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用宗の未来を考える : 用宗の地域資源は何か

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用宗の未来を考える : 用宗の地域資源は何か

著者 渡邊 萌子

雑誌名 静岡市・用宗地区. ‑ (フィールドワーク実習調査 報告書 ; 平成26年度)

ページ 107‑117

発行年 2014‑12

出版者 静岡大学人文社会科学部社会学科文化人類学コース

URL http://hdl.handle.net/10297/8074

(2)

用宗の未来を考える

〜用宗の地域資源は何か〜

渡邊萌子

1  は じめに

2  用宗における地域お こし

3  用宗の地域資源

31  地域資源 とは

32  地域資源①   食べ物

33  地域資源②   歴史的地域資源

3.4  地域資源③   地域景観資源 35  地域資源④   ヒト

3:6  強みへの転化

4  用宗地域おこしへの提言 5  おわ りに

1  は じめ に

静岡県静岡市駿河区用宗

(も

ちむね )地 区へは 」 R線 で静岡駅から 2駅 、 10分 もかから ずに行くことができる。街中に近 く、1年 中気候がよい住みやすいまちである。現在多くの 地域が域外への人口流出や高齢化の問題を抱えてお り、地域おこしの動きが見られる。用 宗も例外ではない。用宗における地域おこしの必要性、これまでの地域おこしに関する活 動についての詳細は高源担当の第 8章 を参照されたい。これまでの用宗は主に地域住民、

特に用宗出身者が中心 となつて地域おこしの活動を進めてきた。窪谷順次によれば、地域

おこし・むらづくりを考える基本視点の 1つ 目はまちの実態を客観的に見つめるというこ

とである。それは、地域内のもろもろの実態を確認することであり、この実態確認のなか

から地域の強みは何か、弱みは何かを見極め、強みをフルに活用 し、弱みを強みに転化す

る手立てを工夫することが基本視点であるという

(窪

1995)。

本報告書の目的は (外

からの視点で客観的に用宗を見ることによってこれからの用宗の地域おこしに何が必要な

のかを考察することである。ポイン トは以下の 3つ である。1つ 目は用宗に合つた地域おこ

しを考察すること。 2つ 目は用宗の強みとなる地域資源を記述すること。そ して 3つ 日はこ

れからの用宗の地域おこしへの提言を述べることである。尚、調査は 2014年 6月 8日 から

14日 に実施 したものである。

(3)

用宗の未来を考える〜用宗の地域資源は何か〜

2  用 宗 に お け る地 域 お こ じ

地域お こしを行 な う上で、まずは用宗の人に とって地域が どのよ うになってい くこと が地域お こ しと言えるのかを考えなければならない。そこで今回のフィール ドワーク調査 で行なった住民のインタビューか ら考察 していきたい。

インタ ビュー調査によって今回把握 した住民の意見は大きく分けて 3つ である。

1つ 日、今 のままの用宗で良い。

2つ 日、地域内の関わ りにおいてもつ と活気がほしい。

3つ 日、地域外か ら多 くの人び とが訪れるよ うなまちに したい。

この 3つ の意見を見てみると、一見 1つ 日の現状維持の考えと 2つ 日、 3つ 日の地域おこ しに積極的な考 えの間に境界があるよ うに感 じる。 しか し、今のままの用宗で十分だ と考 える人に用宗 を活性化す ることについて どう考 えるのか聞いてみ ると、今回調査 した中で は活性化に否定的な意見は聞かれ なかった。 また高齢化や地域外への人 口流出が進んでい る今、何か行動を起 こさなければ現状維持す ら難 しい と考える住民 もいた。

地域内の人の間で もつ と活気がほ しい と考える用宗町内会会長石 田英亀氏

(男

性、 72歳 )

は、地域 を活気づ け、一度用宗か ら離れていった人たちが戻 つてきたいと思 うよ うな場所 に したい とい う。具体的には地域内でのイベン トを増やす ことを考 えているよ うだ。

3つ 目の地域外か ら多 くの人び とが訪れ るようなまちに したい とい う意見は特に商店を 経営 している人に多 く聞かれた意見である。用宗の商店街 は外部か らの客があま り多 くな いのが現状である。商店を経営する相川広一氏

