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コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発

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Academic year: 2021

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(1)Title. コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教 職大学院の授業開発. Author(s). 姫野, 完治; 水上, 丈実; 梅本, 宏之; 橋本, 忠和. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 10: 71-81. Issue Date. 2020-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/11179. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第10号. 自由投稿論文. コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメント を中核とした教職大学院の授業開発 姫野 完治*1・水上 丈実*2・梅本 宏之*3・橋本 忠和*4. 概 要 本研究では、カリキュラム・マネジメントに関して、3つのアプローチに区分して整理するととも に、コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業を開発し、 その評価を行った。授業後に行ったアンケート結果を分析したところ、12項目全てで平均4.5を上回っ ており、また、自由記述においては、 「カリキュラム・マネジメントの概念理解と体験」に関するも のが半数に上っており、 開発した授業がカリキュラム・マネジメントの理解に寄与したことがわかった。. 1.はじめに 情報化やグローバル化が進展し、私たちが暮らす社会や経済がめまぐるしく変化してきている。 IoTやロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなどによる第4次産業革命が急速に進み、経済発展 と社会的課題の解決を両立していく新しい社会であるSociety5.0の実現が目指されている。学校教育 においては、このような社会を生きる子どもたちに、どのような資質や能力を育むかが模索されてい る。2018年度以降に順次施行されている新しい学習指導要領では、 「何かを知っていること」にとど まることなく、 「何かをできるようになること」まで発展させることが重視され、 「何を学ぶか」といっ た学習内容とともに、 「どのように学ぶか」といった学びのプロセスに重点が置かれている。そして、 Society5.0に向けた人材を育成すべく、学ぶべき内容に関するコンテンツ・ベースの視点と、子ども たちに育む資質・能力に関するコンピテンシー・ベースの視点を相互に関連付けた、社会に開かれた 教育課程の実現を目指している。その鍵を握るのが、 「カリキュラム・マネジメント」である。 カリキュラム・マネジメントという用語は、学習指導要領の改訂に向けて、文部科学省に設置され た「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会(以下、検討会 と記す)」が2014年3月に示した論点整理で用いられた。OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の基 盤となったDeSeCo(Definition and Selection of Competencies)プロジェクトによるキー・コンピテ ンシーを始め、リテラシーやスキル、〇〇力といった新しい資質・能力概念に注目が集まっているこ とをふまえ、育成すべき資質・能力の全体像やその構造を明らかにした上で、そのための教育課程の あり方が検討された。論点整理では、こうした育成すべき資質・能力をめぐる国内外の動向や育成す べき資質・能力と教育目標・内容、学習評価の関係が整理され、学校全体としてのカリキュラム・マ ───────────────────── *1. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)札幌. *2. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)旭川. *3. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)釧路. *4. 北海道教育大学教職大学院(大学院教育学研究科高度教職実践専攻)函館. 71.

