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伝統的な固体地球科学を中心に 5 つの研究分野で構成 地球を包括的に扱うことを目指したとはいえ その範 囲はあまりにも広大だ 地球の内部から太陽系に至るま での あらゆる物質や事象が対象になるほか 研究手法 も 地球の歴史の痕跡を観察したり 大気や海洋 大地 からサンプルを採取して分析したり 実験室

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Academic year: 2021

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注目の

学部・学科

[シリーズ]

地球惑星科学

質まで含め、地球全体を研究 対象とする学問として体系化 したものが地球惑星科学だ。  まずは、地球惑星科学が学 問分野として成立した歴史を 概観しよう。地理学はギリシ ア時代から知られる学問で あった。地質学は大航海時代 から産業革命を経て、西欧諸 国が植民地を拡大する中で発展してきたが、植民地の資 源をいかに獲得するかも念頭に置いた、博物学的なもの  プレートテクトニクス理論の成立を受け  新しい地球観とともに登場した地球惑星科学  地球を扱う学問は、伝統的に地球物理学、地質学、地 理学などに分かれていた。地球物理学は、地球の性質や 構造を物理学的な手法で解明しようとする学問である。 地質学は地面より下の岩石や地層を総合的な手法によっ て分析し、地球の生い立ちを探ろうとする。地理学は人 間社会を含めた地球表面が対象である。このように扱う 範囲も手法もバラバラだった諸科学を統合し、地球の内 部構造から表層の自然現象、生命活動、惑星としての性

C

ONTENTS

………

p69

……

p73

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p84

◆概説 地球の内部から宇宙空間、生命をも含めて 地球の全体像を包括的に捉える 東京大学 木村学教授 ◆コラム 地球惑星科学と高校「地学」 ◆入試情報 ◆固体地球科学   東北大学 大谷栄治教授 ◆気象学   京都大学 里村雄彦教授 ◆生命地球科学   九州大学 奈良岡浩教授 ◆授業・ゼミ紹介   富山大学 「巡検」 ◆卒業後の進路

地球の内部から宇宙空間、生命をも含めて

地球の全体像を包括的に捉える

概説

東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻

木村 学 教授

 我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々

はどこへ行くのか――これはポール・ゴーギャン

の絵のタイトルだが、あらゆる学問はこの根源的

な問いに答えるためにあるといっても過言ではな

い。特に地球で生まれ繁栄してきた人類にとって

は、地球惑星を丸ごと研究対象とする地球惑星科

学は、最も直接的にこのテーマを追究する学問と

いえる。

 すなわち、地球はどのように誕生したのか、生

命はどのように生まれたのか、生命を育む天体は

地球だけなのか、生命はどのように人類へと進化

したのか、地球は 46 億年の間にどのように変化

したのか、人類の営みは将来の地球にどのような

影響を与えるのかなどの疑問に、一つひとつ答え

ていこうというのが地球惑星科学なのだ。

 今回は、学問としての地球惑星科学の成り立ち

を概観し、代表的な研究分野を紹介する。

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(注1)放射年代測定…元素には、含まれる中性子の数が異なる同位体が存在する。そのうち構造が不安定なものは時間が経つにつれて崩壊し、その際に 放射線を発する。この、不安定な構造の同位体が存在する割合から岩石などの年代を測定する方法のこと。 (注2)太陽系外惑星…個数は NASA の発表より。太陽系外惑星については『Guideline2010 年 11 月号』の「注目の学部・学科 天文学」も参照。 であった。  19 世紀末になると地球物理学が発展し、地質学者と 地球の誕生年代を巡って論争を展開した。地球物理学者 はマグマが冷却する時間から計算し、地球の年齢を 4,000 万年程度と考えたのに対し、地質学者は岩石の風化・浸 食によって生成された砂の堆積の速さなどから、10 億 年以上と主張。互いの研究手法の違いから、見解が大き く分かれた。論争が決着したのは 20 世紀に入って放射 年代測定(注1) が行われるようになってからであり、飛来 した隕石の年代と同様、地球の年齢も約 46 億年である と推定されるようになった。この論争の中で、地球物理 学と地質学の双方の理解が進んでいったのだ。  1960 年代後半にはプレートテクトニクス理論が登場 し、地球観が変化した。それまでは地球の変動は陸を中 心に考えられていたが、海も合わせたプレートが移動す るものとして捉えられるようになったのだ。1969 年に はアポロ 11 号が月の石を持ち帰り、その分析から地球 と惑星の理解は飛躍的に向上した。これらを契機として 太陽系や地球に関する知見が大きく変化し始め、新しい 地球観が登場した。  「こうした変化の中、地震のメカニズムを探究するの は地球物理学、岩石を扱うのは地質学などと、バラバラ に研究していたのでは新しい知見に対応することができ なくなり、地球全体を包括する新しい学問の体系が必要 になりました。こうして、地球を丸ごと理解することを 目指して、地球物理学、地質学、自然地理学などを合わ せて誕生したのが地球惑星科学です」と、東京大学の木 村学教授は説明する。  伝統的な固体地球科学を中心に  5つの研究分野で構成  地球を包括的に扱うことを目指したとはいえ、その範 囲はあまりにも広大だ。地球の内部から太陽系に至るま での、あらゆる物質や事象が対象になるほか、研究手法 も、地球の歴史の痕跡を観察したり、大気や海洋、大地 からサンプルを採取して分析したり、実験室で地球内部 の環境を再現したり、人工衛星で宇宙空間を観測したり、 惑星を探査したりと多岐にわたる。そのため、地球惑星 科学は大きく5つの研究の柱を持っている。各分野の概 要を順に紹介していこう。 ●宇宙惑星科学分野 ――「ハビタブル・プラネット」の探索が続く  この分野では、地球が太陽系や宇宙の中で特別な存在 なのか、似たような惑星が他にも存在するのかといった 疑問に答えたりすることなどが大きな関心の的だ。天文 学と比べて、太陽系など地球からの距離が近い宇宙を対 象とし、地球や生命の存在を強く意識した研究を行う点 が特徴である。  現在、最も注目を集めているのは太陽系外惑星(太陽 以外の恒星を回る惑星)の探査である。1995 年に最初 の系外惑星が発見されてから、2012 年1月現在で 600 個以上が確認され、その数はさらに増えつつある(注2) 。  「近年は『ハビタブル(生命が住み得る)』がキーワー ドになりつつあります。惑星探査は、生命が住める惑星 『ハビタブル・プラネット』を探す方向へとシフトしつ つありますし、生命が住み得る条件を探る研究も盛んで す。地球生命科学分野における極限環境生物の研究と連 動しながら、宇宙という極限状況で存在する生命の可能 性を探る研究も注目されています」(木村教授) ●大気海洋・環境科学分野 ――将来の気候変動予測に挑む  この分野が研究対象とするのは、地球表層の自然環境 のうち、大気や海洋などの流体圏である。台風や大雨は もちろん、大気大循環や大規模海流など地球規模の流体 運動も扱うほか、過去の地球の気候を明らかにしたり、 将来の気候予測を行ったりする。  注目されるのは、地球温暖化など将来の気候変動予測

