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特殊教育諸学校「養護・訓練」の教育学的定位に関する研究

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(1)修士論文主題. 特殊教育諸学校「養護・訓練」の 教育学的定位に関する研究. 兵庫教育大学大学院学校教育研究科 1992年度入学 陸害児教育専攻. M92318E竹安,守.

(2) 特殊教育諸学校「養護・訓練」の教育学的定位に関する研究. 目 次. 序章. 特殊教育における養護・訓練の意義と教育学的定位の課題. p.1. 第1節 特殊教育諸学校共通の指導領域としての養護・訓練の新設. p・1. 第2節 養護・訓練新設の社会的背景と特殊教育における意義. p.4. 第3節 研究主題の意味と問題の所在及び論文構成等について. p・9. 第1章精薄養護における養護・訓練の「混乱」の克服過程. p . 17. 第1節昭和45年度版精薄要領による新設の段階の混乱. p.17. 第2節 昭和54年度版要領の段階での精神発達の遅滞の除外. p・21. 第3節婦成元年度版要領の段階の到達点. p・23. 第4節 精薄養護における「混乱』の克服課程の評価. p.27. 第H章 養護・訓練の「目標」の解釈と「内容」の特殊性. Pe 34. 第1節 養護・訓練のr目標」と教育課程での位置づけ. p・34. 第2節 養護・訓練の「内容」の性格と特殊性. p.46. 第皿章 精薄児の多様な状態像と対応する養護・訓練. p. 56. 第1節 精薄養護の養護・訓練の捉え方と内容. p.56. 第2節教科等で対応が可能な性は公事の状態像. p.66. 第3節 「遅れ」と「偏り」を判別する視点. pe72. 第W章 特殊教育の専門性と特殊教育課程の法律的解釈. p .76. 第1節学校教育法71条による養護・訓練の一般的解釈と問題点. p.76. 第2節 学校教育法71条による教科領域の解釈とその専門性. p.81. 第3節特殊教育課程全体の教育諸法規による解釈. p.84. 終章. 特殊教育諸学校共通の養護・訓練の教育学的定位と今後の課題p.94. 第1節第1章から第4章までの考察瀞明らかにしたもの. p.94. 第2節 精薄教科と養護・訓練の「精薄という障害」における矛盾. p.98. 第3節 特殊教育諸学校共通の養護・訓練の教育学的定位. p.103. 第4節 養護・訓練の今後の検討課題. p.109. 巻末資料 No.1∼No. 9. p.112. 《引用・参考文献》. p.121. 謝辞. p .122.

(3) 序:章. 特殊教育における養護・訓練の意義と 教育学的定位の課題. 序章では、 「養護・訓練」の教育学的定位に関連する次の事項にふれる。. まず第1節に、養護・訓練新設について、第2節で、養護・訓練の新設の社 会的背景と特殊教育における意義について述べる。そして第3節で研究主題の 意義や養護・訓練の教育学的定位に関する事項①養護・訓練の教科等との区溺 など教育課程における位置づけの聞題、②目標・内容・対象・範囲など養護・ 訓練の自己規定の確定の問題、③特殊教育とその専門性に占める位置などの問 題の所在を提示し、本論文の構成等を示すことにする。. 序章においては、養護・訓練をあぐるこれらの事項にふれることを通じて論 文全体の基調となる特殊教育における養護・訓練の意義と教育学的定位の課題 を提示し、論文の目的と性格に見合った視座を定めることにする。. 第1節 特殊教育諸学校共通の指導領域としての養護・訓練の新設 養護・訓練は、小学部6中学部では昭和46年3月13日、文部大臣告示の「特殊 教育諸学校小学部・中学部学習指導要領」 (以下これを昭和45年度三三要領と. 略す)において新設された。また高等部では、昭和47年10月27日告示の同「高 等部学習指導要領」において新設された。当時の特殊教育諸学校の学習指導要 領(以下単に要領と略す)は、盲学校、聾学校、一養護学校(肢体不自由教育). 編一、一同(病弱教育)編目、一同(精神薄弱教育)編一の5種類の学校種別 に示されたものである〔精神薄弱は、以下精薄と略す。また一同(精神薄弱教 育)Wt 一一を昭和45年度版精薄要領と略す〕が、いずれの要領にも共通の指導領 域として養護・訓練が導入されたのである。昭和45年度版各要領によって特殊 教育諸学校では、小学部は昭和46年度から、中学部では47年度から実施に移さ れ、高等部では48年度以降学年進行で養護・訓練が実施に移された。. 以下本論では、養護・訓練の考察を小学部・申学部を申心に進めることにする。 養護・訓練の新設について.平成元年(1991年)10月24日告示の「盲学校、 聾学校及び養護学校小学部・申学部学習指導要領、文部省」 (以下「平成元年. 度版要領」と略す)の「特殊教育諸学校小学部・申学部学習指海要領解説一養 護学校(精薄教育)編一1991」 (以下「車成元年度版精薄解説と略す)は、次 1一.

(4) のように述べている。. 「昭和46年の学習指導要領の改訂において、児童生徒の心身の障害に基づ く発達上の遅滞や偏りを補い、望ましい成長を促進助長するためには、機能 訓練等の指導分野の一層の充実を図ることが重要であり、こφような特別の 指導分野の教育課程上の位置づけを明確にする必要があることから、新たに 『養護・訓練』という領域が設定された。」. 昭和45年度版要領による養護・訓練の新設は、第16回教育課程審議会の答申 (1970)に基づいて行われたものである。. 養護・訓練は、20余年の歴史を持っている。新設以来養護・訓練は、要領の. 2回にわたる改訂(1979および1989)によって指導計画の作成と内容の取り扱 いの変更・一元化(昭和54年度版盲学校、聾学校及び養護学校指導要領、以下 昭和54年度版要領と略す)や、内容の再編成及び指導事項を選定する上で新た な観点が示された(平成元年度版精薄解説)りして一定の変更はなされてきて いるものの、 「目標」においては一貫して変更を加えられず今日に至っている。. 養護・訓練の「目標」は特殊教育諸学校共通に次のように示されている。 昭和45年度版から平成元年度版要領における養護・訓練の「目標」 「児童または生徒の心身の障害の状態を改善し、または克服するために必. 要な知識、技能、態度および習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤 を培う」. (ただし、 「児童または生徒の」の:文面が、高等部では単に「生徒の」となり、. 新たに制定された「幼稚部教育要領J (平成元年度、1989)では「幼児の」の 表現になっている。). 養護・訓練の「内容」は特殊教育諸学校共通に、4分野、12項目にまとめら れた。また「内容」は昭和54年度版要領では変更されず、現行元年度版要領で 5分野18項目に変更されているものである。 新設の時点で特殊教育諸学校の要領は各特殊学校別に示されており、養護・ 訓練が「特殊教育諸学校共通の指導領域」とされたものの、その「指導計画の. 一2一.

(5) 作成」と「内容の取り扱い」は、各特殊学校別に示されたのであった。 新設時の養護・訓練の「内容」 (昭和45年度版及び54年度版要領の時期). A 心身の適応 1 健康状態の回復および改善に関すること。 2 心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。 3 障害を克服する意欲の向上に関すること。. B 感覚機能の向上 1 感覚機能の改善および向上に関すること。 2 感覚の補助的手段の活用に関すること。 3 認知能力の向上に関すること。. C 運動機能の向上 1 肢体の基本動作の習得および改善に関すること。 2 生活の基本動作の習得および改善に関すること。 3 作業の基本動作の習得および改善に関すること。. D 意思の伝達 1 言語の受容技能の習得および改善に関すること。 2 言語の形成能力の向上に関すること。 3 言語の表出技能の習得および改善に関すること。. 養護・訓練は、それ以前に、盲学校、聾学校、肢体不自由・病弱養護学校に. おいて指導されてきたr視覚、聴覚障害に対応する特別の指導」や「体育・機 能訓練」や「養護・体育」などの教科的要素以外の各種障害に対応する特別の 要素の指導を集約・総合して、 「養護・訓練」という独自の新しい領域として 特設したものであった。. 新設に当たってその領域の理念・目標・内容・呼称などが第16回教育課程審 議会等において検討されたが、審議委員等全員の十分な認識の一致のうえで養 護・訓練の領域が新設されたとはいえなかった。それは精神薄弱養護学校て以 下精薄養護と略す)では「他の障害のように直接養護・訓練に該当するものが 見あたらず、精神薄弱を教育する養護学校における養護・訓練の具体的内容や 3一.

