• 検索結果がありません。

絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養 ― 幼小接続期におけるALの原初形態に関する教育学的研究 ―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養 ― 幼小接続期におけるALの原初形態に関する教育学的研究 ―"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養 ― 幼小接続期にお けるALの原初形態に関する教育学的研究 ―. Author(s). 根岸, 良久; 庄井, 良信. Citation. 学校臨床心理学研究 : 北海道教育大学大学院教育学研究科学校臨床心理 学専攻研究紀要, 16: 37-51. Issue Date. 2019-03-26. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10493. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養 ― 幼小接続期におけるALの原初形態に関する教育学的研究 ― 根岸 良久*・庄井 良信**. Storytelling with Picture Book and the Cultivation of Social-Emotional Competencies: Pedagogical Research on a Primitive Mode of Active Learning (AL) during the Transitional Stage between Kindergartens and Elementary Schools. 要 約 本論文の目的は,小学校低学年における対話的な絵本の読み聞かせが,児童の社会情緒的能力の涵養 に与える教育的な影響について明らかにすることである. 教育学的な探究が,次の2つの観点から行われた.第1に,我々は,絵本という教材そのものの文化 歴史的価値を考察した.第2に,我々は,遊びから学びへの移行期における絵本の読み聞かせの教育的 価値を考察した.これらの考察に基づいて,絵本の読み聞かせにおける教師と子どもの間の協働的で対 話的な意味創造を促す「場」 (chronotope)が小学校低学年児童の社会情緒的能力の涵養に貢献すると いう仮説を設定した. この仮説に基づいて,我々は,北海道教育大学附属小学校の3年生の教室で,生成的実験を実施した. この実験によって,次の2つの結論が得られた.第1は,物語を伴う画像媒体の活用によって,絵本の 読み聞かせは,多声楽的な対話を容易にし,インクルーシブな社会情緒的能力を涵養するということで ある.第2は,物語共同体としての舞台芸術論を探究することによって,絵本の読み聞かせは,情動レ ベルで他者と響き合う社会情緒的能力を涵養しているということである. 結論として, 児童の声の多声楽を奏でるような絵本の読み聞かせが,幼小接続期におけるアクティブ・ ラーニング(AL)の萌芽的契機となることが示唆された.. 1.問題設定. 直していくという活動は,人類における学びの古 典的な様態(1)の一つでもあった.. 古来,絵本の読み聞かせは,保育・教育にとっ. 今日,絵本の読み聞かせが持つ心理的・教育的. て心理的・教育的価値があると考えられてきた.. 価値は, 「心と頭を育む」 (立石, 2013)等の言説. 絵本というメディアを媒介に,ある文化を生きる. で語り継がれている.先行研究において,絵本の. 共同体の成員どうしが,分かち合うべき物語を語. 読み聞かせは,初期の言語発達を促し,認知と情. りあい,聴きあい,それぞれの人生の物語を編み. 緒の「発達の根幹」を形成すると論及されてきた. *. Yoshihisa NEGISHI:北海道教育大学附属札幌小学校教諭・北海道教育大学大学院学校臨床心理専攻修了生. **. Yoshinobu SHOI:北海道教育大学大学院教授. キーワード:S torytelling, Picture Book, Social-Emotional Competence, Active Learning, Scenography, Narrative Community. 37.

(3) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). (岩崎, 2018; 伊崎, 2018; 田島, 2018) .また,絵. としての社会・情緒的コンピテンシーの形成にも. 本の読み聞かせが,大人を含む人間の心のケアに. 寄与していないのだろうか.もし寄与しているの. 貢献すること(岡田, 2011) ,さらには,被災体験. だとすれば,どのような「絵本の読み聞かせ」が,. で傷ついた子どもの愛着の再構成にとって1つの. どのような社会・情緒的コンピテンシーを涵養し. 重要な契機になること(佐々木, 2014)等も明ら. ているのだろうか.以下,これらの問いについて,. かにされてきた.. 今日の日本における教育改革の動向に言及しなが. これらの言説の多くは,乳幼児期からの子育て. ら考察したい.. や保育の実践的な叡智として語り継がれてきたも. 平成29年3月31日に告示された新学習指導要領. のでもある.また,先行研究の多くは,心理学の. では,これまでの学習に対する考え方が刷新され. 立場から探究されたものである.それらには,教. ている.それは,コンテンツ・ベースの学習(教. 育実践において参照すべき心理学的な研究成果も. えるべき学習内容を機軸とする学び)からコンピ. 数多く埋め込まれている.しかし,その教育学的. テンシー・ベースの学習(育まれるべき資質・能. な応用とその実践的な検討は,まだ十分に深めら. 力を機軸とする学び)への転換である.これは,. れているわけではない.また,絵本の読み聞かせ. 認知的なものに強く傾斜していた学習から,非認. が頻繁に実践される幼小接続期に焦点を絞った研. 知的能力をも包摂する学習への質的転換が提起さ. 究も十全に展開されているわけではない.. れていることを意味している.. そこで,本論文では,初めに日本における昨今. では,初等教育を担う小学校の現場ではどのよ. の教育改革の動向に言及し,幼小接続期において. うな教育改革が求められているのだろうか.すで. コンピテンシー・ベースの主体的・対話的で深い. に1996年に文部省(現在の文部科学省)の中央教. 学び(2) (active learning: 以下ALと記す. )の原初. 育審議会は「21世紀を展望した我が国の教育の在. 形態を成立させる実践課題について,理論的に再. り方について」という第1次答申の中で,社会に. 考したい.次にその課題意識に基づいて,小学校. おける「生きる力」という理念を教育の目的の一. 低学年における対話的な絵本の読み聞かせが,子. つとして挙げていた.それは,非認知的な能力の. どもの社会情緒的コンピテンシーの涵養に与える. 育成を含む学びへの転換を示唆していた.. 教育的な影響について,デザイン実験に基づく授. 松下(2015)が指摘しているように,日本にお. 業者の振り返り記録の省察から明らかにしたい.. けるこのような教育改革の背景には,経済協力開. そのことを通して,幼小接続期における絵本の読. 発機構(OECD)が主導した国際的なコンピテン. み聞かせが,ALの原初形態として機能するため. シーの定義と選択(DeSeCo)のプロジェクトが. の諸条件について解明したい.. あった. このような流れを受けて,小学校教育の現場で. 2.コンピテンシー・ベースの教育政策. は,2007年の学校教育法の改正により,学力が, ①基礎的な知識及び技能の習得,②知識及び技能. ⑴ 小学校学習指導要領の改訂. を活用して課題を解決するために必要な思考力,. 今日の教育改革において,幼小接続期における. 判断力,表現力その他の能力,③主体的に学習に. 絵本の読み聞かせに関する教育言説は多い.特に, 取り組む態度,と規定された.この法改正におい 育てるべき資質・能力を強く意識した文脈では,. ても,認知的な能力の形成だけではなく,非認知. 絵本の読み聞かせが,子どもの言語能力や認知能. 的な能力の形成をも意識した教育の在り方が提示. 力の発達にどのような影響を及ぼすのか,という. されていたと考えられる.. 関心に基づく先行研究も少なくない(常深, 2016;. 新学習指導要領では,知識・技能を形成するこ. 平山, 2017) .. とと共に,その知識を活用する能力を形成するこ. しかし,絵本の読み聞かせの教育的意義は,狭. とが求められている.それは,子どもの知識が,. い意味での認知的な資質・能力だけに限定されて. 思考力・判断力・表現力と共に形成され,さらに. いるのだろうか.それは,非認知的な資質・能力. は学びに向かう姿勢・人間性の形成にも繋がるこ 38.

