キンドルバーガーの国際収支不均衡論
片山
貞
雄
F 一 第二次大戦後の.最大の国際経済問題はドル不足問題であった。現在でこそ、ポンドを始めとする西欧通貨交換性が実施 され、又米国の金流出に関連して、ドルの切下げ、金価格引上げの噂も一時的に聞かれた程であり、表面的にはドル不足 はその影をひそめた様に見える。 然し、将来ドル不足が消滅したとしても、その間論じられた議論はかってのドイツ賠償金・﹁ランスファー問題と同様、 国際経済理論に対する影響は大なるものがあったと云いうるであろう。 私は既に特色ある国際牧支不均衡論 ドル不足論一を展開せるキンドルバーガーの所論を吟味して来た。今彼の改 訂版﹁国際経済学﹂に接する事が出来、彼の不均衡論を本書を中心として、又それ以前の著書、論文をも対比の為に参照 しつつ、改めて整理、吟味したい。 ①拙稿﹁キンドルバーガーの弗不足論をめぐりて﹂六甲台論集一の三。 ② O.℃e囚ヨ巳①げ卑σqΦ♪H巨Φ遷餌戯。口=。一国oo昌。日ざω︸菊Φ<.①α二Φ。。O①o蟹=胃貝母け.<H二8。。.︵H団。︵卜○︶と略す。︶ ③ρ剛.囚冒臼ΦげΦ陛σqΦが禦げΦUo=費ωげoH8σqρちαP︵北川訳︶︵O■ω・と略す。︶国・∪Φω鷲Φ。。即ρ囚出町Φげ霞σq興・.、目げ①ζ①− o座臥。・日♂H諺岱甘。・けヨΦ三一昌H巨の遷9。菖8巴”爵B自けωi日冨目Φ。。ω8。。o臨勺。。・碁p︻昌昌Φユ窪oρ、、︾ヨg国。8.国Φ︿‘ζ⇔ざ キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 二三キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 二四 一〇㎝ω■○勺■囚言臼①げ。お①がH巨興昌同相。ロ巴国ooコ。ヨ一〇。。一①ω噂①9巴ぼ℃o耳H<.お㎝ω■︵H.国.︵一︶と略す。︶右拙稿は主として び部分的にH.燭︵じを取扱った。猶、︼︶o..,日げ①Uo=碧ωプ。博pσQo園叩ヵ①註ω一89、、︾ヨ●国ooP菊Φ<.ピロΦおα。。■ * 二 ∪﹁ω・及 キンドルバーガーはあらゆる不均衡を価格又は所得、及び両者の不均衡と看製す。先ず所得不均衡とは相対価格の大な る変化なくして国民所得が外国のそれに対して変化する︵又は逆︶不均衡である。一方構造的不均衡は所得水準の大なる変 国際経済不均衡の種類 1表 (皿)価格不均衡 財の面に於け (e)る構造的不均 衡 要素の面に於 (f)ける構造的不 均衡
(・)富鉱編
インフレ・:不 (c)適切な為替相 場変更 組 織 的 (d)技術変化
(1)所得不均衡 (a>循環的不均衡 長期趨勢的 (b) 不 均 衡 化なくして主として相対価格に於いて起る不均衡である。猶、為替相場の変更又はインフレ によってもたらされた為替相場の過少・過大評価のケースは両者の中間的手洗に属する。又 貨幣所得の上昇、価格の下落をもたらす技術変化のケースも同様ある。各々を表に示めせば 1表の如くである。 然し此の区分は任意的なものであって、実際には所得変化は相対価格の変化なくして起り ②. えないし、又その逆の事も云える。区分の利益はその対策にあるとする。 彼が最も重視するのは︵1︶、︵皿︶の範疇に属する不均衡、即ち、㈲、㈲、㈲、qうである。 尤も㈹を㈲に関連して述べ、又組織的でない一定の技術変化は㈹を惹起せしめる一原因とし 、て述べている。 先ず循環的不均衡から論じよう。これは各国の景気循環の型及び輸入需要所得弾力性の相 違により起る。今、A・Bご国を想定する。先ずAの国民所得が変動し、Bのそれが不変の場 合、Aの輸入需要所得弾力性が零より大であればAの輸入︵Bの輸出︶は不況時に下落し、好図 1 A:赤字 s;黒字 T
∀晶激
B:赤字 x Bの所得及O’“a入 間 時 図 2 A,Bハランス 轍 麗 欝 へ/
A,8パフンス 間 時 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 5 5 0 5 1 ! 所得及び輸入︵指数︶ 所得及び輸入︵指数︶ 変化により複雑性を増すが、後進国が好況時には所得効果が強く働き︵自国の高所得による輸入の急増︶、 果が強く働ぎ︵輸出品の価格下落︶、為に牧.支に悪しぎ影響を受け、 不況時には相手国即ち後進国の所得下落による輸出の急減︶を強調するのはシンメトリカルでない。 さて、大言の循環的不均衡及びその対策は1図のモデルの仮定に基いて行われて来た。TにてとられるべきBの対策が 問題となる。その入超は自己の過失によるものではない。その輸出低落は実質所得の相当の低下をもたらす。 以下順を追って老察しよう。金本位制の矯正策たるデフレーションは望ましくないし、又為替切下げも好ましくない。 ︵後者のにがい経験は緩和されつつある。︶一方制限的通商政策は世界貿易を破壊し、不況を激化する。従って国際流動性準備 キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 二五 況時に上昇する。 一方Bの輸入︵Aの輸出︶は一定である。 従ってAはその不況時に出超、好況時に入超となる。︵−図︶ 次にA・Bの国民所得の型が同じであって輸入需要所得 弾力性が各々1である場合、不均衡は存在しない。︵2図︶ 従って景気循環は不均衡の必要条件であっても充分条件で はないQ 又、A・Bの国民所得の型が同一であって、Aの輸入需要 所得弾力性が一より大きく、Bのそれが一より小なる場合 Aは不況時に出超、好況時に入超︵Bは逆︶となる。︵3図︶ 然し景気循環の上昇、下降により価格が変化し、価格弾 力性の値によって輸入額ば変化する。又価格弾力性は所得 不況時には価格効 一方工業国が逆の悪しぎ効果︵好況時には輸入品価格上昇、︾ 闇 図 3 キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 60 50 oo 50 40 ’”一一黷汲k / :N〈 × 魎.・・c...喩、 Aの輸入 A:赤字 B;黒字 ノ1唱A ノ \ 1
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、.”ノ! A:黒字 B:赤字 N N A及び8の国民所得 。 時 間 所 得 及 び 入 指 数 100 50 40 図 4 A:黒字 B:赤字 /Bの所得及鵬入 !’一、、 1’@N
一一 11t Ns X / !
