国語 1.はじめに (1)研究の内容・目的 平成27年( 年)10月23日に国立教育政 策研究所から報告された研究成果「資質・能力を育 成する教育課程の在り方に関する研究報告書1~使 って育てて 世紀を生き抜くための資質・能力~」 では,「 世紀を生き抜くための」「資質・能力」 について以下のように述べている。 ・資質・能力は,対象が変わっても機能するこ とが望ましい心の働きだ。〈中略〉。いわゆ る「内容知」と「方法知」とを分けて考える と,資質・能力は,内容についての「学び方」 や「考え方」に関するものですから,「方法 知」に近いものだと言えます。 ・「方法知」だととらえると,〈中略〉方法知 は内容をより深く学ぶことに使えますし,そ うすることで方法知自体も育てられます。こ のらせん的深化が,資質・能力教育の一つの 目標です。 ところで,思考ツールは思考を可視化するもので ある。それゆえ,その活用方法を身につけることは, 対象を多角的に眺め,多面的に理解するような,複 雑な思考を進めていく上で欠かせない「方法知」で あるといえる。 「ロジックマップ」は筆者の構築した論理を可視 化するという意味で「思考ツール」のひとつである。 最上層を「筆者(文章)の主張」とし,最下層を「具 体例・事実」とする。「具体例・事実」から筆者が どのような「論拠」を導き,「主張」との間をつな ぐのか――本稿ではこのつながりを「論理構造」と 呼ぶ――をピラミッドストラクチャーのような樹形 に書き表したものである。 本研究は,説明的文章の論理構造を「ロジックマ ップ」化,つまり可視化することを出発点にした, いくつかの実践事例を振り返り,考察することを通 して,「ロジックマップ」の活用が説明的文章の読 解における「方法知」たり得ることを検証するもの である。 (2)本校研究との関わり 本校の特色ある教育実践は,「論理的思考」・「判 断のゆさぶり」・「思考ツールの活用」の三つであ る。昨年度の紀要(*1)では「批評すること」に おける「判断のゆさぶり」について詳述した。今年 度は「論理的思考」・「思考ツール」と本研究との 関わりを述べたい。以下の通りである。 「論理的」であるということは,単に「筋道が通 っている」ということではない。より「論理的」で あるかどうかという判断は,「根拠として挙げた事 柄や論拠として導いたもの」と,「表現されなかっ た事柄や論拠」との対比によってなされるべきもの である。さらに,現実の場面を想起すると,相手意 識や場面意識,目的意識などの言語意識も判断基準 本論の要旨 ロジックマップは,テキストの論理を可視化する思考ツールである。本稿は,国語科授業における汎用 的能力とは何か,または生徒にテキストを批判的に読ませるにはどうすればよいか,そして,論理的思考 力を,読むことを通して育む方法はないかという問いに対して,ロジックマップを説明的文章の読解に活 用した実践を通して,おぼろげではあるが見えてきたことをまとめたものである。 キーワード ロジックマップ,思考ツール,批判的読み,論理的思考力,汎用的能力 図1 ロジックマップ
1 国語科
思考ツールを用いて文章の論理構造を可視化し,読む力を育む国語科授業の創造
井上 哲志 — 8 —国語 に影響を及ぼす。つまり,本来的ではないにしても, 「論理的」であるかどうかの判断は,情緒的な側面 をも含む場合があるといえる。 すると,中学生にとって,思考を可視化すること は論理的に思考し,表現するために有効な方法であ るといえないだろうか。なぜなら,思考を可視化す ることで,自分の考えついた,数ある選択肢の中か ら,「何を表現し,何を表現しないのか」という判 断を可視化できるからである。 また,過去の授業実践を振り返ってみても,説明 的文章は話題の中心をとらえ,筆者の述べ進め方の 特徴や工夫をさぐるというように,筆者が何につい て,どのように「述べたいか」ということを追わせ てばかりいたという自省がある。 そこで,文章を読む際に,「ロジックマップ」を 用いて論理構造を可視化することで,例えば「『文 章に述べられている』ことと,『筆者の述べたいこ と』とを対比しながら読む」などのように,読むこ とを通して論理的思考を育む方法を探ることができ るのではないかと考えた。加えて,「ロジックマッ プ」は「読むこと」への活用のみならず,「書くこ と」や「話すこと」など,さまざまな活動に応用の 利く思考ツールだと考えている。