(4) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. とが期待されていることを含意している.このよ. 主体的・対話的で深い学び(AL)の萌芽となる. うに,今日におけるコンピテンシー・ベースの教. 実践も模索されるであろう.その中で,幼小接続. 育改革では,ますます非認知的な能力,社会情緒. 期におけるALの原初形態の一つとして絵本の読. 的コンピテンスの涵養を強く意識する方向で,主. み聞かせが見直されるのではないだろうか.. 体的・対話的で深い学び(AL)を探索していく ことが求められている.この文脈で,幼小接続期. ⑶ 非認知的能力. (特に小学校)におけるALの原初形態の一つと. ここまで見てきたように,小学校教育でも就学. して絵本の読み聞かせが重要な役割を果たすので. 前教育でも,今後ますます重視される可能性があ. はないだろうか.. るのが,非認知的能力(non-cognitive skills), 換言すれば社会情緒的コンピテンス(social and. ⑵ 幼児教育関連要領・保育指針の改定. emotional competence)の涵養である.. 平成29年3月31日に,幼稚園教育要領,保育所. 内田(2017)によれば,非認知的能力は,社会. 保育指針,幼保連携型認定こども園教育・保育要. 情緒的スキル,非認知スキル,ソフトスキル,社. 領も改訂された.それを契機に,幼児期の教育と. 会情緒的コンピテンスとも呼ばれ,今のところ明. 小学校教育との円滑な接続の在り方が,理論的に. 確に定義づけられているわけではないが,様々な. も実践的にも,そして政策論としても問われてい. 立場に合わせて使用されている.つまり,子ども. る.例えば今回の改訂では,小学校以降の育ちを. たちの育ちを,認知的能力だけで捉えるのではな. 展望し,幼児教育において育みたい資質・能力が. く,自分と他者とを結びつける関係性を含む社会. 仔細に整序され,小学校各教科における学びとの. 情緒的コンピテンスと捉え直すところに,非認知. 接続の在り方が模索されている.. 的能力という概念の役割があるということである.. たしかに,これらの改訂でも,基本的には幼児. 20世紀には,生涯にわたる自分と他者や社会と. の主体的な活動としての遊びを中心とした教育が. の適応を支える能力として,知識を中心とする認. 重視されている.しかし,同時に幼児教育と小学. 知能力に主たる関心が向けられていた.近年,こ. 校以上の教育を貫く育ちの指標としての柱を確保. れが見直され,認知的でない側面,いわゆる非認. することが求められ, 「幼児期の終わりまでに育っ. 知的能力が持つ重要性も注目されている.この非. て欲しい姿」(10の姿の育成)が例示されている. 認知的能力の中で特に必要とされるものが社会情 そして小学校入学前には,就学前の「アプローチ. 緒的コンピテンスである.. カリキュラム」が,小学校入学直後には,生活科. 非認知能力への関心を高める大きな契機となっ. をコアとした「スタートカリキュラム」と呼ばれ. た報告に,1960年代ミシガン州で実施されたペ. る総合的な授業が計画されている.. リー就学前計画に関するものがある.これは,教. それらの多くは,その後の小学校・中学校・高. 育上のリスクがある子どもたちとその家庭を対象. 等学校における各教科の本格的な学びへの準備期. とした介入プログラムとその効果測定のための一. 間としても位置づけられている.その本格的な学. 連の調査研究である.実験群の子どもに幼稚園で. びの理論の背景には,小学校と同様に,世界標準. の幼児プログラムに参加させ,家庭訪問によって. 化を志向するさまざまな汎用的コンピテンシー論. 家庭や養育者に対する教育を実施した.その後,. がある(西岡, 2017) .. 実験群と統制群は40年以上にわたって追跡調査さ. このように,就学前の幼児教育・保育において. れた.複数の時点で様々な能力,発達の状態,生. も,発達論を機軸としながら,保幼小を接続する. 活状況に関する調査が行われた.. 基本的な資質・能力を明らかにすることが求めら. 最も注目を集めたのは40歳代の時点において,. れている.そうだとすれば,これからの幼児教育. 実験群の方が,犯罪率が低く,年収が高く,自身. や保育においても,非認知的な能力,すなわち,. の家を持っている割合も高いなど,よい生活を. 社会情緒的コンピテンスの涵養がさらに意識され. 送っている様相を明らかにしたことである.幼児. るようになるであろう.小学校以降に遂行される. 期の教育介入が行われた実験群は,小学校入学後 39.

(5) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). に認知的な側面で優れた成績を示したが,統制群. 会や環境と自分の関係に関する行動や態度,心理. が中学年で追いついた後,両者の間で成績の差が. 的特質を指すものがここに含まれる.. 認められなくなった.それにもかかわらず,40年. 本研究では,篠原の下位領域を,ヴィゴツキー. 後の人生の様相には歴然とした差が生じていた.. (1987)の流れを汲む文化歴史的活動理論の枠組. この結果から,学力という認知能力の発達に差. みを参照しながら精査し,子どもの社会情緒的コ. が無い場合でも,人生の様相に差を生じさせたの. ンピテンスの変容を,以下の3つの次元で分析し. は,他者と関わるために必要なスキルの差である. た.その上で,絵本の読み聞かせによる社会情緒. と推測された.このスキルはまさに非認知能力を. 的コンピテンシーの総体(ensemble)としての. 指すものであると考えられた.この結果には従来. 質的変化を,小学校における教育実践の時系列に. のような認知能力のみに偏った詰め込み型の教育. 即して自己分析した.. では,子どもが必ずしもよりよい人生を歩むこと 1)自己の自己に対するかかわりの領域(無人. ができないということが示唆されていた.その意. 称的関係). 味でも,認知能力だけではなく非認知的能力の涵. 2)自己の他者に対するかかわりの領域(二人. 養に関する研究が,今後ますます必要とされてい. 称的関係). ることがわかる.. 3)自己の社会や環境に対するかかわりの領域 (三人称的関係). ⑷ 社会情緒的コンピテンス 本稿のデザイン実験において,エピソード記録 に基づく実践省察の対象とした非認知的能力は,. 以上のように捉えることで社会情緒的コンピテ. 国立教育政策研究所の遠藤ら(2017)が定義して. ンスの育ちをその総体において動的かつ質的に分. いるところの社会情緒的コンピテンスである.. 析することが可能になると考えた.したがって,. 篠原(2017, 10)は,社会情緒的コンピンテン. 計画的で連続した読み聞かせによって,子どもの. スを, 「 『自分と他者・集団との関係に関する社会. 応答を省察する際には,認知的な学びの位相だけ. 的適応』及び『心身の健康・成長』につながる行. ではなくて,非認知的な学びの位相,すなわち,. 動や態度,そしてまた,それらを可能ならしめる. 自己と他者という二人称的な関係性のかかわりの. 心理的特質」を指すものと定義している.そして. 有能さや,自己と社会・環境という三人称的な関. この心理的特質とは, 「認識,意識,理解,信念,. 係性のかかわりの有能さと共に,自己の自己に対. 知識,能力及び特性などを含むもの」を指すとし. する無人称的な関係性のかかわりの有能さがどの. ている.これらには多様なものが含まれるが,こ. ような関連性を持って質的に変化しているのか,. こでは「測定可能であること」 「何らかのアウト. という総合的な観点からの自己分析が必要となる. カムを予測するという知見が得られるもの」 「生. と考えた.. 涯における可変性及び教育や環境等による成長可. ある特定の要因に焦点を絞って実験的な実践を. 能性を示す知見が得られているもの」の3点を基. デザインし,その結果と課題を明らかにすること. 準とした研究が行われている.. をデザイン実験と呼ぶ(関口, 2013).本論文で使. さらに篠原(2017, 20)は,社会情緒的コンピ. 用する社会情緒的コンピテンスは,小学校の教育. テンスの内容について次の3つの下位領域を設け. 課程において,次の二つの要因によって実験的に. ている.一つ目は,自分に関する領域であり,自. デザインされた絵本の読み聞かせによって育まれ. 分,自己に関する行動や態度,心理的特質を指す. る社会的かつ情緒的な資質・能力を意味している.. ものがここに含まれる.二つ目は,他者・集団に. 一つは,物語を伴う画像媒体の活用という要因で. 関する領域であり,他者,他者集団など,個人が. ある.二つ目は,多声楽が交響し合う物語共同体. 関係を築く相手に対する行動や態度,心理的特質. としての舞台芸術の演出という要因である.. を指すものが含まれる.三つ目は,自己と他者・ 集団との関係に関する領域であり,対人関係,社 40.

