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修士学位論文

擬似生体環境下でのポリ乳酸の分解および 機械的特性の理論的評価

指導教授 小林 訓史 教授

平成 29 年 2月13日 提出

首都大学東京 大学院 理工学研究科 機械工学 専攻

学修番号 15883326 氏名 矢ノ下 雄太

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目次

第1章 緒言

1.1 研究背景 1

1.2 生体吸収性高分子材料 2

1.2.1 生体吸収性高分子材料の概要 2

1.2.2 ポリ乳酸 2

1.3 先行研究 3

1.3.1 生体吸収性高分子材料の分解の実験的評価 4

1.3.2 生体吸収性高分子材料の分解の理論的評価 5

1.4本研究の目的 7

第1章の参考文献 12

第2章 実験方法

2.1 試験片作製方法 14

2.1.1 供試材 14

2.1.2 試験片作製 14

2.2リン酸緩衝液浸漬試験 14

2.3 吸水率測定 15

2.4結晶化度測定 15

2.5 分子量測定 15

2.6 引張試験 16

第2章の参考文献 20

第3章 実験結果および考察

3.1 吸水率変化 21

3.2 結晶化度変化 26

3.3 分子量変化 31

3.4 引張試験結果 40

3.5考察まとめ 85

第3章の参考文献 88

第4章 材料物性変化の理論的評価

4.1 分子量変化 90

4.2 結晶化度変化 104

4.3 引張弾性率変化 111

第4章の参考文献 123

(3)

第5章 分子動力学法を用いた引張解析

5.1 分子動力学概要 125

5.2 解析手法 125

5.2.1 モデル作成 127

5.2.2 引張解析 127

5.3 解析結果 128

第5章の参考文献 139

第6章 結言

6.1 結言 139

6.2 今後の課題 140

(4)

1

第 1 章 緒言

1. 研究背景

現在日本は超高齢社会の到来により人口の多くを高齢者が占めており,平成 28年度の内閣府の調査によると65歳以上の高齢者の占める人口の割合が26.7%

にも至るという結果が報告されている.また高齢者は年齢の増加と共に生じる 生体機能の低下による顕著な骨密度の低下や運動機能の低下による骨折のリス クが考えられる.そのため今後,骨折患者が増加していくとされており,その ためにもさらなる優れた骨治療部材の開発が必要とされている.この骨折の治 療方法には大きく分けて3種類存在し,外固定,内固定,創外固定が挙げられ る.外固定は添木やギブスなどを用いて外部から患部を固定する方法であり,

患者への負担も小さくコストも抑えることができる.内固定は骨折部位を外科 的手術によりボルトやプレートを用いて直接骨を固定する方法であり,これは 骨折部位に骨の転位が生じてしまったときなどに用いられる.創外固定は骨折 部位を創外固定器という器具で固定する方法であり,複雑骨折などの時に用い られる.本研究では内固定について取り扱っている.この内固定法に用いられ てきた骨治療部材は金属製のものが多く用いられてきた.金属製の骨治療部材 は高強度,高靱性などの優れた力学的特性を持ち,加工性にも優れているとい う長所を有しているが,その反面,体内で腐食して強度が低下する,腐食によ り金属イオンが溶出して,治療部位周辺組織などで炎症を引き起こすなど,人 体に悪影響を与えるようなケースも報告されている.さらに骨折の治癒後に骨 治療部材を体内から取り出すための再手術が必要である.そこで現在,生体吸 収性の高い高分子材料や生体吸収性を有するMg合金などの生体吸収性材料が 金属材料に代わる骨治療部材として注目されてきている.これらは生体吸収性 を有することにより,骨折の治癒後に体内で分解され,その後,代謝されるた め,除去のための再手術が不要である.そのため患者への負担軽減につながり,

Quality of Lifeの向上も期待できる材料として期待され,利用が進められてきて

いる.

一方,生体吸収性高分子材料は体内で加水分解の進行とともに力学的特性が 変化するので,使用する際にはこの変化を予測することが求められる. この変 化を実験的に評価する場合,長期的な浸漬試験を行う必要があるため,コスト が大きくなるという欠点が存在する.そこで近年,分子動力学法を用い,分解 に伴う分子量変化や結晶化度の変化を評価する研究が報告されている[1-1],[1-2].し かし生体吸収性材料を評価するうえで重要となってくる,機械的特性の経時変 化を求めた研究は限定的である.これは分解によるプラスチックスの分子構造

(5)

2

や高次構造の変化と,材料特性の変化を関連づけることが非常に困難であるこ とが原因である.分子動力学法を用いた解析,実用的な材料特性の算出には膨 大な時間を要するため,実用的ではない.そのため加水分解を受けた高分子の 分解特性を解析することを可能にする,簡易な分解モデルの開発を行うことが 求められている.

1.2 生体吸収性高分子材料

1.2.1 生体吸収性高分子材料の概要

生体吸収性高分子材料は生分解高分子材料に含まれる材料である.この生分 解性材料は「微生物の作用により分解する高分子材料」,「生体内で分解する高 分子材料」と定義されており,本研究で扱っている生体吸収性高分子材料は後 者の定義を指している.この生体吸収性高分子材料は動物由来,植物由来の天 然高分子と,石油由来の合成高分子に大別することができる.以前は手術用の 縫合糸に牛の腸が用いられていたが,安定した供給性や,様々な物性の要求に 対応するために合成高分子の開発が進められてきた.

