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胎児期の記憶と出生直後の学習が母親と父親への愛着をいかに形成するか

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胎児期の記憶と出生直後の学習が

母親と父親への愛着をいかに形成するか

(研究課題番号 16530468) 平 成16年度 平成19年度科学研究費補助金(基盤研究(c)仏))研究成果報告書 子

M 削 -平成20年5月 明 究 代 表 者 児 玉 典 子 主主賀大学教育学部 教授)

(2)

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胎児期の記憶と出生直後の学習が

母親と父親への愛着をいかに形成するか

(研究課題番号 16530468) 平 成16年 度 平 成19年度科学研究費補助金(基盤研究(c)(2))研究成果報告書 平 成

20

5

月 研 究 代 表 者 児 玉 典 子 ( 滋 賀 大 学 教 育 学 部 教 授 )

(3)

研究の構成

E

研究の背景と目的

E

研究成果と報告

W

研 究 発 表 目 次 1 2 3 3 3

(4)

研究の構成 1.研究組織 研究代表者: 児玉典子(滋賀大学教育学部教毘) 2.交付決定額(配分額) (金額単位:千円) 直接経費 間接経費 合計 平成16年度 1 100 O 1 100 平成17年度 7 0 0 O 700 平成18年度 600 O 600 平成19年度 700 210 910 3.研究発表 (1) 学会誌等

Kodama, N., & Yamamoto, A. 2006 Pr巴f巴r巴nceof mother to fatherin n巴wbornmic巴. Developmental Psychobiology, 48, 615. Kodama, N., Yamamoto, A., & Niwa, Y. 2007 Prefer巴nc巴 of

father to nonイatherin n巴wbornmic巴.Developmental Psycho-biology, 49, 731. 児玉典子 2007 胎児期と周生期の行動発達 南徹弘(編)発達心理学 朝倉心理学講座第3巻, 28-41. (2) 口頭発表 児玉典子 2004母乳による反復刺激が帝王切開されたマウス胎児の 反応に及ぼす効果 日本動物心理学会第 64回大会 児玉典子・小松俊也 2005 SJc:ICRマウスにおける父親の養育行動 メカニズム 日本動物心理学会第65回大会

Kodama, N.,

&

Yamamoto, A. 2006 Pr巴ferenc巴 ofmother to father in newborn mic巴. 2006 Annual M巴巴tingof International Society for Dev巴lopm巴ntal Psychobiology.

Kodama, N., Yamamoto, A., & Niwa, Y. 2007 P児 島renceof fath巴r to non-father in n巴wbornmic巴. 2007 Annual Me巴ting of Int巴rnationalSociety for D巴V巴lopmental Psychobiology.

(5)

H 研究の背景と目的

現在の胎児・新生児研究は、胎児・新生児の記憶と学習可能性を指摘する段階から、それ らに基づいた母子聞の初期愛着形成メカニズムを胎児・新生児の記憶と学習に基づかせて考 える段階へと進んできた。一方、ほとんど行われてこなかった父親への愛着形成の研究にお いても、母親と同様のメカニズムを想定する試みが始まろうとしている。 本研究は、これらの流れを背景とし、出生直後の新生児が母乳及び母親へ示す選好の強さ、 その維持と強化のメカニズムを帝王切開胎児を用いて検討し、母親への愛着形成の開始メカ ニズムを明らかにすることを第一の目的としている。第二の目的は、これまで検討されてこ なかった子から父親への愛着形成の開始メカニズムを、新生児の記憶と学習という新たな観 点から検討し、母親への愛着形成との差を明らかにすることである。 この目的を達成するため、本研究は2種類の実験から構成された。 一つは、母親と父親を 特徴づける種々の刺激を用い、子どもを引きつける刺激は何か、刺激が複合されると子ども の反応が強まるか否かを検討することである。今一つは、個々の刺激を捜合させていくので はなく、逆に、母親と父親をそのまま用いて子どもの親への選好を明らかにすることである。 そこで、平成16年度には、 S1c:ICRマウスを用い、妊娠17日(満期出産の2日前)の羊水と出産 当日の母乳を採取し、母親の体毛で作ったブラシをこれらに浸し、帝王切開された胎児の口 周部にブラシを提示し、胎児の反応を検討することを目的とした。 平成17年度には、母親の体毛を用いて行った実験操作と同様の操作をS1c:ICRマウスの父親 の体毛を用いて実施した。すなわち、帝王切開された胎児の口周部に父親の体毛で作ったブ ラシを提示し、それに対する反応を検討することを第 1の目的とした。また、出生後2日齢 の新生児を用い、新生児を両親から離した後に両親へのネンブタールで、麻酔を行った。麻酔 された父親と母親を観察装置に入れ、新生児をその装置のスタートボックスに置き、新生児 が父親へ接近するか否かを検討することを第2の目的とした。 平成18年度には、出生後2日齢と3日齢のS1c:ICRマウス新生児を用い、新生児を両親から 離した後に、両親をネンブタールで麻酔した。麻酔された父親と母親を観察装置に入れ、新 生児の父親への選好を検討することを目的とした。 平成19年度には、出産した母親から母乳を採取し、それを父親の胸部付近の体毛で作った ブラシに付着させ、帝王切開胎児の反応を検討した。その目的は、胎児が引きつけられる刺 激が父親の体毛そのものなのか、母乳あるいはそれ以外の刺激なのかを検討することであっ た。 以下に、各年度の目的に従って行った実験の結果を報告する。実験

1-5

は、刺激を分離 して複合させていく方法に基づく実験であり、実験6は、両親をそのまま用いた実験である。

(6)

E

研究成果と報告 実験1 羊水から初乳への刺激変化が帝王切開された Slc:ICRマウス 胎児の反応に及ぼす効果 新生児が生命を維持していくためには、分娩直後において最初の吸乳がスムーズに行われ ねばならない。吸乳は、新生児にとって母親へ接近する最初の機会の lつであり、新生児は 母親へ接近し、母乳を得ることによって、ニップルへの愛着 (NippleAttachment) を形成す る。新生児は、 -.e.形成されたNippl巴Attachm巴ntに基づいて、さらに愛着の対象を母親へと 移行させる。したがって、 Nippl巴Attachmentはその後の母子関係の形成をスムーズにしてい く上で、きわめて重要な意味を持っている。しかし残念なことに、最初のNippleAttachm巴nt は出生後数時間で形成されるため、その形成メカニズムはまだ明らかにされていない。従っ て、これを検討することは、もっとも初期の母子関係の形成過程を明らかにするために必要 である。 新生児が分娩直後に暴露される刺激には、母親の体毛、羊水、血液などがある。母乳への 暴露はその後のことである。このことは、 Nipp]eAttachm巴ntの形成が、それに先行する刺激 との関係から考えられねばならないことを示している。上記の刺激の中で、羊水は新生児に とってもっともfamiliarな刺激である。なぜならば、出生前に胎児は羊水の味覚/嘆党刺激に 持続的に暴露されており、出生後には肺呼吸の開始とともに羊水の!奥覚刺激に再び暴露され るからである。この羊水は、分娩時に母親の体毛や巣材に付着する。そして、新生児に対し て、におい勾配に基づいた定位運動を生じさせる。羊水の嘆覚刺激が新生児に及ぼす影響に ついて、児玉(1994)は、出生後2日齢のマウスの新生児が羊水を塗布された母親のニップ ルを最もよく選択することを報告している。また、 Kodama & Smoth巴rman(1997)は、帝王 切開で摘出されたラット胎児が、蘇生3時間で羊水のにおいに対して反応し、頭部の上下伸 展運動を活発化させることを明らかにした。頭部の上下仲展運動は、新生児がニップルを捜 し当てるのに必要な身体運動である。このことから、羊水のにおいが、初期の母子関係形成 過程における新生児の行動の引き金となる重要な刺激であることは明らかである。 羊水のにおいに惹き付けられて母親の体毛に接近した新生児は、体毛に付着した羊水のに おいと同時に体毛そのものによる触覚刺激を受ける。この触覚刺激は、新生児の身体運動を 活発化させる。 Po]an & Hofer (1999)は、母親の体毛とその下に置かれた新生児ラットの反 応を比較し、新生児ラットは母親の体毛の下に置かれた方が活発に動くことを報告している。 また、児玉&Smoth巴rman(1997)は、母親の体毛で作成したブラシと人工のペイントブラシで 帝王切開したラット胎児の周口部を刺激し、母親の体毛の方が胎児の頭部の上下伸展運動と 開口運動を活性化することを見いだした。この母親の体毛ブラシは、濡れているよりも乾燥 している方が頭部の上下仲展運動と関口運動を促進させる。これらのことは、周口部への母 親の体毛による触覚刺激が、 Nippl巴Attachm巴ntに直民つながる新生児の反応を引き出す役割 を持つことを示唆するものである。 母乳が新生児を惹き付けるのは、羊水と体毛が新生児の身体運動を活性化させた後のこと である。新生児は、母親の体毛という接触刺激によって頭部を動かし、口を開け、やがて nippl巴にたどりつき、唯一の栄養源である初乳に暴露される。しかし、出生直後の新生児に

