著者
得津 晶
雑誌名
東北ローレビュー
巻
8
ページ
1-21
発行年
2020-11-30
URL
http://hdl.handle.net/10097/00129835
裁判例の中の吸収説
裁判例の中の吸収説
東 北 大 学 大 学 院 法 学 研 究 科 教 授 得 津 晶 1. 問 題 意 識 : 研 究 の 動 機 2. 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 合 併 無 効 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 3. 合 併 無 効 の 訴 え に よ っ て 株 主 総 会 決 議 の 瑕 疵 が 問 題 と な っ た 裁 判 例 (1 ) 仙 台 地 判 昭 和 36・ 11・ 1 判 時 290 号 26 頁 : 資 本 増 加 〔 新 株 発 行 〕 無 効 の 事 案 (2 ) 合 併 の 効 力 が 問 題 と な っ た 裁 判 例 a) 東 京 地 判 昭 和 30・ 2 ・ 28 判 時 46 号 3 頁 : 総 会 決 議 無 効 の 事 案 b) 東 京 地 判 昭 和 38・ 11・ 28 判 タ 156 号 204 頁 : 規 範 的 不 存 在 の 事 案 c) 東 京 地 判 昭 和 40・ 4 ・ 22 判 時 408 号 46 頁 : 物 理 的 不 存 在 の 事 案 d) 東 京 地 判 平 成 元 ・ 8 ・ 24 判 時 1331 号 136 頁 : 取 消 事 由 相 当 事 実 が 否 定 さ れ た 事 案 e) 千 葉 地 判 平 成 14・ 4 ・ 12LEX/DB28071951: 農 協 の 合 併 f) 東 京 高 判 平 成 22・ 7 ・ 7 判 時 2095 号 128 頁 : キ ャ ッ シ ュ ア ウ ト 後 の 合 併 4. 学 説 と し て の 吸 収 説 ・ 併 存 説 の 想 定 す る 形 成 訴 訟 性 5. 吸 収 説 と い う 結 論 or 表 現 か ら の 離 脱 (1 ) 合 併 無 効 事 由 の 書 換 :「 吸 収 説 」 と い う 表 現 か ら の 離 脱 (2 ) 併 存 説 : バ リ エ ー シ ョ ン 1 ( 両 訴 併 合 提 訴 必 要 説 ) (3 ) 併 存 説 : バ リ エ ー シ ョ ン 2 ( 原 告 の 自 由 選 択 説 ) 6. 小 括1.
問 題 意 識 : 研 究 の 動 機
本 稿 は 、 合 併 な ど の 組 織 再 編 行 為 に お い て 法 律 上 要 求 さ れ て い る 株 主 総 会 決 議 に 瑕 疵 が あ っ た 場 合 に 、 合 併 な ど の 組 織 再 編 行 為 の 効 力 を ど の よ う に 争 う か に つ い て 、 通 説 と 呼 ば れ る 吸 収 説 の 立 場 を 今 一 度 再 検 討 す る も の で あ る 。 こ の よ う な テ ー マ を 選 ん だ の に は 2 つ の 動 機 が あ る 。 ま ず 、 1 つ は 、 筆 者 が 、 『 論 点 体 系 会 社 法 〔 第 2 版 〕』 と い う コ ン メ ン タ ー ル 的 な 講 座 も の の 828 条 の 執 筆 を 担 当 し て い る こ と で あ る 。 筆 者 は 、 第 1 版 に お い て も 、 同 条 の 執 筆 を 担 当 し た が 、 当 時 は ア メ リ カ で 在 外 研 究 中 で あ っ た た め 資 料 を 満 足 に 利 用 で き ず に 執 筆 し た 。 そ の た め 、 今 回 の 改 訂 を 機 に 、 し っ か り 書 き 直 し た い と 考 え て い る 。 と り わ け 、2012 年 か ら 現 在 ま で の 間 に お い て 、組 織 再 編 の 差 止 規 定 が 導 入 さ れ( 会 社 法 784 の 2① 、 796 の 2① 、 805 の 2① )、 組 織 再 編 行 為 の 承 認 決 議 に 取 消 事 由 が あ る 場 合 に 、 差 止 が 認 め ら れ る か 、 仮 に 認 め ら れ る と す れ ば い か な る 法 律 構 成 に裁判例の中の吸収説 よ る の か 、と い う こ と が 議 論 さ れ て い る1。そ し て 、無 効 事 由 の 解 釈 に お い て 、差 止 規 定 の 創 設 が 影 響 す る か 否 か が 議 論 さ れ て い る2。 第 2 の 動 機 は 、 吸 収 説 は 通 説 と は 言 わ れ て い る も の の 、 そ の 説 明 が 法 律 学 の 説 明 と し て 成 功 し て い る か 疑 問 が あ る と い う こ と で あ る3。吸 収 説 と い う の は 、① 吸 収 合 併 等 行 為 の 効 力 発 生 前 は 決 議 の 取 消 し の 訴 え 、 効 力 発 生 後 は 吸 収 合 併 の 無 効 の 訴 え を 提 起 す べ き で あ り 、 ② 吸 収 合 併 等 の 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 は そ の 行 為 の 効 力 が 生 じ た 日 か ら 一 定 期 間 ( 吸 収 合 併 の 場 合 は 六 箇 月 ) 内 で あ る が 、 決 議 取 消 事 由 を 当 該 会 社 の 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 事 由 と し て 主 張 す る 場 合 に は 決 議 の 日 か ら 三 箇 月 以 内 に 提 訴 す る こ と を 要 し 、 ③ 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 提 起 し た 後 に 当 該 行 為 の 効 力 が 生 じ た 場 合 に は 、 原 告 は 、 訴 え の 変 更 の 手 続 に よ り 当 該 会 社 の 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 の 訴 え に 変 更 す る こ と が で き る 、 と す る も の で あ る4。 株 主 総 会 決 議 の 欠 缺 が 、 当 該 会 社 の 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 事 由 と さ れ て い る 場 合 に 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え が 、 組 織 に 関 す る 行 為 無 効 の 訴 え の 中 に 吸 収 さ れ て い る た め 、「 吸 収 説 」 と さ れ て い る 。 し か し 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え は 形 成 の 訴 え と さ れ 、 請 求 認 容 判 決 確 定 に よ っ て は じ め て「 取 消 し 」の 効 果 が 発 生 す る も の で あ る 。会 社 法 831 条 1 項 柱 書 が 「 訴 え を も っ て 当 該 決 議 の 取 消 し を 請 求 す る こ と が で き る 」 と 定 め る の は そ の 趣 旨 で あ る と さ れ る 。 に も か か わ ら ず 、 吸 収 説 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え に よ ら ず に 、 会 社 の 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 の 訴 え に よ っ て 、 当 該 総 会 決 議 の 効 力 を 否 定 す る こ と を 認 め る も の で あ り 、 形 成 訴 訟 性 と 矛 盾 す る の で は な い か5。 本 稿 は 、 こ の よ う な 吸 収 説 が 抱 え る か に み え る 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 と の 矛 盾 と い う 理 論 的 課 題 を ど の よ う に 克 服 す る の か に 着 目 す る 。 こ の 問 1 笠 原 武 朗 「 組 織 再 編 行 為 の 無 効 原 因 ― ― 差 止 規 定 の 新 設 を 踏 ま え て 」 落 合 誠 一 先 生 古 稀 記 念 『 商 事 法 の 新 し い 礎 石 』( 有 斐 閣 ・ 2014) 309 頁 以 下 、 松 中 学 「 子 会 社 株 式 の 譲 渡 ・ 組 織 再 編 の 差 止 」 神 田 秀 樹 編 『 論 点 詳 解 平 成 26 年 改 正 会 社 法 』( 商 事 法 務 ・ 2015) 207 頁 以 下 。 な お 、 2015 年 12 月 12 日 東 北 大 学 商 法 研 究 会 に お け る 吉 原 和 志 教 授 の 報 告 「 組 織 再 編 差 止 請 求 と 総 会 決 議 取 消 し の 訴 え 」 の 内 容 を 参 考 に し た 。 2 笠 原 ・ 前 掲 注 (1)文 献 311 頁 、 江 頭 憲 治 郎 『 株 式 会 社 法 〔 第 7 版 〕』( 有 斐 閣 ・ 2017) 894 頁 注 1 ( 合 併 差 止 制 度 創 設 を 理 由 と す る 無 効 原 因 の 制 限 的 解 釈 に 反 対 )。 3 近 時 、 本 稿 と 同 一 の 問 題 意 識 を 持 つ 見 解 と し て 、 吉 本 健 一 「 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 会 社 の 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 の 訴 え の 関 係 ― い わ ゆ る 吸 収 説 の 再 検 討 ― 」 阪 大 法 学 70 巻 1 号 ( 2020) 127 頁 が 公 表 さ れ た 。 本 稿 の 主 要 な 主 張 は 、 吉 本 論 文 の 屋 上 屋 を 架 す に 過 ぎ な い が 、 併 存 説 に 2 つ の バ リ エ ー シ ョ ン が あ る こ と ( 後 述 5. 参 照 )、 お よ び 吸 収 説 を 含 め た 3 つ の 理 解 の 差 異 の 原 因 ( 後 述 6. 参 照 ) に つ い て 指 摘 し た 点 に お い て 同 論 文 に な い 新 規 性 が あ る と 考 え 、 公 刊 す る も の で あ る 。 4 こ の よ う な 吸 収 説 の 理 解 は 、 後 述 す る よ う に 裁 判 例 で は 採 用 さ れ て い な い も の の 、 裁 判 官 ・ 実 務 家 か ら は 支 持 さ れ て い る 模 様 で あ る 。 江 頭 憲 治 郎 = 門 口 正 人 編 集 代 表 『 会 社 法 大 系 』( 青 林 書 院 ・ 2008) 392 頁 〔 佐 々 木 宗 啓 〕、 東 京 地 方 裁 判 所 商 事 研 究 会 編 『 類 型 別 会 社 訴 訟 II〔 第 三 版 〕』( 判 例 タ イ ム ズ 社 ・ 2011) 726 頁 〔 佐 々 木 宗 啓 ・ 野 崎 治 子 ・ 金 澤 秀 樹 〕。 5 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 130 頁 。
裁判例の中の吸収説 題 は 、主 と し て 訴 訟 技 術 上 の 対 立 で あ り6、こ の 課 題 の 解 決 に は 、形 成 訴 訟 性7の 意 味 や 、 株 主 総 会 決 議 取 消 判 決 の 効 力 の 及 ぶ 範 囲 と い っ た 基 本 概 念 の 意 味 を 問 い 直 す 作 業 が 必 要 と な り か ね な い 。 し か し 、 そ れ は 筆 者 の 能 力 に 余 る 基 本 的 課 題 で あ る 。 そ こ で 、 本 稿 で は 、 根 本 的 ・ 理 論 的 課 題 を 棚 上 げ し な が ら 、 さ し あ た り 、 裁 判 所 が こ の 問 題 に ど の よ う に 解 決 し て き た の か を 検 討 す る 。
2.
