道徳の授業に対する学生の意識の分析 ―「道徳の指導法」の実施に向けた課題の検討―
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(2) 釧路論集 -北海道教育大学釧路校研究紀要-第49号(平成29年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.49(2017):53-64. 道徳の授業に対する学生の意識の分析 ―「道徳の指導法」の実施に向けた課題の検討― 星 裕・福岡 真理子・梅本 宏之*・越川 茂樹** 北海道教育大学釧路校学校臨床研究室 *北海道教育大学大学院教育学研究科 高度教職実践専攻 **北海道教育大学釧路校保健体育研究室. Analysis of Awareness of University Students about Moral Education -A Study of Problems for the Enforcement of “Teaching Methods of Moral Education”HOSHI Yutaka, FUKUOKA Mariko, UMEMOTO Hiroyuki*, KOSHIKAWA Shigeki** Department of School Clinical, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education *Hokkaido University of Education Advanced Teacher Professional Development Program **Department of Health and Physical Education, Kushiro Campus, Hokkaido University of Education 要旨 本研究では,「道徳の指導法」の実施に向けて,道徳の授業に対する学生の意識を分析した。その結果,①道徳の授業 に対する否定的な印象,②道徳の授業に関するイメージの希薄さ,③道徳教育に関する知識の不足による不安感・課題意 識の三つの観点を見出すことができた。三つの観点を踏まえて 「道徳の指導法」を実践することが,学生の学びを主体的 で深いものにしていくことにつながると考える。今後の課題として,今回,整理した三つの観点を踏まえ,どのような内 容や方法を用いた授業を実施することで,学生が自信を持って道徳の授業に臨むことができるようになるかを検討してい くことを挙げておく。. 1.はじめに. を図る必要性が指摘されている(中教審,2014,p. 19) 。 教育職員免許法施行規則の第6条には,大学における「教. 平成27年3月に,学校教育法施行規則及び小学校学習指. 育課程及び指導法に関する科目」として「各教科の指導法」. 導要領,中学校学習指導要領,及び特別支援学校小学部・. とともに「道徳の指導法」が位置付けられている。それに. 中学部学習指導要領の一部改正が行われた。 「道徳の時間」. よると,小学校・中学校の教諭の専修免許状又は一種免許. を「特別の教科 道徳」 (以下, 「道徳科」と記す)として. 状の授与を受ける場合にあっては,2単位以上を習得する. 新たに位置づける今回の改訂は,昭和33年の学習指導要領. ように記されている。. に「道徳の時間」が特設されて以来,約60年に及ぶ道徳教. 北海道教育大学釧路校(以下, 「釧路校」と記す)にお. 育の大きな転換点になる。. ける道徳教育に関する科目にも「道徳の指導法」が設定さ. それに伴い,大学の教員養成課程についても改善が求め. れている。これは,3年次に履修することになっており,. られている。平成25年12月26日に道徳教育の充実に関する. 初等と中等に分かれている。多くの学生は,前期に主免,. 懇談会より『今後の道徳教育の改善・充実方策について(報. 後期に副免で履修する。履修する学生については,将来,. 告)~新しい時代を,人としてより良く生きる力を育てる. 教員として採用になった際には,道徳の授業を実践してい. ために~』が出され,教員になるすべての者が充実した道. くことが求められる。したがって,学生は,講義の履修を. 徳教育を実践していくことができるようになるために,大. 通して道徳の授業実践に向けての知識・技能を高めておく. 学の教員養成課程の充実が求められている(道徳教育の充. ことが求められているのである。. 実に関する懇談会,2013,p. 22) 。また,平成26年10月21. しかしながら,道徳の授業,あるいは道徳の指導力をめ. 日に中央教育審議会より『道徳に係る教育課程の改善等に. ぐって問題点が指摘されている。永田・藤沢(2010)は,. ついて(答申) 』が出され, 大学の教員養成課程において,. 「道徳の指導法」にあたる科目の大学における設置状況に. 理論面,実践面,実地経験面の三つの側面から改善・充実. 関する調査を実施し, 「学生自身が小・中学校で受けてき. - 53 -.
