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3回の手術を行った肺腺癌の1症例 利用統計を見る

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平成10年9月1日

3回の手術を行った肺腺癌の1症例

山梨県立中央病院外科 三宅知雄 千葉成宏 榊原賢士 吉田竜二 高橋章弘 奥田純一 同 病理科 小山敏雄       要 旨  症例は53歳男性。右下葉(S9)原発肺癌のため下葉切除を行った。術後4年7ヶ月に 左下葉(S6)に認められた腫瘍に対して区域切除を行った。さらに3年7ヶ月後、右中葉 (S5)に腫瘍を認めて中葉切除を行い、また同時に認めた左下葉切除断端付近の腫瘍に対 し、放射線照射を行った。そして初回手術後9年8ヶ月現在担癌生存中である。組織像は 3回とも酷似しており、高分化乳頭型腺癌を中心とするもので再発と考えた。呼吸機能は 3回の手術を通して著明な低下はなかった。  再発肺癌および異時性重複癌に対して適応、術式を検討した上で再切除を行えば、予後 向上が期待できる場合もあると考えられた。 キーワード:再発肺癌、再手術、長期生存        はじめに  原発性肺癌切除後の限局性肺内転移、 または異時性重複肺癌に対して再切除の 意義が認められている。今回、比較的長 期の間隔を置いて再発をきたし、三回の 手術を行った肺腺癌症例を報告する。        症 例 患 者 53歳(初回入院時)、男性

主訴自覚症状なし

家族歴 父が前立腺癌で死亡 喫煙歴 なし 経 過  (図1)  昭和63年2月、人間ドックの胸部単純 X線に異常陰影を指摘され、5月の健康 診断で再度異常を指摘された。8月25日 当院内科を受診し、精査の結果肺癌の診 断となった。胸部単純X線写真(図2)、 CT検査にて、右S9に腫瘤陰影を認め、 気管支鏡検査時の細胞診よりClassV, Adenocarcinomaが認められた。 cT2NOMO      手 術 化 療 4iN,ケ月 iFU P’°’        __4

Hψ、当四

 3年7ケ月     一..__」      lt S6断端      図1 本症例の経過 組織型 腺 癌 腺 癌 腺 癌 一59一

(2)

右肺腺癌の術前診断で、昭和63年10月 11日、初回手術、右下葉切除、縦隔リン パ節郭清(R2b)を行った。 rt U, Sgbに3.7 x 2.5 cm大の腫瘍を認め た。組織学的には、高分化腺癌(図3) で、No4,11 リンパ節に転移を認め、 pT2N2MO, StageIIIAであった。  術後、CDDP I OOmgを2回投与、5FU l50mg経口投与を約3年間続けた。  術後3年4ヶ月経過時の平成4年3月、 胸部単純X線で左中肺野に淡い不明瞭な 小陰影を指摘された。この時点ではCT 上は腫瘤を指摘できなかった。その後、

腫瘤の増大傾向を認め(図4)、CTで

も明らかとなった。気管支鏡検査時の細 胞診でClass V, Adenocarcinomaを認めた。 術前診断としては異時性重複癌を考え、 5月14日第2回目手術が行われた。左S6 部分切除、縦隔リンパ節サンプリングを 行った。lt L, S6aに2.2×2.0×1.8cm大 の腫瘍を認め、組織学的に中∼高分化腺 癌(図5a)でリンパ節転移は認めなかっ た。

 術前後よりUFT300mg経口投与を約2

年間行った。  術後3年4ヶ月経過時の平成8年9月、 胸部単純X線(図6)にて再び異常陰影 を認めた。右下肺野横隔膜上と左中肺野 の前回手術時のステイプラーライン上に

腫瘤陰影を認めた。CT(図7)では左

下葉にもう1カ所、小腫瘤を認めた。気 管支鏡検査時、右B5 の細胞診、生検に より高分化腺癌を認めた。腫瘍は多発し ており再発転移と考え、まず化学療法を 行った。CDDP 130mg(第1日)、VDS 4.5mg (第1,8日)、MMC lOmg(第1日)を 山梨肺癌研究会会誌 11巻2号 1998 2クール投与した。腫瘍はわずかに縮小 傾向を認めるのみであった。平成8年12 月11日右中葉の腫瘍に対して中葉切除を 行った。S5aに5.5×2.8×3.5cm大の腫 瘍を認め、組織学的には高分化腺癌で(図 5b)、3回の手術標本を比較するといずれ もよく似た組織像を呈していた。

