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経営における労働の人間化 : その方法と政策

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経営における労働の人間面一

      その方法と政策

吉 田 修 1 序 論  経営における労働の人等化が,労働組合の政策目標として,現実の日程にの ったのは,西ドイツでは,1972年春にひらかれた金属労働者組合(IGMetal正) の国際大会が最初であった。金属労働者組合は周知のようにドイツ労働組合総 同盟(DGB)傘下の最大の組合であり,総同盟が新しい要求やプPグラムを立 てる場合,つねにその先頭に立って影響力を発揮し,指導的役割をはたしてき        エ  た。「未来の課題一生活の質」を主要テーマとしてかかげたこの大会には, 労働組合のひとたちだけでなく内外から多くの政治家や科学者が参加したこと        おう でも知られている。その中の1人であるPベルト・ユンク(Jung, Robert)は,          ヨ  「政治主義と技術主義」と題して,経営における技術過程の発展に対する新し い価値と方向の転換をうったえたが,それは,労働の人聞化にむかう出発理念 として,この大会の方向を決定づけるものでもあった。 1) Aufgabe Zukunft t 〈1)ualitat des Lebens, Beitrtige zur vierten internationalen  Arbeitstagung der IG IMetall vorn 11. bis 14. April 1972 in Oberhausen, Frankfurt  am Main 1973. 2)例えば,政治家では,E. Eppler, A. W. Benn, O. Palme科学者では, J Bognar,  F.LPolak, P. L Heilbroner, G. Diligensk1, P・Nav111e, J・Galtung,労働組合の人  としては,0.Brenner, E. Loderer等があげられる。 Vg1. Wei1, Reinhold, Humαnisie−  rung der Arbeii−Arttwort az{f Entfremdung?, K61n 1975, S. 28. 3)ユンクの論文は,おなじくこの大会に寄せられたカップ(KaPP, Karl W.)の論文  と共に,イギリスのコーツ(Coates, Ken)の編による著の中に収められた。 Vg1,  Socialtsm a7zd the Enwironment, edited by Ken Coates, Nottingham, England lg72.  (華山謙訳『生活の質一環境問題と社会主義』岩波書店,1981年。)

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 66  彦根論叢 第216号        の  ユンクは,近代的な技術とは,「目的ないし行動をその基本的要素に分解し」,       4) かつ,「これらの要素を効率極大化の原則にしたがって再合成すること」である とするシェルスキー(Schelsky, Helmut)の定義を引用しながら,このような 近代的技術の支配を技術主義と称する。彼によれば,「技術主i義は,結果がそ こに至る道程より重要であると思われ,生産が生産者より価値あるものとさ れ,量が質に優先し,交換価値が使用価値より重んじられる場合に優勢にな る。」そして,このような技術主義において「技術体系を構成する道具,器具,       の 機械の中に諸価値が組込まれていくことの非人間性」に回して,それを取りの ぞくために, 「新しい技術」が開発されなければならないとする。  「新しい技術」とは,いわゆる「単なる技術にかわる制御された技術」では ない。それは,「生産者と生産手段とのあいだの疎外を,たんに所有関係を変 えるだけでなく,生産に使われる道具と生産過程自体を変えることによって, 可能な限り取りのぞこうとしていることである。知識と行動理論と実践の新 しい関係および知識の新しい普及形態が,この種の新しい試みの基礎にある。 労働者は,かつての専門化と生産過程の複雑化とそれによって生ずる種々の問 題にかわって,彼の仕事の性質と全体の中での位置づけと目的とについて,真       ア  の知識と洞察力をもつことになる。」新しい技術は,また,「自然と人間に敵対 せず,「政策」の形成に彼らが参加することを拒まず,人間らしさと参加の原       きう 則に従うものでなければならない。」そして,ユンクは,このような「新しい 技術」の開発は,その前提に新しい価値観の形成とその実現を可能にする政治 がなければならないとし,それを政治主義と称するのである。  生産過程それ自体の変革は,政治主義におこなわれなければならない。すな 4)Coates, Ken(edited), Socialism and the Environment, op. cit.,華山謙訳,前掲  書,1頁。 5)同上,7頁。 6)同上,6頁。 7) 同上,9 一!0頁。 8) 同上,8頁。

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  67 わち,明確な価値基準をもち,それに従って将来の方向を見定め政策を立てて ゆかなければならない。もし,それに失敗するならぽ,労働者は再び技術偏重 の「社会の構成員」として生産過程にくみこまれる結果になるであろう。ユソ クは,そのために,労働組合が人間を重視したより人間的な技術を開発し,労       ビラ 働者の未開発な能力を高めてゆくことが不可欠であると主張する。経営におけ る技術過程の人間化が実現されなけれぽならないのである。  1972年の金属労働者組合の大会についで,1974年には,ドイツ労働組合総同       ヨの 盟による「社会政策および労働組合の課題としての労働の人間化」をテーマと して掲げたいわゆるミュンヘン会議がひらかれた。経営における労働の人間化 を実現するための方法と政策が討議されるのである。  「労働および社会の体制(VerfaBtheit)を構造的に変革することを目ざす労        ユエ  働の人間化の構想」,討議者の中心の1人である近化病の経営社会学者シュ ーマン(Schulnann, Michael)は,このように表現する。そして,この構想に 対して化学労働者組合(IG Chemie)の議長フィット(Vitt, Werner)は,そ       ユ  のためにはまず第1に「明確にして,改革の意志に動機づけられた政治的意識」 がなければならないとする。ユンクのいう政治主義への志向である。すなわ ち,「労働の入間化の命令は,人間化の妨げとなるところの経済的秩序体制お よび支配体制の中におかれる矛盾を克服するために,労働者が行為能力のある        ユヨラ 政治的意識を発展する場合にのみ実行に移される」のである。  「支配的な経済体制」からは,一朝一夕にぬけ出すことはできない。それは 9) 同上,18頁。 10) Vgl. Vetter, Heinz Oskar (Hrsg,), Hurnanzszerung der Arbezt als gesellschafts−  politische und gezverkschaftliehe Aufgabe, Protokoll der Konferenz des Deutschen  Gewerkschaftsbundes vom 16. und 17 Mai 1974 in Munchen, Fraukfurt am Main/  K61n 1974. !1) Schumann, Michael, Bestandsaufnahme, Analyse und Entwicklungstrends im  Produktionsbereich, in: Vetter, Heinz Oskar (Hrsg,), a. a. O., S. 5Jr. !2) Vitt, Werner, H,umanisierung der Arbeit durch liV[itbestimmung, in: Vetter,  Heinz Oskar (Hrsg.), a. a. O., S. 15’ O. !3) Vitt, Werner, a. a. O., S. 142.