(3) 星 裕・福 岡 真理子・梅 本 宏 之・越 川 茂 樹 た道徳授業に肯定的なイメージが弱く,道徳授業を実施す. 回答状況を分析した。回収できたのは,179名分である。. ること自体を敬遠する傾向について問題視する記述が見ら. 質問紙は,小中学校それぞれの「道徳の時間」に対する. れたことも改めて押さえる必要がある」 と指摘している(永. 「好意度と有意義度に関する印象」,「心に残ったお話・授. 田・藤沢,2010,p. 89) 。また,永田(2013,p. 1-2)は,. 業」,「道徳の時間に用いた資料」の三つから構成した。. 教職を目指す大学生の道徳授業に対する意識として,道徳. 「好意度と有意義度」と「心に残ったお話」については,. の時間についてのイメージが良くないことに加えて,教職. 永田・柄本(2014)が作成した質問紙を参考にした。具. 課程科目「道徳の指導法」の全国の大学での講義者への調. 体的には, 「好意度と有意義度」については「好きだった. 査から,当該科目の実施上の課題として, 「道徳の時間の. か」と「ためになったか」という二つの視点で作成した。. イメージが小学生どまりである」 , 「学生自身が良いサンプ. 小学校と中学校の「道徳の時間」が好きだったかは, 「5 . ルを持っていない」等の課題が記述されていたことも示し. 好きだった」,「4 やや好きだった」,「3 どちらともいえ. ている。. ない」,「2 やや好きではなかった」,「1 好きではなかっ. 道徳教育の充実に関する懇談会(2013)においても, 「教. た」 , 「やらなかった」 , 「覚えていない」の5件法+2項目か. 員の指導力が十分でなく,道徳の時間に何を学んだかが印. ら選択するようにした。小学校と中学校の「道徳の時間」. 象に残るものになっていない」 , 「他教科に比べて軽んじら. がためになったかは, 「5 ためになった」 , 「4 まあため. れ,道徳の時間が,実際には他の教科に振り替えられてい. になった」,「3 どちらともいえない」,「2 あまりために. ることもあるのではないか」 (道徳教育の充実に関する懇. ならなかった」,「1 ためにならなかった」,「やらなかっ. 談会,2013,p. 10)等の意見が出されていることが委員. た」,「覚えていない」の5件法+2項目から選択するように. の間で認識されている。. した。あわせて,選択の理由について記述する構成にし. 文科省(2005)では,教科や活動の時間の好き嫌いにつ. た。これは,永田・柄本(2014)が課題として挙げていた「好. いての調査を行っている。それによると,道徳の時間を好. み」と「有意義度」の影響要因を検討するためである。こ. きだと回答した割合は半数程度になっており,低い比率に. れによって,学生の道徳の授業に関する意識を「好意度」. 留まっている(文科省,2005,p. 18) 。. と「有意義度」の2観点で分析した。. 一方,越中(2017)は,現場の教師や将来教員を目指し. また, 「心に残ったお話・授業」は,小学校と中学校. ている学生が道徳の教科化を好ましいと感じているかどう. で分けた上で,自由記述とした。 「道徳の時間に用いた資. かの調査を行っている。それによると,学生の中に道徳の. 料」は,これも小学校と中学校を分け,複数回答可の選択. 教科化に関してネガティブな認識が示される要因の一つと. とし, 「副読本」, 「テレビ(NHK番組)」, 「新聞」, 「映像(ビ. して評価の導入を挙げている(越中,2017,p. 175)。. デオ等)」,「その他」とした。これらの分析を通して,学. 永田・藤沢(2010) ,永田(2013) ,道徳教育の充実に関. 生が道徳の授業に関してどのようなモデルを持っているの. する懇談会(2013) ,文科省(2005)からは,学生の道徳. か把握した。. の授業に関わるイメージが決して良いものではないこと,. ワークシートには, 「講義を通して学びたいこと」を自. 道徳の授業の記憶がほとんど残っていないことが指摘され. 由記述とした。このワークシートの分析により, 「道徳の. ている。そのため,良い授業のモデルを持っておらず,道. 指導法」を学ぶ上で,学生が何を学びたいのかを明らかに. 徳の授業を実施することを敬遠する傾向も見られるという. していく。得られた記述はすべてテキストファイルにし,. 課題も示されている。また,越中(2017)に示されている. テキストマイニングの手法を用いて分析する。分析には,. ように,教科化に伴う学生の不安も見られる。道徳の指導. フリーのソフトウェア「KH Coder3」を用いた。本研究. 法を学ぶ前提として,学生の持つ道徳の授業に関する意識. では,このソフトウェアで用いることができる「階層的ク. がどのようなものか把握することや,教科化の問題も含め. ラスター分析」と「共起ネットワーク」を使用した。樋口. て学生が授業実践に向けて不安に感じている部分を把握す. (2016)によると, 「階層的クラスター分析」は,出現パター. ることは,「道徳の指導法」の授業を構想する上では欠か. ンの似通った語の組み合わせにはどんなものがあったのか. せないものであると考える。. についてデンドログラムを作成できるとしている。また, 「共起ネットワーク」では,出現パターンの似通った語,. 2.研究の目的と方法. すなわち共起の程度が強い語を線で結んだネットワークを 描くことができるとしている。これらの点を踏まえ,それ. 本研究では,道徳の授業に関する学生の意識と, 「道徳. ぞれの描画の仕方の違いから,分析を通して学生が講義を. の指導法」を受講するにあたり学生が個人で目標としてい. 通して何を学びたいと考えていくのか捉えていく。. ることを分析することを目的とした。 研究の対象としたのは, 「道徳の指導法(初等 主免)」. 3.結果と考察. と「道徳の指導法(中等 主免) 」の受講生191名である。 研究の方法は,自記式質問紙による調査を実施し,その. 3.1. 道徳の授業への学生の好意度. - 54 -.