(6) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. 3.絵本という媒体の教育的価値. とが背景にあると考えられる.このことが図らず も,子どもにも理解を容易にする手立てとなった. ⑴ 絵本の文化的起源. と言えるのではないだろうか.. 人間の育ちにとって,絵本の読み聞かせは,ど. 野上(2017)によれば,絵巻物はもともと子ど. のような教育的意義を持つのか,という問いには, も向けではなかった.江戸時代に入ると幼い子ど 2つの分節化すべき問いが内在している.一つは, も向けの絵本が京都で生まれ,徐々に広まって 絵本という媒体(メディア)そのものが内包して. いった.明治期になると木版多色刷り絵本が,日. いる心理的・文化的価値とは何か,という問いで. 本文化を海外に紹介する役割を担って「ちりめん. ある.もう一つは,人間が他の人間に絵本を読み. 本」として刊行された.それらの「ちりめん本」. 聞かせるという協働活動に潜在している心理的・. のひとつとして,1985年には英語版の「桃太郎」. 文化的価値とは何か,という問いである.この両. と「舌切り雀」が刊行され,英語学習用の教科書. 者を不可分の統一体として捉えた上で,絵本の読. として使われていた.また,この「ちりめん本」. み聞かせが,子どもの人間形成にとってどのよう. は,日本に来ていた外国人が日本の文化を知るた. な教育的意義を持つことができるのか,という問. めにも重宝されている.. いが探究されなければならない.. 幕末に西洋の印刷技術が伝えられると,大量印. まず,はじめの問い,すなわち,絵本という画. 刷が可能になり,和紙から洋紙になり,現在の形. 像を伴う物語のある媒体(メディア)そのものが. に近づいてくる.同時に教育制度も整ってきたこ. 内包している心理的・文化的価値とは何かという. とも絵本のスタイルを変えていくことつながった. 問いから考えてみたい.. と考えられる.以後,国内外の神話や伝説や昔話. 日本での絵本の歴史を遡ってみよう.野上 (2017). を再話して絵本が作られるようになり,子どもた. によれば,日本には古くから物語をビジュアル化. ち向けの本に大きな影響を与えた.. して見せる伝統があり,12世紀には『源氏物語絵. 日中戦争がはじまり,国家総動員法施行時には. 巻』, 『鳥獣人物戯画』 , 『伴大納言絵巻』 , 『信貴山. 大規模な国による統制が行われ,戦時下ならでは. 縁起絵巻』 , 『年中行事絵巻』などの絵巻類が多く. の戦意高揚などのプロパガンダに絵本が使われた. 描かれ,それが今日まで伝えられている,という. 時代もあった.太平洋戦争後は,絵本は再び本来. ことである.さらに野上(2017, 128)は,物語を. の姿を取り戻し,表現を豊かにしながら多様化し,. ビジュアル化して見せる伝統を絵本の原点と捉え, 現在に至っている.このように国家的な政策の影 響を受けて教育に関わる媒体と,多くの人びとの. 次のように述べている.. 暮らしの中で,口承で伝えられていた神話や伝説 「『源氏物語絵巻』 の鮮やかな色彩や独特な構図. の媒体という2つの役割を持って,絵本は発達し てきたと考えられる.. 『鳥獣人物戯画』のユニークなキャラクターづ くりとコミカルで動的な表現. 『伴大納言絵巻』 の群衆場面に描かれた人物の個性的な表現描写. ⑵ 絵と文字. や,異時同図法による見事な展開. 『信貴山縁. 絵による表現は,視覚像であり感覚表現である.. 起絵巻』に見られる,動きを表す巧みな動線表. 絵は論理的な言葉と異なり,単なる感覚表現であ. 現.これらは,今日の絵本はもちろん,マンガ. ると考えている人が多いように思える.しかし,. やアニメの表現にもつながるもので,海外でも. 視覚像の一つである絵は,感覚表現である以前に,. 高く評価されている. 」. 中川(2014a)が述べているように世界や人間の 認識像であると考えられる.なぜなら人間には, 視覚野から言語概念を感覚表現と結び付けている. このように伝統的に絵と文字が,我が国の歴史. において継続して扱われてきたのはなぜだろうか. 事柄がたくさんあるからである. 恐らく,これらの伝統的な絵巻物の類は,文字を. 絵が世界の認識に基づいた事柄の表現であるこ. 読むことができない大人も理解ができたというこ. とは,子どもも大人も同じである.子どもが絵と 41.

