相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 2巻 第1号 lof Hokkaido Univers i Jouma ion (Sec ty of Educat i t on I C) Vol ‐42 .I , No. 平成 3年7月 l Ju y ,1991. 相互依存状況の理解が協同行動 に及ぼす効果に関する研究. 藤. 森. 1. 目. 立. 男. 的. 現代社会の矛盾に満ちた状況 においては, ある個人にとっ て利益となる行動が他者や社会全体に とっ ては不利益をもたらす結果となっ たり, あるい は逆に, 他者や社会全体 にとっ て利益となる行 動がその個人 の利益をそこなうといっ た出来事がしばしば起 こっ ている しかも その状況におい . , て はある利己的行動をする個人が一人のときには社会全体にほとんど悪影響を及ぼさないが その , ような利己的行動を多くの人々がとっ た場合には極 めて大きな社会的損失をこうむることがよく見 受けられるのであり, かりにその事態を改善しようとしても 容易に相互のコミュニケーショ ンを , 交換することができない場合が多い のである このため, 個々人 は自分自身の利益のみを追求すべ . きなのか, あるいは社会全体の利益を追求すべきなのかの深刻な葛藤にさらさ れることになるであ ろう し, さらにはそのような場面における個々人 の行動選択の結果として 環境破壊問題・資 源問 , 題・土地利用問題・人 口問題な どの解決困難な諸問題が発生しているのである . Ke l l l 1 97 2 ) は, こうした現代社会の顕著な特徴として, 不特定多数の人々が相 ey & Gr ze ak ( 互依存状況にあることを指摘し, 次のように分析している . (1) 個人には, “責任のある, 利他的, 協同的な行動”と”無責任 利己的 競争的な行動”の2種 , , 類の選択肢がある. (2) 後者の競争行動 は, 短期的にはコストが少なく 個人に報酬をもたらす , . (3) しかし競争行動をとる人々 が多くなるほど, 当事者全体 の利益は減少し 逆に協同行動をと , る人々 が多くなるほ ど, 当事者全体 の利益は増加する . 以上のよう な問題意識を基 に, Ke l l eyらは不特定多数の人々が個人利益と共通利益とが葛藤する 場面に直面したとき, 協同行動がいかなる要因によっ て規定されて いるかを解明するため に 次の , ような実験パラ ダイム ( i ) を提案している. 彼らは, 図1における2つの直線間の垂直距 rad r pa g n 離{Di ‐Ci }を個人利益, 両直線の傾き{Di ‐(Di …1 ) i -(Ci ‐1 )}を共通利益と定義 している. , またはC ここで,個人利益とは競争(ゆ選択と協同( C )選択との利得差を意味し,共通利益とは協 同選択をする人 の増加にともなって,競争選択または協 同選択に対して与えられる利得の増加程度を意味している . こう して彼らは, 個人利益 (2水準) と共通利益 (2水準) を組 み合わせた4種類 の利得条件を作 成し,1 0一15人で構成されるグループを用いて, 個々人 の協同選択に及ぼす要 因を検討している .. その結果, 協同選択は個人利益大-共通利益小条件において最も少なく 個人利益小-共通利益大 ,. 条件において最も多いものであっ た しかし, 協同選択を規定して いたのは個人利益 の要因のみで . あり, 共通利益の効果 は見出されなかう た また 個人利益小条件 の場合には前期10試行よりも後 , . 期10試行において協 同選択の有意な増加が見られた さらに 実験後の質問紙調査から 協同選択 , ‐ , 19.