(4) 道徳の授業に対する学生の意識の分析 まず,学生の道徳の授業への好意度を検討した。学生の 小学校時代の「道徳の時間」に対する「好意度」に関する. また,図1の「その他」に含まれる「覚えていない」や. 回答の割合を示したものが図1である。小学校時代への有. 「やらなかった」と回答した学生の割合が,約11%であっ. 効回答数は179名分である。. た。永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果9.9%と近い割 合であるものの,少し高くなっている。 小学校時代の道徳の授業に関する印象としては,好意的 な印象を持っている学生が約48%,否定的な印象を持って いる学生が約19%となった。好意的な印象を持つ学生の割 合の方が高くなってはいるものの,約19%は否定的な印象 を持っている学生がいることが推察できる。 好意的な印象を抱いた理由は, 「物語を読むことが好き だった」,「テレビを見るのが好きだった」,「先生や家族の 話を聞くことが好きだった」といった授業で取り上げた 資料に関わる視点が多く見られた。それ以外に, 「テーマ について考えるのが好きだった」のような授業の目標に関 わる視点や, 「話し合うことが好きだった」のような授業 の方法に関わる視点があった。ただ, 「他教科と比較して 気楽だった」が20名おり,必ずしも道徳の授業としての良 さから選択しているわけではない学生も多く見られた。ま た,否定的な印象を抱いた理由は,「興味が持てない,必. 図1 道徳の時間の好意度(小学校 n=179). 要感がない」という回答が12名で最も多かった。それ以外 小学校は, 「5 好きだった」と「4 やや好きだった」. では, 「話を読むことやテレビを見ることが好きではなかっ. を合わせた好意的な考えを持つといえる学生の割合は約. た」といった授業で取り上げた資料に関わる視点や,「発. 48%であった。永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果. 表することが好きではなかった」,「考えることが好きでは. 48.8%とほぼ同様の傾向が見られた。好きな理由として挙. なかった,面倒」という授業の方法に関わる視点も見られ,. げられていた内容は, 六つに整理することができた(表1)。. 好意的な印象を抱いた理由とは逆の結果となっている視点 も見られた。「その他」に含まれる「覚えていない」,「や. 1 2 3 4 5 6. 理 由 物語を読むことが好きだった テレビを見るのが好きだった 他教科と比較して気楽だった 話し合うことが好きだった テーマについて考えることが好きだった 先生や家族の話を聞くことが好きだった. 人数 23 人 22 人 20 人 8人 8人 2人. 表1 道徳の時間に好意的な印象を抱いた理由(小学校). らなかった」と回答した学生が約11%見られた。これらを 回答した学生については,自分が行う際の授業のイメージ 自体を持てていないと考えられる。 次に中学校時代の道徳の授業に関する好意度を検討して いく。学生の中学校時代の「道徳の時間」に対する「好意度」 に関する回答の割合を示したものが図2である。中学校時 代の好意度に関する質問への有効回答数は179名分である。. 「2 やや好きではなかった」と「1 好きではなかっ た」を合わせると,約19%であった。永田・柄本(2014, p. 22)の調査結果15.9%と比較すると少し割合が高くなっ た。好きではなかった理由として挙げられていた内容は, 七つに整理することができた(表2) 。. 1 2 3 4 5 6 7. 理 由 人数 興味が持てない,必要感がない 12 人 話を読むことやテレビを見ることが好きではなかった 5 人 発表することが好きではなかった 4人 内容がわからなかった,覚えていない 4人 考えることが好きではなかった,面倒 2人 雰囲気が好きではなかった 2人 教え込みが嫌だった 2人. 表2 道徳の時間に否定的な印象を抱いた理由(小学校). - 55 -. 図2 道徳の時間の好意度(中学校 n=179).
(5) 星 裕・福 岡 真理子・梅 本 宏 之・越 川 茂 樹 中学校は, 「5 好きだった」と「4 やや好きだった」. た」,「必要感がなかった」のように授業の目標や内容に関. を合わせた好意的な考えを持つといえる学生の割合は約. する視点が出されていた。他に, 「暗い気持ちになった」. 23%であった。永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果. という内容に関することや, 「学級の雰囲気が良くなかっ. 21.8%より少し高い割合となった。好きな理由として挙げ. た」という学級の雰囲気に影響を受けたことが理由として. られていた内容は,八つに整理することができた(表3)。. 挙げられていた。 小学校と中学校の好意度の結果を比較すると,共通する. 1 2 3 4 5 6 7 8. 理 由 他教科と比較して気楽だった 副読本を読むことが好きだった 話すことが好きだった 視野が広がった,生活の見直しにつながった 雰囲気が良かった 教師の話,ノートへのコメントが好きだった 授業に工夫があったから好きだった 考えることが好きだった. 人数 12 人 11 人 6人 3人 2人 2人 1人 1人. 表3 道徳の時間に好意的な印象を抱いた理由(中学校). 点としては,どちらも好意的な印象を持っている学生の割 合は,否定的な印象を持っている学生の割合よりも高く なっているが,否定的な印象を持つ学生もいることがわか る。また,質問紙への回答から,どちらにも「その他」 (覚 えていない,やらなかった等)の回答を選択した学生がお り,授業のイメージを持てていない学生がいることが推察 される。特に,中学校時代の道徳の授業についてのイメー ジがない学生が多い結果となっている。一方,異なってい る点としては,好意的な印象を持った理由として小学校時. 「2 やや好きではなかった」と「1 好きではなかっ. 代は「物語を読むことが好きだった」,「テレビを見るのが. た」を合わせると約12%であった。永田・柄本(2014,p.. 好きだった」等の資料の魅力に関する回答が多かったが,. 22)の調査結果16.4%と比較すると低い割合となった。好. 中学校では「他教科と比較して気楽だった」という回答が. きではなかった理由として挙げられていた内容は,四つに. 多くなっていた。. 整理することができた(表4) 。. また,永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果との比較では, 近い割合の数値が出たものの,小学校では,好意的な回答. 1 2 3 4. 理 由. 面白くなかった 必要感がなかった 暗い気持ちになった 学級の雰囲気が良くなかった. 人数 8人 7人 1人 1人. の割合はほぼ同じで,否定的な回答の割合が少し高い。中 学校では,好意的な回答の割合が少し高く,否定的な回答 の割合が低くなっている。小学校の授業に対するイメージ は少し否定的な傾向があり,中学校の授業に対するイメー. 表4 道徳の時間に否定的な印象を抱いた理由(中学校). ジは肯定的な傾向がある。ただ,どちらも「やらなかった」 ,. 「その他」(覚えていない,やらなかった等)と回答し. くなっている。比較していくと釧路校の学生には,道徳の. た学生の割合が,約46%に及んだ。永田・柄本(2014,p.. 授業イメージを持っていない学生が多いと考えられる。. 「覚えていない」の回答が多く,特に中学校では割合が高. 22)の調査結果32.5%よりかなり高い割合となった。 中学校時代の道徳の授業に関する印象としては,好意的. 3.2. 道徳の授業への学生の有意義度. な印象を持っている学生が約23%,否定的な印象を持って. 学生の小学校時代の「道徳の時間」に対する「有意義度」. いる学生が約12%となった。小学校時代への回答と同様に. に関する回答の割合を示したものが図3である。小学校時. 好意的な印象を持つ学生の割合のほうが高くなっているも. 代への有効回答数は179名分である。. のの,道徳に好意的な学生が多いとはいえない回答状況で あった。 好意的な印象を抱いた理由は, 「他教科と比較して気楽 だった」が12名と最も多くなっており,道徳の授業の良さ とは必ずしも結び付いていない。続いて, 「副読本を読む ことが好きだった」のように資料の良さを挙げている学生 がいる。また,「話すことが好きだった」 , 「考えることが 好きだった」 , 「授業に工夫があったから好きだった」,「教 師の話,ノートへのコメントが好きだった」等の授業の方 法を理由として挙げている学生も見られる。他には, 「視 野が広がった,生活の見直しにつながった」のように,そ の後の生き方に影響があったということ, 「学級の雰囲気 が良かった」のように学級の雰囲気に影響を受けたことが 理由として挙げられていた。 否定的な印象を抱いた理由としては, 「面白くなかっ. - 56 -. 図3 道徳の時間の有意義度(小学校 n=179).
