状態依存学習に及ぼすACTHの効果
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(2) 98. 福田幸男・古川. 聡 Table. 温の変化等の薬物・以外による SDLも報告されてきている。表1. 1.. はその具体例を示したものである。. 2.. SDL研究の中心は薬物. しかし,. であり,この傍向ほ現在に至るま. で変わらない。薬物が好んで用い. 1.. Causes. PharmacologitalFactor Non-pharmacological a.. Eleetroconvulsive. b.. Lesion. c.. Spreading. d.. Drive. SOL. Factorshock. depression. f.. Sleep-Arousal. g.. RE蜘. 史に加えて,生体の生理的状態の. h.. Circadian. 変化を容易にしかも確実に引き起. i.. Manic・Depression. られる理由は,その研究の量や歴. of. deprivation rhythm ete.. こしうるという点にある。したが. ってSDLを正確に観察しうる事になる。 SDLを単紅実験室的な現象として,■言い換えるならば極めて特異な行動異常の一種と して取り扱って行く限りにおいては,薬物重視のこの傾向に何ら支障はない。しかし, SDLを実験室から日常生活の中-,つまり,より自然な状態の中へと引き出して考える 際には,問題が生じてくる。 福田(1980,. 1981)が指摘している様に,薬物によるSDLはその大部分が生体内にお. いて通常起こりえない生理的変化を人為的に引き起こした結果として観察されたものであ る。したがって,より自然な状態におけるSDLを研究対象とする際にほ,その結果の適 用には慎重にならぎるをえないoむしろ一つのモデル実験的性格を持たせた方が妥当かも しれない。 ``より自然な状態におけるSDL研究” nsley,. &. -の練れは,バイオ1)ズム(Holloway. 1973),睡眠サイクル(Evans,. 1972),昧-うつ周期(Weingartner. ei all. Wa・. 1977). によるSDLを論じている研究の中に見い出される。しかし,実際にこの種の研究は追 試するにしても,新しい視点を盛り込むにしても,そう容易に着手できるもので畔ないo なぜなE',あまりにも自然さを打ち出そうとする為に,かえって実験をむずかしくしてし まうという特有の問題に出会うからである。. それでは,より自然な状態下でのSDL研究-とつなげる次善のアプローチとして何が 考えられるのであろうか。一つの可能性として,生体内に現に存在する物質の利用が考え られる。より具体的に言うなら,ホルモンと神経伝達物質の利用である。ただし,その量 的な変化とそれに随伴する生理的変化が認められる事が条件となってくる。ホルモンと SDLの関係を論じた研究はこれまでいくつか報告されている。 ホルモン(progesterone)を, thasone)を用い, ほ共にACTHを用い,. Pappas. &. Gray. Stewart等(1967)は性. (1971)は合成糖質コルチコイド(dexame-. SDLが見られたと報告している。その後,. Gray. (1975),桜井(1975). SDLが見られたとの報告を提出している。しかし,これらの研究. では多量のホルモンが投与されており,従来の薬物によるSDL. と軌を一にするものであ. る。ただ,生体内で産出される物質によってもSDLが起こる可能性を示唆したという点 でほ考慮に値するし,もしその量が少なかったら,つまり,より自然な変動に近い量であ.