株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 合 併 無 効 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性
ま ず 、 分 析 の 対 象 と な る 裁 判 例 の 時 的 範 囲 を 画 す る た め に 、 会 社 法 ・ 商 法 の 規 定 に 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え が 形 成 訴 訟 と さ れ た の は い つ か ら で あ る の か を 確 認 す る 。株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 定 め る 会 社 法 831 条 1 項 は 、形 成 訴 訟 で あ る こ と を 定 め た と 理 解 さ れ て い る8。 同 条 文 は 、 平 成 17 年 改 正 前 商 法 247 条 を 引 き 継 い だ も の で あ り 、 同 条 は 昭 和 13 年 改 正 商 法 247 条 に よ っ て 「 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え 」 と し て 導 入 さ れ た 当 時 か ら 形 成 の 訴 え で あ る こ と が 明 示 さ れ た も の と 理 解 さ れ て い た9。 そ れ 以 前 の 明 治 44 年 改 正 商 法 163 条 1 項 は 、「 総 会 の 招 集 の 手 続 ま た は そ の 決 議 の 方 法 が 法 令 ま た は 定 款 に 反 す る と き は 株 主 、 取 締 役 、 ま た は 監 査 役 は 訴 え を 以 て の み そ の 決 議 の 無 効 を 主 張 す る こ と を 得 る 」 と 定 め て い た 。 「 無 効 の 訴 え 」 と し な が ら も 、 文 言 上 は 形 成 訴 訟 で あ る こ と ( ド イ ツ 法 上 の 取 消 の 訴 え 〔 Anfechtungsklage〕 を 規 定 し た も の ) を 定 め て い る と い う 理 解 が 通 説 で あ っ た が 、 判 例 は 、 無 効 を 確 認 す る 確 認 訴 訟 で あ る と 捉 え て い る か の よ う な 表 現 が 採 用 さ れ て い た ( 大 判 大 正 10・ 7 ・ 18 民 録 27 輯 1346 頁 、 大 決 大 正 10・ 10・ 27 民 録 27 輯 1830 頁 、 大 判 昭 和 6 ・ 6 ・ 5 民 集 10 巻 698 頁 )。 よ っ て 、 本 稿 の 問 題 関 心 の 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 の 矛 盾 と い う 観 点 か ら す れ ば 、 昭 和 13 年 改 正 以 降 の 裁 判 例 の み を 取 り 上 げ れ ば 足 り る こ と に な る 。 他 方 で 、 本 稿 の 課 題 に 関 し て は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の み な ら ず 、 合 併 無 効 の 訴 え な ど の 組 織 再 編 行 為 な い し 会 社 の 組 織 上 の 行 為 の 無 効 の 訴 え( 会 社 828I) 6 新 堂 幸 司 「 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え 」 鈴 木 竹 雄 ほ か 編 『 新 商 法 演 習 1 会 社 ( 1 )』( 有 斐 閣 ・ 1974) 260 頁 。 7 岩 原 紳 作 は 、 取 消 訴 訟 の 排 他 性 と 表 現 す る ( 岩 原 紳 作 「 株 主 総 会 決 議 を 争 う 訴 訟 の 構 造 (1 )」 法 協 96 巻 6 号 〔 1979〕 692 頁 、 上 柳 克 郎 ほ か 編 『 新 版 注 釈 会 社 法 ( 5 )』〔 有 斐 閣 ・ 1986〕 351 頁 〔 岩 原 紳 作 〕)。 8 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 367 頁 、 神 田 秀 樹 『 会 社 法 〔 第 22 版 〕』( 弘 文 堂 ・ 2020) 206 頁 な ど 。 9 上 柳 ほ か ・ 前 掲 注 (7)文 献 313 頁 〔 岩 原 〕。裁判例の中の吸収説 も 形 成 訴 訟 と さ れ て い る こ と10も 重 要 で あ る 。 吸 収 説 は 、 合 併 無 効 の 訴 え を 優 先 す る こ と で 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 と の 矛 盾 が 問 題 と な る と い う の が 本 稿 の 指 摘 で あ る が 、 そ れ で は 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 優 先 す れ ば 、 今 度 は 、 合 併 無 効 の 訴 え 等 の 形 成 訴 訟 性 と の 矛 盾 が 問 題 と な る 。 こ の 点 は 、 後 述 す る 江 頭 説 の 検 討 に お い て 課 題 と な る 点 で あ る の で あ ら か じ め 指 摘 し て お く 。 吸 収 説 は 、 組 織 再 編 行 為 の み な ら ず 、 会 社 法 上 形 成 訴 訟 と さ れ て い る 組 織 に 関 す る 行 為 の 無 効 の 訴 え( 会 828I)の う ち 、株 主 総 会 決 議 の 欠 缺 が 無 効 原 因 と さ れ て い る 場 合 に お い て 等 し く 問 題 と な る 。 す な わ ち 、 非 公 開 会 社 に お け る 新 株 発 行 ( 最 判 平 成 24・4・24 民 集 66 巻 6 号 2908 頁 )11、資 本 金 の 額 の 減 少( 828I⑤ ) な ど に お い て も 、 法 定 の 株 主 総 会 決 議 が 欠 け る 場 合 は 無 効 原 因 と さ れ て い る 。 本 稿 で は 、 こ れ ら の 中 か ら 、 典 型 例 で あ る 組 織 再 編 行 為 の 中 で も 、 さ ら に そ の 典 型 例 で あ る 合 併 無 効 の 訴 え を 素 材 に す る12。 差 止 規 定 の 導 入 に よ っ て 、 他 の 行 為 の 無 効 の 訴 え と は 差 異 が 生 じ る 可 能 性 も あ る が 、 さ し あ た り 、 本 稿 で は 等 し く 扱 わ れ る も の と し て 議 論 を 進 め た い 。 合 併 無 効 の 訴 え は 、平 成 17 年 改 正 前 商 法 415 条 以 下 を 引 き 継 い だ も の で あ る 。 同 制 度 は 、 昭 和 13 年 商 法 改 正 に よ る 新 設 以 来 、 同 改 正 416 条 が 合 名 会 社 の 合 併 無 効 ( 104- 111 条 ) に つ い て 形 成 訴 訟 性 を 定 め る 同 104 条 を 準 用 し て い る こ と か ら 、 形 成 訴 訟 と し て 理 解 さ れ て い る 。 す な わ ち 合 併 無 効 の 訴 え に つ い て も 形 成 訴 訟 性 が 明 確 に な っ た の は 昭 和 13 年 改 正 で あ る こ と か ら 、昭 和 13 年 改 正 商 法 が 適 用 さ れ る よ う に な っ て 以 降 の 事 案 の み を 扱 え ば 本 稿 の 課 題 の 検 討 に は 足 り る と い う こ と に な る 。 3. 合 併 無 効 の 訴 え に よ っ て 株 主 総 会 決 議 の 瑕 疵 が 問 題 と な っ た 裁 判 例 本 稿 筆 者 の 調 査 の 結 果 、判 明 し た の は 、吸 収 説 は 通 説 と さ れ な が ら も 、昭 和 13 年 改 正 以 降 、 合 併 無 効 の 訴 え の 裁 判 例 に お い て 、 吸 収 説 を 採 用 し た こ と が 明 言 さ れ た こ と は な い と い う こ と で あ っ た13。 1 0 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 891 頁 な ど 。 1 1 こ れ に 対 し て 公 開 会 社 に お け る 新 株 発 行 に お い て は 株 主 総 会 の 決 議 の 欠 缺 ( 有 利 発 行 の 場 合 ) は 無 効 原 因 と は さ れ て い な い ( 最 判 昭 和 40・ 10・ 8 民 集 19 巻 7 号 1745 頁 、 最 判 昭 和 46・ 7 ・ 16 判 時 641 号 97 頁 。 取 締 役 会 決 議 が な い 場 合 に つ い て も 最 判 36・ 3 ・ 31 民 集 15 巻 3 号 654 頁 )。 1 2 こ の 点 で 、 新 株 発 行 そ の 他 を 一 般 に 扱 う 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 136- 148 頁 と は 分 析 す る 裁 判 例 ・ 判 例 が 異 な る 。 1 3 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 142 頁 が 、 最 高 裁 が 吸 収 説 を 採 用 し て い る と し て 挙 げ る 最 判 昭 和 49・ 9 ・ 26 民 集 28 巻 6 号 1283 頁 ( 井 田 友 吉 「 判 解 」 最 判 解 民 事 篇 昭 和 49 年 度 548 頁 も 同 じ く 吸 収 説 を 採 用 し た も の と す る ) は 、 株 式 会 社 で は な く 中 小 企 業 団 体 の 組 織 に 関 す る 法 律 の 適 用 さ れ る 商 工 組 合 の 事 案 で あ り 、 か つ 、 株 主 総 会 で は な く 定 款 の 承 認 に か か る 創 立 総 会 決 議 が 問 題 と な り 、 合 併 で は な く 設 立 が 問 題 と な っ た 点 で 特 殊 性 が あ り 、 た だ ち に 判 例 ・
裁判例の中の吸収説
(1) 仙 台 地 判 昭 和 36・11・1 判 時 290 号 26 頁:資 本 増 加〔 新 株 発 行 〕
無 効 の 事 案