(7)

とって、初乳は新奇刺激である。 Korthank& Robinson (1998)は、レモン溶液のような新奇 刺激に対してラット胎児がフェイシャル・ワイピングと呼ばれる嫌悪反応を示すことを報告 した。しかし、我々の研究では、帝王切開されたマウス胎児は初乳と出産2日以降の母乳に 対して嫌悪反応を示すことはない(児玉, 2003)。すなわち、初乳は新奇刺激であるにもか かわらず新生児の嫌悪反応を引き出さず、逆に新生児のnippJ巴に対する愛着を形成する重要 な刺激となっている。 初乳のにおいは、帝王切開されたマウス胎児の開口運動を活発化させる。また、初乳に浸 した母親の体毛ブラシで周口部を刺激すると、開口運動の頻度が高まる(児玉, 2003)。 従って、初乳の嘆覚刺激と味覚刺激は、羊水に次いで新生児を惹き付け、 nippJ巴への定位と 吸乳への道筋を作っていると考えられる。 羊水あるいは母乳は、単独で効果を及ぼしているわけではない。自然条件下では、新生児 はfamiliarな刺激として羊水の嘆覚・味覚刺激を受け、新奇刺激として初乳の嘆覚・味覚刺激 を受ける。そして味覚刺激は必ず母親の体毛という触覚刺激と同時に提示される。そのため、 羊水から母乳への移行過程では、さまざまな刺激が複合的に働きかけるはずである。従って、 新生児が経験する刺激の単独効果を検討すると同時に、複合効果も検討する必要がある。 本実験では、帝王切開されたSJc:rCRマウス胎児を被験体とし、 famiJiarな刺激である羊水か ら新奇刺激である初乳への切り替わりがマウス胎児の反応に及ぼす効果を検討することを 目的とした。 方 法 被験体:妊娠18日で帝王切開されたSJc:rCRマウス胎児112匹である。群構成は、 AF群、 MrLK群、 SAL群、 D W群であり、各群の被験体数は28匹であった (Tab1e1)0 SAL群は、羊 水に多く含まれている塩分を考慮して設定し、 D W群は羊水、初乳、生理食塩水に共通して 含まれている水分を考慮して設定した。 TabJ巴1被験体と群構成 S巴ssion1 Sesshion2 Session3 (休憩) Session4 Baseline におい提示 周口部刺激1 周口部刺激2 AF群 羊水 羊水 初乳 MILK群 初乳 初乳 初乳 SAL群 生理食塩水 生理食塩水 初乳 D W群 蒸留水 蒸留水 初乳 体毛ブラシの作成:出産した母親の脇腹の体毛を採取し、その根元を絹糸で結んだ。それ をマイクロピペットのチップに挿入し、さらにステンレスチューブに挿入して固定し、ブラ シを作成した。

(8)

羊水の採取:妊娠17日の雌を頚椎切断し、正中線切聞を行い、子宮を摘出した。 子宮に付 着した血液を落とした後、注射針で羊膜を破り、流れ出た羊水をシャーレに受け、それを注 射針で吸い上げた。変質を防ぐため、採取した羊水を-80"Cで冷凍保存した。 母乳の採取:分娩当日の雌にオキシトシン10μglm1を1凶腹腔内投与し、乳首から分泌され た母乳をヘマトクリット管で採取した。それを蒸留水で 2倍に希釈し、変質を防ぐため-80"Cで冷凍保存した。 帝王切開:妊娠18日の雌を頚椎切断し、正中線切開を行い、 子宮を摘出した。子宮と羊膜 を切開し、胎児を取り出した後、その口を開けて羊水を吸い取った。初呼吸を確認し、実験 開始まで32"Cで3時間保温した。 テスト:帝王切開された胎児の活動性が安定し始めた、蘇生後3時間から 5時間でテストを 行った。 32"Cに保温されたパラフィン伸展器の上にプラスチック容器(直径5cm、高さ 1 cm)の中に胎児を置き、テストを行った。テスト時間は、刺激を何も提示せず自発的身体運 動を観察するセッション1 (Bas巴lin巴) 3分間、羊水・初乳・蒸留水のいずれかに浸した体 毛ブラシを胎児の鼻先に提示するセッション2 (におい提示)3分間、それらのブラシで胎 児の周口部を刺激するセッション 3(周口部刺激1)各3分間、すべての群に対して初乳に 浸したブラシで周口部を刺激するセッション

4

(周口部刺激

2

) 3

分間である。セッション 3とセッション4の聞には1分間の休憩を挿入した。これは、胎児の疲労を出来る限り低く 抑えるためである。テスト中の胎児の行動はビデオに録画し、実験終了後ビデオを再生して 頭部の運動(上下伸展運動、回転運動)、前肢の運動、後肢の運動、開口運動を記録した。 統計的検定としては、繰り返しのある群とセッションの2要因の分散分析を行い、主効果 が認められた場合には下位検定としてTulωyのHSD検定を、 交互作用が認められた場合には 単純主効果の検定後TukeyのHSD検定を行った。 結 果 すべての身体運動の持続時間の総和を求め、 TotalActivityとし、その平均持続時間を示し たものがFig. 1であるoBas巴lineに比較して、におい提示では4群ともわずかに増加したが、 周口部刺激lと2では非常に長い持続時間となった。特に周口部刺激lではMILK群が最も 長くなり、 AF群は周口部刺激lと2で安定して長い持続時間を示した。分散分析の結果、セ ッション (F=77.70

df=3/324

p<.01)に主効果が認められた。下位検定を行ったところ、 Baselin巴と周口部刺激1・2、におい刺激と周口部刺激1・2の聞にそれぞれ 1%レベルで、 周口部刺激lと2の聞に5%レベルで有意差が認められた。このことは、周口部刺激そのも のが胎児の行動を活性化することを示している。 頭部の上下伸展運動の平均持続時間については、 Fig. 2に示すように4群ともBas巴linelこ 比較して増加した。特に周口部刺激セッション 1と 2では、 4群とも著しい増加を示した。 とりわけ、周口部刺激セッションlにおけるMILK群の増加は顕著であった。また、周口部 刺激セッションlから 2にかけてMILK群、 SAL群、 D W群が減少したのに対し、 AF群のみ は増加を示した。分散分析を行ったところ、セッションの主効果 (F=69.50,df=3/324, p<.01) 及び群とセッションの交互作用 (F=4.14,df=9/324, p<.01)が有意であった。セッションに関 して下位検定を行ったところ、 Bas巴lin巴とにおい提示・周口部刺激1・2の聞に、におい提

(9)

示と周口部刺激1・2の聞に、それぞ、れ1%レベルで有意差が認められた。

頭部の上下伸展運動の交互作用については周口部刺激 1 (F=8.95, df=3/432, pく.05) に単 純主効果が認められたため、さらに下位検定を行ったところ、 MILK群と AF群・ SAL群・ D W群の聞にそれぞれ 5 %レベルで有意差が認められた。またAF群、 MILK群、 SAL群、 D W群 にもセッションの単純主効果が認められたため (Fs=25.90,39.24, 7.89, 8.27, dfs=3β24, ps< .05)、さらに下位検定を行ったところ、 AF群においては Base1ineと刺激提示・周口部刺激い

2

、刺激提示と周口部刺激 l ・

2

の聞にそれぞれ 1%レベルで有意差が認められた。 MILK 群においては、 Bas巴1in巴と周口部刺激 1 ・2、刺激提示と周口部刺激 1 ・2、周口部刺激 1 180 160 140 ~ 120 CI) 1;100

5

.