(3) 99. 状態依存学習に及ぼすACTEの効果. ったらSDLが見られるか否かという問題の提起ともなっている。神経伝達物質について もまったく同じ結論となる。 本研究では,こうした経緯に基づき,まずホルモンのみに的をしぼって,少用量投与下 でSDLが見られるか否かを検討する事にする。なお,使用するホルモン製剤については その作用特性に十分な配慮をして見る。 Ladreno_cortico圭rophic垂ormone). ホルモンについてほ,数ある侯補の中からACTfI を用いる。. ACTHは下垂体前葉から分泌される刺激ホルモンの一種であり,ストレス等. の外部環境の変化に鋭敏に反応する特徴を持っている。先行研究に加え,こうしたACTH の特性が,行動理解に有益なデータを与えてくれるはずである。なぜならより自然な状態 の変化という枠組の中で,最も良く起こる変化がACTH分泌系を介しているからである.. 実. 験. I. ACT‡Ⅰによる実験を開始する前に,課題として採用する-試行受動的回避学習の電撃 強度を決定することを目的とした実験を施行する.. -試行受動的回避学習ほ,その名が示 す通り,習得時の-試行のみ電撃を体験する。そこでこの電撃が十分な効果を示さないと すると学習は不成立となり,その後の再学習(再生)ほ意味をもたなくなる。. SDL. の場. 合についても同様であり,学習の成立を示す事なしにはその探究は不可能となる。本実験 ほ予僻的性格を持つ事からACTHを用いる事はせず,今までSDL研究で最も頻繁に使用 され,しかもはっきりとSDLを引きおこす薬物として報告されているベントパルビタール (sodium. pentobarbital:以下PTBと略す)を用いてみる事にする。それにより,以下の 実験におけるACTHの効果の評定をより確かなものとする事もできるからである。 く方. 法〉. 被政体:被験体はWistar系のナイーブな雄のラット90匹。実験開始時において7-9 適齢,体重の平均は238.9gであった。実験期間中,餌と水の摂取は自由であった。 装. 置:装置ほ図1に示すような大小2つの部屋からなる木製の箱で,内部は灰色に塗. られている.大きい方の部屋(45×50×35cm)ほ20Wの蛍光灯により上部から照らさ. れ,中央部において1400ルクス,平均960.4ルクスの明るさであった。小さい方の部屋 (19.5×13.5×35cm)には照明ほなく,明るさは40ルクスであった。床には1cm間隔. で直径0.3cmの銅棒が取り付けられており',ショックスクランブラーを介して滞電され るようになっている。なお大きい方の部屋の床は,壁と同質の合板が使われている。. 2つ. の部屋の間にほプラスチック製のギロチンドアがあり,実験者により開閉がなされたo 手続き:実験ほ30匹ずつ3回にわけて行なわれた。予備手続きとして,被験体は-ン ド1)ングを2日間なされた後,さらに装置への慣れとして3分間の探索を4日間にわたっ て課された。その際,大きな部屋から小さな部屋-の移動時間(後述する反応時間)が測定 PTBとsalineが各1回ず された.実験時の注射によるストレスを防(..ために,探索後, つ腹腔内に投与された。課題ほ1試行受動的回避学習で,ラットはランダムに3群に割り. 当てられた。用いられた薬物,すなわちPTB20mg/kg. (D免件)かsaline2cc/kg. (S.
(4) 100. 福田幸男・古川 Table. Experimental. design. used in following ⅠⅠ, ⅠⅠⅠ) (Ⅰ,. Experiment. 千 0 LL)I 0. 心 OVerVleW. (⊃ LDl 寸. 2.. V暮eW. Side. 聡. Group. Acqtl isition. Re tent ion. DD. D. D. DS. D. S. SD. S. D. SS. S. S. tL). わ ー. 50.0. Fig.. 1.. 19.5. Apparatus. D. :. Pemtobarbital. S. :. Saline. or. ACTH. (cm).. 条件)か,およびその投与時,習得前か再生前かによる2×2の実験デザインが採用され た.習得時と再生時ともにD条件のDD群,習得時D条件で再生時S条件のDS群, 習得時S条件で再生時D条件のSD群,習得時再生時ともにS条件のSS群の4群であ る(表2参照).ラットは大きい部屋の中央執こ小さい部屋の入口に背を向けて置かれる. そして小さい部屋の中に四肢がすべて入るまでの時間(これを反応時間とする)が沸定さ 30秒毎に2度,. れ,同時にギロチンドアが閉じられる.習得時にほ,これに引き続き, 0.27mA,. 2秒間のfoot・sbockが与えられる。電撃の強度ほ0.13mA, 類である。翌日の同時刻に再生テストが課される。ここでの手続きは,. 0.36mAの3種. foot-shockが与. えられない事を除いてほ習得時と同じであり,. 