びまん性肺胞出血をきたし肺に多発結節をみとめた
転移性平滑筋肉腫と思われる一例
山梨医科大学 第二内科 大木善之助 成宮賢行 西川圭一 石原裕 小澤克良 田村康二 第一病理 三俣昌子 【はじめに】 びまん性肺胞出血をきたす主な疾患には、特発性肺ヘモジデローシス,Gopd pasture 症候群,Wegener肉芽腫症, PN, S LEなどがあるが、今回我々はびまん性肺胞出血 をきたしCT画像上特徴的な所見を呈した転移性平滑筋肉腫の一例を経験したので 報告する。 【症例】 症例:25歳 女性 主訴:咳噺,血疾i 家族歴,既往歴:特記事項なし 現病歴:平成8年5月下旬より咳鰍が出現。咳噺の増悪に加え6月下旬より血疾が出 現したため6月12日近医受診。Cx−p異常を指摘され同日当科に緊急入院となる。 入院時現症:身長163cm,体重50kg,体温37.2℃,血圧110/58mmhg,脈拍74/分・ 整。皮膚にチアノーゼ、バチ指、皮疹をみとめず。結膜は貧血認めるも黄疸はなし。 表在リンパ節は触知せず。胸部は心音、呼吸音ともに清。腹部に肝脾腫を認めず。 入院時検査成績(表1) 血算ではHb9.2g/dlの正球性正色素性貧血を認めるも白血球,血小板は正常範囲内で あった。生化学では肝腎機能は正常であり、主な腫瘍マーカーではNSE10.35ng/ml, CAI2554.09u/mlと軽度な上昇を認める以外は正常範囲内であった。血清ではCRP の上昇はなく、C−ANCA, P−ANCA,抗核抗体, RAは陰性で、主な膠原病関連抗体 もいずれも陰性であった。血液ガス分析,呼吸機能検査,尿定性に異常は認めなかっ た。 入院時Cx−p(図1> やや右肺野に強く、散在性に斑状陰影を両側肺野に認める。 入院時胸部CT(図2) 両側肺野に多発する、大小不同の結節と斑状の淡い濃度上昇域を認める。 HRCT(図3) HRCTでは、結節と濃度上昇域の分布の特徴が観察される。斑状の淡い濃度上昇域 のほぼ中心部に結節が存在している。入院後経過:第3病日に気管支鏡検査を施行。ほぼ全ての可視範囲気管支末梢より 出血を認めびまん性肺胞出血の所見であった。TBLBは大量出血の危険が高いと判 断し行わず、原因疾患診断の為、当院第二外科に開胸肺生検を依頼した.右肺葉内 には、直径5∼8mm大の弾性硬な腫瘤がびまん性に存在し右S2の腫瘤を摘出し病理 組織標本とした。肥染色弱拡大像(図4)では、正常な肺胞,間質を破壊し増殖 する腫瘍細胞を認める。同標本の一部拡大像(図5,6)では、腫瘍細胞が肺血管内 に充満し腫瘍塞栓を引き起こし、血管壁を破壊し増殖しており、出血を伴っている (図5)。かろうじて構造が保たれている肺胞にも出血している所見が認められる (図6)。HE染色強拡大像(図7)では、腫瘍細胞は紡錘状の核と胞体を持つ肉腫 様の細胞であり、著しいmitosisを伴っていた。組織型を確定するため免疫組織染色 を施行した(表2)。腫瘍細胞は、CAM5.2陰性, Vimentin陽性であり非上皮由来で あり、HHF35陽性, Masson−Trichrome陽性, S−100抗原陰性, F−8抗原陰性より平滑 筋由来の平滑筋肉腫と確定診断した。肺に認められる肉腫の多くは他臓器からの転 移であること1),両側肺に多発する腫瘤であることより、本症も転移性の平滑筋 肉腫と思われた。原発巣の検索は、急速な喀血を伴う呼吸不全の進行により第30病 日に死去された為充分に行うことができず、原発巣の同定はできなかった。 【考察】 びまん性肺胞出血をきたす主な疾患には、松原らによれば2)Good pasture症候群, Wegener肉芽腫症, PN, SLE・RAなどの膠原病,特発性肺ヘモジデローシス,心不 全,肺動脈血栓塞栓症などがある(表3)。NARAらは、卵巣原発の血管肉腫の肺 転移によるびまん性肺胞出血の症例を報告しているが3)・本症例も病理組織型は 異なるものの肺胞出血の機序,CT画像上の特徴は同様と思われた。肺胞出血の機 序は、肺動静脈を塞栓した腫瘍細胞が連続的に血管壁に浸潤し破壊したためと考え られた。CT画像上の特徴は、両肺野に多発する斑状の淡い濃度上昇域とその中心 部の結節陰影であり、結節は腫瘍塞栓と周囲への浸潤を、濃度上昇域は肺胞出血を 表わしているものと思われた。びまん性肺胞出血の原因疾患として、稀ではあるが 本症例のような転移性の肉腫を考慮する必要があり、CT画像上特徴的な所見を有 すると思われた。 【参考文献】 1.中村敦:肺肉腫.日本臨床呼吸器症候群下巻1521994 2松原修:びまん性肺胞出血,ヘモジデローシス.特発性間質性肺炎とその周辺疾 患233−2381995 3.Masayuki Nara, et al:Diffuse Alveolar Hemorrhage Caused by Lung Metastasis of Ovarian Angiosarcoma. Internal Medicine Vol 35,653−656,1996.
血算 RBC Hb Ht PI{ WBC PO2 ρ⊂02 PH %v⊂ FEV1% 凝固 P丁 ∂P丁1 表1入院時樋頗 147×10“ 〆μ1 92 9/d1 BGA CrDom1,r) 呼吸槍能枝査 285 % 200×104/山 5E30 /aL geO mmH9 336 mmH9 7429 932 % 8219 % 116 秒 365 朽 生化学 下P Alb LDH 66 4.0 ヨoz 9/d1 9/dl FU/‘ GO丁 28 iu/I GPT 18 1∪.「‘ BUN IO mg/dL ⊂r O 58 mg/dl CEA 1.3[9/ml SCC O19内/ml CAI25 5409 u/mト ⊂A19・9 203 u/mt aFP 3 ∩9/mI 血溝 CRP O 3 mg/d↓ ACE 126 1U/1 ⊂ANCA <10 P」ANCA く]O 抗懐杭体 80借sp型 LEテスト (一) RA 〔一) 抗SCL・ア0抗体 陰性 抗」o・1抗体 信性 抗n『RNP抗俵 ■性 尿定性 M血 1−} i白 (一) 魔 〔一) 表2 免疫組織染色 CAM5.2 Vmentin Masson・T「ichrDme HHF35 S−|OO抗原 F−8抗原 (一) (+) (+) (±) (一) (一) 表3 びまん性肺胞出血の病因/病態 A抗糸球体基底膜{AGBM}病 (Good pasture症候群} BANCA関連の血管炎 1Wegeoer肉芽咀症 2 PN C.膠原病/免疫複合体病 1S」E 2 RA 3 Henoeh・Schongeim紫斑病 D、特発性肺ヘモジデローシス 巳化学物質/薬剤などの 外因性因子・外傷 F重罵な基礎疾患のあるもの 1心不全 2血小板減少ff・凝固陣害 G肺疾患が基礎にあるもの 1・肺勘脈血栓茎栓症 2肺高血圧症 3気菅支拡張症 松原 倍 びまん惜■■出m ヘモソデO_)ス 樟.芭間買注鼻炎とモの周辺責恒 23aよリ改変引用
図2
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図6