新 版 注 釈 会 社 法 に お い て 岩 原 紳 作 が 引 用 す る 仙 台 地 判 昭 和 36・11・1 判 時 290 号 26 頁 は 、有 限 会 社 の 資 本 増 加( 株 式 会 社 に お け る 新 株 発 行 )無 効 の 訴 え の 事 案 で は あ る も の の 、む し ろ 併 存 説 を 採 用 し て い る 。昭 和 36 仙 台 地 判 は 、有 限 会 社 が 資 本 増 加 を す る 際 に 、 社 員 総 会 特 別 決 議 が 必 要 で あ る と こ ろ 、 臨 時 社 員 総 会 に お い て 一 部 の 大 口 社 員 が 決 議 に 参 加 せ ず 、 定 足 数 を 満 た し て い な い ま ま 、 社 員 総 会 決 議 が 成 立 し た と さ れ 、 資 本 増 加 が 実 行 さ れ た と い う 事 案 で あ る 。 原 告 は 、 社 員 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 資 本 増 加 無 効 の 訴 え と を 併 合 提 起 し た の に 対 し 、 被 告 会 社 側 は 、 社 員 総 会 決 議 取 消 の 訴 え に つ い て は 資 本 増 加 が 実 現 し た こ と に よ っ て 訴 え の 利 益 を 喪 失 し て い る は ず だ と 抗 弁 し て い た 。 だ が 、 仙 台 地 裁 は 、 定 足 数 に か け る 社 員 総 会 の 成 立 を 決 議 方 法 の 法 令 違 反 と 整 理 し て 取 消 事 由 を 認 め14、 そ の う え で 「 社 員 総 会 の 決 議 は 定 足 数 を 欠 い て も 判 決 に よ っ て 取 消 さ れ な い 限 り 有 効 で あ り 、 従 っ て 有 効 な 決 議 に 基 づ い て な さ れ た 増 資 も ま た 有 効 と い わ な け れ ば な ら な い か ら 、 増 資 無 効 の 訴 を 維 持 す る た め に も 、 増 資 の 決 議 取 消 の 判 決 を 受 け る 必 要 が あ る 」( 筆 者 が 現 代 仮 名 遣 い に 修 正 )と し て 、社 員 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 を 認 め て 社 員 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 認 容 し た 。 さ ら に 、 社 員 総 会 決 議 が 取 り 消 さ れ た こ と に よ っ て 資 本 増 加 に 無 効 原 因 が 認 め ら れ る こ と と な り 、 併 合 提 起 し て い た 資 本 増 加 無 効 の 訴 え に つ い て も 請 求 を 認 容 し た 。 こ の 仙 台 地 裁 は 、 総 会 決 議 の 瑕 疵 に つ い て 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 会 社 の 行 為 の 無 効 の 訴 え の 併 合 提 起 に よ る 解 決 を 認 め た も の で 「 併 合 説 」 と さ れ る 理 解 に 近 い 。 と り わ け 、 本 稿 が 問 題 と す る 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 に つ い て 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え が 「 必 要 」 で あ る こ と を 述 べ 、 明 示 的 に 肯 定 し て い る 。 こ れ 裁 判 例 が こ の 問 題 に つ い て 吸 収 説 を 採 用 し た と み る こ と は で き な い 。 ま た 、 同 事 件 は 、「 設 立 無 効 の 訴 え に 変 更 し な か っ た 」 こ と を も っ て 決 議 取 消 の 訴 え の 訴 え の 利 益 を 否 定 し て い る が 、 訴 え の 変 更 に よ る か 否 か は と も か く 、 設 立 無 効 の 訴 え が 提 起 さ れ て い な け れ ば 、 紛 争 が 実 体 的 に 解 決 し な い 。 取 締 役 選 任 決 議 の 取 消 し の 訴 え に つ い て 、 当 該 取 締 役 の 任 期 が 満 了 し 新 た に 選 任 さ れ れ ば 訴 え の 利 益 が 消 滅 す る と い う 最 判 昭 和 45・ 4 ・ 2 民 集 24 巻 4 号 223 頁 の 理 解 か ら す れ ば 、 紛 争 が 実 体 的 に 解 決 し な い こ と か ら 訴 え の 利 益 を 否 定 す る と い う ス タ ン ス を 裁 判 所 が と っ て い る と 理 解 す る こ と は 可 能 で あ る 。 こ こ で は 訴 え の 変 更 と い う 手 段 は 必 要 不 可 欠 で は な く 、 設 立 無 効 の 訴 え が 提 起 さ れ て い な い こ と が 問 題 な の で あ っ て 、 後 述 す る 併 存 説 ( バ リ エ ー シ ョ ン 1 ) で も 説 明 が 可 能 で あ る 。 1 4 こ の 点 に つ い て は 、 定 足 数 を 満 た し て い な い 以 上 、 有 効 に 社 員 決 議 は 成 立 し て い な い 物 理 的 不 存 在 の 事 案 と み る こ と も で き る の で は な い か と い う 疑 問 が あ る 。裁判例の中の吸収説 は 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え に よ っ て も か ま わ な い と 許 容 性 を 述 べ た だ け に と ど ま ら な い 。 さ ら に 、 昭 和 36 年 仙 台 地 判 は 両 訴 の 提 訴 期 間 と の 関 係 で も 興 味 深 い 判 断 を 下 し て い る 。同 事 案 は 昭 和 34 年 7 月 23 日 の 臨 時 社 員 総 会 に お い て 、資 本 増 加 と 定 款 変 更 の 特 別 決 議 が な さ れ 、 そ の 後 、 当 該 社 員 総 会 決 議 に 基 づ い て 増 資 の 登 記 が な さ れ た の が 昭 和 34 年 8 月 8 日 で あ っ た 。 こ れ に 対 し て 、 原 告 が 社 員 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 提 起 し た の が 昭 和 34 年 8 月 6 日 で あ り 、 資 本 増 加 無 効 の 訴 え を 求 め た の は 、当 該 取 消 訴 訟 の 手 続 中 の 昭 和 36 年 7 月 24 日 に 、請 求 の 趣 旨 を 拡 張 し た こ と に よ る も の で あ っ て 、 資 本 増 加 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 で あ る 登 記 か ら 6 カ 月 ( 有 限 会 社 法 56) を 経 過 し た 後 で あ っ た 。 こ の 提 訴 期 間 徒 過 の 問 題 に 対 し て 、仙 台 地 裁 は 、「 増 資 決 議 取 消 の 訴 は 右 決 議 に 基 く 増 資 を 阻 止 す る こ と を 目 的 と し て 提 起 せ ら れ て い る の で あ り 、 将 来 増 資 の 登 記 が な さ れ た 場 合 、 当 然 増 資 無 効 の 訴 が 提 起 せ ら る べ き こ と は 予 期 せ ら れ る と こ ろ で あ る か ら 、 有 限 会 社 法 第 56 条 所 定 の 増 資 無 効 の 訴 の 出 訴 期 間 に 関 し て は 既 に 出 訴 あ り た る も の と 同 様 に 解 す べ く 何 時 に て も 訴 を 拡 張 し て 増 資 決 議 取 消 を 理 由 と す る 増 資 無 効 の 訴 を 提 起 出 来 る も の で あ り 、 登 記 後 6 ケ 月 を 経 過 し た 後 に 右 訴 の 拡 張 が な さ れ て も 適 法 で あ る と 解 す る 」 と 判 断 し た 。 す な わ ち 資 本 増 加 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 を 徒 過 し て い た と し て も 、 同 一 の 目 的 に 基 づ く 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 提 起 が 資 本 増 加 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 内 で あ れ ば 、 提 訴 期 間 を 遵 守 し た も の と 判 断 し た の で あ る 。 こ の よ う な 提 訴 期 間 規 定 の 判 断 に 際 し て 、法 律 構 成・訴 訟 形 式 の 差 異 よ り も「 救 済 の 対 象 の 同 一 性 」 を 基 準 と す る 判 断 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と の 関 係 で 、 既 に 最 高 裁 に よ っ て も 採 用 さ れ て い る 。最 判 昭 和 54・11・16 民 集 33 巻 7 号 709 頁 は 、 法 定 の 監 査 役 の 監 査 を 経 ず に 株 主 総 会 に 提 出 さ れ た 計 算 書 類 を 承 認 す る 総 会 決 議 に つ い て 、 原 告 株 主 が 当 初 、 決 議 内 容 の 法 令 違 反 を 理 由 と す る 株 主 総 会 決 議 無 効 確 認 の 訴 え を 提 起 し て い た と こ ろ 、 総 会 決 議 取 消 訴 訟 の 提 訴 期 間 で あ る 株 主 総 会 決 議 の 3 カ 月 経 過 後 に 、 予 備 的 請 求 と し て 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 提 起 し た 事 案 に お い て 、 当 初 の 株 主 総 会 決 議 無 効 確 認 の 訴 え に お い て 決 議 無 効 原 因 と し て 主 張 さ れ た 瑕 疵 が 、 決 議 取 消 原 因 に 該 当 し て い る 場 合 で あ れ ば 、 当 初 の 決 議 無 効 確 認 の 訴 え が 総 会 決 議 取 消 訴 訟 の 原 告 適 格 ・ 提 訴 期 間 を 遵 守 し て い る の で あ れ ば 、 提 訴 期 間 経 過 後 の 請 求 の 追 加 も 適 法 で あ る と 判 断 し た15。 1 5 そ の 理 由 と し て 最 高 裁 は 、「 商 法 が 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 と 同 無 効 確 認 の 訴 と を 区 別 し て 規 定 し て い る の は 、 右 決 議 の 取 消 原 因 と さ れ る 手 続 上 の 瑕 疵 が そ の 無 効 原 因 と さ れ る 内 容 上 の 瑕 疵 に 比 し て そ の 程 度 が 比 較 的 軽 い 点 に 着 目 し 、 会 社 関 係 に お け る 法 的 安 定 要 請 の 見 地 か ら こ れ を 主 張 し う る 原 告 適 格 を 限 定 す る と と も に 出 訴 期 間 を 制 限 し た こ と に よ る も の で あ つ て 、 も と も と 、 株 主 総 会 決 議 の 取 消 原 因 と 無 効 原 因 と で は 、 そ の 決 議 の 効 力 を 否 定 す べ き 原