これらの生体吸収性高分子材料が医療の現場で使用される際に大きな障害と なるものが生体の体内に侵入してきたものに対して行う自己防御のために引き 起こす異物反応である.特に長期にわたって体内に残存する場合,周囲の組織 に炎症が起こる可能性が高くなる.しかし,生体吸収性高分子材料は生体適合 性が高く,人体内で炎症を吹き起こす可能性が低いため,医療現場で手術用縫 合糸,骨固定部材,ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System : DDS)な どに応用されている.[1-3]

1.2.2 ポリ乳酸

ポリ乳酸 (Poly (lactic acid): PLA) は乳酸 (C3H6O3, Lactic Acid: LA) をモノマ ーとする高分子であり,脂肪族ポリエステルに分類される.モノマーである乳 酸は不斉炭素を有するためFigure 1.2.1のような分子構造を持ち,L体,D体の 鏡像異性体を持つ.また乳酸はトウモロコシなどの植物由来の有機化合物であ

る.Figure 1.2.2に示すポリ乳酸には主にL体から重合されるポリL-乳酸 (PLLA),

主にD体から重合されるポリD-乳酸 (PDLA),およびL体,D体の混合物から 合成されるポリDL-乳酸がある.ポリ乳酸の性質は分子内のL体,D体の含有 割合や,PLLA分子,PDLA分子の混合割合によって変化することが知られてい る.このポリ乳酸が実際の医療現場で使用される場合,生体内に存在するポリ

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3

乳酸はポリL乳酸であるため,こちらが多く使用されている.また,平均分子 量が約1万以下の低重合体は,乳酸の脱水縮合重合によって容易に合成できる が,高重合体は乳酸オリゴマーの熱分解によって得られたラクチドの開環重合 によらなければ合成できない.ポリL-乳酸は生体吸収性を有しており,人体内 で加水分解し,原料の乳酸へと変化する.

またポリ乳酸は分子構造中にエステル結合を有しているため,高温高湿度下で は加水分解を生じる.ポリ乳酸の加水分解は材料周辺に存在する媒質の触媒作 用によってFigure1.2.4のように分類することができる.[1-4]

ポリ乳酸のような生体吸収性高分子材料は周辺媒質からの材料内部への水の 拡散,加水分解による分子量の低下,加水分解によって分子鎖が切断され生成 された低分子量の水溶性のオリゴマーやモノマーの外部への溶出などが主な原 因で分解が進行する.この分解は基本的にエステル結合の加水分解による低分 子化の過程であり,末端カルボキシル基による自己触媒反応であるとされてお り,低分子量体の分解速度が速い.これに関連してShih[1-5]はポリDL乳酸

(PDLLA)の末端結合のエステル結合が分子内部のものよりも10倍も速く加水分

解を受けるという例を報告している.

ポリ乳酸の分解挙動は主に材料中への水の拡散速度と分子の加水分解速度お よび水溶性のモノマーやオリゴマーの溶出速度の比によって大きく2つに分け ることができる.これらの模式図はFigure 1.2.5に示す.1つは表面分解 (Surface

Erosion)と呼ばれもので,材料表面から加水分解と同時に溶出も進行する分解機

構である.これは材料の加水分解速度が,水分子の材料内部への拡散速度と比 較して著しく高い分解律速の状態時に起こる.もう1つは塊状分解 (Bulk

Erosion)と呼ばれるもので,材料全体で加水分解が均一に進行する分解機構であ

る.これは材料内部への水分子の拡散速度が加水分解速度を上回る拡散律速の 時に生じる.またポリ乳酸の塊状分解機構についてLiら[1-6]は2 mm以上の厚さ を持つ材料,Migliaresi[1-7]らは1.5 mm以上の厚さを持つ材料で材料内部の加水 分解が優先的に生じる内部加速型塊状分解(Core – Accelerated Bulk Erosion)と呼 ばれる特殊なものが存在することを報告している.これはポリ乳酸の分解の進 行とともに分子鎖末端にカルボキシル基を有する分子の増加と,試験片が厚い ため材料内部で生成された低分子量オリゴマーなどが拡散されずトラップされ やすくなり,これらが触媒となり内部の分解の進行を加速したとされている.

ポリ乳酸は結晶性高分子である.そのため加水分解挙動は結晶領域と非晶領 域で異なることが知られている.生体吸収性高分子材料は結晶域を有する場合,

その材料内にはFigure 1.2.6に示すような非晶域と結晶域の2つの領域が存在す る構造を有する.また水分子による攻撃を受け,ポリエステルが加水分解する 際に,結晶領域は分子鎖が密に配置されているため,非晶域と比べ加水分解し

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4

にくい.そのため結晶性のポリエステルは非晶域が優先的に加水分解される.

また,非晶域が優先的に加水分解され,生み出された分解生成物は低分子量で あるため,水溶性であり材料から溶け出し除去され,結晶域が残存する形とな る.さらに,非晶域はFigure 1.2.6に示すように結晶域に挟まれており,ここで 親水性を有する末端基の密度が向上して加水分解が促進されるということも報 告されている.[1-8]

1.3 先行研究

1.3.1 生体吸収性高分子材料の分解の実験的評価

生体吸収性高分子材料の中でも優れた生体適合性を有するという観点から古 くから,ポリ乳酸やポリグリコール酸(Polyglycolic acid:PGA)などは医療の現場に おいて外科や歯科などでインプラント材,縫合糸用途,骨固定部材,ドラッグ デリバリーシステムにおける薬剤輸送担体としての用途,生体吸収性ステント などの用途が期待され,研究がおこなわれてきた.特に生体内で用いられる際 には,加水分解後の各種特性変化を調査することが非常に重要視されるため,

多くの研究が行なわれている.これらを調査する際に実験環境を大きく2つに 分けることができ,それらは人体や他の生物の生体内に直接インプラントする in vivo試験と,生体内環境を模擬したリン酸緩衝液(PBS : Phosphate Buffered

Solution : PBS)などに浸漬することによって生体内環境下での試験を模擬したin

vitro試験に分類できる.in vivo試験は主に生体内での材料と組織との反応,組 織の再生速度,分解後の材料の形態変化を調査する目的で行われ,in vitro試験 は分解後の試験片に対して各種試験を行い,重量変化や,分子量変化,熱的・

機械的特性変化や形態変化の調査や,材料の周辺環境のpHや濃度変化,外部環 境の影響調査をすることが主な目的となっている.