(6) 指導については、昭和45年度版学習指導要領が制定されてから初めて研究が行 われるようになった」 (平成元年度版精薄解説、1992)という問題点があった からである。. 養護・訓練の新設は、大勢において各特殊教育諸学校教職員から歓迎され (特殊教育学会調査、1973)教育実践充実への新しい機運を醸成するとともに、. これを機に教育行政による教育諸条件の整備が図られたことなど、わが国の特 殊教育の発展に寄与するものであった。. こうして一定の間題点を持ちつつ、この領域の新設によって、それぞれ相互 に独立して取り組まれてきた障害種別の教育が、特殊教育諸学校章通の養護・ 訓練という基盤にたって捉えられ、同一の領域概念を通じて横断的視点で語ら れる時代を迎えたのである。. 第2節 養護・訓練新設の社会的背景と特殊教育における意義 ここで、養護・訓練の新設の社会的背景や意義を概観しておくことにする。 養護・訓練の新設の背景や意義は、それ以降20余年を経た今日の養護・訓練や 特殊教育にも関連していると考えられる。その見地から、養護・訓練が新設さ れた当時の特殊教育をめぐる社会情勢や、その新設が特殊教育にとってどのよ うな意義を持つものであったかをみることにする。. (1) 養護・訓練新設の社会的背景 養護・訓練が新設されたのは1971年であるがこの前後の時期は、 「『随害者. 教育史』、津曲裕次・清水寛・松矢勝宏・北沢清司編著、川島書店、1985」に よれば国際的にみても障害児の教育をめぐって新しい動向の見られる時期であ った。イギリスでは、 r1970年教育く障害児〉法の成立(1971年4月1日施行)に. より、世界でも早期に障害児全員就学を実現させた。」 (前掲書p.)またフ. ランスでは、1975年障害者法が成立し「従来論議されてきた障害児の全員就学 の義務規定が明確にされた。」 (同上p.)さらにアメリカでは全障害児教育 法(1975年)が成立し障害児の無差別・平等の教育保障が唱われる(前掲書p.). など、先進諸国での障害児教育の動向は、すべての障害児の教育権と学校教育 の保障に向かって動きだしていたのである。. 一方、養護・訓練が新設された当時のわが国の特殊教育の動向は、上に述べ 4一.

(7) た諸外国と比べると大きな遅れを示していた。. わが国では戦後の経済的復興とともに、新憲法・教育基本法の下で義務教育 はもちろん後期中等教育(高等学校教育段階)も含め就学率は極めて高い水準 を示すに至っていたが、それに比べて特殊教育の面では、盲・聾学校は別とし て義務制が実施されておらず、特に発達上の重度の障害を持つ子どもの学校教 育め保障に関して大きな課題が残されていた。. 盲・聾学校は義務化(1948)されていたとはいえ、比較的重い精薄などを合 わせ持つ重複障害児までも十分に受け入れてきていたのではなかった。また、 肢体不自由・病弱・精薄の養護学校では「義務化」 (1979)が実施されておら ず、障害の重さなどによって、いわゆる「就学猶予・免除」 (学校教育法23条 及び33条第3項)によって学籍を与えないという処遇が残されていたのである。 これらのことは、 「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応 じて、等しく教育を受ける権利を有する」 (憲法第26条)等の法的諸規定と相. いれず、わが国の教育行政全体のなかで最も聞題を抱える分野のひとつとなっ ていたのである。. このようなわが国の教育行政と特殊教育の状況の申で、比較的障害の重い子 どもを持つ父母の養育上の家庭的・精神的負担と苦労はきわめて大きいもので あった。わが国の1960年代の高度経済成長による社会構造と家庭生活の変化は、. 国民生活と意識の大きな変革をもたらし、障害者教育をめぐる国際的動向とも あいまって「就学の猶予・免除」によって施設や家庭内に処遇されていた障害 児に学校教育を受ける権利を保確しなければならないとの国民世論が次第に高 まってくる。. このように障害の種類程度に関わらずすべての障害児の学校教育の保障のた めの教育施:策上の課題としては「養護学校義務制実施」が必要であり、学校教. 育法附則93条での義務履行の施行期日の布告が待たれる状態になっていた。教 育行政にとっても養護学校の義務化を展望してその実施の条件整備を行ってい く必要が認識される時期を迎えていた。また各特殊教育諸学校でも徐々に重複 障害児の就学が進み、特殊教育の各学校とも単一障害児の教育課程のみで対応 することがますます困難な状況が形成されつつあったのである。. 障害児の教育を受ける権利の保障のためには、法制の整備や学校の新設など のいわばハード面の条件整備とともに、それぞれの障害の種類と程度に対応し 特に発達的な面での重度児や重複する障害児の教育内容・教育課程づくりとい うソフト面の対応が必要とされていたのである。. 養護・訓練が新設された時期はこのような国内外の動向と学校教育現場の状 況があったと考えられるのである。 一5.

(8) (2) 養護・訓練新設の特殊教育における意義 昭和45年度版各要領における養護・訓練新設の意義については、さまざまな 視点から指摘がなされているが、それらを総合すれば以下のように整理するこ とも可能であろう。それは単に教育課程上だけでなく、わが国の特殊教育全般 に影響する意義を持つものとなったのである。. まずあげられるのが障害を持つ子供のニードに応える教育実践上の意義であ る。(①②). ①教科等の内容と障害に基づく特別の指導内容の分離と整理 養護・訓練:が設定されたことによって、 「体育・機能訓練」その他の特別の. 教科名は解消されて健常児の学校と共通する教科名に戻るとともに、各種障害 に対応する指導内容が養護・訓練の内容として独自に集約されることになった。. またその内容は教科の内容にとらわれることなく整理され、個々に応じて必要 な指導内容を設定することを可能にした。養護・訓練の新設は、障害児の教育 に特別に必要な内容:を教科領域等から分離して区別し、特別の指導内容の整理 を促すものとなった。. ②障害に対応する特別の指導内容の実践的な重視 障害児教育課程の申で養護・訓練は、精薄以外では年間105時間という基準が 示され、精薄も含めて実態に応じて「個々に」指導時間を設けられること、さ らに特設の「時間における指導」とともに学校の教育活動全体の中で指導する こととされるなど、実践的にその指導が重視されることとなった。これらのこ とは障害にもとつく「個々の」特別のニードに応じて指導の時間や体制を設定 できることになり、実践的に重視を促すこととなった。 次にあげることができるのは.特殊教育の理念上、研究上の意義である。 (@@). ③ 障害児教育観の発展に果たした役割 養護・訓練の新設は、わが国の学校教育における新しい障害児観、障害児教 育観の形成に役割を果たしたということができる。特殊教育の目的も当然教育 基本法第一条に述べられている教育の目的「人格の完成」の理念に整合すべき ものであるが、障害児においては教科等の指導だけでなく、養護・訓練の目標 一6.