(男

性、 70歳 )は 、外部か ら集客 し店を活 気づけることで用宗の活性化 につながった ら良い と語つた。

今回はごく一部の住 民へのイ ンタ ピュニ調査のため住民の総意 とは言いがたいが、それ ぞれの意見をもつ中で共通 していたことは、今の用宗 を維持す るにせ よ変えてい くにせ よ、

何か行動 を起 こさなければいけない とい う意識であつた。彼 らが求めているのは、現在の 用宗の住みやす さを壊 さず に地域を活性化 していくことである。今 の用宗の もつ良 さを残 した活性化 を行な うことでまずは地域内の交流を深 め、住 民たちが用宗の良 さを再認識す ること。そ して住民が一体 となって用宗を外部ヘア ピール してい くことが住民の求める用 宗の地域おこしと言えそ うである。

3  用宗の地域 資源

次に地域の強みとなる地域資源を見ていきたい。第 3節 では地域資源 とは何か述べた上

で、用宗には具体的にどのような地域資源があるのかを記述 していく。

(4)

31  地域資源 とは

内堀基光は、ジンマーマ ンの議論 を利用 しなが ら再解釈 し、以下のよ うに述べている。

資源 とい う概念は、人間の欲求 と利用能力 との関係 においては じめて生成す る概念である。

環境のなかのあるものが人間にとつて役に立つ もの、つま り資源 と評価 され るか どうかは、

FH5の

主観によつて決まるものである。その評価は社会や歴史的な変化によつても異なる。

ジンマーマンの資源論の要点は、資源は「である」ものではなく「になる Jも のであると い うことにある。資源 とい うのは 「もの」がそのままのかたちで資源になることはまずな

く、あるものが資源になつていくことを「資源化」という概念で呼んでいる

(内

2007)。

以上のことから地域資源 とは、今の時代のその地域に関わる人々にとつて役に立つもの であると考えられる。また、何が役に立つかは時代やその地域、関わる人々の利用能力に よつて異なる。今の用宗にとつて利用可能であり、役に立つものが用宗の地域資源である。

尚、「資源化」については第 4節 で述べる。

次に、より具体的に地域資源を考えていきたい。恩田守雄は地域資源をヒ ト、モノ、カ ネ、情報、組織

(シ

ステム )の 5つ の側面から捉えている。今回はその中でフィール ドワ ーク調査によつて把握できたモノ、ヒトとい う側面から用宗の地域資源を見ていくことに する。

恩日は一般に理解されている資源をモノと表現 している。恩田によれば、それは山や河、

lllな

どの自然資源 と史跡や名所、旧跡などの人文資源に大別 される。また、その地域固有 の食べ物 (味 覚 )や 行祭事、伝統工芸・芸能なども資源に含まれる。これ らが地域の生活 風景を構成する郷土資源である。この他、地域住民対象 というよりもどちらかと言 うと、

地域外の訪問者の誘客に力点を置いた人為的な資源 として、海洋性や山岳性の リゾ‐ 卜資 源も加わる

(恩

2002)。

まずは用宗の地域資源をモノとい う側面から見ていきたい。

32  地域資源①   食べ物

用宗の地域資源 としてまず挙げたいのは食である。用宗で一番有名な食べ物 といえばシ ラスだろう。「用宗といえばシラス」とい うイメージをもつ人は少なくない。漁師たちは自 をそろえて 「用宗のシラスは日本一」と語る。用宗町内会ホ‐ムページによれば、毎年開 かれる用宗漁港まつ りはもともとシラス漁業の PRの ために始まり、現在では約 4万 人もの 来場客で賑わつている

(用

宗町内会ホームページ

2014)。

用宗漁港まつ り当日は、朝から とれたての生シラスを買い求める来場客の長蛇の列ができるほどだ。用宗のシラスがこれ ほどまでに人気がある最大の理由は新鮮 さである。 3艘 1組 で行なわれ、その うちの 1艘 が 運搬船 としてとれたシラスをす ぐに漁港へ運ぶことで、とれたての新鮮なシラスを届ける ことができる。漁場から港までの距離が近いことも理由の 1つ である。現在シラスは用宗 のアピールポィン トとして売 り出されてお り、シラス餃子や しらすパイなど様々な商品化 がされている。