ノ \\.ノ/\。の所、,鵬入
A.里字 (完全雇傭水準壽100) B・赤字 。 時 間 撚 撚脚鴨50 所得及び輸入︵指数﹀ 転資金として使用されうる。然しある国々が景気循環の特定の局面に於いて、 が一循環過程に於いて相殺されなければ、基金は困難に適遇せざるを得ない。 ち、Bがインフレの傾向を持つならば︵A・Bの輸入需要所得弾力性を一、 ると仮定︶Bは不況期にも好況期にも赤字︵4図︶となり、基金への返済は不能となる。 うるであろう。 二六 が必要とされる。此の様な準備を与える機関とし て設立されたのが国際通貨基金︵IMF︶であっ た。然し基金は次の二原則にその基礎を置いてい た。即ち第一に一定国の循環的不均衡は循環の一 周期に於いて均衡する事、第二に循環的不均衡は 無差別に各国に起る事であった。前者の原則に基 いて不況期に赤字を持つ国は好況期に黒字となる 事、且つこれによって基金よりの借入を返済し、 逆の作用を持つ国も夫々黒字の時に返済するとい う事と、第二の原則により如何なる国の通貨もそ の程度に差こそあれ必要とされるであろうという 仮定に基いていた。両原則により各国の通貨のプ ールが大なる程、強力に対循環的不均衡の為の回 絶えず一定の方向に防ぎ、且つ黒字と赤字 即ち、例えばAが絶えずデフレの傾向を持 為替相場は両国が完全雇傭にある時に冷遇を均衡せしめ これはドル不足説明の一武器たり’ キンドルバーガーはその著﹁ドル不足論﹂に於いて先ず不況が米国にて発生する事を前提とした。即ち米国は投資に比 べて高水準の貯蓄を持った国である。此の様な状態であれば、不況に陥り易く、又米国からの資本輸入が中断した場合、 借手国にインフレを惹起し易い等の理由により米国にて不況は発生し易く、外国に於いて発生しても米国の方が強くなり 易いとする。かかる前提に立てば米国はその輸出増大に対して過少補整︵ロ巳288需霧讐8︶、 輸入増大に対して過大補. 整︵O<①目OOb日眉Φ昌oD蝉け一〇コ︶の傾向が存在し、諸外国にはその逆の現象が存在する。此の事は米国と諸外国とのデフレ・イン プレ的関係即ち循環的なものであろうが、彼もこれを﹁国内の貯蓄供給と投資機会の函数関係である﹂と云う如く米国及 びドル不足国の持つ経済自体に由来するものである。 更にBの輸入需要所得弾力性に特殊の仮定−循環の⊥昇期にはそれが一より大であって、下降期には一より小1を設け 図 5 /Bの輸入 /v A及びBの国民所得,Aの輸入 (完全雇傭水準一100) 時 間 0 25 O0 V5 T0 所得及び輸入︵指数︶ キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 る事により︵Aのそれは一︶Bは循環の両局面に於いて入超となる。︵5図︶此の様な可能性 から生ずるドル不足は特に後進国に妥当するであろう。 一方、私的長期貸付も対循環的機能を持たず、好況に拡張し、不況に牧卜するのが近年 の皮実であった。即ちコ現実には長期私的海外投資は景気の転換点を除いては、国内投資 と正の相関々係を持つ傾向にあった。L その理由は加速度原理に見出される。例えば米国 々内投資の下落はその所得及び輸入の減少をもたらす結果、海外諸国の輸出は減少、従っ てその国民所得、投資は低落し、為に貸付誘因の小なる国となる。更に又借手国側の輸出 下落は新貸付の利子や償還の予想を暗くする。従って貸付国側より見れば﹁輸出水準の高 い程借手国にはクレディトを受ける価値がある﹂と看倣される。 以上の如く循環的不均衡に対する有効な対策は存在しない。結局Aが不況の時Bは輸入 二七
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 一. 齡ェ 制限を強化し、Aの国民所得及び輸入が上昇す.るにつれ、Bはその制限を緩.和するというのが各国のとった措置であっ た。循環的不均衡を解決し、基金を有効に機能せしめる方法は長期不均衡を除去する事である。 芸彼の国際牧支均衡︵所謂均衡為替相場︶についての定義を簡単に見よう。 じ 即ち、均衡とは一適切な期間に亘り、激しい失業なくして、一継続的な基盤において一解放的経済︵○も①コ①oo切。ヨ黒。娼Φ口⇔σωωoh 臣。Φ080日団︶の維持を可能にする国際牧支均衡の状態である。 ㈲ 均衡・不均衡の判断が行われる期間の長さに依存する。 ㈲ 在庫品の変動及び過大流動性を考慮すべきである。後者は特に資本逃避に意義を持つ。 ⑥ 不当な輸入制限の不存在、即ち関税又は量的制限か輸入を輸出水準迄圧縮せんと.する目的でもって行われない事である。 猶、国際牧支均衡を静態及び動態に区分する。 、 前者は×巨ζ︵H餌11ω︶である。︵H陛ω Hα十鳳nω 属11×iζ ...H山十×団ω十ζ・皿、Hは夫々国[内投資、対外投資︶此の場合 長期資本移動は零、短期資本・金移動は少額であって、純額では零となる。