術前訪問に対する手術部看護婦の意識調査
一術前訪問の効果を知るために
手 術 部 ○奥宮 由実●宮田 美紀●岩河 玲子 小笠原須奈子●田所 美穂●宮地 広美 文野 和美●麻植美佐子 I.は じ め に 医学の発展に伴う手術内容の高度化や高齢化社会の到来などから手術室看護は,より緻密 な周手術期看護が求められている。 周手術期看護の概念が, 1978年国際手術室看護婦協会(AORN)によって,わが国に紹 介された。その内容は,術前,術中看護,術後評価にいたる一貫性のある看護を求めており, この考え方は日本でも定着してきている。 その中で,手術室看護目標は,「患者の生命維持を最優先し,手術が安全かつ円滑に進行 するよう,術前・術中・術後を通じて,個別的,継続的援助を行い,患者の健康回復を図る こと」1)とされている。 しかし,当手術部では,日々の繁雑な業務に追われ,手術の術式や器械準備に重きをおく 場合が少なくなかった。又,00手術の介助をするという目の向け方で,患者に対する意識 が薄いうえに,患者の情報があまりにも少ないため,患者の全体像がイメージできていない まま手術介助にあたる現状であった。 そこで今回,術前訪問を行うことが,手術室看護にどのように影響し,効果を与えている のか知る目的で,看護婦の意識調査を行ったので,結果を報告する。 n。仮 説 1.手術部経験年数の高い人程,術前訪問の必要性を感じており,意識の変化が強く現れ る。 2.心理面の中の患者との関わりについては,手術部経験年数に関係なく,病棟経験有の 人が変化がでてくるのではないか。Ⅲ。研 究 方 法 1.対象:手術部看護婦20名 (手術部経験年数1∼10年 平均4年) (看護婦経験年数1∼17年 平均7年) 2.方法:アンケート調査(アンケート用紙は別紙参照) 3.アンケート調査期間:9月1,2日 4.術前訪問に関する内容 平成6年7月1日より,全身麻酔下で行う整形外科の手術患者を対象に開始した。手術開 始2日前,又は前日の日勤帯(Pm)又は17時以降に間接介助者もしくは,直接介助者が訪 問する。8月31日までの訪問患者数は,延30名である。 整形外科の患者を対象としたのは, 1)特殊な体位をとる事例が多く,事前に体格を知ることにより,患者にあった体位の 工夫ができる。 2)病棟に外科系2診療科ある場合,術前訪問する患者としない患者がいれば,患者間 で混乱をまねく恐れがある。 の2つの理由からである。 IV.アンケート結果 1.知 識 「患者の心理面,身体面の情報が得られたか」 変化あり(100%) 「患者の全体像がイメージできたか」 変化あり(95%) わからない(5%) 「それぞれの患者にあった援助を考えるようになったか」 変化あり(95%) わからない(5%) 「病棟看護婦とコンタクトをとることは必要だと思うか」 変化あり(85%) 変わらない(5%) わからない(10%) 「病名,術式の一般的な理解に留まらず,術後の合併症などの影響も含めて学習するよ うになったか」 変化あり(50%) 変わらない(40%) わからない(10%)
2。技 術 「術前にいろいろ準備ができましたか」 変化あり(70%) 変わらない(15%) 「適切な固定ができましたか」 変化あり(70%) 変わらない(10%) 「早期対処ができるようになったか」 変化あり(40%) 変わらない(15%) 3.心 理 「もっと勉強しなければと感じたか」 変化あり(100%) 「患者との間に親近感がもてたか」 変化あり(85%) 「以前より意識して看護するようになったか」 変化あり(90%) 変わらない(5%) 「患者との会話がスムーズにできるようになったか」 変化あり(65%) 変わらない(20%) わからない(15%) わからない(20%) わからない(45%) わからない(15%) わからない(5%) わからない(15%) V。考 察 1.知 識 術前訪問を行って患者の情報を充分収集できるようになった。具体的には,患者の心理面, 手術内容,手術体位に影響を及ぼす身体的状況,医師から患者への説明内容や,その患者に 用いる新しい手術器械,器具の情報などが得られた。その結果,患者の全体像がイメージで きるようになり,各々の患者にあった援助を今まで以上に,意識して行えるようになった。 更に,カルテや手術患者記録用紙からは得られない,患者の性格や,手術直前の精神状態な どの情報が,病棟看護婦から得られ,患者への対応の仕方に非常に役だった。これらの事よ り,病棟看護婦とのコンタクトの必要性も感じた。 以上,設問4項目を含めた8項目は80%以上の意識の変化が得られた。これらの事より, 患者の個別的な情報が収集できたことは,適切な看護計画の立案や実施につながる基本とな ると考える。 2.技 術 術前に患者をイメージしながら,体位固定具や合併症から使用が予測される物品(例えば,