8

0

d

60 ( tJ Ql 40 20 0 140 120 100 ~ 80 c

~ 60 コ

40 20 O Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Session Fig. 1 Tota1 Activityの 平 均 持 続 時 間 (

:

:

t

SE) Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation2 Session Fig. 2 頭部の上下伸展運動の平均持続時間(

:

:

t

SE)

(10)

と 2の聞に、それぞれ 1 %レベルで有意差が認められた。 SAL群においては、 BaseJin巴と周 口部刺激l・2、におい提示と周口部刺激1の聞にそれぞれ 1%レベルで、におい提示と周 口部刺激 2の聞に 5 %レベルで有意差が認められた。 D W群においては、 Bas巴lineと周口部刺 激 1・2の聞にそれぞれ 1%レベルで、におい提示と周口部刺激 1・2の聞にそれぞれ 5 % レベルで有意差が認められた。これらの結果から、周口部への刺激は、胎児の頭部の上下伸 展運動を増加させるきわめて有効な刺激であり、特に初乳による周口部への刺激が胎児の頭 部伸展運動に強く影響することが明らかとなった。また、周口部への刺激を繰り返すことは、 周口部刺激lと2の聞に有意差が認められなかったことから、頭部の上下伸展運動に影響を 及ぼさないことが明らかとなった。 関口運動の潜時については、 Bas巴Jin巴を除いた 3セッションについて検討した。 Fig.3に示 したようにセッションを重ねるにつれて潜時は短くなっていく。刺激提示セッションまでは n u n u n u n u n u n u n u n u n u n u n u n u n U R u a 斗 内 4 内 U n U F O 必 斗 内 4 円 4 4 1 4 1 4 1 4 1 4 1 ( . 0 ω 凶 ) K A O C ω 判悶﹂ Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Session Fig.3 開口運動の平均潜時(土 SE)

4

群の潜時はそれほど急激には減少しなかったが、周口部刺激セッション

1

になると、 AF 群と MILK群の潜時は非常に短くなった。 AF群の潜時は、周口部刺激セッション 2でさらに 短くなっている。分散分析の結果、群 (F=3.47,df=3/108, p<.05) 、セッション (F=41.92, df=3/324, p<41.91)、群とセッションの交互作用 (F=2.53,df=9/324, p<.05)が有意であった。 群についての下位検定では、いずれにも有意差は認められなかった。セッションについての 下位検定では、 Bas巴lin巴と周口部刺激 1・2、におい提示と周口部刺激 1・2の聞にそれぞ れ 5 %レベルで有意差が認められた。 開口運動の潜時の交互作用については、周口部刺激lにおける群の単純主効果 (F= 4.24, df=3/432, p<.05) が有意であったため、さらに下位検定を行ったところ、 M[LK群と D W群の聞に 5 %レベルで有意差が認められた。またAF群、 M[LK群、 SAL群、 D W群にもセ ッションの単純主効果が認められたため (Fs=18.01,6.37, 17.86, 7.27, dお=3/324,ps<.Ol)、

(11)

さらに下位検定を行ったところ、 AF群においてはBaselineと刺激提示・周口部刺激 1・2、 刺激提示と周口部刺激1・2の聞にそれぞれ1%レベルで有意差が認められた。 MILK群に おいては、 Bas巴line・におい提示と周口部刺激1・2の聞にそれぞれ 1%レベルで有意差が 認められた。SAL群においては、Baseline・におい提示と周口部刺激 lのあいだにそれぞれ 1% レベルで、 Bas巴lin巴・におい提示と周口部刺激2の聞にそれぞれ5 %レベルで有意差が認め られた。 SAL群においては、 Baseline・におい提示と周口部刺激2との聞にそれぞれ1 %レベ ルで有意差が認められた。 D W群においては、 Bas巴]凶巴・におい提示と周口部刺激2の聞にそ れぞれ1 %レベルで、周口部刺激lと2の問に5 %レベルで有意差が認められた。周口部へ の刺激は、胎児の反応を速やかに引き出すのに有効であり、また、初乳に先行して与えられ る羊水刺激は、その効果を強め、初乳による刺激の繰り返しはその効果を減少させると考え られる。 開口運動の頻度については、 Fig. 4に示した。 Bas巴lineとにおい提示では、 4群とも頻度 はきわめて低い。しかし、羊水・初乳・生理食塩水・蒸留水をそれぞれ含ませたブラシで刺 激すると、 AF群とMILK群において著しい増加が認められた。 AF群は、羊水から母乳へと刺 激の変化した周口部刺激2で特に増加したが、 MILK群は周口部刺激2では著しく減少した。 分散分析の結果、群 (F=8.83,df=3/108, p<.01)、セッション (F=40.58,df=3/324, p<.01)、 群とセッションの交互作用 (F=5.28,df=9/324, p<.01)が有意であった。群についての下位検 定では、 AF群・ MILK群はSAL群・ D W群とそれぞれ 1%レベルで有意に異なっていた。セ ッションについての下位検定では、 Baseline・におい提示が周口部刺激 1・2とそれぞれ5 % レベルで有意に異なっていた。 5 n U R d n U 4 ・ A ﹃ 内 d 内 d F D n U R u n u

-〉、 0 ~ 25 コ ~ 20 L l..i... 8aseline Presentation Stimulation 1 Session Stimulation 2 Fig. 4 開口運動の平均頻度(:tSE) 交互作用については、周口部刺激lと2に群の単純主効果 (Fs=9.18,14.20, dfs=3/432, ps <.01)が認められたため、さらに下位検定を行った。その結果、周口部刺激lにおいて、 MILK群とSAL群・ D W群の聞に 1%レベルで、周口部刺激2においてAF群とMILK群・ SAL

(12)

群・

DW

群の聞にそれぞれ

1

%レベルで有意差が認められた。

AF

群、

MILK

群、

SAL

群にお けるセッションの単純主効果

(

F

=

3

0

.

2

7

1

6

.

3

4

6

.

2

5

3

.

1

6

d

I

.,

=

3

/

3

2

4

p

<

.

O

l

)

DW

群におけ るセッションの単純主効果

(

F

=

3

.

1

6

d

f

=

3

/

3

2

4

p

<

.

0

5

)

が認められたため、さらに下位検定を 行ったところ、

AF

群においては、

B

a

s

1

i

n

巴と周口部刺激

l

の聞に

5%

レベルで、

B

a

s

e

1

i

n

e

と周 口部刺激

2

、におい提示と周口部刺激

1

2

の聞にそれぞれ

1%

レベルで、周口部刺激

1

2

の聞に

1%

レベルで有意差が認められた。

MILK

群においては、

B

a

s

e

1

i

n

巴と周口部刺激

1

2

の聞にそれざおれ

1%

レベルで、におい提示と周口部刺激

l

の間に

1

%レベルで、周口部 刺激

1

2

の聞に

5%

レベルで有意差が認められた。

SAL

群においては、

B

a

s

e

1

i

n

巴・におい提 示と周口部刺激

2

の聞に

1

%レベルで有意差が認められた。

DW

群に置いては、

B

a

s

e

1

i

n

巴と周 口部刺激

2

の聞に

5%

レベルで有意差が認められた。 考 察 本実験では、

N

i

p

p

l

e

A

t

t

a

c

h

m

e

n

t

の成立過程について検討するために、マウスの帝王切開胎 児に対し、

f

a

m

i

1

i

a

r

な刺激と新奇な刺激を連続して提示することで刺激変化を経験させ、そ の反応を調べた。その結果、周口部刺激 lから 2において最も特徴的だ、ったのは、頭部の上 下仲展運動と関口運動における変化であった。これらの行動は新生児の吸乳に直接つながる 行動であるため、

N

i

p

p

l

e

A

t

t

a

c

h

m

e

n

t

を検討する上で特に有効な指標である。したがって、こ こではこれらの結果に注目し、刺激変化の効果について検討することとする。 1.羊水から初乳への刺激変化の効果 本実験では、周口部刺激2においてすべての群に初乳に浸した体毛ブラシで刺激を行って いる。初乳は新生児の生命維持において不可欠であるため、それ自体が胎児の反応性を高め る効果を持つと考えることができる。したがって、周口部刺激2では、すべての群で胎児の 反応性が高まると予想された。特に、初乳による刺激をくりかえされる