3分以内に小さな部屋に四肢のすべてが入 らない場合はその時点で試行は終了し,反応時間は180+秒とされた。 く結果及び考察) 2×2. のデザインによる4群と3種の電撃強度による12. の群が実際には考察の対象と 0.36mA群とも4回の探索を課すことにより,はぼ15 秒以内に小さい部屋の中に入ることが確められた。しかし習得時の反応時間を比較したと なる。. 0.13mA群,. 0.27mA群,. df-3/26,. ころ0.27mA群で群間に差が認められた(F-4.25,. P<.05)。そこで習得時. の反応時間をそのまま用いる事はせず,再生時の反応時間との差でパフォーマンスを評価 することとした。図2に反応時間を電撃強度別に示した。. Z-3.16. 秤, DS群-SD群間を除くすべての群間に有意差が見られた(DD-DS: DD-SD:. Z-3.15,. P<.01:. DS-SS:. Zニー2.36. DD. 0.13mA群では,. P<.05:. SD-SS:. Zニー2.34,. 群-SS P<.01:. P<.05)。す. なわも,習得時と再生時で同じ薬物(PTBあるいはsaline)を投与された群では十分な 再生が見られたo一方,習得時と再生時で薬物条件が異なる群では,十分な再生ほ見られ 0.27. なかった。これは学習の分離あるいは状態依存学習が生起した事を示すものである。 mA群では,. DD群とDS群(Z-2.45,. でのみ有意な差が見られた。ここから. P<.05),. DS群とSS群(Zニー2.88,. P<.01). DS群については,薬物条件の変化に伴ない十分. な再生が見られなくなるという,いわゆる学習の分離が見られた事になる。. SD群につい.
(5) 101. 状態依存学習に及ばすACTHの効果 てほ,その傾向はなく,. 0,27mA DD. SeC. DS. SeC. group. group. 群では非対性の分離が認められる. 意差が見られ(DD-DS:. .05:. DS-SD: DS-SS:. 10. ′. 0. Z-4.. Zニー4.. /.I ′.・′.・● /.● /.・■ {・● /.● /./. 32, P<. Zニー2.01,. 0. 10. ′′ //. DS-SD群間にも有. でほ,さらに,. P<.01:. ●. 群. 0.36mA. と結論づけられる。. ムー+一●. 10, P<.01),. ノ′. Acquisition. 以上の結果から,受動的回避学. SD. SeC. Retentiotl. ′. ■古市て丁=::==:ニ:. 非対称な分離がさらにはっきりと 認められたことになる。. ′●. ′ ′. / ′. Acquisition. SS. SeC. group. Retent由n. group ●. 習の指標として反応時間を用いた. / /. 場合,本案放で使用した3種の電. IO. IO. 0. 撃強度の中で,最も弱い0・13mA. ●0.27. mA. ●0.36. 1¶A. ′. 条件が学習の分離あるいはSDL. /. 0. /. ●. を最も良く生じさせる事が判明し たoいずれの電撃強度下において も, PTB 20mg/kg投与により. 0.13. ひき起こされる生理的状態ほ同一 であると考えられる事から,. Acqujsition. SOL. Fig.. 2.. Retention. Corrected ferencies. の生起の一つの条件として,その 学習(記憶)の強度が問題となる. mA. Acquisition. in. latencies between. Retention. (di王-. retention. acquisition. and. reten・. tion).. のかもしれない。一般に,電撃強度とその学習(記憶)の強度はある範囲までパラレルで SDLの生起は内的な手がか あるほずであるから次の様な事が想定されよう。すなわち, りに依存する度合が高まるにつれてよりよく見られる。. Iwabara. &. Noguchi. (1972,. 1974)ほ過剰訓練を用い,学習強度と状態依存学習を検討している。今回の課題において 紘,過剰訓練を課す事は不可能であり,電撃強度から学習の強度を類推せざるを得ない. 理想を言えば更に細かなレベルで電撃強度の決定が求められる必要がでてくるであろう。 ここではPTB 20mg/kgという条件下であるとの限定つきでほあるが次に続くACTH での実験にその橋渡しをした事になるo. 実. 験. ⅠⅠ. 実験Ⅰより,課題として用いる-試行受動的回避学習で従来の報告通りSDLが見られ 0・13mAで十分との る事が確認された。電撃の強度はPTB投与下という制約があるが, ACTE少用量投与下での,より自 結論も得た。本実験でほこうした成果をふまえた上で,. 然に近い生理的状態下でのSDLを観察する事にする。 〈方. 法〉. 被験体:被験体はWistar系のナイーブな雄のラット65匹。実験開始時において7-9.