生体吸収性高分子材料の分解の指標となる分子量変化を調査することは非常 に重要になってくる.

Tsujiら[1-8]は熱処理によって結晶化度を調節したPLLAフィルムに対してin vitro

環境下で浸漬試験を行った.この調査によると結晶化度の高いものほど分子量 の減少が速い,つまり分解の速度が速いという例が報告されている.そのため 初期の結晶化度も分解に対する重要な1つの指標になり,さらに浸漬後の初期 の結晶化度とヤング率,引張強度の関係を調査した.初期の結晶化度が高いほ どヤング率,引張強度ともに減少が速いということが報告された.また分解機 構には周辺環境が大きく関係し,Tsujiら[1-9]の研究によると非常に薄いフィルム をアルカリ性の溶液に浸漬したところ塊状分解ではなく表面分解が支配的にな

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5

ってしまうという結果も報告されている.Pistnerら[1-10]はin vivo試験を行ない,

浸漬試験片の自由非晶相が吸水したことにより分子鎖の易動性が向上し結晶化 を引き起こし浸漬後に結晶化度が増加するという結果を報告している.Grizzi

らは[1-11]は生体吸収性高分子材料の加水分解の寸法依存性を調査するために厚

さを変化させたポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体に対してin vitro試験を した.そして厚い試験片が薄い試験片と比較した時より分解が速いという結果 を報告した.Duekら[1-12]は結晶化度が分解速度にどのような影響を与えるのか を調査するために結晶化度の異なるピン状のポリL乳酸に対してin vitro試験を 行った.そして結晶化度の高い試験片ほどヤング率や強度などの機械的特性の 減少が早く起こるという結果を報告した.しかしこれらを実験的に評価する場 合,浸漬期間の増加とともにコストも高くなってしまうという欠点を併せ持っ ている.そのため,in vitro試験の結果から任意の時間だけ分解を受けた材料の モデルを作成する研究が多く行われている.

1.3.2 生体吸収性高分子材料の分解の理論的評価

近年,医療において生体吸収性高分子材料を用いた骨固定材料やステントなど が研究,開発されてきている.骨固定材料は骨組織が十分に再生し治癒するま での間,身体運動などによる骨折部位への荷重を負担し,さらに骨折部位を一 定の位置に固定することが要求される.そのため骨組織が再生するまでに分解 後も十分な強度と剛性を維持することが求められる.またステントの場合は管 を内部から支持するための剛性などが求められる.このような生体内で使用さ れる新しいデバイスの開発に伴い,生体吸収性高分子材料の生体内環境下での 機械的特性の変化を予測することが求められている.そこで加水分解を受けた 生体吸収性高分子材料の機械的特性の変化を理論的に予測するための研究が行 なわれている.

D.F.Farrarら[1-13]は指数関数型の分子量‐分解時間の関係式を利用してポリグ

リコネート(Polyglyconate B)に対して数平均分子量と引張強度の関係を表すモデ ルを作成した.Vieiraら[1-14]はD.F.Farrarらと同様の手法に加えダメージメカニ クスモデルを各種粘弾性構成式に適用することで,分解を受けたポリ乳酸‐ポ リカプロラクトン共重合体繊維

(Poly(lactic acid)-co - Poly(ε- caprolactone : PLA-PCL ))の応力ひずみ関係をモ デル化した.Hanら[1-15]は反応速度定数kに対してアレニウスの関係を適用し加 水分解速度が温度に依存することを考慮した重量,数平均分子量,結晶化度の 経時変化を求めるモデルを作成した.Gleadallら[1-16]は[1-1, 1-2, 1-13]の文献で用 いた理論式に対して,自己触媒反応の項と非自己触媒の項を分離させた.それ

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6

により生体吸収性ポリエステルの非自己触媒反応での分子鎖のランダム切断 (Random Scission)と末端切断(End Scission)および自己触媒反応におけるランダ ム切断と末端切断がそれぞれ数平均分子量と質量の経時変化にどのような影響 を及ぼすのか調査した.またGleadallら[1-17]は[1-14]の理論式に初期の数平均分 子量およびモノマー含有率が分解に及ぼす影響も組み込んだモデルも作成して

いる.Rothsteinら[1-18]はポリマーマトリックスの加水分解による重量減少を表現

できる拡散反応式を用いて,過去の実験データから経験的に表面分解と塊状分 解を考慮できるモデルを作成した.Hanら[1-19]はポリ乳酸とポリグリコール酸の 共重合体に対して動的モンテカルロ法を用いて分子量分布,ランダム切断と末 端切断の割合,ポリ乳酸とポリグリコール酸の割合をデータとして組み込み,

拡散反応式を用いて,時間に対する重量変化,数平均分子量変化,分子量分布 の変化を求めるモデルを作成した.しかし機械的特性や力学的特性のモデル化 が進んでいるが,その多くには経験則に基づいた式などが含まれており,加水 分解のメカニズムや分子構造変化などを考慮しているモデルの研究はあまり行 なわれていない.これは生体吸収性高分子材料の分解挙動が非常に複雑である ためであり,モデル化を困難にしている.一方で計算機性能の飛躍的な向上に より分子動力学法を用いて,分解を受けた材料を分子単位でモデル化すること により生体吸収性高分子材料の分子構造や高次構造が力学的特性に及ぼす影響 などを調査する研究が行なわれてきている.