(9) の「心身の調和的発達の基盤を培う」ために個々の障害の状態像に即した指導 =養護・訓練が必要であるとの考え方を示したものといえる。. ④「障害種別』教育を横断的に検討する視点の提供 養護・訓練は特殊教育諸学校共通の領域として設定されたものであるから、 その新設は障害種別の特殊教育課程研究に共通の視点を与えるものとなった。. わが国の障害児教育の歴史は、盲教育、聾教育、肢体不自由教育、病弱・虚 弱教育、精薄教育というように障害種別によってその成立の時期や発展の度合 に格差を持ちつつそれぞれが相対的に独立性を持って並列的に発展してきた。. その経過の申では、各種障害や各種障害の引き起こす発達上の聞題やそれぞれ の教育課程等に関して対比的・横断的検討が行われる機会は少なかったと考え られるのであるが、養護・訓練の新設によって異なった校種間の教育課程や指 導内容の相似性や独自性を共通のカテゴリーを用いて相互に比較、研究するこ とを可能にした。つまり「各『障害種別』教育」を「障害児教育」という一つ の理念的墓盤の上に乗せて横断的に検討することを可能にしたのである。. また養護・訓練の新設は結果的に特殊教育諸学校要領の形態にも影響を与え るものとなった。 (⑤). ⑤特殊教育諸学校要領の一一as化の理論的準備 要領は1979年に一本化される以前には、障害種別=学校種別に示されていた。. 1971年特殊教育諸学校共通の領域として新設された養護・訓練は、5種類の障 害種別教育に共通の概念として導入されたものであるから障害の種類にかかわ らず共通の表現で教育課程の構成・構造を示すことが可能になった。この意味 では、養護・訓練の新設(1971)は、要領の一本化(1979)の理論的前提を準 備したということができる。. 以上のような諸点から養護・訓練の新設は特殊教育の理論上、理念上、行政 上の役割を持つ概念を提供することとなったのである。 (⑥⑦⑧). ⑥特殊教育と健常児教育の教育課程の相違の明確化 特殊教育と健常児教育の教育課程の質的差異を養護・訓練という新しい領域 を設定することによって論拠づけたことがあげられる。それまでも各種障害に. 対応する内容は、「視覚障害・聴覚障害に対応する特別の指導Jや「体育・機 能訓練」や「養護・体育」など多様な形で指導されてきたが、領域としてはく .7一.

(10) くられておらず各障害種別の特殊教育のなかに概括されてきた。養護・訓練は 各障害種別教育のなかから教科、道徳、特別活動の範疇に入らない特別の要素 を共通の領域名のもとに抽出・設定したものであるから、これによって特殊教 育諸学校と小、中、高の各学校の教育課程の共通する「内容」とともに質的に 相異する内容を簡潔・明瞭に示せるようになった。養護・訓練は健常児に「準 ずる教育」に付加された領域として説明され、特殊教育と健常児の教育を区別 する特色ある領域名ともなった。. ⑦特殊教育諸学校と教師の専門的役割の説明 養護・訓練:が学校教育の領域として位置づけられたことは、各種障害に対応. する特別の指導が、特殊教育に不可欠の内容であると規定づけたものともいえ る。これによって特殊教育諸学校の教育の専門的内容とともに特殊教育諸学校 教員の専門性が説明されるようになった。養護・訓練は学校教育の中で各種障 害に対応して指導され学習されるべき内容のまとまりを示す領域概念であり、. これによって特殊教育諸学校の教職員には、児童・生徒の教育的診断、指導計 画の作成と実践などこれまで以上に高い専門性が要求されることになったので ある。. ⑧教育行政・特殊教育行政の根拠となる新しい概念の提供 特殊教育諸学校の教育課程には健常児の学校にはない養護・訓練という領域 が新設された。従って、その実施のために専門的知見を持った人材及び教職員 定数、施設、設備、教具等の充実・整備が必要である。養護・訓練の新設は特 殊教育諸学校に対する教育施策上の根拠、または教育行政学上の概念を明快に 提示することを可能にしたのである。. 以上のように養護・訓練の新設は、特殊教育の教育課程だけでなく、その後 のわが国の特殊教育に:全般的な影響を与えているのである。しかし、この養護. ・訓練の捉え方、教育課程における位置づけなどをめぐって特に精薄教育を申 心に混乱が起こり、それらは段階を追って克服されているとはいえ、新設以降. 20余年を迎える現在においても第3節で示すようになお検討する課題が残され ているというのが本研究の立場である。. 一8一.

(11) 第3節 研究主題の意味と問題の所在及び論文の構成等について (1) 研究主題の意味 本研究は「特殊教育諸学校『養護・訓練』の教育学的定位」をその研究主題 とする。まずその主題そのものの意味についてふれておきたい。. 教育学とは広辞苑によれば「教育の本質・目的・方法・制度など教育に関す る総括的学問」と述べられているが、ここではこの一般的理解に立っている。. 教育学という学問が成立するためには、教育を研究する関係者などによってそ の対象となる「教育の本質・目的・方法・制度」などの諸概念の基本的な認識 の一一ptが成立していることが必要となる。. ところが障害児教育学の中には未だ基本的な認識の一致が確定していない. 「精神薄弱」の定義と用語、近年ではrLD」などの概念の例がある。特殊教 育諸学校の「養護・訓練」もその中の一つといってよいであろう。. 次に「教育学的定位」の意味についてふれる。窪島務は「障害児の教育学、 青木書店、1988」という著作の申で「発達保障論の教育学的定位」の用語を用 いている。窪島はその論考の中で「教育学的定位」について「発達保障という 包括的・多義的概念」が「いろいろな場合に使用できる便利さがある一方で (申略)限定された特定の具体的内容が漠然としているという意味で理論的価. 値を失いかねない不都合を生んでいる。」としてその「概念の定位、おさまり ぐあい、位置づけを明確にする』という意味をもたせている。. 本研究では「教育学的定位」を上記の窪島の用語・用法に学び、養護・訓練 の障害児教育課程での理念・目標・内容・対象・位置づけ、特殊教育における 位置づけを明確にするという意味で「養護・訓練の教育学的定位」ということ にする。. (2) 養護・訓練の教育学的定位の意義 障害児の学校教育、特に特殊教育諸学校での教育を語る場合「養護・訓練」 をぬきに語ることは出来ない。しかし本節(3)でふれるように、その教育課程と. 特殊教育全体の上での位置づけにはまだ検討するべき課題が残されている。 養護・訓練を検討するためには、本来なら何よりもその定義に頼ることが必 要となる。ところが養護・訓練の「定義」は、20余年を経過した今日でも確定 されていない。一般に定義がされていない概念は、研究上も実践的にも検討し 9.

(12) にくいものである。定義がない概念であるにも関わらずそれが重要であるとか 必要である無しとか言うことが、特殊教育では問題となる場合があり養護・訓 練もその一つといってよいであろう。. 養護・訓練:が重要であると言われる理由は、養護・訓練が特殊教育を説明す. る最も有力な概念の一つとなっていること、要領が各学校の教育課程編制にお いて「法的拘束性」を持つとされること、そして何よりも養護・訓練の指導が 障害児の「心身の調和的発達」に寄与する成果をあげている実績によるもので あろう。. しかしそれにもかかわらず養護・訓練概念そのものに議論があることや、そ れを受け止める側に教科等との関係や精薄教育の分野でそれぞれの捉え方が生 まれるということは「障害児教育学」という学問において養護・訓練が十分な 位置を占めていないか、あるいは、 「障害児教育学」の申で養護・訓練の教育 学的定位の課題が残されている証左でもあるといえる。. こうした申で、養護・訓練の教育学的定位についての研究を進め、この概念 の確定性を高めてその位置づけを明確にしていくことは特殊教育学研究にとっ て重要な意義があると考えるものである。. (3) 養護・訓練の教育学的定位の課題と論文の構成 前節でみたように養護・訓練は新設から今日までわが国の特殊教育を論じる うえで重要な領域となっているのであるが、特殊教育諸学校の教職員の共通理 解をうる確定的な地位を占めるに至っているだろうか。 特殊教育諸学校の教師が養護・訓練を理解するうえでの素朴な問題点は、. 「養護・訓練が障害にもとつく発達の遅滞や偏りに対応するものなのでその重 要性は理解できるが、特に糟薄教科との区別や教育課程全体における位置づけ がわかりにくい」という点である。. 養護・訓練の新設以来の「分かりにくさ」は、平成元年度版要領で養護・訓 練の内容の表記が変更された理由についてのべた平成元年度版精薄解説の文面 でも「従前の養護・訓練の内容の示し方が極めて抽象的であり、具体的な指導 事項をイメー、ジしにくいという指摘のあったJと認められている。. 平成元年度版精薄解説 「従前の養護・訓練の内容の示し方が極めて抽象的であり、具体的な指導 事項をイメージしにくいという指摘のあったことや児童生徒の心身の障害の 多様化に対応する観点からこれまでの実施の経験を踏まえ、具体的な指導事 10一.