(3) . 藤 森 立 男. 率の高い被験者 は低い被験者に比べて, 利得が相互依存的である ことをより知覚し, 利得構造をよ l l り正確に理解している ことを見出した. そしてこの結果から,Ke ey らは,“相互依存状況にある こ とを理解できれ ば, 協同行動を取るようになる”との仮説を導いている. ) は, この仮説を検証するために相 互依存状況の理解度の程度 を操作するこ 1 97 5 その後, 三井 ( 197 2 ) 同様に, 利得表を見せない l l l とにより, 利得表を提示し説明する条件と Ke ze ak ( ey & Gr l l 条件について実験を行っているが,そこで得られた結果は Ke ey らの仮説を支持するものではなかっ ‘ ‘ ) は, 利得表を提示することは個人合理性を強調する が, 集団合理性 がよく 1 981 た. また, 村田( 理解されるとは言い難い”との考えから,利得表にグループ全体の利得の情報を付加して説明する操 作を理解度大条件とし, これと利得表を見せない理解度小条件とを比較することによっ て, 理解度 の協同行動に及ぼす効果 を検討している. しかし, ここでも理解度の主効果 は確認されなかっ た‐ ’ lem ma Game ) を用いて実験 こ れ に 対 して, 2 人 囚 人 の ジ レ ンマ ゲ ー ム ( two ‐ person Prisoner Di ) の結果を見る と, 利得表を提示した条件下での協同選択 して い る Rapoport & Chanuna h( 196 5 率は提示しない条件に比べて有意に高い比率となっ ていることを報告している. したがっ て, 相互 依存P状況の理解と協同行動に関するこれら研究を見る限り, 必ずしも 一致した結果が見出されてい な い こ と を明 ら か に して い る‐. そこで, 本研究では, あらためて相互依存状況の理解度の要因を独立変数として取りあげ, 検討 ) の実験では同一 の被験者に複 数の実験条件を割り 1981 ) および村田 ( 1975 した. その際, 三井 ( h i t t j 当て, 協同選択に及ぼす要因の検討を行う被験者内配置法 (wi n‐ sub ec sdesign) を用いている が, 本 研 究 で は Rapopor t らと同様に各被験者にた だ1つの実験条件を割り当てる被験者間配置法 )を採用することにより, 相互依存状況の理解度の要因が協同行動に影 i d ( be b t tween‐ ecs e sgn suj ry- ca r 響を及ぼす効果を検討する ことを試みた. これは,実験条件の繰り返 しによる持ち越し効果( 字状 ) の影響を完全に除去する ことを狙いとしたからである‐ 実験デザイ ンは, 相互依存 f f t over e e c 況の理解度 (2水準)×個人利益 (2水準)×共通利益 (2水準) の3要因配置であっ た.. CN. 利. 得 Do. ^U. C行動選択の人数 ) 行動の選択に対する利得 D) 行動と協同 (C 図1 競争 ( l l (Ke ey & Grzelak,1972; Komorita,1976 に基づく) 20.
(4) . 相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究. 2. 方. 法. 2. 1被験者 被験者 は大学生2 52人 (女169人、 男83人) であっ た. 各被験者 は相互依存状況の理解度 (2水 準)×個人利益 (2水準)×共通利益 (2水準) の組み合せによる8条件の中の1つにラ ンダムに割 り当てられ,7人のグループを構成した.本実験において構成されたグループは合計すると36グルー プであっ た. なお, 全てのグループは性別 に関して非等質であり, また可能な限り未知の者 どう し が実験に参加するように被験者の構成を考慮した. 2. 2 手 続 き. 各被験者 は実験者や他の参加者がよく見えるように, U字型に配置されているテーブル に実験者 の指示にした がっ て着席し, 色の異なる2枚ひと組のカード, 筆記用具, そして記録用紙を配布さ れた. 次に, 実験者は,“いま配布されたカードのうち どちらかの色のカードを選択すると, その色 のカー ドに対してある得点が与えられるというゲームをしていただきます”と被験者に教示し,さら にそのゲームの進め方について以下のような説明を続けた. 1) ゲームの進め方 ‘予想して下さい” ①それぞれの試行において, 各被験者は自分のカードを選択する前に, 実験者の‘ という合図にしたがっ て, 他の人々 が どちらの色のカードを選択するか, それぞれのカードの選択 者数 (例えば、 赤5人, 緑2人) を予想する. ’という実験者の合図で どち らかの色 のカードを選択するかを決める ②“いいですか’ , . “ “ ③ はい という実験者の合図で, 自分の選択したカードをみんなが見えるように提示する‐ ④実験者がそれぞれの提示したカー ドの色を数え終り, “おろして下さい“という合図で, カードを お ろ す.. ⑤実験者が利得表 にしたがっ てそれぞれの色に対して与えられる得点 を発表するので (例えば, 赤 7点, 緑1 4点) , 記録用紙に自分の選択した色に○印をつけ, その得点を記入する. ⑥このような手続きを33回程度繰り返し行う. 2) ゲーム の得点についての説明 ①得点は, あなた自身が選択する色と他の人々 が選択する色との関係によっ て決まっ ている. ②一方の色は, 他方の色より常に高い得点になっ ている. ③しかし, 高い得点の色を選択する人が多くなるほど, 両方の色に対して与えられる得点は, 逆に 低くなっ てしまう.. 2. 3相互依存状況に関する理解度の操作 理解度小条件は Ke l l l 197 2 ) と同様の手続きにしたがい, 上記の内容を口頭で教 ey & Gr ze ak ( 示した. 他方, 解度大条件は村田 ( 19 81 ) の手続きに準じ, 合計点を付け加えた利得表 (表1) を 各被験者に配布し, 上記の内容を教示しなが ら, 7人の合計点が各被験者 の選択とどのような関係 にあるかを説明した.. 21.