在庫投資は零か、絶対額が小。− 後者は ω短期動態均衡と ②長期動態均衡に分れる。 ω ×紺ζ その差額は短期資本・金移動に等しい。但し、撹乱的短資は除く。 ② ×湿ζ その差額は長期自発的資本移動に等しい。 月国・︵卜⊃︶℃弓℃誌$∼心。。㎝Lc。悼. キンドルバーガーは国際牧支均衡をあまりにも厳重に解する事には反対している。 ①彼は説明していないが、自由レートの場合起り易い。例えば第一次大戦後のドイツ・インフレの初期にみられた。︵○.嵩節げの臨①♪ U①h目口豊凶臥。昌里①出碧山Φr一〇ωG。.訳本=一三、=一五頁。目げΦ↓﹃Φoqo臨H口8鑓⇔鼠。冨巴日直窪Φ■”国ゆσq=ωげ目口コ。・●卸閑Φ︿7 吻①山﹄︼8◎唱唱.ひ︼∼N︶︵ブレシアニ・トロー二はドイツ・インフレの第二段階、即ち紙幣が引続き増発され、マルクに対する不信が 急激に広まった時に此の現象が見られたとする。O・ωH①ωo冨ξ1↓5畦。巳闇討プ①国ooロ。ヨざ。・o︷H昌離日ぼoP国 σq㌫ωげ日量昌ω‘おω刈” 娼℃・悼誤∼ひ● 東京銀行集会所調査課抄訳﹁独逸インフレ⋮ションの解剖﹂一九六∼七頁。︶ ② 9■H.国.︵じりや.ら9H・国■︵図﹀℃や轟。。c。. ③Bの所得は一定であるから、その所得弾力性は考慮に入らない。︵H・国畳︵悼︶℃勺・晶£︶勿論此の場合、Aの輸入要所得弾力性は零より 大でなければならぬ。
④U●ωご贈・Oひ∼c。■訳=一〇∼二頁。 ’ ⑤ ∪馨。一恒O。。.訳 一ニニ頁。此の考え方は彼のドル不足論の一ポイントをなす。最近のレヴ.ユi・アーティクルに於いてもその考 えは一貫している。即ちマクドウガルが一九七五年の米国国際牧支を予測し、構造変動により悲観的な場合には一六〇億ドルの米国 の出超即ちドル不足が生じると結論したが、︵一﹀ζp。oOoβσq巴ド目ゲ①ぐ﹃90匡山Uo=碧℃同〇三〇目”お0メΦ。。℃①o冨=ざ℃O.Nc。O∼伊彼の 構造変動の定義はU葺。もや一台hhを見.よ。︶これに対し、キンドルバーガーは米国の貯蓄が投資を超過せず、又他の諸国がその反 対の傾向を持たずして、どうしてその事が先験的に可能かと問う。O..℃.穴冒巳①げ霞σqΦが零日げoUo一一費ωゲ。誹⇔σQΦ因Φ−菊①詠ω一8負、、 oや。一けやωc。ρ ⑥月琴・︵図︶層娼.留ω●景気転換点に於いては利子率が作用する。例えば一九二八∼九年にかけての米.国株式ブーム時には株式ブローカ 一資金需要の為、利子率が急澄した。然し一般に加速度効果が利子率の差異より起る資本移動の均衡化効果を圧倒する。 H.国.︵図γ 唱戸ω刈ω∼命 然しながら、ブルームフィールドは一九一九∼二九の米国長期資本移動はその景気循環と逆の動きを示めしたという。 ︵︾.H.じuδ。巨自負9二丁=ヨ℃。西目巳昏①︾ヨΦ自薦口ゆ巴昌8。h℃日日①目。・=oこ・心lG。P頸。為窓①巳冒娼’ω8︶又、ラリ 一は米国に於ける外債応募も同様な動きを示めしたとし、その説明を長期利子率の差異に求める。︵口■Ud.い臼尻卿。跨臼ω︸8げ①d巳− 叶Φ山ω訂8ω言夢①♂<o困自国oo昌。日ざ一叢も・℃℃’OD∼ω■本書はH.国■︹ごにて参考書として挙げられていた。℃・一心︶勿論異ったケー スを生じるが、資本移動と景気循環の関連については検討を試みたい。 ⑦9け8噂㍗ωお. 三 均衡に対する長期撹乱とは経済が成艮の一段階から他の段階へと移行するにつれて、そ.の経済の長期的且つ深く根ざし た変化の為に起る不均衡である。 キンドルバーガーは資本主義の発展を工業化への傾向であるとし、その過程を人間の成長になぞらえて六段階に分割し 国際牧支の状態を国内貯蓄と投資との関連にて説明した。そして現在の長期ドル不足を説明する為に世界の国を三つの範 躊、即ち国内投資が貯蓄を越え常に入超の傾向を持つ未成熟債務国−後進国1、貯蓄が国内投資を越え、常に出超の傾向を キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 二九
2表
国内投資・貯蓄 経常勘定 階 段 展 発 キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 0十 十 〇膝垂垂