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 68 彦根論叢第2!6号 段階的に,経済的支配体制の変革を意図した長期的な戦略の助けをかりては じめて実現できる。人間的な,それ故に理性的な社会は,労働者の高い意識の 状態と「社会一経済的な権力関係の具体的一政治的な変革によって開放を得んと    14) する用意」を必要とする。「具体的な一政治的な変革を意図した戦略」として, どのような方法が考えられるのか。フィットは,そのためには何よりも共同決 定のシステムがなければならないことを主張する。「人間らしさと参加の原則」 が結合されなければならないというのである。すなわち,「労働の人間化は, 労働者の包括的な経済的共同決定によってのみ実現される。投資,生産および 労働過程の意志決定に対する広汎な影響力を行使することなくしては,労働者 および労働組合はそれがかれらの職場の危機に直結するような危険にさらされ るのであり,それは全く人間化の戦略のさまたげにもなる。説得力のある,そ して具体的な労働の人間化は,それ故に長期的かつ継続的には私経済の投資 の自律性や私経済的な競争メカニズムへの広範囲な介入なくしては実現できな ユの い」と。  共同決定と労働の人間化,その具体的な関係について検討しなければならな        ユ   い。それはまた,「現在の経済秩序および社会秩序の改革」への戦略としてで もある。 五 経済の民主化と労働の人間化  労働の人間化と共同決定,両者の関係について,フェッター(Vetter, Heinz Oskar)は次のようにいっている。フェッターは,ドイツ労働組合総同盟の議 長であり,ミュンヘン会議を主宰した中心の1人である。r一方的に配分され た権力関係の職場における,経営における,企業における,そして経済全体に おける解体をめざす要求としての共同決定と,労働の世界の人間化とは,たが 14) Vitt, Werner, a. a. O., S. 143. 15) Vitt, Werner, a. a. O., S. 153. Vgl, Vetter, Heinz Oskar, Referat, in: Vetter,  Heinz Oskar, a. a. O., S. 37. 16) Weil, Reinhold, a. a. O., S. 29.

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       経営における労働の人間化一一その方法と政策  69 いに密接な関連にある。……そして,共同決定それ自体の中に労働の世界の人 間化の1つの要素をみることは,根本原理的に正しい。しかし,それにもかか わらず,2つの要求は労働組合自体の理解として同一のことを意味しない。 人間化とは,何よりも先ず労働の内容にかんする形成(Gestaltung),労働過程 の構造にかかわる。それに対して,民主化はとりわけ意志の形成および意志決 定の発見を包括する。そして,意志決定過程の民主化が,制度のもつ諸関連の 形式的な変革にのみ限定されるものであろうとしないならば,人間化と民主化 とはたがいに補完しあうものであり,補完しあわなければならない。両者はた がいに制約しあうのである。労働の人間化は最終的には全てのレベルにおける        ユア  実効力ある共同決定なくしては実現されない。」2つのことが確認されなけれ ばならない。すなわち,1つは,労働の人間化と共同決定とがたがいに補完し あうことであり,もう1つは,人間化は,労働過程の内容にかんする「具体的     18) な形成課題」であるということである。  フェッターにおいて,共同決定と民主化が同義語としてもちいられている。 しかし,共同決定の理解においてこの2つの概念を結びつけることは必ずしも 自明のことではない。共同決定については,歴史的にも政治的にもさまざまな とらえ方がみられるのである。  たとえば,共同決定はドイツにのみ国有の制度ではないとする考え方があ る。ヨーロッパにおける先進的な工業国のあいだには,それぞれタイプは異な るかもしれないが,いずれも共同決定と称すべきシステムを労働組合が要求し 推進しているというのである。大別して2つの型に類型化するならば,次のよ うに翠微つけることができる。すなわち,フランス・イタリア型の共同決定と 西ドイツ,オーストリーおよびスイス型の共同決定とである。前者の型は経営 をこえた「開かれたままの対決とコンフリクトのモデル」であり,それに対し て,後者の型は「企業の機関および経営における意志決定への制度的な参加の 17) Vetter, Humanisierung der Arbeitswelt als gewerkschaftliche Aufgabe, Gezverk−  schaftliche Monatshefte, Nr. 1/1973, S. 8−9. 18) Vetter, Heinz Oskar, a. a. O., S. 9.

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 70 彦根論叢 第216号   19) モデル」である。後者の,いわゆるドイツ型とも称すべき共同決定の特徴は, 基本的に経営を単位とする意志決定への参加である。問題となるのは,企業の 政策としての投資・生産および販売の合理化の計画や決定にかんする,ならび に職場,労働過程および労働組織の形成にかんする共同的意志決定(Mitent−        20) scheidung)である。  このドイツ型の経営における共同決定の要求については,また,歴史的ある いは社会的に異なった源流から出る2つの性向があることが指摘される。第1         の考え方はいわゆる「社会的パートナーシャフト」の理念から出るものであ る。それによれば,資本と労働とはさけがたい敵対関係にあるのではない。社 会的にみれば,両者のあいだに和解をみい出すことが可能である。したがっ て,たとえ両者のあいだに社会的対決が生じうるとしても,それは労働者が企 業の意志決定へ参加することと企業の財産へ参加することによって解消すべき である。考え方として,カトリックの社会理論から出るものであり,その出発 点には所有権重視の思想がみられる。共同決定と所有参加が同列におかれるの である。  それに対して,第2の考え方が民主主義の理念から出発するのである。民主 主義の概念は,プリーフス(Briefs, Goetz)が指摘したごとく,元来は政治上 の概念である。ブリーフスは,それが政治上の概念であるがゆえに,経済的・ 技術的システムとしての経営にはなじまないものとしてしりぞけた。それと 対照的に,ここでは,民主化と経営とが結びつけられるのである。ヘンシェ         (Hensche, Detlef)はいう。「国家と社会とを分離し,民主主義を国家にのみ 留保すべきだということは,受け入れられるべきでない。それはすでに過去に 19) Hensche, Detlef, Betriebliche und ttberbetriebliche Mitbestimmung, Vortrag auf  dem 4. lnternationalen ProduktivitlatskongreB in Wien am 10. 10. !974, in: Der  Mensch im Unternehmen, Hrsg, Osterreichisches Zentrum ftir Wirtschaftlichkeit  und Produktivittit, Wien 1974. 20) Weil, Reinhold, a. a. O., S. 35. 21) Vgl. Hensche, Detlef, Mitbestimmung als Kontrolle, in: Das Mitbestimmungs−  gesPrdch, Nr. 10/11, 1973, S. 165−167. 22) ドイツ労働組合総同盟の社会政策部長。