 平成9年4月3日から左肺門および左

肺腫瘍に計50Gy放射線照射を行った。

 平成10年4月、最近のCTでは放射線

の影響と思われる変化が見られるが、腫 瘍ははっきりせず、明らかな進行は認め ない。呼吸機能については肺活量、一秒 量とも3回の手術を通して著明な低下は 認めなかった(表1)。 S63104  H557  H5715  Hti]蔓18  H9210 翫 ㍑ {;;;器 1ijl iill FEVIo  393   324   352   346   290 ;:8?2   言;170   9と9         ;99

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21 o 竺一 竺 呈 .術 10111 S63 |OO4      HSO50T      H50715      He 1018      H902 )0  表1 呼吸機能の推移        考 察  肺内転移と多発肺癌との鑑別は困難な ことがあり、切除標本の病理学的な検討 によっても、組織型が同じ場合はしばし ば問題となる。Martiniら1)や、 Antakliら2) は第二癌までの間隔、carcinoma in situの 併存、腫瘍の解剖学的分布、肺外転移の 有無などから多発肺癌の診断基準を提示 しており、これらが参考にされている。 本症例の場合3回とも組織像が酷似し、 乳頭状の発育を示す気管支表面上皮型(粘 一60一

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平成10年9月1日 液非産生)を中心とする腺癌で、3回目 には複数の箇所に腫瘍が出現しており、 全体を通して再発および肺内転移と考え た。しかし、組織像でも肺胞を置換して 増殖する成分が見られ、多発癌を完全に 否定する根拠はない。最近、遺伝子を用 いた方法としてp53遺伝子の点突然変異 の部位の違いが診断の参考になると報告 されている3)。  肺癌再切除の予後についても再発癌と 多発癌を明確に分けられないところが問 題となるが、両者を併せた再切除後5年 生存率は23∼41%4’ 6)で、再発例としたも のでは13.5∼36.6%5’6’ ”8)、多発例では 25∼64.2%5’ 6’8)といずれも5年生存率40% 前後とされる原発性肺癌の予後と比較し てもそれほど劣らず、比較的良好で限局 性で切除可能なものでは再切除の意義が 認められる。  本症例の場合再切除までの期間が4年

7ヶ月、さらに3年7ヶ月で、初回手術

後9年8ヶ月現在、担癌生存中の状態で あり、進行が比較的遅いものと思われる。 再切除までの期間を比較し、2年以上の ものが予後良好とする報告もあるが7)、 期間と予後は相関しないとするものもあ る4・ 6)。  また再手術の適応を決める際、術後の 呼吸機能の評価が問題となる。本症例の 場合切除後の呼吸機能の低下が少なく、

術後のQOLを損なうことも少なかった

が、残存予測1秒量800ml/m2以上7’ &9)を 参考とし、対側手術ではさらに縮小手術 を考慮している。 結 語  本症例は原発肺腺癌術後、4年7ヶ月、 さらに3年7ヶ月後に再手術を施行し、 初回手術後9年8ヶ月現在、担癌生存中 である。  呼吸機能は3回の開胸・肺切除術によ って著明な低下を認めなかった。  肺内転移・重複癌に対して適応、術式 を検討した上で再切除を行えば予後向上 が期待できる。         文 献 1)Martini N, Melamed MR:Multiple primary lung cancers. JThorac Cardiovasc Surg 70: 606,1975 2)Antakli T, Schaofer RF:Second primary Lung Cancer. Am Thorac Surg 59:863, 1995 3)Noguchi M, Mezawa N:Application of the p53 gene mutation pattem fbr differentiatial diagnosis of primary versus metastatic lung carcinomas. Diag Mol Pathol 2:29,1993 4)土屋了介:再発肺癌の手術適応と予後. 臨外42:41,1987 5)大和靖、広野達彦ほか:肺癌再手術に おける術式の選択とその治療成績の検討. 胸部外科48:24,1995 6)村上眞也、清水涼三ほか:原発性肺癌 胸腔内再発および重複肺癌に対する再切 除の意義.胸部外科48:38,1995 7)池田徳彦、高橋秀暢ほか:再発肺癌に 対する外科療法の検討. 胸部外科48 : 43,1995 8)澤井聡、塙健ほか:肺癌再手術の治療 成績.胸部外科48:29,1995 9)新田澄郎:肺癌再切除の適応と予後. 外科47:911,1985 一61一

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山梨肺癌研究会会誌 11巻2号 1998

図2胸部単純X線1昭和63年10月1日

        忽怜べ    、ぷ:      ぷ、轟㌻、    x㌧1猟「      :$t// t・濠       ・、.tぷパ「

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汐 図3 初回手術病理組識

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麟灘糠,.

ii.  聾、 跡鰺、 ぎ、 ψ

鞭嚢

文 a b

図4胸部単純X線;平成5年5月7日

図5病理組織a.第2回手術b.第3回手術

図6胸部単純X線1平成S年10月]6日

[亘う 月旬f;CT:三]三戸又Sイ1三10月23日 一62一

参照

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