(13) 項を選定する際の観点をより明確にする方針で検:討が行われた。」 (p.139). 特殊教育諸学校の学習指導要領は、各特殊教育諸学校で教育課程編制を行う 際や、養護・訓練の実践・研究を進める場合にその基準をしめしたものとされ るが、学習指導要領を読むだけで理解しがたい点が残される場合がある。その ような場合、学習指導要領解説が何より第一の参考文献となる。. 特殊教育諸学校の学習指導要領の解説は特殊教育に携わる教師の学習指導要 領の理解を助け、障害種別の各学校での実践的な具体化を助ける役割を持って おり、その意味で要領解説はいずれの事項についても捉え方の食い違いが起こ り得ない説明が要求されているものである。従って養護・訓練の解釈について も、その20年の研究の到達点を反映した公式見解とでも言うべき解釈が示され るべきものと考えられるのである。しかし、平成元年旧版要領以前の段階では、. 参考にするべき要領解説を読み進めてもなお養護・訓練について的確で統一的 な見地が得られない場合が多かったのである。. このことから考えると養護・訓練の「わかりにくさ」の原因は、特殊教育の 実践内容や方法の研修の不十分さによるものではなく、養護・訓練の「内容」. の表記の問題を含めて「養護・訓練1という概念が新設以来定義もなされてお らず未確定要素を持っていること、その解釈や位置づけについても多様な解釈 が成立しうる領域であったからであると考えられるのである。. 養護・訓練は、特殊教育の研究上の概念であると共に何よりも学校教育現場 の教師によって教育課程編制や実践・研究に活用される概念である。従って 「分かりにくい」ということはそれだけで一つの重要な間隙点であるというべ きであろう。またさらに間葉堕しなければならない点は、この「分かりにくさ」. が個々の教師の捉え方の違いをもたらした場合、教育課程編制や実践・研究が 共通認識にたって行えないという点である。. 先に引用した平成元年度々精薄解説が述べるとおり平成元年度の学習指導要. 領改訂(1989)で養護・訓練の「内容」は、新設以来4本柱、12項目で示され ていたものが再編成され5分野18項目となった。また平成元年度版精薄解説で は指導事項を選定するための新たな観点が示された。これによって養護・訓練 の’. uわかりにくさ」は減少し改善されたということもできよう。. しかし現行の平成元年製版野薄解説の記述において改訂以前に較べて「わか りにくさ」が少なくなったとはいえ、基本的に問題点が解清されたかについて 考えてみると、養護・訓練新設以来20年を経た平成元年度版精薄解説を読み進 めてもなお不明確あるいは十分でないと考えられる養護・訓練の説明が行われ 一11一.

(14) ている点である。その問題とは大きく分けて、次のような3っの点である。 1、養護・訓練の精薄教科との区別と教育課程全体の申における位置づけの間 題. ll、養護・訓練の目標・内容の解釈、対象とする障害の種類、取扱う障害の状 態像の範囲など養護・訓練の自己規定の間題 皿、特殊教育の特殊性及び特殊教育課程の内容と指導における専門性における 養護・訓練の占める位置の問題. 以上の養護・訓練の3っの間題は特殊教育学が特殊教育の「教育の本質・目 的・方法・制度などの諸概念」にかかわる総括的学問であるならば、それをよ り明確にすることを目指して「基本的な認識の一致」を成立させなければなら. ない特殊教育学上の重要な課題である。上にみた3っの養護・訓練の教育学上 の間題の具体的な内容については、次の論文の構成に関連して触れることにす るが、これらの養護・訓練の解釈や位置づけの間題は精薄教科との区別の間題 を含んでいるように特に精薄教育における聞題がその重要な内容として存在し ている。では以下に3つの画題を本論文の章構成にそって述べることにする。 また本研究で検討する学習指導要領解説の具体的な文面はそれぞれの章また. は節で見ていくことにするが、ここでは養護・訓練の教育学的定位に関する3 つの課題についてより具体的に整理するとともに、本論文の構成を示していく ことにする。. ①精薄教育における養護・訓練の変遷と現状の評価 養護・訓練は精薄教育を含めた各種障害児教育課程における4領域の“つで あるが、精薄教育では昭和45年度版精薄要領による新設の段階で養護・訓練の 「混乱」が指摘され「盲学校、聾学校及び養護学校学習指導要領、昭和54年、 文部省」 (以下これを昭和54年度版要領と略す)の段階において「精神薄弱養. 護学校の養護・訓練の特色」 (以下r精薄養護の特色」と略す)という解説が 行われ、平成元年早知要領の段階の「精薄養護の特色」はまた昭和54年度版要 領の段階とは微妙に違っているなど特殊教育諸学校共通の目標・内容・指導計 画の作成と内容の取扱いがなされるはずの養護・訓練が、特に精薄教育におい て解釈や位置づけの不明確な問題が残されている。精薄教育における養護・訓 練の歴史的変遷に着目し現状を認識することはr特殊教育諸学校共通の領域」 として養護・訓練を確立する上で重要な意味を持つ。. この点については第1章「精薄養護における混乱の克服課程」で考察する。 12.

(15) ②養護・訓練の目標の解釈 養護・訓練の「目標」は新設以降一貫して変更されていない。養護・訓練で 20余年の歴史の試練に耐えたのはなによりもこの「目標」である。 「目標」は. 組題点が指摘されることが少ないためか、その価値についても議論になること が少なく文面にこだわって検討がなされていないように見える。養護・’訓練の 定義がない申でこの「目標」の解釈をより重視する必要があると考える。. この点の=考察は第H章1節「養護・訓練の目標と教育課程での位置づけ」で 行う。. ③養護・訓練と教科の理念上・内容上の区別と特殊性の理解 養護・訓練は特殊教育の教育課程4領域の申の一つであり他の領域と関連し て指導されるものである。それは「学校の教育活動全体」で指導され「教科等 と密接な関連」を持って指導されることが期待されている。しかし養護・訓練 と教科が密接な関連の下に指導されるからといって両者の区別が曖昧であって 良いということにはならない。実践的に両者を適切に関連づけて指導するため にも、理念的・内容的区別が認識されている必要がある。明確な区別がないと ころに正しい関連は成立しない。両者の統一的実践のためにも分析的な評価の ためにも教科等との区別は重要な意味を持つ。 また「養護・訓練の内容は、:大別すれば感覚や運動機能等の障害を補償する. ための内容と小学校学習指導要領第2章に示す各教科の目標及び内容の基礎と なるものが大部分である」という解釈がある。 (『盲学校、聾学校及び養護学. 校小学部・中学部学習指導要領の解説』、文部省、1981)この解釈は養護・訓 練の「内容」の説明として有力視されているが、 「養護・訓練の内容が小学校. 教科の目標及び内容の基礎」という解釈は、幼稚園の教育内容のようなものが 養護・訓練であると説明していることになり障害の状態像に関わる説明にはな っていない。. この点は第il章第2節「養護・訓練の内容の性格と特殊性」を申心に行う。. ④「精神薄弱」という障害と養護・訓練の対応関係 盲・聾・肢体・病弱の各学校の主障害と養護・訓練は新設以前から主障害に 対応する指導が行われてきたので精薄教育でみられたような教科等との関係に おける「混乱」は指摘されていない。しかし①に関連する事柄として「精神薄 弱」という障害は「精薄養護の特色」があるように他の障害とは並列的に扱う ことは不可能であり、養護・訓練との対応関係についてより明確な解釈が要求 13 一.

