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2002年企業法によるイギリス合併規制の変革

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2002年企業法によるイギリス合併規制の変革

著者 渡辺 昭成

雑誌名 静岡大学法政研究

巻 8

号 3‑4

ページ 292‑246

発行年 2004‑02‑29

出版者 静岡大学人文学部

URL http://doi.org/10.14945/00008845

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2002年 企業法によるイギリス合併規制の変革

2002年企業法によるイギ リス合併規制の変革

渡 辺 昭 成

本稿 の目的

1 1973年公正取引法 に基づ く合併規制

H 2002年企業法 による合併規制の改革

 合併規制 における2002年企業法 とEU法の整合性 結語

本稿 の 目的

本稿 は、2002年企業法の制定 による、イギ リス合併規制の変革 を検討 し、

旧法 との差異、EU法との整合性 を明 らかにすることを目的 とする。

イギ リス競争法制 は、かつて、1976年制限的取引慣行法によるカルテル規 制、1976年再販売価格法 による再販売価格維持行為 に対する規制、1973年 正取引法 による合併規制、1973年公正取引法による市場集中規制、1980年競 争法 による反競争的慣行 に対する規制か ら成 り立 っていた。1980年競争法 を 除 き、 これ らの法律 においては、競争への影響以外の視点 を含む「公共の利 益」がその規制基準 とされていた。 そこでは、一定の行為基準、構造基準 に 該当するものは原則 として違法であると推定 され、それが「公共の利益」に 合致する場合 にのみ、違法性がない もの と判断された。

しか し、 この「公共の利益」 を規制基準 とする競争法制 は、競争への影響 を規制基準 とす るEU法と異なるために、イギ リス企業およびイギ リスにおい て事業 を展開する外国企業 にとって、いわばダブルスタンダー ドとも言える 状態であ り、かつ、その規制基準がわか りに くい ものであった ことか ら改革 の必要性が提唱 されてきた。 また、 この競争法制 には他 に様々な不備 もあっ

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法政研究8巻304号 (2oo4年)

た。そのひ とつ として、「公共の利益」に反する行為、企業結合 を規制す る機 関のひ とつである公正取引庁の調査権限が制限 されてお り、 また、違法 とさ れ る行為の定義 について も欠陥が存在 した。そのため、企業の反競争的行為 を適切 に規制することが不可能であつた。

また、それ以上 に法改革の必要性が生 じたのは、国内法制 とEU法との整合 性が求 め られたためである。EUにお ける市場統合、EU域内での国境 を越 え た通商 を促進す るために、EU加盟国の競争当局の協力関係 を促進す ることが 求 められ、各国競争法の規制基準のEU法への統一化、手続の統一化が必要 と

された。そのためEU加盟各国は、EU法に準 えた競争法 を制定 して きている。

イギ リスにおいて も、同様であ り、 まず、1973年制限的取引慣行法、1973 年再販売価格法 を廃止 し、それ まで これ らの法律 の よ り規制 されてきたカル テル・ 再販売価格維持行為・ 市場支配的地位の濫用に該 当す る行為 に対す る 規制 を行 うもの として、1998年競争法が制定 された。そ こで はEU法81条1項

と同様 に、競争 を阻害、制限ない し歪曲す る協定が禁止 され、その競争への 影響が「知覚可能 な」場合 にのみ禁止 され る との解釈が明 らか になっている。

その後、イギ リス企業結合規制 その他 について も変革の必要性が検討 され た。2001年 6月 に公表 された Product市ity in the UK:Enterprise and

Productivity Challenge"と 題 された政府声明をはじめ とし、その前後 におい て様々な白書が公表 された1。 この流れ を受 け、本稿 の検討の対象である2002 年企業法が制定 された。

この2002年企業法 は、規制機関である公正取引庁の改組、競争控訴審判所 の創設、消費者保護法制の変革、破産法の変革な ど、様々な内容 を有す るも のである。本稿では、 この2002年企業法 による合併規制 の変革 について検討 を行 う。 まず、1973年公正取引法 に基づ く合併規制 における規制機関、規制 手続、規制基準 について概観す る。 そして、それ をもとに、2002年企業法 に よる合併規制の内容 について検討 し、1973年法 との差異、EU法との整合性 に ついて検討す ることとす る。ただ し、新聞社の合併、水道事業 を営む企業の 合併 については、2002年企業法 において、他の合併 と異なる審査枠組 みが設

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定 されているため、 ここでは検討の対象外 とする。

なお、2002年企業法ではその他、1998年競争法違反 に対する刑事罰の強化、

深刻な同法違反行為 を行 った企業の取締役 に対する罷免権限の裁判所への付 与など、重要な法改正を含んでいるが、 これらについてはEU委員会規則1/

2003によるEU加盟各国へのEU法81082条適用権限の委譲、81条3項に基づ く適用免除の付与制度の廃止を含め、別稿を予定 している2。

1 1973年公正取 引法 に基づ く合併規制

3

1.´

合併手続 と規制機関

イギ リスにおいて合併4は、合併 と同様の効果 を持つ株式保有 と併せて、

1973年公正取引法(以下、FTA)によって規制されていた。 このFTAのもと では、一定のシェア、規模に該当する合併が違法であるか否かは、有効競争 の維持・促進など5つ の事項 を考慮 し、それらを比較衡量 した上で、「公共の 利益」に反するか否かにより判断されていた。

以下では、このFTAに基づ く合併規制を担ってきた機関の各役割を見てい くことにする。

(1)公 正取引庁

イギ リスにおいて合併規制を担ってきたのは、法律上は国務大臣(現在は、

通商産業大臣。以下大臣

)、

競争委員会(以下、CC)であった。大臣が、当該 合併が法に抵触するか否かの判断を行い、それが是である場合│こは、CCに の調査の付託を付託 し、CCの報告を受けて、当該合併が違法であるか否かの 最終的な判断を下す とされていた。 しかし、実際は、公正取引庁長官(以下、

