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女性の起業家精神を育む経営学教育の実践

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Academic year: 2021

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女性の起業家精神を育む経営学教育の実践

Case Report for Business Education to Encourage Female Entrepreneurship

姜 理惠

1

,清水里紗

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Rihyei KANG

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and Risa SHIMUZU

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北陸先端科学技術大学院大学

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Japan Advanced Institure of Science and Technology

Abstract: As Japanese female entreprenuerial activity index is the 2nd lowest rank in the world by GEM 2016, it is urgently necessary for Japan to encourage Japanese female entrepreneurship. This paper reports one case to try to educate female undergraduate students trough running shave-ice shop management. The experience to manage their own business drived the students to try their own start-up and be entrepreneurial.

はじめに

日本人女性の起業率は他国と比較して極めて低い。 世界規模の起業家調査 GEM(Global Entrepreneurship Monitor)によると日本人女性の起業率は世界ワース ト2 位である(GEM, 2016)。一方、成功率は高く、日 本人女性の起業は「少産少死」型という特徴がある。 更に詳細な分析を進めた結果、この「少産少死」と いう特徴は日本社会の支援の薄さや元々の起業意欲 が低いことによるが、高い成功率(=低廃業率)の 理由は不明である(高橋, 2014)。 本稿は、こうした背景を受けて著者らが実践した アクティブラーニング形式による経営学教育の事例 について報告するものである。 具体的には2015-2017 年の 3 年間に渡り、新潟県 内の私立大学における課外活動の一環として、夏季 のみの地産地消スイーツ店を運営したものである。 女子学生計25 名が参加し、第一筆者が顧問教員とし て指導した。地元企業、後に果樹園とアライアンス を組み、経営母体は彼らとして、学生はアルバイト 料を受け取るという仕組みとした。 この活動を通じて当初全く起業や経営に興味を持 たなかった学生達が徐々に変化し、将来経営者にな ることを目指す者も増えた。また、営業終了後の秋 冬にはビジネスコンテストに参加、123 万円(2016、 2017 年)の賞金を獲得するなどの成果もあげた。

女性の起業家精神を取り巻く現状

女性の起業家活動を取り巻く現状は、中小企業庁 による中小企業白書(2014)に詳しい。 起業時に選択した業種を見ると、女性は子育てや 介護など生活関連サービス業、娯楽業」や趣味、前 職で特技・資格などを発展させる形による「教育、 学習支援業」分野での起業が目立つ。 起業した時期の選択としては、「時間的余裕(介護 や子育て等が一段落)」や「家庭環境の変化(結婚・ 離 婚、出産等)」といった家庭面に関する要因を挙げる 者が多い。 ま た女性起業家は「性別に関係なく働くことがで き る」「趣味や特技を活かす」「家族や子育て、介 護をしながら働ける」を選択する割合が、男性起業 家をも含めた全体平均より高く、職務経験や趣味を 活かして、家事と両立しながら起業する傾向が見 ら れる。 一方、起業時の教育や準備、経験不足も目立つ。 女性は「他社での勤務経験はなく、独自に起業」 を選択する割合が相対的に高い。女性ゆえに資金調 達の難しさを理由として、個人事業者として起業す る者が7 割を超えている。 また起業時、起業後の課題はともに「経営知識」 「家庭との両立」とする割合が高い。起業や経営に 関する悩みを相談するにあたっても「性別・年齢に より起業すること自体を否定されることへの不安」 を回答する割合が比較的くなっている。 これらをまとめると女性起業家は ü 家庭との両立に関心が高い ü 経営教育を受ける機会が極めて少ない ü 女性が起業することに対する否定的な社会風 潮の影響を受けている ということがわかる。 こうした背景から、第一筆者は当時の勤務先であ