本年度の研究を礎 に,その可能性にも迫りたい。 2.実践事例報告① (1)単元名・言語活動例・対象・時期 ○「説明文を批評しよう」(ウ 文章を読み比べる などして,構成や展開,表現の仕方について評価す ること。)3年生・2015年8月実施 (2)教材 ○「『文殊の知恵』の時代」北川達夫(『中学生の 国語 三年』三省堂) (3)単元設定の理由 本単元を構想するに至った理由は二つある。まず 一つ目は以下の通りである。 平成24年( 年)12月に文部科学省が発表 した「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・ 内容と評価の在り方に関する検討会―論点整理―」 では,次期学習指導要領に向けた検討の「成果」と して次のことが挙げられている。 ①育成すべき資質・能力に対応した教育目標・ 内容について ア)教科等を横断する汎用的なスキル(コン ピテンシー)等に関わるもの ②汎用的なスキル等としては,例えば,問題解 決,論理的思考,コミュニケーション,意欲 など ③メタ認知(自己調整や内省,批判的思考等を 可能にするもの) このうち,「論理的思考」と「批判的思考」とを 国語科の領域「読むこと」にあてはめ,「テキスト を批判的に吟味し,それをもとに,自分の考えを論 理的に組み立て,表現する」単元を構想した。 次に,生徒の実態から必要性を感じたことが理由 として挙げられる。以下の通りである。 現中学校学習指導要領に示されている第3学年の 「読むこと」,「ウ 自分の考えの形成」の目標は 「文章を読み比べるなどして,構成や展開,表現の 仕方について評価すること」,「エ 文章を読んで 人間,社会,自然などについて考え,自分の意見を 持つこと」とある。ところが,構成や展開,表現の 仕方や工夫をとらえることを苦手とする生徒は少な からずおり,自分の意見を文章に表すときにも,何 をどのような順番で書けばより分かりやすく書くこ とができるか,よく分からないままに,思いついた 順番に作文する生徒もいる。 以上のことから,文章の内容や論理構造が一枚の 紙の上に表されるように思考ツールを用いて文章を とらえることや,文章を読んでその構成や表現,筆 者の考えをとらえながら,足りない情報や余分な情 報を指摘し,削ったり,補うための情報を吟味した りするような単元に取り組みたいと考えた。 「『文殊の知恵』の時代」は,グローバル化時代 を迎えたこの時代に社会へ出て行く中学生には,事 の道理や筋道をわきまえ,正しく判断するために他 者と協力し,問題解決にあたるための「文殊の知恵」 を生み出す力が必要であると説いた説明的文章であ る。序論での問題提起や前・後半に分けることので きる本論,主張を的確にまとめた結論など,構成の 分かりやすい文章である。 一方,知識も経験も少ない中学生にとっては筆者 の言う「多様な価値観」や「知識と経験」を,筆者 と同じようなレベルの問題意識でとらえるのは難し いと言える。また,例として挙げられている「走れ メロス」の具体例は,本文の内容と結びつけて考え ることが難しく,他に分かり易い例を挙げることが 可能なのではないかという疑問を残すものである。 本単元では,「『文殊の知恵』の時代」を読んで, その論理構造を明らかにするためにピラミッドスト ラクチャーで本文の内容を可視化し,その上で筆者 の工夫や改善すべき点を交流して批評させたいと考 えた。 (4)単元の学習目標 [国語への関心・意欲・態度] ①文章を読んで語句の使い方や論の構造などに着目 — 9 —
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国語 し,その表現の仕方や工夫に注意して読み,自分 の意見を持とうとしている。 [読むこと] ②文章の論理の展開の仕方をとらえ,内容の理解に 役立てることができる。〈イ〉 ③文章の構成や展開,表現の仕方について,評価す ること。〈ウ〉 ④文章を読んで目的や意図に応じて文章を読み,知 識を広げたり,自分の考えを広げること。〈オ〉 [言語についての知識・理解・技能] ⑤本文を精読したり友だちと意見交流する中で,言 語に関する知識を広げ,語感を磨き,語彙を豊か にすることができる。〈イ(イ)〉 (5)単元の評価規準 [国語への関心・意欲・態度] ①文章を読んで語句の使い方や論の構造などに着目 し,その表現の仕方や工夫について批評しようと している。 [読む能力] ②文章の論理の展開を可視化し,それを内容の理解 に役立てている。〈イ〉 ③文章の構成や展開,表現の仕方について,筆者の 目的意識や相手意識という規準から評価してい る。〈ウ〉 ④批評する目的で文章を読み,級友との交流により, 知識を広げたり,自分の考えを広げるている。〈オ〉 [言語についての知識・理解・技能] ⑤本文を精読したり友だちと意見交流する中で,言 語に関する知識を広げ,語感を磨き,語彙を豊か にしている。〈イ(イ)〉 (6)単元の学習計画 第 次 筆者の主張と本文の論理構造をとらえよう 第1時 本文の内容をとらえる。 第2時 本文の構成と,筆者の表現の工夫につい て自分の考えを持つ。 第3時 本文の論理構造を明らかにするためにロ ジックマップで本文をとらえる。 第2次 文章を多角的にとらえ,批評しよう 第4時 主張や根拠は妥当か,足りない情報や多 過ぎる情報は何か,別の考えはないのか などについて評価する。 第 時 第4時の内容を元に,筆者の立場からの 再検討を加え,発表する。 (7)学習の工夫と効果 本単元の工夫は,「ロジックマップ」を用いたこ とと,生徒が読み取ったことをもとに自分の意見を 形成するまでの過程を思考ツールによって可視化し たことである。 ロジックマップを用いたことで,従来の説明的文 章の学習指導のように,形式段落ごとに詳しく読む ことからは解放された。文章の論理構造をロジッ クマップによって可視化することで,文章に「述 べられていること」と,「筆者の述べたいこと」 とを対比しながら読むことができた。批評の方法 や観点にはさまざまあろうが,本単元では,前述 の「対比」から気づいたことをもとに批評に取り 組ませた。 その結果,例えば,本文中に何度も用いられる 「すばらしい知恵」と「文殊の知恵」に注目し, 「筆者が『文殊の知恵を身につけることの重要性』 を主張したいのであれば,この二つの『知恵』の ちがいを意識しながら読者が読めるような文章構 成が適切ではないか。」(以上,生徒の批評文を 引用。引用者一部改変)というような,本文の読 解と熟考に基づいた意見を表明することのできた 生徒もいた。 文章(もしくはテキスト)をロジックマップに 図2 ロジックマップ 表1 学習指導案(読むこと 第 時) — 10 —
国語 表すことは,かなり練習が必要ではあるが,批判的 に読むことに有効な方法の一つとして考えてもよい といえる。 次に,生 徒が読み取 ったことを もとに自分 の意見を形 成するまで の過程を思 考ツールに よって可視化 したことである。はじめに,書かれたことから自分 の意見を持つまでの過程を,「事実判断」,「価値 判断」,「判断理由」,「自分の考え」と四段階で 記入できるようにした。そして,「筆者の目的意識」 と「筆者の相手意識」を規準に,プラスの評価なの かマイナスの評価なのかが,ひと目で分かるように, 書き込む場所を区別させた。これらを組み合わせた のが図3である。こ のツールは生徒にと って必ずしも使いや すいものだったとは いえないものの,考 えを深める過程が見 えるので,教師によ る評価には効果的な ツールであったといえる。 3.実践事例報告② (1)単元名・言語活動例・対象・時期 ○「一枚レポートを作ろう―『水田のしくみを探る』 にどんな情報を加えればよいか話し合おう―」 (エ 文章の構成や展開,表現の特徴について,自 分の考えを持つこと)1年生・2015年6月実施 (2)教材 ・「水田のしくみを探る」岡崎稔(『中学生の国語 一年』三省堂) ・資料 「蛇口をひねれば田んぼに水が入る仕組 みとは?」(ウェブサイト『Yumen avi』講義 1R 河端俊典より) ・資料2 「生物多様性」(ウェブサイト『Pal system』「産直プロジェクト11, プロジェクトN0.3」より) ・資料3 「暦も経済も景観も栄養も,すべて米の 上に築かれた」(ウェブサイト『和食ラボ』 「世界に届けたい和食文化【稲作文化 編】」より) (3)単元設定の理由 中学校第1学年の国語科授業を考える際には,生 徒たちが小学校でどのような学習を積んできたのか を意識する必要がある。本校のように附属小学校か らの入学生が大半を占めている中学校においては特 に強く意識されなければならない。 小・中学校それぞれの学習指導要領から「読むこ と」,とりわけ「自分の考えの形成」にかかわる部 分を以下に引用する。 