regnérは二分法に基づく明確なプ ロセスを明らかにしているという相違点がある。 参考文献

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