(16) されている。. 精薄児の養護・訓練と障害の状態像、種類程度との関係は第皿章「精薄児の 多様な状態像と対応する養護・訓練」で行う。. ⑤養護・訓練の特殊教育及びその専門性に占める位置 最後に養護・訓練の教育課程での位置づけや養護・訓練の解説における問題 点の考察をつうじて、養護・訓練の法律的根拠づけ及び特殊教育の専門性の申 で占める位置について論じることにする。. これらの点は第IV章「特殊教育の専門性と特殊教育課程の法律的解釈」で扱 う。. 以上にみた①から⑤までの間題はそれぞれ独自の問題であるとともに相互に 複雑に関連している。またこれらの問題に共通するのは、精薄教育の教科や精 薄教育における養護・訓練に関わる問題である。精薄教育の分野は、養護・訓 練の新設時に「混乱』を起こした分野でも.あり、それが今日でも十分に解明さ れていない問題として尾を引いているとも見ることができる。. しかしこれらの即題は、単に精薄教育と精薄養護の養護・訓練の問題と見る ことはできず特殊教育諸学校共通の問題として次のように捉える必要があろう。. まず、養護・訓練があくまでも「特殊教育諸学校共通の目標・内容・指導計 画の作成と内容の取扱いを持つ領域」であろうとすれば、精薄教育での養護・ 訓練に「精薄養護の特色」や不確定要素を残しているということは即ち養護・ 訓練そのものが不確定要素を持つものとなるからである。もしそれを精薄教育 のみの間題とするならば、養護・訓練は「特殊教育諸学校共通の目標・内容・ 指導言f画の作成と内容の取扱いを持つ領域」としての有効性を自ら否定するこ とになる。. 次に、養護・訓練が新設された当時から盲・聾・肢体・病弱の各特殊学校で も精薄との重複障害児が増えて、これらの学校でも精薄教育そのものが必要と されている。そして精薄を合わせ持つ児童・生徒は特殊教育諸学校全体の在籍 数から見ても比率が高まっており精薄教育の問題を精薄養護のみの聞題とする ことは現実にも不可能である。. さらに養護・訓練の存在意義の一つに「各種障害児教育共通の研究上の概念」 として各障害種別教育を共通基盤で解明し横断的検討を可能にした点があげら. れるが、精薄教育の養護・訓練がr精薄養護の特色」を持っているならばその 横断的検討が極めて困難になるという問題がでてくる。. 14.

(17) このように養護・訓練の検討されなければならない課題には、養護・訓練と 精薄教科との区別、精薄教育における養護・訓練「内容」と位置づけ、精薄と いう障害と養護・訓練との対応閲係を確定する課題があり、その確定は養護・ 訓練を真に特殊教育諸学校共通の領域概念とするためにも重要な位置を占める と=考えられるのである。. 以上のように本論では精薄教育を軸として養護・訓練の教育学上の解釈の問 題を検討し、特殊教育諸学校共通の目標・内容・位置づけ・対象・範囲等を持 つ領域としてより矛盾なく確定するための考察を行うことを目的として「養護 ・訓練の教育学的定位の課題」としたい。. また養護・訓練の教育学的定位について論じるにあたっては単に現行の平成 元年度版要領の段階だけでなく、必要に応じて養護・訓練新設以来20余年の歴 史的視点にたって検討を行っていくことにする。. (4) 本論の性格と考察の範囲の限定 本研究は、養護・訓練の教育学上の解釈や位置づけを間食としているのであ って実践的な養護・訓練指導のそれぞれの価値や是非を論じるものではない。. 「内容」を論じる場合でも教育課程全体の位置づけを検討する見地からのもの であるa. 同じことが、教科等の「内容」に触れる場合にもいえる。養護・訓練の「内 容」が現状では場合により精薄教科等の内容と重複しているように考えられて いるため教科等の内容と対比する必要があるが、その場合にも養護・訓練との 関係を整理する上で必要な範囲に限定している。ここでは、教科等の内容の指 導のあり方については養護・訓練の解釈や位置づけの検討に必要な範囲でのみ ふれることにする。. また肢体不自由教育や病弱教育では教科等との区別の問題というより医療行 為との区別・関係が重要な問題として指摘される場合がある。しかしこの問題 は教育学上の解釈や位置づけの問題と言うより医療的ケアとの区別・連携・保 障の問題であり.、単なる教育学上の問題と言うことはできず特殊教育内部だけ. で検討することは適切でない。精薄教育における養護・訓練の考察の必要上こ れらの学校の養護・訓練にふれる場合は「学習指導としての養護・訓練」の聞 題に限るこどにする。. 15.

(18) また本論は、その目的である教育学的定位を検討するため要領とその解説を 批判的に検討する側面の強いものであるが、それは要領等の批判を目的とする 見地からではなく、養護・訓練の教育学上の定位をはかるために必要な検討を 加えるという見地に立ったものである。さらに要領の法的拘束性の是非に関す る問題は、本論の論じる課題ではない。. (5) 本論で使用する用語等について. ①「精薄」は、研究上も社会通念上も適切でない障害名であると考えるが、 ここでは教育諸法規や要領の表記に従って用いる。. ②盲・聾・肢体不自由・病弱の障害名をそれぞれ、視覚障害・聴覚障害・肢 体障害・健康障害と呼ぶ場合がある。また後者の呼び方の場合、いずれも 重度・中郷・軽度の状態像を想定して用いることにする。. ③「単一障害」の用語を使用する場合、それ以外の障害を持たないという意 味で用いる。. ただし精薄教育では、 「精薄でかっ情緒障害を持つ場合・言語障害を持. つ場合」も法令上は「単一精神薄弱」と認知されているため、この論文で は偏りが少ない「いわゆる単純精薄」と区別する視点で検討していくこと にする。. ④ ここで「教科等」という場合は、小・申学部の場合は「教科と道徳と特別. 活動jを意味し、高等部の場合は「教科と特別活動」として使用すること にする。なお検討は小・中学部学習指導要領とその解説を中心に行う。 ⑤ 本論で扱う障害の種類等について それぞれを主障害とする特殊学校のある視覚・聴覚・肢体・病弱・精神. 薄弱の5種類の障害の他に、情緒障害と言語障害を加えて、7種類の障害 を扱う。情緒障害と言語障害はそれぞれを主障害とする特殊学級があるこ とと、これらの障害は養護・訓練の対象に含まれていると考えられるから である。. 一16一.

(19) 第■ 章. 精薄養護における「混乱」の克服過程 一養護・訓練の対象と範囲の変遷・限定に着目して一 昭和45年度版各要領が実施に移される過程で、養護・訓練の「混乱」といわれ るほどの事態が起こったのは精薄教育ないしは精薄養護であった。. 精薄養護では、それ以前には養護・訓練に該当する特別の指導がなく昭和45 年度版精薄要領が実施に移される過程で混乱が起こっただけに養護・訓練の対 象・範囲・位置づけ等の問題は最も切実な問題となってきたのである。従って. 精薄養護の養護・訓練の「混乱」の克服過程をたどることは、序章第3節で見 たように単に精薄養護の養護・訓練の聞題の解決に留まらない重要性を持つと もに養護・訓練に関する示唆を含んでいると考えられる。. この章での考察は次の3段階に分けて行う。精薄養護では養護・訓練の対象 と範囲の変遷・限定がこの3っの各段階で見られるからである。. 1、昭和45年度版精薄要領の段階 2、昭和54年度版要領の段階 3、平成元年旧版要領の段階 なお、要領改定に対応する「解説」の発行の時期は数年の遅れがあるが、要 領が実施された期間をその段階とし、この点は第il章以降でも同様とする。. 第1節 昭和45年度版精薄要領による新設の段階の混乱 一精薄養護における混乱とその特徴一 昭和45年度版精薄要領の時期の精薄教育における問題は、精薄教育ないしは 精薄養護における養護・訓練とは何か、精薄そのものに対して特設すべき養護 ・訓練の指導内容があり得るのか、精薄児のどのような状態像を養護・訓練で 扱いどのような状態像を教科等で扱えばよいのかなどの聞題であった。以下に みるように昭和45年度版段階の時期は、精薄養護の養護・訓練の混乱期・模索 期丁’あったということもできよう。. この時期の養護・訓練の「混乱jについて今日の段階であれこれの解釈の是 非を論じることはできないが、妥当性の吟味のためではなく事実として混乱と いえる竪琴があったかという視点でそれを見ておきたい。 一 17.