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に関する研究だ。気候に影響を与える因子を、考えられ るだけ入れ込んだ大規模なコンピュータシミュレーショ ンによる気候予測などが、ホットな研究テーマである。 話題となった次世代スーパーコンピュータ「京」なども、 こうした用途に利用されることが想定されている。  「大気などの流体は、ある点を超えると乱流となって 暴走しますが、この乱流問題の解明なども興味深いテー マです。ここ 10 年くらいで、大気と海洋の影響を同時 に考慮しながら、全体として気候を考察する研究が発展 してきましたが、今後はパラメータを細かく調整しなが らシミュレーションを行い、その結果を人工衛星や航空 機を使った観測で検証していくような方向に進んでいく と思われます。いずれにしても、気候の未来予測が最大 の関心の的でしょう」(木村教授) ●地球人間圏科学分野 ――人間と地球が相互に及ぼす影響を考察  この分野は、人間活動と自然環境の関わりを解明する ことを目的にしている。人間は、気温や土壌、降水など 自然条件の大きな制約を受けている。その一方で、地下 資源の利用によって大量の二酸化炭素を輩出するなど、 地球環境に影響を与える存在でもある。この両方の視点 から、工学や人文科学、社会科学など他の学問と連携し ながら研究を進めている点が大きな特色である。  経済、文化、社会活動など人間のあらゆる活動と自然 の活動が関連して起こる事象を研究対象としており、近 年は特に海と陸が接する沿岸域に注目が集まっている。 沿岸域は人口が集中し、多くの人間活動が行われると同 時に、資源や廃棄物も集積し、多くの自然災害が発生す る場でもあるからだ。「日本社会と沿岸域」「アジアモン スーン地域における水循環と水災害予測」などのテーマ で、人文地理学や文化人類学、農学など広範な学問を巻 き込んだ研究に期待が高まっているほか、中国、インド、 アフリカなどでは、人口爆発に関連したテーマも重要に なりつつある。 ●固体地球科学分野 ――プレート境界における地震のサイエンスに期待  地球内部の構造や運動を明らかにすることを目的とし ており、伝統的な地球科学を担ってきた分野でもある。 地震や火山噴火といった大地の運動はもちろん、山脈や 海溝の形成などもマントルの活動が引き起こしているこ とが知られており、マントル対流をはじめとした地球内 部の活動についてシミュレーションを行ったり、地球深 部の鉱物の振る舞いを調べたりする実験なども行われて いる。地震や火山噴火に備える災害科学の一面も持つ。  この分野は、核からマントル、地殻のすべてを研究対 象にしているが、近年では地震のサイエンス、特にプレー ト境界の沈み込みのメカニズムの解明に注目が集まって いる。日本の場合は、2011 年の東北地方太平洋沖地震 を予測できなかった反省から、こういった研究に特に注 目が集まっている。木村教授は南海トラフ(注3) の沈み込 みのメカニズムを研究している。  「巨大地震は、プレートが沈み込むときに蓄えられた ひずみエネルギーが、プレートがはがれることで解放さ れて起こります。ところが、そのプレート境界で何が起 きているのか、これまできちんと理解できていなかった のです。日本では、阪神・淡路大震災を受けて、GPS を使った世界で最も細かな地震観測網が整備されていま す。そこで私たちは、そこから得られる地震波のデータ などを長期間にわたって解析しました。すると、南海ト ラフのプレート境界で、プレートがはがれる部分より少 し深いところで、ゆっくりと滑っている現象を発見する ことができました。プレートの深い部分がゆっくりと滑 り込むことで、ひずみエネルギーが溜まっていくメカニ ズムが初めて明らかになったのです」(木村教授)  このほかにも、海底を掘削してプレート境界の岩石を 採取し、地下で起きていることを直接観測するプロジェ クトが進行しており、地震発生メカニズムの詳細な研究 には大きな期待が寄せられている。 ●地球生命科学分野 ――宇宙も視野に入れて生命の起源と進化を探究  生命の起源は学問的に諸説があり、まだ決着がついて いない。そこで、この分野では、どのように生命が発生 し、現在のように多様性をもつに至ったのか、地球と生 命進化はどのようにかかわってきたのかを解明すること を目指している。宇宙から生命が飛来した可能性も残さ れており、「宇宙惑星科学」と連携しながら、宇宙で生 命が存在する条件などを探る研究も行われている。  近年、特に研究が盛んなのは、極限環境生物の研究で ある。深海の熱水域や、岩盤の相当深いところにまで生

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物がいることが確認されており、無酸素、強酸、強アル カリ、高塩分、高温、極低温などの極限環境に生息する 古細菌(アーキア)などが、生命の起源に近い可能性が あるからだ。  生物が地球に及ぼす影響も重要なテーマである。地球 上の酸素の多い環境は生物がつくり出したものであり、 石油、石炭、天然ガスなどの生成過程にも生物が関与し ている可能性が大きいからだ。  「地震も、生命が間接的に引き起こしている可能性が あります。珪藻や放散虫などのシリカ(注4) の殻を持つプ ランクトンは、死後マリンスノーとなって海底に堆積し、 大量の水を含んだ厚い地層を形成することがあります。 この地層が海溝で沈み込むと、地下に大量の水が運ばれ ます。この水が潤滑材となって地震が起こる可能性もあ るのです。このように生命と地球の関係には、研究の余 地が数多く残されています」(木村教授)  得意分野、専門分野を持った上で  全分野の教養レベルの知識が必要に  地球惑星科学は、地球を丸ごと理解することを目指し ていることから、大学では幅広く学ぶことが求められる。  「地球惑星科学は総合科学ですから、研究を進めるた め、大学ではまず物理学、化学、生物学の基礎的な知識 を学びます。専門科目としては上記の5分野に関する幅 広い科目が設置されていますが、それらすべてに精通す ることは不可能です。そのため、大学で地球惑星科学を 学ぶ場合は、自らの得意な分野、専門分野を持った上で、 他分野の人と会話できるように教養レベルの知識を充実 させることが必要になります。全分野に関して広く浅く 知っているよりは、1つ深い部分を持ちながら、異分野 の人たちとのコミュニケーションを通して、包括的な理 解を深めていく方向が好ましいといえます」(木村教授)  あらゆる科学がそうであったように、地球惑星科学も 技術の飛躍的な発展に支えられており、今後も技術の進 展に応じて新発見がなされ、地球や生命に関する新しい (注4)シリカ…二酸化ケイ素、もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称。