1>未成熟債務国(Young and Growing Debtor) 2)成入債務国(Adult Debtor). 3)成熟債務国(Mature Debtor) 4)未成熟債権国(Young Creditor) 5)成人債権国(Adult Creditor) 6)成黙債権国(Mature Creditor) 三〇 持ち、資本輸出の段階にある未成熟債権国−米国−、及び既に老成の段階に達し、未成熟 債務国と同様な傾向を持つ成熟債権国−英国iとに分って論じた事は周知の所である。 さて、長期不均衡は経済発展に影響を与える諸要因と関連して述べられるが、キンド ルバーガーは資本形成︵貯蓄との関係にて︶と技術変化を取上げて論ずる。 先ず前者について云えばこうである。国内投資が資本輸入を加えたものに等しければ 不均衡は存在しない。長期不均衡の存在は﹁国内投資と貯蓄の差が資本の流れと独立的 存在であり、且つ組織的である事に由来する。﹂ 後進国について云えば国内投資が貯蓄 を越える理由は明白である。即ち充分の投資機会の存在と生産・消費に於ける先進国の 模倣である。一方、成熟段階に達した国は抜駆革新者としての地位より脱落し、海外の 技術を模倣する段階に至る。新しい資本財を輸入しても生産性はそれに比例して上昇せ ず、支出機会が上昇する。此の場合通常投資機会は国内の方が高いので対外投資は行わ れない。此の段階の国の不均衡をキンドルバーガーは﹁正の対外投資より小である牧支 余剰という形をとり、極端な形態にては正の対外投資を伴った牧支赤字の形態をとる﹂ という。即ち極端には入超にもかかわらず、対外投資を行う状態である。 次に技術変化についてであるが、これは技術革新にて指導者の地位をとる未成熟債権 国を中心として論ずる。 所で、一定の技術進歩からの撹乱は構造的・無差別的性質のものである。困難は革新 が集中される事より生ずる。技術革新にて指導的な地位にある国は新投資機会による牧支赤字には悩まない。その内これらの新機会は世界の各地に存在する様になり、︵各国の模倣︶投資表を引上げる。革新国 の生産性の上昇は所得及び貯蓄を増加せしめ、出超をもたらす。更に革新が此の様に一国に集中されるという歪みを持っ ているならば次の理由により長期不均衡が起る。ω一連の技術変化が停止した場合、海外では投資が貯蓄を越え、革新国 では逆の傾向に導くであろう。又は働長期不均衝は常に同一方向への一連覇過渡的不均衡の累積を表しているとも云えよ う。例えば新商品の輸出、旧商品の偏輸出改善又は偏輸入改善があれば、輸出は増加するが、輸入は減少する。他国は比較 生産費法則にそって調整しなければならない。その場合過渡的な赤字を生じるが、此の様な状態が累積されると云えよう。 此の様な彼の議論はピックス、ジョンソンと比較して粗いが、技術進歩の持つ所得効果、価格効果、 交易条件効果︵彼 はこれを粗雑議論と云う。︶よりも各々の段階国の持つ特色−貯蓄・投資関係一を重視する為であろう。 彼は又次の如く云う。即ち技術が一定であるか又は徐々に進歩する場合、資本の限界効率は後進国が高いので革新国の資 本輸出は容易であるが、若し技術進歩率が大なる場合、資本は国内で吸牧され、輸出は行われ難い。それは長期不均衡を高め る傾向を持つと。此の場合、技術進歩が資本集約的であると考えているので過剰貯蓄従って不均衡を相殺する傾向を二つ が、それ以上に未成熟債権国の資本輸出減少の結果、後進国の過大投資の傾向が強められる事を彼は強調する様に見える。 以上の様に長期不均衡が貯蓄と国内投資の不一致を伴った対外貸付と借入の不一致であるならば、その対策は一方では ω対外貸付と借入、他方では国内投資及び貯蓄に対して効果を持つ所の②貨幣・財政々策である。 今経済発展が進行しつつある場合、少くとも一・三・四段階が長期資本移動と関連を持つ。即ち未成熟債務国は借入れ るべきであり、成熟債務国は償還すべきであり、未成熟債権国は貸出すべぎである。 一方、講習階の成熟債権国には此の 規定は適用されるべきでない。換言すれば如何なる国もその段階に達する事を認めるべきでなく、五段階に戻すべきであ る、と。此の点彼が﹁ドル不足論﹂にて﹁全在外資本を消費した後、又はその幾らか前に若年債務国として出発する事か キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 ゴ=
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三二 ざましいしといった事と矛盾する。尤もそれはあまりにも調和的に考え過ぎたと思われる。 先ず、対策ωから吟味しよう。私的貸付市場は戦争の為に崩壊し、その恢復は徐々であってギャップを満たす為に公的 貸付が必要とされた。その内最も期待されたのが、国際復興開発銀行︵IBRD︶ であった。然し貸付の為の主たる財源 を構成するるのは借入れであり、それを容易にする為に拘束貸付の方へと進み、貸付額もその需要の年当りご五∼三〇億 ドルに比べて三∼四億ドルにすぎず、却って投資を刺戟し、不均衡の一因をもたらした。又国連に於いて主に米英の拠出 により、 後進国に開発資金1特に社会的一般資本投資一の贈与を行う基金︵○。需9巴¢巳8餌Zpけδ昌ω閃且鼠8円国8琴ヨ冒 UΦ<①一8日①葺︶の設置が考えられたが実現には至らなかった。 一単私的投資について云えば戦後︵米の︶間接投資は減少し、大部分は直接投資である。 然しそれは借手により歓迎さ れず、又多くの企業はその利潤.