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  71 属すべきことである。社会的権力も経済的権力も統制されなければならない,       23) すなわち,共同決定されなければならない」と。そして,フェッターによれぽ, 政治的な民主主義は長期的には経済の民主主義なくしては安定し生命をたもち 続けえざるものであり,その「経済民主主義」のもとになる礎石のひとつが共        Z4)同決定でなければならないのである。  経済における意志決定過程の民主化にかんして,すでに1960年代の前半に, ドイツ労働組合総同盟(DGB)は,その具体的な問題として,全体として市 民の,そして,とりわけ経済の諸セクターの全ゆる面における労働者の共同決 定権および自主決定権の恒常的な拡大をうったえた。すなわち, 「労働組合 は,労働者の共同決定の拡大をもとめてたたかう。それによってすべての市民 が経済的,文化的および政治的な意志形成に同権的に参加することをねらった        25) 経済的および社会的変革をおこさんがためである」と。  市民とりわけ賃金労働者の共同決定の機会をこのように拡大せんとすること は当然なことながらこれまでの意志決定者すなわち生産手段の所有者とその管 理者の意志決定権をして制限し,統制し,そして傾向的に止揚してゆく結果に なる。それ故に,経済の民主化にかんする議論は,そこから必然的に資本とり わけ大企業に集中せる資本がもつ経済的な権力を社会的にコントP一ルするこ とにまでむけられることになる。  経済民主化の目的についてフィルマール(Vilmar, Fritz)は次のようにい        26) っている。「経済過程における人間の(自己)疎外を止揚すること。」それはま 23) Hensche, DetleL Mitbestimmung als Kontrolle, a. a. O., S. !65. Vgl Weil, Rein−  hold, a. a. O., S. 36. 24) Vgl. Vetter, Heinz Oskar, Mitbestimmzang−ldee, Wege, Ziel, Beitra’ge zur Ge−  setlsehaftspolitife !969 bis 1979, hrsg, von Hans O. Hemmer, K61n 1979, S 9. 2s) DGB−Vorstand (Hrsg.), Grundsat2Programm der De’a’bschen Gezverkschaftsbu−ndes,  beschlossen auf dem auBerordentlichen BundeskongreB des Deutschen Gewerk−  schaftsbundes am 21. und 22. November !963, in Dtisseldorf, o. T., S. 4. 26) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, Wirtschaftsdemokratie und Hzamanisierung der  Arbeit, Systematische lntegration der xvichtigsten KonxePte, K61n/Frankfurt am  Main 1978, S. 50.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  73 た,資本主義的な生産過程の「見えざる」手による人聞の従属を克服すること を意味すると。経済の民主化は,人間を経済のしくみによってコントロールさ れるものから経済的諸経過をコントロールするものの立場にすることであり, それがすなわち「疎外の解体」に他ならないのである。この目的を達成するた めには,しかし,形式的な意志決定過程ならびにそれに参加する諸制度を変革 するだけでな:く,同時に,たとえば,「個別企業の私的な資本主義的収益性へ の現在の志向を,個別企業の労働者ならびに全体経済の集団的な欲求への志向        によっておきかえること」によって,経済的意志決定の内容そのものに新しい 傾向をもたらすことが必要となる。フィルマールは,経済民主化の構想にむけ て,それを実現するための目標と戦略的カテゴリーの関係について,前面の図 (第1図)のような体系にあらわすことができるという。  3つの戦略的目標が掲げられている。すなわち,  一経済全体の民主的な枠組の形成  一経済的な諸権力の行使の統制         一全ゆる方法による経済的な共同決定あるいは自主決定。  この中で,第1の目標は,全体経済的な「計画化」の政策にむけられており, その主要な戦略として投資レンタンクがあげられている。また,第2の「企業 のコントロール」の戦略としては,部分的な社会化戦略がふくまれている。そ して,第3の職場における「共同決定」戦略において,包括的な意味での労働 の人間化が問題となるのである。職場における共同決定,すなわち,「職場に おいて最大可能な共同決定ないし自主決定によって他律的な支配を克服するこ    と」は,経済民主化の実現として,いわば労働の人間化の達成すべき戦略的な 目的設定をあらわしている。  経済民主化のこの3つの目標は,相互に制約しあう関係にあると同時に,補 28) Hoffmann, Reinhard, Formen, Bereiche und Grenzen einer Demokratisierung  industrieller Entscheidungsprozesse in der Privatwirtschaft, in:Vilmar, Fritz   (Hrsg.)Industrielle Demoferatie_,a. a. O., S.79. 29) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl・一〇tto, a・a・0・, S・53. 30) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a・aO・, S・5!,

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74 彦根論叢第216号 減しながら1つの「多元的な概念」を形成している。すなわち,生産過程を全 体経済的に民主的に制御することは,経済的諸現象がもはや無政府的に無統制 な過程によって危機におちいることなく,共同経済的な安定化の実現に志向さ せることを意味している。しかし,このような民主的な経済管理(Wirtschafts− Ienkung)は,企業における資本の力が民主的なコントロールのシステムに従 わないならば,資本の利害の作用によって逆機能的にはたらくおそれがある。 なぜならば,共同経済的な計画化の政策は不可心的に資本所有者の意志決定権 能を制約するものであるが故に,その抵抗にぶつかるからである。また,労働す るもの自身がいずれかの面で生産過程の形成の主体になりえず,そして「権威 的な支配と従属の関係が,賃金労働者の共同決定と自主決定の権利の実現によ         う って克服されない」場合には,疎外は不完全にしか止揚しえないのである。  フィルマールはいうのである。「民主主義は労働者のためのものであるだけ でなく,労働者自身の民主主義でもあり,内容的にはコントロールの機能とし て実現されるだけでなく,労働の構造的な人間化として実現されるものであ 31) る」と。  経済民主化の目標にむけて,労働の人間化はどのような具体的な戦略として 形成されるのか,次節において見ることに.したい。 皿 労働人間化のための戦略  労働の人間化に対する要求は,一方において,明らかに労働する人間の自意 識の成長の結果によるものであるが,同時に他方において,その前提として, 近代的な技術の発展とそれにともな・う経済的諸条件の変化から生じたところの 産業組織における非人間化現象に原因がもとめられる。しかし,この労働の非 人聞化現象について,単一原因的な説明をもとめることは困難である。なぜな らば,近代的な産業組織における諸条件の変化は複合的であり,かつ多元的で あるからである。そして,フィルマールはそれについて,これまでの多くの人 びとの指摘をもとに,最も基本的な原因として究極的には,次のような3つの 31) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 54.