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 地球惑星科学の研究領域の多くは、高校では地学 で扱うことになっており、地球惑星科学の学部・学 科を志望する生徒は高校から地学に触れておくこと が望ましい。今回の取材でも、高校で地学を履修し た学生について「バランスよく物事をみられる傾向 があり、大学での地球惑星科学の学びが深まる」「地 球惑星科学を研究するのに必要な、複雑なシステム の全体を捉える視点がある」といったコメントが大 学の先生方から聞かれた。  一方で、高校で地学を履修する生徒は少ない。河 合塾の「教科に関するアンケート」(注1)によると、 新課程カリキュラムにおいて「地学基礎」を設置す る高校は文系で 31.5%、理系で 12.4%にとどまり、 他の「基礎を付した科目」に比べて少ない。さらに 国公立大の個別(2次)試験や私立大の入試に対応 できる「地学」の設置状況は文系で 12.4%、理系で 3.9%と、他の科目に比べて非常に少なくなる。これ らの数字は高校が科目を設置する割合であるため、 実際に履修する生徒の割合はさらに少なくなるだろ う。新課程においても、大多数の生徒は地学を高校 で学ばず、地球惑星科学を学べる学部・学科に進む 理系生もほとんどが地学を履修していないと予測さ れる。  こうした状況に対して、学問の世界からは以前よ り改善を望む声が上がっている。例えば、地球惑星 科学関連 48 学協会などで構成される日本地球惑星 科学連合は、すべての高校生が地球人として必要な 科学リテラシーを学べるようにするため、地学をベー スにした必修科目「教養理科(仮称)」の創設を 2007 年9月に提案している。地球史の比較的新し い時代(約 260 万年前から現代まで)を研究対象と する日本第四紀学会も、2011 年5月、新課程で地 学履修者がさらに減少することへの懸念から、地球 惑星科学連合と共同で高校における理科の4科目開 講を求める声明を発表している。  その一方で、大学側も地学履修者が少ない状況を 踏まえた教育を行っている。例えば、九州大学理学 部地球惑星科学科では、地学を履修していないこと を前提として授業内容を設定。1年次に、数学、物理、 化学、生物、英語などの基礎教育科目とともに、「固 体地球科学」「大気海洋科学」「宇宙科学概論」「生物 圏環境科学」「基礎地質学」などの導入科目を展開し ている。富山大学理学部地球科学科も、大学入学に 際して高校の「地学」の履修を前提とはしておらず、 「地球のしくみ」を一から学ぶためのさまざまな教育 プログラムを用意している(注2)。このように、多く の大学で、地学を学ばなくても地球惑星科学の世界 に入れるようにカリキュラムが組まれている。  もちろん、大学で地球惑星科学を学ぶには、高校 で「地学」を履修していることが理想的である。し かし、「地学」を学んでいないからといって進学先の 選択肢から外す必要はないのである。

「地学」未履修でも大丈夫 !?

――高校の理科選択科目と大学のフォロー

考え方や理論が登場する可能性は高い。  「20 世紀は物理学がすべての科学の上に君臨した時代 でした。しかし『我々は何者で、どこから来て、どこへ 行くのか』という根源的な問いに答えるには、物理学、 化学、生物学などをベースにした、地球を丸ごと捉える 地球惑星科学が不可欠です。その意味で、地球惑星科学 は最も輝くところにある学問だと思います」(木村教授) (注1)…新教育課程における設置予定科目などについて、全国の高等学校に聞いたアンケート。2011 年 7 〜 9 月に実施。回答数 670。 (注2)…カリキュラムの説明については、2大学のホームページより

コラム

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 ここでは日本地球惑星科学連合が紹介する「地球惑星科学 が学べる大学」(http://www.jpgu.org/index/students/ learninggeoscience1.html)を中心に、入試の特徴を見ていく。  理学部の「地学」系を中心に  さまざまな学部で地球惑星科学を学べる学科を設置  現在地球惑星科学が学べる大学は、国公立大で 48 大 学 62 学部(93 学科)、私立大では国公立大と比べると 設置数が少なく、18 大学 23 学部(35 学科)となって いる。設置されている学部・学科は理学部の地学系を中 心に、工学部の土木・環境系、水産・海洋学部、農学部、 環境学部など理系学部の多岐にわたる。また、一部の大 学の教員養成系学部理科専攻や、気象大学校・防衛大学 校といった、文科省所管外の大学校でも地球惑星科学を 学ぶことができる。概説で示したとおり、地球惑星科学 にはさまざまな研究領域があり、ここで紹介する学部・ 学科は、そのうちのいずれかが学べる学部・学科である。 受験の際には、それぞれの学部・学科でどの分野が学べ るのか、ホームページなどで確認したい。  国公立大 学部一括募集が目立つ  国公立大前期日程のセンター試験科目数は9割以上の 大学が5教科7科目を課しており、後期日程でも7割が 5教科7科目となっている。特に前期日程では、 そのほとんどが理科2科目の受験が必須の理型で ある。科目の内訳を見ると、数学は数学Ⅱ・数学 Bの受験を指定している大学が7割となっている。 学問の特性から、理科は地学まで選択できる大学 がほとんどだが、九州大(工-地球環境工)、金沢 大(理工-環境デザイン)、神戸大(海事科学)、 岩手大(工-社会環境工)では地学の選択ができ ない。  <図表1>は国公立大前期日程の二次試験科目 を集計したものである。難易度の高い大学を中心 に理科2科目を含む4科目を課すケースが多く、 【英、数、理2】を課す大学だけで 21 募集区分ある。 特に東京大、京都大、名古屋大では4教科5科目 を課している。理科の選択科目を見ると、東京工 業大(第1類)、九州大(工-地球環境工)、大阪府立大 (生命環境科学-自然科学、緑地環境科学)は理科2科 目必須だが地学を選択することができない。地球惑星科 学は先に見たように幅広い学部で学ぶことのできる学問 であり、募集先の学部の特性によってはこのように地学 選択が不可能な場合があるので注意が必要だ。  また、二次試験では教員養成系を中心に2科目以下で 受験可能な大学も6割にのぼり、1教科を小論文や面接 による試験と組み合わせるパターンや、教科試験を課さ ない大学も少なくない  私立大 理学部以外では地学を選択できない大学も  私立大の一般方式<図表2>では、【英、数、理】の 3教科3科目を課す大学が6割にのぼる。設置されてい る学部の特性から、理科の選択科目は物理・化学、もし くは物理・化学・生物から選択できる大学が多く、地学 が選択できる大学は早稲田大(教育-理-地球科学)、 日本大(文理-地球システム科学)など一部の大学にと どまっている。慶應義塾大(理工-学門1、学門3、学 門4)、早稲田大(創造理工-環境資源工)では【英、数、 理2】の4科目を課しており、理科はいずれも物理・化 学が必須だ。数学は数学Ⅱ・数学Bを出題範囲とする大 学が約6割で主流となっているが、難関大を中心に数学 Ⅲ・数学Cを課している大学も3割ある。  センター試験利用方式は、慶應義塾大、早稲田大、同

入試情報

※ <図表1><図表2>とも英・数・国・理・地・ 公の主要6教科を科目数としてカウント 科目数 教科パターン 募集区分数 4科目 【英、数、理2】 21 【英、数、国、理2】 5 【英、数、国、地】 1 【英、数】(理2、地→2) 1 3科目 【数、理2】 4 【英、数、理】 3 【英、理2】 1 【英】(数、理2→2) 1 【国、理2】 1 2科目 【数、理】 22 【英】(数、理→1) 1 【英、数】 1 【数】(英、国→1) 1 【数、国】 1 (英、国、地→2) 1 1科目 【理】 9 (数、理→1) 5 【英、小】 2 【数】 2 (英、数、国、理→1) 1 【理、小】 1 【小】(数、理→1) 1 【英、総】 1 教科 なし 【小】 3 【小、実】 2 【面】 2 【情】 1 <図表1>国公立大前期日程二次 試験教科パターン <図表2>私立大一般方式教科パターン 科目数 教科パターン 募集区分数 4科目 【英、数、理2】 4 3科目 【英、数、理】 40 【英、理】(数、国→1) 4 【英、数】(国、理→1) 2 【 英、 国 】( 数、 理、 地 公→1) 2 【英】(数、地公→1)(国、 理→1) 1 【英、国】(数、地公→1) 1 【英、国、地公】 1 2科目 (英、数、理→2) 2 (英、数、公→1)(国、 理→1) 2 ( 英、 理 → 1)( 数、 国 →1) 2 【英、数】 1 1科目(国、理→1)【数、小】 11 ※ 河合塾調べ