長官)およびOFT内に設置されたMerger Panelが 合併審査において重要な 役割を果たしてきた。Merger Panelは 、公正取引法に規定されていない非公 式な存在であったが、当該合併に関し、付託がなされるべきか否かの判断を 行 う機台ヒを果たしていた。

FTA上、合併当事者は事前に競争当局に合併 を通知することは義務付けら れていなかった。しかし、多 くの場合、合併は事前にOFTに通知がなされた。

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また、Confidential Guidanceと 呼 ばれ、計画中の合併が公知の事実 となる前 に、当事者がOFTを通 じて、当該合併が審査 の対象 となるか否かにつ き、大 臣の見解 を求 める制度が存在 した。また、Confidential Guidance以 外 にも、

当事者 は非公式な形でOFTによる見解 を求 めることが可能であつた。

これ らの事前通知、および、 自らの調査 またはその他の方法 により合併の 存在 を認知 した場合、OFTは当事者、利害関係人か ら情報 を収集 し、その情 報 をもとに、当該合併 についての評価 を作成 し、大臣に提 出 していた。 その 際、OFTが、当該合併が重大 な競争上の問題お よびその他公共の利益 に関す る問題 を生ず ると判断 した場合 には、通常、OFTおよび他の省庁の職員 をメ ンバー とし、競 争 政 策 担 当長 官5ない しその代 理 人 を議 長 とす るMerger Panelが 召集 された。このPanelは 各 メンバー間の意見の一致 を求 めるもので

はな く、当該合併 における問題点 を探求 し、各メンバーの意見 を明 らかにす る場である。このPanelが 開催 された後、長官 はこの討議の内容 を受 け、大臣 にかわ り当該合併の付託 を勧告するか否か、 また何 らかの改善措置 により付 託 を避 けることが可能か否か、の判断 を行 つてきた。

12)国務 大 臣 に よる付 託

大臣は、長官か らの勧告 を受 け、裁量 により付託 を行 う案件 を選択 していた。

ただし、長官か らの勧告 には当該合併 についての調査 をCCに付託す るか否か の判断 も付 されてお り、大臣は例外的な場合 を除いて、それに従っていた。

また、付託 に代わ る措置 として、当事者か ら、公共の利益 に反する状態 を 修正ないし阻止す るのに適切だ と思われ る措置 を当事者か ら受 け入れること が可能であつた。 この改善措置 には、二つの ものがある。一つは、事業活動 全体 ない しその一部の譲渡 (構造的改善措置)であ り、 もう一方 は将来の事 業活動方法 についての措置 (行為的改善措置)である。前者 において典型的 なのは、水平合併 により重複することとなる事業 を、競争への影響 を解消す るために、売却することである。 この構造的改善措置 は一般 に、後者 よりも 競争法の問題 を改善す るのに適切であるとされ る。後者 は、合併後 の企業が 合併後 に行 うことが可能 となる反競争的行為 を行わない ことな どである。

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この交渉 は、実際には長官によって行われていた。1989年 まで この交渉に 関する定 めはなかったが、実際 には数多 く行われてきた。1989年会社法 によ り、本制度 は正式 に導入 され、実際 に、合併後の事業の一部譲渡などの措置 が当事者 と長官 との間での交渉で決定 され、付託が見送 られてきた。ただ し、

その結果 として、合併企業が独立の存在であることを中止することとなる当 事者間の取 り決め、ない し、取引についての重要事実が、大臣ないし長官に 報告 されていない場合、ない し、公表 されていない場合 には、当該措置 は認 め られない (75G条 5項

)。

また、当該措置が実効 されなかった場合 には、大 臣はそれ を改善 ない し阻止するのに必要な命令 を発することが可能であった

(75K条

)。

(3)競争委 員会 に よる調査

CCは、大臣か らの付託 を受 け、当該合併が審査対象 となるか否か、「公共の 利益」 に反す るか否かの調査 を行い、大臣に報告書 を提出 した。その際、当 該合併が「公共の利益」 に反すると判断 した場合 には、当該合併の効果 を明 らかにし、 その効果 を修正 ない し防止するための方策 を併せて報告 しなけれ ばならなかった。

当該合併が「公共の利益」に反するか否かについて、CCは84条に列記 され た各「公共の利益」に関する考慮事項 を基準 として、当該合併の違法性 を判断 した。その際、CCは、後述する84条に規定 されている各基準 につき、競争への 影響 とともに、その他社会的な考慮要因について、比較衡量を行 っていた。

14)報告書 に基 づ く国務 大 臣の判 断

大臣は、CCから提出された報告書 をもとに、当該合併が審査対象 とな り、か つ、「公共の利益」に反するか否かの判断を行 った。この報告書は、議会に提出 され、一般 にも公表 されたが、大臣はこの報告書の結論 に従 う必要はなかった。

CCは、当該合併が公共の利益 に反す るとの結論 を下 した場合、その効果 を 打 ち消すための改善措置 を同時 に提案す るのが通常であった。長官 もまた、

大臣に対 して、それを支持する旨の、ない し、別の改善措置の勧告を行 った。

大臣は、 これ らの勧告 を受 けて、通常、報告書 を公表する際に、あわせて、

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適切 な改善措置 を公表 した。ただ し、通常、大臣はその勧告 に従 うが、 それ は義務ではなかった。 また、当該改善措置 について、合併当事者 との協議が 整わない場合、大臣は、0合併 の中止、に)株式お よび株式 に基づ く利益の処 分、ない し、議決権 の行使 の制限、lpl資産 の譲渡 による企業ない しグループ の分割、ないし、子会社の分離、0合併後の企業 のある一定の行為の禁止、

