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上谷地遺跡 における熱残留磁化獲得実験

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(1)

秋田大学鉱山学部資源地学研究施設報告,第61号,51‑62ページ,19963

上谷地遺跡 における熱残留磁化獲得実験

西谷忠師 *・菊 山浩喜 **

Modelexperimentofthermoremanent magnetizationatUwayatisite

TadashiNISHITANI*andHirokiKIKUYAMA**

(Abstract)

ExperimentofacquisitionofthermoremanentmagnetlZationhasbeenmadeatUwaya‑

tisiteintwoplainkilnsandanopen‑airfire. Thefirstaim ofthisexperimentisto inspectwhetherremanentmagnetization showsthetrue Earth's magnetic field. The secondaim ofitistorevealthetemperaturedistributionasafunctionofdepthandtime.

ThisdistributionindicatestherelatlOnShipbetweentheamountofheatandthedispersion ofremanentmagnetization. Considerabletemperaturedifferencesexistaccordingtothe structureofkilnandtheposltionofcombustion. Itreflectstotheintensityanddirection ofremanentmagnetization. Archeomagneticspecimenscollectedfrom wallsideshowed moreaccurateresultsthanthatfrom floorsideofakiln. Ifweareabletogetsamples from thewallside,Wecanestimatemostsuitabledirectionofremanentmagnetization.

Thismethodiseffectiveforasitethatexperiencealow temperature. Inanexcavatedsite, itisnecessarytoreproducewallfacestorevealthetruedirectionofmagnetization. We mustpayattentiontothelocationofsampling,becausetheeffectofheatdiffersfrom placetoplace.Thefloorfacecoveredwithashmayreceivesmallereffectofheating.SusI ceptibilitymeasurementindicatesaroughideaofstabilityofmagnetization. Theintensi tyofremanentmagnetizationalsoshowsthequalityofdata. Inordertoknow thecorrect behaviorofsecularvariation,Weshould examinea suitablelocation ofsampling and developtheanalysismethodonthebasisofthepresentexperiment.

Keywords:thermoremanentmagnetization,archeomagnetism,kiln,temperature distribution,susceptibility

51

(平成71211日受付,平成816日受理)

*秋 田大学鉱山学部資源 ・素材工学科.

InstituteofApplledEarthSciences,MiningEngineeringandMaterialsProcessing,MiningCollege,AkitaUniversity.

**秋 田大学鉱山学部鉱山学研究科. (現在,川崎地質株式会社)

MlningGeology,GraduateSchoolofMining,AkltaUnlVerSlty.

(2)

1.は じめに

物質中の磁性鉱物 は,熱を受 けることによって安 定 で強 い熱残留磁化 (Thermoremanentmagne‑

tization;TRM)を獲得 す る.磁化方 1=ま冷去即寺 の地球磁場方向に平行であり,その後の地球磁場変 動 に対 して も安定 と考え られている.従 って,磁性 鉱物を含んでお り,熱を受 けた試料 の残留磁化お よ び年代を数多 く調べ ることにより,過去の地球磁場 変動の様子を解明す ることが可能である. このよ う な条件を満たす試料 としては,溶岩,火砕流等 の火 山噴出物,考古学的 な分野 で は土器 や鉄器 を作 る 窯,炉,そ して焼土遺構等が挙 げ られる. この中で も特 に焼土遺構 は,同時 に出土す る土器か ら考古学 的に年代が特定 され ることが多 く,良質な試料 とな り得 る. これ らの試料 の測定 か ら,現在 で は過去 2000年間の地磁気永年変化が ほぼ明 らかにされて い

(Hirooka,1971).

遺跡で検出され る焼土遺構 は考古学的にも,また 考古地磁気学的見地か らも重要な試料であ り, これ まで に も多 くのデー タが公表 されて い る (利 部 , 1987;潮見,1988;森永 ら,1989).しか し考古地磁 気試料 として適格であるか どうかを調べた例 はわず かである.中島正志 ら(1976)の実験 は大阪 の泉北 丘陵で大規模な登 り窯を作 り,実際に窯を焚いて そ の床か ら試料を採取 し,残留磁化の測定を行 って い る.結果 は,採取 された試料の残留磁化方向はほぼ 現在の地球磁場方向 と一致 してお り,登 り窯 は考古 地磁気試料 として適格であると述べている. この実 験で は案内の温度は1000oC以上 にな ってお り, 読 料 の主要 な熱残留磁化の担 い手である磁鉄鉱 ・赤鉄 鉱のキュ リー点 (それぞれ580,675oC)を大 き く 越えている場合の例である. ところが,実際に考古 地磁気試料 として用いる焼土遺構 は登 り窯ばか りで はな く,それ ほど高温 にな らなか った遺構 も多 く存 在す る.