(7) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). して描いたものに名前をつけるようになるときに,. り返し繰り返し読んでくれとせがむのだ.」. 子どもは,周りの世界と自分とを関係づけている. 絵本が絵のある本であることの意義は,周りの世. さらにマリアら(2011, 12)は,絵と文字の相. 界と我々を結び付けている重要な媒体だからであ. 互関係を以下の4つに分類している(下線は引用. る.それだからこそ,絵本は,子どもたちの世界. 者による.).. 認識を促し,育てるものとなりえる. このことに関連して,中川(2014a, 2)は,次. 1 対 称的な絵本 “ことば”と“絵”とが,. のように述べている. 「絵本は言葉だけの本と違い, 読者にも視覚情報を与えることができ,擬似体験. 同じ物語をそれぞれに語る 2 補 完的な絵本 “ことば”と“絵”とが,. により,より深く世界を認識させえる本なのだ.. お互いの空白部分を埋めあう. ここでいう(認識)とは,単なる知育とか教育と. 3  「敷衍する」 「増強する」絵本 “絵による. かの狭い意味でなく,人間が生きていくための根. 物語”が,“ことばによる物語”を強調した. 本的な働きや感動に通じるものである. 」このよ. り詳しく述べたりして支える. うに中川は,絵本は,認知的な学びはもちろんの. 4 対立的な絵本 “ことばによる物語”と“絵. こと,非認知的な能力の育成にもつながると論じ. による物語”が,異なっていたり矛盾して. ている.. いたりする」. 絵には理解の順序はなく,どのように読み解け ばいいのかという指示が直接与えられることはな. このように絵本では,絵と文字の関係性がすで. い.絵本においては,文字と図像イメージとが相. に非認知的要素を伴って捉えられている.絵本を. 互に作用しあい,数え切れないほど多様な理解や. 読むということは「同じ物語をそれぞれに語る」. 解釈の可能性が生まれてくるのである.マリアら. 「お互いの空白部分を埋めあう」 「強調したり詳. (2011, 8-9)は,次のように述べ,絵と文字の両. しく述べたりして支える」 「異なっていたり矛盾. 者が連携して成り立っていることが絵本の特徴で. していたりする」ということを必要としていると. あるとしている.. 言えるのではないだろうか.本論ではこの絵本の 絵と文字の力動的な特性を生かして実践をデザイ. 「解釈的な分析は,全体から出発して,その後, ンする. 各部の詳細な点を扱い,それからまた全体を見 わたすことによって,深い理解を得るのである. 4.絵本のストーリーテリングの教育的価値 “解釈的円環”は,そのようにして永遠の循環 運動を繰り返し,人をより深い洞察へと導いて. 次に,子どもの幼小接続期における絵本の読み. いく.絵本を“読む”過程というのも, この“解. 聞かせの教育的価値について考えてみたい.そも. 釈的円環”になぞらえるといいかもしれない.. そも子どもが絵本と出会うためには,大人の介在. ことばから出発するにしろ,絵から出発するに. が不可欠である.この点に関して,樋口(2017,. しろ,それぞれがもう一方の記号体系の存在を. 86-87)は,次のように述べている.. 前提とし,そこにまた,新たな経験と新たな期 待が生じるからだ.読者は,ことばから絵に目. 「子どもたちは『大人』という存在なしに良い. を移し,また絵からことばに目を移すのだが,. 絵本と出会うということはありません.大好き. そのあいだにことばと絵の両者が結びつき,理. な大人の声を通して語られる言葉や,そこから. 解の幅がどんどん広がっていく.ことばであれ,. 伝わってくる物語の世界の記憶は,読んでも. 絵であれ,読み直すたびに,全体についてより. らっていた時の大人のにおい,表情,空気,部. 的確な解釈をするための必要条件が揃ってくる.. 屋の様子などさまざまなものを伴って記憶され. たぶん子どもたちはこのことを直感的に知って. ます.読んでくれている大人が『義務』で読ん. いるのだろう.だから,あんなに同じ本を,繰. でくれるのではなく,心から物語を楽しんでく 42.

(8) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. れているという感覚は,しっかり子どもに伝. 他者に物語を語るという行為には,他者のライフ. わっていくと思います. 」. に我が身をもって寄り添い,その痛みや喜びを感 受しながら,自己と他者とが新たな物語を紡ぎ合. 幼児期の子どもの中には当然文字を読むことが. うという意味があることに論及している.. できない子どもがいる.絵本に限らず幼い子ども. さらにブルーナー(2004)は,人間の思考様式. と本との出会いは,読んでくれる大人を介在して. を,範疇的な思考様式と物語的な思考様式を区別. いるのは自然である.ここでは,幼い子どもと共. し,両者の深いかかわり合いのもとで展開する後. にお話の世界に入り込み,主人公たちと一緒にさ. 者(物語的な思考様式)を人間の認知発達におい. まざまな経験をすることができるように演出する. て重要な役割を持つものであると再評価した.出. 空間が読み聞かせであると捉えておきたい.樋口. 来事をあるストーリーとして深く理解する認知能. (2017)はさらに読み手は「情報提供者」になる. 力を,論理実証的な認知能力と同じように育てる. のではなく「楽しい世界の共通の体験者」になら. ことが重要であると, (とくに晩年の)ブルーナー. なければならないと述べている.この指摘には,. は力説していたのである.. 情報を伝える,つまり認知的なことを理解させる. そうだとすれば,このようなストーリーテリン. だけに限らない,読み聞かせの働きや読み聞かせ. グとしての絵本の読み聞かせ活動には,人間が人. の世界が覗えるのではないだろうか.. 間らしい生活を営むために必要な場としての普遍. 本論で生成的実験としてデザインした読み聞か. 的意味があり,それは,子どもの心のケアと育み. せは,読み語りと呼ばれたり,読み合いと呼ばれ. (保育や教育)にとっても重要な意義があると考. たりするものに近いものである.筆者(根岸)が. えられる.. 実際に小学校の現場で行ってきたのもこのような. フィンランドのハッカライネンとブレディキッ. 様式のものである.それは,教師と児童が共同で. テ(2017)は,こうした人類学的・教育学的意義. 創り上げ生み出していくお話の空間である.感情. を持つストーリーテリングの価値を再評価し, 「物. を入れたり抜いたり,時には語り合いながら進め. 語を紡ぎ合う学び」としてのナラティブ・ラーニ. るものである.教師の価値観を表現することで児. ング(narrative learning)を構想し,生成的実. 童も価値観を表出する.このことによって両者の. 験デザインによる実践研究を深めている.その. 関係性が良い方向へ向かっていくようにいざなう. セッションは,多くの場合,昔話のようなお話し この育みが社会情緒的コンピテンスの育みになる. の語りから始まるが,その後に虚構の遊び=演劇. と考え,実践をしていくものである.. (プレイワールド)を舞台にして,その物語の分. 古来,お話しを対話的に語ること(語り合うこ. かち合いと,紡ぎ合いの表現活動として展開する. と)には何か不思議な力があると考えられてきた. ところにその特徴がある. ジョンストン(1999)は『物語るひとのための即. このように現実の世界で,身体と身体を響き合. 興』の中で,人びとが車座になって(いろりを囲. わせるように文学の言葉や詩の言葉と遊び合いな. むよう座って) 物語を聴き合い, 語り合う場が持っ. がら,学び合いの世界へと渉っていく子どもを育. ている人類学的な価値に言及している.また,. てるためには,それに相応しい舞台環境が必要で. リューティ(1997)は『メルヘンへの誘い』の中. ある.それは,子どもたち一人ひとりの語り/物. で,昔話などの民間伝承を語り合う 「物語共同体」. 語を紡ぎ合い,それを知的探究の物語へといざ. (narrative community)が,人間の倫理的価値. なっていけるような学習環境である.それを構成. を創造し続けていたことに言及している.. するための舞台芸術論と演出論が深められなけれ. 一方,サラン(2003)は『危機を生きる子ども. ばならない.. とのおはなし語り』の中で,昔話などの口承文学. 人間の持ち味としての資質が耕され,その能力. には,さまざまな困難や痛みを抱えて生きる子ど. として花開いて発揮されるためには,子どもを育. もの心を癒しつつ育む潜勢力があると指摘してい. ちの主人公として尊重し合えるような学びと生活. る.サランは,ある歴史的・社会的な文化の中で. の舞台芸術とその演出を欠かすことができない. 43.