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       経営における労働の人間化  その方法と政策  75 要因に類型化することができるという。すなわち,  一労働する人間の生存権に対する脅威と搾取  一生理的ならびに心理的な労働の苦痛       ラ  一他律的な決定による支配への服従  そして,彼は,このような原因の側の視点からみたものとして,考えられう る労働人問化のための戦略的メルクマールについて,次頁のような図(第2図)       お に体系化することができるという。これに対していえば,前節にみた経済民主 化の戦略(第1図)は,いわば,労働人間化の目的設定についてみたものであ った。  図からは次のような諸点を読みとることができる。すなわち,  第1に,労働の人聞化と経済の民主化は,状況によってあい対立したりある いは,代心的に選択できるという関係のものではないということである。「民 主化は,人間尊重(人間性)のおきてをまもらなけれぽならない,と同様に, 人間化は,それ自体では本質的には自主決定の命令に対して充分ではありえな い。 (民主化による)権力の分割や権力の統制があって,はじめて人間化の努       おの 力のための空間がつくり出されるのである。」  人間化と民主化を結びつけるものは,共同決定である。したがって,経営に おける経済的な共同決定がないならぽ,経営における労働の人間化プログラム は,「家父長的な,支配関係を隠蔽した,安定政策的な,上からの福祉的な措 きの 置」に終始する可能性をもつ。  第2に,労働の人間化とは,フェッターの言葉をかりるならば,労働過程の         内容にかんする「具体的な形成課題」であるということである。労働の世界を 32) Vilmar, Fritz/Sattler, Kar1−Otto, a. a. O. S.131. 33) Vilmar, Fritz/Sattler, Kar1−Otto, a. a. O. S.133. VgL Vi1mar, Fritz (Hrsg・),  Menschenwiirde im Betrieb, Reinbek 1973, S.23. 34) Haussmann, Helmut,σnternehmensordnung und Selbstbestimmung・Organisαto−   rische Ansdtze direkter und indirefeter Partixipation, Erlangen−Ntirnberg 1975, S.   22. 35) Vilmar, Fritz/Sattler, Kar1−Otto, a・a・0・, S・133. 36) Vetter, Heinz Oskar, a. a.0., S. g.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  77 人間化するための要求は,戦略的概念として,個別的には,職場の安全化,所 得の正当性,人問尊重の職場および労働時聞の形成があげられるように,それ らはいずれも全体として「労働するものの全てにとってより多くの自主自律を       コ     う という意味における人間労働の内容的な改造」(傍点筆者)を実現するもので なければならない。例えば,労働の安全措置や労働時間の短縮等それらは個拙 掌に意味をもつものではあるが,中心的な課題となるのは,現代の労働の世界 を規定している諸条件の全体を改変するということなのである。  第3には,いわゆる「疑似的な」人間道戦略を区別しなければならないこと である。経営における労働の人間化にかんしては過去10数年のあいだに多くの 提案がなされてきたが,それらの提案に対して批判的な経営社会学者や労働組 合の指導者たちの中には近年にいたるまでなお懐疑的な見方をすてない人びと が少なからずあった。その理由としてかれらがあげるのは,労働の人間化の戦 略の中には,たとえば,いわゆる「職務設計」の実験のごとく,本質的には給 付原理にもとづいた管理者的な発想によるものが多いということがある。それ らの政策は,表面的には階層的な組織の解体あるいは労働組織の自律化をうっ たえながら,実質的には,「職務の充実による共働者の動機づけ」を目ざした 動機づけ戦略にすぎないものがある。それらは,例えば,マズP一(Maslow, Abraham)1やハーズバーク(Herzberg, Frederik)等の経営心理学者によって基 礎づけられた近代的な動機づけ理論によるものであり,さかのぼれば,テイラ ー(TaylQr, Frederick, W.)やギルブレス(Gilbreth, Frank, B.)にはじまる 「科学的管理」を受け継ぐ最も新しい経営管理戦略に他ならないというのであ る。フィルマールはいうのである。「そのような人間化の志向の変種は排除し        きき  なければならない」と。それは,本質的に,経済的効率の目標にむすびつくこ とがあっても,経済民主化の目標には結びつきえざるものであり,労働の人間 化は手段ないし副産物でしかありえないからである。 37) Leminsky, Gerhard, Gewerkschaftliche Ansatzm6glichkeiten zur Humanisierung  der Arbeit, in: ’VVSI−Mitteilungen, 2/1974. 38) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 137.

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 78 彦根論叢第216号  労働の人間化戦略について,「具体的な形成課題」としての内容はどのよう に展開されるのか,見な:ければならない。          その原因が多元的であったように,人間化戦略も「労働の解放」の多元的か つ多様な過程として展開される。1974年にひらかれたドイツ労働組合総同盟 のミュンヘン会議一これはのちに「人間化会議」(HumanisierungskongreB)と       るのよばれるようにもなった一において,経営における労働諸条件を改善するため の重点政策として,次のような諸項目が提案された。  一健康の保護と労働力の維持  一労働強化の防止と制限  一労働の形態や方法による賃金差別化体系のもつ決定的な意味の顧慮  一非人間的な労働条件,とくに健康を損うような負担あるいは分断化され    内容のない非技能化された労働が賃金システムによって正当化されたり    推進されたりしてはならないとする立場の貫徹:その場合には,むし    ろ,非人間的な労働条件そのものの変革が優先されなければならない。  一いわゆる「迂回的な」規定により人間化措置を確実なものにすること。    例えば,解雇予告からの保護,給与の確保,高令労働者に対する最低就    業率の確保,職業再教育  一労働組合側の行為能力の確保と拡大,とくに共同決定と労働協約政策に        つ    おいて。これには,完全就業の確保も属する。  この労働組合総同盟のいわば基本的ではあるが包括的に未整理のまま出され       ま   た提案に対して,フリードリッヒ・エーベルト財団の研究グループは,それを 4っの具体的な戦略カテゴリーとして再分類する。すなわち, 3g) Hillmann, Gtinter, Die Befreiung der Arbeit−Dze Entwicklung Kooperatzwer  Selbstorganisation und die Auflbsung bdiroferatisch−hierarchischer Herrschaft, Re−  inbek b. Hamburg 1970, 40) Vgl. Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., 134. 41) Ebenda. 42) メンバーには,ブリッケ(Fricke, Else und Wemer),シェーンヴェルダー(Sch−  6nwalder, Manfred)およびシュティーグラー(Sfiegler, Barbara)等がいる。

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       経営における労働の人問化一その方法と政策  79  (1)職場における保護  〔2)人間尊重の労働組織  ⑧ 経営におけるコミュニケーションと情報の改善        お   (4)経営における所得体系の人間化 である。そして,フィルマールは,さらに,このエーベルト財団の研究グルー プの提案をもとに,そのそれぞれにふくまれている個別的な労働の人間化戦略 を,次のような4つの次元について分類し直し体系化することができるとす る。体系化の前提について確認するならぽ,それは,全ての労働するものに対 してより多くの自主自律の機会をひらくものであると共に,職場における直接 的な共同決定の具体的な対象とされるものでなければならない。そして最終的       るの には,そのいずれもが,「共同決定と民主的な経済政策」の実現へとひろがる 構想に志向するものでなければならないことである。  (1)所得政策の人間化    一所得階層の平準化    一入的なグループによる所得の差別化の廃止    一時間一および出来高請負制の廃止とそれにかわるプログラムによる      賃金支払制の導入:最低月収額の保証    一賃金の決定にかんする完全な透明性と賃金支払いの原則,方法およ      び段階基準にかんする完全な共同決定    一雨人間的な労働条件に対する金銭による補償の廃止  (2) 「エルゴノミッシュ」な要求    一労働組織における「エルゴノミッシュ」な共同決定(経営組織法第      90・91条)  (3) 人間に合った労働時聞の規制    一労働時間の短縮    一フレキシブルな労働時間:スライド式時間制度の構想 43) Vilmar, Fritz/Sattter, Karl Otto, a. a. !35−136. 44) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 136.