血糖測定器,カウンターショック,薬品等)を考慮して準備ができるようになった。これを 手術部経験年数別からみると,経験年数が高い程確実な準備ができるようになった。この事 からも仮説1は,立証された。 又,適切な体位固定では,手術部経験年数が高い程“変化あり”の回答が多くなると思わ れたが,むしろ“変化あり”と答えた看護婦は,手術部経験年数5年以上より1∼4年目に 多かった。そこで手術部経験年数5年以上の人で“変化なじと答えた人に聞き取り調査を したところ,“術前訪問に関係なく,患者の体格や麻庫を考慮した,適切な体位固定はして いだという意見も聞かれた。 これらの結果より,1∼4年の手術部経験の少ない人に,意識の変化が多くみられたこと で,手術部経験年数の高い人との技術の差が,縮小された事がわかった。このことは,手術 室看護の目標である,安全・安楽かつ円滑な術中看護を実践するという事につながった。 以上の2項目を含んだ3項目は, 70%以上の人が“変化あり”と答えているが,“早期対 処ができるようになったがの回答は低率であった。これは,“変わらない,わからない” と答えた人の中に,術前に予測して準備はしていたが,実際使用する場がなかった人も含ま れていたためである。しかじ変化あり”と答えた人の中にぱ麻酔医にまかせっきりにな らないで意識してバイタルサインなど観察するようになっだという声も聞かれた。 3.心 理 心理面において,“変化あり”の回答が低かったのは,“会話がスムーズにできたがの 項目のみであった。この項目で“変化あり”と答えた人をみると,看護婦・手術部経験年数 には左右されず,病棟経験の有無で変化がみられた。 病棟経験有りの人はO 00/無しの人は45%であり,病棟経験有りの人に,変化が多くみら れた。このことから,病棟経験有りの人が,より面接技術が高く,短時間で患者との会話が スムーズにできるのではないか,と考えられた。これらより仮説2は立証された。 しかし,他の5項目については, 80%以上の意識の変化がみられた。患者との間に親近感 がもてるようになり,術後も患者の経過が気になるようになった。そして,患者を訪室した り,術後の合併症まで含めた学習をしている人もいた。しかし現状では,勉強不足を全員が 感じており,レベルアップをめざす前向きの姿勢が,以前よりうかがわれる。又自分の受け 持ち患者という思いが以前より強くなり,親身な気持ちで手術室に入室した患者に,笑顔で あいさつしたり,積極的な声かけをしたり,といった態度の変化がはっきりとでてくるよう になった。そして,患者からは,“心丈夫だっだ“安心できだなどの声も聞かれた。 WILLS(1970)2)による術前訪問の研究によると,手術室看護婦にとって,患者自身の人
格,身体,精神状態を理解しておくことは,個別的な援助の改善に有効であったと結論づけ ている。今回,一部の患者の術前訪問であるが,手術部看護婦の意識を変化させたことは, 効果的であったと言える。 Ⅵ。結 語 1.情報収集ができ,患者全体のイメージができた。 2.個別的な準備,術中看護ができるようになった。 3.患者への意識が高まり,患者に対する態度に変化があらわれた。 Ⅶ。お わ り に 今日,手術室看護を行っていくために,術前訪問は不可欠であると思われる。今後の課題 としては,多忙の中で,時間をどう確保し,術前訪問を継続していくか,そして,収集した 情報を生かした,看護計画を立案し実施させていくのかを,検討したい。 引用・参考文献 1)藤村龍子:手術患者の心理的不安の緩和,オペナーシング,秋季増刊, p.10∼15, 1992 2) WI LLS:手術患者の心理的不安の緩和,オペナーシング,秋季増刊, p.14∼15, 1992. 3)渋谷由紀子他:手術室看護婦における術前訪問に対する意識調査,第21日本看護学会集 録(看護管理) , p.248∼250, 1990. 4)木下裕子他:術前訪問が手術室看護婦にもたらす効果について,日本手術部医学会誌, Vol.12, No.l, plO2∼104, 1991.
5)原田和子:手術前訪問看護の意義を考える,オペナーシング, Vol.3, No.12, p.9∼14, 1988. 6)川崎多恵子:手術室看護婦の専門性とは,オペナーシング, Vol.8, No.6, p.28∼34, 1993. 7)坂井ノブ子他:手術患者への援助(手術室看護婦が果たす役割),オペナーシング,秋 季増刊, p.52∼58, 1992. 8)新井晴代他:手術室看護婦の意識と実態,日本手術部医学会誌, Vol.13, No.l, p.139 ∼140, 1992.
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