(9) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). そのことを通してはじめて,絵本の読み聞かせを. ⑵ デザイン実験の前提. とおした社会情緒的コンピテンシーの涵養が可能. 筆者(根岸)は今日の社会状況のなかで,特に. になるのではないだろうか.. 絵本による非認知能力の育成に力を入れて実践を 重ねてきた.読書,とりわけ絵本の読み聞かせが,. 5.アクティブ・ラーニング(AL)としての デザイン実験. 認知的な学力と同時に非認知的な学力を小学校の 現場で育む際に有効であると考えてきた. 実際,小学校の教育の中で絵本はしばしば活用. ⑴ 生成的仮説. されている.絵本的な手法を適用すれば,児童の. 西岡(2017)が指摘するように,米国の発祥と. 理解が深化し,記憶として定着し,さらに思考力. は若干異なるが,一般に,日本の小学校で使用さ. が高まるという手ごたえを実感することがある.. れるアクティブ・ラーニング即ちALとは,学習. 国語の教科書や道徳の副読本には絵本を教材とし. 指導要領に記載されている「主体的で対話的な深. たものがある.社会科の教科書には大きな挿絵が. い学び」とほぼ同義である.今日,このALは,. 掲載されている.文字での情報を補完する以上に. 多くの学校教育現場において,授業改善の重要な. 「絵」と「文字」の組み合わせと,教室の中で教. 指標の一つとなっている.. 師と児童,児童と児童が「絵」と「文字」につい. 本論文では,就学後,小学校において主体的・. て語り合うことに意味があると教育現場では考え. 対話的で深い学び(AL)を経験するもっとも初. られている.. 期の学習形態の一つが,多声楽的な応答的コミュ. 一般に,認知的な位相において,読書は学力の. ニケーションに基づく絵本の読み聞かせなのでは. 一つの重要な構成要素である「読解力」を高める. ないかという仮説を立て,一つのデザイン実験を. と考えられている.伊崎(2010, 65)は, 「読解力. 遂行した.. は,読書力と相関する」と指摘し,読書の価値を. それは,一つには,絵本という学習材(画像を. 読解力の向上という文脈で捉えている.. 伴う物語のあるメディア)が,聴き手である子ど. 確かに一般的には,読書をすることで読解力の. もの多様な声を呼び起こす際に最適な素材の一つ. 向上を望むことができると考えられている.しか. だと考えたからである.もう一つは,このように. し,小学校低学年では,読書の能力が低いために. 多声を呼び覚ますしやすい絵本を学習材とするこ. 読書がそのまま読解力に結びつかない場面もある.. とで,文化的メッセージ(物語の文化歴史的なプ. そこで用いられるのが絵本の読み聞かせである.. ロット)を語る読み手=教師と,それを自分の感. 村中(2017, 180)は,「絵本は,赤ちゃんからお. 情に触れながら心で聞く聴き手=子どもとの間に, 年寄りまで,あらゆる年代の人に向けて手渡され 差異を伴うイメージの交響化(orchestration)が. る『絵とことば』を中心とした紙媒体のメディア. 生じやすいと考えたからである.. である」と述べている.これは絵本という学習材. また,そのような舞台芸術の環境においては,. が,低学年に限らず有効に活用できることを示唆. 集団でありながら一人ひとりの主体的なイメージ. している.また,続けて村中(2017, 180)は,一. が呼び起こされやすいと考えたからである.つま. 般の文学作品とは異なり,「直接的に,作者と読. り,まさに子どもは,教師である語り手や,聴き. 者を結ぶ場合よりも,声を出して作品を『聞き手』. 手である他者としての子どもと 「場」 (chronotope). に届ける『読み手』が介在する場合が圧倒的に多. を共有し,対話的であると同時に主体的であり,. い」ことが絵本の特徴であると述べている.. そこから動機が呼び覚まされ,深い学びへと誘わ. 本校の小学生の実態を見ると, 「絵本の読み聞. れる可能性が高いと考えたからである.. かせ」を親子間で豊かに経験してきている者も多. この仮説に基づいて,我々は,北海道教育大学. い.小学校の中での「読み聞かせ」としては,保. 附属小学校の3年生の教室で,アクティブ・ラー. 護者が行うもの,教員が行うものが主であろう.. ニングを志向したデザイン実験を実施した.以下, これらを繰り返し経験することで育まれている非 認知能力が,他者との関わり,とりわけ他者の気. その概要を時系列に即して整理する. 44.

(10) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. 持ちを感じ取ろうとすること(社会情緒的コンピ. 学年を担任した後にクラスの解体があった3年生. テンシーの涵養)につながっているのではないか. である.2学級から再編された新学級であったた. と実感する機会も多い.. め半分は新しく担任をする子どもで,残りの半分. もし,絵本の読み聞かせという活動が,いくつ. は3年間にわたって担任を継続した子どもたちで. かの実践的な工夫で,他者意識を育むことができ. ある.以下,筆者(根岸)から見た子どもの社会. るとすれば,昨今,社会問題化されている他者と. 情緒的コンピテンシーの変容プロセスを記述して. の関わりを持つことに強い緊張を抱えている子ど. いく.. もたちに対して,そしてすべての子どもたちに対. この年の3年生の学年目標は「shin」(しん). して, 「絵本の読み聞かせ」を有効に活用するこ. であった.ここから「新」「深」「信」「進」「心」. とができるのではないだろうか.. 「真」というたくさんの漢字が思い浮かぶ.この. このような問題意識を踏まえながら,本論では, 言葉には,自信をもって自ら進んで挑戦したり, 子どもたちに育みたい資質・能力を非認知的能力, 行動したりしていける子どもたちになってほしい 特に社会情緒的コンピテンスと位置づけ,その育. という願いが込められていた.学校生活の様々な. ちの足跡を追究していきたい.その際小学生に社. 場面で子どもたちと「Shin」(しん)を見つけ,. 会情緒的コンピテンスを養うにあたっては,学級. 「Shin」 (しん)を伸ばしていきたい.子どもた. 担任による絵本の読み聞かせが有効であると位置. ちも「Shin」 (しん)を提示した時に思い思いの. づけ,その教育学的意義を考察する.. 漢字やイメージをもったはずだ.このように自分 で描いたイメージを目標が主体的な姿を育む第一. ⑶ デザイン実験の概要. 歩となったと考えられる.. 1)実施機関:平成30年4月から平成30年10月. そのような学年目標と子どもたちの思いをベー. 2)実施場所:北海道教育大学附属札幌小学校3. スとして,新しい仲間との多様性にひらかれた関 係性を高めるために絵本の読み聞かせを行ってい. 年X組. くこととした.読み聞かせによって子ども同士の. 3)実践における指導者:北海道教育大学附属札. 相互承認が深まり心の距離が縮まっていくことを. 幌校教諭 根岸良久. 期待したのである.. 4)共同研究者:北海道教育大学大学院教育学研. 8)読み聞かせの場の設定. 究科教授 庄井良信. 一般的な読み聞かせは,教師が黒板の前に立ち. 5)デザイン実験における絵本の読み聞かせの基. 通常の授業形式で行う.今回筆者が行った実践で. 本ルール(以下の①~⑤) ① 月に1回程度のペースで行う.. は,教師と子どもの場所の入れ替えを行っている. ② 5冊程度の絵本の題名のみを提示し,どの. (図1).これには理由がある.一つ目は,教師 から見て子どもの反応が見取りやすいことである.. 本を読んでほしいか多数決を取る. ③ 一番多数の本を読み聞かせた次の回は読ま. 黒板の前に子どもが集まることで教師から子ども. れなかった4冊の他に新たな1冊を加える.. の表情反応だけが見取ることができる.椅子に. ④ 読み聞かせた本は,学級文庫として学級の. 座った状態であると,机そのもの等他の物に目が 行く.また教室全体に広がっているので子ども同. 子どもがいつでも読める場所に置く.. 士の自然な交流も生まれにくい.二つ目の理由は,. ⑤ 絵本の選定は学級担任が行い,学校の図書 室には無い,または子どもたちがなかなか手. 子どもの側の場所の転換による心の持ちようが変. に取らないような絵本を選ぶ.. 化するからである.子どもたちが普段は教師が立. 6)本研究において当該実践を分析すること及び. つ側に自らを置くことで,日常の視界が変化し自. 授業場面の写真を使用することについては,北. らの思い考えを素直に表出しやすい舞台環境にな. 海道教育大学附属小学校より許諾を得ている。. ると考えたからである.三つ目の理由は,他の子. 7)指導者の学年目標と学級目標. との身体的・心理的な距離が非常に近くなると考. 筆者(根岸)が担任していた学級は,1学年2. えたからである.これにより他者のつぶやきや反 45.