(20) ①特殊教育学会の特集記事 特殊教育学会は新設された初期の段階から養護・訓練の諸問題に関するシン ポジュ・一一ムの開催や(第10回大会、1972)、同学会誌における養護・訓練に関. する特集などの検討の方途を講じている。その一環として発表された山下勤の 論評(特殊教育学研究部10巻、特集ll−2、1973)は以下のように述べている。. 「精神薄弱児の教育課程の申に、養護・訓練という領域が新設されたとい うことを聞いたのは、昭和46年2月に行われた、九州地区特殊教育諸学校学習 指導要領(案)主旨説明会に出席した時である。そのときの感じとしては、. あまり無理なく理解したかのごとき印象を受けたのであるが、その説明資料 を読み返すにつれて、徐々にその時の理解がぼやけ、新学;習指導要領が施行 された46年4月頃には、全く混乱した状態になってしまった。」 この論評は、 「混乱」の解決なしで「精神薄弱児の養護・訓練を教育の現場. に展開することが出来ないので、私なりに整理」した「私見」という性格のも のである。研究者でもこのような混乱を感じたのであるから各精薄養護の教師 にも同様の混乱を感じさせたことは疑問の余地がない。この論評の考察の“部 分には次のような指摘が行われている。. 「養護・訓練という領域が、我が国の特殊教育の教育課程に新設されたの を機会に、精神薄弱児の研究の出発点に、今一一度立ち返って、より綿密な計. 画の下に、知能訓練というものが可能かどうか、という実験を今一度行う必 要があると思う。 (中略)まだ未開発の方法で精神薄弱児の知能の発達を促 進出来そうな気がしてならない。」. この論評は、精薄児の養護・訓練を知能訓練であると結論づけているもので はないが、精薄児の養護・訓練を検討を「精薄児の主要障害とは何か」という 視点から検討しようとした研究者の立場からの有力な見解の一つであったと言 えよう。. このような傾向が現れたのは本章第4節や第H章第2節で見るように、要領 で示された養護・訓練の「内容」からして当然のことであった。. ②昭和54年度版精薄解説での総括的記述 またこの時期の精薄養護の養護・訓練を総括して昭和54年度版精薄解説(19 18 一.

(21) 81)は次のように述べている。. 「45年度版学習指導要領における養護・訓練の『指導計画の作成と内容の 取扱い』は、概して、極めて抽象的な記述になっている。これは、前述のよ うに、それまでの精神薄弱教育においては、他の障害分野の特殊教育のよう 、に養護・訓練の内容に当たるものが具体的に把握されていなかったからであ る。」. 「養護・訓練の内容がこのような4分野12項目で示されたため、これらを 機械的に精神薄弱教育に適用して、奇妙な養護・訓練の指導が行われたこと もあったようである。」. この文面は昭和45年度版要領の時期の精薄養護の養護・訓練が混乱した状態 にあったことを認め、第2節で述べる是正の方向を打ち出す前段の記述である。. ここには「4分野、12項目を機械的に精神薄弱教育に適用した結果行われた奇 妙な養護・訓練」の事例はあげられていないが、前後の文脈からして「精神発 達の遅滞そのもの」を養護・訓練で扱った指導が行われた問題であったと解釈 できるのである。. ③当時の養護・訓練の状況の歴史的論評 ・一方この時期の精薄養護での養護・訓練の状況を概観して、宮崎直男(「養. 護・訓練の設置と変遷」、発達の遅れと教育、1991。)は各精薄養護での捉え 方の多様な実例を以下のようにまとめている。 「 (2)文部省の教育課程研究指定校の発表内容. 昭和四八年度大分県立宇佐養護学校は、精神薄弱以外に併せ持つ障害に対 して行う指導領域を養護・訓練と位置づけ、昭和五〇年長野県立松本養護学 校は、全ての学習の中で養護・訓練の精神を生かして指導するとして特設を 避けた。. 昭和五二年北海道立札幌養護学校は、従来の学習以前の学習や訓練を養護 ・訓練と考え、同じく五二年に徳島県立国府養護学校は、いわゆる重複障害 者に対する特別の指導を養護・訓練とした。養護・訓練の教育課程上の位置 づけに関しては、現在も同じような議論が続けられている。」. この文面は、新設以降、各精薄養護で養護・訓練のさまざまな受けとめ方が 19 一.

(22) 行われていた実状を如実に示している。各学校で養護・訓練の捉え方が違えば、. 各精薄養護の聞で共通の視点で養護・訓練の実践・研究を行うことは困難にな る。また個々の学校内の教師の間で養護・訓練の捉え方が統一されていれば混 乱は起こらないが、その捉え方が統一されていない場合、教育課程編制や研究 活動で対象の特定ができないという困難があったはずである。. また、この引用で特に着目しておきたいのはこの論評が昭和54年度版要領の 後半期(発表は1991)に書かれたものであるにも関わらず「養護・訓練の教育 課程上の位置づけに関しては、現在も同じような議論が続けられている。」と 述べており、精薄教育での養護・訓練の位置づけの問題は過去の問題ではなく 近年に至っても解決していないという認識を示していることである。. こうした申で、全国的な各学校での取り組みは、徐々に精薄養護の養護・訓 練を精神発達の遅滞に対応させる捉え方の矛盾と混乱克服の必要性を認識させ ていったと=考えられる。. なぜなら、知能訓練的内容を、養護・訓練と捉えると、いかに「個別指導」 で「専門的知識」を持った教師が指導しようと、結果的にその内容は知的教科 の基礎的な内容との区別の説明がつかないからである。また養護・訓練と同時 に新設された生活科的な内容を養護・訓練と捉えると、生活科の存在意義がな くなる。 「教科・領域を合わせた指導」に養護・訓練を含めて指導していると. する立場も、新設によって付加された特別の「内容」が説明しにくい。. 要するに精薄教育では、養護・訓練を精神発達の遅滞そのものに対応させる と、そのr内容」が教科領域の「内容」と類似ないし同一・の指導になり、養護. ・訓練の独自の「内容」が教育課程に位置つかず、養護・訓練の存在意義が薄 まる結果となるからである。. 以上のように昭和45年度版要領の段階は精薄養護の養護・訓練の解釈や捉え 方が不統一で混乱と模索の時期であった。この段階では、 「知能訓練」など. 「精神薄弱の主要障害そのもの」に養護・訓練の対象を求める傾向や、生活科 をはじめとする教科「内容」を特別の体制を組んで指導したり、特設した集中 的指導を行ったり、教科領域の指導を特に発達の遅滞に配慮して指導するのが 精薄の養護・訓練であると解釈するなどの傾向が見られた。養護・訓練の「内 容」そのものの中に精薄の遅滞に対応する内容も盛り込まれていたことなどが その要因であった。 (第H章2節参照). 一20一.