これらを比較して,中学校第1学年では,文章を 読んで,その構成や表現,筆者の考えをとらえなが ら,足りない情報や余分な情報を指摘し,削ったり, 補うための情報を吟味したりするような学習が必要 であると考えた。 そこで,説明文「水田のしくみを探る」を読み, 中心となる話題や段落構成,図や表の使われ方を読 みとり,複数の資料の中から「どんな情報を加えれ ばよいか」について話しあう授業を考えた。本教材 「水田のしくみを探る」は水田のしくみと,それに 起因する三つの長所が述べられている。中学校にお ける説明的文章読解学習の導入であり,文章量も少 なく,構造も単純である。しかし,文章量の少なさ もあって,例えば水田に見られる生物多様性や,地 域の祭りや共同的な作業などの人々の生活に沿う話 題には触れられていない。本単元では,「水田のし くみを探る」を参考資料の中心とし,一枚のレポー トを書くならば,文中で取りあげられていない話題 について,資料をどのように編集して用いるか,理 由も含めて考えさせた。資料にはあえて不必要な情 小学校第5学年及 び第6学年の指導 事項 中学校第1学年の指導 事項 自 分 の 考 え の 形 成 本や文章を読んで 考えたことを発表 し合い,自分の考え を広げたり深めた りすること。 「文章の構成や展開, 表現の特徴について, 自 分 の 考 え を 持 つ こ と」,「文章に表れて いるものの見方や考え 方をとらえ,自分のも のの見方や考え方を広 くすること」 読 書 と 情 報 活 用 目的に応じて,複数 の本や文章などを 選んで比べて読む こと。 本や文章などから必要 な情報を集めるための 方法を身に付け,目的 に応じて必要な情報を 読みとること」 図3 思考ツール 図4 本時の生徒の様子 表2 学習指導要領の比較 — 11 —
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国語 報や,再構成しなければ使いにくいものなどを用意 した。資料を適切に引用するためには,どの資料を 選ぶか,不必要な情報は何か,また,本文とどのよ うに関連させるかなど,いくつもの「判断ポイント」 がある。それぞれのポイントで学習グループのメン バーと話し合い,協同的に考えを形成すること の難しさと楽しさを味わわせたい。 (4)単元の学習目標 [国語への関心・意欲・態度] ①目的や意図に応じ,様々な本や文章などを 読み,内容や要旨を的確にとらえる能力を 身に付けさせるとともに,読書を通しても のの見方や考え方を広げようとしている。 [読むこと] ②文章の構成や展開,表現の特徴について, 自分の考えを持つこと〈エ〉 ③文章に表れているものの見方や考え方をと らえ,自分のものの見方や考え方を広くす ること〈オ〉 ④本や文章などから必要な情報を集めるため の方 法を身に付け,目的に応じて必要な情報を読み取 ること〈カ〉 [伝統的な言語文化に関する事項] ⑤文脈の中における語句の意味をとらえ,内容理 解に役立てている。〈イ(イ)〉 (5)単元の評価規準 [国語への関心・意欲・態度] ①目的や意図に応じ,様々な本や文章などを読み, 内容や要旨を的確にとらえ、読書を通してもの の見方や考え方を広げている。 [読むこと] ②文章の構成や展開,表現の特徴について,自分 の考えを持っている。〈エ〉 ③文章に表れているものの見方や考え方をとら え,自分のものの見方や考え方を広くしている。 〈オ〉 ④複数の資料から,作品に付け足すべき情報を読 みとっている。〈カ〉 [伝統的な言語文化に関する事項] ⑤文脈の中における語句の意味をとらえ,内容理 解に役立てている。 (6)単元の学習計画 第 次 話題の中心と筆者の主張をとらえよう 第1時 本文の内容をとらえる。 第2時 本文の構成と,図や表の果たす役割につ いて自分の考えを持つ。 第2次 第3時 複数の資料から,レポートに付け足すべ き情報は何か,話し合う。 第4時 本文の内容を元にしたレポートを書く。 第5時 レポートを相互評価する。 (7)学習の工夫と効果 本文には水田がもたらす恩恵が具体的に五つ示さ れている。従来の説明的文章の授業であれば,「水 田がもたらす恩恵を具体的に答えなさい」という発 問のもと,生徒が答え,教師が板書して確認して終 わるような性質の内容 である。 しかし,本文をロジ ックマップ化すること で生徒は「空気の浄化」 にかかわる「恩恵」は, 他と違い,その「しく み」が説明されていな いことに気づくことが できた。本単元は,本文に書いていることに,「資 料1~3」の情報を編集して加え,一枚のレポート を仕上げるようとす るものである。前述 した「気づき」によ って,生徒はその「し くみ」を明らかにす るような情報を加え れば,論理的な意味 での完成度の高いレ ポートになるにちが いないという「意見」 を 持 つ こ と が で き た。これは,批判的 に読む意識の萌芽とと 表2 学習指導案(読むこと 第3時) 図5 ロジックマップ 図6 一枚レポート例 — 12 —