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志社大を除く大学で実施している。全大学でセンター試 験のみの入試を実施しているが、個別試験との併用方式 も6大学が行っている。教科・科目数を見ると、3教科 3科目で受験できる大学が5割を占めており、より科目 負担の多い大学でも受験者が科目数を選んで受験できる よう、いくつも方式を設けている場合がある。個別試験 で理科を課す中央大(理工-物理)のセンター併用方式 以外は、全大学で理科を必須、もしくは選択科目に指定 しているが、そのうちの3割が地学を選択できないので 注意してほしい。  理系の中では狙いやすい学科が多い  最後に入試難易度について触れておこう。国公立大の ボーダー得点率は、学部一括入試を行っている難関大を 中心に一部 80%を越す大学もあるが、全体を見れば 60%前後にまで広く広がる平均的な分布となっている。 ただし、2次試験のボーダー偏差値は 47.5 ~ 57.4 の募 集区分で7割を占めており、理系分野の中では狙いやす い分野である<図表3>。  同じく<図表4>は私立大一般試験の難易度を、各学 科の代表的な募集区分で一覧にしたものである。偏差値 49.9 以下が 6 割、特に 30.0 ~ 37.4 が全体の3割であり、 比較的狙いやすい大学が多い。その一方で偏差値 50.0 ~ 70.0 にも満遍なく募集区分が分散しており、幅広い 難易度の大学が集まっている。 <図表 3 >国公立大 地球惑星科学を学べる大学予想難易度一覧(抜粋) <図表4>私立大 地球惑星科学を 学べる大学予想難易度一覧(抜粋) ★は学部一括募集 <図表5>文科省所轄以外の大学校 ボーダー 偏差値 大学(学部-学科) 65.0 気象大学校 52.5 防衛大学校(理工) ※ ボーダーラインは 2012 年 5 月現在 ボーダー 偏差値 大学(学部-学科) 70.0 慶應義塾(環境情報-環境情報) 65.0 慶應義塾(理工-学門1) 慶應義塾(理工-学門3) 慶應義塾(理工-学門4) 62.5 早稲田(教育-理-地球科学)早稲田(創造理工-環境資源工) 57.5 同志社(理工-環境システム個別) 立教(理-物理個別) 立教(理-生命理学個別) 55.0 中央(理工-物理一般) 52.5 中央(理工-都市環境一般)立命館(理工-都市システムA) 立命館(理工-環境システムA) 50.0 東邦(理-化学A日程) 日本(文理-地球システムA1) 日本(文理-地理A方式) 47.5 東海(海洋-航-航海学A) 東海(海洋-海洋生物A) 岡山理科(生物地球-生物地球SA) 福岡(理-地球圏科学前期) 45.0 東海(海洋-水-生物生産A)東邦(理-生命圏環境科A) 42.5 名城(理工-環境創造A方式)大阪工業(情報科-情報システム前A) 大阪工業(工-環境工前期A日程) 40.0 東海(海洋-水-食品科学A)東海(工-航-航空宇宙A) 37.5 広島工業(環境-環境デザインA) 35.0 埼玉工業(工-生-バイオA) 東海(海洋-航-海洋機械A) 東海(海洋-海洋文明A) 東海(海洋-海洋地球科学A) 東海(海洋-環境社会A) 立正(地球環境科-地理2月前期) 立正(地球環境科-環境シス2月前期) 湘南工科(工-コンピ応用前A) 広島工業(環境-地球環境A日程) 九州産業(工-物質生命化学前期) 30.0 九州産業(工-都市基盤デザ前期) ボーダー 得点率 (%) 理学系 ボーダー 偏差値 工学系・農学系など ボーダー偏差値 教員養成系 ボーダー偏差値 93 ★東京(理科一類) 67.5 88 ★京都(理-理) 65.0 ★京都(総合人間-総合人間理系) 62.5 83 ★名古屋(理) 60.0 82 東北(理-物理系) 60.0 ★東京工業(第1類) 65.0 81 横浜国立(理工-建-地球生態)横浜国立(理工-建-海洋空間) 55.055.0 80 東北(理-地球科学系)★北海道(総合入試理系-総合科学) 57.557.5 79 神戸(理-地球惑星科学)九州(理-地球惑星科学) 55.057.5 78 広島(教育-科学-自然系) 55.0 大阪教育(教育-学-理科中学) 52.5 77 山口(理-地球圏シス) 47.5 九州(工-地球環境工) 55.0 岡山(教育-学-中学理系) 55.0 76 千葉(理-地球科学) 55.0 東京海洋広島(総合科学-総合科学理系)(海洋科学-海洋生物資源)55.052.5 75 東京海洋(海洋科学-海洋環境) 55.0 74 埼玉(工-環境共生)東京海洋(海洋科学-食品生産科学)55.0 金沢(理工-自然システム) 52.5 73 静岡(理-生物科学) 52.5 首都大学東京(都市環境-地理環境) 52.5 大阪教育(教育-学-理科小学) 52.5 大阪市立(理-地球) 52.5 東京海洋(海洋科学-海洋政策文化) 52.5 岡山(理-地球科学) 52.5 大阪府立(生命環境科学-自然-均等) 57.5 広島(理-地球惑星システム) 52.5 72 静岡(理-地球科学) 50.0 大阪府立(生命環境科学-緑地環境科学)50.0 群馬(教育-学校-理科) 52.5 71 ★熊本(理-理) 50.0 金沢(理工-環境デザイン) 50.0 愛知教育(教育-中-理科) 52.5 70 宮城教育(教育-中-理科) 50.0 69 神戸(海事科学) 52.5 68 新潟(理-自然環境科学) 47.5 宮崎(農-海洋生物環境) 52.5 岐阜(教育-学校-地学) 52.5 鹿児島(理-物理科学) 47.5 愛知教育(教育-初-理科) 52.5 滋賀(教育-学校教育理系) 50.0 兵庫教育(学校教育-初等教育) 鳴門教育(学校教育-小中-理科) 67 茨城(理-理-地球環境) 50.0 66 信州(理-地質科学) 宮城教育(教育-初-理科) 47.5 65 ★高知(理-理科受験) 55.0 徳島(総合科学-総合理数)長崎(環境科学-環境科学B) 47.547.5 64 信州(理-物質循環)鹿児島(理-地球環境科学) 47.5 長崎(水産-水産)弘前(理工-地球環境) 45.0 上越教育(学校教育-初等教育)50.0 和歌山(教育-総合教育(理科系)) 50.0 63 山形(理-地球環境)新潟(理-地質科学) 45.0 宮崎(農-森林緑地環境)山口(工-循環環境工) 45.050.0 62 富山(理-生物圏環境)富山(理-地球科学) 47.547.5 大分(教育福祉科学-学校-理科) 52.5 ★愛媛(理-地学受験) 47.5 61 琉球(理-海洋(化学)) 40.0 岩手(工-社会環境工) 42.5 島根(生物資源科学-地域環境科学) 50.0 鹿児島(水産-水産) 45.0 60 島根(生物資源科学-農林水産) 52.0 鹿児島(水産-水産教員養成) 45.0 島根(総合理工-地球資源環境) 50.0 鹿児島(農-生物環境) 47.5 58 秋田(工学資源-地球資源) 42.5 57 琉球(理-物質(地学)) 45.0 ※ 独自の学科試験を課していない大学は、ボー ダー偏差値を設定していない

