Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
キーノート : 口科研の未来を考える
Author(s)
井上, 孝
Journal
歯科学報, 111(1): 1-2
URL
http://hdl.handle.net/10130/2296
■世界の歯科情勢 良い研究を行うには,資金が必要であることは言 うまでもない。その資金は,自国の政治・経済そし て世界情勢に大きく左右される。日本でも民主党政 権の基,仕分けが行われ研究費が削減されたことは 記憶に新しい。さらに追い打ちとして,研究者を育 てなければならない大学であるにもかかわらず,歯 科大学の受験生の減少には歯止めがかからない状況 である。それでは,本当に歯科医師が過剰なのか? と言えば,世界的情勢からはそうともいえない。 2009年の FDI の調査によれば,歯科医師1人に対 して患者が20万人以上いるという国,200校以上歯 科大学がある国などが今でも多数存在する。CDC の声明で,う蝕は既に駆逐されたているが,う蝕に よる歯科医師の需要,カリエス等の予防はお国事情 によってはまだまだ重要で,研究の余地も多々残さ れている。 日本の立場を考えると,決して楽観視はできな い。世 界 の 経 済 で は BRICs,VISTA,NIEs な る 国々の発展が目覚ましい。ブラジル,ロシア,イン ド,中国の頭文字の列称である BRICs が世界に占 める国土の面積は29%,人口は何と42%で,この発 展著しい国々の歯科動向がどのようになるのか目を 離せない。また,VISTA と呼ばれる経済発展が見 込まれるグループしてベトナム,インドネシア,南 アフリカ,トルコ,アルゼンチン,さらには NIEs といわれる新興工業国であるシンガポール,台湾, 香港,韓国などはアジアにおいて,歯科の研究レベ ルも日本を追い抜くところへ来ている。日本の研究 者たるもの,研究のみを行っていればよいというこ とではなく,世界の情勢についても常に予防線を張 り,共同研究体制なども整えなくてはならない。 さて,私立歯科大学では,初めて平成8年に私立 大学 HRC 整備事業として採択されたが,アンチエ イジングをテーマとした hrc7は,7つ目めのプロ ジ ェ ク ト 研 究 で あ る。hrc7 は 平 成18年 に 採 択 さ れ,それまでの生体組織の機構の解明,唾液の問題 の解明,そして顎機能および脳科学研究を基盤とし て の 研 究 で あ る。Hrc7 は 平 成23年 に 終 了 と な る が,今後もこれまでの hrc 研究を基盤に新たなプロ ジェクトを申請し,東京歯科大学の研究を支える口 腔科学研究センター(口科研)の継続と発展を支えな くてはならない(平成22年度は平成24年度まで3年 間の新しい hrc8 プロジェクトが採択された)。 さて,口科研の到達目標は,トランスレーショナ ル・リサーチという形で,最終的には臨床応用に到 達することである。一般目標としては,1:大学と しての競争力獲得,2:若手研究者の活性と育成及 び研究マインドの高揚,研究水準の向上そして学会
平成21年度 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ
キーノート
口科研の未来を考える
井 上 孝 東京歯科大学口腔科学研究センター 所長 図1 「口科研」研究コンセプト 1 ― 1 ―発表の質の向上,3:国際的留学生獲得の充実と英 語環境の整備,4:他研究機関との交流の充実, 5:外部資金の獲得による研究の活性化,6:知的 財産の取得体制の整備が必要であるなどである。具 体的には,今まで講座単位で行ってきた研究を,分 野融合型,すべての学問の体系が1つになって研究 ができ,最終的にはトランレーショナル・リサーチ として,臨床研応用し実現させていくことが,口科 研の目標である(図1)。今後,水道橋移転を見据え て,研究支援組織を整理整備し,戦略機構の研究組 織もコア研究を増設し,次元付きプロジェクト研究 を活性化させ,講座の研究を専門研究分野として, 口科研が研究拠点となるよう,そしてその結果,継 承と発展が達成されることを望んでいる(図2)。新 興工業国に負けてはいられないのである。 図2 口腔科学研究センター(口科研)組織(平成22年3月現在) 東京歯科大学口腔科学研究センターワークショップ 2 ― 2 ―