次に挙げるのは桃をはじめとする果物である。漁業のイメージのある用宗だが、実際ま

(5)

用宗 の未来 を考 える〜用宗の地域資源 は何か〜

ちを歩いてみ ると意外 にも桃 な どの果物 を栽培 している光景 をよく目にす る。それ らは農 業 として行なわれているのではなく、おすそ分 けされた り無人販売で近所の人々に売 られ た りするものが中心である。用宗の農 については第 3章 で李が詳 しく述べている。

写真 1  無人販売で売 られ る桃や野菜は、人々の見えないふれあいを感 じる

(渡

邊撮影 )

33  地域資源②   歴史的地域資源

次に用宗の地域資源 として挙げるのは歴史である。観光資源 として利用できるだけでな く、住民がその土地の歴史を知 ることで地域の魅力 を再発見 し、用宗の住民 としての誇 り や地元愛 を感 じることができる。用宗には至るところに歴史を感 じることのできる場所や

ものが存在す る。 ここでは歴史的地域資源 と呼ぶことにす る。

用宗の地域お こしの活動団体は当初か らこの歴史的地域資源 に注 目してきた。町内会に は総務部、治安土本部、社会厚生部 とい う 3つ の部会があるが、その うちの事務を行なつ ている総務部は 「歴史あるまち用宗 Jと い うス ローガンの もと、い くつかのイベ ン トを計 画 した。その うちの 1つ が、スタンプラリーの開催である。 これは町内の歴史的由緒のあ る場所 を歩いて回 ることによ り、郷土愛 を育む ことを 目的 とした企画である。用宗町内会 が主催 し、用宗汐風 クラプの支援 により行なわれた。 まずは このスタンプラ リーのチェッ クポイン トか ら、用宗の歴史的資源 をみていきたい。

「私たちの町の史跡発見スタンプラリー」と題 され 2010(平 成 22)年 11月 28日 に行

なわれたイベ ン トでは、海 コース と山コースの 2つ のコースが設定 され、それぞれに歴史

的由緒のあるチ ェックポイ ン トを巡 るようになっている。海 コースのチェ ックポイ ン トは

以下の 6つ である。 尚、説明の文章はスタンプラリーのマ ツプに掲載 されていたものを参

考に した。

(6)

①石敢営

(い

しがんとう):家 の中に悪いことをする魔物が入つてこないように、家の四 角に立ててある石の彫 り物。沖縄や鹿児島にたくさんある。     │

②西の庚申塔 :用 宗の西の方の人たちが集まる寄合いの記念につくられたもの。

` ③浜付庚申塔 :女 衆だけが集まつたお座敷。海ではたらく男衆の無事をいのってお参り

をした。

④いぼがみさん :白 い大きな石が祀られている。いぼができて しまつたら、石をさわつ てからいぼを撫でると治ると昔から言われ、今でもおネ Lの お供えものがたえない。