(6) 道徳の授業に対する学生の意識の分析. 小学校は, 「5 ためになった」と「4 まあためになった」 を合わせた意義を感じている学生の割合は約36%であっ た。永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果48.4%と比較 すると低い割合になっている。ためになった理由として挙 げられていた内容は, 四つに整理することができた(表5)。. 1 2 3 4. 理 由 考えが深まった,広がった,大切なことを教わった 実生活につながった 色々と話し合った 読み物資料がためになった. 人数 35 人 9人 4人 2人. 表5 道徳の時間に意義を感じた理由(小学校) 「2 あまりためにならなかった」 「1 ためにならなかっ , た」を合わせると約16%であった。永田・柄本(2014,. 図4 道徳の時間の有意義度(中学校 n=178). p. 22)の調査結果12.6%と比較すると少し高い割合となっ た。ためにならなかった理由として挙げられていた内容. 中学校は, 「5 ためになった」と「4 まあためになった」. は,四つに整理することができた(表6) 。. を合わせた意義を感じている学生の割合は約23%であっ 1 2 3 4. 理 由 何のためにやっていたのかわからない 覚えていない 国語のようだった 話し合いが多かった. 人数 15 人 8人 1人 1人. 表6 道徳の時間に意義を感じなかった理由(小学校) 図3の 「その他」 に含まれる 「覚えていない」 や 「やらなかっ た」と回答した学生の割合が,約10%であった。永田・柄 本(2014,p. 22)の調査結果10.6%とほぼ同じになってい. た。永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果29.1%と比較 すると低い割合になっている。ためになった理由として挙 げられていた内容は,四つに整理することができた (表7) 。. 1 2 3 4. 理 由 考えが深まった,広がった,大切なことを教わった 実生活につながった 気づいていないところで役に立っていると考える 教師の説話が好きだった. 人数 24 人 5人 2人 1人. 表7 道徳の時間に意義を感じた理由(中学校). る。 小学校時代の道徳の授業に関する印象としては,意義を. 「2 あまりためにならなかった」, 「1 ためにならなかっ. 感じている学生が約36%,意義を感じなかった学生が約. た」を合わせると約9%であった。永田・柄本(2014,p.. 16%と意義を感じている学生の割合の方が高くなってはい. 22)の調査結果13.3%と比較すると低い割合となった。た. るものの,約16%は意義を感じていない学生がいることが. めにならなかった理由として挙げられていた内容は,四つ. 推察できる。. に整理することができた(表8)。. 意義を感じている理由は, 「考えが深まった,広がった, 大切なことを教わった」 , 「実生活につながった」等,道徳 の授業を通して,価値観の広まりや深まり,生き方に関わ る学びを得ることができたことが挙げられていた。逆に意 義を感じられなかった理由としては, 「何のためにやって いたのかわからない」というように,授業の目的を感じら れなかったことが挙げられていた。. 1 2 3 4. 理 由 覚えていない,やっていない 何のためにやっていたのかわからない 学級の雰囲気 指導の仕方. 人数 8人 2人 2人 1人. 表8 道徳の時間に意義を感じなかった理由(中学校). 次に中学校時代の道徳の授業に関する有意義度を検討し ていく。学生の中学校時代の「道徳の時間」に対する「有. 「その他」 (覚えていない,やらなかった等)と回答し. 意義度」に関する回答の割合を示したものが図4である。. た学生の割合が,約46%に及んだ。永田・柄本(2014,p.. 中学校時代への有効な回答は178名分である。. 22)の調査結果33.3%よりかなり高い割合となった。 中学校時代の道徳の授業に関する印象としては,意義を 感じている学生が約23%,意義を感じなかった学生が約9% であり,意義を感じている学生の割合のほうが高くなって いる。しかし,道徳に意義を感じている学生が多いとはい. - 57 -.