を内容 とする命令 を発す ることが可能であった。 これ ら当事者 と合意 した改 善措置、命令 はすべて公表 された。

2.合併 規 制 にお ける「公共 の利益 」

CCは、大臣に提出す る報告書 において、当該合併が審査の対象 となるか否 か、および、それが是である場合 には、84条に列挙 されている事項 を考慮す ることにより、当該合併が「公共の利益」 に反 し、違法であるか否かの判断 を行わなければならなかった。大臣 も、付託 を行 うか否かの決断において、

同様 の判断 を行わなければな らなか った。

84条は、「公共の利益」に関する考慮事項 として、5つの事項 を挙 げている。

それは、

(a)イ

ギ リス国内において商品お よびサー ビスを供給す る者の間の有 効競争の維持・促進すること、(b)国内において、商品およびサー ビスに関 し、

その価格・ 品質・ 品揃 えに関 し、消費者・ 購入者・ その他の利用者の利益 を 促進す ること、(C)競争 を通 じ、 コス トの削減、新技術・ 新製品の開発・ 利用 を促進 し、既存の市場への新規競争者の参入 を容易 にすること、(d)国内の産 業お よび雇用のバ ランスの とれた分布 を維持・ 促進す ること、

(e)イ

ギ リス国 内の商品の生産者、商品お よびサー ビスの供給者 について、イギ リス国外 の 市場 における競争活動 を維持・ 促進す ること、である。

合併の審査 にあた り、各機関 は これ らの事項 を考慮 して、当該合併 の違法 性 を判断 していた。各機関の「公共 の利益」の考 え方 は一様 ではな く、各機 関がそれぞれの考 え方6を公表 している。ここでは、合併の違法性 につ き、最 終的な判断 を下す大 臣の「公共の利益」の考 え方7を取 り上 げることとす る。

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2002年 企業法によるイギ リス合併規制の変革

(1)公 共の利益 に関する考慮事項 における優先順位

各大臣は、排他的にではないが、主に、当該合併の競争への効果を考慮 し て、付託を行 うか否かの判断を行 うことを繰 り返 し言明してきた。これによ り、競争への影響以外の要素を考慮することによって付託が行われる可能性 が低 まり、付託が行われるか否かの予測可能性が高まる。また、競争への影 響 を評価する際に、国際的な要素を考慮することも明らかにした。

(2)企 業の判断への信頼

「法に則った商的取引に対する、政府当局の介入は、最低限にとどめるべ きである。なぜなら、多 くの場合、競争が行われている市場における民間の 政策決定者による自由な商業上の決定は、経済全体に対 して、最 も望ましい 結果を生ずるからである。」この言葉に端的に表れているように、政府は、市 場における私人による自由な競争が最 も望ましい結果を生ずる、 という信念 を持っていた。つまり、自由市場における競争が効率性、生産性などを生じ、

消費者が必要 とする商品・ サービスを最 も低価で提供することになる、 とい う自由競争への信頼 を表 した。

(3)介 入 を行 うべ き例外的な場合

政府が買収を阻止する必要があるのは、介入をしないことによる利点が、

合併が行われることにより、妨げられる場合である。 また、民間の政策決定 者の利益が公共の利益 と衝突する場合にも、介入を行 うことが必要 となる。

後者の典型的な例 として、合併により合併後の企業に過度の市場支配力が 与えられることから、市場の崩壊、効率性の欠如、消費者の搾取などにより、

その企業の所有者に多大な利益が生 じ、公共の利益に損害を与える可能性が ある場合である。そのために、CCへの調査の付託を行 うか否かの判断を行 う 際に、競争への影響を重要な考慮要素 としていた。

141競争政 策担 当大 臣の 「公共 の利 益 」 に関す る考 え方

大臣は、 まず、基本方針 として、 自由な企業行動 は経済効率性 を生 じ、消 費者 にもその恩恵が もた らす としていた。政府の判断ではな く、市場 におけ る私人 による自由な競争 こそが望 ましい市場成果、経済成果 をもた らす とし

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ていた。 そのため、合併 について も、基本的には容認 し、政府が介入す るの は、例外的な場合であるとしていた。 また、合併後の企業の効率性 を判断す るのは、株主 を初め とす る利害関係者であ り、政府 はその判断に介入 しない

としている。政府 は、基本的に、合併 を容認す る姿勢であつた。

その他、競争への影響以外の公共の利益 に関す る考慮事項 について、大臣 は、それが問題 となるのはごく例外的な場合であるとしていた。競争への影 響が重大 な場合 には、その他 の考慮事項 はほ とん ど、それ を打ち消 しうるも の とはな らない。84条1項

(C)、 (d)に

ついては、当該合併の競争への影響が軽 微である場合 にそれを合法 と判断す る場合 の理 由の一つ として、 または、逆 に、競争への影響が重大であ り、それが公共の利益 に反するとす る場合の付 加的な理 由の一つ とされる傾向にある。 また、(b)消費者の利益 については、

それが言及 された例 は見 うけられなかった。

3.小

イギ リス合併規制 において、その役割 を担 って きたのは、OFTおよび長官、

大臣、CCであった。これ らの機関 は、それぞれ当該合併 の効果 につ き、「公共 の利益」 に反するか否かの判断を行 つてきた。 この「公共の利益」 に関する 考慮事項 として、5つの事項 が挙 げられ、 その中で も有効競争の維持・ 促進 に焦点 をあて、違法性が判断 されて きた。 しか しなが ら、その他の事項 に き副次的ではあるけれ ども、考慮の対象 とされて きた。

また、合併規制 の変革の必要性 を報告 した2001年7月White Paper8で は、競争 に対す る影響 を当該合併の違法性 を判断す る上での基準 とす ること が提言 されたが、同時 に、当該合併が一般消費者 を含む消費者の利益 をもた らす場合 には、当該合併 を合法 とす る、ないし、 もしそうではない場合 に と る措置 よりも厳格ではない処置 により当該合併 を認 める旨も併せて提言 され ている。

合併規制 を含 め、イギ リス競争法制 においては、「公共 の利益」を違法性 の 判断基準 とす る、ない しは競争 に悪影響 を及ぼす行為・ 市場構造・ 企業結合