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 80  彦根論叢 第216号    一交替労働,夜間労働および超過時間労働の廃止  (4) 労働職務の充実と自律化一半自律集団の理念

   一職務の交替

   一職務の拡大

   一職務の充実

      45)    一「半自律的」な集団の形成         の  「奇妙なことに」,フィルマールはいう,人間的な所得政策の問題は,これ まで多くの場合,労働の人間化の構想からはずされてきた。しかし,賃金政策 の人間化はむしろ「労働生活のの質」を段階的に改革してゆくための戦略にあ っても,最も中心的な要素になるべきはずのものである。労働組織の形成と賃 金体系の形成とは不可分の関係にあるからである。それについて,キットナー (Kittner, Michael)は次のようにいっている。 r一般に賃金は,労働組織に従 うものである。このことは,たとえば,時間賃金制が導入されるべきか給付賃 金制が導入されるべきかの問題 どのような給付賃金の形態がもちいられるべ きかの問題,あるいは,どのような方法によって作業内容の明細や給付の判断 は行われるべきかの問題,それらは,いずれも現在の技術的および組織的な労        なの 働の形成におのずから従うものであることを意味している。」  :賃金体系は,伝統的に,これまで労働協約や経営協定のような形で決定さ れ,受け入れられてきた。ところがこのような伝統的な賃金体系が,今日,労 働組織の変革に対して逆に障害になるという現象が現われてくる。例えば,北 欧諸国で最初に導入された「半自律集団」による労働組織の形成の実験が経験 的に示したところによれば,伝統的な階層組織にもとつく「硬直的な職能分 ユ   割」を土台とした賃金原則や支払方法あるいは労働評価の方法をそのまま維持 45) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 136ff. 46) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 136. 47) Kittner, Michael, Mitbestimmung der Arbeitnehmer Uber die Arbeitsorganisation  und Uber die Ausgestaltung und Umgebung des Arbeitsplatzes, in: VVSI−Mittei−  lungen, 5/1975, S. 265. 48) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 137.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  81 しょうとするならぽ,集団自治としての新しい労働組織の効果はきわめて価値       49) の低いままにおわらざるをえない。  労働組織の人聞化を実現するためは,賃金体系に対する見直しが必要である ことについて,フェッターは次のようにいっている。「労働の世界の人間化は ……アれまでの賃金体系および経営賃金政策の批判的検討を必要とする。経営 における連帯的な協働を,労働における自律性の発展を,そして,学習過程お よび職業教育過程としての労働をもとめようとするならば,伝統的な方法によ る賃金刺戟のシステムは,もはや継続的にはその場所をもたない。考えなけれ ばならないことは,将来において人間の欲求や利害関係と結びつきかつそれを 推進するような別の賃金形態をもとめることができないかどうか,ということ    う である。」  賃金体系の詰問化の問題は,また,経営経済学においてもとりあげられる。 いわゆる「公正賃金」(gerechtes Lohn)の問題としてである。たとえば,そ れについて,ゲッティンゲン大学のリュッケ(Lircke, Wolfgang)は,1978年        う の「経営経済学における公正賃金の問題」と題する論文の中で次のようにいっ ている。「公正賃金をめぐる問題は,今日きわめて集中的に論議されるように   うヨう なった。」そして,「経営経済学は,賃金形態と密接な関係にあるとされる個別 的な影響変数とならんで,さらにそれを超えて,成果分配の問題や経済全体の レベルにおける分配協約の問題と関わりをもつ。……賃金の公正性をめぐる問 題はより大きな枠組のなかで立てられるものである。とくに,公正賃金と共同       決定との結びつきが関心のまととなる。」さらに,「公正賃金の問題は,労働の       らおラ 人二化のより大きな問題圏の中に合流する」と。 49) Vgl. Maier, Norbert, Tezlautonome ArbeitsgruPPen. Mbggichkeiten t{nd Gren2en  伽65Modells z乙‘r、Humanisterung deプ!lrbezt, Meisenheim 1977, S.95ff. 50) Vetter, Heinz Oskar, a. a. O., S. 1−11. orl) Liacke, Wolfgang, Das Problem des gerechten Lohnes in der Betriebswirtscha−  ftslehre, Die Fortbildung, 23. Jahrgang, 12/1978, S. !!or/14. 52) Lticke, Wolfgang, a. a. O., S. 1!3. 53) Ebenda.

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 82 彦根論叢 第216号  近代的な産業社会の生成以来,生産過程に働いている人間は,その多数がか れらの健康を生理的にも心理的にも危険にさらすような負担に耐えさせられて きた。生産過程の変革は,基本的には,技術過程の発展として生み出されてき たのであり,そして,そこでは,「人間は,つねに,技術への広汎な適応を強      54) いられてきた」のである。労働科学(Arbeitswissenschaften)は,技術過程に 対する人間労働の関係を対象とするものとして生成したのであるが,この労働 科学について,従来労働組合の側からは「支配の知識」のみを生み出すものと しての批難がしばしば投げられてきた。それは,生産過程における人間労働の 生理学的あるいは人間工学的な分析が,労働する人閲のもつ給付能力をより一 層ひき出すためのものとして利用され,最終的には,より厳しい労働の強化に むすびつくものであるとする。「労働科学は,実質的には,人間化をとりあげ るためのものではなく,むしろ,たんな:る収益性の増進と原価の低減を問題に  55) する」ものである,というのである。  1この労働科学の分野において,ここ数年来,「職場,作業工程および労働環        56) 境の人間に合った形成をめぐる努力」を主題とする新しい研究の傾向が次第に 目だつようになってきた。いわゆる「エルゴノミー」(Ergonomie)とよばれる のがそれである。エルゴノミーについて,それは,一般的に「労働過程におけ        57) る人間にかんする心理的一生理的な経験科学」として,とりわけ,「仕事を人        ら   間に適応させることについての学際的な科学」であるといわれる。研究の目的 とするのは,機械や労働過程を人間のもつ肉体的および精神的な欲求に適応さ せ,それによって,労働力および給付能力をふくめた人間の生活力をどれだけ’ 永く維持することが可能か,ということについて,有用な経験的認識をえるこ ととされる。 54) Vilrnar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O,, S. 114. 55) Ebenda. 56) Ebenda. 57) Alsleben, Kurd, Arbeitsplatzgestaltung, in: Grochla, Erwin (Hrsg.), Handwo−r−  terbuch der Organisation, Stuttgant 1969, S. 113. 58) 「国際労働条件・労働環境改善計画一PIACT」ILO時報29−3(1973年)49頁。