を海外投資に使用するのみであるので過剰貯蓄を相殺しない。 所で理論的には未成熟債務国の過大投資率、未成熟債権国の過剰貯蓄率、対外投資率は均衡に於いてバランスされてい なければならない。若し二者が変数であっても調整は困難である。例えば一九三〇年代にては先進国の過剰貯蓄が独立変 数で、後進国の投資と前者の対外貸付をその過剰貯蓄に調整せしめるという困難性であった。然るに五〇年代にては後進 国の過大投資が独立変数となった事である。結局望まれる対策は合理的な水準での対外貸付の安定であり、それに貨幣・ 財政々策を調整せしめる事であろう。困難は循環的不均衡と長期不均衡が重り合う事である。此の場合、貨幣・財政々策 は両段階の国によって行われねばならない。即ち未成熟債権国は不況を除去し、国民所得を維持し、又米国の場合は特に 貿易障壁を除去する事である。後進国は消費、投資、政府支出を抑える事である。然し輸入制限によって支えられたイン フレを最も望ましからざるものとする。
①∪・Qっこ唱■謹∼c。ρ 前掲論文参照。 ℃,感冒∼心G心■︵9弓ひ’︶訳九一∼五、一五一∼七八頁。月国■︵一︶矯刀喝.ωひω∼お.同.国.︵卜⊃γ唱℃■心旨∼c。●拙稿 ② 月燭︵卜。︶、署■臼ω∼c。. ③×+置“ω+ζであるから、入超のケースを考えると寓−図11包1ω包1ωUゆ︵資本輸入︶即ち匡11ω+ゆであれば良い。 ④︻燭︵トっ︶噛℃■望ム﹁ ⑤U葺ρやG.蜀原文には﹁極端な形態にては正の対外純投資を伴った云々﹂とあるが﹁純﹂は適切な表現でないのでとる。 ⑥い即霞。犀。。−。︾コH葛口σq皿H巴犀。ε同p、、○鳳辱国8pぽ弓2。・乙§ρ一8ら。■ ⑦=。○●旨。ゲ霧8㌔ぎ。同Φ鋤ω冒σq牢&g江島ヨぎ8ヨΦ1甲凶86話昌昌き飢夢①↓目巴①bd目窪oρ”、国8亭冒母.ω9叶二8倉両 者の見解については拙稿﹁生産性成長率の輪行性と弗問題﹂陵水三十五年記念論文集 参照。 ⑧月燭︵図︶■これは交易条件の.有利不利、いわば交易条件効果でもってトル不足論を展開せるヒソクスを指すと思われる。 ⑨一方、資本節約的であれば不均衡を増す。山門ソドも資本集約が一般的と考える。幻.国=鋤員。餌﹄↓o≦⇔瓦。。帥∪旨山ヨざ団8〒 oヨ一〇。。し混。。■恒Oひ.訳 一二九∼三〇頁。 ⑩ ﹁ドル不足論﹂にては成熟債権国は在外資本を消費し、過去の貸付の償還を受け取る段階の国としている。 U●Qりこ噂℃■誤∼ひ.訳 九四頁。 ⑪シェーマ的には成熟憤権国の段階を入れて考えるが、現実の問題に適用する場合は不適と考える様に見える。この事は未熟債権国 の過剰貯蓄は未成熟債務国たる後進国のその不足を補う程度のも・のであり、成熟債権国の需要を満たし得ない事を考慮しているもの と思われる。 ⑫一>Qっごや刈ρ訳九四頁。猶H.国・は教科書的である事にもよろうが、未成熟債権国︵米国︶が次の段階へ移行して不均衡を解 消する事については触れていない。o︷・︼︶■ψ−O気ρbO亀£∼ド訳九七∼八、一一一∼一二頁。 四 ① キンドルバーガーは構造的不均衡を論ずるに当り﹁ドル不足論﹂にてはポラックの分類に従って、 キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三三 価格不均衡を相対価
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三四 格変動により起る不均衡、 一方構造的不均衡を需要又は供給状態の構造変動にもとずく不均衡であるとした。前者では、 赤字の排除は少くともその赤字だけの額の切詰めを意味し、たといインフレの為に資源が移転されていても、インフレが 消滅すれば資源は以前の産業に再移転する場合であり、従って価格不均衡の排除ぽ資源、生産力、生活水準の大なる変化 を必要としない。 一方構造不均衡排除の為には生活水準の切下げか又は生産力の増大を必要とし、資源の実質的な配置転 換が必要とされる。そして構造的不均衡は需要・供給の変化を含む貿易状態の半永久的変化を意味するものである。これ に反し、景気循環の変化より起る一時的な出超、入超を価格不均衡と定義したのであった。 然し、後に於ける彼の立場は最初触れた如く、構造的不均衡は価格不均衡と考えられている。即ちそれは価格体系の悪 調整︵ヨ巴寒冒土日①巨︶であるとされる。そして更に二分類される。即ち財の面に於ける︵卑普Φσq。。騎一⑦︿①一︶それと、要 素面に於ける︵笛叶 叶げ① 五節OけOH 一①︿Φ︼︶それである。前者は︵財貨の相対︶価格に対する資源配分の不適切性︵日巴巴。9まβ︶で ある。それは一般に国際商品の需給変化又は外国より稼得、外国へ支払われる基本状態の変化から惹起される。勿論その 場合必要とされる調整的変化は起らない。一方後者は要素価格が要素賦与︵︷⇔O梓OH ①一P匙O≦bPΦ詳叶㎝︶を正確に反映しない事か ら起る。