裁判例の中の吸収説 こ れ に 対 し て 、最 判 昭 和 51・12・24 民 集 30 巻 11 号 1076 頁 は 、提 訴 期 間 内 に 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 提 起 し て い た 場 合 で あ っ て も 、 当 初 主 張 し て い た 取 消 事 由 ( 議 決 権 代 理 行 使 資 格 制 限 の 定 款 規 定 が あ る に も か か わ ら ず 地 方 公 共 団 体 株 主 の 職 員 ・ 法 人 株 主 の 従 業 員 に よ る 議 決 権 行 使 を 認 め て い た と い う 決 議 方 法 の 定 款 違 反 ) と は 異 な る 新 た な 取 消 事 由 ( 個 人 株 主 の 議 決 権 代 理 行 使 を 認 め な か っ た こ と が 株 主 平 等 原 則 違 反 と い う 決 議 方 法 の 法 令 違 反 に 該 当 す る こ と ) を 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 提 訴 期 間 後 に お こ な う こ と は 認 め ら れ な い と 判 断 し た 。 こ の 事 案 は 、 法 律 構 成 が 株 主 総 会 の 取 消 事 由 と い う 同 一 の も の で あ っ て も 、 事 実 と し て の 救 済 の 対 象 ( 瑕 疵 ) が 異 な る と 提 訴 期 間 規 制 は 「 救 済 の 対 象 の 同 一 性 」 を 基 準 に 個 別 に 課 す と 判 断 し た も の で あ ろ う 。 ほ か に も 、新 株 発 行 に 関 し て 、最 判 平 成 5・12・16 民 集 47 巻 10 号 5423 頁 は 、 新 株 発 行 差 止 訴 訟 を 提 起 し て い た と こ ろ 、 差 止 仮 処 分 が な さ れ て い た に も か か わ ら ず 会 社 が 新 株 発 行 を し た と い う 事 案 に お い て 、 原 告 株 主 が 、 新 株 発 行 無 効 の 訴 え に 変 更 す る 旨 の 申 し 立 て が 、 新 株 発 行 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 を 経 過 し て い た 場 合 で あ っ て も 、 提 訴 期 間 を 遵 守 し た も の と し て 扱 う と 判 断 し た 。 同 最 判 は 、 訴 え の 変 更 も 原 則 と し て 新 た な 訴 え の 提 起 で あ る の で 、 変 更 時 に 提 訴 期 間 を 遵 守 し て い る 必 要 が あ る と こ ろ 、「 変 更 前 後 の 請 求 の 間 に 存 す る 関 係 か ら 、変 更 後 の 新 請 求 に 係 る 訴 え を 当 初 の 訴 え の 提 起 時 に 提 起 さ れ た も の と 同 視 す る こ と が で き る 特 段 の 事 情 が あ る と き 」 と い う 基 準 を 満 た せ ば 変 更 前 の 訴 え の 提 起 時 点 が 提 訴 期 間 判 断 の 基 準 時 と な る こ と を 認 め た も の で あ る 。 こ こ で も 「 救 済 の 対 象 の 同 一 性 」 基 準 が 用 い ら れ て い る 。 昭 和 36 年 仙 台 地 裁 の よ う に 形 成 訴 訟 性 を 強 調 し た 解 釈 を し た 場 合 の 一 番 の 不 都 合 は 、 原 告 が 救 済 手 段 ・ 訴 え の 種 類 を 誤 り 、 そ れ が 事 後 的 に 発 覚 し た 場 合 に 提 訴 期 間 を 徒 過 し て い る と い う 場 面 で 、 原 告 の 救 済 方 法 が 認 め ら れ な い の は 酷 で は な い か と い う こ と で あ ろ う 。し か し 、昭 和 36 年 仙 台 地 裁 を 含 む 裁 判 例・判 例 は 、 提 訴 期 間 の 基 準 時 を 、 法 律 構 成 ・ 請 求 に 形 式 に こ だ わ ら ず に 、 柔 軟 に 解 釈 し 、 救 済 を 広 く 認 め て い く と い う 方 法 で 解 決 し て い る 。 そ し て 、 こ の こ と は 、 吸 収 説 を と る メ リ ッ ト の 1 つ で あ る 提 訴 関 係 の 複 雑 さ を 解 決 す る も の で あ り 、 吸 収 説 を 採 用 す る 必 要 性 を 否 定 す る 方 向 に 働 く も の で あ る 。 因 と な る 点 に お い て そ の 間 に 差 異 が あ る た め で は な い 。 こ の よ う な 法 の 趣 旨 に 照 ら す と 、 株 主 総 会 決 議 の 無 効 確 認 を 求 め る 訴 に お い て 決 議 無 効 原 因 と し て 主 張 さ れ た 瑕 疵 が 決 議 取 消 原 因 に 該 当 し て お り 、 し か も 、 決 議 取 消 訴 訟 の 原 告 適 格 、 出 訴 期 間 等 の 要 件 を み た し て い る と き は 、 た と え 決 議 取 消 の 主 張 が 出 訴 期 間 経 過 後 に な さ れ た と し て も 、 な お 決 議 無 効 確 認 訴 訟 提 起 時 か ら 提 起 さ れ て い た も の と 同 様 に 扱 う の を 相 当 と し 、 本 件 取 消 訴 訟 は 出 訴 期 間 遵 守 の 点 に お い て 欠 け る と こ ろ は な い 」 と 述 べ た 。
裁判例の中の吸収説
(2) 合 併 の 効 力 が 問 題 と な っ た 裁 判 例
こ れ に 対 し て 、 合 併 無 効 の 訴 え の 中 で 株 主 総 会 決 議 の 欠 缺 が 問 題 と な っ た 事 案 も 存 在 す る 。 a) 東 京 地 判 昭 和 30・ 2 ・ 28 判 時 46 号 3 頁 : 総 会 決 議 無 効 の 事 案 東 京 地 判 昭 和 30・2・28 判 時 46 号 3 頁 も 吸 収 説 を 採 用 し た も の と 扱 わ れ る こ と が あ る 。 し か し こ の 事 件 は 、 合 併 承 認 株 主 総 会 決 議 に つ い て 株 主 総 会 決 議 取 消 で は な く 株 主 総 会 決 議 無 効 確 認 の 訴 え を 提 起 し た と こ ろ 、 合 併 無 効 の 訴 え に よ る べ き と 判 示 し た も の で あ る 。株 主 総 会 決 議 無 効 確 認 の 訴 え( 会 830II)は 確 認 の 訴 え で あ り 、 形 成 訴 訟 性 は 認 め ら れ て お ら ず 、 2 つ の 形 成 訴 訟 性 の 相 克 と い う 本 稿 の 問 題 は 生 じ て い な い 。 こ の 場 合 に 形 成 訴 訟 は 合 併 無 効 の 訴 え の み で あ る 以 上 、 同 訴 え に よ る べ き と い う の は 当 然 で あ る 。 b) 東 京 地 判 昭 和 38・ 11・ 28 判 タ 156 号 204 頁 : 規 範 的 不 存 在 の 事 案 東 京 地 判 昭 和 38・ 11・ 28 判 タ 156 号 204 頁 は 、 合 併 承 認 ・ 合 併 報 告 決 議 の 株 主 総 会 に お い て 全 株 主 に 招 集 通 知 を 発 送 し な か っ た こ と を 合 併 無 効 原 因 に 該 当 す る と し て 、株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 要 せ ず に 、合 併 無 効 の 訴 え を 認 め た 。だ が 、 昭 和 38 年 東 京 地 判 は 、こ の 判 断 の 中 で 、「 合 併 契 約 書 承 認 及 び 合 併 報 告 総 会 の 決 議 が あ つ た と す る も 株 主 の 会 合 に よ る 申 合 せ に 止 り 当 該 株 主 総 会 の 決 議 と 云 う こ と は で き な い 」 と 述 べ て い る 。 つ ま り 、 株 主 全 員 に 招 集 通 知 を 送 ら な か っ た と い う こ と は 、 単 な る 招 集 手 続 の 法 令 違 反 と し て 決 議 取 消 事 由 と な る に と ど ま ら ず 、 そ も そ も 総 会 決 議 が 存 在 し な い と い う 決 議 不 存 在 ( い わ ゆ る 規 範 的 不 存 在 ) に 該 当 す る と 判 断 し て い る の で あ る16。 決 議 不 存 在 で あ れ ば 、 決 議 不 存 在 確 認 の 訴 え の 対 象 と な る が 、 同 訴 え は 確 認 の 訴 え で あ り 、 形 成 訴 訟 性 は 問 題 と な ら な い 。 よ っ て 、 合 併 無 効 の 訴 え と い う 別 訴 の 中 で 事 実 と し て 主 張 す る こ と も 可 能 で あ る17。 c) 東 京 地 判 昭 和 40・ 4 ・ 22 判 時 408 号 46 頁 : 物 理 的 不 存 在 の 事 案 東 京 地 判 昭 和 40・4・22 判 時 408 号 46 頁 も 、合 併 承 認 決 議 が 物 理 的 に 不 存 在 1 6 招 集 通 知 漏 れ が 著 し い 場 合 に は 総 会 決 議 の 不 存 在 に 該 当 す る と し た も の と し て 最 判 昭 和 33・ 10・ 3 民 集 12 巻 14 号 3053 頁 ( 代 表 取 締 役 が 実 施 2 名 に 口 頭 で 招 集 を 通 知 し た だ け で 、 他 の 6 名 の 株 主 〔 議 決 権 の 42% 保 有 〕 に は 通 知 し な か っ た 事 案 ) が あ る 。 