MILK

群では、その 効果がより高まるはずである。しかし、結果はこの予想と異なっていた。まず、初乳による 刺激を繰り返される

MILK

群は、周口部刺激

1

において新奇刺激である初乳に対し比較的高 い反応性を示したが、周口部刺激2で再び初乳で刺激されたときには逆に反応性の低下を示 した。次に、

DW

群と

SAL

群では周口部刺激

2

において新奇刺激として初乳が提示されたが、

MILK

群とは異なり、反応性にほとんど変化が認められなかった。それに対し、

AF

群は他の

3

群とは異なる反応を示した。特に周口部刺激

2

では、

AF

群の開口運動の頻度は、

MILK

群 が新奇刺激として初乳を提示された際の頻度を著しく上回った。また、周口部刺激2での頭 部の上下伸展運動の持続時間では、

AF

群のみがそれ以前のセッションに比べて増加を示し た。このことは、

AF

群において初乳の効果が非常に強く現れたことを示している。 このように、初乳が提示されている周口部刺激2において各群の反応がことなったことは、 初乳に先行する刺激が何であったかが重要であることを示唆する。すなわち、羊水から初乳 へという刺激変化が、

N

i

p

p

1

A

t

t

a

c

h

m

n

t

へ直接つながる新生児の行動を引き出す上で、きわ めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。 新生児が受け取る刺激変化の効果を裏付けるものに、内因性オピオイドシステムの関与を 指摘した研究がある。

S

m

o

t

h

e

r

m

a

n

&

R

o

b

i

n

s

o

n

(

1

9

9

4

)

は、出生前のラットの脳内にオピオイ ド受容体が存在し、ミルクがそれを活性化する効果を持つことを明らかにした。また、

(13)

Korthank & Robinson (1998)は、ミルクと羊水がκオピオイドシステムを活性化すること、 さらにミルクと人工nippl巴を随伴して提示することが、学習を強化する役割を果たすμオピ オイドシステムを活性化することを見いだした。そして、新奇刺激であるミルクがオピオイ ド活性を引き起こす理由は、先行する羊水によって引き起こされたオピオイド活性が出生前 と出生後の行動の継続を促進するためであると説明している。すなわち、本実験で認められ た羊水群の特徴は脳内のオピオイドシステムの活性化に裏打ちされたものであると考えら れる。 2.Nippl巴 Attachment形成 分娩直後からNippl巴Attachmentの形成に至る過程については、これまでの我々の研究(児 玉, 2003)で、新生児の選好する刺激が羊水から母乳へと移行し、 Nippl巴Attachm巴nt成立へ つながっていくこと、その移行において羊水が新生児を母親の乳首および初乳へと導く役割 を持つことが明らかとなった。本研究は、これに加えて、新生児が母親の乳首までたどり着 いた後、羊水による開口運動の活発化によってすぐに乳首をくわえ、最初の吸乳にいたるで あろうことを明らかにした。その際、羊水に対する選好が速やかな吸乳へと新生児を結びつ け、初乳への選好の移行をスムーズにし、初乳を分泌する乳首に結びつくことで、 Nippl巴 Attachmentの成立に至ると考えられる。このメカニズムの背後には、脳内のオピオイドシス テムが存在している。ラットの帝王切開胎児にミルクと人工nippleを同時に提示したPetrov

Var1inskaya, & Smoth巴rman(2000)の研究では、オピオイド桔抗薬を用いてその活性をブロ

ックし、 κオピオイドシステムは主にミルクをもたらすnippl巴に向かう行動の開始に関与し、 μオピオイドシステムは最初のnipplegrasp反応をnippleattachm巴ntへと変形させ、ミルク摂 取を一定のレベルで維持する役割を持っていることが示されている。つまり、 Nippl巴 Attachm巴ntの成立後、それが新生児の母親に対する接近の原因となり、さらにその愛着の対 象が母親へと移行することにより、新生児の接近原因は母親と民触することに変わっていく。 このような親子の接触は親子関係を一層密接なものにし、その後の母子関係の強化へとつな がっていくのであろう。 実験2 母乳の反復提示が帝王切開されたSIc:ICRマウス胎児の 反応に及ぼす効果 実験 lでは、羊水刺激の後に母乳刺激を受けると、胎児の頭部の上下伸展運動と開口運動 が活発化することが明らかとなった。しかし自然の状況では、新生児は出生後何度も母乳の 反復提示を受ける。そこで実験2では、帝王切開されたSldCRマウス胎児を被験体とし、 familiarな刺激である羊水から新奇刺激である初乳への切り替わりを受けて、その後初乳の反 復刺激を受けることがマウス胎児の反応に及ぼす効果を検討することを目的とした。実験 l でSAL群とD W群に差が認められなかったため、実験2ではコントロールとしてD W群のみを 設けた。 方 法

(14)

被験体:妊娠18日で帝王切開されたSlc:ICRマウス胎児84匹である。群構成は、 AF群、 MI LK群、 DW群であり、各群の被験体数は28匹であった (TabJ巴 1)。 体毛ブラシの作成、羊水の採取、帝王切開については、実験1と同様に行った。テストの 手続きも周口部刺激セッション4までは実験1と同様に行ったが、実験2ではそれに加えて 1分間の休憩後にさらに全群に対して初乳を浸した体毛ブラシによる 3分間の周口部刺激 セッションを加えた。観察する行動、統計的検定も実験 1と同様であった。 TabJe2被験体と群構成 S巴ssion1 S巴sshion2 Session 3 (休憩)Session4 (休憩)S巴ssion5 Bas巴Jin巴 におい提示周口部刺激1 周口部刺激2 周口部刺激3 AF群 羊水 羊水 初乳 初乳 MILK群 初乳 初乳 初乳 初乳 DW群 蒸留水 蒸留水 初乳 初乳 結 果 Total Activityは、 Pig. 5に示したように、 Baselineに比較して、それ以後のセッションで は増加した。ただし、 AF群とMILK群の増加はDW群よりも多い。分散分析の結果、群 (P= 12.15, df=2/81, p<.01)とセッション (P=30.50,df=4/324, p<.Ol)に主効果が認められた。群 180 160 140 --;; 120 ω -'!!-100 C

80 L 3 6 0 40 20 O Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Stimulation 3 Session Pig. 5 TotaJ Activityの 平 均 持 続 時 間 (

:

t

SE)

(15)

に関する下位検定では、 AF群とD W群、 MILK群とD W群の聞に、それぞれ 1 %レベルで有意 差が認められた。セッションに関する下位検定では、 Bas巴lineとにおい提示、Bas巴lineと周口 部刺激 1・2・3、におい提示と周口部刺激 1・2. 3の聞に、それぞれ 1%レベルで有意 差が認められた。このことは、羊水と母乳に浸した体毛ブラシが胎児の行動を活発にするこ とを示すと同時に、羊水から初乳への刺激変化は行動の変化をもたらさないこと、初乳の反 復刺激提示が効果を持たなかったことを示している。 頭部の上下伸展運動の持続時間については、 TotalActivityと同様、 3群とも Baselineの後の 4セッションで持続時間の増加が見られた (Fig. 6) 。分散分析の結果、群 (F=4.54,df=2/ 81, p<.Ol)とセッション (F=25.88,df=2/324, p<.05) に主効果が認められた。群に関する下 位検定では、 AF群とD W群、 MILK群とD W群の聞に、それぞれ 5 %レベルで有意差が認めら れた。セッションに関する下位検定では、 Baselineとにおい提示、 Baselin巴と周口部刺激 1 ・ 2・3、におい提示と周口部刺激1の聞にそれぞれ 1%レベルで、におい提示と周口部刺激 2の聞に 5 %レベルで有意差が認められた。 160 140 120 ( ~ 100 、』的J c 80

+句d "- 60

40 20 O Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Stimulation 3 Session Fig. 6 頭部の上下仲展運動の平均持続時間(:tSE) 開口運動の潜時をにおい提示セッション以後のセッションで比較したところ、Fig. 7に示 したようににおい提示セッションが最も長く、周口部刺激セッション l・2・3で短くなっ た。特に AF群ではセッションを追うに従って短くなり、 MILK群は周口部刺激セッション 1 のレベルを維持していた。この2群はD W群に比較して短い潜時を示した。分散分析の結果、 群 (F=8.90,df=2/81, p<.Ol)とセッション (F=11.02,df=3/243, p<.Ol)に主効果が認められ た。下位検定を行ったところ、群についてはD W群と AF群・ MILK群の聞にそれぞれ 1%と 5 %レベルで有意差が認められた。セッションについてはにおい提示セッションと周口部刺 激セッション1・2. 3の聞にそれぞれ 1%レベルで有意差が認められた。 開口運動の頻度は際だ、った特徴をもっていた。 Fig.8に示したように、 AF群の頻度が最 も多く、次に MILK群、最も少ないのはD W群であった。セッションによる違いも顕著であり、

(16)

におい提示でわずかに増加し、周口部刺激1で急激に増加した。 AF群の頻度は、周口部刺激 3でさらに増加し、 MILK群の頻度は周口部刺激2でわずかに増加した。分散分析の結果、 群 (F=33.64,df=2/81, p<.01)、セッション (F=22/72,df=4/324, p<.01)、群×セッション (F =6.41, df=8/324, p<.01)が有意であった。 160 140 120 ( ~ 100 v 的 ) な 80 c ー+q伺J 」J 60 40 20 O 30 25 〉、 20 O C

3

1

5

ω

.