(7) 星 裕・福 岡 真理子・梅 本 宏 之・越 川 茂 樹 有意義だと捉える傾向があることが示唆された。. えない回答状況であった。 意義を感じた学生の回答は,小学校と同様に「考えが深 まった,広がった,大切なことを教わった」 , 「実生活につ. 3.4. 道徳の授業で活用した資料と心に残った授業. ながった」等の回答が多く見られた。意義を感じなかった. 学生が覚えている道徳の授業で用いられた資料・内容に. 理由は,「覚えていない,やっていない」が最も多くなっ. 関する回答をまとめたものが図5である。179名の回答で,. ていた。. 複数選択可としている。. 小学校と中学校の有意義さに関する結果を比較すると, どちらも意義を感じた学生の割合は,意義を感じなかった 学生の割合よりも高くなっている。ただし,意義を感じて いない学生も一定数いることがわかる。意義を感じた理由 は小学校,中学校共に, 「考えが深まった,広がった,大 切なことを教わった」や「実生活につながった」という回 答が共通して多かった。一方,意義を感じられなかった理 由として,小学校と中学校とも上位に, 「何のためにやっ ていたのかわからない」という授業の目的を感じられな かったことと,「覚えていない,やっていない」という回 答が多かった。 また,永田・柄本(2014,p. 22)の調査結果との比較で は,小学校は,意義を感じていない傾向が見られた。中学. 図5 道徳の授業で用いられた資料・内容(小学校 n=179). 校は意義を感じた学生の割合,意義を感じなかった学生の. 小学校時代の道徳の授業で用いられた資料・内容で最も. 割合は共に低くなっている。 「その他」 (覚えていない,や. 多かったのは,「副読本」で,126名と約70%の学生が選択. らなかった等)と回答した学生の割合は小学校では,同じ. した。それにテレビと教師の話が81名ずつで約45%,映像. 割合であったが,中学校ではかなり高くなっている。中学. (ビデオ等)が66名と37%で続いている。 「その他」とし. 校で,意義を感じた学生,感じなかった学生の割合が低く. て絵本やゲストティーチャーの話, 写真が挙げられていた。. なっている原因と考えられる。. また,心に残っている道徳の授業への回答のうち,図5 の資料と関わりのあるものを六つに分類した(図6) 。179. 3.3. 好意度と有意義さの相関関係. 名に実施し,有効回答数は63名分であった。. 次に,好意度と有意義さの相関関係を調べたところ,表 9の結果となった。. 相関係数 P値. 小・好意と意義 0.511 < 0.001. 中・好意と意義 0.712 < 0.001. 表9 好意度と有意義さの相関係数とP値 (小学校n=179,中学校n=178) 好 意 度 と 有 意 義 さ の 関 係 を 検 討 す る た め,Excelの 「CORREL関数」を用いて相関係数を算出し,無相関検 定を行った。中学校の有意義さへの回答に未記入が1名い. 図6 心に残っている道徳の授業(小学校 n=63). たためその回答を除き,小学校は179名分,中学校は178 名分の回答での分析を実施した。その結果,小学校時代 の道徳の授業に関する好意度と有意義度に関する回答では. 最も多かったのは,テレビやビデオ等の「映像資料」で,. r=.511(P<.001)と,中程度の有意な正の相関係数が得ら. 特にNHKの道徳番組を挙げている学生が20名いた。他. れた。また,中学校時代の道徳の授業に関する好意度と有. に,ビデオで「火垂るの墓」や「はだしのゲン」等が挙げ. 意義度に関する回答では,r=.712(P<.001)と,強い有意. られていた。次に,多く挙げられていたのは,副読本や絵. な正の相関係数が得られた。. 本等の「読み物資料」で,ランドセルを大切にする話やイ. この結果から,小学校と中学校のそれぞれの道徳の授業. チローの話等が記述されていた。全員が異なる話を挙げて. に関する好意度と有意義度には関連があると考えられる。. おり,学生によって,心に残っている資料は異なっていた。. したがって,道徳の授業を好意的にとらえている学生は,. 資料ではなく,何について学んだかという授業で取り上げ. - 58 -.
(8) 道徳の授業に対する学生の意識の分析 た「特定のテーマ」について覚えている学生もいた。「命」 をテーマとした授業が4名から出されており,最も多かっ た。 「心のノート」 を使ったことを覚えている学生もおり, 「お話を読んで,心のノートをやった」 , 「心のノートとい うものにいろいろ書いた」 という記述も見られた。他に, 「家 族からの話」や「教師の説話」を挙げている学生もいた。 学生が覚えている小学校時代の道徳の授業としては,副 読本や絵本等の読み物資料を中心とした授業が多いと考え られる。また,テレビやビデオ,特にNHKの道徳番組を 覚えていると回答した学生の割合も高い。教師の説話は,. 図8 心に残っている道徳の授業(中学校 n=34). 授業に取り入れられていたものの,心に残っている授業と しては1名だけが取り上げており,授業の中心となってい たわけではないと推察される。また,心のノートについて. 最も多かったのは,副読本等の「読み物資料」で15名が. も,お話の後にやった等の記述があるように授業の一部に. 挙げていた。 「動物園と子どもの話」や「ディズニーラン. 用いられた資料であったと考えられる。学生がイメージす. ドの掃除の話」等が挙げられていた。出された内容は, 「ディ. る小学校の道徳の授業は,副読本等の読み物資料やNHK. ズニーランドの掃除の話」が2名から挙げられていた以外. の道徳番組を中心資料とし,それに教師の説話や心のノー. は,異なっていた。次に多かったのは,授業で取り上げた. トが授業の一部に用いられた授業と考えられる。. 「特定のテーマ」についてである。 「いじめについての授. 次に,中学校時代の道徳の授業像を検討していく。図7. 業」,「将来の夢について」等の授業のテーマについて記述. は,学生が覚えている道徳の授業で用いられた資料・内容. されていた。 「いじめ」が2名, 「将来・仕事」に関する記. に関する回答をまとめたものである。179名の回答で,複. 述が3名から挙げられていた。小学校では,最も多く挙げ. 数選択可としている。. られていたテレビやビデオ等の「映像資料」については, 4名が記述していた。「社会問題を取り上げるTV番組を見 ていました」,「ドラッグの映像を見た」等が挙げられてい た。薬物に関する内容が2名から出されていた。指導方法 で「ロールプレイ」が3名に取り上げられていた。他に, 「学校の先生の実体験で,親と喧嘩したすぐ後に親がなく なってしまった話」という「教師の説話」と,命に関する 「講演会」が挙げられていた。 中学校時代の道徳の授業としては,教師の説話が用いら れていたと回答した学生が多かったが,心に残った授業と して取り上げたのは1名だけになっている。多くは,小学. 図7 道徳の授業で用いられた資料・内容(中学校 n=179). 校と同様に授業の一部として教師の説話が取り入れられて いたのではないかと考えられる。次に多い副読本は,心に 残っている授業に具体的な事例が出されており,授業の中. 中学校時代の道徳の授業で用いられた資料・内容で最も. 心資料として用いられることが多かったと推察される。テ. 多かったのは, 「教師の話」で,78名と約44%の学生が選. レビやビデオでは,録画したTVが用いられていたことが. 択した。それに, 「副読本」が68名で約38%,映像が33名. 示されている。. で約18%,テレビが21名で約12%と続いている。. 小学校と中学校の結果を比較してみると, 「副読本」 と 「教. 心に残っている道徳の授業への回答のうち,図7に関わ. 師の話」が比較的多いことが共通している。授業の中にこ. りのあるものを六つに分類した(図8) 。179名に実施し,. の二つが取り入れられていたイメージがある学生が多いと. 有効回答数は34名分であった。. 推察される。逆に,違いとしては小学校で多かったTVや 映像については,中学校でかなり少なくなっている。新聞 については,中学校の方が多くなっている。内容が小学校 の低~中学年では難しいということもあるのではないだろ うか。 3.5. 「道徳の指導法」で学んでいきたいこと . - 59 -.