(5) . 藤 森 立 男. 2. 4利得条件とゲームの実行 本実験で使用された利得条件は, 表1に示す通りである. この表において, 個人利益大とは競争 選択と協同選択との得点差が6点であり, 個人利益小とはその得点差が3点であることを意味して いる. また, 共通利益大とは協同選択をする人の増加にともなっ て競争選択と協同選択に対して与 えられる得点が2点ずつ加算されることを意味し, 共通利益小とはそれが1点ずつ加算されること を意味している. なお, ゲームではできる限り多くの得点を獲得するように努力することを教示し, ゲーム中に被 験者間で会話することを禁止した. また, 実際のゲームの試行数は, 3 0試行までであっ た. 2. 5質問紙調査 各被験者は実験セ ッ ショ ンが終了した後に, 以下のような質問紙を配布され, 各質問項目 (項目 1と2は記述式) に7段階尺度で評定するよう求められた (なお, 項目3以降のカ ッコ内の競争・ 協同は実際の質問紙には表示されていない) . 項目1“あなた自身の得点のために, どちらの色が最良でしたカヂ 項目2“みんなの得点のために, どちらの色が最良でしたか” ‘緑色 (協同) を選択する人が多くなれば 両方の色の得点は高くなると思っ た” 項目3‘ , “ 項目4 緑色 (協同) を選択する人の考えが分からない” 項目5“どち らの色を選択したらよいのか迷っ た” 項目6“自分の赤色 (競争) の選択 は他者の赤色 (競争) の選択に影響を与えた”. 項目7“自分の緑色 (協同) の選択は他者の緑色 (協同) の選択に影響を与えた” 項目8”多数の人 が赤色 (競争) を選択しはじめたので, やむをえず赤色 (競争) を選択した” ‘緑色 (協同) を選択する人に影響されて 緑色 (協同) を選択した” 項目9‘ , 表1 実験に使用した利得条件 個人利益 共通利益 選 択. 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. C. lo ll 12 13 14 15 16 / / 5 6 7 8 9 1o ll. 合計点. 70 71 72 73 74 75 76 77. D. 小. 協同選択の人数 0. 大 大. 10 12 14 42 50 58 66 74 82 90 98. 合計点. 小. /. 6 /. 8. 10 12 14 16 18. D. C. 2. 4. 6. 8. D. 7. 8. 9. 1o ll 12 13. C. /. 5. 6. 7. 合計点. 8. 9. /. 1o ll. 49 53 57 61 65 69 73 77. 小 大. D. 3. 5. 7. 9. 11 13 15. C. /. 2. 4. 6. 8. 合計 点. 22. /. 10 12 14. 21 32 43 54 65 76 87 98.
(6) . . 相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究. 3. 結. 果. 3. 1相互依存 字状況の理解度と協同選択 各実験条件における協 同選択数の平均値と標準偏差を表2に示した. 表5は, これらの協同選択 数に基づいて, 相互依存状況の理解度 (2)×個人利益 (2)×共通利益 (2) の分散分析 ( keppe l , 19 82 ) を実施 した結果である‐ これを見ると, 相互依存状況の理解度に関する主効果が有意 であり (F( 1 )=22 01 ) ,244 ,P<.0 .5015 ,理解度大条件は理解度小条件に比べて協同選択数が有意に多かっ た. また, 個人利益の主効果も有意であり(F( )=3 1 ) 5 ,244 ,P<.0 , 個人利益小条件は個人 .8326 利益大条件よりも協同選択数が有意に多いことを示していた. さらに, 理解度×個人利益の交互作 用が見出されており (F( 1 )=7 1 ) ,244 ,P<.0 .2638 , 理解度が小さい場合には個人利益大条件は個 人利益小条件よりも協 同選択数が有意に少なかっ た(個人利益の単純主効果, F( 1 )=1 0 5 ,244 , .824 P <.01 ).. 3. 2他者の協同選択についての予想 各被験者がそれぞれの実験条件 において示した他者の協同選択に関する予想人数 (1試行あたり の平均値) を表2に示した. この結果に基づいて相互依存状況 の理解度 (2)×個人利益 (2)×共 通利益 (2) の分散分析を行っ たところ (表5) , 相互依存状況の理解度に関する主効果が認められ ‐ (F( 1 )=7 3 6 5 ), 理解度大条件は理解度小条件に比べて予想された他者の協同選 ,24 ,P<.001 .966 択数が有意 に多かっ た. また, 個人利益および共通利益の主効 果も見出されており (それぞれ F , ( 2 1 4 3 )= 1 7 8 P< 8 3 5 0 0 1 ( 2 3 )= 1 4 2 P< ;F 9 8 4 6 1 ) 0 個人利益小条件 は個人利益大条件よ , , . . , , . . ,. りも予想された他者の協同選択数が有意に多く, 共通利益大条件では共通利益小条件よりも予想さ れた他者の協同選択が有意 に多いことを示していた. さらに, 理解度×個人利益の交互作用が見ら れ(F( 1 3 )=7 ) ,24 ,P<.01 ‐2638 . 