(6) 102. 福田幸男・古川. 聡. 週齢,体重の平均は218.7gであ DD. SeC.. った。実験期間中,餌と水の摂取 ほ自由であった。 装. DS. See.. group. 180. groLIP. 180. 置:装置ほ実験Ⅰで使用し 120. たものと同一である。ただし,皮. A. GROUP-. 120. ■. ′. 応時間をより正確に,客観的に測. 定する目的で,小さい部屋の下部. /'GROUP-C. 60. に続が設置された。. ′. 手続き:実験手続きほ,基本的 ●/. 0. 習に用いられる電撃強度は0.13. 1. Retention. Acquisition. SS. SeC.. group. 80. 1. Retention. group. 80. 0.36. mAも併用する事にした。ホルモ ンとしては,持続性合成. SD. See.. PTB使用. 下という制約もあったので,. 0 Acquisition. -試行受動的回避学. mAとした。ただし,. a. //GROUP-. にほ実験Ⅰと同じである。実験Ⅰ の結果より,. 60. ′. /. ■ 120. ACTⅢ. 120. コートロシソZ注(酢酸テトラコ. サクチド亜鉛注:第一製薬)を用. 60. 60. いた。このホルモン製剤は,投与 2時間後に効果がピークに達し, その後緩かに減少し, 24時間以上. 7J 1.' 0. 0 Acquisition. にわたり作用が持続するバランス. Fig.. 3.. Roter]tion. Latencies. Acquisition. in acqtlisition. のとれたものであり,より自然の. Gro11p-A. ; 0.36 mA,. ACTH. retention. 0.2cc. 変動を引きおこすという実験日的. Gro叩・B. ; 0.13 nA,. ACTH. 0.2cc. にかなうものと考えられる。投与. Gro11p-C. ; 0.13mA,. ACTH. 0.3cc. 量ほ,極力少用量で抑えたいという事から0・2cc/被験体をベースとし,. and. Retefltion. 0.3cc/被験体を. 併用する事にした。したがって,群構成は3群となる(A群0.36mAxACTHO.2cc 群0・13mAxACTHO・2cc. C群0・13mAxO・3cc)0. B. ACTHおよびsalineは,探索を. 終えた時点で各1回ずつ投与され,実験時の注射によるストレスを柔らげた.習得時およ び再生時のACTHおよびsalineの投与は開始2時間前とし,ACTHは筋注とした。2×2. のSDLのデザインが採用され,探索時の反応時間をもとに3群が構成された。 く結果及び考察〉. 習得時およ.び再生時の反応時間のメディアンを図3に示す.. A群においてほ,. ACTH. 投与による生理的状態の変化にもかかわらず,ほとんどのラットが180秒以内に小さな部 屋に入る事ほなかったoこれに対して・ れなかった。. B群においては,. DD,. B,. C群では必ずしもそうーした一定の結果は得ら. DS群に再生の不完全さが認められたが,. SD,. SS拝.