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2002年企業法 によるイギ リス合併規制の変革

であってもそれが「公共の利益」に合致する場合には、その違法性を阻却す る、 という考え方が根付いているように思われる。 この「公共の利益」の内 容および考え方については、年々変化が見 られ、かつ、法制度 も変更された が、基本的な考え方は今後 も維持される可能性がある。

 2002年企業 法 にお ける企業結合規制

2002年企業法 は、前述のように、多様 な内容 を含む ものである。その中で、

本章では2002年企業法 による合併規制 に焦点 を当てる。

1.合併規 制 の概 要

2002年企業法 により、合併規制 の規制主体、規制基準が大 き く変化 した。

これ まで、合併規制 において大 きな役割 を果た してきたのは、法文上、大 臣お よびCCであった。しか し、新たな合併規制 において中心的な役割 を果た すのは、法文上、実務上 ともOFTとCCである。

OFTは、 これ まで、長官 を補助する事務的な機関であ り、法的な位置づけ がなされていなかった。しか し、2002年企業法 によ り、2003年 4月 1日 より、

合併状態 に関する情報 を収集・検討す る期間 として法的な位置づけがなされ、

当該合併が一定の数値基準 に該当 し、かつ、イギ リス国内市場 の競争 を実質 的に減殺する と予想する際 には、当該合併のさらなる調査 をCCに付託す る義 務 を負 うことになった。また、OFTは、国務大臣が介入す る例外的な場合9に は、当該大臣に助言 を行 うことも義務付 けられた。さらに、OFTは、調査 を CCに付託 した場合 には、CCにその所有す る情報 をすべて提供す る義務 を負 うこととなった。その他、OFTは、調査 に付託 にかわ り、当事者 との交渉 に よ り合併 による反競争的効果 を打ち消すための改善措置 を引 き出す ことも可 能である。

CCは、競争問題 の専門家か ら構成 され る独立機関である。CCはOFTに

よって調査 を付託 された合併 につき、当該合併が調査 を行 うに値す るもので

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あるか否か、是である場合 には当該合併が競争の減殺 を現 に生 じさせている、

ないし、それが予期 され るか否かを判断 し、報告書 を発表す る。 この報告書 において当該合併が法 に違反するものであると結論づけた際には、当該反競 争的効果 を改善、軽減、阻害するのに合理的かつ実際的であると思われ る措 置 を当事者 と交渉す るか、 または命令 を発す る。

以下では、この審査 において、OFT、CCにおいて とられ る手続 を見たあ と、

OFT、 CCの審査方法 を見 てい くことにす る。

2.合併審査手続

(1)公正取引庁

① 公正取引庁への通知

2002年企業法 において、合併当事者 は、大臣の同意 を要す る新聞社の合併 を除 き、当該合併 をOFTに事前 に通知す る義務 を負 っていない。そのため、

OFTは、自ら合併 に関す る情報 をメディアや第二者 を通 じて収集す る。しか し、多 くの場合、合併 に関す る情報が当事者か らの任意の通知 によって得 る。

なぜな ら当事者 は、通知 をなす ことによ り、その反競争的効果 を明 らかにす ることが可能であ り、 また、合併 を実行 した後 に当該合併の取消が命 じられ る危険性 を避 けることが可能 なためである。当事者が合併 を事前 に通知する 手段 として、次の ものがある。

第一 は、informal advice10と 言われ るものである。 これは、当事者が まだ 公表 していない合併 につ き、非公式 にOFTの見解 を求 めるものである。これ は通常、一回限 り口頭で行われ る。 この見解 は、合併審査で要求 されている 第二者の意見 を考慮す るものではな く、当事者の通知す る情報の真偽 を検証 するもので もないため、OFTを拘束 しない。このOFTの暫定的な見解 を求 め るためには、当事者 は、あ らか じめ、予定 している取引、当該合併 により影 響が発生す ると思われ る市場 の状態 につ きOFTに情報 を提供す る必要が あ る。第二 は、confidential guidancellと 言われ るものである。これは、当事者 が、当該合併 を公表す る前 に、OFTが当該合併 の調査 をCCに付託す るか否か

10  (283)

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の見解 を求めるものである。この通知 は、informal guidanceと 異な り、当事 者が調査の付託の代わ りに とり得 る措置 を検討するための ものである。 この guidanceを 求めるためには、当事者 は後 に当該合併 を公表する際に明 らかに す る内容 と同様 の ものをOFTに提 出す る必要がある。OFTはその際、関係政 府機関 に見解 を求めることは可能であるが、第二者か ら見解 を求 めることが で きない。したがって、このguidanceに より出される見解 も、OFTを拘束 し ない。しか し、OFTは、このguidanceに 対 し、公表 された合併 と同様 の扱い を行 い、その評価 を当事者 に与 える。第二 は、pre―notification discussion12 と言われるものである。 これは、当事者が当該合併 を公表する前 に、OFTに

当該合併 において必要 とされ る情報 を提供 し、話 し合いを持つ ものである。

これ ら3つの事前通知 システムが非公式 な ものであるのに対 し、第 四 は statutory voluntary pre一 notificationと言われ、2002年企業法101条により制 定 された規則

13に

基づ くものである。この手続 に基づ き、当事者が合併 をOFT

に通知 した場合、OFTは通常20日以内

14に

当該合併 に関 し、CCに調査 を付託 す るか否かの判断 を下 さなければな らない。 この20日間に付託が行われない 場合、当該合併 は自動的 に問題がない もの と判断 され る。 この手続 は、すで に公表 された合併 についてのみ可能 な ものであ り、すでに完了 した合併、未 だ公表 されていない合併 についてはそれ を行 うことがで きない。その際、当 事者 は、当該取引の詳細、関係する市場 についての詳細 な情報 をOFTに提出 す る必要があ り、同時 にOFTに一定の審査料 を支払 う必要がある。