国語 らえてよいのではないかと考える。 一方で,資料1~3には,水田の持つ様々な役割 や側面が書かれている。よって,「空気の浄化」の 話題は省いて,「水田が育むたくさんの命の情報」 を足した方がよいとする生徒など,様々な発想が生 まれてきた。このように,異なる意見を持つ生徒同 士が「どうしてそう考えたのか」について意見交流 をするとき,確かに「判断」はゆさぶられ,磨かれ たと考えることができる。 4課題と展望 実践事例①は平成27年度の本校研究協議会での 公開授業を,同②は校内研究での実践を報告するも のである。それぞれの授業研究会で指摘を受けたこ とと自省を整理しつつ,展望について述べたい。 さて,実践事例①だが,授業は混乱を極めた。そ の原因は二つあると考える。 一つ目は用いた思考ツールが適していなかったと いうことである。批評という行為の中核は,テキス トの読み取りと意見の形成,つまり,分析的に読む などの情報の取り出しと,自分の意見を論理的に構 築することの二つにあると考える。しかし,それら を一枚の紙の上で全てまとめさせようとしたことに 無理があったと考える。もし細分化するならば,前 述の通り,ロジックマップから読み取った事実を書 き出し,ピックアップするためのツールと,ピック アップしたことをもとに意見を形成していくための ツールの二つに分けることができたはずだ。思考ツ ールを授業に活用することの最終的な目標は,思考 ツールを使わずに,思考・判断・表現することであ る。そのためにも,思考ツールは慎重に使うべきで ある。 二つ目は,学習課題の焦点化と学習活動の整理が どちらも不十分だったことである。本単元では,筆 者の論理を読み取り,読み取ったことから批評する ことが最終的な学習課題なのだが,その課題にスム ーズに迫る学習過程を構築し,筆者の論理を読み取 ることと,自分の論理を組み立てていくことを明確 に区別して取り組ませることが必要であった。 実践②からは,中学生がロジックマップを自分の 力で組み立てるための方策,つまり,三角ロジック について学ばせたり,要旨をまとめるような読解の 基礎にロジックマップを用いたりするなどして使い 慣れさせることや,文中の具体例をカードにして .-法で分類することからロジックマップを作るなど, よりスムーズにテキストをロジックマップ化する方 法を探る必要があることが分かってきた。 ロジックマップは「情報の時間」にピラミッドス トラクチャーを用いて課題解決に取り組ませたこと に着想を得ている。ピラミッドストラクチャーは前 述の通り,課題解決のための思考ツールであり,プ レゼンテーションなどにもよく用いられる。このこ とから,ロジックマップは,本来的には読むことよ りも,話すことや書くことへの適用が自然で,生徒 にも取り組みや すいツールかも しれない。とも あれ,テキスト が論理的に表現 される限り,ロ ジックマップは それを可視化す ることに有効で ある。今年度の 実践を基礎とし て,このツール が国語科授業,ひいては生徒の生きる力の一部とな るよう,研究を進めていきたい。 〈注〉 *1 井上哲志「批評力に注目した言語活動の実践」 滋賀大学教育学部附属中学校『研究紀要』第 集, 年 月,SS- 参考文献 ・津田久資『世界一わかりやすいロジカルシンキン グの授業』,中経出版, 年(平成 年) ・楠見孝「批判的思考について―これからの教育の 方向性の提言―,中央教育審議会高等学校学校教育 部会 資料4
・ 1HOO . 'XNH DQG 3 'DYLG 3HDUVRQ(IIHFWLYH 3UDFWLFHVIRU'HYHORSLQJ5HDGLQJ&RPSUHKHQVLRQ 図7 具体例をカード化し,分類する 図8 立論用ロジックマップ — 13 —