そ し て 、 こ れ ら 規 範 的 不 存 在 の 事 案 は 、 決 議 取 消 事 由 と の 限 界 が 微 妙 と な っ て い る と 指 摘 さ れ て い る ( 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 377 頁 )。 1 7 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 376 頁 な ど 。裁判例の中の吸収説 の 場 合 に 、 合 併 無 効 の 訴 え を 認 容 し た 事 案 で あ る が 、 こ れ も 不 存 在 で あ る の だ か ら 、 形 成 訴 訟 性 は 問 題 と な っ て い な い 。 d) 東 京 地 判 平 成 元・8・24 判 時 1331 号 136 頁:取 消 事 由 相 当 事 実 が 否 定 さ れ た 事 案 こ れ に 対 し て 、 吸 収 説 を と っ た 可 能 性 を 示 唆 す る 裁 判 例 も 存 在 す る 。 例 え ば 、 合 併 比 率 の 不 公 正 は 合 併 無 効 事 由 に 該 当 し な い と 判 示 し た と さ れ る 東 京 高 判 平 成 2・1・31 資 料 版 商 事 77 号 193 頁 お よ び そ の 原 審 東 京 地 判 平 成 元・8・24 判 時 1331 号 136 頁( 三 井 物 産 合 併 無 効 事 件 )は 、原 告 株 主 が 合 併 無 効 事 由 と し て 主 張 し た ① 合 併 承 認 決 議 前 に 閲 覧 に 供 さ れ た 貸 借 対 照 表 に お け る 増 資 ・ 資 産 の 評 価 替 え の 不 記 載 、 ② 合 併 比 率 の 不 公 正 の そ れ ぞ れ に つ い て 、 ① 違 法 で は な く 決 議 方 法 が 著 し く 不 公 正 な 方 法 に よ っ て な さ れ た と も 言 え な い 、 ② 決 議 内 容 は 著 し く 不 当 と は い え な い か ら 、 会 社 の 株 主 が 特 別 利 害 関 係 人 と し て 議 決 権 を 行 使 し た か ど う か の 点 に つ い て 判 断 す る ま で も な い と 判 断 し て 、 請 求 を 棄 却 し た18。 こ れ ら の 判 断 部 分 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 事 由 を 想 起 さ せ る も の で あ り 、 株 主 総 会 決 議 取 消 事 由 該 当 性 を 否 定 し た も の と 読 め る 。 同 事 件 の 請 求 は 合 併 無 効 の 訴 え の み で あ り 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え は 提 起 さ れ て お ら ず 、 合 併 無 効 の 訴 え の 中 の 主 張 レ ベ ル で 「 原 告 は 本 件 合 併 に は 合 併 無 効 事 由 と 本 件 承 認 決 議 の 取 消 事 由 と が あ る と 主 張 」 し て い る と 裁 判 所 は 整 理 し て い る 。 こ の よ う な 整 理 を 否 定 せ ず に 、 取 消 事 由 の 判 断 を し た と い う こ と は 、 裁 判 所 が 吸 収 説 を 前 提 と し て い る と 理 解 す る こ と も で き る 。 だ が 、 同 判 決 は 、 取 消 事 由 が な い と 判 断 し て い る 。 取 消 事 由 が あ れ ば 、 合 併 無 効 が 認 め ら れ る こ と は 明 言 し て い な い 。 す な わ ち 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 を 合 併 無 効 の 訴 え が ど の よ う に 乗 り 越 え る の か は 判 断 し て い な い の で あ る 。 e) 千 葉 地 判 平 成 14・ 4 ・ 12LEX/DB2807195119: 農 協 の 合 併 吸 収 説 を 明 示 し た 裁 判 例 が な い わ け で は な い 。 5 つ の 農 業 協 同 組 合 が 合 併 す る 旨 の 臨 時 総 会 特 別 決 議 が な さ れ た 事 案 に お い て 、 1 つ の 農 協 の 組 合 員 が 、 ① 招 集 1 8 こ れ に 対 し て 、 同 事 件 で は 、 合 併 比 率 の 不 公 正 は 株 式 買 取 請 求 権 に よ っ て 救 済 さ れ る こ と を 理 由 に 合 併 無 効 原 因 に 該 当 し な い と し た 判 断 は 、「 仮 に 合 併 比 率 が 著 し く 不 公 正 な 場 合 に は , そ れ が 合 併 無 効 事 由 に な る と の 控 訴 人 の 主 張 を 前 提 に し て も 」 と い う 留 保 の 下 に な さ れ た 傍 論 で あ る 。 1 9 裁 判 所 ウ ェ ブ サ イ ト ( http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail 4 ?id=6218) も 参 照 。
裁判例の中の吸収説 通 知 漏 れ20、② 合 併 決 議 の 採 決 の 違 法21を 理 由 に 総 会 決 議 取 消 の 訴 え( 農 業 協 同 組 合 法 47 条・平 成 17 改 正 前 商 法 247I)を 提 起 し た 。同 事 件 で は 、合 併 の 臨 時 総 会 決 議 は 平 成 12 年 9 月 30 日 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え 提 起 が 平 成 12 年 12 月 19 日 で あ っ た と こ ろ 、 当 該 合 併 は 、 平 成 12 年 12 月 28 日 に 合 併 が 千 葉 県 知 事 に よ っ て 認 可( 農 協 法 65II)を 受 け 、平 成 13 年 1 月 4 日 、合 併 の 登 記( 農 協 法 79 条 )が な さ れ た 。 千 葉 地 裁 は 、 合 併 の 登 記 に よ っ て 合 併 の 効 力 が 発 生 し た 後 は 、 合 併 無 効 の 訴 え に よ る べ き で あ り 、 合 併 に 係 る 決 議 の 取 消 訴 訟 は 訴 え の 利 益 を 失 う と 判 断 し た 。 そ し て 、 合 併 の 効 力 発 生 か ら 6 カ 月 の 合 併 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 内 に 合 併 無 効 の 訴 え へ と 訴 え の 変 更 手 続 き を 申 し 立 て る 必 要 が あ り 、 そ れ を し な か っ た 以 上 、 決 議 取 消 の 訴 え は 訴 え の 利 益 喪 失 を 理 由 に 却 下 さ れ る と 判 断 し た 。 ま さ に 、 吸 収 説 の 見 解 を 採 用 し た 裁 判 例 で あ る 。 だ が 、 若 干 の 留 保 が 必 要 と な る 。 ま ず 、 確 か に 、 同 判 決 は 、 合 併 無 効 の 訴 え へ の 「 変 更 」 が 必 要 で あ る と 判 示 し た 。 だ が 、 本 件 で 取 消 の 訴 え の 訴 え の 利 益 が 喪 失 し た 理 由 は 、 合 併 無 効 の 訴 え が な さ れ て い な い こ と で あ っ て 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え そ の も の を 、 合 併 無 効 の 訴 え に 「 変 更 」 す る こ と で 、 消 滅 さ せ る 理 由 は 述 べ ら れ て い な い 。 す な わ ち 、 合 併 の 効 力 に つ い て の 形 成 訴 訟 性 が 問 題 と な っ た の で あ っ て 、総 会 決 議 の 訴 え の 利 益 が 消 滅 し た と い う の は そ の 付 随 的 効 果 に 過 ぎ な い 。 合 併 承 認 決 議 取 消 の 訴 え に 加 え て 、 合 併 無 効 の 訴 え が 必 要 で あ る と い う 意 味 で の 「 併 存 説 」( の 1 つ の バ ー ジ ョ ン ) を 否 定 し て い な い の で あ る 。 当 該 事 件 に は 、 ほ か に も い く つ か 特 殊 性 が あ る 。 顕 著 な 点 と し て は 、 当 該 事 件 は 、 会 社 で は な く 農 協 の 合 併 の 事 案 で あ る 点 が 挙 げ ら れ る 。 平 成 14 年 千 葉 地 裁 が 、 合 併 無 効 の 訴 え を 必 要 と し た 理 由 は 、 合 併 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 や 遡 及 効 の 否 定 に お い て 決 議 取 消 の 訴 え と の 差 異 が あ る 点 な ど で あ る が 、そ れ に 加 え て 、「 農 協 法 と こ れ を 受 け た 商 法 が こ の よ う に 合 併 の 有 効 性 そ の も の を 対 象 と す る 訴 え を 特 別 に 設 け て い る 意 義 」 と 述 べ て お り 、 農 協 法 の 存 在 を 根 拠 に 挙 げ て い る 。 そ し 2 0 原 告 組 合 員 の 主 張 に よ れ ば 正 組 合 員 2990 名 中 720 名 に 通 知 漏 れ が あ っ た と さ れ て い る ( た だ し 裁 判 所 に は 認 定 さ れ て い な い )。 2 1 原 告 組 合 員 の 主 張 に よ れ ば 、 農 業 協 同 組 合 の 合 併 に は 総 組 合 員 の 3 分 の 2 の 賛 成 が 必 要 で あ る と こ ろ 、 被 告 農 業 組 合 は 、 出 席 組 合 員 の 3 分 の 2 に よ っ て 合 併 承 認 決 議 が 成 立 し た と 判 断 し た 点 が 決 議 方 法 の 法 令 違 反 に 該 当 す る と し て い る 。 だ が 、 こ の よ う な 原 告 の 主 張 が 正 し け れ ば そ も そ も 決 議 は 有 効 に 成 立 し て い な い と い う べ き ( 不 存 在 の 事 案 ) で は な い か と い う 疑 問 が あ る の み な ら ず 、 合 併 の 承 認 要 件 を 定 め る 農 業 協 同 組 合 法 46 条 2 号 は 「 次 の 事 項 は 、 総 組 合 員 ・ ・ ・ の 半 数 ( こ れ を 上 回 る 割 合 を 定 款 で 定 め た 場 合 に あ っ て は 、 そ の 割 合 ) 以 上 が 出 席 し 、 そ の 議 決 権 の 三 分 の 二 ( こ れ を 上 回 る 割 合 を 定 款 で 定 め た 場 合 に あ っ て は 、 そ の 割 合 ) 以 上 の 多 数 に よ る 決 議 を 必 要 と す る 」 と 定 め て お り 、 平 成 17 年 改 正 前 商 法 343 条 1 項 ( 定 款 変 更 の 株 主 総 会 特 別 決 議 の 要 件 ) と 同 一 の 文 言 を 採 用 し て お り 、 同 条 は 、 現 行 会 社 法 309 条 2 項 同 様 、 総 株 主 で は な く 出 席 株 主 の 3 分 の 2 で 特 別 決 議 は 成 立 す る も の と 理 解 さ れ て い た 。