Dingら[1-20]は分解により分子鎖の切断を受ける半結晶性高分子材料に対して分

子動力学法とモンテカルロ法を組み合わせて引張試験のシミュレーションを行 い,分子鎖の切断数とヤング率の関係を表すモデルを作成した.Wangら[1-21]は 加水分解を受ける様々な分子量を持つ非晶性高分子材料に対してゴム弾性理論 によるエントロピー弾性モデルを使用して,数平均分子量とヤング率を関連付 けたモデルを作成し,ポリL乳酸とポリD乳酸の実験値と比較した.このよう な研究から生体吸収性高分子材料の高次構造を考慮したマクロな特性を予測す ることが可能になってきている.しかし,分子動力学法で解析できる材料特性 はモデルや変形の時間的・空間的スケールが現実で起こりうるものと比べ非常 に高速・微小となるものに対してである.これを現実のものへと近づけるため には解析ステップ数や粒子数などを増加させる必要がある.しかし,現実の条 件へと近づけるほど計算時間が膨大になり,飛躍的に発展した現在の計算性能 を用いたとしても,分子動力学法単体では実用的な規模の材料の特性を算出す ることは非常に困難になると考えられている.よって,分解を受けた材料の機 械的特性・力学的特性を算出できる簡易の理論モデルを開発することは非常に 重要となる.

(10)

7

1.4 研究目的

本研究では,生体内環境下で加水分解を受けた生体吸収性高分子材料の分解挙 動を評価し,機械的特性・力学的特性を予測する簡易なモデルを開発すること を目的とする.そのために,生体内環境を模擬したリン酸緩衝液 (37ºC一定)に ポリ乳酸を浸漬し,分解を受けた材料の結晶化度,分子量,弾性率の時間変化 を実験的に評価する.その際に,初期分子量,寸法,結晶化度の分解への影響 も考慮するために初期分子量の異なる3種類のポリ乳酸を用意した.また試験 片作製の際に寸法の影響評価のために1つの材料に対して2種類の厚さの試験 片を用意した.最終的に作製した試験片を2種類の条件でアニールすることに より結晶化度を調節した.その後,浸漬試験におけるポリ乳酸の分解の実験的 評価のデータを基に,材料特性の時間変化を理論モデルによって表現し,加水 分解を受けた生体吸収性高分子材料の機械的・力学的特性の理論的評価手法の 開発を目的とした.

(11)

8

L-lactic acid D-lactic acid

Figure 1.2.1 Optical Isomer of Lactic Acid.

Figure 1.2.2 Chemical Formula of Poly (lactic acid).

(12)

9

Figure 1.2.3 Schematic Representation of Reaction Course of Poly (lactic acid).

Figure 1.2.4 Classify of Hydrolysis of Biodegradable Plastics Focused on Degradation Media. [7]

(13)

10

(a) Surface Erosion

(b) Bulk Erosion

(c) Core-Accelerated Bulk Erosion

Figure 1.2.5 Schematic Representation of Erosion Mechanisms.

Darker region means higher molecular weight.

(14)

11

Figure 1.2.6 Schematic Representation of Structure of the Crystallized Polyester.

(15)

12

第1章の参考文献

[1-1] Xiaoxiao Han, Jingzhe Pan , A model for simultaneous crystallisation and biodegradation of

biodegradable polymers. Biomaterials , 30 , pp. 423-430 (2009)

[1-2] Ying Wang, Jingzhe Pan, Xiaoxiao Han, Csaba Sinka, Lifeng Ding , A phenomenological model for the degradation of biodegradable polymers.

Biomaterials, 29, pp. 3393-3401 (2008)

[1-3] 辻 秀人, 生分解性高分子材料, 1990, コロナ社 pp.3-6 , pp124

[1-4] 辻 秀人,筏 義人,ポリ乳酸-医療・製剤・環境のために-,1997,

(株)

高分子刊行会,pp11-34

[1-5] Chung Shih, Chain-end scission in acid catalyzed hydrolysis of poly (d,l-lactide) in solution, Journal of Controlled Release, 34, 1, , pp.9-15 (1995)

[1-6] Li, S. M.; Gerreau, H.; Vert, M. Structure-property relationships in the case of the degradation of massive poly(α-hydroxy acids) in aqueous media Part 3 Influence of the morphology of poly(l-lactic acid), Journal of Materials Science: Materials in Medicine, 1, pp.198. (1990)

[1-7] Migliaresi, C.; Fambri, L.; Cohn, D. J , A study on the in vitro degradation of poly(lactic acid)

Biomater Science Polymer 4, pp.58. (1994)

[1-8] HIDETO TSUJI, AKIRA MIZUNO, YOSHITO IKADA, Properties and

Morphology of Poly(L-lactide). III. Effects of Initial Crystallinity on Long-Term In Vitro Hydrolysis of

High Molecular Weight Poly(L-lactide) Film in Phosphate - Buffered Solution, Journal of Applied Polymer Science, 77, pp.1452–1464 (2000)

[1-9] HIDETO TSUJI,YOSHITO IKADA, Properties and Morphology of Poly( L-lactide) . II.