(3) 姫野 完治・水上 丈実・梅本 宏之・橋本 忠和. ネジメントを促進することの重要性が指摘されている。 このような経緯を経て示された中央教育審議会(2016)による答申「幼稚園、小学校、中学校、高 等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」では、カリキュラム・ マネジメントを捉える以下の3つの側面が示された。 1.各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、そ の目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。 2.教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基 づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。 3.教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しなが ら効果的に組み合わせること。 しかしながら、この3つの側面には、学校の教育目標達成に向けてカリキュラムをデザインする側 面と、デザインされたカリキュラムを評価・改善する側面が含まれているものの、カリキュラム・マ ネジメントの概念そのものは明確に示されてはいない。また、カリキュラム・マネジメントと関連が 深く、これまで用いられてきた「教育課程編成」という用語と何が同じで何が違うのか等が不明確で あり、「カリキュラム・マネジメント」の概念が理解しにくいものとなっていた。さらに、カリキュ ラム・マネジメントについて解説したり、方法論を提起したりする研究者によって捉え方が異なって おり、それらを整理する枠組みが求められていた。本研究では、論点整理を基盤として、カリキュラ ム・マネジメントに関する捉え方を整理するとともに、コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マ ネジメントを中核とした教職大学院の授業を開発し、評価することを目的とする。. 2.育成すべき資質・能力とカリキュラム・マネジメント 2-1 育成すべき資質・能力とコンピテンシー カリキュラム・マネジメントが重視されるようになった背景には、これからの社会で求められる資 質・能力を育むことと、個々の教科等の教育目標や内容との関係性を明示化することにある。これま で、わが国では初等中等教育の目指すべき理念として「生きる力」が掲げられてきたが、その理念と 教育目標・内容との関係については見えにくい形にとどまっていた。そこで、教科等を横断する認知 的・社会的・情意的な汎用的なスキル(コンピテンシー) 、教科等の本質に関わるもの、教科等に固 有の知識・個別スキルに関わるものについて、育成すべき資質・能力と教育目標・内容の構造を整理 する必要性が提言された。とはいうものの、検討会で示された構造のあり方は一つに集約されておら ず、論点整理には複数が補足として併記されている。その中で興味深いのが、表1に示すコンピテン シーの2つのアプローチである。コンピテンシーを育成するにあたって、要素的・脱文脈的アプロー チと、統合的・文脈的アプローチがあることは、カリキュラム・マネジメントの概念を整理する際に も深く関わる。すなわち、同じようにコンピテンシーを育成しようとしても、知識の習得・活用や探 究・実践といった統合的・文脈的に育成しようとするアプローチと、能力の特定の要素・部分を取り 出して要素的・脱文脈的に育成しようとするアプローチがあるということである。コンピテンシーと 対比的に用いられることの多い「コンテンツ」を含めると、育むべき資質・能力の捉え方は、大きく 3つに区分される。. 72.

(4) コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発. 表1 コンピテンシーの2つのアプローチ(文部科学省2014) 要素的・脱文脈的アプローチ. 統合的・文脈的アプローチ. 典型 …経営学のコンピテンシー概念. 典型 …DeSeCoのコンピテンス、キー・コンピテンシー. 要素的 …能力をいくつかの要素に分割した上で、特定の職 務を表すコンピテンシー・モデルを組み立てる. 統合的 …ある特定の文脈における要求に対して、個人の内 的属性を結集して応答する. 脱文脈的 …能力を個人の内的属性とみなす. 文脈的 …文脈によって変化する対象世界・道具や他者との 相互作用を含む. 2-2 カリキュラム・マネジメントを捉えるスタンス 先述した育むべき資質・能力をめぐる3つのアプローチの違いは、カリキュラム・マネジメントの 捉え方にも大きく影響する。コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントは、要素的か統 合的かは別として、 育むべき資質・能力との関係で構造化・体系化されるとともに、 育成すべき資質・ 能力を測定・評価する仕組みをいかに構築するかに重点が置かれる。一方、コンテンツ・ベースのカ リキュラム・マネジメントは、育むべき資質・能力との関係よりも、各教科の内容を教科横断でテー マによって関連付ける点に特徴があり、いかに時間割を編成するかや、カリキュラムを検証・改善す るPDCAサイクルを確立することが重視される。どのアプローチが正しい/間違っているではなく、 それぞれのアプローチが前提とする信念やその基盤となる学問領域が異なっている。3つのカリキュ ラム・マネジメントのスタンスを表2に示す。 要素的・脱文脈的アプローチによるカリキュラム・マネジメントは、主に学習科学や認知科学を基 盤としており、能力を要素に分割し、そこに向かう知的処理の段階を体系化する点に特徴がある。マ ルザーノら(2013)が代表的であり、ブルームによるタキソノミーを援用して学習の次元を体系化す るとともに、思考するためのスキル等をツールとして学ぶことを目指す。 統合的・文脈的アプローチによるカリキュラム・マネジメントは、主に教育方法学や評価論を基盤 としており、学習の中核となるゴールを明確にするとともに、 「本質的な問い」を問うことで、個々 表2 カリキュラム・マネジメントを捉える3つのスタンス コンピテンシー・ベース 要素的・脱文脈的 アプローチ. 統合的・文脈的 アプローチ. コンテンツ・ベース. カリキュラム・ デザイン観. 要素的 能力をいくつかの要素に分 割した上で、特定の能力形 成のためのコンピテン シー・モデルを組み立てる. 統合的 ある特定の文脈における要 素に対して、個人の内的属 性を結集して応答する. 教科横断的 各教科のカリキュラムを基 盤としながら、内容的・認 知的に関わりのある単元・ 授業を接近させることによ り学びを促す. カリキュラム・ マネジメント観. 教育目標を領域とレベルに 分けて示すとともに、そこ に向かう知的処理の段階を 体系化する. 設定されたゴールに生徒が たどり着くためのパフォー マンスを明確にし、そのた めの課題や問いを検討する. 教育課程の編成や時間割編 成と捉え、PDCAサイクル でカリキュラムを改善する ことも含めて考える. 代表的研究領域. 学習科学、認知科学. 教育方法学、評価論. 教育制度学、学校経営学. 73.