 OF丁における調査の付託の決定

OFTは、当事者か らの通知お よび第二者か らの情報 をもとに、当該合併 に 関す る情報 を通知す る。当事者か ら通知 された情報のみでは、当該合併 の審 査 に必要な情報が収集不可能である場合 には、当事者か らさらなる情報の提 供 を求める。その際、すでに完了 した合併15、statutory voluntary pre―

notifi‐

cationが行われた ものについて、OFTの審査期間 は限定 されている。しか し、

さらなる情報 を当事者が提出 しない場合 には、その期間 を法定期限 まで延長 するか、またはその届出自体 を要件 を満た さない もの として拒絶する。また、

(13)

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当該合併が公表 されている場合 には、広 く第二者か ら情報の提供 を求 める。

このようにして得た情報 を もとに、OFTは当該合併がCCに調査 を付託す ることが適当であるか否かを判断す る。合併審査 は、OFT内の合併担当部局

により行われ る。 この部局が当該合併 は競争上の問題 を生 じない と判断 した 場合 には、当該内容 を記 したPaperをOFT内に回覧 させ る。 その際、部局の 判断に異論 を持 つ者 は、当該合併 を審査す る会合の開催 を要求す る。 この要 求が行われない場合、当該部局の判断は、OFTの最終的な判断 とな り、すで に公表 されている合併 に関 しては、公表がなされ、その他の場合 には当事者 に通知がなされ る。

当該合併が競争上、複雑 または重要な問題 を生ず ると部局が判断す る場合 には、手続が異なる。 この判断がなされた場合、合併当事者 は部局 における 当該問題 を検証するissues meeting"へ の出席が求 められる。その際、当該合 併の担当官 は当事者 に issue letter"を 送付 し、当事者 に弁明の機会 を与 える ため、当該合併の中心的な議論およびその証拠 について当事者 に明 らかにす る。この issues meeting"に よ り、付託 を行 うか否かの判断を行 い、その内容 につ き、OFT内に回覧する。 この会議 による決定の後、さらなる会合が開催 され、最終的な決定がなされ る。 この決定内容 は、前述の もの と同様 に公表 される。

しか し、OFTは、当該合併が、CCに調査 を付託す るほどの重要性がない、

当該合併 に関係す る顧客 に当該合併 によ り生ず る利益が競争の減殺 とい う効 果 を上回る場合、 また は、当該合併が調査 の付託 を行 うに足 るまで には進展

していない場合 には、CCに調査の付託 を行わない。

③ 付託にかわる改善措置

OFTが、当該合併 を付託する決定 を行 った場合、合併当事者 は自ら、付託 にかわ るもの として違法 とされ る状態 を解消す るために改善措置 をOFTに

申し出ることが可能である。例 えば、 それ には当事者 の合併後 の特定の市場 におけるシェアが重大 な ものになる場合 には、その事業の一部 を放棄・ 分離 す る、将来の自らの行動 につ きOFTに対 し誓約す るといった措置がある。こ

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の ように、当事者が申し出る改善措置 には、構造的措置 と行動的措置の二種 類の ものがある。前者の措置が合併 の反競争的効果 を解消するために望 まし いの もとされ る16。

OFTは、当該改善措置が反競争的効果 を打 ち消すための適切 な措置である と判断 した場合 にはその旨を、当該改善措置が不十分な ものである場合 には 当該合併 の調査 を付託す る旨を公表す る。その際、OFTは利害関係のある第 二者 に当該措置 についての意見 を求める機会 を設 ける。 これは通常15日間 と い う期限 を設 けて行われ、最初 に当事者が申し出た改善措置が変更 された場 合 には、 さらに7日間延長 され る。

④ CCへ の調査の付託に伴う禁止規定

OFTが当該合併の調査 をCCに付託 した場合、当該付託 を害す る行為、CC

の事実認定 を困難 にさせ る行為 はすべて禁止 され る。当該合併が完了 した も のではない場合 には、当事者の一方が、合併の対象である企業の株式 を取得 す ることは禁 じられる17。 また、当該合併が株式の取得 を伴わない場合、すで に完了 している場合 には、OFT、 CCは通常、当該取引を進展 させない こと、

当該事業 の統合 を進展 させないための措置お よび命令 を発す る18。

(a競争委 員会

OFTに よる当該合併 の調査の付託がなされた場合、CCは、付託の 日か ら24 週間以内にその報告書 を公表 しなければな らない19。 CCの義務 は、当該合併 が調査の対象 となるものであるか、当該調査の対象 となる合併がイギ リス国 内 また はその一部の市場 の競争 を実質的に減殺す る、ない し、それが予期 さ れ るか否かを調査、報告す ることである。

CCがこれ らにつ き、是であると判断 した場合、競争 を実質的に減殺す るこ とを改善、軽減、阻止す る措置 をとるべ きか否か、 またいかなる措置が とら れ るべ きかを判断す る。 この判断には、当該合併の中止 という選択肢 も含 ま れ る。 また、資産、株式 その他の利益の放棄、条件付 の合併の承認 といった 選択肢 もある。

(15)

法政研究 8巻3・ 4号 (2004年)

(3)通商産 業 大 臣

例外的 に、この合併審査手続 に大臣が介入す る場合がある。それは、「公共 の利益 に関する問題」( public interest issue")が 当該合併 に関 して生ず る 場合である。現在、 この「公共の利益 に関す る問題」は、「国家の安全」のみ が法律上定義 されている。 しか し、大臣は、その枠 を広 げ、他の事項 につい て も「公共の利益 に関する問題」として指定す る権限 を有す る(57条

)。

この 問題 は、競争およびその他の公共の利益 に関す る問題が考 えられ る20。 この

「国家の安全」には、「公衆の安全」が含 まれ るとされているが、 この「公衆 の安全」 とは、EUにお ける合併規制が規定 されている委員会規則ヽ4064/89 of 21st December21条 3項 (委員会規則1310/97 of 30th Jllne 1997に よ り修 )に規定 されている「公衆の安全」 と同様 の意味であるとされている。つ まり、当該市場の状況が、国家の安全 に欠 くことので きない利益 に反す る場 合および、武器・軍用品、その他戦争 に供 されるものの生産 に関係す る場合、