(9) 星 裕・福 岡 真理子・梅 本 宏 之・越 川 茂 樹 3.5.1. 階層的クラスター分析による検討. (3,631),異なり語数(使用)は,776(588)であった。. 講義を通して学びたいことについて自由記述したものか. 抽出された語のうち,「身」 ,「気」 ,「基」については,断. ら抽出されたキーワードを階層的クラスター分析にかけた. 片的で意味をなさないと考えて抽出しない語に指定した。. ものが,図9である。. それにより,分析に使用される語として,総抽出語(使用) 9,742(3,575),異なり語数(使用)771(584)が抽出された。 階層的クラスター分析を実行する際には,Euclid距離を 用いたward法にて分析を行った。出現回数の制御を行っ ており,最大で200回,最小で10回と設定している。最大 を設定しているのは,あまりに多く用いられている語は多 くの語に関わるため,特定の結びつきをとらえにくいため 省いた。また,出現回数があまりに少ない語は共通性が低 いため省くことにした。品詞の制限は行っていない。上記 の条件により,45語,8クラスターに整理された。分類さ れたクラスターは下記の8通りである。 1) 「イメージ」,「持つ」,「授業」,「構成」 2) 「子ども」,「残る」,「答え」,「見つける」 3) 「講義」, 「思う」, 「意味」, 「考える」, 「意見」 , 「自分」 , 「考え」 4) 「明確」,「目的」,「意図」,「教科」,「目標」 5) 「教師」,「教える」,「実践」,「児童」,「伝える」 , 「価値」, 「具体」, 「基準」, 「必要」, 「行う」, 「教材」 , 「知る」 6) 「意義」,「教育」,「内容」,「理解」 7) 「学ぶ」,「方法」,「評価」 8) 「付ける」,「力」,「指導」,「学習」,「展開」 , 「仕方」 次に,分類されたクラスターに含まれる語同士の類似性 から,「道徳の指導法」を受講するにあたり,学生が何を 目標にしたかについて「KH Coder3」のKWICコンコー ダンスのコマンドを参考にし,検討した。KWICコンコー ダンスは,分析対象のファイル内で抽出語がどのように用 いられていたのかという文脈を探ることができる(樋口, 2016) 。各クラスターに含まれる語がどのような語と接続 していたのか探ることで,どのような意図で語が用いられ ていたのか捉えることができると考えた。 1) 授業のイメージを持ち,構成の仕方を知る 「イメージ」は,「授業」や「持つ」につながることが多 く,授業のイメージを持つという使われ方をしていた。 「構 成」も「授業」とつながることが多く,授業の構成,授業 を構成するという使われ方をしていた。授業のイメージを 持ち,構成の仕方を知るということが目標となっていると 考えられる。 2) 印象に残る授業の展開の方法を知る 「残る」は,印象とつながり,「印象に残る」授業を展開 する方法を知るという使われ方をしていた。「答え」 は, 「答 えのない道徳」,「自分なりの答え」,「多様な答え」等の使. 図9 階層的クラスター分析による講義の目標の樹形図. われ方をしていた。答えがない道徳,多様な答えがある道 徳でどのように印象に残る授業を展開するのかを知るとい. 最初に前処理を行い,文章の単純集計を行った結果,. うことが目標になっていると推察される。. 604の段落, 649の文が確認された。総抽出語(使用)は9,800. 3) 道徳教育の意義と教科化の背景,子どもの考えを深. - 60 -.