(11) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). ⑷ 社会情緒的能力の変容過程 ① 4・5月. 黒. 板. 黒板の前に集まって座り読み聞かせを聞くこと で隣の子と感想を言い合う姿が多く見られた. しっかりと聞き,読みを得ると自分の考えを伝え たいという気持ちが高まるようだった.これらは, 国語の学習で教科書の文章を読み聞かせた後にも 見られるようになっていた.あえてこちらが「主. 聴き手=子ども. 人公はだれですか.」「どんな感想をもちました か.」のように何かを問わなくても,語りたい,. 子どもの 机. 話したい,伝えたいことが生まれてきていること. 絵本. がわかった.特にこのような「伝えたい」という. 語り手=教師. 姿は初めて私の学級になった子どもたちにも徐々 に見られるようになり,伝えることを楽しめるよ. 図1:読み聞かせの場. うになってきている子どもたちの姿が見られた. 応を子ども同士が常に感じることができ,その反. ② 6・7月. 応に対する教師のリアクションも取りやすくなる. 道徳科の授業で,一つの絵本を読み聞かせた.. からである.これは昨年度まで行ってきた読み聞. その時の感想文から,読み聞かせた絵本から読み. かせでも見られ,語り合い話し合う場としての役. 取ることができる「友情」という道徳的価値以外. 割を果たすことが分かっているからでもあった.. にも「約束」「個性」「家族」「集団」というよう. 4.本時の展開(2/3) 目標:登場人物の友達の作り方を考える活動を通して、自分と友達との関係について相互性をもって考え直してみるこ とができる。. 子どもの見方・考え方が 拡張するための教師の手立て. 学習活動と子どもの表れ 【前時まで】 二人の登場人物がどんな人物か理解し、二人の関係性を探ろうとす る意欲を抱いている。. ◯どんな人と友達になりたいかを考える 自分と違っても 優しい人. 明るい人. 楽しい人. 自分と同じなら 趣味が合う人. 自分に合う人. ◯お話を思い出して二人の登場人物の関係と自分の考える友情と を比較して考える。. 【自己の見方・考え方を自覚させる場】 自分ならどんな人と友達にな りたいかを考えることで、友情 の捉え方や友達への関わり方を 明確にしていく。また、自分事 として考えることができるよう に学級の写真を提示する。本質 に向かう意志を生む素地をつく る。. ・この二人はどう考えたかな どんなふうに友達になろうとしたのかな? ◯二人の考え方について考える。 きつねは. おおかみは. 友達になりたかったのかな? 一緒に遊ぶことで. 有料で 商売をしようと. 友達が欲しか ったのかな?. だまそうとして いたのかな?. お金を払う 気が無い。. 【自分から踏み出そうとする意志を生む】 自分たちの考える友達の条件 と登場人物が考える友達の条件 を比較させながら考えさせるこ とで、友情が成り立つためには どんなことが必要であると考え ているのか、具体的な場面や状 況を考えながら見つめ直してみ ようとする意志を生む。. 図2:道徳の授業における絵本の読み聞かせ. 46.

(12) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. あったが,その時の周りの子どもたちのフォロー. な考えが生まれていた.これらをじっくりと考え. るために3時間構成として道徳科の授業を行った. の言葉や,強い言葉の後に続けるフォローの言葉 読み聞かせから時間を空けた1時間目の道徳の授. が見られる点が予想を超えていた.それは,相手. 業から友達に伝えたいが溢れ出ていた.この授業. の言葉を聞いて,自分の考えを伝え,そこから何. でも,特に教師が問わなくても,子どもたちが子. かを見い出す力が養われてきていると考えられる. どもたち同士で考えを伝えあい,議論する様子が. 姿であった.. 見られた.. ④ 10・11月. 2時間目はさらに「友情」という視点で焦点化. この時期の読み聞かせになると,題名と表紙を. したことで絵本の世界から抜け出し「自分なら」. 見ただけで周りの友達と語り合う姿が見られるよ. 「もしも」というような視点で考えを深めていく. うになった.「物語の予想」「これまでの物語との. 姿が見られた.指導案の序盤で教材文を読み聞か. 比較」 「題名の言葉から感じること」などについ. せることをしていない.直接友達について考え始. てである.もちろん初めて出会う絵本であれば,. めさせている.自分の考える友達に対する考え方. 予想はバラバラである.だがその違いを聞き合い. と,読み聞かせの時に語り合った登場人物の友情. 楽しみながら,読み聞かせに向かう姿がみられる. との関係を関連させ,子どもたちが主体的に語り. ようになったのである.この姿は,自分たちで楽. 始めたからである.指導案上の自分から踏み出そ. しみを大きく膨らませる姿につながったと考えら. うとする意志が生まれ,学級の友達に関わりなが. れる.これは1か月分の給食のメニューを配った. ら学んでいける仕組みが表れた授業となった.こ. ときにも見られ,献立だけで「美味しい」「おか. こで言えることは,なんらかの視点を与えて学ば. わりする」 「ちょっと減らしたい」と関わり伝え. せなくても,教師による読み聞かせによる絵本と. 合う姿が見られるようになってきたことにも結び. の出会いが,友達との語り合いを生み,教師への. ついているように見えた.また,この姿は2週間. 思いの表出を生んだことである.そしてそれはあ. 分の時間割を配り,簡単な解説を担任が行ったあ. る程度の時間や日数を空けても子どもたちの心に. との質問コーナーでも「何かあるのではないか」. はしっかりと残っていることである.道徳科の授. と周りの友達に話しかけながらみんなで解決しよ. 業場面では,個々の考え方の一つとして再現をし. うとする姿が見られることとも関連していると考. ながら語ることができ,その思いを共有したり受. えられる.. 容したりしながら深めていけることが成果として 表れた. このように関わりながら学ぶ姿は,日常の当番 活動でも見られるようになってきた. 「当番だか ら私がやる」ではなく,状況に応じて役割を越え て声を掛け合い,関わり合い目標に向かう姿が見 られるようになった.ちょっとしたこと,感じた ことを伝え合うことが,読み聞かせの場面と同じ ようにできてきていると感じられるようになって きたのである. ③ 8・9月 夏休みを終えて始まった2学期の姿で印象的 だったのは,運動会へ向けての取り組みであった.. 写真1:自分たちで達成度を修正する姿. 学級で協力して戦う競技ばかりであるから,必然 的に子どもどうしで相談し,考え合う姿が見られ. 11月には学芸会に取り組んだ.3年生は歌を2. た.「勝ち負け」があるからとても強い言葉が交. 曲,リコーダー演奏を1曲,器楽演奏を1曲で構. わされることが予想された.これは予想通りで. 成された音楽発表であった.1・2年生の演目は 47.