より「公衆の安全」 を広 く捉 えた場合 には、住民の健康の保護のために必要 不可欠 な利益 に関係する商品又 はサー ビスにつ き、国家への供給の安全 に関 係す る場合 に、大臣の介入 を認 めるものである。当該合併が、後 に述べ る「売 上高テス ト」「 シェアテス ト」に合致 してお らず、通常の審査手続では審査対 象 とな らない ものであって も、当該合併が「公共の利益 に関す る問題」 を生 ず る場合 には、介入す ることが認 め られている (59条

)。

この問題が生ず ると大臣が考 える場合、その旨をOFTに通知す る。その際、

OFTは通常の審査 を行 い、当該合併 に関 しCCに調査 を付託す るか否かの判 断 を行 い、 それ を大臣に通知す る。大臣はそれ を受 けて、それを自ら処理す る、CCに調査 を付託する、又 は、OFTに当事者 と交渉 して改善措置 を講 じる か否かの判断を行 う。その際、大臣は、競争 に関する問題 とともに、「公共の 利益 に関する問題」を考慮 し、「公共の利益 に関する問題」が当該合併 につい て重要な ものではない と判断 した場合 には、当該合併 に関する判断 は通常の 審査 に戻 されることになる。

(16)

2002年 企業法によるイギ リス合併規制の変革

3.合併 審 査基 準 (1)公正取 引庁

合併審査の対象 となる合併、審査基準 について、OFTはガイ ドライン21を 表 している。

ここでは、合併審査の対象 となる合併のシェア・ 売上高 による選別、合併 審査 における「競争の実質的減殺」の概念、および、その審査方法、当該合 併の調査 をCCに付託す るか否かのOFTの裁量な どについて、OFTの考 え方

を公表 している。

ここでは、このガイ ドラインに沿い、OFTの合併審査 における考 え方 を見 てい くこととする。

① 合併審査の対象 となる合併

合併審査の対象 となる合併は、23条24条に定義 されている。

第一に合併 とは、ある企業が一方の会社の大部分の株式 またはその重大な 部分を購入又は購入する目的を持つことに代表されるように、二以上の企業 が異なる存在であることを中止する又はそれを進行ないし完了するための方 策が存在することを言 う。 この「異なる存在であることを中止する」 とは、

複数の企業ないし企業の事業部門がひとつの企業に統合されること、および、

複数の企業が共通の所有 または支配のもとに置かれることを指す。

この「共通の支配」について、OFTは、∽相手方企業に対 して実質的な影 響を与えることが可能である場合、 )事実上の支配が可能である場合、171法

的な支配が可能である場合に分け、その際の考慮される事項 について述べて いる22。 まず、∽について、当事者間の全体的な関係を見る必要があるとして いる。その際、重要な考慮事項 として第一に株式保有率が25%を超 える場合 を挙げている。 この場合、当事者の一方が相手方企業の株式を25%以上保有 している場合には、推定ではあるが相手方企業の政策に実質的な影響を与え るものと考える。 また、株式保有比率が15%以上の場合であれば、当該株式 保有が実質的に相手方企業の政策決定に影響 を与 える可能性があるものと考

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法政研究 8巻304号 (2004年)

え、15%以下の場合であって も、稀 にではあるが精査が必要な事例が生ず る 場合 もあると考 える。 そして、その他の要因、例 えばその他の株式保有者、

近年の株式保有者の株主総会での動向、その他企業の政策決定 に実質的な影 響 を与 えうる特別 な規程等 について考慮す ることとしている。 また、その他 重要な考慮事項 として、相手方を取得する形 となる企業の、相手方会社への 取締役への派遣状況、 コンサルタン トサー ビスな ど当事者間で締結 され、会 社 の政策決定 に影響 を及 ぼ しうる契約 について も考慮要因 とす る としてい る。0について、それ を判断 しうる明確 な基準 はない としなが らも、当該業 界 に属す る企業の行動が専門化のア ドバイスによ り同一の もの となっている 場合 には、株式保有比率が50%以下である場合であつて も明白に相手方企業 の政策 を支配 している場合があるとしている23。

191に

ついて、その支配 は一者 によって行われ る場合のみな らず、ジ ョイン トベ ンチャーのように、複数の ものによって同時 に行われる場合 を含 む としている24。

これ らの事項 を考慮 した上で、当該企業行動が、「二以上の企業が異なる存 在であることを中止す る又 はそれを進行 ないし完了するための方策が存在 す る」とい う要件 に合致 した場合、次にOFTが考慮 しなければな らないのは、

当事者の売上高、 シェアである。 この要件 に合致 し、なおかつ、売上高又 は シェアのいずれかの基準 に合致する合併のみが、OFTの審査対象 となる。

この「売上高テス ト」は、合併 における被取得企業のイギ リス国内におけ る売上高が7000万ポン ドを超 えるか否かにより判断 され る。また、提携関係、

ジ ョイン トベ ンチャー といった共通の支配 に置かれない場合 には、当事者の いずれ もの売上高が7000万 ポン ドを超 えていることが必要 とされ る25。 この 売上高 は、合併がすでに完了 している場合 には、合併時の、合併が まだ完了

していない場合 には、CCへの調査の付託の日を基準 に算定 され る。

また、「 シェアテス ト」は、イギ リス全体又はイギ リス国内の重要な部分 に つ き、特定の種類の商品又 はサー ビスの取得又 は獲得 において、当事者の合 併後のシェアが25%以上 となることが必要 とされ る26。 合併 当事者 のいずれ かが、合併以前 にすでに25%以上の シェアを有 している場合 には、当該 シェ

(18)