Hydrolysis in Alkaline Solution, Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, 36, pp. 59–66 (1998)

[1-10] Hans Pistner, Dieter R. Bendi, Joachim Mühling, Jürgen F. Reuther, Poly (l-lactide): a long-term degradation study in vivo: Part III. Analytical characterization, Biomaterials

14, 4, pp. 291-298 (1993)

[1-11] I. Grizzi, H. Garreau, S. Li, M. Vert, Hydrolytic degradation of devices based on poly(DL-lactic acid) size dependence, Biomaterials 16 pp. 305-311 (1995)

(16)

13

[1-12] E.A.R. Dueka, C.A.C. Zavagliaa, W.D. Belangero, In vitro study of poly(lactic acid) pin degradation, Polymer 40 pp. 6465–6473 (1999)

[1-13]D.F. Farrar ,R.K. Gillson, Hydrolytic degradation of polyglyconate B: the relationship between degradation time, strength and molecular weight, Biomaterials 23 (2002) pp.3905–3912

[1-14] A.C. Vieira, J.C. Vieira, J.M. Ferra, F.D. Magalhães, R.M. Guedes, A.T. Marques, Mechanical study of PLA–PCL fibers during in vitro degradation, Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials 4pp.451-460 ( 2011 )

[1-15] Xiaoxiao Han, Jingzhe Pan, Fraser Buchanan , Neill Weir , David Farrar, Analysis of degradation data of poly(L-lactide–co-L,D-lactide) and poly(L-lactide) obtained at elevated and physiological temperatures using mathematical models, Acta Biomaterialia 6

pp. 3882–3889 (2010)

[1-16] Andrew Gleadall, Jingzhe Pan, Marc-Anton Kruft, Minna Kellomäki,

Degradation mechanisms of bioresorbable polyesters. Part 1. Effects of random scission, end scission and autocatalysis, Acta Biomaterialia 10, pp. 2223–2232 (2014)

[1-17] Andrew Gleadall, Jingzhe Pan, Marc-Anton Kruft, Minna Kellomäki,

Degradation mechanisms of bioresorbable polyesters. Part 2. Effects of initial molecular weight and residual monomer, Acta Biomaterialia 10 pp. 2233–2240 (2014)

[1-18] Sam N. Rothstein, William J. Federspiel, Steven R. Little, A unified

mathematical model for the prediction of controlled release from surface and bulk eroding polymer matrices,

Biomaterials 30 pp. 1657–1664 (2009)

[1-19] Xiaoxiao Han, Jingzhe Pan, Polymer chain scission, oligomer production and diffusion: A two-scale model, for degradation of bioresorbable polyesters Acta Biomaterialia 7 pp. 538–547 (2011)

[1-20]Lifeng Dinga, Ruslan L. Davidchackb, Jingzhe Pan, A molecular dynamics study of Young’s modulus change of semi-crystalline polymers during degradation by chain scissions, Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials 5, pp.224 – 230 ( 2012 )

[1-21]Ying Wang, Xiaoxiao Han, Jingzhe Pan, Csaba Sinka, An entropy spring model for the Young’s modulus change of biodegradable polymers during

biodegradation, Journal of the Mechanical Behavior of Biomedical Materials 3, pp.14-21 ( 2010 )

(17)

14

第 2 章 実験方法

2.1 試験片作製方法 2.1.1 供試材

本 研 究 で は ペ レ ッ ト 状 の ポ リ 乳 酸 で あ る Ingeo3001D (NatureWorks LLC CO.Ltd),REVODE190 (HISIN CO.Ltd), 繊維状のEcodear (東レ株式会社)を使用 した.またポリ乳酸の各物性値をTable 2.1.1に示す.

2.1.2 試験片作製

試験片はホットプレス装置 (㈱井元製作所 IMC-1877)を用いて加熱圧縮成形 により板状に成形された.成形サイクルをFigure 2.1.1に示す.成形した板の寸 法は100 mm×100 mm×1.3 mmおよび4.5 mmに成形した.また4.5 mm厚さのも

のは Ingeo の条件でのみ作製した.その後,プラスチック用メタルソーで 100

mm×10 mm×1.3 mmおよび4.5 mmに切り出した.切り出した試験片の切断面は

#180, #400, #600, #800, #1000のエメリー紙で研磨が行われた.

2.2 リン酸緩衝液浸漬試験

材料の生体内環境での加水分解特性を調査するために生体内環境を模擬した リン酸緩衝液に試験片を浸漬し,試験を行った.浸漬媒体にはリン酸緩衝液粉 末 (和光純薬工業,1/15 mol/l, Na2HPO4 K2HPO4, pH =7.4)を1000 mLの精製水に 溶解させて作製したリン酸緩衝液を使用した.浸漬試験はFigure 2.2.1に示すよ うにPPトレー内でリン酸緩衝液に試験片を浸漬し,37ºC一定にしたインキュベ ーター内に置くことで試験を行った.浸漬期間はIngeoがそれぞれ0, 8, 16, 24, 32

週間,EcodearとREVODEは分解の進行がIngeoと比較して,速かったため,分

解の過程をより詳細に観察するため浸漬期間をそれぞれ0, 8, 16, 20, 24, 32週間,

0, 4, 8, 12, 16, 24, 32週間とした.また浸漬後の試験片の表面部を走査型電子顕微

鏡 (Scanning Electron Microscope : SEM, 株式会社日立製作所,TM3000 )を 用いて観察した.

2.3 吸水率測定

自重に対する吸水率を算出するために,リン酸緩衝液に浸漬した試験片を一定

(18)

15

期間ごとに取り出し,表面の水分を拭き取った後に分析天秤で重量を測定した.

浸漬前の乾燥重量m1, 浸漬後の重量m2を式 (2.1)に代入して吸水率cを算出した.

100

1 1

2

m

m

c m [%]・・(2.1)

2.4 結晶化度測定

示差走査熱量計 (Different Scanning Calorimeter : DSC, ㈱島津製作所,DSC-60) を用いて試料と基準物質に熱を加えた際に試料と基準物質の間の熱量の差を温 度の関数として測定し,ポリ乳酸のガラス転位温度変化,結晶化度を算出した.