(23) 第2節 昭和54年度版要領の段階での「精神発達の遅滞」の除外 養護・訓練の新設時(1971)には特殊教育の学校種別に示されていた特殊教 育の各学校別の要領は、次の改訂では「盲学校、聾学校及び養護学校学習指導 要領、昭和54年度、文部省」 (昭和54年度版要領)として一本化された。これ. に伴って新設の段階で各障害種別に示されていたr指導計画の作成と内容の取 扱い」は昭和54年度版要領では精選されて特殊教育諸学校共通の文面で示され た点で変:更があったが、養護・訓練の「目標」 「内容」は何等変更のないもの とされた。. しかし「目標・内容」に何等変更がなかったとされてはいるが、精薄教育で は昭和54年度版精薄解説において「精薄養護の特色」の項を設けて解説が行わ れ重要な新しい視点が示されたのである。この新しい提起は精薄養護の養護・ 訓練が混乱した状況に対応するものであった。. (1) 昭和54年度版精薄解説の示した見地 昭和54年度版要領の精薄解説は、新設以来の精薄養護の養護・訓練研究と実 践の一定の総括という文面を含んでいる。昭和54年度版精薄解説は、それ以前 の精薄養護の養護・訓練の混乱の実状を踏まえて、次のように述べている。. 「さて45年度版学習指導要領以来、精薄教育における養護・訓練の受けと め方について、活発な研究が進められてきたが、特に今回の改訂作業を進め る間に、かなり明確になった点がある。それは精薄養護学校と他の特殊教育 諸学校との場合では、養護・訓練に基本的な相違がみられるという点である」 「他の特殊教育諸学校においては、児童生徒のもつ主障害そのものの改善 ・克服が養護・訓練となるのに対し、精薄養護学校においては、精神発達の 遅滞そのものへの対応は養護・訓練の内容にはならず、精神発達の遅滞以外 の、発達の偏りへの対応が養護・訓練ということになる。」. この指摘は「精神発達の遅滞そのものは養護・訓練の内容にはならず」とし て「精神発達の遅滞」を養護・訓練の対象から除外したものである。少なくと も精薄養護の養護・訓練が「知能訓練」や「知的学習活動」そのものを指向し て検討・実践されるのは望ましくないという見地を示したものと斎うことがで きる。. この指摘の持つ意味は重要である。前節で見たように新設の段階では他の障 21 一.

(24) 害の学校では主障害が養護・訓練の対象となることから類推して精神発達の遅 滞そのものを養護・訓練の対象とする傾向が「混乱」を招いたのであるが、こ の指摘によって精薄教育における養護・訓練の「混乱」の定着、拡大は是正さ れたと言えるであろう。. また昭和54年度版精薄解説は「精神薄弱養護学校と他の特殊教育諸学校との 場合では、養護・訓練に基本的な相違がみられる」としてその理由を次のよう に述べている。. 「要約すると精神薄弱養護学校においては、精神発達の遅滞がいかに大き. くても、その遅滞に対応する内容は、生活科をはじめとする各教科にもられ ており、したがって、養護・訓練は、発達の遅れよりは発達の偏りに対応す るための特別な領域ということになる。」 この解説では養護・訓練の対象から「精神発達の遅滞」を除外する理由を精 薄教育の各教科の存在に求めている。またここでは精神発達の遅滞の程度は養 護・訓練の必要度とは相関せず、 「教科に盛られているjと述べているのであ る。. では精薄養護の養護・訓練から「精神発達の遅滞」を除外すれば、養護・訓 練の課題は何であろうか。精薄養護の養護・訓練の内容の検討方向としては 「今後の研究にまたねばならない点も多く残されているが」という留保条件付 きで次のように述べている。. 「精神薄弱養護学校の養護・訓練の具体的内容については、今後の研究に またなければならない点も多く残されてはいるが、前述のように、発達の偏 りに対応するものが養護・訓練であるとすれば、精神薄弱に随伴して表れる 言語機能、感覚・知覚、運動機能、情緒・行動などにおける発達上の偏りへ の対応が、その内容として取り上げられることになろう。」 また、同精薄解説は、 「養護・訓練を望ましい方向へ発展させるためには、. これらの分野及び項目にとらわれることなく、個々の児童生徒の実態に基づい て何が必要なのかを究明する態度を忘れてはならない。」とも述べている。. この段階では一応の重要な指摘が行われたのではあるが、いまだ「今後の研 究に待たねばならない」問題が多く残されていたのである。. (2) 昭和54年度版要領の段階で残された間題. 22.

(25) (1)で見たように精薄養護の養護・訓練の混乱に対応して「精薄養護の特色」. の見地が示されたのであるが、これで精薄養護の養護・訓練の問題が全部解決 したことにはならなかった。加えて新たな問題は、新設の過程では当然「精神 薄弱」という障害も他の障害と並列的に捉えて、精薄の遅れに対応する指導内 容を包含する形で構成されてきた全障害共通の養護・訓練の「内容」が、ここ. にきて「精神発達の遅滞」を除外するr精薄養護の特色」を持つことになった 点である。. この「精薄養護の特色」に従うためには精薄児の障害の状態像「遅れか偏り か」の判別の問題が重要になる。精薄児の示す多様な状態像のそれぞれが「生 活科をはじめとする教科に盛られている精神発達の遅滞といえるもの」か「養 護・訓練の対象となる発達の偏りといえるもの」かの判別の問題である。この. 点については平成元年度版要領の段階と類似の問題であるので第3節でふれる ことにする。. またこの段階で除外されたのは解説の文面によれば「精神発達の遅滞」だけ であるような印象を受ける。このことから養護・訓練から除外するべきなのは 「精神発達の遅滞」を扱う精薄の教科の国語・算数などの知的教科の「内容」. だけであり、技能的・情操的教科の「内容」は養護・訓練から除外されていな いなどと捉えて一部では「体育・養訓」 「音楽・養訓」など内容的には教科と 思われる取り組みが養護・訓練として行われたこともあったのである。. 以上のように昭和54年度版要領の段階では、精薄養護の養護・訓練の混乱に 「精薄養護の特色」を設けて対応したが、 「今後の研究に待つところ」とざれ. る課題が多く残されていた。しかし知能訓練や教科的内容との区別の方向、発 達の偏りを養護・訓練で取り上げようと言う観点が示された。これによって 「混乱」の拡大が抑制され収拾に向かった時期ともいえよう。. 第3節 平成元年度版要領の段階の到達点 一「内容」の再編成と「発達の遅滞」全般の除外一 平成元年度版要領の段階で大きな出来事は養護・訓練の「内容」の再編成が 行われたことである。また平成元年度版精薄解説では昭和54年度版の段階と同 様に「精薄養護の特色」が示されている。従って平成元年度版要領の段階で精 薄養護の養護・訓練はこの両方を総合して検討する必要がある。. 23.

(26) (1) 養護・訓練の「内容」表記の改善と「新たな観点」. 平成元年度版要領の段階で精薄養護の養護・訓練を考える場合に重要な変化 の一つは、養護・訓練の「内容」の表記が改訂(再編成)され解説で「指導事 項を選定する際の観点」が示されたことである。 平成元年旧版精薄解説は次のように述べている。. 「今回の学習指導要領改訂に当たっては、従前の内容の示し方が極めて 抽象的であり、具体的な指導事項をイメージしにくいという指摘があった ことや児童生徒の心身の障害の多様化に対応する観点からこれまでの実施 の経験を踏まえ、具体的な指導事項を選定する際の観点をより明確にする. という方針で検討が行われた。その結果、1から5までの五つの柱の基に、 18の項目で内容の範囲が示されたものである。. この再編成により、養護・訓練の「内容」について例をあげると次のように 変更された。. 昭和45・54年度版要領の段階(部分);. A 心身の適応 1 健康状態の回復および改善に関すること。 2 心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。 3 障害を克服する意欲の向上に関すること。 平成元年度版要領の段階(部分). 1 身体の健康 (1)生活のリズムや生活習慣の形成に関すること。 (2)疾病の状態の理解と生活管理に関すること。 (3)損傷の理解と養護に関すること。. 2 心理的適応 (1)対人関係の形成に関すること。. (2)心身の障害や環境に基づく心理的不適応の改善に関すること。 (3)障害を克服する意欲の向上に関すること。. 24.