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 固体地球科学は、地球の内部の構造や運動を明らかにしようとする学問である。今回 紹介する地球惑星物性学は、地球という惑星を構成する要素、すなわち地殻やマントル、 核がどのような物質からできていて、どのような性質なのか、あるいはなぜできたのか を探究する。しかし、半径 6,000km を超える地球内部の物質を、高温高圧の状態のま まで取り出すことは不可能である。そこで、実験により地球の内部環境を再現し、そこ での物質の挙動を観測することで、地球内部に存在する物質の姿を推測しようという研 究に期待が集まっている。

東北大学大学院理学研究科地学専攻

大谷 栄治 教授

 サンプルを採取することが難しい  マントルや核を構成する物質を探究  地球惑星科学には、大きく3つの研究手法があります。 1つ目は「観測」で、気象観測や人工衛星による大気観 測、地震波観測など、野外から物理情報を得る手法です。 2つ目は「分析」で、野外から物質のサンプルを採取し て、精密な分析機器を使ってその物質の性質を明らかに する方法です。3つ目は「実験」で、対象とする物質の 状態や自然環境などを再現し、そこからモデルを構築し て理解を深めようという方法です。小惑星探査機「はや ぶさ」のミッションに当てはめれば、イトカワの写真を 撮ったりすることは「観測」であり、イトカワから持ち 帰った微量な粒子を調べるのは「分析」にあたります。 そして、その粒子がどうしてできたのかを実験室で再現 する研究は「実験」に分類されます。  私たちの研究室は、マントルや核などの物質の構造や 物性を、実験によって明らかにしようとしています。地 球内部に関しては、観測やサンプル分析で得られる情報 は限られるからです。観測で測定できるのは、地震波速 度( 注1) や密度くらいですし、分析では、マントルの岩石 が露出している場所から採取したサンプルから過去のマ ントルの情報は得られるものの、核の物質は得られませ ん。しかもマントルや核を構成する物質が、高温高圧環 境でどのような状態で存在するのかについてはまったく わかりません。これを知るために、マントルや核を構成 していると思われる物質を使って、マントルや核の内部 環境を実験的に再現し、その性質を調べているのです。  直径 0.1mm 以下のダイヤモンド平面に  地球内部の高温高圧環境を実現  しかし、核の中心は 365 万気圧、6,000K(注2) といった 超高温高圧環境と考えられており、再現はそれほど簡単 ではありません。私たちは、主に2つの実験装置を使っ て、地球の内部環境に近づく努力をしています。  1つは、ダイヤモンドアンビル高圧装置です。これは ダイヤモンドを削って平面を作り、その平面に試料を置 き、もう一つ同様に加工したダイヤモンドの底面で挟ん で圧力をかける装置です。試料を置く平面は 0.1mm 〜 0.05mm ほどで、圧力を小さな面積に集中させることで、 理論的には地球の中心圧力を出すことができます。そし てレーザー光線を使って試料を加熱します。こうして微 量な試料を高温高圧状態にしてから、そこにシンクロト ロン放射光と呼ばれる強力なX線を当てて、回折光( 注3) を分析することで試料の状態を把握します。  もう1つは、マルチアンビル高圧装置です。ダイヤモ ンドアンビル高圧装置と比べて、かけられる圧力は低い のですが、1,000 倍もの体積の物質を扱うことができま す。これらの実験装置を使うことで、マントルや核の高 温高圧状態を作り出そうというわけです。

地球を構成する物質の構造や性質を

実験に基づいて解明する

固体

地球科学

(注1)地震波速度…地震によって発生する、岩盤を伝わる波(地震波)の速さのこと。地震波には進行方向と平行に伝わるP波と垂直に伝わるS波があり、 これらの伝わる速さによって地球内部の温度や物質の成分がわかる。 (注2)K(ケルビン)…熱力学温度を示す単位。熱運動がすべて停止する温度(絶対零度)を0Kとしている。現在、日常生活で使われている℃(セル シウス度)は、℃=K- 273.15 として定義されている。 (注3)回折…物質を伝わる波が障害物の背後などに回り込んで伝わる現象のこと。

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 核マントル境界の温度が推定できたほか  下部マントルに水が存在する可能性も実証  私たちのこれまでの研究で、外核と下部マント ルの境界(核マントル境界)、内核と外核の境界 (内核境界)の温度がほぼ推定できるようになり ました。近年、これらを構成する物質の化学組成 がかなり判明してきていることから、それらの物 質を使って実験を行ったわけです。例えば、内核 は鉄を主体とする固体、外核は鉄を主体とする液 体なので、内核境界は固体と液体の鉄が混在する 温度、すなわち融点であることがわかります。そ こで融解実験で融点を求めたところ、内核境界の 温度は、従来から予測されていたよりも低い、約 5,000K であることが確認されました。同様に核マント ル境界は約 3,500K であることが推定されたのです。  また、核の組成を予想することにも成功しています。 私たちは、核の主要構成物質である鉄とニッケルの合金 を伝わる音速を、170 万気圧という世界最高圧力で測定 することができました。この圧力は外核内部に相当しま す。音速がわかると、密度の推定ができますから、そこ から核の組成がわかるのです。なお、内核には鉄とニッ ケル以外にも、硫黄やケイ素が入っているのではないか と考えられています。そこで、これらの物質が地球内部 の温度圧力条件で、どんな結晶構造や地震波速度を持っ ているのかも測定しようとしています。現在ではかなり 地球内部の状況に近い圧力が実現できており、内核の圧 力では温度は 1,000K くらいを達成していますので、今 後、これを内核境界の条件、330 万気圧、4 〜 6,000K ま で高め、そのような条件で結晶構造の解明、密度の決定、 そして地震波速度の測定を行いたいと考えています。  このほか、地球内部の水の循環についても新たな発見 がありました。マントルの中には水を含んだ鉱物(含水 鉱物)があると考えられていますが、詳細はわかってい ません。しかし、私たちは実験により、核マントル境界 の非常に高い圧力でも水を水酸基として蓄えていられる 鉱物を見つけました。これは、下部マントルにも水が鉱 物中の結晶水として安定的に存在することを示していま す。地下 4 〜 500km の大深度で発生する深発地震の原 因はまだ分かっていませんが、含水鉱物が分解して流体 の水ができることが原因だと言われており、それらも実 験で確かめられる可能性があります。  将来的には、地球の中心の温度圧力環境を実現し、結 晶構造、密度、そして音速などを測定することを目指し ています。ダイヤモンドアンビルの圧力限界まで挑戦し たいと思っていますし、ダイヤモンドより硬い物質の開 発も視野に入れながら、実験の精度を高めていく予定で す。  再現不可能な「起源」に迫る醍醐味が  地球惑星科学の最大の魅力  私たちの研究分野である地球惑星物性学は、地球内部 を対象にしていますが、岩石学や鉱物学だけでなく、地 震や隕石、惑星などの情報も重要です。そのためには、 地球惑星科学の他の分野の人たちとも意見交換できるこ とが必要であり、日頃から、学生が幅広い視点を持てる ような教育を心掛けています。また、地球惑星科学以外 でも、物理学や化学、材料科学などは高圧科学として関 連が深いため、そこからの刺激も大切にしています。  最後に、地球惑星科学の醍醐味は「起源」を明らかに することにあると考えています。よく科学の本質は再現 性があることだと言われていますが、「起源」は再現で きません。元素や宇宙、太陽系、惑星、地球、生命、人 類などの「起源」は実験で確かめることができないので す。ところが、自然科学でもっとも大切な部分は、まさ にその「起源」です。そこにアプローチできるのが、地 球惑星科学の最大の魅力です。 <図表>地球内部に水が入る概念図 (提供:大谷教授)