理解度が小さい場合には個人利益大 条件は個人利益小条件より も予想された他者の協 同選択数が有意に少なかっ た(個人利益の単純主効果, F( 1 )=44 ,244 , .1978 P<.001 ) 1 2 )= 4 3 . その他では, 理解度×個人利益×共通利益の交互作用が有意となっ ていた(F( , 4 )‐ ,P <.05 .7356. 表2 協同選択とその予想に関する平均値と標準偏差 理 反 応. 小. 個 人 利 益 大 小. 個 人 利 益 大 小 ,. Dd SD N. lo .96 4 .76 28. 9 .61 4 .35 28. 5 .23 4 .26 35. 9 .39 5 .12 28. 大. Dd SD N. ll .14 3 .39 28. 11 .60 4 .66 35. 7 .80 5 .32 35. 9 .31 5 .93 35. 小. 為4 SD N. 2 ・39 O .66 28. 2 ・31 0 .54 28. 1 ・21 0 .54 35. 2 ‐17 0 .41 28. 犬. 他者の協同選択の予測. 度. 小. 協同選択. 共通利益. 解. 大. ハ4 SD N. 2 .56 O .41 28. 2 .51 0 .50 34. 1 .76 0 -68 35. 2 .14 0 .62 35. 23.
(7) . . 藤 森 立 男. 益. 臥 大. 、 4 小 利. 度. 小. n る\. 大. “ ム. 小. 大. 小. 大. ′小. 大. 7.他者の協同選択によ る影響. 大. 6.他者の競争選択によ 匪 る影璃. 解. 小. 5.協同選択による他者 への影響. 大. 4.競争選択による他者 への影響. 益 \ d 利. 小. 3.行動選択の迷い. 大. M櫛N M和N MmN M鴇N M即N M櫛N M櫛N M和N M締N M釦N M櫛N M櫛N M節N M櫛N 小. と関. 両係 加 の解 増点理. の得 の 択 のて 選 へい 同択 つ 協選 に. L. 2‐協同選択者の意図に ついての理解. 似 大. 大. 共通利益 項 目. 理. 表3 各質問項目に関する平均値と標準偏差.
(8) . 相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究 3. 3質問項目への反応 実験終了後に実施した質問紙調査に対する各被験者の反応と実験条件との関連を明らかにするた めに, 1) 相互依存状況の理解, 2) 行動選択の葛藤, 3) 相互的統制感な ど, 3つの側面につい て検討を行っ た.. 1) 相互依存状況の理解 本実験は, 個人利益と共通利益とが葛藤する場面での二者択一的な行動選択に関する問題を取り 扱っ ている. 各被験者には, 個人利益を追求する行動と共通利益を追求する行動が与えられ, 個人 の意志でそれら2種類の行動のどちらか一方を選択することができた. まず,“あなた自身の得点の ために, どち らの色が最良でしたか”と“みんなの得点のために, どちらの色が最良でしたか”の質問 項目に対する各被験者の回答を調べ, これら2項目に正しく答えている被験者を正答群, それ以外 を誤答群とした. そして, 理解度大条件と理解度小条件の間で正答群 と誤答群の人数を比較したと ころ(表4), 理解度大条件の被験者 は理解度小条件の被験者に比べてゲーム状況を正確に理解して ). また, “緑色 (協同) を選択する人 が多 4 2 f=1,P<.001 いる人が有意に多かっ た (×2=1 ,d .97 くなれば, 両方の色の得点は高くなると思っ た”との質問項目に対する回答を基に (表3) , 理解度 1 2 )の分散分析を行っ たところ(表6) ( 2 )×個人利益( 2 )×共通利益( , , 理解度の主効果が認められ(F( ゲーム状況の理解度に関する得点 1 285 24 3 )=10 ,P<.0) , 理解度大条件は理解度小条件に比べて .7 が有意に高いことを示していた. さらに, “緑色 (協同) を選択する人の考えが分からない”との質 2 )の分散分析を実施した. 2 )×個人利益( 2 )×共通利益( 問項目に対する回答を基にして(表3) ,理解度( 85 ) 1 3 )=10 その結果 (表6) ,P<.01 , 理解度小条件は理 ,24 , 理解度の主効果が見出され (F ( .72 解度大条件に比べて協同選択者の意図が分からないとする得点 が有意に高かっ た.これらの結果 は,. 理解度大条件の被験者が理解度小条件の被験者に比べてゲームにおける相互依存状況の理解が優れ ていることを示している. また同時に, このことは理解度の操作に関する本実験の手続きが有効で あることを保証している. 