試験片から約4 mgの試料を切り出しアルミニウムセルに入れ測定を行った.測 定条件は基準物質を空気とし,大気中で約30ºCから昇温速度10ºC / minで200ºC まで加熱した.またポリ乳酸の結晶化度Χcは式(2.2)より算出した.

100

%]

100 [

m c m

c ΔH

ΔH ΔH

X ・・・(2.2)

式中において,ΔHm [J/g]: 単位質量あたりの融解エンタルピー,ΔHc [J/g] : 単位 質量あたりの結晶化エンタルピー,ΔHm [100%] [J/g]: 無限大の厚さを持つ理想的な ポリ乳酸の融解エンタルピーである.ΔHm [100%]の値は135 J/gとした.[2-1]

2.5 分子量測定

分 子 量 測 定 に は ゲ ル 浸 透 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー (Gel Permeation Chromatography : GPC)を使用した.試料はクロロホルム20 mLに約0.4gを溶解 させ,PTFEメンブレン (Whatham, 孔径 0.45 µm)を通して濾過したものを用い た.GPC システムには,GPC カラム (Shim-pack GPC-801C, 排除限界分子量 4×104)を接続し,サンプラー (㈱島津製作所SIL-20A HT), 送液機 (㈱島津製作所 LC-20AD), カラムオーブン (㈱島津製作所 CTO-20A), 検出器 (㈱島津製作所

RID-10A)を使用した.そして得られたFigure 2.3.1のようなGPCクロマトグラム

から数平均分子量Mn,重量平均分子量 Mw,分子量分布を算出した.Mnおよび Mwは式(2.3), (2.4)より計算された.

(19)

16

i i i i

n N

N M N

M W ・・・(2.3)

i i i i

i i

w N

N M N

M M W

2

・・・(2.4)

式中において,Mn : 数平均分子量,Mw : 重量平均分子量,W : 系の全質量,N : 分子数,i : i番目の分割点 (指定時間毎の各積算点),Ni : 各積算点での分子数,

Wi : 各積算点での系の重量 Mi : 各積算点での分子量をそれぞれ表している.

2.6 引張試験

浸漬前後の試験片に対して引張試験を行った.試験片の中央部にひずみゲー

ジ(KFG-2 , 共和電業㈱)を試験片中央部に縦方向に貼りつけ,また試験片両端に

応力集中を防ぐため両面にアルミニウムの25 mm×10 mm×1 mmのタブを接着し た.その際にエメリー紙#180 で試験片およびタブの接着部を研磨した.その後 接着部をクリップで固定し,24 時間放置硬化.接着後引張試験機に試験片を取 り付けた.試験には万能試験機(㈱島津製作所 AGX 10kN)を用い,クロスヘッ ドスピードは0.5 mm/minとした.また引張試験中の試験片の損傷挙動を観察す るためにAE測定を行った.AE測定とは材料においてき裂などの損傷が入った 際に生じる弾性波を検知し,非破壊的に材料の微視的な破壊などを観測する方 法である.本試験で用いたAE測定装置はPCI-2 4chシステム(Physical Acoustics Corporation), 測定に は 100kHz ~2MHz の 周波数特 性を持 つ AE セン サー (AE-900M)を用いた.プリアンプは2/4/6PREAMPLIFER (MISTRAS GROUP Inc.) を用いた.またAE波の位置評定を 行うために AEセンサーを試験片に2点接 着した.測定条件はセンサーのしきい値は 34dB , プリアンプのゲインは 40dB とした.音速はオシロスコープを用いて実験的に測定した650~800 m/sを用いた.

また本研究では弾性波のエネルギーを1AE事象における包絡線の面積[Vs]をAE エネルギーと定義し損傷の発生時間を観察した.引張試験装置およびAE測定装 置をFigure 2.6.1に示す.

(20)

17

Table 2.1.1 Properties of Poly(lactic acid).

Figure 2.1.1 Press Molding Cycle.

Product Ingeo REVODE Ecodear

Density [g/cm3] 1.24 1.25 1.18

Tensile Strength [MPa] 62 50 70

Melting Tenrerature [°C] 170 160 170

Weight Averaged Molecular Weight 100,000 130,000 111,000

(21)

18

Figure 2.2.1 Schematic Diagram of Immersion Test.

Figure 2.3.1 Molecular Weight Distribution.

(22)

19

Figure 2.6.1 Schematic Diagram of Tensile Test and AE Measurement Apparatus.

(23)

20

第2章の参考文献

[2-1] Tadakazu Miyata, Toru Masuko Poly(lactide) Crystallization behaviour of poly(L-lactide),

Polymer, 39, 22, pp5515-5521 (1998)

(24)

21

第 3 章 実験結果と考察

3.1 吸水率変化

Figure 3.1.1 の(a)~(d)に浸漬試験を行った試験片の吸水率の時間変化を示す.

Non-Annealingは熱処理していない試験片,70ºC-24hは70ºCで24時間アニール をした試験片,130ºC-3hは130ºCで3時間アニールをした試験片を表している.