(5) 姫野 完治・水上 丈実・梅本 宏之・橋本 忠和. の知識やスキルが関連付けられ総合されて永続的理解を目指す点に特徴がある。ウィギンズら (2012) による逆向き設計が代表的である。 コンテンツ・ベースによるカリキュラム・マネジメントは、主に教育制度学や学校経営学を基盤と しており、様々な教科・領域からなる効果的な学校カリキュラムを創造し、実施し、それを発展的に 更新していくことを目指す。旧来から用いられてきた「教育課程編成」と同義で用いられる傾向があ り、田村(2014)によるカリキュラム・マネジメントが代表的である。 このように整理していくと、同じように「カリキュラム・マネジメント」という用語を用いていな がらも、その基盤となる学問や考え方が大きく異なることがわかる。論点整理では、これら3つのア プローチが混在したまま示されたこともあり、カリキュラム・マネジメントをどう捉えればよいのか 混乱を招くこととなった。加えて、論点整理を受けて2017年に出された『小学校におけるカリキュラ ム・マネジメントの在り方に関する検討会議報告書』では、コンテンツ・ベースのカリキュラム・マ ネジメントに依拠した時間割編成の具体的な事例が示されたことにより、混乱に拍車がかかることに なった。これは、中央教育審議会(2016)による答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別 支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」 においても引き継がれ、 カリキュラム・ マネジメントの3つの側面は示されたものの、カリキュラム・マネジメントそのものの概念は明確化 されていない。そのため、現在でも論者によってカリキュラム・マネジメントの意味合いが異なって いるきらいがある。. 3.教職大学院における授業開発 Society5.0時代の学校教育を実現するにあたっては、教育活動を担う教師がカリキュラム・マネジ メントの概念を理解するとともに、育成すべき資質・能力に向けてコンピテンシー・ベースとコンテ ンツ・ベースの両視点を相互に関連付けてカリキュラム・マネジメントを行うことが重要であり、そ れを教員養成および現職教育で充実させていく必要がある。ここでは、その一つとして、教職大学院 における授業を開発し、その評価を行う。 北海道教育大学教職大学院では、教職大学院において共通的に開設すべき授業科目の5領域のうち の、「(1)教育課程の編成・実施に関する領域」に相当する科目として「学びとカリキュラム」とい う授業を設けている。大学院1年次の第1クォーターに履修するよう時程が組まれている。本院は クォーター制をとっており、第1クォーターの授業は4月から6月の8週で行われる。8週で2単位 の授業を行うため、 各授業は90分を2コマ連続で実施している。本研究の対象となる 「学びとカリキュ ラム」は、毎週土曜日の14時40分~16時10分、16時20分~17時50分に設定されている。また本院は、 札幌、旭川、釧路、函館の4キャンパスに分散しているため、全ての授業を双方向遠隔授業システム でネットワーク接続して行われる。各キャンパスに教員が配置され、全ての授業を4名のティーム・ ティーチングで実施している。 本研究が対象とするのは、2019年4月から6月に行われた授業である。授業を構想するにあたって は、これまで述べてきたように、カリキュラム・マネジメントの概念を整理するとともに、コンピテ ンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを学生自身が構想する機会を設けることを中核とし、 その理解促進に寄与するようカリキュラムを開発した。受講者は25名、内訳は表3の通りである。授 業のシラバスを表4、実際に行われた授業の概要を表5に示す。. 74.