キンドルバーガーによれば次の如くである。戦争はあらゆる段階にて.経済変化・発展を生む。従ってその効果は 長期的と看徹されるであろう。戦争は構造変化を生じ、財の面よりも深く要素比率の面迄進む。欧州復興計画︵ERP︶は 主.として要素面に於ける構造的不均衡矯正策と看徹されるであろう。然し、戦争の効果は短期に集中され、且つ需給、技 術、制度等の極めて多くの変化が含まれるので戦後期の不均衡を重要な程度に財の面に於ける構造不均衡を反映している と看倣しうる、と。 財の面の不均衡から見よう。此の対策は生産の増加又は支出の引下げであり、国際取引にては輸出の増大、輸入の減少 に反映される。今、資源が新分野に移転され、その生産力が構造変動以前の分野に於ける生産性と同程度に高いという極
﹂端なケースにおいてのみ、以前と同様な消費、投資、政府支出を維持する事が可能であろう。従って対策は資源の移転か 支出の引下げでなくして、資源の移転と支出の引下げである。此の資源移転に対して価格体系の機能を重んじる自由主義 経済学者の主張はインフンを停止して為替相場を調整する事︵ハーバラー︶である。 一方計画主義者の主張はこうである。 資源は相対的に移動し難く、生活水準は容易に圧縮されない。即ち此の事は調整期間に或る程度のインフレが避け得ざる 事を意味する。又価格弾力性は小として為替切下げを斥け、輸入制限に訴える。尤もディス・インフレも排除はしない。 キンドルバーガーの立場は折衷的である。即ち計画主義的方法は不均衡の激しい段階に於いて妥当するであろう。そして 調整が進むにつれて徐々に自由主義的処方による対策へと移行して行く事が必要’6ある、と。 、 次に要素面の不均衡を見よう。上述の如くこれは要素賦与を正確に反映しない要素価格にもとずく。尤も此の場合、直 接には牧支不均衡となって現われないかも知れない。然し通常、その結果一要素︵労働︶の構造的失業を生じる。 此れに 対して失業対策等がとられると入超を生じ易い。此の不均衡は要素比率の変化した事が大ぎな原因となっている。今、西 ドイツについて云えば次の如くである。戦後その資本はこ五%減少したが、人口は避難民等により二四%増加した。然し その生産物は二本集約から労働集約へと変化しなかった。︵イタリアも同様。︶此の事が貨幣的撹乱と共に、戦後一時的に激 しい入超をもたらしたのである。此の不均衡の対策はω要素賦与に応じた様に要素価格を変えるか、又は②後者に応じた 様に前者を変える事である。実際には解決には困難である。ωの対策は高利子、低賃銀即ちデフレ政策である。②の対策 は古典派理論の範囲を越える。即ち移民と資本輸入である。結局此の場合もキンドルバーガーは両対策の折衷一即ちある 程度のディス・インフレ、資本輸入、移民tをとる。尤も此の場合為替切下げ及び輸入制限は鎮静剤にしか過ぎぬ。 猶、要素面の構造的不均衡の一つとしてこ組の要素比率及び要素価格が同一国内に併存する所謂二重経済︵垂訓88守 旨冤︶を挙げうるが、これは後進国に通常見られる。例えば外国資本と結付いた輸出部門と結付かない国内部門の存在であ キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 、 三五 、
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 , 三六 る。此の場合、後者が前者を模倣し、過大投資に導き、インフレとなり易い。対策としては、国内部門への公的長期資本 輸入が望ましい。然し困難は社会及び政治構造に深く根ざしている。 ①旨旨・℃o冨ぎ.義子冨轟ΦU①鷺①o冨江gき匹H匿○旨蝉鉱8巴ζ8Φs蔓oD冨ぴ三一§、.菊Φ︿,o︷国8昌帥QD$房ぼβ諺仁ゆq二潔ご口 ℃・日・国一﹃慈。同匪.ω冒8旨。。怠。上巴国oo昼oB田口一8ρ娼や為ひ鼠h ポラソクは国際攻支国乱の原因をω循環的蝿乱、②相対伍格の変 化、⑧需給状態の構造変化1.に分類する。 ②Pω.℃℃,=心∼伊訳一七八∼八○頁。 ③同.燭︵N︶嚇署.韻r㎝ω濠h.讐国・∪鵠窟①。・卿ρ田巳δげ①屑σqΦび.膏冨ζΦ。訂巳ω日ho門諺a器け導Φ片言冒8旨9・陣δ昌巴℃円頂Φ葺P、. o℃.o一θこ℃.ωωc。● ④O.出餌げ①二Φが.60=霞ωぎ巳σq鮎、、冒凋。話お口国。80日δ勺2一28Hチ①d巳樽巴ω$8ω噌Φ飢・ξω・出霞鼠ω.お心。。一℃.ホ伊 猶、拙稿﹁バーバラの弗不足論﹂六甲台論集 一の.二 参照。 ⑤ 比の失業は有効需要の不足によるものでない。その場合には全要素の失業を生ずる。o愚H・国●︵Nγ唱.ミN 五 以上の如くキンドルバーガーは不均衡を主として三者に分類して各々の定義、原因、対策を述べたのである。現実には 三者が重り合っでいる所に閻題がある。各国の経済発展穀階に結付いた長期趨勢的不均衡に短期的な循環的不均衡及び過 渡的色彩の濃いものとして把握されている構造的不均衡が内在するものと看徹して良いであろう。重点は長期趨勢的不均 衡にある様に見える。尤も他のこ不均衡も長期不均衡存在の為に解決が困難であり、長期的性質を帯び易いのである。 彼の議論中最も問題となるのは構造的不均衡である。その定義はサミュエルソン流に云えば、言葉の暴虐︵爵Φ受同き越 。隔≦。民頃︶的な感がするが、一般には価格調整では除去出来ない不均衡であるとされている。然し彼は上述の如く相対価 格にもとずく不均衡と定義する。彼が﹁ドル不足論﹂とはやや異った見解をとるに至った理由の一つは次の如くであると