⑤小玉沢のお稲荷さん :海 で働いている人たちのために、毎朝、お稲荷 さんにおこわの ご飯をあげていたおばあさんのことを町の人は「おこわばあさん」と呼んでいた。

③用宗地蔵尊 :昔 から村の人たちが無事に暮らせるようにと、近所のおばあさんたちが 毎 日お参 りしていた。

続いて山コースのチェックポイン トは以下の 3つ である。

①山烈士供養塔 :城 山さんのいくさで亡くなつた人たちを、まちの皆さんが祭つている

②用宗浅問神社

(お

せんげんさんと呼ばれる ):350年 前からあり、村の人たちを守つて きた。 250年 前の大地震の時に建てかえられた。 3つ の氏神の中で一番古い。

③持舟城跡

(城

山さんと呼ばれる ):頂 上からきれいな富士山が見える。古文書には「た ぐいなけしきなり」と記されている。

④大雲寺観音像 :母 親が赤ちゃんを抱いている姿に似ているため、「マ リア観音」と呼ば れ てい る。

③庚申塔 :み んなで仲良くしようと集まつた記念につくられたもの。下の方に 3匹 の猿 が彫 られている。

⑥熊野神社

(お

くまのさんと呼ばれる ):昔 、おばあさんが海から来た小さな蛇を助けて TEっ たと言われている。

⑦人幡神社

(は

ちまんさんと呼ばれる ):海 で働 く人たちの無事を祈つて祀られている。

③古城山観音堂厨子 :城 山にあつたもので、城山観音像などをお参 りした時の祭壇。 190 年前につくられたもの。

このスタンプラリーを支援 している「汐風クラブ」は特に城山の整備に力を入れている 団体である。歴史的価値のある城山をまちのシンボル として宣伝 している。城山は「城山

さん」と呼ばれまちのひとに親 しまれてお り、毎月第 2日 曜日は「城山さんに登ろう

Day」

としてハイキングを行なっている。ハイキングコースは持舟城跡

(用

宗浅間神社 )→ 大和 田→万葉道→小野寺→井尻橋→丸子橋→用宗公民館である。

以上のチェックポイン トやハイキングコースから、用宗には多くの歴史的地域資源があ

ることがわかる。

(7)

用宗の未来を考える〜用宗の地域資源は何か〜

34  地域資源③   地域景観資源

次に、用宗の地域資源 として挙げるのは地域景観資源である。静岡市では歴史や文化を 色濃 く残す風格ある伝統景観、都市拠点、多彩な自然風景など、シンポルやラン ドマーク 的存在となる個性豊かな風景やまち並みを景観法に基づく「景観重要建造物 J及 び 「景観 重要樹木 J、 市景観条例に基づく「地域景観資源

(建

造物 )」 及び 「地域景観資源

(樹

)J

として指定 し、積極的に保全するとともに、地域の個性ある景観づ くりの核 として活用を 図つている。

写真

城山からは JR線 、東名高速道路、富士山が一望できる

(高

撮影 )

写真 3  用宗駅か ら海岸までの一本道は、海辺な らではの景色である (渡 避撮影 )

(8)

静岡市の景観重要建造物 として指定されているのは、①大村家住宅、②矢澤煉瓦蔵、③ 静岡銀行本店

(旧

静岡三十五銀行本店 )、 ④静岡市役所本館、⑤清水港テルファー、⑥静岡 県庁本館である。地域景観資源

(建

造物)と して指定されているのは、①東海道名主の館、

②旧五十嵐歯科医院、③旧マッケンジー住宅、④清水灯台の合計 10箇 所である。この 10 箇所は「しずおか十景」として宣伝 されている

(静

岡市ホームベージ

2o14)。

現在指定さ れている場所の うち用宗から選ばれたものはないが、用宗にも地域景観資源が数多くある。

ここでは住民が語つてくれたおすすめスポットや自分が実際に滞在中に発見したものから 地域景観資源を挙げていく。

①城山からの景色 :城 山からは、富士山と海、東名高速道路と」 R東 海道線の線路を一度 に見ることができる。写真 1参 照。

②」 R用 宗駅から海岸への一本道 :駅 から海岸へ続く一本道はゆるやかな上り坂になって いるため、進むにつれて水平線が顔を出していく。

③用宗海岸 :多 くの人びとが愛犬を連れて海沿いを散歩 した り、釣 りを楽 しんだりして いる。海水の綺麗 さは高く評価 されている。

④用宗漁港 :漁港ではなぎさ市や用宗漁港まつ りが開かれる。漁港に建設中の避難タフ ーは展望台を兼ねる予定である。

⑤緑あふれるまち :漁 業に注 目されがちだが、桃などの果物も有名であり、庭で育てて いる家が非常に多い。そのため住宅地にもかかわらず緑があふれている。

③音を感 じさせるまち :用 宗の所々には古い蔵や倉庫が残つている。これらは見た目的 にも趣があるため残 していきたいと語る住民は少なくない。

なお、用宗の歴史的地域資源、地域景観資源のそれぞれめ場所については資料編の地域 資源マップを参照されたい。

35  地域資源④   ヒト

用宗の地域資源 として最後に挙げるのは、ヒトである。恩田は、その地域に住む住民こ そ、最大の資源であり、地域住民がもつ人情や気質が、地域資源を構成すると述べている