表4 ゲーム構造の理解に関する結果 反応. 理解度の 条件操作 小大. 正答. 誤答. 合計. 68. 65. 133. 89. 30. 119. 2) 行動選択の葛藤 “どち らの色を選択したらよいのか迷っ た”との質問項目に対する回答を基にして(表3) 理解度 , 2 )の分散分析を実施した. その結果(表6) ( 2 )×個人利益( 2 )×共通利益( , 理解度の主効果が認められ (F( 1 )=22 ) ,243 ,P<.001 , 理解度大条件 は理解度小条件に比べて行動選択に迷っ たという .1637 1 )=4 反応が有意に高く見られた.また,個人利益の主効果も有意となっ ており(F( ,243 ,P<. .6650 05 ) , 個人利益小条件は個人利益大条件よりも大きな葛藤を経験していること が明らかとなっ た.. 3) 相互的統制感 197 2 ) の研究によれ ば, 協同行動をより多く選択していた者は他者の行動 Ke l l l ze ak ( ey & Gr 選択への自分の景凝響と他者からの自分への影響をより敏感に感じており, この相互的統制感の認知 25.
(9) . 藤 森 立 男. と協同選択 の増加 が密接な関係にあることを指摘している. そこで, 相互依存状況の理解に関する 実験操作が相互的統制感 の成立にどのような効果を持っ ているかについて検討するために “自分の ,. “自分の緑色 (協同) の選択は他 赤色 (競争) の選択は他者の赤色 (競争) の選択に影響を与えた” ’ m 者の緑色 (協同) の選択に影響を与えた 緑色 (協同) を選ぶ人に影響されて, 緑色 (協同) を選 んだ”“多数の人が赤色 (競争) を選び始めた ので, やむをえず赤色 (競争) を選んだ”などの質問項. 目に対する回答について(表3) 2 )×個人利益( 2 )×共通利益( 2 )の分散分析を行っ た. その結 , 理解度( 果(表6) 競争選択による他者 への影響について は理解度 が有意 であり(F( の主効果 1 3 )=1 3 , ,24 . 1280 ) ,P<.001 , 理解度大条件は理解度小条件に比べて競争選択による他者 への影響に関する得点 が有意に低かっ た. しかしこれとは対照的に, 協同選択による他者 への影響について は理解度の主 効果が有意であり(F( 1 3 )=1 8 5 01 ) ,24 ,381 ,P<.0 , 理解度大条件は理解度小条件に比べて協同選 択による他者 への影響に関する得点が有意に高いことを示していた 他方, 自分の行動選択 への他 . 者からの影響について見ると, 他者の協同選択による影響について理解度の主効果が認められてお り (F( 1 3 )=7 ) ,24 ,P<.01 .3325 , 理解度大条件は理解度小条件に比べて他者の協同選択による影 響に関する得点が有意に高かっ た. また, 他者の競争選択による影響 について は理解度×個人利益 の交互作用が有意であり (F( 1 )=6 ), 理解度が小さい場合には個人利益大条件 ,243 .4907 ,P<.05. の被験者は個人利益小条件の被験者よりも他者の競争選択による影響に関する得点が有意に高いこ とを示していた (個人利益の単純主効果, F ( 1 )=3 3 ) ,24 .9789 ,P<.05 . 表5 協同選択と予想に関する分散分析の結果 反応. 変動因 理 解度 仰. F値. 1. 521 .3573. 1. 88 .8018. 1. 84 .6050. A×B. 168 .3018. 1. 168 .3018. AXC. O .4018 2 .7161. 1. 0 .4018 2 .7161. 0 .0173 0 .1172. 77 .5050 5653 .4643. 1 244. 77 .5050. 3 .3451. 24 .1119 5 .6025. 1 1. 24 .1119 5 .6025 3 .0778. B×C AXB×C 細 胞 内誤 差 理 解度 囚 個 人 利益{B ) 共 通 利 益0 A×B AXC BXC AXBXC 細 胞 内 誤差 ***P<.001 01 5 , **P<. , *P<.0. 26. 平均平方和. 88 .8018 84 .6050. 共 通利 益( C ),. 他者 行動 の予想. 自由度. 521 .3573. 個 人 利 益畑) 協 同行 動. 平方和. 3 .0778 8 .3833 O .0785 I .1783 I .4836 76 ‐1264. 1. 1 1 1 1 1 243. 22 .5015 * * * 3 .8326* 3 ‐6515 7 .2638 **. 23 .1699. 8 ・3833 0 .0785 1 .1783 1 .4836 0 .3133. 76 .9665* * * 17 .8835 * * * 9 .8246 * * 26 ・7600 * * * 0 .2507 3 .7612 4 .7356*.