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       経営における労働の人間化  その方法と政策  83  「エルゴノミッシュな要求」としての人間化戦略については,その先駆的な        らの こころみとして,ザルツギッター・コンツェルン(Salzgitter Konzern)の例が 知られているが,1972年における経営組織法の改正は,この人間化要求を職場 における共同決定とむすびつけることによって制度的にも実現されることにな った。人間化と共同決定との1つの結びつきである。「エルゴノミッシュな共        60) 同決定」とよばれるこの要求は,また,前稿でみたごとく,労働人間化の基本       61) 的な概念の1つにまでなっている。その方法的内容については,愚稿において 取りあげており,ここではくりかえさないが,要点と問題点をあげれば次のご とくである。  経営組織法第90条は次のように規定している。すなわち,1.工場一,管理 一およびその他の経営の諸空間の新設,改造および拡張,2.技術的設備, 3.作業方法およひ作業工程,あるいは,4.職揚の計画について,雇用者と 経営協議会とは,人間に合った労働の形成にかんする確かめられた労働科学的       62) な認識を考慮しなければならない,と。そして,第91条は,前項の規定の実施 に際しては,雇用者と経営協議会との間において共同決定が行われなければな らないことを規定している。経営組織法のこの2つの規定は,フィルマールの 指摘するごとく,労働法としては他の諸国に先がけての「エルゴノミッシュな       63) 共同決定」の規定であり,ゲルム(Gerum, Elmor)は,それについて,「より 良き労働の質を完成させるための請求基礎がはじめてつくられた。(人間化要        64) 求をめぐる)1つの結晶である」といっている。 59) Vgl. Schweres, M., Das Arbeitswissenschaftliche Team der Salzgitter Hiftten−  werke, in: Vilmar, Fritz, Menschenwthrde im Betrieb, a. a. O., S. 79ff. 60)拙稿「経営における労働の人間化一その概念と論理」彦根論叢第213号(昭和57年  3月)。 61) 拙稿「経営組織法と労働の人間化」彦根論叢第196号(昭和54年8月)。 62) 拙稿「経営組織法と労働の人間化」前掲,6頁。 63) Vilmar, Fritz/Sattlar, Karl−Otto, a. a. O., S. !46. 64) Gerum, Elmor, “Gesicherte arbeitswissenschaftliche Erkenntnisse ttber die men−  schengerechte Gestaltung der Arbeit” (gS 90, 91 BVG) als Problem wissenscha・  ftlicher Beratung der Praxis, in: Bart61ke, Klaus, u. a. (Hrsg.), Arbeitsgualitat in  Organisationen, Wiesbaden 1978, S. 31.

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 84 彦根論叢第216号  しかし,人間化と共同決定との結びつきとして,経営組織法の改正内容は必 ずしも充分ではない。たとえば,第91条にうたわれている職場における共同決 定権の行使について,それがきわめて二曲的なもの(euphemistisch)でしか ありえないことが指摘される。たとえば,キットナーによれば,そこで問題と されているのは「修正的な」共同決定権にすぎないという。なぜならば,第91 条において,共同決定権が行使されるのは,(1)人間に合った労働の形成に対し て,確かめられた労働科学の認識と,(2)明らかに矛盾するような職場,作業工 程あるいは労働環境の変更によって,㈲とくに負担が労働者に課せられた場合 である。そして,(4)経営協議会と雇用者とは,その負担をとりのぞくために 適切な措置をとることについて同意しない場合には,調整委員会が決定すると   ビら  される。この(1)から㈲で傍点を付した項目についてそのいずれもが,利害の妥 協と譲歩をもとめているといえるのであり,労働の形成に対して修正的にしか 作用しえないからである。  労働時間の短縮について。労働時間の短縮は,労働の人間化に対して直接的 に関連するものであるか,それについて否定的な立場をとるものもある。すな わち,労働の人間化とは,労働過程それ自体の変革が問題になるのであって, 労働時間を短縮してより多くの自由時間を得ることによっては,労働する人間 の生活それ自体の質を充実させることは可能ではあるが,労働生活そのものは 変らないのではないかと。それについて,フィルマールはいう,「たとえ最も 興味ある創造的な労働であっても,それがあまりに長時間つづくならば,それ は強制労働になってしまう。さらにいう,ミューズの女神がいなければ,創造        66) 性は死んでしまう」と。  労働は,基本的には,日単位,週単位あるいは年単位ごとにそれぞれ時心的 に明確に区切られていること,そして純粋に量的な次元からのみ見ても苦痛に 感じられないような場合でなければ,人間に合っているとはいえない。その意 味で,労働時間の短縮は,労働の人間化をさぐる統合的な構想の部分戦略を形 65) Kittner, Michael, a. a.0., S.259 66) Vilmar, Fritz/Sattler, Kar1−Otto, a. a.0., S.149.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  85 成しうるといわれるのである。  労働時間の人間化は,また,量的な次元にとどまらない。個々の作業工程に よって生ずる労働給付の多様性に対応して,質的にも変革がもとめられなけれ ばならない場合がある。「スライド制による労働時間」の導入あるいは交替労 働の廃止への要求がその例としてあげられる。そして,これらの要求は,同時 に,明らかに労働組織そのものの構造的変革と密接不可分に結びついてくるの である。  「労働人間化の統合的な構想の中で,より新しい,より人間的な「労働の構 造化」の概念を,これらの部分戦略の最後のものとして紹介するは,ゆえなき       アラ ことではない。」フィルマールはいう。労働職務の充実と労働組織の自律化を めぐる戦略は,人間化戦略の中でも最も中心的な要求であり可能性をあらわす ものといわれるからである。技術主義の立場からも多くの人びとによって新し い「労働生活の質」の特効薬として推奨されているこの「より人問的な」労働 組織の形成の戦略には,経済の民主化を目標とする人間化戦略の立場からも,       68) 「真に構造変革的な意味」をもっことが期待されている。  労働組織の自律化の要求は,生産過程の機械化が限界にまで発展し,それ にともなって単調な反復労働あるいは他律的な労働が再び逓増してきたことに 対する労働者の自意識が高揚し,それが自覚的な抵抗にまで発展しはじめる につれて,次第に表面化してきたものである。そして,この傾向が次第次第に 経営者の一部,労働組合の人びとそして経営諸学の研究者をして従来不可侵 なものとされてきた官僚制や分業的階層組織の中核をなす技術的および組織的 な基礎構造が,決して聖域でもなく,必然的なものでもなく,むしろ,変革 の可能な,「人問化できる」ものであるという認識をもたせるにいたったので ある。  労働職務の充実と自律化の傾向は,その理念としては,たとえば近代語の経 営社会学の先駆者の1人であったフリードマン(Friedmann, Georges)の思考 67) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S, 152. 68) Ebenda.

