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 養護・訓練の「目標」の解釈

       及び「内容」の特殊性

 序章でふれたように養護・訓練は新設以来20学年の歴史を持っている領域で あるが、なお未確定性が残されているというのが本論の立場である。本章では 第1章精薄養護における「混乱」の克服過程を念頭に置いて、養護・訓練の 考察の基本的な事項として「目標」 「内容」を取り上げる。

 養護・訓練は各種の障害児教育課程4領域の中の一領域であり、各種障害の 種類と程度及びその状態像に対応する内容を持つ特別の領域である。

 養護・訓練の「目標」 「内容」の検討を通じてその特色ある自己規定と教科 等との理念的・内容的区別及び特殊性を明確にすることは、特殊教育課程にお ける養護・訓練の位置づけを明確にするということでもある。またそれらの検 討を通じて養護・訓練がより限定的・確定的・特定的に解釈されるようになる ならば、特殊教育課程研究にも実践にもさらに有効性を発揮すると考える。

 以上のような見地から本章の第1節では、 「目標」の解釈の吟味を行い、第 2節で「内容」の問題点や特殊性について検討する。

第1節 養護・訓練の「目標」と教育課程での位置づけ

 養護・訓練に定義がない現状では、それを検討する上では「目標」 「内容」

「指導計画の作成と内容の取り扱い」の文面そのものが養護・訓練についての 基礎資料として重要となってくる。さらにつけ加えるならば、要領の各障害別 の「解説」の記述もこれに含まれるであろう。

 養護・訓練の20年の歩みのなかで昭和54年度改定で「指導計画の作成と内容 の取扱い」が一元化され、平成元年度改定で「内容」の表記に変更があったの に対して養護・訓練の「目標」は新設以来一貫して変更されていないものであ る。このことは養護・訓練の「目標」が適切な文面を持ち問題点が少ないと見 られている証左でもあると考えられ、その意味で養護・訓練の「目標」は養護

・訓練そのものの検討のために特別に重要な位置を占めるものである。

 この節では養護・訓練の「目標」の一般的解釈を踏まえつつ、特に「目標」

の文面そのものに着目して、養護・訓練の自己規定と他の領域との区別および 教育課程全体での位置づけに役立つ視点を取り出すことにする。

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(1) 養護・訓練の「目標」の一般的解釈と問題点

 養護・訓練の理念や目標についての説明は一般に、学校教育法71条や特殊教 育諸学校教育目標との関係で行われている。平成元年度版精薄解説は、その重 要性の根拠について次のように解説している。

 「養護・訓練の目標は、 (中略)これを小学部・申学部学習指醇要領第 1章総則第1節の3の特殊教育諸学校独自の目標、すなわち、『小学部及 び中学部を通じ、児童及び生徒の心身の障害に基づく種々の困難を克服す るために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うこと。』と比較したとき、

その表現こそ違っていても、本質的には極めて共通したねらいが述べられ ていることが分かる。これは特殊教育諸学校における養護・訓練の重要性 を示すものに他ならない。」

上記の点について検討するため以下に要領の原文を併記する。

昭和54年度版及び平成元年度版要領の特殊教育諸学校の教育目標;

  小学部及び中学部における教育においては、学校教育法第71条に定める目  的を実現するために、児童及び生徒の心身の障害の状態及び特性等を十分に  考慮して、次に掲げる目標の達成に努めなければならない。

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小学部においては、学校教育法第18条各号に掲げる教育目標 中学部においては、学校教育法第36条各号に掲げる教育目標

小学部及び申学部を通じ、児童及び生徒の心身の障害に基づく種々の 困難を克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うこと。

昭和45・54年度及び乎成元年度版要領の養護・訓練の目標;

 児童又は生徒の心身の障害の状態を改善し、 又は克服するために必要な 知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う

 特殊教育諸学校の教育目標は、まず小学校・申学校の教育目標と同一の目標 を掲げ、それに特殊教育諸学校の教育目標の3「児童及び生徒の心身の障害に 基づく種々の困難を克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養うこ

と」 (以下、これを「特殊教育目標の3」と略す)を付加した構成になってい る。そして「特殊教育目標の3」を担っている領域が養護・訓練であるとの解

説である。

 この解説は養護・訓練の重要性を特殊教育諸学校の教育目標との類似で説明 したもので、教育目標の上で見るならば特殊教育の特殊教育たる側面を養護・

訓練が担っているかのような解説であるともいえる。またここでは養護・訓練 の目標は、その定義がない申では事実上養護・訓練の「理念的な面での定義の ような役割」を負わされていると言っても過言ではない。こうした養護・訓練 の「目標」等の解釈は研究上も異論が見られないところであり、一般的に行わ れている解釈であるといってよいであろう。