思われる。主として構造的不均衡は戦争によってもたらされたものとして捉えられ、上述の如く戦後の欧州問題に関連し て述べられていた。此の場合は完全雇傭め場である。即ち資源の配分、所得分配が問題とされる。此の事は右著書の後に 発表された論文にて明瞭に述べられている。更に﹁ドル不足論﹂では構造的不均衡を要素の面でなく財の面として考察さ れていた様に見え、彼の主張する如き価絡体系の歪みとして未だ充分に認識されていなかったからでもあろう。 確かに古典派論者が考えた如く生産要素の移転が摩擦なく行われ、又彼等の仮定が満たされるならば、理論的には此の 不均衡は短期的であろう。然らざる場合には調整は困難となる。たとい完全雇傭の世界であってもその様な仮定をとり得 ない所に問題があろう。それは資本主義経済の変質に基くものであろうが。古典派的自由主義者と計画主義者とではその 前提が異っている。ドイツ賠償金問題に於けるケインズとオリーンの如く互に異った仮定をとって議論、主張を行ってい る。 キンドルバーガーに従えば構造的不均衡は二面に分類された。財貨の薗のそれは特に国際的需給の変化によって生じ る。例えばその為に赤字が生じた場合、支出引下げと生産増大が必要とされる。それは雇傭の増大、又は生産の上昇、又 は資源の移転を通じて行われる。彼も認める様に前ご者にて夫々失業が存在するか、或は、より多くの資本が必要とされ れば要素面の構造的不均衡を意味する。又要素面の不均衡は短期には戦争によってもたらされる。然し長期発展に於ける 資本形成、人口増加によって要素比率は変化し、若し要素価格がその変化せる賦与に正確に反映しなければ彼の云う構造 不均衡が生じ易いであろう。その過程が累積される時には特にそうである。技術進歩に関しては、それが組織的に集中 される場合が長期不均衡をもたらすものとして取扱われた。此の場合、既述の如く、革新国の比較生産費構造の変化と共 に、他国がこれに調整しなければならない。従って彼の云う財の面に於ける構造的調整が必要とされるであろう。此の様 に両面の構造不均衡相互間、それと長期不均衡とは厳密には区分し難い。尤も構造不均衡が長期不均衡に内在すると見れ キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三七
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三八 ば良いであろうが。 .猶、技術進歩によって起る構造的不均衡の責任は彼も認める如く、,米国にもある。たとい輸出産業として相対的に不利 化しても、その資源は硬直性の為、容易に移転せず、保護に導ぎ易い。 所で、生産要素を労働及び資本︵土地を含む︶とし、各々の価格は賃銀︵W︶及び利子︵R︶であるので、 を+頻+牢M団一℃︵恥11利潤、Y11所得、PH価格︶ 一応利潤を別として、労働と資本の比率を正確に賃銀と利子が反映していなければ不均衡を生じ易い。戦後の欧州等で は労働の比率が大にも不拘、賃銀が高い為に構造的失業を生じ、失業対策がとられて入超を惹起した。此の様に要素価格 がそめ比率に正しく反映されていないという意味にて構造不均衡︵要素面︶が価格不均衡とされたのである。然し彼も為替 切下げによる矯正を斥けた様に、それで排除しうる不均衡でない事は明かである。資本主義経済は貨幣経済σあるゆえ、 麗乱の原因が実質的な面にあっても価格組織の歪みといった形で現われるであろう。従って彼も対策の一つとして生産増 大を強調し、資本輸入を挙げたのである。ともあれ戦後の不均衡が巨視的理論のみでは説明し難く、結局は或程度無視的 分析に戻らんとした所に彼の意図があるのではなかろうか。 猶、キンドルバーガーはインフレーションを所得及び︵又は︶価格不均衡として定義した。彼は簡単に触れている。 即 ち過剰消費。投資・政府支出によってもたらされる需要インフレーション︵山①置⇔aム象冒二節菖。昌︶の場合には、その不均 衡は所得の範疇に属するとし、 一方賃銀インフレーション︵芝陣σq①もユ8覧鋒陣謀巨一8︶による場合、価格関係に注意を向 けるべきとする。前者の考えは、右述の式から明かであろう。価格︵水準︶の⊥昇は貨幣所得︵水準︶の上昇に等しいからで あ.る。他方、後者は賃銀即ち労働の価格であるから相対価格の問題である。更に為替相場変更も一国全体の価格︵水準︶ 即ち所得︵水準︶にも作用すると考えれば彼の定義も理解し得る。又循環的不均衡にしても価格の作用を考慮しているが、