.

.

l.J... 10 5 O Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Stimulation 3 Session Fig. 7 開口運動の平均潜時(:tSE) Baseline Presentation Stimulation 1 Stimulation 2 Stimulation 3 Session Fig. 8 開口運動の平均頻度(:tSE) 群に関する下位検定では、 AF群とMILK群 ・D W群の問に 1%レベルで、 MILK群とD W群 の聞に 5 %レベルで有意差が認められた。セッションに関する下位検定では、 Baselineと周

(17)

口部刺激 1 ・2 ・3の聞に 1 %レベルで、におい提示と周口部刺激 1 ・2 ・3の聞にそれぞ れ 1 %・5 %・1 %レベルで、周口部刺激 3と周口部刺激 1・2の聞に 1 %レベルで有意差 が認められた。交互作用に関する単純主効果の検定では、周口部刺激

1

2

3

にそれぞれ 群問の単純主効果が認められたので (Fs=14.43,5.78, 37.15, dfs=2/405, ps<.Ol)、さらに下 位検定を行った。その結果、周口部刺激 1ではAF群と MILK群・ D W群 の 聞 に そ れ ぞ れ は レベルで、周口部刺激 2ではD W群と AF群・ MILK群の問に 1%と 5 %レベルで、周口部刺 激 3ではAF群と MILK群・ D W群の聞にそれぞれ 1%レベルで有意差が認められた。 AF群と MILK群においてはそれぞれセッション聞の単純主効果が認められたので (Fs=30.33,4.39, dfs=4/324, ps<.01)、さらに下位検定を行った。その結果、 AF群においてはBaselineと周口部 刺激 1 ・2. 3の聞に 1 %レベルで、におい提示と周口部刺激 1 ・3の聞に 1%レベルで、 周口部刺激 3と周口部刺激 l ・2の問に 1%レベルで、それぞれ有意差が認めらた。 MILK 群においてはBaselineと周口部刺激 2 ・3の聞にそれぞれ 5 %と 1 %レベルで有意差が認め られた。 周口部刺激セッション lにおける体毛フラシでの平均刺激頻度は、 AF群61.1回、 MILK群 64.6回、 D W群72.1回であった。また、周口部刺激セッション 2では、 AF群59.3回、 MILK群 64.2回、 D W群69.4回であった。周口部刺激セッション 3では、 AF群55.7回、 MILK群64.2回、 D W群68.9回であった。分散分析の結果、群の主効果が認められた (F=8.25,df=2/81, p<.Ol) ので下位検定を行ったところ、 AF群と D W群の聞に 1 %レベルで有意差が認められた。この ことは、周口部への刺激に対して開口運動が生じると被験体が体毛ブラシをくわえ続けるた め、実験者が周口部への刺激を行うことが出来なくなったことの反映である。開口運動の頻 度と併せて考えると、 AF群の頻度が最も多く D W群との差も大きいため、 AF群の刺激回数が 最も少なくなり、D W群との聞の有意差になったと考えられる。 考 察 自然条件下では、初乳による刺激を受ける前に、新生児は必ず羊水の刺激を受けている。 新生児が最初の殴乳を行う際には、羊水の味覚刺激から母親の体毛という触党刺激と初乳の 味覚刺激という切り替わりが生じる。すなわち、分娩直後の新生児が経験する刺激は一つで はなく、必ず次の刺激へと移行し下行くため、この切り替わりが新生児に及ぼす影響を明ら かにすることは、 NippleAttachment形成を検討する上で重要である。実験 1では、この切り 替わりに着目し、実験2でもこの切り替わりを再確認した。さらに、本実験では、初乳によ る刺激を繰り返すことにより、初乳に対する反応を検討した。その結果、羊水と初乳が Total Activityを増加させ、頭部の上下仲展運動を増加させ、開口運動の潜時を短くすること が明らかになった。刺激の切り替わりの効果と初乳による反復刺激効果は、開口運動の頻度 における交互作用として現れた。以下では、この2点について考察する。 1.羊水と初乳の複合効果 羊水と初乳の複合効果は、実験1と同様、 羊水から初乳へと刺激が切り替わる周口部刺激 1と 2における AF群と MILK群・ D W群との比較によって検討することができる。もし、初 乳刺激を受ける前に羊水刺激を受けることが吸乳を促進するのであれば、周口部刺激2で

(18)

AF群の反応が他の 2群よりも多くなっているはずである。実験の結果、交互作用は開口運 動に認められ、 AF群は周口部刺激2でMILK群とDW群よりも高い頻度で開口運動を示し、 周口部刺激2においてもAF群はMILK群とDW群よりも高い頻度であった。ただし、実験1 とは異なり、周口部刺激2ではAF群とMILK群に差は認められなかった。差が現れたのは、 周口部刺激3であり、羊水群の頻度は急激に増加した。実験lと2を比較すると、羊水から 初乳への切り替わりが開口運動を著しく増加させるかどうかという点では異なるが、 MILK 群よりもAF群の頻度が高くなる点では一致している。したがって、羊水と初乳の複合効果 が新生児にとって大きな効果を持つことは明らかである。実験lと本実験では帝王切開後3 時間後から実験を開始しているが、自然条件下では新生児は羊水のにおいに満ちた環境の中 で羊水に濡れた母親の体毛の刺激を受け、 nippleをくわえ、吸乳する。 AF群は3群の中で最 もこの状況に近い条件を取り入れた群であり、本実験の結果は、羊水と初乳の複合効果が Nippl巴 Attachment形成にきわめて重要な役割を果たしていることを明らかにしている。 2.初乳の反復刺激効果 本実験の最大の特色は、初乳による反復刺激を与えるということである。自然条件下にお いて、新生児は最初の吸乳後、初乳を繰り返し飲むことによって生命を維持する。初乳の反 復刺激効果については、これまで検討されたことがなく、本実験が最初である。本実験では、 すべての群に対して初乳の反復刺激を行ったが、 AF群とDW群が2セッション、 MILK群は 3セッションであった。もし初乳の反復刺激が大きな効果を及ぼすのであれば、 MILK群へ の効果が最も大きく、 AF群とDW群への効果は小さいはずである。しかし、観察した行動の すべてにおいてMILK群よりAF群の方が上回っていた。中でも特に際だ、った変化が認められ たのは開口運動であった。 AF群に対する初乳の反復刺激は、開口運動を非常に増加させ、 最も初乳の反復刺激を受けたMILK群は周口部刺激1・2・

3

を通じてほとんど開口運動の 増加を示さず、 DW群は3群中最も低い値であった。従って、初乳の反復刺激効果は、羊水 の刺激が直前に先行することによって強められると考えられる。刺激の順序として、羊水の においに始まり、羊水と体毛による同時提示、その直後の初乳と体毛の同時提示と並んでい ることが、吸乳につながる開口運動の活発化とNippleAttachment形成に貢献しているのであ ろう。 これらのことは、出生直後の母親への愛着が胎児期に慣れ親しんだ羊水への選好を基本と しており、出生後に体毛を介した羊水と母乳との対提示によって連合学習が成立し、それが 母親への愛着形成へとつながっていくことを示している。 実験3 父親と母親の体毛と羊水への帝王切開された SIc:ICR マウス胎児の反応 実験 lと2で、 NippleAttachment形成のメカニズムはほぼ明らかになった。 一方で、愛着 は母親に対してだけ形成されるのかという問題がある。これまでの研究では、父親も子ども の養育に関与し、それがホルモンと経験によってコントロールされていることが明らかにな った CNoirot,1972; Gub巴rnick& Nelson, 1989)。また、父親の存在は子どもの開眼を早め、

(19)