(恩

2002)。

また、地域固有の知識や情報をもつとい う点においても、ヒトは重要な地 域資源であると言えるだろう。用宗の新鮮なシラスの漁法やカロ エ法などの知識はその良い 例である。シラス漁については天野担当の第 1章 、カロ エについては海野担当の第 2章 に詳

しく述べられている。

フィール ドワーク調査の中で、地域資源としての用宗のヒトにはいくつかの特徴がある

ことがわかつた。まず 1つ 目は地域に関する住民の意識が高いことである。それはこれま

で地域おこしの活動を行なつてきた団体が多いことからもうかがえる。また、インタピュ

ーをする中で「鎌倉のように昔の雰囲気を残したまちにしたい」、「駅から海岸までの道に

(9)

用宗の未来を考える〜用宗の地域資源は何か〜

花 を植 えた らどうか」な ど地域お こ しへの具体的な案をもつ人が非常に多かつた。住民の 意識を変えてい くことは大変難 しいことである。地域 に関心の高い用宗の住民性は大きな 強みであると言えるだろ う。

2つ 目の特徴は、現在用宗で生活 している住民にそれぞれの視点があることである。た と えば地方には地元で生まれ育 ち現在 まで暮 らしている人、一度地元か ら他地域へ出て再び 戻つてきた人、他地域か ら移住 してきた人がいる。 ここではそれぞれ地元継続居住者、 U

ターン者、 Iタ ーン者 と呼ぶ ことにする。用宗にもこのような 3つ のタイプの住民が混在 し ている。地元継続居住者の特徴 としては地元愛が強 く、その土地の歴史にも詳 しい ことが 挙げられる。一方で、ずっとその地域に住んでいることで地域の良いところが当た り前に 思えてしまうところがあるようだ。 Uタ ーン者の特徴は一度地元を離れたからこそ見える 地域の良さに気づくことである。 1タ ーン者は地元継続居住者や Uタ ーン者 とはまつたく異 なる新 しい視点でその地域を見ることができる。 しかし、よそ者 とい う意識から地域への 参加がしづらい場合も少なくない。実際、 Iタ ーン者の A氏

(女

性、 61歳 )は 、「地域おこ しをするなら協力はしていきたいが、外から来た自分が地域活性イ ヒのためにどんどん案を 出 していくとい うようなことはあまりしない」と語つていた。地域おこしに関しては、地 元継続居住者だけでなく、地域を客観的に見ることのできる 1タ ーン者、 U夕 ‐ン者の意見 にも耳を傾けることが非常に重要である。

また、職業に関する視点の違いも見られた。第 2節 の 1項 でも述べたが、特に商店を経 営する人には外部から人が来ることによる地域の活性化を望む人が多かった。彼 らの中に は 「地域おこしには参加 していきたいが、商売をやつている自分たちがあまり積極的に意 見を出すと店の利益のことだけを考えているのではないかと思われそ うで言いづらいと感 じる」、「もちろん地域外の人にも店を訪れてほしいと考えているが、それは店の利益だけ を考えているのではない。商店とい う自分たちの仕事をいかして地域を盛 り上げていきた い」と語る人がいた。

住民の中に様 々な視点が存在す ることは、立場によつて複雑 な状況 を作 り出 して しま う とい う面をもつ ことがわかった。 しか し、それぞれが 自分の意見を自由に言 える場を作 る ことができれば、様々な視点か ら地域が見ることができるとい うのは大きな強みである。

36  強みへの転化

ここまで用宗の強み となる地域資源を挙げてきた。次に、別の視点か ら地域資源を記述 していきたい。別 の視点 とい うのは、弱み と言える点を強みへ と転化す ることで地域資源 として活用 してい くとい うことである。窪谷によれば、地域お こ し・ む らづ くりを考える 基本視点 として、弱みを強みに転化す るなどの発想の転換が必要であるとい う

(窪

1995)。

用宗の弱み といえる点 も、発想 を変えてみれば強みに変えることができるのである。そこ

で、ここでは用宗の弱みとなりうる点を明らかにし、どのようにして強みへ転化 していけ

ばよいのかを考察していきたい。

(10)