(13) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 劇であったため,初めての音楽発表となる.この. の世界に参加し,別の場で語り合う姿に3年生に. 時,教員たちは「学年全体で語り合うことで課題. なってからの成長をみたように思う.このような. を見つめ,目標を決め創り上げていくこと」を子. 育ちの姿こそ,社会情緒的コンピテンスの涵養と. どもたちの育むべき姿とした.. いえるのではないだろうか.. ここでも絵本の読み聞かせの場で見られた姿が. 6.総合考察. 表れるようになってきていた.朝の時間に自分た ちで司会をして歌の練習をする.課題を出し合い, どのように練習していくかを決める.3年生に. 本論文の目的は,小学校低学年における対話的. とってはなかなか難しいことであるが,隣の子と. な絵本の読み聞かせが,児童の社会情緒的コンピ. 今の歌の出来栄えについて語り合い,成果と課題. テンスの涵養に与える教育的な影響について明ら. を出し合い,自分なりの結論を考える姿があちら. かにすることであった.. こちらで見られた.. 本稿では,今日における日本の教育改革に関す. 写真1のように課題を画用紙に書きホワイト. る政策動向を吟味しつつ,次の2つの観点から教. ボードに貼り付ける.これを1回の練習ごとに見. 育学的な探究を遂行した.第1に,我々は,絵本. 直していく.画用紙が上の方へ行くと100点で,. という教材そのものの文化歴史的価値を考察した.. 下の方へ下げると点数が下がるということだ.自. 第2に,我々は,遊びから学びへ移行期における. 分では90点と思っても周りの声が異なっていれば. 絵本の読み聞かせの教育的価値について考察した.. それを加味して今の点数をつける必要がある.そ. これらの考察に基づいて,絵本の読み聞かせにお. のような他者の考えとのバランスをとって発言す. ける教師と子どもの間の対話的な意味創造を促す. る姿も見られたのだ.これは,まさに他者に寄り. 「場」(chronotope)が小学校低学年児童の社会. 添って共に進むべき目標を描いている姿と言える. 情緒的コンピテンスの涵養に貢献するという仮説. のではないだろうか.. を設定した.. ⑤ 12月. この仮説に基づいて,我々は,北海道教育大学. この時期になると,保護者による絵本の読み聞. 附属小学校の3年生の教室で,アクティブ・ラー. かせで見られる子どもたちの姿にも変容が表れた. ニングを志向した生成的実験を実施した.この実 絵本に出てくる登場人物が友達と名前と一致する. 験によって,次の2つの結論が得られた.第1は,. 時にその名前の子を見るということはよくあるこ. 物語を伴う画像媒体の活用によって,絵本の読み. とである.しかし,お話に出てくる食べ物や品物, 聞かせは,多声楽的な対話を容易にし,インクルー 状況が自分や周りの誰かに結びつく時にそっと目. シブな社会情緒的コンピテンスを涵養するという. で会話をし合う姿が見られた.保護者の方が読ん. ことである.第2は,物語共同体としての舞台芸. でいるので,静かにじっと聞いていることが多い. 術論を探究することによって,絵本の読み聞かせ これは保護者と言えども学級,学年にとっては外. は,情動レベルで他者と響き合う社会情緒的コン. からの来訪者という捉えであるからだと考えられ. ピテンスを涵養しているということである.. る.したがって自分の気持ちを抑えてお行儀良く. 結論として,児童の声の多声楽を奏でるような. 聞くことが多かった.. 絵本の読み聞かせが,幼小接続期におけるアク. もちろんその姿勢が崩れてはいないのであるが, ティブ・ラーニング(AL)の萌芽的契機となる ちょっとした言葉に目を合わせあい,担任にも何. ことが示唆された.. か目線を送ってくる.しかし今話し合うことや,. 注. 伝え合うことはその場にふさわしくないというこ とも感じている.低学年であれば声に出して話し たくなる場面であるし,普段の学級での読み聞か. ⑴ 人類の生活史の中に埋め込まれている共同体. せであれば声を出している場面である.ここで,. を物語共同体という.この共同体は人間のケア. 目だけの会話ですませて保護者の方の読み聞かせ. と発達援助の源泉である.詳細は,庄井良信 48.

(14) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. Hakkarainen, P. & Bredikyte, M. (2017). Self-. (2002)『癒しと励ましの臨床教育学』かもが. regulation and narrative interventions in. わ出版,76-103ページを参照.. children’s play. In T. Bruce, P. Hakkarainen, &. ⑵ その存在(being)において,多様で複雑な 人間に,育むべき資質・能力を先験的に措定し,. M. Bredikyte (Eds.). The Routledge interna-. あらゆる発達段階における教育活動の機軸にす. tional handbook of early childhood play. London & New York: Routledge.. るという発想そのものには批判的見解もある.. アザール, P.(著)矢崎源九郎・横山正矢(訳). それは,予測不能で変化の激しい社会状況に柔 軟に対応できる人間形成のために,汎用性のあ. (1957)『本・子ども・大人』紀伊國屋書店. る資質・能力を措定することの困難さが十分に. 樋口正春・仲本美央編著(2017)『絵本から広が る遊びの世界』風鳴舎. 自覚できていないのではないかという批判や,. 平山祐一郎(2017) 「絵本への関与と絵本認知度. 社会・文化論の軽視に繋がるのではないかとい. の関係について ― 保育者養成における読書教. う批判などである.. 育の心理学的研究」東京家政大学教員養成教育. ⑶ ナラティブ・ラーニングは,遊び・演劇空間. 推進室年報4,41-45.. において,自他の物語を聴き合い,語り合うこ とを通して,既存の社会や共同体における物語. 伊﨑一夫(2011).「読解リテラシーの向上をめざ. プロット(narrative plot)を協働で更新しつ. す学習指導の工夫に関する研究(2) ― 「つなぐ. づける学習様式である.詳しくは,庄井良信. 思考」の活性化」環太平洋大学研究紀要4,. (2018) 「ナラティブ・ラーニング」日本質的. 65-71 伊崎一夫(2018) 「乳幼児期の言語発達と思考力. 心理学会編『質的心理学辞典』新曜社,125ペー. の育成(1)幼児教育の連続と発展」『奈良学園大. ジを参照.. 学紀要』8,1-12.. 文 献. 岩崎衣里子(2018) 「乳幼児への読み聞かせが豊 かな言語発達を育む」田島信元・佐々木丈夫・ 宮下孝広・秋田喜代美(編)『歌と絵本が育む. 秋田喜代美(2012) 『学びの心理学:授業をデザ. 子どもの豊かな心 ― 歌いかけ・読み聞かせ子. インする』左右社. 育てのすすめ』ミネルヴァ書房. 秋田喜代美(2018) 「絵本を介した『分かち合い』 」. Johnstone, K. (1999). Impro for storytellers,. 田島信元・佐々木丈夫・宮下孝広・秋田喜代美. London, Faber and Faber.. (編) 『歌と絵本が育む子どもの豊かな心 ― 歌. 勝野正章・庄井良信(2015)『問いからはじめる. いかけ・読み聞かせ子育てのすすめ』ミネル. 教育学』有斐閣. ヴァ書房. 河合隼雄・松居直・柳田邦男(2001) 『絵本の力』. ブルーナー, J. S.(著) ,岡本夏木・池上貴美子・. 岩波書店. 岡村桂子(訳) (2004) 『教育という文化』岩波. 経済協力開発機構(OECD)(2018),無藤隆・秋. 書店 コルウェル, E.(著)石井桃子(訳) (1994) 『子. 田喜代美(監修),ベネッセ教育総合研究所(編. どもと本の世界に生きて ― 一児童図書館員の. 集) ,荒牧美佐子ほか(訳) 『社会情動的スキ. あゆんだ道』こぐま社. ル ― 学びに向かう力』明石書店 リューティ , M.(著),高木昌史(訳)(1997)『メ. 遠藤利彦(2017a)国立教育政策研究所『非認知. ルヘンへの誘い』法政大学出版局. 的(社会情緒的)能力の発達と科学的検討手法. 松岡享子(1987)『えほんのせかい,こどものせ. について研究に関する報告書』. かい』日本エディタースクール出版部. 遠藤利彦(2017b)「 『非認知』的な心の揺籃(ゆ りかご)としてのアタッチメント」公益社団法. 松岡享子(2015)『子どもと本』岩波書店. 人全国私立保育園連盟機関誌『保育通信』753,. 文部科学省(2017) 「幼稚園教育要領,小・中学 校学習指導要領等の改訂のポイント」[pdf]. 閲. 16-19. 49.