裁判例の中の吸収説 て 、「 千 葉 県 知 事 に よ る 本 件 合 併 の 認 可 が さ れ 」と 、県 知 事 に よ る 合 併 認 可 が な さ れ て い る 点 を 強 調 し て い る 。 さ ら に 、同 判 決 は 、す で に 合 併 無 効 の 訴 え の 提 訴 期 間 で あ る 合 併 の 効 力 発 生( 合 併 登 記 ) か ら 6 カ 月 間 が 経 過 し て か ら な さ れ て お り 、 も は や 合 併 無 効 の 訴 え を 提 起 す る こ と も で き な い 。 こ れ は 、 従 来 の 最 高 裁 が と っ て き た 提 訴 期 間 の 柔 軟 な 解 釈 の 背 後 に あ る 救 済 を 広 く 認 め る と い う ポ リ シ ー に 反 す る も の に み え る 。平 成 14 年 千 葉 地 判 に お け る 法 廷 内 で の 訴 訟 指 揮 が ど の よ う に な さ れ て い た の か わ か ら ず 、 仮 に 、 裁 判 所 が 、 取 消 事 由 と し て 主 張 し て い る 事 実 と 同 一 事 実 を 無 効 原 因 と す る 合 併 無 効 の 訴 え へ の 訴 え の 変 更 ( な い し 請 求 の 追 加 ) で あ れ ば 、 提 訴 期 間 経 過 後 で あ っ て も 認 め る こ と を 示 唆 し な が ら 、 訴 え の 変 更 を 求 め る 訴 訟 指 揮 を し て い た に も か か わ ら ず 、 原 告 側 が 総 会 決 議 取 消 の 訴 え に 固 執 し た が ゆ え 、 訴 え の 変 更 ・ 追 加 が な さ れ な か っ た の で あ れ ば 、 こ の よ う な 判 決 が な さ れ て も や む を 得 な い 。 だ が 、 訴 え の 変 更 ・ 追 加 も 認 め な い 旨 の 訴 訟 指 揮 が な さ れ た 上 で こ の よ う な 判 決 が な さ れ た と す れ ば 、 従 前 の 最 高 裁 判 例 の 採 用 し て き た ポ リ シ ー に 反 す る 。 そ し て 、 こ の よ う な 異 な る ポ リ シ ー を 平 成 14 年 千 葉 地 判 が 採 用 し た こ と が 仮 に 正 当 化 さ れ る と す れ ば 、 同 事 案 が 、 会 社 で は な く 、 農 協 の 事 案 で あ り 、 既 に 知 事 の 認 可 が な さ れ る な ど 、 公 的 に 合 併 を 認 証 す る か の 手 続 が 履 行 さ れ て お り 、 利 害 関 係 人 の 範 囲 が 非 常 に 広 範 に な っ て し ま う と い う 点 に 違 い が あ る こ と が 挙 げ ら れ る22。 f) 東 京 高 判 平 成 22・7・7 判 時 2095 号 128 頁23:キ ャ ッ シ ュ ア ウ ト 後 の 合 併 そ の 後 も 、 併 存 説 を 採 用 し た と ま で は 言 え ず と も 、 形 成 訴 訟 性 を 尊 重 し た 裁 判 例 が 続 く 。 と り わ け 、 東 京 高 判 平 成 22・ 7 ・ 7 判 時 2095 号 128 頁 は 、 合 併 無 効 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 を 強 調 す る 。 同 事 件 で は 、 A 社 の 株 主 が 、 平 成 20 年 9 月 26 日 に 、 A 社 株 主 総 会 決 議 に 基 づ き 、 全 部 取 得 条 項 付 種 類 株 式 を 用 い た キ ャ ッ シ ュ ア ウ ト に よ っ て A 社 株 主 た る 地 位 を 失 っ た 。 A 社 は 、 そ の 後 、 平 成 21 年 1 月 1 日 に B 社 に 吸 収 合 併 ( 合 併 比 率 は 1 : 6,355.66127 株 ) さ れ 、 そ の B 社 は 平 成 21 年 2 月 1 日 に C 社 に 吸 収 合 併 ( 現 金 対 価 合 併 ) さ れ た 。 2 2 同 じ く 吸 収 説 を 採 用 し た と 整 理 さ れ る こ と が あ る 最 判 昭 和 49・ 9 ・ 26 民 集 28 巻 6 号 1283 頁 ( 前 掲 注 (13)参 照 ) も 、 県 知 事 の 設 立 認 可 を 受 け た 商 工 組 合 の 設 立 が 問 題 と な っ た 事 案 で あ る 。 2 3 判 例 評 釈 と し て 弥 永 真 生 ・ ジ ュ リ ス ト 1407 号 ( 2010) 106 頁 、 山 本 爲 三 郎 ・ 金 融 ・ 商 事 判 例 1357 号 ( 2011) 2 頁 、 藤 原 俊 雄 ・ 商 事 法 務 1921 号 ( 2011) 14 頁 、 鳥 山 恭 一 ・ 法 学 セ ミ ナ ー 677 号 ( 2011) 123 頁 、 若 林 茂 雄 ほ か ・ 商 事 1910 号 ( 2010) 61 頁 、 宗 小 春 ・ ジ ュ リ ス ト 1429 号 ( 2011) 140 頁 、 松 井 智 予 ・ ジ ュ リ ス ト 臨 時 増 刊 1420 号 〔 平 成 22 年 度 重 判 〕 ( 2011) 132 頁 、 新 谷 勝 ・ 日 本 大 学 法 科 大 学 院 法 務 研 究 8 号 ( 2012) 83 頁 、 片 木 晴 彦 ・ 法 学 教 室 387 号 ( 2012) 128 頁 、 松 井 秀 征 ・ 法 学 教 室 別 冊 付 録 366 号 〔 判 例 セ レ ク ト 2010- 2 〕( 2011) 17 頁 、 田 中 勇 気 ・ ジ ュ リ ス ト 増 刊 〔 実 務 に 効 く M & A ・ 組 織 再 編 判 例 精 選 〕 ( 2013) 104 頁 、 三 原 園 子 ・ 関 東 学 院 法 学 23 巻 4 号 ( 2014) 119 頁 が あ る 。
裁判例の中の吸収説 原 審 で あ る 東 京 地 判 平 成 21・ 10・ 23 金 判 1347 号 27 頁 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 原 告 適 格 で あ る 「 株 主 」 で あ る こ と が 必 要 で あ り 、 こ れ を 口 頭 弁 論 終 結 時 ま で に 満 た す 必 要 が あ る と し て 、そ れ ま で に A 社 と B 社 の 吸 収 合 併 お よ び B 社 と C 社 の 吸 収 合 併 の そ れ ぞ れ に つ い て 合 併 無 効 の 訴 え を 提 起 し 、請 求 認 容 判 決 を 確 定 さ せ る 必 要 が あ る と 判 断 し 、 合 併 無 効 の 訴 え を 提 起 す ら し て い な い 当 該 事 件 の 原 告 の 原 告 適 格 を 否 定 し た 。 こ れ は 、 合 併 無 効 の 訴 え と 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 2 つ を 要 求 す る と い う 限 り で は 併 存 説 的 で は あ る が 、 他 方 で 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 口 頭 弁 論 終 結 時 ま で に 、 予 め 、 合 併 無 効 の 訴 え の 請 求 認 容 判 決 の 確 定 を 要 求 す る と い う 点 で 、 2 つ の 手 続 の 同 時 進 行 を 認 め る も の で は な く 、 一 方 を 先 に す す め る こ と を 要 求 す る 点 で 、 吸 収 説 の ポ リ シ ー に 明 確 に 反 す る だ け で な く 、 併 存 説 の 通 常 の 理 解 に も 反 す る も の で も あ り 、 原 告 に 対 し て 非 常 に 酷 な 要 求 を す る も の と い え る 。 こ れ に 対 し て 、 控 訴 審 で あ る 東 京 高 判 平 成 22・ 7 ・ 7 判 時 2095 号 128 頁 は 、 結 論 は 原 審 と 同 様 、 訴 え 却 下 を 維 持 し た も の で あ る が 、 そ の 理 由 付 け は 大 き く 異 な る 。一 方 で は 、当 該 事 件 の 原 告 が 提 起 し て い な い B 社 と の 合 併 無 効 の 訴 え お よ び C 社 と の 合 併 無 効 の 訴 え の 原 告 適 格 に つ い て 、キ ャ ッ シ ュ ア ウ ト の 株 主 総 会 決 議 へ の 取 消 の 訴 え が 認 容 さ れ れ ば 株 主 た る 地 位 を 回 復 す る こ と か ら 、「 会 社 法 828 条 2 項 7 号 所 定 の 合 併 の 効 力 発 生 日 に 『 吸 収 合 併 を す る 会 社 の 株 主 で あ っ た 者 』 に 該 当 す る 」と 判 示 す る 。そ し て 、カ ッ コ 書 き を 続 け 、そ の 中 で 、「 た だ し 、決 議 取 消 訴 訟 ( 本 件 訴 訟 ) の 敗 訴 判 決 確 定 を 、 原 告 適 格 を 有 す る こ と の 解 除 条 件 と す る 」と 加 え る24。こ れ は 、合 併 無 効 の 訴 え と 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と を 併 合 提 起 す る こ と を 要 求 す る も の で あ る 。 こ の 事 件 で 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 対 象 と し て 問 題 と な っ て い る 株 主 総 会 決 議 は 、 吸 収 合 併 の 承 認 決 議 で は な く 、 そ の 前 の キ ャ ッ シ ュ ア ウ ト に 関 す る も の で あ る の で 、 本 稿 の 分 析 対 象 と し た い 課 題 そ の も の に つ い て の 判 示 で は な い 。 