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 86  彦根論叢 第216号 にまでさかのぼることができる。          フリードマンは,その主著『細分化された労働』の中で,労働の生産性は, 分業や労働の細分化をすすめても,一定の時点からもはや上昇しえないことを 明らかにしている。労働の細分化は,個々の労働内容をして必然的に単調なも のへと変える。この労働における単調さの増加は,その結果として,労働過程 に一連のネガティヴな付随現象一例えば,無断欠勤,作業ミス,職場からの逃       アの 避,経営風土の荒廃,精神的不安定,そしてサボタージュ二一があらわれると いう。そして,それに対するに,職務の拡大と充実とを提唱するのである。す なわち,彼によれば,労働する人間に対して,より大きな,そして変化に富ん だ労働職務を委譲することは,一方で,職場における人間の尊厳を回復さすと ともに,他方において労働の生産性を再び上昇せしめる。この労働職務の拡大 と自律化は,また,現在の資本主義的な生産条件の下でも充分に実現可能であ         ア  る,というのである。  フリードマンの思考は,その後,テイラリズムおよび古典的人間関係論学派 の労働組織観を批判しながら,自律的な労働の形成について1つの新しい概念 を発展させたイギリスのタヴィストック研究所のグループによる「社会一技術 システムのアプローチ」に受けつがれる。新しい労働組織の概念として,2っ の前提が主張されるのである。すなわち,  第1に,伝統的な,例えば,テイラリズムの労働組織概念は,ただ1つのシ ステムすなわち技術システムの形成からのみ出発していた。そこでは,労働す る人間の社会システムは技術システムに一方的に適応しなけれぽならなかっ た。それに対して,社会一技術システムの思考では,真に効果的な労働過程は 2つのシステム,すなわち技術的システムと社会システムの「最適な同時的形 69) Friedmann, Georges, Le Trawail en miettes, 一sPicialisation et loisirs一, 1964  (1956).(小関藤一郎訳『細分化された労働』川島書店1973年。) 70) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 152−153. Vgl. Friedmann, Georges,  a. a. O. 7!) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 153.

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       経営における労働の人間三一その方法と政策  87 成」 (joint optimization)によってのみ実現されうる。労働過程の形成は,労 働している人間集団の協働システムと技術的な生産設備のメカニズムとが相互 に結びつけられ,同時に最適に秩序づけられる場合にのみ,効果的に機能しう るというのである。  第2に,この社会一技術システムとしての労働の形成には,その下で企業が 機能している政治的,組織的,心理的,そして就中,経済的な諸条件が充分に 計慮されなければならない。企業とは,すなわち,「開かれた」社会一技術シ ステムであるからである。例えば,企業のもつ社会的な組織力,市場状況と生       アカ 産性,社会的一文化的な環境条件,技術工学の発展等の条件がそれである。  この社会一技術システムの前提をもとに,ノルウェーの産業社会学者トール スルッド(Thorsrud, Einor)は,政府の委託をうけて,労働組織の変革の実験 をおこなった。 r産業民主化のプログラムを実現するための人間的な労働構造   ゆ の形成」と称されるこの戦略には,また,タヴィストヅク研究所のエメリー (Emery, F. E)が協力者として参加したことでも知られている。経済民主化 を目標とした,人間的な労働組織の形成として,次の三原則が掲げられる。  一最適な広がりをもった労働の実施:そのためには,それぞれの個別的な    作業に対して,1つ1つまとまりのある職務が与えられるように,全体    としての経営の職務を意味関連のあるものとして編成すること  一生産の量および質について一定の基準を設定し,その生産の結果にかん    する情報を労働にたずさわった人間に的確にフィードバックすること    補助労働や準備労働も労働過程の中に包摂し,全体に対する意味づけが    明らかなように適正に関連づけること  一労働過程全体の中にふくまれる職務について,その技能,知識,努力が    所属する社会において充分に認められるようにするための価値基準を設    了すること 72) Ebenda. Vgl. Trist, E. L,/Higgin, G. W.IMurray, H./Pollock, A. B,, Organixatio−  nal Choice, London 1963. 73) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 153.

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 88  彦根論叢 第216号  一経営活動の全体として,その製品が消費者に与える効用の中に充分な貢       アの    献を給付しうるものとすること。  そして,これらの基本原則にしたがって,自律的な労働の形成にむけた次の ような4つの人間界モデルが体系化される。  1.職務の交替  2.職務の拡大  3.職務の充実          4.半自律的な労働集団。  すでに今日ではあまねく知られるようになったこれらのプログラムに対し て,そこに実践的な戦略としてだけでなく,理念としても,将来の労働人間化 のための構想をもとめうるとする人びともあった。例えば,護摩でみたごとく, ウーリヅヒ(Ulich, Eberhard)は,労働する人間の「意思決定の空間と自己実 現」として,そこに職場における共同決定の志向すべき理念の結晶をみようと        アのしたのである。なかでも,とりわけて,「半自律的な労働集団」の戦略は,と きには「労働人間化」の代名詞としてもちいられるように,大きな反響をよん だのであるが,その成功は,労働の人間化がたんなる「理想の高い」モデルと して採算のあわない改革をめざすユートピアとして片づけられるものではな く,むしろその反対に,生産性の利益とも一致しながら実現できるものであり, 他方においては,労働者の自主独立性や拮抗力の形成に導くものであることを       アわ 示したものであるといわれる。  半自律的な労働集団の戦略は,職場における共同決定をもとに,「自己制御 的な集団」の形成をめざした労働組織を構造化せんとするものであり,そのエ 74) Vgl. Thorsrud, Einar, Demokratisierung der Arbeitsorganisation, in: Vilmar,  Fritz (Hrsg.), Menschenwdirde im Betrieb, a. a. O., S. 13f. 75) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S, 154. 76)拙稿「経営における労働の人間化一その概念と論理」前掲.134頁。 77) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 158. Vgl. Mendner, 1. H., “Huma−  nisierung” oder Automatisierung? Zur Zukunft der Kapitalistischen Arbeit, in:  Kursbuch 43, Berlin 1976, S・ 138.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  89 ッセンスは次のような諸点に要約される。すなわち,  一労働者の職業教育の拡大と高度化をもとに労働の役割間の交替を可能に    する  一遠隔的な統制にかわって,それぞれの集団自身に統制権限を委譲する  一労働者自身による統制を容易にするために調整委員会を設営する  一経験の交換を目的とした定;期的な労働集団の協議の場を設置する  一中間的な管理レベルの新しい役割や職能に対して職場長を教育する       ラ  一集団としてのプログラム労働に対する報奨金システムを導入する。  1974年,西ドイツの連邦政府は,労働省と科学技術省との共同で,行動計画       アの『労働生活の人聞化のための研究』を発足させた。その最も大きな推進力とな ったのは労働組合による経済の民主化と経営共同決定の拡大をもとめる要求に        のよるものであったが,他方において,その具体的内容をみるならば,自律的な 労働集団の形成を理念とする「職務の拡大」(Aufgabeverweiterung)の戦略の 経験が大きな刺戟になったことも明らかであった。  行動プログラムの作成の中心人物であった科学技術者の連邦相マットヘーフ ァー(Matth6fer, Hans)は,次のように述べている。「われわれの行動プログ ラム『労働生活の人間化のための研究』が意図せんとしているところは,企業 と労働者とが,いかにしたら労働の苦痛をとりのぞき,そして,より良き労働 組織の構造の構築に効果的に協働することができるかについて経営において実 践し,両者の前に明らかにし,そして彼ら自身デモンストレートすることであ る。……これまですでに承認されたほぼ130のプロジェクトにおいて,労働組 78) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 158. 79) Forschung Zur Humanisierung des Arbeitslebens. Aktionsprogramm des Bun−  desministers fifr Arbeit und Sozialforschung und des Bundesministers fUr Forschung  und Technologie, in: So2ialPolitische lnfornzation (Hrsg. von der Bundesminister  ftir Arbeit und Sozialforschung), Sonderausgabe Jg.田,8. Mai 1974.(南岩男訳  「労働生活の人間化に関する研究一ドイツ連邦共和国労働省および科学技術省の行動  計画」南岩男著『日本の労務管理』(高州堂)1976年。483−517頁。) 80)拙稿「経営組織法と労働の人間化」前掲 3頁以降参照。