(6) コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発. 表3 2019年度の受講者の内訳 教育委員会派遣教員. 非派遣教員. 学部卒院生. 合計. 札幌キャンパス. 3. 4. 8. 15. 旭川キャンパス. 1. 0. 2. 3. 釧路キャンパス. 2. 2. 0. 4. 函館キャンパス. 1. 2. 0. 3. 表4 教職大学院における授業『学びとカリキュラム』のシラバス 授業科目名. 学びとカリキュラム. 科目区分. 教職大学院共通科目 (教育課程の編成・実施に関する領域). 単位. 2単位. 開講時期. 第1クォーター(4月~6月). 開講曜日・時限. 土曜日・4限~5限. 担当教員. 姫野完治(札幌・主担当) ・水上丈実(旭川)・梅本宏之(釧路)・橋本忠和(函館). 授業概要. 教育課程編成の原理や歴史的変遷,その背景にある学習論や学力論,そして現在進められてい る教育改革について理論的,実践的に学ぶとともに,コンピテンシー・ベースのカリキュラム を構想する。. 到達目標. 学校の教育課程の基盤となる学習論や学力論の理解を深め,国内外で進められるコンピテン シー・ベースの教育改革や学力調査の成果と課題を検証するとともに,学校や地域の実態に即 した教育課程編成を行う方法論を獲得する。. 授業計画. ①オリエンテーション・自分の学び観を振り返る ②国内外のテストから見える学校教育の未来 ③全国学力・学習状況調査からわかること ④自校の教育課題と学力向上策を考える ⑤教育課程改革の歴史 ⑥北海道の教育課程編成の現状と課題 ⑦コンテンツ・ベースとコンピテンシー・ベース ⑧これからの学校教育の学びを考える(発表と交流) ⑨主体的で対話的で深い学びとカリキュラム・マネジメント ⑩主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善 ⑪拡張による学習の創造(地域連携型カリキュラムの構想) ⑫小中高を貫くキャリア教育 ⑬カリキュラム・マネジメントの実践 ⑭言語科目の体系とカリキュラム・マネジメント ⑮構想したカリキュラムの交流. 成績評価. ・課題1 教育課題と学力向上策を考える(20点) ・課題2 これからの学校教育を考える(20点) ・課題3 コンピテンシー・ベースのカリキュラムの創造(40点) ・授業後のリフレクションシートの内容(20点) それぞれの課題、リフレクションノートの内容について,ルーブリックをもとに点数化すると ともに,各点数を合計し,100~91(A),90~80(B),79~70(C),69~60(D),59点以下 (F)で評価する。. テキスト. テキストは特に使用しませんが、関連する書籍等については授業中に適宜紹介します。. 参考文献. 石井英真(2015)今求められる学力と学びとは,日本標準 田村知子(2014)カリキュラムマネジメント,日本標準 ドミニクほか著,立田慶裕ほか訳(2006)キー・コンピテンシー,明石書房 松下佳代(2010)<新しい能力>は教育を変えるか,ミネルヴァ書房 マルザーノほか著,黒上晴夫ほか訳(2013)教育目標をデザインする,北大路書房 三藤あさみほか(2010)パフォーマンス評価にどう取り組むか,日本標準. 関連授業科目. 教科教育の実践と課題,指導と評価の実践的展開,「総合的な学習の時間」を創る. 75.