用宗の弱みとなりうる点の 1つ として考えられるのは、 2013(平 成 25)年 10月 の台風 26号 の影響で焼津市大崩地区の県道静岡焼津線

(旧

国道 150号 )の 路面が沈下し、通行止 めとなつてしまつたために車の交通量が減少 してしまつたとい うことである。これにより 焼津方面から用宗に車で訪れる人は少なからず減少 しただろう。通行止めによる車の交通 量の減少はどのように強みに転化することができるだろうか。前田篤史氏

(男

性、 64歳 )

へのインタビュー内容からその答えが見つかつた。通行止めはた しかに外部から車で訪れ る人を減少 させてしま うが、車通 りが少ないということは歩行者天国にするための許可が お りやすいとい うことでもある。町内でのイベン トの際、歩行者天国になれば車を気にす ることなく安心して参加することができ、またできることの幅も広がつてくる。

用宗の弱みとなりうる点の 2つ 目は津波である。用宗の海は散歩コースや海水浴、バー ベキュー場として多くの人が利用する。また、新鮮なシラスがとれることでも有名で、用 宗の最大の強み といつてもよいだろう。 しかし、海辺のまちである以上地震の際の津波の 心配は避けられない。用宗の住民に地震や津渡についての考えを開いてみると、何人かの 話に共通点があることがわかつた。それは安全神話のようなもので、大きな地震が来ても 用宗は大文夫だと心のどこかで思つているとい う人がぃるとい うことである。詳 しく聞い てみると、その根拠 となっているのは 1854年 に起こった安政の大地震だつた。実際にこの 安政の大地震を経験 した祖父母から、「安政の大地震のときでさえも用宗にはほとんど被害 がなかつた。用宗は守 られているから安全だ」といつた話を聞き、心のどこかでこの用宗 の安全神話を信 じている人はいるようだ。実際当時の用宗は寺院の被害記録から静岡県内 の震度分布を求めた行谷祐一、都司嘉宣によれば、安倍り 1西 岸の用宗平野部ではまつたく 寺院被害は存在 していないとい う

(行

谷・都司

2006)。

もちろんすべての住民がこの安全 神話を信 じきつて安心 し、何も地震対策をしないとい う態度をとつているわけではない。

また、東 日本大震災の傷がまだ十分に癒えていない今、安全神話のようなものは住民にと って必要であるとも言える。

津波の心配を強みへ と転化 していくにはどうすればよいのだろうか。まずは津波対策を 万全にし、少 しでも弱みと感 じさせないようにすることである。現在用宗漁港では避難タ ワーの建設が進められている。この避難タワーは、もともとマグロ用の冷蔵庫があつた場 所に建設中である。冷蔵庫を一度全部解体 し、その跡地に避難タフ‐を建設するとい う。

漁業従事者や近隣の人々の避難のためにつくられ、約 300人 が避難 してこられる予定であ る。さらにこのタフーには双眼鏡が 2つ 付けられ、展望台としての役割をもつ計画だ。こ のタワーは富士山が見える位置にあるため、新たなまちのシンボルとして期待 されている。

また、地震や津波対策のためにまちの人同士がつながつていくことが必要である。普段 から住民同士が交流 し情報を共有 していれば、緊急時にお互いに助け合 うことができる。

津波の心配があるとい う弱みを、それにより近所との結びつきが強いとい う強みに変える

ことができるのである。

(11)

用宗の未来を考える〜用宗の地域資源は何か〜

4  用 宗 地 域 お こ しへ の 提 言

第 3節 1項 でも述べたよ うに、地域資源 とは 「である」 ものではなく「になる」 もので ある。 ここまで地域資源 として挙げてきたものも、利用 されて用宗の人に とつて役 に立つ ものにな らなければ地域資源 とは呼べないのである。そこで必要なのが

f資

源化」である。

つま り、地域資源 にな りうるものを認識 し、活用す るとい うことである。 ここでは現在進 行中のものも含め、「資源化」が完了されていない地域資源 についてその利用法 とともに考 察 していきたい。