(10) . 相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究 表6 各質問項目への反応に関する分散分析の結果 項目. 平方和. 変動因. 自由度. 平均平方和. F値. 理 解度 仰 B ) 個 人利 益( C ) 共 通利 益( A×B A×C BXC AXB×C 細 胞 内誤 差. 31 .8297 0 .5851 0 .7001 3 ‐0570 2 ‐0359 O .4097 3 .0570 720 .9361. 1 1 1 1 1 1 1 243. 31 .8297 0 ‐5851 0 .7001 3 .0570 2 .0359 0 .4097 3 .0570 2 .9668. 10 .7285 ** 0 .1972 0 .2360 1 .0304 0 ‐6862 0 .1381 1 .0304. 2. 協 同選 択 者 の意 図 に つ いて の理 解. 理 解度 ④ 個 人利 益燭 共 通 利 益に) AXB AXC BXC AXB×C 細 胞 内誤 差. 26 .5068 0 .3745 1 .1535 I .6147 O .4097 O .1597 2 .9167 723 .1667. 1 1 1 1 1 1 1 243. 26 .5068 0 .3745 1 .1535 1 .6147 0 .4097 0 ‐1597 2 .9167 2 .9760. 8 .9069* * 0 .1258 0 .3876 0 .5426 0 .1377 0 .0537 0 .9801. 3‐ 行 動 選択 の 迷 い. 理 解度 囚 B ) 個 人利 益( 共 通利 益(0 A×B AXC BXC AXBXC 細 胞 内 誤差. 61 ‐1609 12 ‐8731 4 ‐5985 5 .4808 O .0422 O .1400 O .0042 670 .5590. 1 1 1 1 1 1 1 243. 61 .1609 12 .8731 4 ‐5985 5 .4808 0 .0422 0 .1400 0 .0042 2 .7595. 22 .1637 * * * 4 .6650 * 1 .6664 1 .9862 0 .0153 0 .0507 0 .0015. 4. 競 争選 択 によ る 他者 への 影き醤. 理 解度 側 個 人利 益畑) 共 通利 益 0 AXB AXC BXC AXBXC 細 胞 内誤 差. 31 ‐2394 7 ‐1399 2 ‐0612 O .0132 O .0000 O .5376 O .1353 578 ‐2415. 1 1 1 1 1 1 1 243. 31 .2394 7 ‐1399 2 .0612 0 .0132 0 .0000 0 .5376 0 ‐1353 2 .3796. 13 .1280 * * * 3 .0005 0 .8662 0 .0056 0 .000O 0 .2259 0 .0569. 5. 協 同選択 に よる 他者 姿欝 へ の影. 理 解度 側 B ) 個 人利 益( 共 通利 益0 AXB A×C BXC AXB> くC 細 胞 内誤 差. 56 .6331 15 .5169 3 .0171 0 .1172 3 .8485 1 ‐1291 13 ‐3821 748 ‐6804. 1 1 1 1 1 1 1 243. 56 .6331 15 .5169 3 .0171 0 .1172 3 .8485 1 .1291 13 ‐3821 3 .0810. 18 ‐3815 * * * 5 ‐0363 * 0 .9793 0 .0381 1 .2491 0 .3665 4 ・3434*. 6. 他者 の競 争選 択 に よる影響. 理 解度 仰 個 人利 益( B ) 共 通利 益に) A×B AXC BXC AXB×C 細 胞 内誤 差. 3 .0588 0 .2218 0 .0040 I9 .2748 O .7706 7 ‐0126 7 .0900 721 .6082. 1 1 1 1 1 1 1 243. 3 .0588 0 .2218 0 ‐0040 19 .2748 0 .7706 7 .0126 7 .0900 2 .9696. 7. 他者 の協 同選 択 に よ る 影響. 理解 度 囚 B ) 個 人 利 益( 共 通利 益(0 A×B AXC BXC AXBXC 細 胞 内 誤差. 11 .0495 0 .0058 0 .5883 2 .8707 I .9974 I .5779 0 ‐6060 366 .1836. 1 1 1 1 1 1 1 243. 11 .0495 0 .0058 0 ‐5883 2 ‐8707 1 .9974 1 .5779 . 0 .6060 1 .5069. 1. 協 同 選択 の増 加 と両 選 択 へ の 得 点 の 関係 につ い て の 理 解. ,. 1 .0300 0 .0747 0 .0013 6 .4907* 0 .2595 2 ‐3615 2 .3875 7 ‐3325 * * 0 .0038 0 .3904 1 .9050 1 ‐3255 1 ‐0471 0 .4021. ***P<.00 1 , *P<.05 , **P<‐01. 27.