(7) 姫野 完治・水上 丈実・梅本 宏之・橋本 忠和. 表5 教職大学院における授業『学びとカリキュラム』の概要. 76. 回・担当. 授業の概要. 第1週 (①②) 姫野. 第1週は「学びを考える」をテーマとし、自らの学び観を振り返るとともに、国内外 で行われているテストからみえる学校教育の未来をイメージ化することを主眼としてい る。PISAを始め、今後実施される大学入学共通テストのモデル問題等を解くことを通 して、世界標準の学力モデルが知識よりも能力に重点を置いていること、そのような学 力観・能力観が日本にも広まり、それが現在の教育改革に反映されていること等につい て、講義と演習を行った。. 第2週 (③④) 姫野・水上. 第2週は、「学力を考える」をテーマとしている。第1週に引き続き新しい学力モデ ルの可能性と課題を押さえるとともに、全国学力・学習状況調査の結果を分析すること から、成果と課題、北海道が抱える喫緊の課題である学力と人口減少について考えた。 後半は、演習を通して、自校の教育課題と学力向上策を考えた。また、担当が小学校 現場で教職員が一丸となって行っていた校内研修・教育課程などの校内の取組、家庭・ 地域と一体となって成果を上げた取組などの「学力向上策」を紹介した。. 第3週 (⑤⑥) 水上. 第3週の前半は、「教育課程改革の歴史」をテーマとした。教育課程の意義、内容、 類型、編成方法とその手順などをおさえた上で、戦後カリキュラム運動を例に学習指導 要領の変遷から見える改革の歴史を考えた。 後半は、「北海道の教育課程編成の現状と課題」をテーマとして、道内で特色ある教 育課程編成を行い学力向上等に成果を上げている学校の事例を紹介し、カリキュラム・ マネジメントの必要性を考えた。. 第4週 (⑦⑧) 姫野. 第4週のテーマは「これからの学校教育の学びを考える」である。前半は、昨今の教 育改革の鍵概念であるカリキュラム・マネジメントという用語が、異なる3つの捉え方 で用いられていること、それらが整理されずに流布され、混乱を招いていること等を概 観した。後半は、各院生が興味を持った新書等を読み、考え、A4で1枚にまとめた「こ れからの学校教育の学びを考える」を交流し、課題3:カリキュラム・マネジメントの 創造に向けた準備を行った。. 第5週 (⑨⑩) 橋本. 第5週のテーマは「主体的・対話的で深い学びとカリキュラム・マネジメント」であ る。前半は、自ら発見した問題や社会的な課題を他者と協力しながら解決できるアクティ ブ・ラーナーの育成を目指して、主体的・対話的で深い学びの授業の具現化をいかに 図っていくのか、アクティブラーニングの視点との関連性を整理しながら学ぶ場とした。 後半は、そのカリキュラム・マネジメントの有り様に関して、①設計②育成③評価④運 営⑤環境の観点で、具体例や実践授業の評価等を行う演習を通して理解を図った。. 第6週 (⑪⑫) 橋本・梅本. 第6週の前半は「拡張による学習の創造(地域連携型カリキュラムの構想)」について、 ユーリア・エンゲストロームの「拡張的学習理論」を視点に、授業者のプロジェクト学 習の事例を用いて、地域連携型カリキュラムの構想と授業づくりについて学んだ。 後半は、小・中・高を通して育成を目指す資質・能力から、一人一人の発達や成長を つなぐ視点の一つとして示された「キャリア教育」について理解を深め、各院生がキャ リア教育で目指す児童・生徒像を焦点化し、「全体計画作成」の演習を行った。. 第7週 (⑬⑭) 梅本. 第7週のテーマは「新学習指導要領と学びの体系化」である。前半は、カリキュラム・ マネジメントの実践の一つとして扱った「キャリア教育の全体計画」の交流を通して、 院生のさらなる理解を深めるとともに、課題3へと発展させた。 後半は、学習の基盤として育まれ活用される資質・能力と学習活動の一つとしての「言 語能力」と「言語活動」について、教科横断的な視点から捉えるとともに、学校や地域 の実態に即した教育課程編成の在り方について考えた。. 第8週 (⑮) 姫野. 第8週は、構想したカリキュラムの交流がテーマである。各院生が大切にしたいと考 えるコンピテンシー、その下位概念の構造、カリキュラム・マネジメントの発表・交流 を行った。最後に、授業全体のまとめを行った。.