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 大気海洋・環境科学は、大気、海洋、陸域表層(陸地の表面)を扱う領域であり、そ の代表的な学問分野が気象学である。雨や風、雪、台風、梅雨など天気に関わる事象は、 すべて大気の流体現象であり、気象学では、それらの物理的なメカニズムを探究する。 ただし、気象現象は多くの要因が複雑に絡まって生じるため、全体を単純な物理法則で 説明することは難しい。そこで、研究する気象現象を絞り込み、対象となる地域の地形 的な特徴などに基づいて研究を進めることが主流になっている。

京都大学大学院理学研究科 地球惑星科学専攻

里村 雄彦 教授

 空間的なスケールの大きさによって  適用する理論が異なる気象現象  気象現象は生活に多大な影響を及ぼすため、その変化 のメカニズムについて、人類は太古から関心を持ってき ました。現在の気象学につながる研究は、19 世紀半ば にフランスで始まりました。当時、天気は風が吹いてく る方向から変化することがわかっており、電信(電報) の発達で風上の天気の情報をほぼリアルタイムで収集で きるようになったことから、天気図が作られるようにな りました。20 世紀前半には、観測の結果から低気圧の 初歩的な構造モデルが提唱され、気象現象の科学的な理 解が進みました。1950 年代には数値予報(注1) が始まり ます。以後、コンピュータの発展とともに天気予報の精 度を高める努力が続いています。このように気象学は天 気予報からスタートした、「技術」に近い側面を持った 学問なのです。  気象学は地球表層を取り巻く大気を研究対象としてい ます。大気は上空 1,000km くらいまで存在しますが、 上部ほど希薄になるため、100km くらいまでが気象学 の主な対象です。特に成層圏(10 〜 50km)の下部から 対流圏(地表〜 10km)にかけては、低気圧や台風など 災害と直結する気象現象が発生します。防災も含め、こ の領域で発生する気象現象の仕組みや運動を解明するこ とが気象学の大きな役割です。また、海洋科学とは密接 な連携が行われています。例えば台風は海上で発生しま すし、海洋と気象は関係が深いのです。  現在の気象学では、気象現象を水平距離の大きさに よってマイクロスケール、メソスケール、総観スケール、 惑星スケールに分けて研究を行うことが一般的です<図 表>。なぜなら、スケールごとに前提となる理論や考え 方が異なるからです。例えば総観スケールの低気圧は、 地表から水平の方向には数千 km の広さを持つのに対し、 垂直方向の高さは 10km 程度と水平方向の距離の数百分 の1であり、ほぼ平面の運動として考えることができま す。一方でメソスケールの積乱雲は、垂直高度も水平距 離も約 10km と、ほぼ同じであるため、立体的な運動と して捉える必要があります。このように、研究の前提も 大きく異なるのです。  スコールラインにおける「雨の日変化」を  レーダー観測とモデルを使って解明  私はメソスケールの気象現象の中でも、積乱雲と積乱 雲群を主な研究対象としています。積乱雲群の仲間には、 積乱雲が帯状に連なって発生する現象で、スコールライ ンとも呼ばれる強い雨を降らせるものもあります。メソ スケールでは、気候(注2) や地形といった地域的な特性を 理解できないと、対象とする気象現象をイメージできま せん。また、研究に用いる気象モデル(注3) も地域によっ て大きく異なります。そのため、対象とするフィールド を絞る研究者が一般的です。  私は、インドシナ半島の気象現象を主に研究していま す。インドシナ半島は、ベトナム戦争やカンボジア内戦 などが続いたため、最近まで近代的な気象学の研究はほ

大気現象の物理的なメカニズムを解明し

天気予報の骨格となるモデル構築をめざす

気象学

(注1)数値予報…物理法則に基づいて、風や気温などの時間変化をコンピュータで計算して将来の大気の状態を予測する方法。 (注2)気候…気象状況の平均的状態。日本では比較時点の前の 30 年間の平均値を「平年値」としている。気象学は時間変化や日変化、季節変動などを 中心に扱い、気候学は数十年単位の平均状態を扱う。 (注3)気象モデル…対象とする気象現象がどのように発生しているのか、要因等を簡素化し、数式で表したもの。