(7) 103. 状態依存学習に及ぼすACTHの効果 と統計的有意差は認められなかっ. See.. た。またC群においてD-S条件. DD. 1. DS. SeC. group. 180. 180. 120. 120. group. 下で不十分な再生が認められた。. ただし,ここでも中央値検定によ る有意差ほ認められなかった。結 局,実験ⅠⅠにおいて,. ACTH. によるSDLの生起ほ実証されな. 60. 60. かった事になり, Gray (1975)早 桜井(1975)の報告との一致は 0. 認められなかった。しかし,本実. 0 Acqu. 験においてほ,その日的で触れた. 様に,あくまでもより自然の変動. IS. ion. SD. SeC. ReterTt. io rI. AcqulSion. I. SeC.. group. 1. 80. 180. 1. 20. 1. Retention. ssgro叩. に近い状態下でSDLが認められ るか否かをめざしたわけで,この 不一致に拘束されほないoむしろ ここでは,. C群における. 20. DS群. の再生が必ずしも十分でほなかっ 60. た事に注目すべきであり,今後,. 60. ACTHの用量を独立変数とした 実験を行なって行く事により, 0. Gray等の結果に近づく可能性も 考えられる。なおA群について. 紘,実験Ⅰで指摘された様に, 十分な学習(記憶)強度下でほ, こうした場合,. O Acqu[sition. Fig.. 4.. Fbterltiofl. Latencies. in acquision. Acquisitior]. and. Retentiorl. retention.. SDLが起こりにくい事をあらためて示す所となった。 SDLほ見られないであろう。た. ACTHを相当に多用量投与しない限り,. だしこの追試ほ本実験の目的にそうものではない。. 実. 験. ⅠⅠⅠ. 実験ⅠⅠにおいて,できるだけ自然な状態の変化とSDLとの関連を求める為にACTIi を使用した。結果としては,基本用量の0・2cc/被験体投与下においてSDLは認められな ACTH. かった.本実験においては,実験ⅠⅠのこの結果を基本的には再検討するとともに・ 投与経路の違いによる効果も検討してみる。勝江から皮下-その投与経路を変更してみる。 〈方 法〉. 被鼓体:被験体ほWistar系のナイーヴな雄のラット28匹.実験開始時において・ 適齢,体重の平均は235・4gであった。 装 置:実験ⅠⅠと同一のものを使用. 8.
(8) 104. 福田幸男・古川. training. (a). No.30 DDDgro叩. Rat D. No.29. SDgroup. 暮80十sec.. see.. sec,. (c) RatNo.暮9. see.. i. 2.26. see.. 80.43. 8.58. see.. 3.68. sec.. 州r. see.. No.9. l. SSDgrou. ll. 7.18sec.. Fig・. I03.72. l. group 7.75. (d) Rat. retention暮l. 酔田迎 I.79. DSS. I. retention. 酔,静田圃. Rat. I.70. (b). 聡. 5・. Response. 臣卦 (80+. pattern. see.. 72.54. see.. of rats. in experiment. =l‡. see.. II,. 手続き:手続きほ基本的にほ実験ⅠⅠと同様である。使用製剤はACTHコートロシソ Z注で・用量は0・2cc/被験体とし・習得時および再生時の開始2時間前に皮下投与され た。電撃強度は0・ DD群,. DS群,. 13mA一種である.被験体は探索時および習得時の反応時間に基づき, SD群,. SS群の4群-各7匹ずつ振り当てられた.. く拝具及び考察) 習得時および再生時の反応時間のメディアンを図4に示す。メディアンで見る限りにお いては,習得時および再生時の群間差ほ認められない.そこで平均値の表示にかえてみる と・再生時ではSS>DD>SD>DSといった債向が見られる。しかし,いずれにしても統 計的有意差ほ認められない以上,. ACTHによるSDLは認められないとの結論を下さざ. るを得ない。また投与経路の変更も意味をもたなかった。残された問題としてほ, ACTH 製剤の特性があげられるかもしれない.その点については以下の考察で触れること紅する.. 考. 察. 実験ⅠⅠ・実験ⅠⅠⅠとも, ACTHの少用量投与下でのSDLは観察されなかった。くり返 し言及してきた掛こ,本実験の目的は,単にホルモン投与下でSDLが観察されるか否か を問うものでほなく,少用量投与下でのより自然の変動に近い生理的状態下でなおSDL が観察されるか否かであったo Gray (1975)や桜井(1975)らのACTH投与量は0.8 cc/被験体である事を考えれば,そのギャップを埋める研究が必要となるであろう。なお 投与量については次の様な論議も考慮すべきである。すなわち, ACTHなどのポリペプ.