(8) コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発. 4.授業の成果と課題 4.1 大学院生が構想したカリキュラム・マネジメント 本授業の中核となるコンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントに向けて、これからの 学校教育の学びを考える機会を第4週に設けた。これは、各自が新書等を読み、今後の学校教育で重 視したい資質・能力を提案するというもので、これを基盤として最終課題であるコンピテンシー・ ベースのカリキュラム・マネジメントを構想した。なお、本来カリキュラム・マネジメントは、学年 を問わず、教育課程全体を対象とするものであるが、2単位の授業内で行うにはあまりにも作業量が 多くなるため、校種と学年を限定して行うこととした。大学院生が設定した育成すべき資質・能力を 類型化して表6に示す。また、構想したカリキュラム・マネジメントの例を図1と図2に示す。 図1は、中学校1年生を対象として、 「自立した生徒」を育成すべく、 「多様な集団の中で交流する 能力」「自律的に活動する能力」 「情報活用能力」の3つを下位目標として設定し、さらに7つの力か らなるコンピテンシーの構造が示されている。図1を作成したのは、体育を専門とする現職中学校教 員であるが、自身の専門教科のみならず、他教科の学習指導要領や教科書を調べて構想されている。 図2は、小学校6年生を対象として、 「集団や社会の形成者としての自治能力」を育むべく、 「集団 や社会の形成者としての思考」 、 「よりよい集団や社会を築くための知識」 、 「主体的に人間関係をより よくしようとする意欲」の3つの視点からカリキュラムを検討している。先述した図1と違い、各教 科のどの単元でどのような学習活動を行うかが明記されているところに特徴がある。カリキュラム・ マネジメントを論じる際、コンピテンシー・ベースとコンテンツ・ベースが対立図式で捉えられる場 合があるが、図2で構想されたカリキュラム・マネジメントは、コンピテンシー・ベースで育むべき 資質・能力を構造化し、コンテンツ・ベースで学習内容を具体化しており、相互補完的なカリキュラ ム・マネジメントと言えるだろう。 表6 大学院生が設定した育成すべき資質・能力 思考・表現. 批判的思考力、創造的思考力、自分で考えて表現する力、表現力、思考力・判断力・表 現力. 実践. 実践力、活力、探究力. 自立. 自立的に行動する能力、責任ある行動をとる力、自立した生徒の育成. コ ミ ュ ニ ケ ー コミュニケーション力、リーダーシップ・フォロワーシップ、コミュニケーション・コ ション ラボレーション、対立やジレンマを克服する力、他者とコミュニケーションを生かし知 識や情報を自分の力として蓄積できる、柔軟性・謙虚さ、聞く・話すマネジメント能力、 つながる力、互いの良さを認め個性を磨く能力 自治、自己マネ 集団や社会の形成者としての自治能力、マネジメント能力、自己の価値観を研鑽する能 ジメント 力、構成力 そのほか. シティズンシップを発揮するために必要な能力、幸せな金持ちになる力、新たな価値を 創造する力. 4.2 授業アンケートからみえること 15時間の授業終了後に、無記名による授業アンケートを行った。 「講義の内容とシラバスは対応し ていた」など12項目について、 「全くそう思う」から「全く思わない」の5件法で回答するものである。 「全く思わない」を1点、 「全くそう思う」を5点というように得点化し、平均と標準偏差を求めた。 77.

(9) 姫野 完治・水上 丈実・梅本 宏之・橋本 忠和. 図1 学生が創造したカリキュラム・マネジメント例①. 78.

(10) コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発. 図2 学生が創造したカリキュラム・マネジメント例②. 79.