だ が 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 吸 収 合 併 無 効 の 訴 え の 双 方 の 形 成 訴 訟 性 を 尊 重 し て い る 点 で 、 併 存 説 と 非 常 に 親 和 的 で あ る 。 他 方 で 、 当 該 事 件 の 解 決 と し て 、 訴 え 却 下 を 維 持 し た 理 由 は 、 吸 収 合 併 無 効 の 訴 え を 併 合 提 起 し て い な か っ た 点 を 挙 げ る 。こ の 点 も 、併 存 説( の 1 バ ー ジ ョ ン ) 2 4 本 文 は 、 A 社 か ら B 社 へ の 吸 収 合 併 の 無 効 の 訴 え の 原 告 適 格 に つ い て 判 示 し た 点 で あ る 。 B 社 の C 社 へ の 吸 収 合 併 の 点 に つ い て は 、「 本 件 決 議 に 決 議 取 消 事 由 が あ る 場 合 に は 、 そ の 決 議 取 消 訴 訟 を 提 起 し た X ら は 、 B 社 の C 社 へ の 吸 収 合 併 に つ い て も 、 前 記 と 同 様 の 理 由 に よ り 、 会 社 法 828 条 2 項 7 号 の 『 吸 収 合 併 を す る 会 社 の 株 主 で あ っ た 者 』 に 該 当 す る も の と し て 、 合 併 無 効 の 訴 え の 原 告 適 格 を 有 す る ( た だ し 、 A 社 の B 社 へ の 吸 収 合 併 に つ い て 法 定 の 期 間 内 に 合 併 無 効 の 訴 え を 提 起 し て い る こ と が 必 要 で あ り 、 か つ 、 決 議 取 消 訴 訟 ( 本 件 訴 訟 ) 又 は A 社 の B 社 へ の 吸 収 合 併 の 無 効 の 訴 え の 敗 訴 判 決 確 定 を 原 告 適 格 の 解 除 条 件 と す る 。)」 と 判 示 す る 。
裁判例の中の吸収説 に 非 常 に 親 和 的 で あ る25。
4.
学 説 と し て の 吸 収 説 ・ 併 存 説 の 想 定 す る 形 成 訴 訟 性
本 稿 の 準 備 作 業 で は 、「 吸 収 説 」を 最 初 に 提 唱 し た の は 誰 な の か 、そ し て「 吸 収 説 」と い う 用 語 法 が い つ か ら 確 立 し た の か ま で は 明 ら か に で き な か っ た26。だ が 、 「 吸 収 説 」 と い う 用 語 は 用 い な い も の の 、 田 中 耕 太 郎 は 、 既 に 「 合 併 の 決 議 に つ い て 総 会 決 議 の 無 効 ま た は 取 消 の 訴( 商 252 条 249 条 )を 提 起 で き る か ど う か に つ い て は 、 決 議 の 無 効 ま た は 取 消 は 当 然 に 合 併 の 無 効 を 招 来 す る か ら 、 合 併 の 無 効 の 訴 に よ っ て の み 主 張 で き る も の と 解 す る27」 と し て い た 。 こ の 田 中 耕 太 郎 の 説 は 、 近 時 、 通 説 と さ れ る 吸 収 説 が 合 併 の 効 力 発 生 前 後 を 総 会 決 議 取 消 と 合 併 無 効 の 訴 え と を 切 り 替 え る タ イ ミ ン グ と し て い る の に 対 し て 、 合 併 承 認 の 株 主 総 会 決 議 時 を 切 り 替 え の タ イ ミ ン グ と し て い る 点 で 違 い が あ る28。 だ が 、 総 会 決 議 の 取 消 し の 訴 え の 形 成 訴 訟 性29を 認 め て お き な が ら 、 合 併 無 効 の 訴 え に よ っ て 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 を 飲 み 込 ん で い る 点 で は 、 吸 収 説 と 共 通 す る 。 そ し て 、そ の 根 拠 と し て 挙 げ て い る の が 、「 決 議 の 無 効 ま た は 取 消 は 当 然 に 合 併 の 無 効 を 招 来 す る か ら 」 と い う 点 で あ る も の の 、 理 論 的 な 説 明 に な っ て い な い 。 当 然 に 合 併 の 無 効 を 招 来 す る な ら ば 、 決 議 の 無 効 ・ 取 り 消 し の 訴 え の 中 で 合 併 無 効 を 争 わ せ る と い う 方 法 も あ っ て よ い は ず で あ る し 、 合 併 無 効 の 訴 え と 決 議 取 消 の 訴 え の 双 方 の 形 成 訴 訟 性 を 尊 重 す れ ば 、 併 合 提 起 と い う 解 決 も あ る は ず で あ る 。 こ の よ う に 吸 収 説 は 、 形 成 訴 訟 性 を 克 服 す る 説 明 に 成 功 し て い な い 。 こ れ に 対 す る 見 解 と し て 、 併 存 説 が 存 在 す る わ け で あ る が 、 形 成 訴 訟 性 と い う の に 着 目 し た 場 合 、 併 存 説 に は 2 つ の 対 局 的 な 地 位 に あ る 立 場 が 存 在 す る こ と に 留 意 が 必 要 で あ る 。 ま ず 、 近 時 、 併 存 説 が 注 目 さ れ て い る 一 番 の 理 由 は 江 頭 憲 治 郎 の 体 系 書 が 採 用 し て い る と い う 点 で あ ろ う 。 だ が 、 江 頭 の 説 く 併 存 説 は 、 従 前 の 形 成 訴 訟 性 と の 矛 盾 を 回 避 し た 併 存 説 ( の 1 つ の バ リ エ ー シ ョ ン ) と は 大 き く 異 な る 。 江 頭 は 、 2 5 藤 原 ・ 前 掲 注 (23)文 献 20 頁 。 こ れ に 対 し て 同 判 決 を 吸 収 説 を 前 提 と し て も 成 り 立 ち う る と す る も の と し て 田 中 ・ 前 掲 注 (23)文 献 109 頁 、 三 原 ・ 前 掲 注 (23)文 献 134 頁 、 髙 山 崇 彦 「 複 数 の 訴 訟 が 関 連 す る 場 合 の 取 扱 い 」 神 作 裕 之 ほ か 編 『 会 社 裁 判 に か か る 理 論 の 到 達 点 』 ( 商 事 法 務 ・ 2014) 334 頁 。 2 6 上 柳 ほ か ・ 前 掲 注 (7)文 献 355 頁 〔 岩 原 〕 で は 吸 収 説 の 支 持 者 と し て 引 用 さ れ て い る の は 主 に 体 系 書 で あ る 。 2 7 田 中 耕 太 郎 『 改 訂 会 社 法 概 論 ・ 下 』( 岩 波 書 店 ・ 1955) 561 頁 。 2 8 上 柳 克 郎 ほ か 編 『 新 版 注 釈 会 社 法 ( 13)』( 有 斐 閣 ・ 1990) 244 頁 〔 小 橋 一 郎 〕。 2 9 田 中 ・ 前 掲 注 (27)文 献 376 頁 。裁判例の中の吸収説 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 吸 収 合 併 無 効 の 訴 え と の 比 較 に お い て 、 遡 及 効 の 有 無 に 着 目 す る 。 吸 収 合 併 無 効 の 訴 え の 請 求 認 容 判 決 の 効 力 は 将 来 効 に と ど ま る と こ ろ 、平 成 17 年 会 社 法 に よ っ て 、 組 織 再 編 行 為 で も 債 権 者 異 議 手 続 が な い も の 、 株 券 提 出 手 続 が な い も の( 株 券 発 行 会 社 で な い も の )、そ し て こ れ ら の 手 続 が あ っ て も 株 主 総 会 承 認 決 議 よ り も 先 に 開 始 す る も の な ど が あ り 、 総 会 決 議 の 翌 日 に は 組 織 再 編 行 為 の 効 力 が 発 生 し か ね な い 点 を 強 調 す る 。従 来 の 吸 収 説 が 想 定 し て い た 組 織 再 編 は 、 承 認 総 会 決 議 か ら 効 力 発 生 ま で に 最 低 1 カ 月 ( 債 権 者 異 議 手 続 ・ 株 券 提 出 手 続 な ど の た め ) が か か り 、 そ の 間 に 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え を 本 案 に 組 織 再 編 行 為 差 し 止 め の 仮 処 分 が 可 能 で あ っ た 。し か し 、平 成 17 年 会 社 法 下 で は 、わ ず か 1 日 の 間 に 仮 処 分 を 得 る こ と は 不 可 能 で 、 合 併 無 効 の 訴 え で 請 求 認 容 判 決 を 勝 ち 得 て も 、 遡 及 効 が 存 在 し な い 。 そ こ で 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え は 、 吸 収 合 併 無 効 の 訴 え と 異 な り 、 遡 及 効 が あ る 救 済 で あ る 点 に 着 目 し 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と い う 方 法 を 別 途 認 め る こ と で 遡 及 効 の あ る 救 済 を 認 め る べ き と い う の が 江 頭 の 併 存 説 で あ る30。 こ の よ う な 江 頭 の 併 存 説 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え に よ っ て 、 合 併 の 無 効 と い う 効 力 が 発 生 す る こ と を 認 め る と い う も の で あ る 。 こ の 解 釈 は 、 合 併 無 効 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 と 矛 盾 す る も の で あ る 。 こ れ に 対 し て 、 本 稿 が こ こ ま で 併 存 説 ( の 1 バ ー ジ ョ ン ) と し て 紹 介 し て き た 説 は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と 合 併 無 効 の 訴 え と を 併 合 提 起 す る こ と を 要 求 す る も の で あ っ て 、 一 方 の み で 救 済 を 認 め る 可 能 性 を 広 げ る 江 頭 の 見 解 と は 真 逆 で あ る 。 こ の よ う な 形 成 訴 訟 性 を 尊 重 す る 方 向 で の 併 存 説 は 、 学 説 で も 小 橋 一 郎 ら に よ っ て 、 近 時 は 吉 本 健 一 に よ っ て 主 張 さ れ て い る31。
5.
