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中村正志編「東南アジアの比較政治学」 (新刊紹介)

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Academic year: 2021

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中村正志編「東南アジアの比較政治学」 (新刊紹介

)

著者

中村 正志

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

207

ページ

48-48

発行年

2012-12

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00003818

(2)

  本 書 は 、 東 南 ア ジ ア 域 内 先 進 国 の タイ 、マレーシア 、 シンガポール、 フィ リ ピ ン 、 イ ン ド ネ シ ア の 政 治 に 関 す る 概 説 書 で あ る 。 政 治 制 度 に 焦 点 を 当 て て 、 ト ピ ッ ク ごとに五カ国を比較し、国ごとの違い がなぜ生じたのかを政治学の理論を 使ってわかりやすく説明した。それぞ れが個性的な国だからといって別々に 論じるのではなく、逆に共通点をつま み出して五カ国をひとつの枠組みに落 とし込もうというのでもない。各国間 の差異を把握したうえで、なぜ違うの かを一貫した論理で説明する。いかに もありそうで、実はこれまでなかった 本である。   具体的には、まず政治制度の総体と しての政治体制 ︵第一章︶と 、執政 ・ 立法関係 ︵第二章︶ 、司法制度 ︵第三章︶ 、 政党 ︵第四章︶ 、選挙 ︵第五章︶の各 制度について解説する。次いで、制度 の不備を一因として生じ制度の変化を 促す社会運動を扱う ︵第六章︶ 。最後に、 この五カ国が設立し現在も中心的役割 を担うASEAN︵東南アジア諸国連 合︶について、開発途上国が設立した 他 の 国 際 制 度 と 比 較 し て 論 じ る ︵ 第 七章︶ 。   わ れ わ れ が な ぜ 制 度 に 注 目 す る の か。 五 カ 国 を 比 較 す る の は な ぜ か 。 政 治 学 の 理 論 を 用 い る の は な ぜ か 。 この三点については序章で詳しく説明 した。それだけでなく、序章には各章 の要点も書いてある。この序章は、ア ジア経済研究所のウェブサイトに掲載 されていて無料で読むことができる 。 本書の紹介ページにPD F ファイルへ のリンクが貼ってあるので、こちらか らご覧いただきたい︵ http://www .ide. go.jp/Japanese/Publish/Books/Sen-sho/030.html ︶ 。   ところで筆者が思うに 、このコー ナーを目にしているあなたは相当なア ジア通に違いない。街中では滅多に見 かけることのない ﹃アジ研ワールド ・ トレンド﹄をわざわざ手にとってお読 みになっているのだから。そんなあな たは、われわれ書き手にとってはコア な想定読者層の一人だ。だからこれを ご縁にぜひウェブ公開済みの序章をお 読みいただきたいし、その序章の要約 のようなものをここに書くのは気が進 まない。そこで以下では、本書が﹁何 でないか﹂ということについて書くこ とにしたい。何かをはっきりと理解す るには、それが何でないかを理解する ことが役に立つ。しかし本書でそんな 話をすると、多くの読者をかえって混 乱させかねないと思ってやめた。その やめた話を、ここでごく簡単にしてみ たい。   ①それぞれの国や事件を詳しく知る ための本ではない   本書では、タクシン追放クーデター やスハルト政権崩壊、アジア通貨危機 などの事件への言及がある。また、な ぜマレーシアでは長期政権が続いてい るのかとか、なぜフィリピンでは政党 が弱いのかなどといった個別の問いも 出てくる。一国研究の場合、それぞれ の事件・現象につながった要因がいく つも指摘されるのが普通だ。ひとつひ とつの具体的な出来事の要因をできる だけ多く発見していくことこそ、それ ぞれの出来事を、ひいてはその国を詳 しく知ることだといえるかもしれな い。しかし、それは本書の目指すとこ ろではない。   制度の違いは何に由来するのか。ま た、制度の違いがどんな政治的帰結の 違いをもたらす傾向にあるのか。それ を示すのが本書の目的である。個別の 事件・現象は、この文脈のなかで説明 される。ひとつの出来事についていく つもの要因を列挙するかわりに、基本 的に、多数の国を対象とする実証研究 で妥当性が認められた理論と五カ国の 現実とを突き合わせて説明する。この ようなアプローチに対して、それぞれ の出来事の説明としては不十分で不完 全だと考える人もいるに違いない。   ②実証のための少数事例比較研究で はない   一方で本書は、一般性の高い理論的 仮説を提示して、その経験的妥当性を 検証すべく比較事例研究を行う本でも ない。比較政治学に通じた読者であれ ば、本書のタイトルからこのような内 容を期待されるかもしれない。だとし たら申し訳ないが、これも本書の目指 すところではない 。﹁政治学の理論を 使った地域研究﹂と呼ぶほうが実態を よく表しているかもしれない。ついで に付言しておくと、東南アジアは社会 的、経済的、政治的に多様だから、国 を観察の単位とするなら、差異法によ る少数事例の比較分析はかなり大雑把 なものにならざるを得ない。   では、 本書は何を目指しているのか。 なぜ中途半端ともいえるアプローチを とったのか。しつこくて恐縮だが、そ れは序章に記したのでアジ研のウェブ サイトをご覧いただきたい。そのうえ で本書の狙いに共感できたら、ぜひ通 読していただきたい。 損はさせません。 ︵なかむら   まさし/アジア経済研究所   東南アジアⅠ研究グループ︶

新刊

紹介

中村正志

比較政治学

アジア経済研究所アジ研選書№三〇 ■

中村正志

48

アジ研ワールド・トレンド No.207 (2012. 12)

参照

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