IRUCAA@TDC : 第三大臼歯・その存在の意義と功罪-活かし方を中心に- : 第三大臼歯の存在と歯列不正の関連性について
6
0
0
全文
(2) 7 9. 臨床ノート. 第三大臼歯・その存在の意義と功罪. ―活かし方を中心に―. ―第三大臼歯の存在と歯列不正の関連性について― 望月清志. 永久歯の排列状態と第三大臼歯との関連について. の研究結果を基に不正歯列あるいは不正咬合の大き. の研究は多数報告されている。それらの中には,第. な原因の一つと考えられる乳歯,永久歯の早期喪失. 三大臼歯の存在が永久歯の排列状態に影響を及ぼす. を来さずに乳歯列から永久歯列に達した本講座所蔵. 1, 2). がある。一方,第三大臼歯と永久歯排. の小児の累年石膏模型とエックス線写真を用いて,. 列状態との間には一定の傾向を認められない事か. 杉浦13),町田ら14)の発表より症例数を追加した結果. ら,永久歯排列状態は第三大臼歯の存在とは無関係. を得て,第三大臼歯がどのように永久歯列排列状態. とする報告. 3∼5). であるとの報告. ,下顎第三大臼歯の埋伏は下顎. に影響を与えるのか否か,第三大臼歯以外の因子が. 叢生の原因とはならず,下顎の成長が不十分なため. あるとすればどの時期から不正歯列になっていくの. であるとする報告6),第三大臼歯自体が叢生に影響. かについて述べていく。 本学小児歯科学講座では,文京区小石川保健所に. を及ぼすとは考えられず,歯牙の大きさが叢生に関 7). 係があるとする報告 ,思春期男女の顔面成長と第. おける3歳時検診に訪れた小児ならびに東京歯科大. 三大臼歯の萌出との関係を調査した結果,二次的な. 学水道橋病院小児歯科外来に来院した乳歯列期の小. 叢生は第三大臼歯の萌出に起因するかどうか説明で. 児のうち,全身疾患ならびに齲蝕などの口腔内疾患. 8∼1 0). きなかったとする報告. ,永久歯の排列状態には 1 1). を認めず,しかも乳歯が健全であると診断された正. 第三大臼歯の存在は無関係とする報告 や矯正治療. 常歯列の小児に対し本人と保護者の同意のもと可及. 後でも下顎前歯部に叢生が発現することがあり,こ. 的に2か月間隔に印象採得を行い上下顎累年石膏模. れは第三大臼歯の有無に関係なく叢生が発現してい. 型を最低3歳0か月から最高2 8歳0か月の間作製し. ることから,第三大臼歯と叢生の間には関連性がな. ている。さらに,口腔内写真とエックス線写真撮影. 1 2). などの資料採得を本人と保護者の同意のもと行って. いとの報告がある 。 このように,永久歯の排列状態には第三大臼歯の. きた。資料採得期間中は小児の口腔状態を健全に維. 存在は無関係で,その他の要因が排列状態に関与し. 持させるため,定期的にフッ化物の歯面塗布と刷掃. ているとするものが多い。. 指導を行った。これら累年石膏模型から,齲蝕や外 1 3). 1 4). 本学小児歯科学講座の杉浦 ,町田ら は叢生歯. 傷などにより乳歯および永久歯の早期喪失を来すこ. 列の発現因子の一つとして第三大臼歯の有無を調査. となく永久歯列まで達し,さらに永久歯に先天性欠. しており,その中で叢生歯列群において第三大臼歯. 如や矮小歯を有したものを除外した男児3 7名,女児. の存在する症例が多いと述べている。今回,本講座. 4 6名の計8 3名を今回の調査対象とした。. キーワード:第三大臼歯,歯列不正,叢生 東京歯科大学水道橋病院小児歯科 (2 0 0 2年1 2月2 8日受付) (2 0 0 3年2月3日受理) 別刷請求先:〒2 6 1 ‐ 8 5 0 2 千葉市美浜区真砂1−2−2 東京歯科大学小児歯科学講座 望月清志. Kiyoshi MOCHIZUKI:Merits and Demerits of Third Molars −The influence of the third molars on the malocclusion− (Department of Pediatric Dentistry, Tokyo Dental College). ― 1 ―.