(a)にIngeoの4.5 mm厚さの試験片の結果を示す.浸漬初期において130ºC-3hが

他の2つの条件と比べて吸水率の増加が小さいことが分かる.これは後述の3.2 でも示すが,アニールをしたことにより結晶化度が最も高い値になり,結晶領 域が 3 条件の中で最も多いことが分かる.このことより吸水をした際に水分子 をトラップすることができる非晶域が少なく,吸水率の増加が小さくなったと 考えられる.70ºC-24hの試験片はNon-Annealingの試験片と比べ,吸水率の増加 がわずかに大きいことが分かる.これは結晶化度の値はわずかに70ºC-24h が大 きく,さらに結晶域に挟まれた非晶領域では親水基であるカルボキシル基など の密度が増加し,吸水が促進されるため[3-1],結晶領域がわずかに多い70ºC-24h の試験片の方が吸水率の増加が大きかったと考えられる.また浸漬後期におい

て130ºC-3hの試験片の吸水率が他の2条件はほとんど増加していないにもかか

わらず,増加し続けていることが分かる.これは後述の3.3でも示すが,130ºC-3h の試験片の重量平均分子量の減少が浸漬後期において最も激しいため,加水分 解の進行が最も大きいと考えられ,そのため130ºC-3hの試験片は加水分解によ ってできた空間に水分子がトラップされることにより吸水率の増加が他の条件 と比べ,進行したと考えられる.

(b)にIngeoの1.3 mm厚さの試験片の結果を示す.浸漬初期においては(a)と同

様の傾向が見られた.しかし,浸漬後期において130ºC-3h の試験片の吸水率の 増加は(a)と比べて小さいことが分かる.これは3.3の重量平均分子量の減少量が (a)の条件と比べ小さいことから加水分解の進行も相対的に小さく,そのため水 分子をトラップできる空間も少なくなり,結果的に吸水率の増加も小さくなっ たと考えられる.

また厚さの影響を評価するため(a)と(b)の 3条件を比較したところ,吸水率の 最終的な値が(b)の条件の方が小さいことが分かった.これは一定上の厚さを有 するポリ乳酸試験片は内部で加水分解が加速される内部加速型塊状分解[3-2, 3-3]

という特殊な分解機構を有するため,厚い試験片の方が加水分解速度は速くな る.よって,加水分解によって生じた空間に水分子がトラップされるため,薄 い試験に比べ加水分解速度の速い,厚い試験片の方が吸水率の増加が大きかっ たと考えられる.また内部加速型塊状分解機構であることを確認するため32週

(25)

22

浸漬試験片の内部のみをサンプルとして切り出しGPC測定を行い分子量の調査 を行う必要があると考えられる.

(c)に Ecodear の 1.3 mm 厚さ試験片の結果を示す.70ºC-24h の試験片は

Non-Annealing の試験片に比べ吸水率の増加が小さいことが分かる.これは 3.2

で示すように結晶化度の値がNon-Annealingに比べ非常に高く,そのため水分子 をトラップできる空間が少なくなり,吸水率の増加が小さくなったと考えられ

る.130ºC-3hの試験片は浸漬初期においては

70ºC-24h試験片と同様の傾向が見られたが浸漬が進むにつれ50日以降あたりか

ら吸水率の増加が大きくなっていることが分かる.そのため表面部をSEM観察 したところFigure 3.1.2に示すような傷が確認された.この傷は試験片が吸水し たことにより膨張したが,試験片の劣化が3.3の重量平均分子量の減少の結果か らも大きく,その変形に対して耐えることができず,表面にき裂が生じ,そこ から吸水が大きく進行したと考えられる.

(d)にREVODEの1.3 mm厚さ試験片の結果を示す.浸漬初期ではわずかにで

はあるが70ºC-24h吸水率が高い.これは(a)の条件と同様の理由が考えられる.

また 130ºC-3hの試験片はアニールの終了した時点でペレットの状態から 3.3 で

示すように重量平均分子量が約 3 割も減少していることからも分かるように熱 分解による劣化が激しかったため,吸水の進行が浸漬中期以降で速くなったと 考えられる.浸漬後期では全ての条件で吸水率が急増していることが分かる.

これは表面を観察したところ(c)と同様の傷が確認されたため,同様の理由で吸 水率が増加したと考えられる.

(26)

23 (a) Ingeo4.5 mm

(b) Ingeo1.3 mm Figure 3.1.1 Water Absorption.

(27)

24

(c) Ecodear1.3 mm

(d) REVODE1.3 mm Figure 3.1.1Continued.

(28)

25

Figure 3.1.2 Surface of REVODE1.3 mm (32 weeks).

(29)

26

3.2 結晶化度変化

Figure 3.2.1の(a)~(d)に結晶化度の経時変化を示す.(a)にIngeo4.5 mmの浸漬期 間ごとの結晶化度の経時変化を示す.全ての条件で浸漬期間の増加と共に結晶 化度の値が増加していることが分かる.これには2つの原因が考えられる.1つ は非晶域の分解が原因となるものである.半結晶性高分子材料は非晶域が優先 的に加水分解を受けるという性質を有しており,そのため結晶領域は大きな加 水分解を受けず,非晶域が優先的に加水分解を受けるため,相対的に結晶化度 が増加したと考えられる.もう1つは結晶領域の増加である.DSC 測定の結果

からFigure 3.2.2, 3.2.3 に示すような融解エンタルピーと結晶化エンタルピーの

値の経時変化を見ると,融解エンタルピーが増加し,結晶化エンタルピーが減 少していることが分かる.このことから結晶領域が増加して,非晶領域が減少 していることが分かる.またFigure 3.2.4に未浸漬の試験片と水分を含んだ状態 の8週浸漬の試験片のDSC曲線の比較を示す.未浸漬試験片のガラス転位温度 は約64ºC,水分を含んだ8週間浸漬試験片のガラス転位温度は約 56ºCであり,

約 8ºC 減少していることが分かる.このことから試験片が吸水したことにより 分子鎖の易動性が向上していることが分かる.よって分子鎖の易動性が向上す ることにより,非晶域の分子鎖のフリーな末端が結晶領域に吸着し,結晶化を 引き起こし,結晶領域の量が増加したと考えられる.しかし 24 週浸漬以降で

Non-Annealing,70ºC-24h の条件で結晶化度が減少していることが分かる.これ

はFigure 3.2.2に示すように融解エンタルピーが32週浸漬で減少していることか

ら結晶領域自体の量が減少していると考えられる.原因としては,試験片内部 からの結晶の放出が考えられる.しかし,130ºC-3h の条件の試験片は結晶化度 が減少せず増加した.これは試験片自体が厚く,結晶サイズも大きいため,試 験片外部に結晶が放出されなかったことが原因と考えられる.