1974; Wang & Novak, 1992) 。しかしこれらの研究は、 父親の養育行動と子どもの身体の 成熟を指標としたものに限られ、子どもの父親に対する行動を検討したものではなかった。 そこで実験3では、新生児が父親の持つ特性の何に対して反応するのかを検討することを目 的とし、分娩後新生児を刺激する父親の体毛と、分娩中に父親に付着する羊水に対する帝王 切開胎児の反応を、母親の体毛と比較して検討した。父親の体毛には母親の体毛よりも太く て長い直毛上のガードヘアが存在しているため(児玉& Smotherman. 1997) 、胎児に与え る皮膚刺激の強さが異なると考えられるためである。 方 法 被験体:妊娠18日で帝王切開されたSlc:ICRマウス胎児30匹である。群構成は、 F-A.F群と M-A.F群であり、各群の被験体数は15匹であった。 F-AF群は、 父親の体毛でブラシを作成し、 それを羊水に浸して実験を行う群であり、

M

-A.F群は、母親の体毛でブラシを作成し、それ を羊水に浸して実験を行う群であった。 体毛ブラシの作成、羊水の採取、帝王切開については、実験lと同様に行った。父親の体 毛は、体側部の体毛を採取して作成した。テストの手続きは、実験lと2の周口部刺激1ま でを用いた。観察する行動は、頭部の回転運動、頭部の上下伸展運動、前肢の運動、開口運 動とした。統計的検定は実験lおよび2と同様であった。 30 25

J

20 Q) ω

O

15 +" 伺 』 コ ロ 10 5

Baseline 結 果 Presentation Session Stimulation Fig. 9 頭部の上下伸展運動の平均持続時間(:tSE)

F

頭部の上下伸展運動の持続時間については、両群はほとんど同じ値を示した。セッション に関しては、 Baselineに比較してにおい提示と周口部刺激で増加を示したが、におい提示と

(20)

周口部刺激の持続時間は類似していた (Fig. 9) 。分散分析の結果、いずれの要因にも有 意差は認められなかった。 頭部の回転運動の持続時間は、両群ともにおい提示で増加した (Fig. 10) 。分散分析の 結果、セッションの主効果が認められた (F=9.98,df=2/56, p<.01)。下位検定を行ったとこ ろ、Baselineとにおい提示・周口部刺激との聞にそれぞれ 1%レベルで有意差が認められた。 ~ 30 ω ~ 25 C

20 ~ コ 口 15 ~ 60 ω ~ 50 C

号40 L コ ロ 30 FhunURM 凋 斗 A 斗 司 d nUFhunU 4 E・ ・ Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 10 頭部の回転運動の平均持続時間(:tSE) n u n u n u n y n U 7 ' n u n u n U 内 L 4 l Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 11 前肢の運動の平均持続時間(:tSE)

E

E

(21)

前肢の運動の持続時間は、 両軍ともセッションを経るに従って増加した (Pig.11)。分 散分析の結果、セッションの主効果が認められた (P=4.65,df=2/56, p<.05)。下位検定を行 ったところ、 Base1ineと周口部刺激との問に 1 %レベルで有意差が認められた。 開口運動は、 Pig. 12に示すように両群ともほとんど同頻度であり、セッション問の変化 も認められない。分散分析の結果、いずれの要因も有意ではなかった。 30 5 一 ﹁ ﹁ ご 一 一 哨 利 一 一 M F

一 回 目 一 25 20 > -O E ~ 15 0' ω 』 LL 10 O Baseline Presentation Session Stimulation Pig. 12 開口運動の平均頻度(:tSE) 考 察 1.体毛による刺激効果の差異 本実験では、父親と母親の刺激に対する帝王切開胎児の反応を比較するために、父親の体 毛を用いたP-AF群と母親の体毛を用いた M-AF群とを設けた。それぞれの刺激に対する胎児 の反応が異なれば、父親と母親の特性を区別していることになる。しかし、胎児のすべての 反応には父親と母親の体毛の違いによる差は認められなかった。つまり、帝王切開胎児は両 親の体毛の違いを区別していないことが明らかとなった。 2.体毛と羊水の複合刺激効果 母親の体毛と羊水の複合効果について、児玉 (2003)は体毛と羊水の持つ嘆党刺激が帝王 切開胎児の開口運動と頭部の上下伸展運動を増加させることを見いだした。本実験では父親 の体毛と母親の体毛を羊水に浸して複合刺激の効果を検討し、体毛と羊水のもつ嘆覚刺激は 頭部の回転運動を促進することが明らかとなった。両者の結果を比較すると、体毛と羊水の 嘆覚刺激が開口運動を促進するかどうかという点については一致しない。しかし、大きく見 ると、頭部の運動を促進する点では一致する。つまり、体毛と羊水のl嘆党刺激は、頭部の運 動を活発化させるのに有効だと考えられる。 次に、両親の体毛と羊水の複合的な刺激効果を周口部への皮膚刺激から見ると、周口部へ

(22)

の刺激は前肢の運動、頭部の上下伸展運動と回転運動を促進した。自然条件下では、前肢の 運動は、覆い被さってくる親の体の下で子どもが仰向けになり、体毛をさぐりながら位置を 移動させることにつながる運動だと考えられる。頭部の回転運動はnippl巴をさがすことに、 そして頭部の上下伸展運動はnippleをさがすと同時にさぐり当てたnippl巴に対して首を伸ば すことにつながる運動である。その結果がnippleをくわえ、吸乳することになる。このこと から、体毛と羊水による皮庸への複合的刺激効果は非常に意味のあるものである。 実験4 父親の体毛と羊水に対する帝王切開された Slc:ICR マウス胎児と新生児の反応 実験3では、父親の体毛と母親の体毛に対する帝王切開された胎児の反応には、羊水に漫 された体毛を用いる限り差のないことが明らかになった。このことは、出生直後の新生児が 母親と父親を区別しない可能性の高いことを示すものである。しかし、晴乳類では母親は晴 乳という生物学的基盤を持っており、父親よりも愛着の対象となりやすい。この考え方に立 てば、子どもは発達の過程で、当初区別していなかった母親と父親を、吸乳経験を経るに従 って区別するようになるはずである。そこで、実験4では、新生児の父親の体毛と羊水に対 する反応を帝王切開胎児と比較することを目的とした。 方 法 被験体:妊娠18日で帝王切開されたSIc:ICRマウス胎児30匹と出生

O

日齢の新生児30匹を用 いた。胎児と新生児を、それぞれ羊水あるいは蒸留水に浸した父親の体毛ブラシで刺激する ため、群構成をFetus-AF群、Fetus-DW群、 NB-AF群、およびNB-DW群の4群構成とした。 F巴tus-AF群では胎児に対して羊水に浸した父親の体毛ブラシ、 Fetus-DW群では胎児に対して 蒸留水に浸した父親の体毛ブラシを、 NB-AF群では新生児に対して羊水に浸した父親の体毛 ブラシを、 NB-D

W

群では新生児に対して蒸留水に浸した父親の体毛ブラシを用いた。 体毛ブラシの作成については実験3と同様であった。羊水の採取、帝王切開については、 実験1と同様に行った。テストの手続きは、実験3と同様であった。観察する行動は、頭部 の回転運動、頭部の上下伸展運動、前肢の運動、関口運動とした。統計的検定としては、日 齢、刺激、セッションの

3

要因の分散分析を用い、下位検定にはTuk巴yの

HSD

検定を用い、 交互作用が認められた場合には単純主効果の検定後Tukeyの

HS

D

検定を用いた。 結 果 頭部の上下伸展運動の特徴は、 Fig. 13に示したように胎児と新生児の反応が異なることで ある。 Baselin巴では、胎児の持続時間に比較して新生児の持続時間は短いが、周口部刺激に かけて新生児の持続時間は増加している。F巴tus-AF群は4群の中で最も長い持続時間を示し、 次いでFetus-DW群となった。それに対し、 NB-AF群とNB心W群の持続時間はBas巴lin巴で短く、 周口部刺激にかけて長くなった。

3

要因の分散分析の結果、妊娠日齢の主効果が認められた (F=14.28, df=1I56, p<.01)。

(23)

〆、, 、 O ω 35 30 25 ,3 20 z

宕15 L コ 口 10 5 O 30 25

'

0

20 ω 凹

O

15 ... 句 』

c

5

10 5 O Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 13 頭部の上下伸展運動の平均持続時間(

:

:

t

SE) Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 14 頭部の回転運動の平均持続時間(

:

:

t

SE) • Fetus-AF 固 Fetus-DW 回NB-AF

NB-DW .Fetus-AF 固Fetus-DW 固NB-AF

NB-DW 頭部の回転運動は、 NB--IコW群を除いた 3群で、 Bas巴lin巴から周口部刺激にかけて増加した (Fig. 14) 0 Bas巴lin巴とにおい提示では、胎児の方が新生児よりも持続時間が長かったが、 周口部刺激でNB-AF群の持続時間が急激に長くなり、 Fetus-D

W

群の持続時間とほとんど同じ レベルとなった。分散分析の結果、妊娠日齢 (F=9.88,df=1!56, p<.01)、セッション (F= 7.04, df=2/112, p<.01)、刺激とセッションの交互作用 (F=4.46,df=2/112, p<.05)に有意差 が認められた。セッションの主効果について下位検定を行ったところ、 Baselineとにおい提 示の聞に5 %レベルで、 Baselineと周口部刺激との聞に 1%レベルで有意差が認められた。

(24)

また、刺激とセッションの交互作用について単純主効果の検定を行ったところ、周口部刺激 における刺激の効果が 1 %レベルで認められた (F=9.34,df=1/168, p<.01)。 前肢の運動は、セッションに伴って増加したが、胎児と新生児とでは大きく異なり、 Fetus-AF群とFetus-DW群の持続時間は、 NB-AF群とNB-DW群よりも長かった (Fig. 15)。 分散分析の結果、妊娠日齢 (F=55.79,df=1/,56, p<.01)とセッション (F=16.18,df=2/112, Pく.01)が有意であった。セッションについて下位検定を行ったところ、 BaseJineとにおい提

'

0

60 ω . .!!J, 50 E

宮40 』

c

5

30 舌15 c ω コ 0" ω よ 10 n u n u n u n u n O 守/ n u n u n U 内 正 唱 1 Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 15 前肢の運動の平均持続時間(土SE) 25 20 5

Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 16 開口運動の平均頻度(:tSE) • Fetus-AF 園 Fetus-DW 固 NB-AF

NB-DW

(25)

示、 Bas巴lineと周口部刺激の聞に、それぞれ1 %レベルで有意差が認められた。 開口運動は、胎児と新生児とで頻度が大きく異なっており、 F巴tus-AF群とFetus心W群の頻 度が高いのに対し、 NB-AF群とNB-DW群の頻度は低かった (Fig. 16)。また、 NB-AF群と NB-DW群はにおい提示と周口部刺激でBase1in巴よりも低い頻度を示した。分散分析の結果、 妊娠日齢 (F=3.23,df=1/56, p<.lO)とセッション (F=2.66,df=2/112, p<.10)に有意な傾向が 認められた。 考 察 1. 日齢の違いに見られる発達的変化 本実験では、妊娠18日の帝王切開胎児と妊娠19日の新生児を用いた。これは、吸乳経験の 有無が、父親の持つ刺激(体毛)に対するこの反応に変化をもたらすか否かを検討するため であった。実験の結果、すべての運動において帝王切開胎児の方が新生児よりも活発であっ た。 Kodama (1993)は、マウスの身体運動量を胎児期から出生後数日まで調べ、そのピーク が妊娠18日にあること、そしてそれ以降では減少することを報告した。この背後には、筋肉 の発達に伴って無駄な運動が減少していくことがあると考えられる。本実験の結果は、この ことを支持するものである。 2.羊水の効果 本実験では、父親の体毛を羊水と蒸留水に浸して帝王切開胎児と新生児に提示したところ、 羊水の効果は頭部の回転運動において交互作用として認められたのみであり、それほど明ら かではなかった。このことは、実験lと2で認められた母親の体毛と羊水の効果とは明らか に異なる。なぜこのような違いが現れたのかについては不明であるが、 一つの可能性として は、父親の体毛が母親の体毛と異なる効果を持つのではないかと考えられる。また次には、 羊水が子どもを惹き付ける効果の減衰である。子どもの生存にとって不可欠なのは、羊水よ りも母乳であるというのが一般的な理解である。 Varendi,Port巴r,& Winberg (1997)は、羊水 の誘因力は一過性のものであり、生後2"'5日で羊水に対する先行は弱まると報告している。 本実験で羊水の効果が明らかでなかったことには、以上の可能性が考えられる。 実験

5

父親の体毛と初乳に対する帝王切開された

S

Jc

:

I

C

R

マウス胎児の反応 羊水のにおいに惹き付けられて母親と接触した新生児は、 nippl巴周辺の体毛による触覚刺 激を受け、開口する。それが、次にnippleをくわえて吸乳するという行動へとつながってい くと考えられる。これは、新生児にとっての連合学習に他ならない。羊水は分娩を手伝う父 親の体毛にも付着するので、出生直後の新生児が父親と母親を区別することは困難なはずで ある。ただし、父親の体毛と母親の体毛には差があるため、体毛を手がかりとして新生児が 母乳につながる母親とそうでない父親とを区別しているロ

J

能性はある。そこで本実験では、 父親の体毛を母親から採取した初乳に漫し、それに対する妊娠18日の帝王切開胎児の反応を 検討した。

(26)

方 法 被 験 体 :妊娠

1

8

日で帝王切開した

S

l

c

:

I

C

R

マウス胎児

6

0

匹である。群構成は、

AF

群(羊水 に浸した父親の体毛ブラシで刺激される群)、

MILK

群(母乳に浸した父親の体毛ブラシで 刺激される群)、

DW

群(蒸留水に浸した父親の体毛ブラシで刺激される群)であり、各群 20匹ずつを用いた。 母乳の採取:自然分娩した母親から出産後24時間以内の初乳を採取した。先ずは母親に ハンドリングを行って実験者の触覚刺激に馴化させ、プロラクチン 2μgを腹腔内注射し、 その 10分後にオキシトシン200ngを腹腔内注射した。母乳が溜まってきたら手で搾乳し、出 てきた母乳をヘマトクリッ ト管で吸い上げた。採取した母乳の凝固を防ぐため、蒸留水で2 倍に希釈し、それを

PCR

チューブに分注し、-

8

0

"Cで保存した。 羊水の採取、体毛ブラシの作成、帝王切開、実験手続き、統計的検定は、すべて実験4と 同様であった。 結 果 父親の体毛が母親の体毛と異なるのは、ガードへアの多さである。ガードヘアは直毛では あるが、通常の直毛よりも太くて長い。しかしその識別は困難なため、ガードヘアと通常の 直毛の数を直毛数として合計し、父親の体毛と母親の体毛で作成したフラシに含まれる直毛 数を比較した。父親の体毛では、直毛は 17本であったのに対し、母親の体毛では 10本であっ た。また、父親の直毛の方が母親の直毛よりも明らかに長かった。 40 n U E d n U 1 35 30 ,ー、、 ~ 25 問 、-'

g

20 +"' C百 当15 口 Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 17 頭部の上下伸展運動の持続時間(::tSE) 頭部の上下伸展運動の持続時間は、

AF

群と

MILK

群において、周口部刺激で増加したが、

(27)

D W群においては

3

つのセッションを通じてほとんど変化しなかった (Fig. 17)。特に増加 が著しかったのは、 MILK群である。分散分析の結果、群 (F=14.56,df=2/57, p<.Ol)とセッ ション (F=4.90

df=2/114

p<.Ol)ともに主効果が認められた。群についての下位検定では、 MILK群とAF群 ・D W群の聞に、それぞれ 1 %レベルで有意差が認められた。セッションに ついての下位検定では、におい提示と周口部刺激の聞に 1%レベルで有意差が認められた。 QU ( . 0 ω 的 ) n h v 凋 斗 z o 一 判 句 ・﹄ コ 口 ~ 25 的 +" C司 当15 Q 12 10 2 O

Baseline Presentation Stimulation Session Fig. 18 頭部の回転運動の持続時間(

:

t

SE) 40 35 30 2520 10 5 O Baseline Presentation Session Stimulation Fig. 19 前肢の運動の持続時間(

:

t

SE) 頭部の回転運動の持続時間では、 AF群とMILK群が周口部刺激で急激に増加したが、 D W

(28)

群はにおい提示で一旦減少し、周口部刺激でBas巴1in巴と同じレベルに戻っている (Pig.18)。 分散分析の結果、セッション (P=7.98,df=2/114, p<.Ol)の主効果が認められた。下位検定

を行ったところ、におい提示と周口部刺激の聞に 1%レベルで有意差が認められた。 前肢の運動の持続時間では、 3群とも周口部刺激で増加を示した。特にMILK群の増加が