2002年企業法によるイギリス合併規制の変革

アが合併後 に増加す ることが必要 とされ る。 この増加す るシェアについては 多寡 を問わないblこのシェアテス トにおいて、OFTは当該商品・ サー ビスに ついてシェアテス トが適切 な もの となることを目的 として、最 も狭 い合理的 な市場 をシェアの算定基準 となる市場 として画定す る。つ まりく合併審査の 基準 となる厳密な意味での市場 シェアを算定す るのではない。 その基準 とな るのは当事者の売上高のみではな く、売上量、生産・ 販売能力、従業員数等 を基準 とす る場合 もある27。 また、 この「イギ リス国内の重要な部分」につい て明確な定義 はない。 しか し、 その際、1973年公正取引法の もとでの合併審 査 と同様 に、当該地域 の市場 の規模、地域 の人 口、

社会的・政治的・経済的・

財政的・ 地理的重要性がそれ を決定す る要因になるとしている28。

② 市場の画定

      │

OFTは、当該合併が審査 の対象 となると判断 した場合、次 に、当該合併が イギ リス国内の市場 において商品又 はサー ビスの競争 を実質的に減殺す るか 又 はそれが予期 され るか否かの判断 を下す。CCは、当該合併が競争 を実質的 に減殺す るか又はそれが予期 され ることにつ きt重大 な問題が存在 している と信ずる合理的な理由がある場合 に、CCに調査 を付託す る。CCの調査 と異 な る点 は、OFTの判断が、当該合併 の調査 に関す る第一局面であるのに対 し、

CCの判断が最終 的な ものである点である。そのため、OFTにお ける判断基準 は、CCによるものよりも、その基準が低い もの となるとしている29。

ここでは、競争の減殺 を判断す る場であるOFTの市場 の画定の方法 につい て検討する。OFTは、競争の減殺 を判断する上で、合併 を水平・ 垂直・混合 型 に分 け、検討 を行 っている。それぞれの類型 における考慮事項 については、

後述する。

171代替 可能性

合併審査の基礎 となる市場 (以下、関連市場)は、製品市場 と地理的市場 により画定 される。 この市場 は、相互 に関連性 を持つ ものである。

製品市場 においては、需要 と供給 の代替性 について考慮することが必要で ある。商品又 はサー ビスの価格 の変動 によ り、需要者が当該商品・ サー ビス

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法政研究 8巻304号 (2004年)

を代替品に転換 しうるかく供給者があらたに代替品 を生産ない しす ることが 可能であ り、かつ、その意思があるか否か によ り、需要・ 供給 の側か らみた 市場が画定 され る。 この転換可能性 については、その転換が関連市場 にお け る競争 を拘束す るのに十分 なだけ短期間に行われ る必要がある。通常、 この 期間は一年であるとされ る30。

同様 の問題 は、地理的市場 の画定 について も当てはまる。当該商品・ サ‐

ビスの価格 の変動 により、顧客がその需要 を現在供給 を受 けている者の存在 す る地域の近隣か ら購入する意思が強 ければ強いほ ど、 また、供給者が現在 供給 を行 ってい る地域 の近隣 に供給す る意思が強 ければ強いほ ど、関連市場 は広い もの となる。OFTは、この地理的市場 は、イギ リス国内 よ りも狭い場 合 も、広い場合 もある としている31。

)SSN:Pテス ト

OFTは製品・地理的市場の画定において、拘束をされることはないとしな が らも、以前のOFT、 CC及EU委員会による同産業に関する決定を参照す ることとしている。そこで、OFTはEUと同様 にSSINPテス トを採用すると している。

SSNIPテス トとは、他のすべての製品・ サー ビスの販売条件 を一定 と仮定 した場合、仮定上の唯一の現在お よび将来の生産者 ないし売 り手であ り、価 格規制 を受 けていない利潤極大企業が、当該製品・ 製品群 (当該地域)に

いて「小幅ではあるが有意であ り、かつ、一時的な ものではない (small but significant and non‐ transitory)」 価格 の引 き上 げを行 って、不U益を得 ること がで きるような製品・ サー ビスを構成す る製品・ サー ビスの集合および地域

を、それぞれ製品市場 (地理的市場)とみなす ものである。当該合併 により 影響 を受 ける直近の製品ない し製品群 をスター トとし、当該価格 の上昇 によ り、合併企業が利益 を得 ると考 えられ るまで、製品市場が広が ることとなる。

その際、 この価格の上昇率 は、5%か10%の間であ り、状況 に応 じてそれ を変化 させ るとしている。 この分析 において、考慮 され る事項 として、次の 4つの ものが挙 げられている。(a)顧客、競争者、供給者か ら収集 した証拠、

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2002年企業法によるイギリス合併規制の変革       :

0)価格上の戦略および関連価格 の経緯 に関す る証拠、(C)商0サー ビスの転 換 に係 る仮定上及び現実の証拠、(d)転換可能性 に係 る生産余力。

(b)に

関 し、

OFTは現在 の価格水準 を基本 としている。しか し、当該産業の価格規制の変 化が見 られ るような場合 には、 これ に限 らない としている。 また、(CXd)に し、当該商品・ サー ビスにつ き、内部生産が行われている場合、価格の上昇 によ りそれが外部 に振 り向けられ る可能性がある場合 には、競争上の拘束が 働 くもの としてみなす としている。     

③ 各類型における考慮事項

合併 の競争への影響 を見 る上で焦点 を当てるのは、合併当事者 とその競争 相手 の競争上 のインセンティブの分析である。OFTはそ こで、合併 の各類型

につ き、その分析方法 について述べている。

171水平合併

(a市場 の構造 と集 中度

市場の集中度の測定 は、当該市場 の競争圧力の指標である。当該市場 の集 中度 を示す ものには、様々な指標があるが、OFTはその中で主 に3つの方法 を用いてそれ を測定す る。