用宗の中を歩いていると、町のあちこちにある倉庫や蔵 がある。 これ らも 「資源化 Jす

ることで立派な地域資源 となるだろ う。 なかには現在 も使用 されているもの もあるが、今 はも う物置になつているもの もある。現在使われな くなつた蔵や倉庫は、独特の雰囲気を もつため住民へのインタビュー調査でも残 していきたい風景 として挙げる人は多かつた。

用宗 には実際に古い蔵 を レス トランとして活用 した例 もある。使 わな くなつた蔵や倉庫を もつ と活用 してい くことで、昔か らの用宗の雰囲気を壊 さないまま、地域 を活気づけると い うことを実現できるのではないだろ う力、

次に挙げるのは、用宗の海 、山な ど自然資源の活用である。具体的な例 としては学校教 育に関わる利用である。現在農林水産省では学校教育 として農 山漁村体験を推奨 している。

前日篤史氏

(男

性、 64歳 )に よれば、約 20年 前の 1990年 代頃には地元の学校が野外学習 として用宗海岸か ら船 に乗 つて魚 を捕 るのを見学するといつた体験学習が行なわれていた とい う。海か ら帰 つてきた子 どもたちには海賊鍋

(海

賊汁 ともい う )と い う魚 の入 つた味 噌汁のよ うなものが振舞 われたそ うだ。地元の子 どもが用宗の良 さを再認識す る良い機会 である。 また地域内だけでな く、用宗の懐か しい雰囲気は都会の学校の子 どもたちに とつ てめず らしく、興味を持たれ るのではないだろ うか。

5  おわ りに

ここまで用宗に合 つた地域お こしを考察 し、 どのよ うな地域資源があるのかを見てきた。

用宗で 1週 間フィール ドワー ク調査をするなかで、用宗では住民一人ひ とりが用宗の地域 お こしについてそれぞれの考えを持 つていることがわかつた。 しか し、い ざ自分のアイデ ィアを出 した り、活動 を した りす るとなると腰が引けて しま うとい う人は多い ようだ。第 3 節 4項 にも述べた ように、 Iタ ー ン者がよそ者意識 を感 じて自分の考えを言いにくかつた り、

商売をす る人が意見を言 うことに遠慮 をしていた りす るとい うことが■在の用宗の地域お

こしの問題点 と言 えるだろ う。 これか ら地域お こしを進めてい くうえで、彼 らの間にある

壁をな くしてい くことが必要である。地域お こしを してい く上で最 も必要なのは観光洛 所

にな りそ うな重要な歴史的建造物や美 しい景色ではな く、地域 を良 くしていこ うと考える

(12)

住民たちのつなが りである。住民たちが集まつて地域のことを語 り合えるコミュニティが できれば、地域おこしはより良い方向へ進んでいくのではないだろうか。それは柔軟に外 から人や情報などを受け入れる開かれたコミュニティであるべきである。まずは地域の中 で誰もが自分のアイディアを、自由に自信を持つて発言できる場をつくることが、用宗の 地域おこしへの第一歩である。

謝辞

本報告書を書くにあたつて、多くの方々にご協力いただきました。突然のインタビュー にも笑顔で応えてくださつた用宗やその周辺地域の方々に心から感謝いたします。

参照文献

内堀基光

2007  「序―資源をめぐる問題群の構成」内堀基光線『 資源 と人間』弘文堂、 15‐

43。

恩田守雄

2002  「グローカル時代の地域づくり」学文化 窪谷順次

1995  「地域おこし・むらづくりの基本視点」 『 農村計画学会誌』

13141:3・

Q

行谷祐―・都司嘉宣

2006  「寺院の被害記録から見た安政東海地震 (18541の 静岡県内の震度分布」 『歴史地震』

21:201・

217。

静岡市       

2014  「景観資源の保全・活用 J静 岡市ホームページ、φ 014年 7月 21日 取得、

http:″

wwtciし shinOkajp/deps/kentttusOumu/kelkan sLgen.htmD。

用宗町内会

2014  「用宗紹介」用宗町内会ホームベージ、12014年 10月 27日 取得、

http7肝ww4 tokaio■

"/mOChmune/syokal.html)。

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