(9) 105. 状態依存学習に及ぼすACTEの効果. チドが血液脳開門を通りにくいとの説である。したがって,皮下や腹腔内投与などの場合 にほ,生理的用量をオ-バーする程の量の投与なくしては,行動的効果は認められなくな る。こうした意味においては,ただ単に投与量を独立変数として操作するだけでほ不十分 なのかもしれない。 古川(1981)ほACTE投与下(0.2cc,. 0.3cc/被験体)での海馬および中脳網様体の電. 気活動を,投与後1時間日と2時間日でそれぞれ記録し分析を行なっている。例数が不十. 分の為,クリアな結論には達しなかったが,中脳網様体および海馬で周波数の増減が見ら れ,それはACTHの用量の増加に依存している事が確かめられている。桜井(1975)紘 ACTH. 0.8cc/被験体投与下2時間後の脳波記録を行ない,背側海馬の振幅の増大を示し. ている。こうした方法の併用ほ,使用薬物の中枢作用効果を探るという点で,またSDL の脳内メカニズムを探るという点で有効であると断言できる。 今回使用したACTHは,副腎皮質刺激ホルモンとしての作用を有するだけでなくその 中枢-の作用が最近多くの研究者により指摘される所となっている。行動との関連でほ, 学習や記憶とのかねあいのみならず,意識水準,注意,動機づけとの関係も取りざたされ ている。本実験においてほ, ACTH投与による生体の生理的状態の変化とSDLと言う枠 組でのみ考えてきたが, ACTH の有するその他の作用効果との重畳も結果から想定しな ければならない。そういう意味で,其のSDL現象であるか否かを問う実験デザインとな っているか否かが問題となってくる。. 本葉故においては,実験Ⅰ,ⅠⅠ, ⅠⅠⅠともに2×2のデザイン(表2参照)が採用されてい ると記した。. Bliss. (1974)によれば,薬物の有する様々な行動効果を真のSDLと分離さ. せる為には, 2×2×2の実験デザインに代表されるような反復のデザインが望ましいとさ れている。この点についてほ,まったく考慮しなかった訳でほなく,実験ⅠⅠ,実験ⅠⅠⅠで 実際に採用はしていたのである。しかし,結果で示された通り,再生時にほとんどの被験 体が,十分な再生を示した事からその後のくり返しがほとんど意味をなさなくなってしま った。また,反復デザインにおいてほ,一群の被験体数が半減する事から,かえって結果 の解釈がむずかしくなるという面もみられた.結局,結果の表示をわかりやすくする為に,. あえて2×2のデザインに基づいたとしているのであり,被験体数をさらに増した時点で 反復デザインの結果を示してみたいと考えている。 今回の実験でほ-試行受動的回避学習が課題として用いられた。そして瀕度としていわ ゆる薄暗(反応時間)が用いられている。この点に関して,従来の諸研究と何ら変わる所 ほない.しかし,福田(1974)が, open・点eld活動にも分離ないしはSDLが認められる と報告をしている事から,ただ一つの沸度だけで十分かという問題が生じてくる.課題そ れ自身が-試行という制約を課せられ,観察の機会が少ない点も加味されねばならない. あえて,実験の所でほ触れていないが,実験ⅠⅠにおいてほ次の様な試みがなされたoす なわも,大きい部星の床を5×5に分割し,そこでの移動の量と移動のパターンが観察さ れた.囲5はその一例であるo. うのが一つの結論であり,. しかしこの2つの沸度に関しても個体差のみが目立つとい SDL. を示唆する一定の方向性ほ得られなかった。ただこうし.