(11) 姫野 完治・水上 丈実・梅本 宏之・橋本 忠和. 結果を表7に示す。その結果、 全ての項目の平均で4.5を上回っており、 概ね肯定的に評価されていた。 とりわけ、「1.講義の内容とシラバスは対応していた」 「6.わたしはこの授業に意欲的に取り組ん だ」「10.総合的に判断してこの授業は意義のあるものだった」の項目では、平均4.92であった。 次に、授業アンケートの自由記述の抜粋を表8に示す。最も多い記述は、 「カリキュラム・マネジ メントの概念理解と体験」に関するもので、記述の半数程度であった。一方で、 「最終課題について はもう少し狭く深く取り組みたかった」 「一人で作ることでやっつけ仕事になると感じた」という記 述があるように、15回の授業で行うためには、課題の範囲を限定したり、グループ等で取り組むよう 配慮したりすることが十分できていないことが明確になった。 表7 授業アンケートの結果 Mean. SD. 1.講義の内容とシラバスは対応していた. 4.92. 0.28. 2.教材や配布資料、教育機器等の使い方は効果的であった. 4.84. 0.37. 3.授業形態(講義・討論・演習など)が工夫されていた. 4.72. 0.68. 4.授業の難易度は適切であった. 4.72. 0.54. 5.授業の進度は適切であった. 4.84. 0.47. 6.わたしはこの授業に意欲的に取り組んだ. 4.92. 0.28. 7.シラバスに示された授業の目標が達成できた. 4.60. 0.65. 8.この授業を受けて知的好奇心を刺激された. 4.88. 0.33. 9.この授業を受けて、実践的研究課題への意欲が高まった. 4.88. 0.44. 10.総合的に判断してこの授業は意義のあるものであった. 4.92. 0.28. 11.講義はよく理解できた. 4.56. 0.77. 12.講義は満足できた. 4.84. 0.47. 表8 授業アンケートに記された自由記述(抜粋) カテゴリ. 成 果  課 題   80. 具体的な記述. 授業の構成. 知識の伝達とディスカッションのバランスが適切であった。. 教員と学生との意見交換. リフレクションノートへのコメントがいつも楽しみでした。. カリキュラム・マネジメントの 概念理解と体験. コンテンツ・ベースとコンピテンシー・ベースに関する見解が大変興味深 かった。実際に作成できたことが学びになりました。コンピテンシーのイ メージをほとんど持っていなかったので興味深かったです。. 主体的・対話的で深い学びの概 念理解. 主体的、対話的、深い学びの話が関心をもちました。課題設定が難しいと いう言葉が一番心に残っています。. 他授業・MOBとの関連. 学級経営の授業の課題と非常に繋がる内容で面白かったです。MOBの内 容と関係しそうなことが多くあり良かった。. 新規性・有用性. 講義は難しいものであったが、自校に生かせるものである。学校教育を俯 瞰して見るよいきっかけになりました。今まで考えたことがなかった分野 の講義だったが、授業を受けていくにつれて、自分で学校をこうしたい! という思いが強くなりました。. 理解度の確認. 講義形式であっても定期的に内容が理解できているのか確認してもらいた い。. 課題の深まり. 最終課題についてはもう少し狭く深く取り組みたかった内容でした。. 共同的な学びの機会. カリキュラム・マネジメントを作る際、一人で作ることでやっつけ仕事に なると感じた。組織で活動することで質を高める。. 授業を通した課題意識. 評価の仕方を勉強していきたいです。カリマネを現場にどうおとすか課題 を感じました。.

(12) コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業開発. 5.おわりに 本研究では、論点整理や中央教育審議会答申で示されたカリキュラム・マネジメントの概念が多義 性を有していることを指摘し、カリキュラム・マネジメントに関する捉え方を3つに区分して整理し た。また、コンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントを中核とした教職大学院の授業を 開発し、その評価を行った。Society5.0に向けた人材育成を進めていく上で、育成すべき資質・能力 の構造を明確化し、カリキュラム・マネジメントを行うことは非常に重要である。しかしながら、カ リキュラム・マネジメントという用語が独り歩きし、旧来からの教育課程編成にとどまってしまって は本末転倒である。3つのアプローチが依拠する信念や学問をふまえた上で、地域や学校に即したカ リキュラム・マネジメントを行うことが喫緊の課題である。そのためにも、学習指導要領や答申を鵜 呑みにせずに、教員養成や現職教育を行っていくことが求められる。今後も、最新の研究と実践に基 づいた教職大学院のカリキュラム開発を行っていきたい。 引用・参考文献 中央教育審議会(2016)幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な 方策等について(答申) (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm)(2019年8月23日参照) 石井英真(2015)今求められる学力と学びとは,日本標準 松下佳代(2010)<新しい能力>は教育を変えるか―学力・リテラシー・コンピテンシー,ミネルヴァ書房 文部科学省(2014)育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会-論点整理, (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/095/houkoku/1346321.htm)(2019年8月23日参照) 文部科学省(2017)小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議(報告書) (http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/new/1382237.htm)(2019年8月23日参照) P. グリフィン・B. マクゴー・e. ケア,三宅なほみ・益川弘如・望月俊男(訳)(2014)21世紀型スキル―学びと評 価の新たなかたち,北大路書房 R.J. マルザーノ・J.S. ケンドール,黒上晴夫・泰山裕(訳)(2013)教育目標をデザインする,北大路書房 田村学・黒上晴夫(2013)考えるってこういうことか!「思考ツール」の授業,小学館 田村知子(2014)カリキュラムマネジメント-学力向上へのアクションプラン,日本標準 G. ウィギンズ・J. マクタイ,西岡加名恵(訳) (2012)理解をもたらすカリキュラム設計―「逆向き設計」の理論 と方法,日本標準. 81.

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参照

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