ヘ へ 特にAの不況がBに与える圧迫を強調した為に単純化したと考えうる。技術変化︵組織的︶はインフレと同範躊に分類さ れているが、主として長期不均衡の一因として論じられたのであり、取出して分類する必要はないと思われる。 ⑭ 最後に不均衡を次の様に定義したい。 先ず長期趨勢的不均衡は各国の経済発展段階に伴って現れるものであり、各発展段階に内在するものである。 構造的不均衡は需給曲線のシフトによって生じたものであり、而かも単に一時的ではなく、大なる変化を伴い、容易に 復元しないものである。 一方、循環的不均衡ば景気循環により起る有効需の変化によって生ずるものである。それには︵内外︶相対価格及び貨 幣コストの変化に基く貨幣的不均衡が含まれる。 右三者が重り合って長期化する点に問題がある。 , ①即﹀■ω帥日ま﹃oP国080ヨ一。ω脚>5ぎ詳。曾90q>g一毬ザ日子巴‘お㎝。。︺薯.c。∼ρ ② 喜多村浩﹁国際牧支の構造的不均衡﹂国際経済 六五∼六頁。同論文より示唆を与えられた。 ③国∪窃蔑①ω簿ρ署務巳⑦げ①HσqΦが.肖冨ζ①。巨費ωヨ臨。周︾&ロ。・汁日①艮ぎ蜀g毎巴自巴勺避窪窪↓ρ、.。7葺’も℃.ω8∼♪⊆。ωc。. ④ 拙稿﹁キンドルバーガーの弗不足をめぐりて﹂前掲三六頁 参照。 ⑤月国.︵トっ︶、や㎝ωρ ⑥U﹁QD‘o﹂c。伊訳ご二九頁。米国自身の調整の困難性については、∪■鵠鐸導Oξ①ざ、雨。岩窃亀O冨8三寓聞一日日碧山芝。肘匡 ∪一ωo冠2一博、︾8.国8昌.因Φ謡Φ妻”ζ畠二〇鍾’ ⑦H■国■︵卜。︶脚b・轟。。P ⑧所謂コスト・インフレーション︵ooωけ一ぎ傷二8山冒︷﹃江。⇒︶・である。陣門ソドによれば、需要インフレとは商品及び用役に対する 全需要が、それを供給する能力を越える時起るもので、いわば﹁過大通貨が過少商品を追いか.ける﹂場合であり、インフレ・ギャッ プとも呼ばれる。コスト・インフレとは貨幣賃銀が一人当産出高を越えて増加する場合起る。 ︵即団9霞。辞..目び①目≦o↓団℃①。。o臨 .キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 三九
キンドルバーガーの国際牧支不均衡論 四〇 ‘ H⇒自p江oP、、日ゲΦ論語⇔⇔9箪日一日窃一日二一鮮肉メ一8二四.O露℃﹂ω.︶即ち賃銀増加率が生産性上昇率を越える時に起る。 ・此等の問題の米国・英国に於ける論争については﹁構造的インフレーションの基本問題と金融政策の重要性﹂調査時報︵富士銀行︶ 一九五八年一月号参照。最近この種の丈献は多く現れている。い.国.09=μ≦避層..嗣げΦ芝餌09①七口路HPゆp江。ロ↓ゴ霧一ωしO窃O∼一8N 導曽>B.国oo昌.菊①丘①ヨ∪①o.し8c。り︵邦訳 大蔵省調査月報 四八の二︶ 国。竃.ゆ①屋8ぎ㌔斗門内?℃附田〇①いぎ訂ぎ節勺Ho一〇⇒㎝q①餓 H甑冨鉱8︸..oQ叶 。頃℃巷巽。。噛三〇︿二8c。、菊。日ωΦ匡Φp.δo。。→℃億ωぴ︿㊤。・器OΦ日差勉勺乙甲困匿圏豊凶op︻O誤∼㎝凶埴博匂。霞’9℃o圏霊 国8ロ。ヨど閏Φげ9一80■ ⑨。廿H.国スH︶旧本書では所得水準に作用すると考える。唇■土轟∼9勿論、為替切下げは種々の商工、用役に異った程度に影響を与 える。即ち相対価格に影響を与える。それは価格弾力性、貨幣政策等に依拠する。 Qつゆρ︾●○.霞写ωoげ日貨P.,U勝。自。。忽。昌、、8団. O①ω嘆①.ω蝉⇒自○囚ぎ臼Φび①茜霞、。。9。目江9Poマ9r>日.国8口。菊Φ<一①宮一竃薗ざ一8悼一づb㎝ρ ⑩H■¢︵D︶瑠竈.窃宝∼ひ. ⑪ o︷.P>・ω雪目ΦきH艮お匙口。猷。⇔8H艮巽コp江。旨巴閤oo昌。日8。・り一〇⊆月♪喝噂﹂ひら。∼刈メぐタ寓.ω8ヨ5Φr冒8目5餌二〇昌巴]≦o昌Φ7 郎蔓℃o財。ざおαメ℃.ωo刈. 猶、最近土屋六郎教授が不均衡の適切な分顛を試みていられる。同氏 国際牧支の理論 八章 参照。 又ホフメイヤーは既存のドル不足理論を ω弾力性悲観論︵包9巴。藩臣ω巴邑ω日︶ ②活動モデル︵>o臨話なζo匹巴ω︶ ㈲成長 モデル︵︵︸目O芝一げ ワ肖Oユ①一ω︶ 働有機モデル︵○同σq帥巳。ζo無Φ﹃︶−に分類し、キンドルバーガーの理論を②、⑧、㈲に入れている。 改めて検討の機会を持ちたい。国.頃。津B①矯ΦおOo=費ωげ。目8σq①餌⇒島夢Φω需⇔o葺同Φ、o︷O■ω.閃oh皿αqコ日鎚伍ρ一〇αc。. ︵本稿は昭和三十四年︷月十八日東洋紡経済研究所ホールで開催のドル不足理論シンポジウムに於ける報告に加筆したものである。︶