(10) 道徳の授業に対する学生の意識の分析 「付ける」と「力」は,つながることが多く,力を付け. める方法を知る 「講義」は,講義を受ける,講義に参加するという使わ. るとして使われていた。「指導」は,「指導案」と「指導方. れ方をしていた。 「意味」は,子どもが道徳を学ぶ意味,. 法」として使われていた。 「学習」は,学習指導案として. 教科化される意味の使われ方をしていた。「意見」は,子. 使われる場合と,学生や児童が学習するという使われ方を. どもが意見を持つ,意見を発表する,意見を聞く等,授業. していた。「展開」は,授業の展開として使われていた。 「仕. での子どもの意見をどう取り上げるかという方法に関する. 方」は授業の仕方,評価の仕方として使われていた。授業. 記述と,学生自身が講義の中で意見を伝える,意見を聞く. の展開の仕方を知り,学習指導案を作成する力を付けると. 等の記述が見られた。 「考え」は,学生自身の考えと子ど. いう目標を持っていると考えられる。. もの考えの二つの使われ方をしていた。講義を通して,子. これらの目標を重複している部分をまとめ,学生が学び. どもが道徳を学ぶ意義や教科化の背景を知ることを目標に. たい視点を下記の六つに整理した。. していると考えられる。また,授業の中で子どもが意見の. 1)道徳科の授業イメージと指導方法. 交流をし,考えを深めることができる方法を知ることを目. 「1 授業のイメージを持ち,構成の仕方を知る」,「2 . 標にしていると推察される。. 印象に残る授業の展開の方法を知る」 , 「3 道徳教育の意. 4) 道徳教育の意義と目標を知る. 義と教科化の背景,子どもの考えを深める方法を知る」 , 「5. 「目的」は, 道徳教育と道徳科の目的という使われ方と,. 道徳教育の内容と指導方法,評価の仕方を知り,実践す. 教科化の目的という使われ方をしていた。 「意図」は目的. る力を付ける」の四つの項目に道徳の指導方法に関する内. と似た使われ方で道徳教育を実施する意図,教科化の意図. 容が含まれていた。指導方法に関する内容はたくさんの項. という使われ方をしていた。 「目標」は,道徳教育と道徳. 目に含まれており,学生の関心が最も高い視点であると考. 科の目標という使われ方をしていた。ここでは,道徳教育. えられる。授業のイメージを持ち,授業展開の仕方,指導. の意義と目標を知るということを目指していることが考察. 方法等を知ることが含まれる。. される。. 2)道徳教育の意義や目標. 5) 道徳教育の内容と指導方法,評価の仕方を知り,実. 学びたい項目の「3 道徳教育の意義と教科化の背景, 子どもの考えを深める方法を知る」,「4 道徳教育の意義. 践する力を付ける 「教える」は,何を教えるか知る,どう教えるかを知る. と目標を知る」 , 「6 道徳教育の意義と内容を理解する」. といった道徳教育の内容と道徳科の指導方法に関わる使わ. に道徳教育の意義,目標に関わる内容が含まれていた。そ. れ方をしていた。 「実践」は,講義や模擬授業を通して,. れを整理した視点である。. 授業を実践できるようになるという使われ方をしていた。. 3)道徳教育の内容. 「伝える」は,道徳教育で何を伝えるか,どのように伝え. 「4 道徳教育の意義と目標を知る」 ,「5 道徳教育の内. るかという部分に関わる使われ方をしていた。 「具体」は,. 容と指導方法,評価の仕方を知り,実践する力を付ける」 「6 ,. 指導法や評価方法とつながっていた。基準は評価とつなが. 道徳教育の意義と内容を理解する」の三つの項目に,道. り,評価基準として使われていた。 「行う」は道徳の授業. 徳教育の内容に関わる内容が含まれていた。その部分を整. を行うとして使われていた。 「教材」は,教材になるもの. 理した視点である。. を知る,教材研究の仕方を知るとして使われていた。道徳. 4)道徳科の評価. 教育の内容と指導方法,評価の仕方について知り,実践で. 「5 道徳教育の内容と指導方法,評価の仕方を知り,実. きるようになるということを目標としていると考えられ. 践する力を付ける」,「7 評価の方法について学ぶ」の二. る。. つの項目に評価に関する内容が含まれていた。. 6) 道徳教育の意義と内容を理解する. 5)学習指導案の作成模擬授業の実施. 「意義」と「教育」は道徳教育の意義としてつなげて使. 「5 道徳教育の内容と指導方法,評価の仕方を知り,実. われていた。「内容」は,道徳教育の内容に関する記述が. 践する力を付ける」 , 「8 学習指導案を作成する力を身に. されていた。ここでは,道徳教育の意義や内容を理解する. 付ける」の二つの項目に含まれていた視点である。. という目標が立てられていると考えられる。. 6)道徳教育の変遷. 7) 評価の方法について学ぶ. 「3 道徳教育の意義と教科化の背景,子どもの考えを深. 「学ぶ」は子どもが道徳をなぜ学ぶのか,何を学ぶのか. める方法を知る」に含まれている視点である。. という使われ方と,学生が講義で学ぶという使われ方がさ れていた。 「評価」と「方法」は, セットで使われており,. 3.5.2. 共起ネットワークによる検討. 評価の方法として使われることが多かった。評価方法につ. 講義を通して学びたいことについて自由記述したものか. いて学ぶということを目標として挙げていることが推察さ. ら抽出されたキーワードを共起ネットワークで表したもの. れる。. が,図10である。分析に使用する語を抽出するまでは, 「階. 8) 学習指導案を作成する力を身に付ける. 層的クラスター分析」と同様の手順を踏んでいる。. - 61 -.