(11) . 藤 森 立 男. 4. 考. 察. 実験結果から, 相互依存状況の理解度に関する主効果が見出され, 理解度大条件は理解度小条件 に比べて協同選択数が有意に多く, 相互依存状況の理解は協同選択の増加に効果を及ぼしている こ と が 明 ら か にさ れ た. す な わ ち, Rapoport & Chammah( 1 965 ) の2人囚人のジレンマ状況に関す る結果と同様, N人囚人 の ジレンマ状況においても相互依存状況 の理解 は協同行動を規定していた の であ る‐ 同 時 に, こ の こ と は Kel l l 197 2 ) が提案した仮説を支持しており, 個人 ey & Gr ze ak (. 利益の追求と共通利益の追求とが葛藤する場面において相互依存状況にあることの理解が協同選択. の生起に重要な役割を果たしていることを示している . 次に, 利得条件を構成する個人利益と共通利益 の2変数の効果に関しては 個人利益の主効果が , 見出され, 個人利益小条件は個人利益大条件に比べて協同選択 数が有意に多かっ た このことは協 . 同選択によっ てこうむるコスト(損失) が小さい場合には協同選択が増加 することを意味しており , 協同選択にともなう コストの大きさが協 同選択を規定していることが確認された なお, こ の結果 . は Ke l l l 1972 ) および村田 ( 1981 ey & Gr ) の結果とも一致している. ze ak ( さらに, 利得構造 (ゲーム構造) とそれに対する反応 (協同選択) との媒介過程 について考察す. ると, 相互依存状況の理解度と個人利益の要因は他者の協同選択についての予想に有意な影響を及 ぼしてお り, 理解度大条件は理解度小条件に比べて他者の協 同選択についての予想が重 要な働きを していることが確認された. また, 個人利益 の主効果も見出されており 個人利益小条件は個人利 ,. 益大条件よりも予想された他者の協同選択数が有意に多く, 個人利益小条件の被験者は他者の協同 的な反応をより期待していることを示していた これに加えて 実験終了後に実施した質問紙調査 . , に対する回答の分析結果から, 相互依存状況の理解と相互 的統制感の認知 は密接な関係 にあること ‘多数の人が競争選択を選び が明らかとなっ た. すなわち, 理解度小条件では理解度大条件に比べて‘ 始めたので, やむをえず競争選択を選んだ”とする反応に見られるよう に 被験者が直面して いる問 ,. 題状況に対して受動的にのみ対処しているが, 理解度大条件では自分の協同選択が他者の協同選択 に影響を与え, 逆に他者 の協同選択は自分の協同選択 に影響したとする, いわゆる 行動選択に関 , する相互的統制感が成立 していたのである.. 最後に, 相互依存状況の理解の効果を検討する従来の研究との関連で本研究結果を考察する 従 .. 来, 相互依存状況の理解が協同選択を増加させる理由は, 競争選択をとる人が多くなるほど 当事 , 者全体の利益が減少し, 協同選択をとる人々が多くなるほど 当事者全体の利益が増加することに , 関する合理的な理解であると考えられている これに対して, 相互依存状況やゲーム状況 の理解は . 協同行動をストレートには導かないとする指摘もなされている(Ca l l l ) dwe 6 ,197 . その理由は, ゲー ム状況 の理解が協同選択によっ て共通利益を高めようとする方向 に作用すると同時に 個人利益を , 増やす方法を知ることにもなるので競争選択 の生起を高める方向にも作用するため であると説明さ れている. 確かに, ゲーム状況についての理解はこれら2方向への作用を含むものと考えられ こ ,. のことは本研究における理解度大条件の被験者が理解度小条件の被験者に比べて個人利益の追求と 共通利益の追求に関して深刻なジレンマに陥っ ていることからも推察される しかし本実験結果か . ら明らかなように, こう したジレンマ状況の中にあっ て, 自他の行動選択が相互 に影響 し合っ てい るとの相互的統制感についての認知が成立している場合には協同選択は有意に増加しており 相互 ,. 依存状況の理解に加えて, 行動選択に関する相互的統制感の成立が協同選択の生起を規定する極め て重要な媒介変数であることを明らかにしている. 28.