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る新潟県内の私立大学において、女子学生を対象に 経営を実践で学ぶアクティブラーニング、プロジェ クトベースドラーニングの課外活動を立ち上げるこ ととした。 その活動を通じて経営を学ぶことにより、生涯を 通じて女性特有のライフステージの変化があっても 通用するビジネスセンス、経営の基礎知識を身につ けることができ、学生達のキャリア形成に寄与する と考えたためである。

地域と連携した仕組みづくり

主目的は学生の経営学教育であるが、同時に地元 との共創も目指した。事業の実際の運営は、地元の 不動産会社(以下 A 社)の責任によることとした。 第一筆者は同社より地域活性化を目的にした新事業 を相談され、夏季限定地産地消の生フルーツかき氷 店の出店を勧め、A 社がこれを了承することにより 本事業がスタートした。 経営のスキームは ・事業主体A 社(2017 年より B 果樹園に変更) ・経営管理 第一筆者 ・従業員 第二筆者を含む学生アルバイト ・調理指導 かき氷研究家の短期雇用 ・仕入先 地元果樹園 ・広報 市の地域課 ・そのほか協力者 地元 ミニ FM、商店街など であり、地域と連携して共創する体制が当初より整 ってスタートした。 接客練習、経理、レシピ開発などは学内のサーク ル活動とし、店舗での労働はアルバイトとして学生 は運営会社から時給800〜900 円を得ることで、学生 にとって夏休みのアルバイトとして参加しやすい状 況になった。 2015 年のオープン直後より新聞、テレビ、ラジオ での取材が相次いで、連日長蛇の列という順調な滑 り出しとなった。 当地ではこのような共創の取り組みが大変珍しい 上、季節性のある商品であることも相まってSNS で も話題となり、年代を問わない来客でにぎわい、初 年度の営業は盛況で終了した。 2 期目の 2016 年は専門家を招聘せず学生のみでの 運営となったが、都内へのイベント出店、企業イベ ントへの招聘が相次いだ。 3 期目の 2017 年はオーナーを果樹園にチェンジし、 地産地消色を強め、地元J リーグチームのオリジナ ルデザートを開発、販売するなど更に共創を推進し た。

共創の実績と成功要因

この活動が広く知られるにつれ、様々な個人、団 体、組織から協働の申し出を受けることとなった。 実際に実行した一部が以下である。 地元アイドル オリジナル商品開発ご提案 デザイナー おしゃれなデザインのかき氷のぼ り共同開発 地元農園 柿かき氷の開発・販売 地元果樹園 ル レクチエ ジュース催事、新規販 路の開拓(財閥系商社と契約) 地元ガス会社 社名にちなんだメニュー開発「えち ご氷」イベント SNS 広報 地元製菓会社 新レシピのご提案 なお、申し出を受けても途中で協働が頓挫するケ ースが大半であり、その理由は金銭的な問題が多か った。学生へのアルバイト代を惜しまれたり、無料 での奉仕を求められたりするケースが非常に多く、 これらは学生ら自体が話し合ってお断りしていた。 実現したケースはwin-win の考えに基づき、学生 だからと軽視しない考えの事業体との協働を選んで 実践し、それらは大半が成功した。

キャリア教育としての効果

このように地域連携、小規模事業としてはおよそ 成功したものの、もう一つの目的、学生への教育効 果については質問紙調査を行った。 起業意識や起業家特性をはかるには、さまざまな メジャメントがある。

こ こ で は Langkamp Bolton and Lane(2011) の Individual Entrepreneurial Orientation(IEO)を用いる こととする。 IEO は個人の起業家性向を測るもので、リスク性 向、イノベーション性向、積極性向を10 の質問文で 測る。結果は以下のようになった。 参加者 (n=7) 非参加者 (n=26) リスク性向 3.7 3.5 イノベーション性向 3.6 3.4 積極性向 4.1 3.6 表1. IEO 結果 t 検定の結果いずれも有意ではなく、統計上は同活 動に参加した学生と不参加の学生にIEO 上の差異は