(27) この例では、昭和45・54年度版要領の段階で「心身の適応」という範躊に含ま. れていた「内容」が平成元年度版要領の段階では「身体の健康」と「心理的適 応」という2っの分野に再編成されている。 こうした「内容」の再編成に加えて「解説」では次のような「指導事項を選 定する際の観点」が示されている。. 1 「生命を維持し、日常生活を行うために必要な身体の健康状態の維持・改 善を図る観点からの内容」. 2. r対人関係を円滑にし、心理的不適応を改善して、社会参加の基盤を培う 観点からの内容」. 「内容」の再編成と「指導事項を選定する際の観点」は精薄教育にとって何 を意味するであろうか。昭和45・54年度版の段階では「内容」に示された項目の. ほとんどが精薄児にも必要と考えられたのであるが、平成元年度版の段階では r内容」がどの精薄児にも直ちには必要とはいえなくなっており次のように限 定的な解釈が可能となっている。すなわち、. 1 に該当するのは特別に健康上の問題を持つ精薄児のみ 2 に該当するのは情緒的問題の明確な精薄児のみ 従って養護・訓練の「内容」の表記の改善と観点の明確化を踏まえて今後の 精薄養護の養護・訓練、及び個々の精薄児の「必要とされる内容」を検討する ことが重要になったと考えられるのである。. (2) 平成元年度版精薄解説の「精薄養護の特色」の見地 平成元年度量精薄解説では「精薄養護の特色」の項は依然として設けられて おり、その特徴は、昭和54年度版精薄解説の見地がいっそう断定的に受け継が れている点である。この点は、昭和54年度版精薄解説では「精神薄弱養護学校 の養護・訓練の具体的内容については、今後の研究に待たなければならない点 も多く残されはているが、」と留保条件をつけているのに対し、平成元年度版 精薄解説ではその留保条件を廃して「精神薄弱養護学校の各教科の目標及び内 容は児童生徒の障害の状態等を考慮して独自のものを設定している。したがっ て、精神薄弱養護学校においては、発達の遅滞そのものへの対応は、各教科等 で、精神発達の遅滞以外の発達の偏りへの対応が養護・訓練でということにな る。」と断定的に述べていることでも明らかである。次に示すのはは平成元年 度版精薄解説である。 25.

(28) 「精神薄弱養護学校の各教科の目標及び内容は、児童生徒の陸害の状態 を考慮して独自のものを設定している。したがって精神薄弱養護学校にお いては、発達の遅滞への対応は、各教科等で、精神発達の遅滞以外の発達 の偏りへの対応が養護・訓練でということになる。」 「このように、発達の偏りに対するものが養護・訓練であると考えれば、. 精神薄弱に随伴して表れる言語、感覚・知覚、運動、情緒・行動などにお ける発達上の偏りへの対応が、その内容として取り上げられる。」. 昭和45年度版と平成元年度版の精薄解説のr精薄養護の特色」の文面は一見 したところ同じ内容に見受けられるがよく注意して検討すると違う文面になつ でいる。次にその一部分を対比する。 昭和54年度版精薄解説(1983). 精神発達の遅滞への対応は養護・訓練の内容とはならず、. 精神発達の遅滞以外の発達の偏りへの対応が養護・訓練ということに なる。. 平成元年度版精薄解説(1991) 発達の遅滞への対応は、各教科等で、. 精神発達の遅滞以外の発達の偏りへの対応が養護・訓練でということ になる。. この両者を対比すると昭和45年度版では文面上明確に除外されているのは「精 神発達の遅滞」だけであるが、昭和54年度版では「精神発達の遅滞」とともに 「発達の遅滞」一般が教科等の課題として除外されている点が異なっている。. なお教科等の課題とされた「発達の遅滞」は解説の文脈からも精薄教科の扱い になる「発達の遅滞」であるから「精神発達の遅滞に基づく発達の遅滞」ある いは「精神発達の遅滞の表れとしての発達の遅滞」であると考えられる。. 昭和45年度版の段階で「知的遅滞は除外するとしても、運動的・技能的・情 操的などの遅れは偏りとも見ることができ、養護・訓練の対象となるのか?」 26.

(29) という疑問が残ったのであるが、昭和54年度版では「発達の遅滞」一般が除外 されたため「知的遅滞はもちろん、運動的・技能的・情操的などの遅れ」は明 確に教科等の扱う課題となったのである。. このように平成元年度版精薄解説の「精薄養護の特色」は昭和54年度版精薄 解説の見地を一層確定的に受け継いでいるとともに、 「精神発達の遅滞」だけ. でなく「精薄に基づく発達の遅滞」を教科等に位置づけるべきであるとしたの である。. 以上平成元年度版要領の段階では、 「内容」の再編成と「指導事項を選定す. る際の観点」の提示によって精薄の発達遅滞が養護・訓練の「内容」項目にあ. てはめにくくなったことに加え「精薄養護の特色Jの記述がさらに断定的で遅 滞一般まで除外するという明確なものになった。これは新設以来の精薄養護の. 養護・訓練のr混乱」克服の経過の申で、精薄養護の養護・訓練の対象と範囲 をより限定的に確定しようという方向を示したものである。. 以上のように平成元年度版要領の段階では、養護・訓練の内容の表記そのも めが改訂され「観点」が示された。また「特色」で「精神発達の遅滞」だけで なく「発達の遅滞」一般が除外された。現在は精薄養護の養護・訓練の内容が いっそう限定的になり、精薄養護の養護・訓練の内容について焦点化が要求さ れている時期ともいえる。ただし平成元年度版要領が実施に移されるのは小学 部は1992、申学部は1993、高等部は1994年度より学年進行によるので、現時点 では各学校での養護・訓練の実施状況はまだ全面的に分析できる時期には至っ ていない。. 第4節 精薄養護における「混乱」の克服過程の評価 さて、第3節まででみた精薄養護の養護・訓練の「混乱」とその変遷の過程 は、本章冒頭にふれたように養護・訓練の自己規定と教育課程での位置づけに 関する示唆を与えるものである。この節では、この経過を踏まえ、精薄養護の 養護・訓練の混乱の要因、なお残されている課題、20年の経過の評価などにふ れて、この間の経過が示唆する諸点をまとめることにする。. 27 一.

(30) (1) 精薄養護の養護・訓練の「混乱」の要因. 第1節で見た捉え方の不統一・混乱が起こった要因は、養護・訓練の今日的 な段階に立って見れば、次のように整理することができる。ここに示すのはあ くまでも「混乱」の要因であって、精薄教育、精薄養護に養護・訓練が導入さ れたことが誤りであったという見地から指摘するものではない。. ①過去の実績抜きで教育課程審議会の答申どおり新設 まず、精薄養護での新設以前からの実践が無かったからである。無かったに も関わらず教育課程審議会の答申に沿って、 「特殊教育諸学校共通の領域」と して精薄教育でも養護・訓練が新設され実施に移されることになった。 「ただし、精神薄弱教育では各教科の目標、内容が学;習指導要領で別. に定められ、それまでも精神薄弱教育独自の教育課程が編成されていた ので、他の障害のように直接養護・訓練に該当するものが見当たらず、. 精神薄弱者を教育する養護学校における養護・訓練の具体的内容や指導 については、昭和45年度版学習指導要領が制定されてから初めて研究が 行われるようになったのである。」 (昭和54年度版精薄解説、1974). ②当初から模索の必要性を指摘 次に、精薄以外の各学校の養護・訓練の内容は、要領の「指導計画の作成と 内容の取扱い」で実践内容の具体例が示された(たとえば肢体不自由教育では 「機能訓練:」や「言語訓練」として)が、精薄教育ではその内容が抽象的にし か示されなかったことがあげられる。精薄養護の養護・訓練は新設当初から不 明確なものだったのである。. 「なぜ精薄教育だけ示さなかったのかという疑問がわいてくるが(申 略)むしろ具体的内容は、養護学校や特殊学級の現場における実践にお ける試練を経て、その間の経験の中から生み出されていくものであると 考える。」 (昭和45年度版精薄解説、1974). ③ 養護・訓練の「内容」への精神発達の遅滞・発達の遅滞の状態徐の包含 さらに養護・訓練の「内容」として要領に示された分野と項目の文面を見る とrA−3 障害を克服する意欲の向上」 rB 一一2 感覚の補助的手段の活用 に関すること」以外は精薄児が示す発達遅滞にも必要な内容と見られる文面で あったことがあげられる。その理由は「養護・訓練の内容については学校種別 ごと(もちろん精薄教育を含む一筆者注)に特別に必要とされる内容を整理し 一 28.

参照

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