著しかった (Pig. 19)。分散分析の結果、群 (P=1l.23,df=2/S7, p<.Ol)とセッション (P=

20.09, df=2/114, p<.Ol)の主効果が認められた。群についての下位検定では、 AF群と MILK

群の聞に 1%レベルで有意差が認められた。また、セッションについての下位検定では、周 口部刺激とBas巴1in巴・におい提示の聞に、それぞれ 1%レベルで有意差が認められた。 開口運動の頻度では、 3群とも周口部刺激で減少した (Pig. 20)。分散分析の結果、セッ ションの主効果が認められた。そこで下位検定を行ったところ、周口部刺激とBas巴1ine・に おい提示の聞にそれぞれ1%レベルで有意差が認められた。 n O 守 I F O R U λ ﹃ q d ﹀ O Z ω コ ぴ ω L L 2

Baseline Presentation Session Stimulation Pig. 20 開口運動の頻度(:tSE) 考 察 本実験では、初乳を父親の体毛に浸して刺激すると、頭部の上下伸展運動、頭部の回転運 動、前肢の運動で帝王切開胎児の持続時間が増加し、羊水の効果を上回っていた。この結果 は、実験lと2で初乳を母親の体毛に浸して刺激した場合に、下水の効果が初乳の効果を上 回っていたのと逆の結果である。 一方、実験3では羊水を父親の体毛に浸して刺激したが、 母親の体毛を用いた場合とほとんど差は認められなかった。これらのことから、父親の体毛 を初乳に浸した場合と羊水に浸した場合とでは、胎児に及ぼす効果が異なると考えられる。 初乳がある程度胎児の行動を活発化することは事実であるが、本実験の結果を併せて考える と、父親の体毛の効果が大きく現れたと考えるのが妥当であろう。母親と父親の体毛を比較 すると、父親の体毛の方が直毛数が多い。このことが胎児の周口部を刺激したときに強い刺 激を与えることとなり、運動の活発化を引き起こした可能性がある。

(29)

もしそうならば、子どもが父親と接触することによって運動を活発化させ、体毛の違いに よって父親と母親を区別することもできるであろう。この父親の体毛に母親の分娩時の羊水 が付着し、それを媒介として父親への愛着が形成されるのかもしれない。さらに、同居して いる母親の持つ母乳、排世物などの刺激が父親の体毛に付着すると、いっそう子どもが父親 への強い愛着を持つことになるだろう。 実験6 母親と父親に対する SIc:ICRマウス新生児の選好 実験5までは、母親と父親が持つ刺激特性を分離し、いくつかの刺激を組み合わせ、胎児 と新生児の行動を詳細に検討した。通常親と子が同居している状態では、親の体に子どもが 隠れてしまい、親子が接触している場面における子どもの行動を把握することは困難だから である。一方、親の刺激特性を分離するのではなく、親の行動を制限することによって子ど もの行動を把握する方法もある。この方法では親の持つ刺激特性の分離はできないが、さま ざまな刺激を持った存在として親をとらえ、それに対する子どもの行動をある程度検討する ことが出来る。 2つの異なった方法は方向性が異なるものの、両者の結果を総合することに よって、自然条件下で生じている親子関係を子どもの行動メカニズムとして理解することが 可能である。従って、実験6では、両親を麻酔して行動を制限し、両親に対する新生児の選 好を検討することを目的とした。 このタイプの実験を行う場合に、日齢の選定は重要である。なぜなら、出生直後の新生児 は運動能力が未熟であり、親を選択したとしてもそれが偶然によるものか明らかな選好によ るものかが区別できないからである。それが判別可能になるのは、出生2日齢である(児玉, 1994)。児玉は、出生 2日齢のマウス新生児が自分の母親の刺激特性を記憶し、他の母親と 区別し、自分の母親を選好することを見いだした。このことは、出生2日齢の新生児が自分 の母親と父親を区別できる可能性を示している。実験3で、母親と父親の体毛を羊水に浸す と帝王切開胎児は両者を区別しないことが明らかになったが、母親と父親には代謝の差異に 由来するにおいの差異と母乳の有無という差異があるため、出生後2日間両親と同居した新 生児が両親聞の差異を学習し、それに基づ、いて母親への選好を強めることが予想される。そ の2日間で新生児の生命維持に必要な母乳への選好が確立されると考えられるからである。 そこで、新生児の日齢の設定を 2日齢と 3日齢とし、両親への選好の発達的変化を検討する こととした。 方 法 被験体:妊娠19日で出生した Slc:ICRマウスの 2日齢の新生児 (60匹)と 3日齢の新生児 (60匹)を用いた。リターによる偏りを防ぐため、それぞれ、 12リターより各5匹を用いた。 手続き:被験体を、 2日齢および 3日齢までホームケージ (15X 21X 12cm) で両親と同居 させた。テストは2日齢と3日齢で行った。テスト開始前に子どもを両親から離し、ホーム ケージとは別のケージ U6X12X4cm)に入れ、 34"Cに保温したパラフィン伸展器で保温し、 3時間の親子分離を行った。 3時間後、両親を麻酔した (Nembutal50mg!kg, ip)。その後、 34"Cに保温したテスト装置内に腹部が向き合うように、約 3cmの感覚を空けて両親を横臥さ

(30)

せた (Fig.21) 。被験体を置く位置は、装置内の 6X3X7cmの囲いの中であり、母親と父親 の足の付け根の中央に被験体の鼻がくるようにし、少し動けば被験体の鼻やひげが母親ある

5cm

5cm

4.7cm

6cm

15cm

S

4cm

3cm

Fig. 21 実験装置 いは父親の体毛に接触するようにして(図中

s

)

テストを開始した。親への接触は、被験体 が鼻を親の体に押しつけて頭を動かし、 nippJ巴をさがしているような行動を1秒以上行ってい ることで判断し、それに至るまでの潜時と行動の持続時間を記録した。テスト時間は5分間 であった。装置のどちら側にどちらの親を置くかは、リターごとに変更した。被験体の行動 をビデオに録画し、テスト終了後再生し、最初に接触した親、接触潜時、接触持続時間、持 続時間の長い親、吸乳に至った被験体を記録した。 被験体の割合を記録した行動については、逆正弦変換による 2要因の分散分析かχ2検定 を行った。行動の持続時間については、日齢と親に関する2要因の分散分析を行った。 結 果 それぞれの子どもが母親と父親のどちらに最初に接触したのかをパーセンテージで示し たものがFig. 22である。図から明らかなように、 2日齢の新生児は父親よりも母親に対し て最初に接触するが、 3日齢になると、母親に対しても父親に対しても同程度に接触するよ うになる。そこで逆正弦変換による日齢と親への反応についての分散分析を行ったところ、 親への反応が有意であった (χ2= 128.1, df=l, p<.01)。下位検定の結果、母親への反応と 父親への反応(χ2=6.16, df=l, p<.05)、母親への反応と無反応(χ2=69.27, df=l, p<.01)、 父親への反応と無反応 (χ2

=

116.7, df=l, p<.05)の聞にそれぞれ有意差が認められた。ま た、日齢と反応の種類との聞に交互作用が認められたため (χ2= 11.12, df=l, p<.01)単純

(31)

主効果の検定を行ったところ、 日齢における無反応の割合に有意差が認められた (χ2= 10.29, df=l, p<.01)。 次に、母親あるいは父親に接触するまでの平均潜時については (Fig. 23)、日齢にかかわ らず母親の方が父親よりも短い潜時であった。しかし、母親への潜時は観察時間300秒の約 3分の lであり、すぐに母親に接触するわけではない。父親に対しでも観察時間300秒の約 半分の時間で接触している。潜時は分散が平均値の関数になっているため対数変換して分散 分析を行ったところ、親の主効果が認められた (F=6.75,df=1/113, p<.OS)。

f

3

80 O ω -コ ぢ

6

0

c/)

4-:40

bD 問 +-J ~

2

0

0

c

f

0

2

0

0

u 150 ω ω

100 c ω

3 5 0

2 3 Days of Age Fig. 22 最初に接触した親 2 Days of Age Fig. 23 親への平均接触潜時(:tSE) 3 I:::JMother 園Father

NoResponse どちらの親にどれだけ長く接触していたかについては、 Fig. 24に示した。 2日齢から 3 日齢にかけて、どちらの親に対しでも接触持続時間は長くなっているが、特に母親への接触 持続時間の方が父親に比較して長く、 3日齢ではさらに長くなっている。そこで分散分析を

参照

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