(12) . 相互依存状況の理解が協同行動に及ぼす効果に関する研究. 5. 要. 約. 本研究は, 個人利益を追求する行動 (競争選択) と共通利益を追求する行動 (協同選択) とが葛. 藤する ジレンマ状況に個人 が直面した場合, 個人の行動選択 は如何なる要因よっ て規定されている 字状況の理解度 (2水準)×個人利益 (2水準)×共通利益 (2 かを検討した. 実験条件 は, 相互依存 252人) は7人で構成されるグルー プの中の1つに無 水準) の3要因配置 であり, 大学生の被験者 ( 作為に割り当て られた. 主要な実験結果 は以下の通り である.. (1) 相互依存状況の理解度の要因に関する主効果が認められ, 理解度大条件は理解度小条件に比. ‘相互依存状況 ) が提案した‘ 1972 l l l ze ak ( ey & Gr べて協同選択数 が有意に多かっ た. これは, Ke にあることを理解できれ ば, 協同行動を取るようになる”との仮説を支持する結果となっ ている‐ (2) 行動選択のジレンマ状況を構成する個 人利益と共通利 益の2変数に関して は, 個人利益の要. 因に主効果が見出されており, 個人利益大条件よりも個人利益小条件で協同選択数が有意に多いこ と を 示 して い た.. (3) 相互依存状況に関する理解度の要因は他者の協同選択についての予想と協同選択の相互的統. 制感に有意な影響を及 ぼしていることが明らかとなり, 相互依存状 況の理解と協同選択とを媒介す る要因と して, 他者の協同選択の予想 と協同選択の相互 的統制感の存在 が確認された.. 引用文献 7. i le ive l r l l na game- fects in a f soners d l ion and sex ef ‐Person Pr 1 l l l l l nuniCat Ca l dwe ‐D. 1976 Col ,N 8 - 2 0 2 7 3 P h l 3 3 1 V l S i d 1 i f P t o o a s c o oc 主 , y Jouma l o ersona y an . ・ , i dua l and common interest in an n‐Person i l nd v Ke l ley,H‐H & Gr ze ak,J. 1972 Conaict between i ia I Psycholo≦w. VO1 i ty and Soc l of Personal ionship‐ Jouma lat ‐21, 190-197. re ’ l l ice d E di ion‐ Prent k S t ‐Ha h d b h A n l i c o d o o e i e r s a n D r . l G 2 r e s e a c Keppe, ‐ 1 98 esgn an ana yss : ‐ lof ExperimentaI SociaI lemma‐ type game 976 A model of 値e n‐person di Komor i ta S S 1 ‐Jouma ,‐‐ Psychology. VO1 ‐12, 357‐373‐. 5巻 9 7 5 N人グループにおける個人利益と共通利益の葛藤について,実験社会心理学研究,第1 三井宏隆 1 第2号, 162一167 .. 1 N人囚人のディ レンマゲームの実験研究-相互依存状況の理解と選択行動-. 社会心理 9 8 村田光二 1 学評論, 第 1巻, 57一70 .. ion.A潟 l i n L lenl at i ctand coop例「 : A studyin conf lna RapoPort,A. & Cha soners di 1 1 1 1nah,A‐NI. 1965 Pr i Anbor ty of ハ4ichigan Press. : Univers. (本学講師・函館分校). 29.
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