(15) 学校臨床心理学研究 第16号(2018年度). 関口靖弘(2013) 『教育研究のための質的研究法. 覧可能<http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/. 講座』北大路書房. new-cs/__icsFiles/afieldfile/2017/06/16/ 1384662_2.pdf>[最終閲覧日2018年10月31日]. 篠原郁子(2017)「非認知的能力をめぐって ― 本. 文部科学省(2008) 「学習指導要領改訂の基本的. プロジェクト研究の目的と視点」国立教育政策. な考え方」閲覧可能<http:// www.mext.go.jp/. 研究所『非認知的(社会情緒的)能力の発達と. b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/. 科学的検討手法について研究に関する報告書』. 07100903/001/006.htm>[最終閲覧日2018年10. 7-14 庄井良信(1995)『学びのファンタジア ― 臨床教. 月31日]. 育学のあたらしい地平へ』溪水社. 村中李衣(2017) 「絵本を学ぶ・絵本から学ぶと. 庄井良信(2017)「子どもにおける『育ち』の諸. いうこと ― 読む身体と聞く身体の響きあいを 中心に」 『子ども学』萌文書林,5,179-204. 相 ― 社会情緒的コンピテンスを問う視点」公. 内閣府・文部科学省・厚生労働省(2017) 『平成. 益社団法人全国私立保育園連盟機関誌『保育通 信』751,38-42. 29年告示 幼稚園教育要領 保育所保育指針 幼保. 庄井良信(2014)『いのちのケアと育み ― 臨床教. 連携型認定こども園教育・保育要領 原本』チャ. 育学のまなざし』かもがわ出版. イルド本社. 代田知子(2001) 『読み聞かせわくわくハンドブッ. 奈須正裕(2017) 『 「資質・能力」と学びのメカニ. ク ― 家庭から学校まで』一声社. ズム』東洋館出版社. スミス, L. H.(著),石井桃子・瀬田貞二・渡辺茂. 根岸良久(2016) 「特別の教科道徳・想創の学び. 男(訳)(1964)『児童文学論』岩波書店. を築く学校 ― 創造的態度・思考からのアプ. 田渕久美子(2012) 「幼小接続期における生活の. ローチ」 『北海道教育大学附属札幌小学校研究. 認識と表現の教育的意義 ― 物語を共有するこ. 紀要』63,77-82. と」活水女子大学『活水論文集』55,12-24.. 西岡加名恵(2017) 「日米におけるアクティブ・. 田島信元(2018)「『歌いかけ・読み聞かせ』活動. ラーニング論の成立と展開」日本教育学会『教. は発達の根幹をつくる」田島信元・佐々木丈. 育学研究』84/3,311-319.. 夫・宮下孝広・秋田喜代美(編) 『歌と絵本が. 野上暁(2017) 「絵本の歴史と現在」 『子ども学』. 育む子どもの豊かな心 ― 歌いかけ・読み聞か. 萌文書林,5,128-151. せ子育てのすすめ』ミネルヴァ書房. 岡田達信(2011)『大人のための絵本セラピー ― . 立石美津子(2013) 『心と頭がすくすく育つ読み. 絵本はこころの処方箋』瑞雲舎. 聞かせ』あさ出版. ライチェン, D. S. ・サルガニク, R. H.(編著)立. 常深浩平(2016) 「認知過程から考える乳幼児へ. 田慶裕監(訳) (2006) 『キー・コンピテンシー ― . の読み聞かせ」『いわき短期大学研究紀要』49,. 国際標準の学力をめざして』明石書店. 1-11.. リューティ, M.(著) ,高木昌史(訳) (1997) 『メ. 内田伸子(2017)『子どもの見ている世界 ― 誕生. ルヘンへの誘い』法政大学出版局. から6歳までの「子育て・親育ち」』春秋社. 酒井朗・横井紘子『保幼小連携の原理と実践 ― . Vygotsky, L. S. (1987). Thinking and speech. In. 移行期の子どもへの支援』ミネルヴァ書房,. R. Rieber (Ed.),The collected works of L. S.. 2011年.. Vygotsky. vol. 1. New York: Plenum. 39-285.. Salans, M. (2003). Storytelling with children in crisis: Take just one star - How I impoverished children heal through stories. Jessica Kingsley Publishers. 佐々木暁子(2014) 「東日本大震災がもたらした 愛着の危機と回復について」日本箱庭療法学会 『箱庭療法学研究』26,31-40. 50.

(16) 絵本の読み聞かせと社会情緒的コンピテンスの涵養. SUMMARY Storytelling with Picture Book and the Cultivation of Social-Emotional Competencies: Pedagogical Research on a Primitive Mode of Active Learning (AL) during the Transitional Stage between Kindergartens and Elementary Schools Yoshihisa NEGISHI*, Yoshinobu SHOI** (*Teacher, Sapporo Elementary School affiliated to Hokkaido University of Education) (**Professor, Graduate School, Hokkaido University of Education) The purpose of this paper is to elucidate the educational effect of dialogical storytelling on the cultivation of social-emotional competencies for the first three years of primary school children. The pedagogical research was made from two aspects. Firstly, we considered the culturalhistorical value of the picture book as an educational material. Secondly, we considered the educational value of storytelling with picture book during the transitional stage from play-activity to learning-activity. Based on these considerations, we built up a hypothesis that the “chronotope” facilitating the collaborative and dialogical sense-making between teacher and children via storytelling with picture book can make a contribution to the cultivation of social-emotional competencies of children in a lower grade of elementary school. Based on this hypothesis we performed a generative-experiment in the classroom of third grade at Sapporo Elementary School affiliated to Hokkaido University of Education. Two pedagogical theories were clarified by this experiment. First, by using the image media with a narrative plot, storytelling with picture book can facilitate a polyphonic dialog and cultivate the inclusive social-emotional competencies of children. Second, by inquiring after a scenography of narrative community storytelling with picture book can promote the children’s social-emotional competencies to synchronize an emotional interaction. In conclusion, it is suggested that the storytelling with a picture book which orchestrating the polyphony of the children’s voices could be a primitive mode of an active learning (AL) during the transitional stage between kindergartens and elementary schools.. Key words : S  torytelling, Picture Book, Social-Emotional Competence, Active Learning, Scenography, Narrative Community. 51.

(17)

参照

関連したドキュメント

この小論の目的は,戦間期イギリスにおける経済政策形成に及ぼしたケイ

大学教員養成プログラム(PFFP)に関する動向として、名古屋大学では、高等教育研究センターの

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

 英語の関学の伝統を継承するのが「子どもと英 語」です。初等教育における英語教育に対応でき

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

レーネンは続ける。オランダにおける沢山の反対論はその宗教的確信に

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7