 しかし少なくとも昭和54年度版要領の段階以降では、この養護・訓練の解釈 には精薄教育においては指摘すべき問題が出てきているといわねばならない。

なぜならば、上記の解説の「特殊教育目標の3」の文言「児童及び生徒の心身 の障害に基づく種々の困難」には特に断られていないのであるから当然「精神 薄弱」という障害の糟神発達の遅滞や発達の遅滞のに対応する内容も含まれて いるかのような不正確な理解が成立する余地が出てくるからである。

 第1章で見たように精薄教育における養護・訓練には「精薄養護の特色」が あり、これに従うならば「児童及び生徒の心身の障害に基づく種々の困難」の

うち精神発達の遅滞・発達の遅滞に基づく内容は教科等の扱いになっており、

「発達の偏り」に対応する内容のみが養護・訓練の扱いとなっている。すると 精薄教育の場合「児童及び生徒の心身の障害に基づく種々の困難を克服するた めに必要な知識、技能、態度及び=習慣を養うこと」は、教科等で扱われる場合 もあるので、その点を留保条件として示しておかないと不正確な解釈が成立す る余地が出てくるのである。

 このことを考慮するならば、昭和54年度版及び平成元年度版要領の段階では

「特殊教育目標の3」が養護・訓練に具現されているとするためには、 「児童 及び生徒の心身の障害に基づく種々の困難」には精薄児の「精神発達の遅滞、

発達の遅滞」は含まれない点を強調する必要がある。 「精薄養護の特色」は、

特殊教育諸学校共通の養護・訓練の性質そのものの一部であり、養護・訓練の 説明あたって当然踏まえられるべき性格のものである。またいずれの特殊教育 諸学校でも精薄との重複障害の児童生徒が在籍することを考えると「精薄養護 の特色」は精薄養護の教職員だけが知っておればよいというものではない。ま た昭和54年度版要領の段階以降においては「精薄養護の特色」が存在するので あるから、特殊教育諸学校共通の養護・訓練を解釈する場合「心身の障害Jを

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何の留保条件もなしに並列的に使用することは正しくない段階にあるというこ

とでもある。

 以上のように、本節(1)引用の解説の文面には精薄教育の中での養護・訓練の 混乱やその解決の方途としての精神発達の遅滞・発達の遅滞の除外などの経過 や現状が全く反映されていない問題が指摘できるのである。その間門点の解消 のためには、 「ただし『児童及び生徒の心身の障害に基づく種々の困難』のう ち、精神発達の遅滞及びその表れとしての発達の遅滞に基づく種々の困難は精 薄教科等の扱いになる点に留意する必要があるが」などの但し書きを必要とし ているといえるであろう。

(2) 養護・訓練の目標と教科等の目標の対比

 以上のように養護・訓練の目標は一般に学校教育法71条あるいはそれに基づ く特殊教育諸学校共通の教育目標(特殊教育目標の3)の具体化という視点か ら説明されることが多く、 「目標」の文面そのものに着目して教科等の領域と の区別を解明する解説は行われていない。物事の本質的な事柄が問題となった 場合、その原点に立ち返って検討を加えることが有効な場合がある。また養護

・訓練の目標は20年間変更が加えられなかったことを見れば実践的な試練にも 耐えたものである。その意味において「目標」の文面そのものに着目する意義 があると考えられる。ここでは「養護・訓練の目標」と「教科等の目標」との 区別について考察を試みる。

 特殊教育諸学校の教育課程は教科・道徳・特別活動と養護・訓練の計4領域 で構成するとされている。そのうち教科の領域は盲・聾・肢体・病弱の単一障 害児教育では小学校・申学校に準ずるものとされ、精薄教育では特別に設けら れた教科(以下精薄教科と略す)によることになっている。従って特殊教育諸 学校の教科指導にはそれぞれの発達段階に応じて健常児の各教科あるいは精薄 教科が用いられることになる。

 第1章の考察のように精薄教育では養護・訓練の混乱がこの精薄教科との区 別・関係において見られたのであるが、盲・聾・肢体・病弱の各学校ではその ような混乱が指摘されてこなかったことを考え合わせると、養護・訓練の検討 のためには精薄教科を含む教科領域全体との対比が示唆を与えるものがあると 考えられる。そのような意味で養護・訓練の目標と教科等の領域の目標を対比

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