(3) 8 0. 望月:第三大臼歯の存在と歯列不正の関連性について. 1)永久歯列完成期における第三大臼歯の有無と排. は5%の危険率で有意差が認められた。 2)第三大臼歯の顎骨内傾斜の有無と歯列の関係に. 列状態の関係. ついて. 表1・表2に永久歯列完成期における第三大臼歯 の有無と排列状態の関係を上下顎別に示す。全ての. 表3・表4に第三大臼歯の顎骨内歯軸傾斜の状態. 症例は乳歯列期において正常歯列と診断された症例. を同顎の左右側別に示す。今回,口腔内X線写真に. であるが,乳歯正常歯列から永久歯正常歯列へ移行. て確認された第三大臼歯の歯軸傾斜を歯軸が萌出方. したものは上顎,下顎とも5割を越え,次いで上. 向に向いているものを垂直型,歯軸が萌出方向から. 顎,下顎ともに叢生歯列,空隙歯列の順であった。. ずれて傾斜しているものを傾斜型に分類した。上顎. 口腔内X線写真にて第三大臼歯の有無が確認され. についてみると正常歯列群,叢生歯列群とも両側の. た症例の永久歯排列状態を上顎についてみると,両. 2歯とも垂直に萌出している症例が最も多く認めら. 側の2歯とも存在している症例が6 5例(7 8. 3%) と最. れた。下顎についてみると正常歯列群,叢生歯列群. も多く,次いで両側の2歯とも欠如している症例が. とも両側の2歯とも傾斜している症例が最も多い結. 1 4例(1 6. 9%) ,片側1歯のみ存在している症例が4. 果であった。χ2検定を行った結果,上下顎それぞれ. 例(4. 8%) であった。正常歯列群,空隙歯列群,叢. において有意差は認められなかった。. 生歯列群毎にみると三群とも両側の2歯とも存在し. 3)永久歯叢生歯列に以降した代表症例. ている症例が最も多い結果であった。下顎について. 図1∼6に乳歯列正常咬合で永久歯列期に叢生を. み る と 両 側 の2歯 と も 存 在 し て い る 症 例 が6 2例. 呈した代表症例を示す。上顎の左右側第三大臼歯は. (7 4. 7%) と最も多く,次いで両側の2歯とも欠如し. 垂直型で,下顎の左右側第三大臼歯は傾斜型であ. ている症例が1 1例(1 3. 3%) ,片側1歯のみ存在して. る。本例は最終観察時期の2 4歳1か月の時点で上下. いる症例が1 0例(1 2. 0%) であった。正常歯列群,空. 顎の第三大臼歯は萌出しており,上顎右側側切歯. 隙歯列群,叢生歯列群毎にみると正常歯列群,叢生. 部,上顎両側小臼歯部,上顎右側大臼歯部,下顎切. 歯列群では両側の2歯とも存在している症例が最も. 歯部,下顎右側小臼歯部,下顎両側大臼歯部に叢生. 2. 多い結果であった。χ 検定を行った結果,上顎にお. を呈している。叢生の発現は第三大臼歯の萌出によ. いては有意差が認められなかったが,下顎において. るものではなく,前歯および臼歯交換萌出により発. 表1. 上顎における第三大臼歯の有無 症例数(%). 排列状態. 1歯有. 正常歯列. 2 (2. 4). 3 2 (3 8. 6). 8 ( 9. 6). 4 2 (5 0. 6). 空隙歯列. 0 (0 ). 8 ( 9. 6). 5 ( 6. 0). 1 3 (1 5. 7). 叢生歯列. 2 (2. 4). 2 5 (3 0. 1). 1 ( 1. 2). 2 8 (3 3. 7). 4 (4. 8). 6 5 (7 8. 3). 1 4 (1 6. 9). 8 3 (1 0 0). 総. 数. 表2. 2歯有. 2歯無. 合. 計. 下顎における第三大臼歯の有無 症例数(%). 排列状態. 1歯有. 正常歯列. 6 ( 7. 2). 3 1 (3 7. 3). 7 ( 8. 4). 4 4 (5 3. 0). 空隙歯列. 3 ( 3. 6). 3 ( 3. 6). 2 ( 2. 4). 8 ( 9. 6). 叢生歯列. 1 ( 1. 2). 2 8 (3 3. 7). 2 ( 2. 4). 3 1 (3 7. 3). 1 0 (1 2. 0). 6 2 (7 4. 7). 1 1 (1 3. 3). 8 3 (1 0 0). 総. 数. 2歯有. 2歯無. 合. 計. * : P<0.05 ― 2 ―. *.