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とんど行われていませんでしたが、1990 年代半ばから各国に観測網などが整備さ れ、ようやくデータが集まるようになりま した。そこで、このフィールドで特徴的な 気象現象であるスコールラインの研究を 始めたのです。観測やモデルを使ってス コールラインが発生するメカニズムを推 定する研究から始め、現在では、半島内で も特に雨量が多い地域や時間帯が存在す る理由の解明を目指した研究を進めてい ます。  研究の出発点は「なぜ、いつも決まった 時間に雨が降るのか」という単純な疑問で した。インドシナ半島の平野部では雨季に なると、積乱雲群によって夕方から夜に雨 が降ることが多いのです。一般的に、積乱 雲は日射の強い昼に発生して、その場で雨 を降らせてすぐに消えるというイメージがありますが、 私は山の斜面で発生した積乱雲が数時間かけて数百 km も移動して、平野部に雨を降らせているのではないかと 考えました。そこで、積乱雲が山で発生して平野部に移 動する気象モデルを検討するとともに、インドシナ半島 の各国の気象レーダーや雨量計を使って、「いつ、どこで、 どれだけ雨が降っているか」可能な限りデータを集めま した。雨は層雲からも降りますから、積乱雲群から降っ た雨だけを抽出します。その結果、一日の中で積乱雲群 が移動することによって雨の降る様子が変化していくこ とが明らかになりました。  台風についても研究を進めています。北太平洋で発生 する台風は通常、上陸すると水蒸気の供給がなくなって 勢力は弱まります。ところが、インドシナ半島では、1 〜2年に1回程度、上陸しても衰えずに半島を突っ切っ てしまう台風や、多少は弱まるものの雨を降らせ続けて インド洋に抜けてさらに発達する台風などが発生します。 しかも雨季の終わる秋口に多いこともわかってきました。 そこで、インドシナ半島各地の気象台と連携して気象 データの収集と解析を進め、そのメカニズムを解明し、 モデル化しようと考えています。  インドシナ半島はベトナム側とインド洋側の山脈に囲 まれており、気象現象にも山の存在が大きく影響してい ます。そこで、山が気象に及ぼす影響を盛り込んだモデ ルの構築も視野に入れています。各国の気象予報で使っ ているようなモデルは多数の部品を組み合わせており、 個人の研究者が作成できるようなものではありませんが、 将来的には、インドシナ半島各地の気象予報の骨格とし て使えるモデルを作成したいと考えています。  美しい現象を扱って社会に役立つ点が魅力  気象学は応用物理学の一分野ですから、大学で気象学 を学ぶには数学と物理学が必須です。専門課程に進むと、 気象現象に影響を与える地表の植生や火山、海洋科学な どの関連領域も学びます。近年では、GPS(注4) の位置 測定の誤差から大気中の水蒸気量を推定し、雨量予報な どに生かす研究も進んでいますから、そうした知識も 持っておくとよいでしょう。気象学はさまざまな基礎科 学に立脚した学問領域ですから、幅広い知識が必要なの です。  気象現象の特徴は、各種の雲の色や形をはじめとして 美しいものが多いことです。台風や低気圧にしても、宇 宙から眺めると美しい形をしています。一方で、それら が通過する地上では、ときに数千人もの犠牲者が出るこ ともあり、防災を進めていく上でも、研究の社会的意義 は極めて大きなものがあります。自然が作り出す美しい 現象を扱いながら、その研究成果が直接社会の役に立つ というのは、気象学の大きな魅力だと思っています。 <図表>気象現象とその時間的、空間的な広がり ※ 気象現象では、その空間的な大きさと持続時間との間に、ほぼ相関関係がみられる。   数千 km の大きさを持つ低気圧は数週間以上勢力を保つこともあるが、10km 程度の積乱雲   は数時間で消える。 (提供:里村教授)

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 地下生命圏の発見で期待が高まる  生命地球科学とアストロバイオロジー   高校までの地学は、岩石や地震、気象、天文などに関 する内容が中心で、生命に関してはあまり触れられてい ません。しかし、地球の歴史を考える上で生命の役割が 非常に大きいことが明らかになるにつれ、地球と生命の 相互作用を考える生命地球科学(バイオジオサイエンス) が急激に発展してきています。  生命地球科学に注目が集まった1つのきっかけは近年 の地球環境変動です。例えば地球温暖化は、人間が産業 活動によって温室効果ガスである CO2を排出すること も一因でありますが、逆に大気中に CO2がなくなれば 全地球は凍結してしまいます。また、他の温室効果ガス であるメタンや窒素酸化物は土壌中でバクテリアなどが 有機物を分解する際などにも発生しており、こうした生 物の活動がどれだけ地球史における温暖化に影響を与え るのかはよくわかっていません。そこで、生命活動が地 球に与える影響を正しく評価した上で、今後、人間がな さねばならないことを明らかにしていくことが求められ るようになったのです。  生命の起源を探ることも、生命地球科学の重要なテー マです。その手がかりの1つが、地球上の極限環境の生 物の研究です。1970 年代末に深海の熱水噴出孔(注1) 豊富な生物群の存在が確認されたほか、ボーリング調査 により地下何キロメートルもの深さで活動する古細菌 (アーキア)という生物も発見されています。これらの 生物は、太陽光はもちろん、酸素もなく、高温高圧の環 境でも生きられるのです。こうした生物が存在すること は、地球とは異なる環境を持つ惑星にも生命が存在でき る可能性を示しています。近年、太陽系外惑星(太陽系 の外にある惑星)が多数見つかっていますが、その中に 生命が存在する可能性のある惑星が発見されることは十 分あります。  こうした背景の中で、宇宙における生命の普遍性や起 源を研究する分野として「アストロバイオロジー」とい う学問分野が急速に伸びてきました。地球における極限 環境生物に関する研究と、アストロバイオロジーによる 地球外生命の研究が密接に関わりながら、生命の起源を 巡る研究が盛んに行われています。  隕石に含まれる水やアミノ酸が  地球に海や生命を生み出した可能性も  生命の誕生にアミノ酸が重要な役割を持っていたこと はほぼ間違いありませんが、そのアミノ酸の起源は未だ に明らかになっていません。  地球上の生物が用いるアミノ酸はグリシンやアラニン、 グルタミン酸など 20 種類の、そのうちL型(注2) のみです。 アミノ酸を人工的に合成するとL型とD型が同量生成さ れるのですが、なぜ生体では 20 種類の、それもL型だ けを使っているのかは解明されていません。  ミラー・ユーリーの実験(注3) などで原始大気(地球誕

地球と生命の相互作用を解明し

生命を育む水や生命をつくる有機物の起源を探る

生命地球

科学

(注1)熱水噴出孔…地熱で熱せられた水が噴出する場所。深海底を含むプレートの境界など、火山活動が活発な地域で見られる。 (注2)L型…有機物など三次元構造をとる物質のうち、構成する原子が全く等しいにもかかわらず、右手と左手のように空間的に鏡像の関係にあり、重 ね合わせることができないものを光学異性体といい、L型、D型に分類される。  地球上の生命は、地球の環境から一方的に影響を受けるだけではない。大気中の酸素 を生命が作り出したように、地球の環境や進化にも生命は大きく関与している。生命地 球科学(地球生命科学)は、こうした生命と地球との相互関係を明らかすることを目的 にしている。また、最近では、地球の極限環境に住む生物の発見と太陽系外惑星の発見 なども結びつき、宇宙・太陽系における生命の起源を探る研究も盛んに行われるように なっている。特に隕石からもたらされる情報は、そこに大きなヒントを与えてくれる。