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 90 彦根論叢 第216号 織的な措置のグループが最も大きな比重をしめている。その中心になっている のは,労働者に対して段階的な技能の向上への可能性とむすびつけながら,か       81)れらの労働職務の拡大と充実をもたらすような労働構造の発展がである」と。 IV 結 論  前節において,経営における労働の人間化をめぐる戦略のモデルをみてき た。それらは,いずれも,労働する人間の自覚的な意識の成長と,それにもと つく労働組合の政策要求として登場しながら,経営政策として,法的な規定あ るいは制度として,そして叉,国家的なプログラムとして,次第に現実化して いった。今日,労働科学,経営社会学あるいは経営経済学等の諸学の対象とし ても問題としても,すでに市民権をえつつあるものということができる。しか        きの し,「労働内容の変革を意図する努力」であるところのその個々の戦略につい て,それを個捌的に孤立化させてみるならぽ,いわゆる「疑似的な人間化戦 略」と同じく,経営内のミクロの次元の問題として技術的な問題として,むし ろ,給付原理にむすびつけられうるのである。  労働の人間化は,技術的な問題ではなく,労働する人間の生存にかかわる政        83) 治的な問題である。人間化は,経営における技術過程による労働過程の支配と, それに対する労働する人間の適応にかわって,技術過程の拘束をはなれた自主 自律的な社会過程への変革を目ざすものであった。労働の人間化の形成の場 は,経営政策の空間の中にある。しかし,それにもかかわらず,経営における 社会過程の変革が,個別的な経営内の空間にのみ孤立的に制約されるならば, その本来の目標を達成することはできない。そこには,経営を超えた社会全体 への発展と変革の理念が,フィットのいう「明確にして,改革の意志に動機づ         けられた政治的な意識」がなければならないからである。 81) Matth6fer, Hans: 82) Weil, Reinhold, a a O., S, 78. 83) Weil, Reinhold, a. a. O., S. 77. 84) Vitt, Werner, a. a. O., S. 150.

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       経営における労働の人間化一その方法と政策  9!  経営における労働人間化の戦略と社会的な変革への意図のむすびつきは,い かにして得られるのか。すでに見たごとく,おなじく経営をその政策的な実現 の場とする労働の人間化と共同決定とは,相互に補完的な強いむすびつきをも っていた。一方は具体的な形成課題として,他は意志決定のシステムとしてで ある。そして,共同決定とのむすびつきは,経済民主化を目標とする労働人間 化の基本的な出発前提をなすものでもあっ1こ。  周知のごとく,共同決定には,4つのレベルがあるといわれる。すなわち, 労資同権的に配置された経済一社会的な協議機関を通じ.て市場経済秩序の基本 的なメカニズムに対して,その本質にまで影響を及ぼすような変革を意図する 「経済における共同決定」,監査役会における労資同権と取締役会における労 資共同にもとづいて企業の管理および私的所有権の処分に対する全体的な影響 力の行使を意図する「企業における共同決定」,経営協議会,調整委員会およ び労働組合等の諸制度を通じて,経営の階層組織の全ゆる面における協議と交 捗への参加の機会を拡大せんとする「経営(工場)における共同決定」,そし て,労働者に対するあるいは労働者自身による各人の労働の形成,他の労働者 との協働および労働諸条件にかんする直接的な権利の行使としての自律的な意       85) 志決定の実現に志向する「職場における共同決定」である。これらの共同決定 の諸レベルについて,経営をこえる(政治的,社会的および全体経済的)共同 決定は,社会の変革をもとめ,それによって聞接的に労働の世界に作用をおよ ばすのに対して,企業における経済的な共同決定と経営および職場における社 会的ならびに人事的な共同決定は,経営における権力関係と労働条件の直接的           な変革に志向する。」それぞれの共同決定は,間接的あるいは直接的に,労働 の世界の変革に対する全体的な構想の中にくみこまれているのである。労働の 人間化は,直接的には,職場における共同決定と相互補充的に,一一方は具 体的な形成課題として,他は意志決定のシステムとして一結びつくものであ るが,同時に,この職場共同決定との結びつきを通じて,共同決定の全体的な 85) Weil, Reinhold, a. a. O., S. 48. 86) Weil, Reinhold, a. a. O,, S. 49,

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 92  彦根論叢 第216号 構想にくみこまれているのである。そして, (われわれの経済および社会の) 変革に対する決定的な端緒をひらくものは「全ゆるレベルにおける共同決定の       87) 要求と「労働の人間化」の理念の結びつきなのである。」       88)  経済の民主化について,「古典的には」,1つには,労働における自主決定, 2つには,共同経済的な経営政策ないし企業政策,さらに,その3つには,個       きの 人の利益と社会との問の最適な発展が,その目標とされてきた。しかるに,今 日,経済政策ならびに企業政策の民主化として,新たな課題が形成され,てき た。すなわち,その第1は,エコロジカルな人間の生活の基盤の維持ないし再 形成であり,第2は,人間の尊厳の利益にあわせた労働諸条件の革命的な再組        織である。労働の人間化は,ここに産業社会の「質的な成長」と共に,統合的 な経済民主化の政策の中に包摂されな:ければならないのである。 87) Weil, Reinhold, a. a. O., S. 47. 88) Vilmar, Fritz/Sattler, Karl−Otto, a. a. O., S. 55. 89) Ebenda. 90) Ebenda.

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