(4) 歯科学報 表3. Vol.1 0 5,No.2(2 0 0 5). 上顎における第三大臼歯の歯軸傾斜 1歯有. 排列状態. 2歯有. 2歯無. 右側・左側. 右側・左側. 右側・左側. 右側・左側. 無・垂直. 垂直・無. 垂直・垂直. 無・無. 正常歯列. 2. 0. 3 2. 8. 空隙歯列. 0. 0. 8. 5. 叢生歯列. 0. 2. 2 5. 1. 2. 2. 6 5. 1 4. 総. 数. 表4. 下顎における第三大臼歯の歯軸傾斜. 1歯有 排列状態. 8 1. 2歯有. 2歯無. 右側・左側 右側・左側 右側・左側 右側・左側 右側・左側 右側・左側 右側・左側 右側・左側 無・傾斜. 傾斜・無. 正常歯列. 1. 2. 3. 2. 1 6. 2. 1 1. 7. 空隙歯列. 1. 0. 2. 0. 3. 0. 0. 2. 叢生歯列. 1. 0. 0. 4. 1 8. 2. 4. 2. 3. 2. 5. 6. 3 7. 4. 1 5. 1 1. 総. 数. 図1. 垂直・無 傾斜・垂直 傾斜・傾斜 垂直・傾斜 垂直・垂直. 3歳6か月. 図2 ― 3 ―. 無・無. 7歳1 0か月.
(5) 8 2. 望月:第三大臼歯の存在と歯列不正の関連性について. 図3 1 2歳2か月. 図4 1 3歳0か月. 0か月の間作製した上下顎累年石膏模型を用いた研. 現をしたと考えられた。. 究の中で,永久歯列期に叢生歯列へ移行したもの. 考 察. は,歯牙が口腔内に萌出し咬合線に達した時点から. 乳歯列から永久歯列に成長発育する過程におい. 叢 生 を 呈 し た 症 例 は 上 顎 で は8 4. 6%,下 顎 で は. て,歯牙の排列状態や咬合状態は変化していく。健. 6 4. 5%であり,他の歯牙の萌出に伴い叢生を呈した. 全な乳歯を有する乳歯列が全て正常咬合に移行する. 症例は上顎では1 5. 4%,下顎では3 5. 5%で,特に上. わけでなく不正咬合に移行する症例も存在する。今. 顎では犬歯の萌出に伴い他の前歯部に叢生を呈した. 回,乳歯列正常咬合から永久歯叢生歯列に移行した. 症例が多く,第二大臼歯の萌出位置の異常を呈する. 症例を用いて叢生歯列発現と第三大臼歯の関連につ. ものも少なくはないと報告されている13,14)。これら. いて検討を試みた。叢生歯列群において第三大臼歯. は,代表症例に示した累年石膏模型にも認められる. の存在する症例は多く認められた。しかし,下顎で. 事項である。この研究結果をふまえると,各歯牙が. は第三大臼歯が2歯とも存在しなくても叢生が発現. 萌出した時点で位置の異常がおきると叢生になりや. する症例もあり,第三大臼歯の存在の有無が,永久. すく,さらに前歯部近遠心歯冠幅径,犬歯唇舌側歯. 歯列の排列状態に影響を及ぼすか否かについては,. 冠幅径,犬歯歯牙間幅径,歯列弓幅径,歯列弓長. 今回の結果からは明確な関連性を見いだすことはで. 径,歯槽基底部長径,歯槽基底部高径,中切歯歯軸. きない。. 傾斜角等の因子が叢生の発現を引き起こす13,14)と思. 乳歯列期に正常咬合であった3歳0か月から2 8歳. われる。叢生が発現した症例では第二大臼歯,第三. ― 4 ―.