九州大学大学院理学研究院 地球惑星科学部門

有機宇宙地球化学研究室

奈良岡 浩 教授

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生直後の大気)に含まれる物質からアミノ酸 が合成できる可能性が示された一方で、宇宙 からもたらされた可能性も指摘されています。  例えば、電波望遠鏡によって、宇宙に広が る分子雲(注4) の中には、CO、HCN(シアン 化水素)、H2O、アンモニア、ホルムアルデ ヒドなどの分子が数多く漂っていることが明 らかになっています。それら比較的存在量の 多い分子を熱するとアミノ酸ができます。つ まり、生命は宇宙空間で最も使いやすい材料 を使って構成されていると言うこともできる のです。  また、1969 年にオーストラリアに飛来したマーチソ ン隕石<図表>や南極大陸から採集された隕石からは、 現在までに 70 種類以上のアミノ酸の元となる有機物が 検出されています。地球上の生物が用いる 20 種類のう ち 10 種類ほどが含まれており、しかもD型に比べてL 型が過剰に含まれていました。分析の結果、それらは地 球で混入したものではなく、地球外で生成されたもので あることがわかりました。つまり、地球上の生体で用い られているアミノ酸は、宇宙から隕石によってもたらさ れた可能性があるのです。  生物が生きていく上で不可欠な水に関しても、地球上 の水あるいは海がどのように生成してきたのか未だに解 明されていません。しかし、隕石の中には鉱物の成分と して水分が約 10%、有機物が約2%の割合で入ってい るものもあります。中には、隕石を構成する鉱物の結晶 の中に液体の水が閉じ込められていることもあります。 これら炭素質隕石が大量に地球に降ってきたとすれば、 地球上の海水や有機物の量を説明できる可能性もありま す。宇宙から生命(の部品となるアミノ酸)がやってき たとしても少しも不思議ではないのです。  「はやぶさ2」のミッションに向けて  より少ない量で精密分析ができる技術を開発  私たちは、隕石や深海底などに有機物がどのような姿 で存在しているか、どのような特徴を有しているのかを、 精密化学分析の手法を用いて調べています。宇宙由来の 有機物を分析するという立場から「はやぶさ」プロジェ クトにもかかわり、イトカワの微粒子も分析しましたが、 残念ながら有機物は今のところ見つかっていません。  有機物の分析技術の開発も進めています。現在は数ミ リグラムの試料で分析可能ですが、その 1,000 分の1の 数マイクログラムで分析できるようになれば、隕石のご く微量な一部を調べるだけで、アミノ酸の有無や構造が 解析できるようになり、宇宙でのアミノ酸の生成メカニ ズムをより詳細に把握できるようになるからです。この 技術開発は、水や有機物を多く含んだ小惑星の探査を目 的とした「はやぶさ2」プロジェクトでも役に立ちます。 太陽系のどこにどんなアミノ酸や水があるのかがわかれ ば生命の起源にさらに迫ることができますし、将来人類 がより遠い惑星に探査に出かけるときの「オアシス」と して活用することもできます。  地球と生命の相互作用に迫る研究としては、メタンハ イドレートに関する研究を進めています。メタンハイド レートはメタンと水分子が結合してできた氷状の固体物 質であり、新しいエネルギーとして注目を浴びています が、メタンガスは非常に温室効果が高く、地層中のメタ ンハイドレートが崩れると一気に地球温暖化が進む可能 性もあります。そのため、メタン生成菌がどのような環 境でメタンガス、メタンハイドレートを生成するのかを 探究するとともに、地球環境とメタン生成菌との関係に ついても掘り下げています。  生命は地球や惑星と深く関わっています。その進化を 辿るには生物学だけでなく、宇宙から海底、地下までを カバーする地球惑星科学の幅広い知見が必要です。私た ちの研究は、さまざまな場所でサンプルを採取して分析 することが基本で、長期間のフィールドワークを行うこ ともありますが、だからこそ、地球のいろいろな姿を目 の当たりにすることができ、生命についての豊かなイ メージを持つことができるのだと思います。 <図表>マーチソン隕石(左)と、その薄片(右) ※ 隕石の内部にはOH基をもった結晶(含水鉱物)が含まれていることがある。隕石に よっては、液体の水 H2O として結晶構造の中に閉じ込められている場合もある。隕 石は熱伝導率が悪いため、大気圏に突入して表面が燃えても、内部は宇宙温度(数ケ ルビン)を保っており、水も蒸発しないのである。 (提供:奈良岡教授)

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(前列左より石崎准教授、清水学部長、大藤教授) (注1)露頭…野外において、地層や岩石が表土に覆われずに露出している場所。 (注2)ルートマップ…岩石や地層を調査した場所を、地形図に記入したもの。地域全体の地殻の動きを考える際の重要な資料になる。 (注3)柱状図…地層を構成する岩石などを詳細にスケッチしたもの。粒子の大きさや色、状態、性質などを、地層の重なりの順に記入していく。  地域的、時間的な広がりのなかで  自然界の複雑なシステムを読み解く  一般的に、ある学問的なテーマを追究するために、対 象とする事象が起きている現場で行う調査活動をフィー ルドワークというが、地質学の分野では特にこれを「巡 検」と呼び、教育の大きな柱として位置づけている。か つては、どの大学でも大規模な巡検を実施していたが、 現在では大学教員の人員不足や、安全管理の徹底が求め られるようになったことなどから、規模は縮小傾向にあ る。そんな中でも富山大学は巡検に力を入れており、地 質学関連分野の全教員で指導にあたっている。  「地質学は岩石や地層などから地球の構成物質や形成 の歴史を読み解く学問ですが、地球は人間の一生に比べ て極めて長いスケールで、かつ複雑なシステムで変化す るため、その歴史を読み解くことは容易ではありません。  そこで、地質学では巡検を非常に重視してきました。 巡検では、岩石や地層を詳細に観察しますが、その観察 によって、背後にある複雑な動きを読み解くことができ るからです」と、大藤茂教授は巡検の意義を語る。  考えてみれば、自然科学はすべて自然の観察からス タートしている。観察から新たな発見がもたらされ、そ こから得られたさまざまな事実から、その現象の仕組み が明らかにされてきた。自然現象は複雑なシステムで動 いており、現象を単純な要素に分解して考えると同時に、 複雑なものを複雑なものとして捉えることも必要になる。 自然科学はその両輪で発展してきたのである。

実際の自然界で見られる岩石や地層を観察し

自然に対する観察眼と洞察力を養う巡検

授業・

ゼミ紹介

 岩石や地層には、地球の進化の歴史を読み解く手がかりとなる膨大な情 報が含まれている。岩石の性質や地層の重なり具合から、その地点で地殻 がどのように活動してきたのかが明らかになり、さまざまな地域の状況を 総合することで、地球の動きが見えてくるからだ。巡検は、そうした情報 を読み取るためのトレーニングであり、地球惑星科学の教育では特に重視 されている。ここでは、富山大学理学部地球科学科の巡検を紹介する。

富山大学理学部地球科学科 「巡検」

清水 正明 学部長 大藤 茂 教授 石崎 泰男 准教授

 地質学の研究には、観察した岩石や地層の特徴を単純 化して理解し、それを再び総合することで、地球内部の 変化という複雑なシステムを考察する能力が必要である。 こうした能力を巡検の中で培うのである。  1~3年次にかけて巡検が開講され  3年次には3週間の合宿を伴う実習も  富山大学の巡検は、1〜3年次まで毎年設定されてい る。1年次の「野外実習Ⅰ」は、地球科学科1年次の必 修科目で、富山県内の特徴的な露頭(注1) を日帰りで巡る。 高校で地学を履修していない学生に地球惑星科学の調査 法や考え方を理解させる導入科目であると同時に、学科 のオリエンテーションも兼ねている。  2年次の「野外実習Ⅱ」は、地質学を専攻することを 希望する学生を主な対象とする本格的な巡検で、日帰り の「山田川巡検」(富山県内)と、2泊3日の「能登半 島巡検」からなる。プロの調査法を現地で学ぶことが目 的であり、地層の積み重ねを観察してルートマップ(注2) や柱状図(注3) を作成し、日本海誕生の経緯やその前後の 環境変化を読み取っていく。  3年次には、「地質調査法実習」と「地質学巡検」が 開講されており、どちらも地質学を専攻する学生には必 修の授業である。  「地質調査法実習」では、富山県内の山の中で3週間 ほど合宿し、地質調査を行う。  「調査地周辺にどんな地層がどのように分布している かを表現する地質図を作成して、富山の大地がどう形成

参照

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