(11) 星 裕・福 岡 真理子・梅 本 宏 之・越 川 茂 樹 共起ネットワークの設定を行うにあたっては,最小出. の指導に向けて,自分自身が価値観,意見,考えを明確に. 現数を10,最大出現数を200に設定し,描画する共起関係. したいと考えていることの表れといえよう。. (edge)の絞り込みにおいては描画数を60に設定した。 品詞による語の取捨選択は行っていない。強い共起関係ほ. 3.6. 総合考察. ど太い線,出現数の多い語ほど大きい円で描画され,ラ. 道徳教育に対する学生の意識としては,次の三つの観点. ベルが重ならないように位置を調整している。さらに,. にまとめることができた。. どのedgeが重要かを示す手掛かりとなるように最小スパ. 1) 道徳の授業に対する否定的な印象. ニング・ツリーだけを描画した。その結果,43語,41の. 小中学校時代の道徳の授業に対する好意度や有意義さに. edge,密度(density)が0.045となった。出てきた語の色. 関する質問への回答より,否定的な印象を持つ学生が一定. 分けは「中心性(媒介) 」によるものである。. 数いることが示された。好意度の低い学生については,意. 媒介中心性を見ることによって,どの語(node)が他. 義も感じていない学生が多いという相関関係が見られた。. の2点間を結ぶ最短経路上にあるかの度合いがわかり,学. 否定的な印象を持っている理由としては, 「必要感がない」 ,. 生の目標の全体構造上キーワードとなっているnodeを捉. 「意義を感じない」, 「面白くない」, 「覚えていない・やっ. えることができる。. ていない」等の回答が出されていた。永田・柄本(2014,p.. 高い媒介中心性を持っているnodeは, 「理解」 , 「評価」,. 22)の調査結果と比較しても,道徳の授業への好意的な印. 「目的」,「明確」, 「自分」の五つである。 「理解」の媒介. 象を持つ学生や意義を感じている学生の割合が低い傾向が. 中心性が高いことより,道徳の指導に向けて共起関係のあ. 見られた。講義を通して学びたいこととして,階層的クラ. るnodeに関する理解を深めることが,目標全体の中で重. スター分析を通して六つに整理した内容の「2 道徳教育. 要になっていると推察される。また, 「明確」 , 「評価」, 「目. の意義や目標」に関する記述が多く見られており,何のた. 的」も媒介中心性が高くなっており,道徳教育の評価に関. めに道徳教育があるのかという部分に課題意識を持つ学生. することや,道徳教育の意義や目的,目標等に関すること. がいることが推察される。. についての疑問等を多く抱えていることと考えられる。さ. 2) 道徳の授業に関するイメージが希薄. らに,「自分」の中心性も高くなっている。これは,道徳. 小中学校どちらの回答にも「その他」 (覚えていない,. 図10 講義の目標の共起ネットワーク(n=179). - 62 -.
(12) 道徳の授業に対する学生の意識の分析 やらなかった等)の回答が多く見られた。特に中学校では. の改善・充実方策について(報告) ~新しい時代を,. 多くなっており,永田(2013)が指摘するとおり,授業イ. 人としてより良く生きる力を育てるために~ .. メージを持てていない学生がいるのではないかと考えられ. 中央教育審議会(2014) 道徳に係る教育課程の改善等に ついて(答申).. る。講義を通して学びたいことでも「1 道徳科の授業イ メージと指導方法」が,階層的クラスター分析の結果,最. 越中康治(2017) 道徳の教科化に対する教師・保育者及 び学生の認識(2).宮城教育大学紀要,51:167-176.. も多くのクラスターに共通する視点であり,授業イメージ を持ちたいと考えている学生がいることが考えられる。授. 永田繁雄・藤沢文(2010) 「大学・短大における教職科目 (道. 業の観察等により,イメージを構築していくことが重要に. 徳の指導法)に関する調査」結果報告書.東京学芸大学「総. なるだろう。また,道徳の授業で活用した資料と心に残っ. 合的道徳教育プログラム」推進本部.. た授業の結果から, 「副読本」と「教師の話」が多い傾向. 樋口耕一(2016) KH Coder 3リファレンス・マニュアル. が見られた。学生が,授業を構想していく際は,これらの. 鎌原雅彦・宮下一博・大野木裕明・中澤潤(1998) 心理 学マニュアル 質問紙法,北大路書房:京都.. 内容を取り入れた授業づくりから始めていくとイメージを. 永田繁雄(2013) 「道徳教育の改善方策について-大学の. しやすいのではないかと推察される。. 教員養成の充実及び教員の指導力向上の観点から-」 . 3) 道徳教育に関する知識の不足による不安感・課題意. 発表資料(第5回 平成25年7月18日 道徳教育の充実. 識. に関する懇談会 配布資料1).. 学生の道徳教育に関する知識の不足による不安感や課題 意識があると考えられる。階層的クラスター分析の結果か. 永田繁雄・柄本健太郎(2014) 過去の道徳授業の印象に. ら出された六つの視点,中でも最も多くのクラスターに見. 関する調査 -教職科目「道徳の指導法」の受講学生. られた「指導方法」 ,共起ネットワークで媒介中心性が高. を対象として-<結果報告書>.東京学芸大学「総合道. かった「目的」や「評価」に関しては,不安を感じている. 徳教育プログラム」推進プロジェクト・企画ミーティ. 学生が多いと推察される。 「指導方法」 , 「目的」 ,「評価」. ング.. を中心に出された視点について内容を丁寧に扱っていくこ とが必要だろう。 4.まとめ 本研究では,「道徳の指導法」の受講学生に実施した質 問紙への回答とワークシートの記述の分析・検討を行って きた。その結果,道徳教育に対する学生の意識について三 つの観点に整理することができた。三つの観点を踏まえ, 「道徳の指導法」を実践していくことが,学生の学びを主 体的で深いものにしていくことにつながると考える。 「道徳の指導法」の実施の際には,理論面,実践面,実 地経験面の三つの側面からどのように改善・充実を図るか 検討することが求められている。 今後の課題として,今回, 整理した三つの観点を踏まえ,どのような内容や方法を用 いた授業を実施することで,学生が自信を持って道徳の授 業に臨むことができるようになるかを検討していくことを 挙げておく。 参考文献 文部 科学 省(2005) 平成16・17年度文部科学省委嘱調査 「義務教育に関する意識調査」 報告書. 文部科学省(2015) 小学校学習指導要領解説 総則編 (抄). 文部科学省(2015) 小学校学習指導要領解説 特別の教 科道徳編. 道徳教育の充実に関する懇談会(2013) 今後の道徳教育. - 63 -.
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