(6) 歯科学報. Vol.1 0 5,No.2(2 0 0 5). 図5 1 3歳6か月. 図6 2 4歳1か月 東京歯科大学小児歯科学講座所蔵. 大臼歯の萌出と顎骨の成長変化等の因子によりさら に叢生が増悪する傾向になるものと思われた。 本論文の要旨は,第9回東京歯科大学水道橋病院身近な臨 床勉強会(2 0 0 1年1 1月2 6日,東京) において発表した。. 参. 考. 文. 献. 1)Keene, H. : Third molar agenesis, spacing and crowding of teeth, and tooth size in caries-resistant naval recruits. Amer J Orthodont,5 0:4 4 5∼4 5 1,1 9 6 4. 2)Richardson, M. : Changes in lower third molar position in the young adult. Amer J Orthodont dentofac Orthop. 1 0 2:3 2 0∼3 2 7,1 9 9 2. 3)大 多 和 利 明,秋 山 陽 一,村 田 和 久,城 戸 俊 彦,高 濱 靖英:歯列形態に関する研究 智歯による形態(第1報) , 国際歯科ジャーナル,5:4 4 5∼4 5 2,1 9 7 7. 4)大 多 和 利 明,秋 山 陽 一,城 戸 俊 彦,早 瀬 利 夫,村 田 和久,高濱靖英:歯列形態に関する研究 智歯による形態 (第2報) ,西日本歯科矯正学会誌,2 2:3 0∼3 4,1 9 7 8. 5)辰野隆昭:邦人青年男子に於ける下顎第3大臼歯の生歯 状況と萌出予測について,岐阜歯学誌,1 7:2 6 0∼2 7 9, 1 9 9 0.. 8 3. 6)Broadbend, B. H. : The influence of the third molars on the alignment of the teeth. Amer J Orthodont Oral Surgery,2 9:3 1 2∼3 3 0,1 9 4 3. 7)Forsberg, C. : Tooth size, spacing, and crowding in relation to eruption or impaction of third molars. Amer J Orthodont dentofac Orthop,9 4:5 7∼6 2,1 9 8 8. 8)Bjork, ¨ A. : Variations in the growth pattern of the human mandible : Longitudinal radiographic study by the implant method. J dent Res,4 2:4 0 0∼4 1 1,1 9 6 3. 9)Bjork, ¨ A. : Prediction of mandibular growth rotation. Amer JOrthodont,5 5:5 8 5∼5 9 9,1 9 6 9. 1 0)Bjork, ¨ A. : Facial development and tooth eruption. An implant study at the age of puberty. Amer J Orthodont, 6 2:3 3 9∼3 8 3,1 9 7 2. 11)佐藤貞雄,吉成優子,村居聖子,畠山夕子,折笠みゆき, 鈴木祥井:第三大臼歯と不正咬合との関連に関する一考 察.神歯学,2 5:9 9∼1 0 8,1 9 9 0. 1 2)Kaplan, R. G. : Mandibularthird molars and postretention crowding. Amer J Orthodont,6 6:4 1 1∼4 3 0,1 9 7 4. 1 3)杉浦三香:叢生歯列の発現に関する累年的観察.歯科学 報,9 5:2 9 5∼3 1 9,1 9 9 5. 1 4)町田幸雄,杉浦三香,田中丸治宣:乳歯・永久歯の早期 喪失がなかった症例の永久歯の歯列・咬合状態.小児歯 誌,3 5:5 1 0∼5 1 7,1 9 9 7.. ― 5 ―.
(7)
関連したドキュメント
「臨床推論」 という日本語の定義として確立し
Finally, in Figure 19, the lower bound is compared with the curves of constant basin area, already shown in Figure 13, and the scatter of buckling loads obtained
第 98 条の6及び第 98 条の7、第 114 条の 65 から第 114 条の 67 まで又は第 137 条の 63
Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”
(2) 交差軸(2軸が交わる)で使用する歯車 g) すぐ歯かさ歯車.
[r]
日歯 ・都道府県歯会 ・都市区歯会のいわゆる三層構造の堅持が求められていた。理事 者においては既に内閣府公益認定等委員会 (以下
条第三項第二号の改正規定中 「