(10) 106. 福田幸男・古川. 聡. たアプローチほ今後ともなされて行くベきであると思われるo 最後に, ACTH,とSI)Lとの関連についての実験について,いくつかの方向を考えて見 る。今回の実験では,その日的に準拠する意味で持続性製剤を用いている。ACTHには, さらに非持続性製剤もあり,投与2時間前後をピークとして4,. 5時間の作用の持続を示. す。一般に後者のように,急激な変化をもたらす製剤の方がSDLを引き起こしやすいと されている。用量の問題をも含めてもう一度,製剤の問題にあたる必要があるのかもしれ ない。. 自然の状態に近いという事を前提にACTfIの投与を行なってきたが,外因性ACTH と内因性ACTHの違いに関する問題ほ依然として残る。究極の目的が,人および動物の 自然の状態における行動の理解にある訳であるから,内因性ACTⅢに関する実験も考え ねばならない.たとえばストレス下におく事によ.りACTHの分掛rま高まるが,こうした ストレスの持続時間,強さ等を独立変数として操作することにより目的とする実験が可能 になってくるほずである。. 今回ほACTHのみに焦点をあてたが,他の,i.ルモンあるいほ神経伝達物質についても 事情は同様である。さらなる検討が待たれる所である。 引 Bliss,. D・ K・:. 33,. Theoretical. 文. 献. of drug-dissociated. explanations. behaviors・. Federation. Proc.,. R・ C・:. comp.. The. effect of electroconvulsive PsycllOl., 1957, 50, 125-129.. pbysiol.. shock. learned. a. on. Fromm,. Techniques for exploring and Sleep: cognitive activity Shor, R・ E・ Resear・ch Development. and (Eds.) Hypnosis and 1972, 43-48.. E・. Aldin-Athertom,. 福田幸男:生体の自然な変化に伴なう状戯依存学習.横浜国立大学教育紀要, 1981, 福田幸男:文脈依存効果と状態依存学習.大和学園女子短期大学紀要, Fukuda,. S・ and. behavior. 古川. lwahara,. S・:. in-white. Dose. effects. during. Sleep.. Chicago.. 20,. 51-59.. 19-22.. habittlation. upon. of chlordiazepoxide 1974, 17, 82-90.. Psychologia,. rats.. 1980, 6,. J.. response.. avoidance. F・ J・: Hypnosis. In. 1974,. 1787-1796.. Carson,. Evans,. 用. of. open・Geld. 聡:ラットの状態依存学習に及ぼすACTI‡の効果について.横浜国立大学教育学部卒業論文, 1981.. Girden,. E・. comp.. Gray,. P・:. E. A.: Conditioned and Cutler, Psychol., 1937, 23, 26ト274. E庁ect F.. A.. Iwahara,. and. nation. Otis,. L・ S・:. Noguchi,. training Drive. sociatedwith 0▼erton, D. A.: comp.. physiol.. S・:. Res.,. Psychol.. S. and. muscle. in. dogs.. J.. on in rats interpreted conditioned avoidance 1975, 88, 281-284. physiol. Psychol., 氏. A.: Wansley, Multipb.asic de丘cits at periodic intervals after retention learning. Science, 1973, 180, 208-210.. learning.. passive avoidance Iwahara, S・ and Noguchi,. Japanese. striate. curarized. hormone. of adrenocorticotropic. 由state-dependent Hollovay,. in. responses. in. J.. Drug-state 1972,. S.:. white. dependency. as. a. Lfunction. of. overtraining. ink rats.. 14, 3, 141-144.. Effects. of overtraining Psychol.. Japanese. rats.. conditioning;. fear. painful stimulation. State・dependent or Psychol.,. comp.. 1964,. as. a. response. 1957,. Ph.D.. dissociated. 57, 3-21.. to. upon. drug・state. Res.,. 1974,. biogenic. Thesis, leaning. Univ.. dependency. in discrimi・. 16, 2, 59-64. drive. asstimuli previously Chicago, IlliAOis. of Chicago,. produced. witIl. pentObarbital.. ∫..
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