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見つからなかった。 しかし定性的に見るとその差は著しい。 活動に参加している学生20 名のうち、3 名が学内 の学業成績優秀者に選ばれ、奨学金を受ける。 また2 名が県の海外派遣事業に選ばれ海外実習に 赴き、別の3 名は市が 2016 年に初めて募集した六次 産業化ビジネスプランコンテストに入賞し100 万円 の賞金を獲得した。 他のビジネスコンテストでも準優勝、奨励賞、優 秀賞などを獲得、これまでの累積賞金額は123 万円 となっている。 また学生たち自身が互いにピアレビューする形で 定性調査を実施したところ 【モチベーション要因・阻害要因】 営業やビジネスコンテストで周囲に認められたと きにモチベーションが上がった。 逆に阻害要因はメンバー内でのルールが守られな いことや人間関係の悪化などであった。 【学生の創造性】 活動の中で新たな出会いが多くあり、多様性の中 から一人では考えつかなかったアイデアを思いつき、 創造性が上がった。 といった結果を得た。 当初学生らは大半が地元企業、農協への就職を希 望していた。しかし活動が進むにつれ、都内企業、 県内マスメディア、起業など様々な職種、業界に関 心を寄せるようになり、キャリアプランの幅が大幅 に広がった。 本稿ではこのような定性的な結果をもって、本活 動は参加した学生の起業意識、起業家精神を育んだ と結論づける。

共創の成功要因

こうした活動を3 年続けた後、第一筆者は他学に 移ったため、主体的な取り組みからは外れた。現在 も残った学生たちが真摯に活動に取り組んでおり、 個人的な親交の範囲内で支援してる。 本活動を通じて様々な団体、個人と共創できたこ とは他に代え難い貴重な大変であり、お世話になっ た方々全てに心より御礼申し上げる。 こうした共創がうまくいった理由を考えるに、先 述でも触れたがwin-win という attitude が最も重要な 要因であったと思えてならない。 学生だから無料で、もしくは交通費のみで、とい った申し出は、いくら相手が魅力的であろうとも話 を進めるうちに結局頓挫することとなった。 タダで使える人材を丁寧に使うことは多くない。 第一筆者は管理監督者の責任として、学生の学習に 適した環境を整備することを優先し、こうした申し 出は早い段階で選別するようにしていた。また、交 渉の途中であっても学生たちが主体的に判断して共 創を中止するケースもあった。 反面学生の未熟さにより、共創相手に対して迷惑 をかけるケースも多々あった。活動が進むにつれて 学生たちの自信が、傲慢な態度や言動となって社会 人の気分を害し、クレームを受けることも非常に多 かった。これらについては都度学生を呼び出し、個 人的に指導していた。 活動に参加する学生同士の人間関係も非常に重要 であった。関係が潤滑なときは共創がうまくいき、 新業態、新メニュー開発などもスムーズだったが、 そうでないときは活動辞退の申し出や、集団での陰 口、いじめの予兆のようなものもあった。これらに ついては第一筆者が教員の立場から介入し、時には 話し合いをするなどしたが、解決が非常に難しく期 間を通じて最も重大なネガティブ要因であった。 こうした経験から共創の成功要因を考えるに、や はり円滑な人間関係に尽きる。セッティングがどう であれ、そこに集う人々が互いに信頼し誠実に共創 に取り組める場づくりが、何よりもまず第一に重要 であろう。

謝辞

本研究の一部はJSPS 科研費 17K03972 の助成を受け たものです。

参考文献

[1] 高橋徳行:「起業態度と起業活動の国際比較-日本の女 性の起業活動はなぜ低迷しているのか-」『2014 年版 新規開業白書』同友館、日本政策金融公庫総合研究所 編、pp.127-166, (2014)

[2] Langkamp Bolton, D., & Lane, M. D. Individual entrepreneurial orientation: Development of a measurement instrument. Education+ Training, 54(2/3), 219-233. (2012)

参照

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