吸 収 説 と い う 結 論 or 表 現 か ら の 離 脱
こ こ ま で 本 稿 は 、 従 来 の 吸 収 説 が 形 成 訴 訟 性 と の 矛 盾 が あ る に も か か わ ら ず 、 そ の 矛 盾 を 克 服 す る 理 論 的 説 明 が 十 分 に な さ れ て い な い こ と を 指 摘 し た 。そ し て 、 理 論 的 説 明 が な さ れ て い な い の で あ れ ば 、 克 服 を す る こ と を 考 え る べ き で あ る 。 本 稿 は 、 そ の 克 服 の バ リ エ ー シ ョ ン と し て 3 つ の 可 能 性 を 指 摘 し た い 。 ま ず は 、 3 0 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 372 頁 注 2 。 な お 、 同 779 頁 注 4 も 参 照 。 3 1 上 柳 ほ か ・ 前 掲 注 (28)文 献 245 頁 〔 小 橋 〕、 小 野 木 常 = 小 橋 一 郎 「 合 併 無 効 の 訴 え ( 1 )」 商 事 法 務 174 号 ( 1960) 25 頁 、 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 133 頁 。 そ の ほ か 従 来 の 併 存 説 の バ リ エ ー シ ョ ン に つ い て 髙 山 ・ 前 掲 注 (25)文 献 321 頁 、 新 堂 ・ 前 掲 注 (6)文 献 259 頁 参 照 。裁判例の中の吸収説 吸 収 説 を 断 念 し 、 併 存 説 を と る こ と で あ る 。 そ し て 併 存 説 に は 、 既 に 紹 介 し た よ う に 2 つ の バ リ エ ー シ ョ ン で あ る 。 そ し て も う 1 つ は 、 従 来 の 吸 収 説 と 同 じ 結 論 を 吸 収 説 と い う 用 語 を 用 い ず に 説 明 す る こ と で あ る 。
(1) 合 併 無 効 事 由 の 書 換 :「 吸 収 説 」 と い う 表 現 か ら の 離 脱
従 来 の 吸 収 説 の 問 題 の メ イ ン は 、 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 形 成 訴 訟 性 と 矛 盾 す る の に そ の 説 明 が な い と い う も の で あ っ た 。 他 方 で 、 こ れ に 伴 う 実 害 が 指 摘 さ れ て い る わ け で は な い 。 む し ろ 、 後 述 す る 併 存 説 の バ リ エ ー シ ョ ン 1 の よ う に 、 合 併 無 効 の 訴 え と 株 主 総 会 決 議 取 消 の 訴 え と い う 2 本 の 訴 え を 強 制 す る こ と の ほ う が 不 便 で あ っ て 、 一 本 の 訴 訟 に ま と め る ほ う が 当 事 者 ( と り わ け 原 告 ) に と っ て 便 宜 で あ る 。 合 併 無 効 の 訴 え の 中 に 総 会 決 議 取 消 の 訴 え が 吸 収 さ れ る 、 と い う 説 明 を や め 、 合 併 無 効 事 由 に 、「 総 会 承 認 決 議 が な い こ と 」 と は 別 の 無 効 事 由 と し て 、「 総 会 承 認 決 議 に 取 消 事 由 が あ る こ と 」 あ る い は 「 取 り 消 し う る 事 由 を 抱 え た 株 主 総 会 承 認 決 議 が な さ れ た こ と 」を 挙 げ れ ば よ い32。合 併 無 効 事 由 は 、法 文 上 、規 定 さ れ て お ら ず 、解 釈 に よ っ て 合 併 手 続 の( 著 し い )瑕 疵 と さ れ て い る だ け で あ る33。そ れ を「 合 併 契 約 に つ き 法 定 の 要 件 を 満 た す 承 認 が な い34」と し て 、承 認 決 議 が 不 存 在 の 場 合 ・ 無 効 の 場 合 と 並 べ て 、 取 消 事 由 を 抱 え て い る 場 合 を 同 時 に 説 明 し よ う と し た た め に 、 吸 収 説 と い う ロ ジ ッ ク が 必 要 に な っ た だ け で あ る と 思 わ れ る 。 そ う で あ る な ら ば 、従 来 の 通 説 の 結 論 を 維 持 す る た め に は 、「 総 会 決 議 が 取 消 の 瑕 疵 を 抱 え て い る 場 合 」は 、形 成 訴 訟 性 が 問 題 と な ら な い 総 会 決 議 が な い 場 合( 物 理 的 不 存 在 ・ 規 範 的 不 存 在 ) や 無 効 の 場 合 と は 別 の 「 合 併 手 続 の 瑕 疵 」 と 説 明 し て し ま え ば 足 り る 。 こ の よ う に 実 体 法 上 、 別 の 無 効 事 由 と し て し ま う こ と で 、 手 続 法 上 の 議 論 か ら 解 放 さ れ る と い う の は 、 従 来 も 認 め ら れ て き た 議 論 で あ る 。 例 え ば 、 新 株 発 行 無 効 の 訴 え に お け る 無 効 原 因 に お い て 、「 新 株 発 行 差 し 止 め の 仮 処 分 に 違 反 し た 場 合 」 を 、 元 来 相 対 効 し か な い 仮 処 分 の 効 力 で 説 明 す る の で は な く 、 実 体 法 上 の 1 つ の「 無 効 事 由 」と し て 考 え る こ と で 克 服 し て き た( 最 判 平 成 5・12・16 民 集 47 巻 10 号 5423 頁 )。 3 2 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 129- 130 頁 が 吸 収 説 の 第 二 の 方 法 と し て 掲 げ て い る 方 法 で あ る 。 実 際 に 、 吉 本 ・ 前 掲 注 (3)文 献 152 頁 注 14 に 列 挙 さ れ て い る 文 献 の ほ か 、 資 本 金 の 額 の 減 少 の 無 効 ( 会 828I⑤ ) の 無 効 事 由 に つ い て 、 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 700 頁 は 「 株 主 総 会 決 議 に 無 効 原 因 ・ ・ ・ ・ 取 消 原 因 ・ ・ ・ が あ る 」 を 挙 げ て い る 。 3 3 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 894 頁 な ど 。 3 4 江 頭 ・ 前 掲 注 (2)文 献 894・ 892 頁 ・ 893 頁 注 4 。裁判例の中の吸収説 こ の よ う な 説 明 に 対 し て は 、 後 述 す る 併 存 説 ( バ リ エ ー シ ョ ン 1 ) の 論 者 か ら は 、 株 主 総 会 決 議 の 取 消 事 由 は 総 会 決 議 の 瑕 疵 の 中 で も ( 無 効 や 不 存 在 と 比 較 し て ) 比 較 的 軽 微 な も の が 会 社 法 に よ っ て リ ス ト ア ッ プ さ れ て い る の に 対 し 、 解 釈 に よ り 無 効 事 由 を 重 大 な 瑕 疵 に 限 定 し て い る 組 織 再 編 無 効 の 訴 え の 無 効 事 由 と す る の は ア ン バ ラ ン ス で あ る と 指 摘 さ れ て い る35。 ま た 、 総 会 決 議 取 消 事 由 が あ る こ と が 合 併 無 効 事 由 で あ る な ら ば 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 提 訴 期 間 ( 3 箇 月 ) 経 過 に よ っ て 無 効 事 由 と な く な る と い う 性 質 を 説 明 で き な い の で は な い か と い う 疑 問 も 生 じ る 。 だ が 、 前 者 に 対 し て は 、 そ も そ も 総 会 決 議 取 消 事 由 と 無 効 事 由 と を 区 分 す る の は 瑕 疵 の 大 小 で は な く 、 第 三 者 保 護 の 観 点 か ら 法 律 関 係 を 早 期 に 安 定 化 さ せ る べ き か 否 か の 問 題 と し て 、 会 社 外 部 か ら も 瑕 疵 の 有 無 を 判 断 で き る か 否 か が 基 準 と な っ て い る に 過 ぎ ず 、 提 訴 期 間 さ え 守 れ ば 、 要 保 護 性 ・ 救 済 の 必 要 性 に 差 異 は な い と 応 答 で き よ う 。 後 者 の 疑 問 に つ い て も 、 総 会 決 議 取 消 事 由 と い う の は 、 総 会 決 議 取 消 の 訴 え の 提 訴 期 間 に よ っ て 実 体 的 に 治 癒 す る と 考 え れ ば 、 治 癒 し て い な い 総 会 決 議 取 消 事 由 を も っ て 合 併 無 効 事 由 と す る と 説 明 す れ ば 足 り る 。