(b)に Ingeo1.3 mm の 浸 漬 期 間 ご と の 結 晶 化 度 の 経 時 変 化 を 示 す . Non-Annealingと70ºC-24hの条件に関してはIngeo4.5 mmと同様の傾向が見られ た.しかし,130ºC-3hの試験片はIngeo4.5 mmとは異なり,結晶化度が減少した.

これは試験片厚さがIngeo4.5 mmと比較した時,薄いためこちらの条件では結晶 が試験片外部へ放出され結晶化度が減少したと考えられる.

(c)に Ecodear1.3 mm の浸漬期間ごとの結晶化度の経時変化を示す.この条件

でも上述と同様の理由で結晶化度が増加し,その後,結晶化度が減少したと考 えられる.

(d)に REVODE1.3 mm の 浸 漬 期 間 ご と の 結 晶 化 度 の 経 時 変 化 を 示 す .

Ecodear1.3 mmと同様の傾向が見られた.

(30)

27 (a) Ingeo4.5 mm

(b) Ingeo1.3 mm

Figure 3.2.1 Crystallinity of Immersed Poly(lactic acid).

(31)

28

(c) Ecodear1.3 mm

(d) REVODE1.3 mm Figure 3.2.1 Continued.

(32)

29

Figure 3.2.2 Melting Enthalpy of Ingeo4.5 mm.

Figure 3.2.3 Crystallinity Enthalpy of Ingeo4.5 mm.

(33)

30

Figure 3.2.4 DSC Curve of Ingeo1.3 mm.

(34)

31

3.3 分子量変化

Figure 3.3.1の(a)~(d)に重量平均分子量の経時変化について示す.(a)にIngeo4.5 mm の 結 果 に つ い て 示 す . 未 浸 漬 試 験 の 重 量 平 均 分 子 量 が ペ レ ッ ト の Mw=100,000に対してNon-Annealingと70ºC-24hの条件では,ほとんど変化はな かったが,130ºC-3h は約 10%程度減少していることが分かる.これはアニール した際に 130ºC での条件は設定温度が高いため試験片が熱分解したことによる 影響が顕著に出たと考えられる.また浸漬が進行するにつれ各条件で加水分解 によって重量平均分子量が減少していることが分かる.最終的に重量平均分子 量が未浸漬試験片に対して Non-annealing と 70ºC-24h は約 20%,130ºC-3h は約 30%減少した.

(b) にIngeo1.3 mmの結果について示す.未浸漬試験片の結果からアニールし

た際の熱分解は起こっていないと考えられる.これは(a)の条件は試験片が厚く,

熱が放出されにくいため熱分解が生じたが(b)の試験片は薄いため熱が放出され やすく,熱分解が生じなかったと考えられる.またこちらの条件でも加水分解 による重量平均分子量の低下が確認され,最終的に重量平均分子量が未浸漬試 験片に対してNon-annealingと70ºC-24hは約10%,130ºC-3hは約20%減少した.

(c) にEcodear1.3 mmの結果について示す.130ºC-3hの結果から,未浸漬試験片

の重量平均分子量がペレットのMw=110,000から約30%も減少していることから,

アニールした際に熱分解が起こっていると考えられる.またこちらの条件では

(a), (b)の条件と比較して大きく加水分解が進行しており,最終的に未浸漬試験片

に対してNon-annealingで45%, 70ºC-24hは約50%,130ºC-3hは約60%減少した.

(d) にREVODE1.3 mmの結果について示す.この試験片ではすべての条件で

ペレットと比較して未浸漬試験片の重量平均分子量がNon-Annealingと70ºC-24h はペレットのMw=130,000に対して約15%,130ºC-3hは約30%減少していること が分かる.しかし Non-Annealing と 70ºC-24h は重量平均分子量の低下量がほと んど変わらないため,アニールした際の熱分解の影響よりも試験片作製時にペ レットを融解させたことによる影響が大きいと考えられる.これは熱分解反応 の多くを分子鎖末端が末端付近の分子鎖を攻撃するエステル交換反応によって 占められるため[3-4],末端が多く存在するREVODEにおいては試験片作製時にも 熱分解が生じたのではないかと考えられる.しかし130ºC-3h の条件では低下量 がさらに大きいため,試験片作製時の影響に加えてアニールの影響も大きく関 係してきていると考えられる.(d)の条件でも加水分解の進行が速く最終的に未 浸漬試験片に対して重量平均分子量が Non-annealing と 70ºC-24h は約 40%,

130ºC-3hは約60%減少した.

Figure 3.3.2にIngeo4.5 mmの分子量分布の経時変化を示す.全ての条件で分

図

Figure 1.2.4 Classify of Hydrolysis of Biodegradable Plastics Focused on Degradation Media
Figure 1.2.6 Schematic Representation of Structure of the Crystallized Polyester.
Figure 2.6.1 Schematic Diagram of Tensile Test and AE Measurement Apparatus.
Figure 3.1.2 Surface of REVODE1.3 mm (32 weeks).
+7

参照

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