第一 は、市場 シェアである。主 に当該商品・ サー ビスの売上高 を基準 とし て算定 される。現在のシェアを基準 とし、市場か らの退出、新規参入 といっ た予期 され る合理的な将来 の変化が反映 され るように修正 した ものを用い る。合併 当事者のシェアを他の競争者 と比較することによ り、当事者の潜在 的市場支配力 と他の競争者の競争上の圧力 を測定す ることが可能である。 ま た、 シェアの歴史的な変遷 もそれを示す指標 とな り、 シェアが激 しく変動す る市場 においては激 しい競争が行われ、逆の場合 には当該市場 は通常市場支 配力が存在す るもの とみなす。

第二 は、市場の寡 占である。 この市場 の寡 占度 はt当該市場 の上位三者又 は四者のシェアを合計 した ものにより測定 され る。 この寡 占度 により測定 さ れ る集中度 は、上位 を占める者の相対的なサイズを考慮 していないが、集中 度 の絶対的な指標 とみなす としている。

(274) 19

(21)

法政研究8巻304号 (2004年)

第二 は、ハーフイダール指数である。 これは市場 に存在す るすべて企業 の シェアを乗 じた ものを合併前後で比較す るものである。小規模 な企業が合併 することによ りこの指数の上昇が大 きい場合 も存在す るが、 この ような合併 は通常競争上の問題 を生 じず、 より強大 な競争者 と有効 な競争 を行 うことが 可能 になった もの として評価する3 0FTが問題 とす るのは、集中度が高い市 場 においてHHIの指数 が上昇 した場 合 で あ る。OFTは、合併 後 のHHIが

1,800以上の市場 において (highly∞ncentrated market)、 合併前後で比較 した指数の上昇が50以上である場合、合併後のHHIが1:000以上 の市場 にお いて(concentrated market)、 その指数の上昇が100以上である場合 に、潜在 的な競争上 の問題が生ず る とみなす。OFTは、当該市場 に存在 す る企業 の

シェアが不明確である場合 には、通常HHIを利用 しない。

これ らの当該市場 の集中度 を測定す る指標 は、潜在的な競争上の問題 を示 す第一の もの として利用 され る。 しか し、当該合併が競争 を実質的に制限す るか否かを示す絶対的な指標 ではな く、 さらなる調査 を必要 とす る。

(b)水平 的合併 の反競 争 的効果

水平合併 の効果 として、OFTは競争者の損失 による競争上 のイ ンセ ンテ ィ ブの変化お よび競争の度合いの変化、参入障壁・ 購買力への影響、合併当事 者の有効 な競争者 としての出現 を挙 げている。OFTは、当該合併が実質的に 制限するか否かを判断する上で、合併 によりこれ らの効果が生ず るか否か、合 併企業が商 品・ サー ビスの価格 を上昇 させ る、生産・販売量 を減少 させ るなど の方法 を用いて利益 をあげることを抑止するだけの競争上の圧力が、合併後 に 存在するか否かを考慮する。その際用い られるのは、当該合併後の非協力的効 果 と協力的効果である。 この二つ ものにつき、以下で見てい くこととする。

非協力的効果 とは、合併企業が 自ら販売す る商品・ サー ビスの価格 を上昇 させ ることにより、利益 を得 ることが可能であると判断 した場合 に生ずる場 合の効果である。合併前の価格 の上昇 は、 自らの売上高の減少 を招 くが、合 併後 は、取得企業 によ り販売 され るものの価格 を上昇 させ ることによ り非取 得企業 の売上高 を増加 させ る、お よびtその逆の作業 を行 うことにより、利

(22)

2002年企業法によるイギリス合併規制の変革

益 をあげることが可能 な場合がある。それに応 じて、他の競争者 は、合併当 事者 の販売する者の価格 の上昇 に応 じて、 自らの販売価格 を上昇 させ ること により、利益 を増加 させ ることが可能である。 このような現象が生ずる市場 の特徴 として、当該市場 に少数の企業のみが存在する場合、合併当事者が「第 一の代替物」 と顧客が考 えるものを販売 していた場合、代替品の欠如・ 転換 コス トの高 さなどにより代替物がほ とんど存在 しない場合、競争者に生産・

販売余力がほ とん どない場合、合併企業の一方がシェアが示す以上 に競争上 の圧力 を持 った存在であった場合などが挙 げられる32。

この非協力的効果か ら生ずる利益 は、一般 には合併当事者が享受するもの であるが、競争上の圧力の減少により、競争者が享受する場合 もある。 この ような場合、当該市場 に存在する企業の間に協力的な行動をとることについ ての合意 は存在せず、互 いの競争上の行動の変化 を予期 した行動 を自ら行っ ている。 したがって、合併 による市場の構造の変化により、企業が独 自に行 動 しなが らも、それぞれ 自らの商品・ サー ビスの価格 を上昇 させ る事態を招

く場合がある。

それに対 し、協力的効果 とは、合併後 に当該市場 に存在する企業が明示的・

黙示的 に協力することにより、価格 を上昇 させる又 は品質・販売量 を減少さ せ ることによる効果である。 この合意 は、黙示的なものであれば、必ず しも 1998年競争法の規制対象 となるものではな く、市場の状況 により生 じうる。

この黙示の合意がなされる市場の条件 として、(i)市場参加者が 自らの行動 を 他 と一致 させ る能力 を有 していること、

(ii)黙

示の合意か らの離脱 を看破する ことが可台旨であ り、かつ、それに対する制裁 を加 えることが可能であること、

liiil市

場 の他の競争上の圧力 に直面 して も維持可能であることが挙 げられる。

(i)は、互 いの行動 に関す る了解がな くとも、市場の透明性、製品・ サー ビス の同一性、関連す る企業の安定性および対称性から可能である場合がある。(iil

は、寡 占市場 においてみられるものであり、一時的な「抜け駆け」が直接・間 接的に観察 される透明性のある市場 において生ずる。このような市場において 企業が この協力的な行為か ら逸脱 しない という強いインセンティブを持って

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