考古地磁気学では地磁気の変化の様子,すなわ ち 地磁気永年変化を調べ ることに主眼 をおいて い る.

地磁気永年変化 は地球磁場のダイナモ作用のメカニ ズム解明のために必須 のデータであ り,地域 によ る

差,変動の大 きさなどは地球の運動 ・歴史を知 るた めには欠かす事の出来ないデータである.地磁気三 成分 の直接観測 は過去180年程度 しかな く,過去の 地磁気変動 は磁場の 「化石」 としての残留磁化 を調 べ る以外方法 はない・残留磁化か ら過去の地球磁場 を再現す る努力 は多 くなされ,地磁気が反転 した こ と,プ レー ト運動 の解明等多 くの新発見がなされて きた. しか し,より精密で信頼で きる地磁気変動 も 求め られてい る.磁気層序か ら地層の上下関係の特 定,地殻変動 の歴史 の解明,地層相互の対比,年代 の推定,などが古地磁気 に課せ られた重要な課題で ある.考古学 の分野で も縄文,弥生時代の遺跡が数 多 く発掘 され,新 しい事実 も次々と報告 されている.

土器編年だけでな く,年代推定の手段 としての考古 地磁気測定 も重要視 され,地磁気永年変化 を縄文, 弥生時代 まで さかのぼって明 らかにす る必要が生 じ て きた.縄文,弥生時代の主要な試料 は焼土遺構で ある. しか し焼土遺構か ら得たデータがすべて信頼 で きるものなのか,過去 の地球磁場を推定す る上で 問題 はないのか,その他注意すべ き点 は何であるの か,まだ検討 を要す る項 目は多 くある.

上記 の疑問 に対す る解答を得 るため,屋外で実際 に火を焚 き熱 を加 えて獲得 され る磁化の変化を追跡 した.実験 を行 ったのは,一つ は物の煮炊 きに用い た炉や土器等を焼 くための焚火を想定 したもの, ち う一つ は伏せ焼 きの炭窯を想定 した ものである.

本実験の第一 の目的 は,熱を受 けた部分の残留磁 化が地球磁場を正 しく獲得 しているのかを検証する ことである.第二 の目的 は,燃焼時の深 さ方向ある いは水平方向の温度分布を知 る事である. この分布 か ら,試料 が受 けた熱の大 きさと残留磁化方向の関 係を明 らか にす ることがで きる,そ して,遺構 のど の部分が考古地磁気試料 として最 も適当であるかを 検討す る.第三 の目的 は,上記 の測定か ら,地球磁 場獲得時の特徴の把握 と試料を採取す る最適な場所 を特定す ることである.

2.実験方法

2.1 実験 日時,実験窯 ・炉の形態

実験 は秋 田県平鹿郡山内村上谷地遺跡で19927

(3)

上谷地遺跡における熱残留磁化獲得実験

2日〜 10日に行 い, この うち2,3,8日に燃焼実 験を行 った.実験用 に作成 したのは円形,および方 形の平窯 と円形の浅 い堀込みによる焚火用の炉であ (Fig.1).焚火用の炉 は直径約74cmのほぼ円形 で,深 さはお よそ13cm 〜 22cmで あ る. 円形平窯 は直径100cm,深 さ54cm 〜 100cmで北か ら南 へ と 下 る傾斜地 に作 ったため南端では最 も浅 く,北端 で

は最 も深 い.方形平窯 は東西100cm,南北134cm, 深 さ32cm 〜 76cmで,円形平窯 と同様,南辺で最 も 浅 く北辺で最 も深 い.燃料の薪 には直径が5cm〜25 cmの楢,桜材を使用 した, なお,熱電対 は燃焼実 験後 も考古地磁気用試料を採集す るまで設置 したま まとし,時々温度測定を行 って変化をモニターした.

2.2温度測定

温度 の測定 にはクロメル ・アルメル熱電対を7 使用 し,デ ジタルの電圧計 (ADVANTEST社製 , TR6851)を使用 して起電力を測定 し,後で起電カー 温度換算表 によって温度へ変換 した.燃焼実験中 の

N/

praFnrectanglekEln

T

4m

55

pFalnClrCleklTn

53

Openalrflre

;I

4m

ND NC NB

Flg.1Locationoftwoplainkllnsandthe open‑alrfire.

52

53

起電力測定 は1‑ 5分間隔 とした,熱電対 は,水平, 深 さ方向 と もに温度変化 がわか るよ うに配 置 した (Fig.2).なお,1台 の電 圧計 で6‑ 7本 の熱電対 を ロータ リースイ ッチで切 り替えることによって測 定 したため,温度測定値 は各熱電対で同時刻で はな

く,数10秒程度のズレがある.

2.3燃焼の方法

焚火用の炉 については実際 に焚火をす るときを想 定 して,薪を炉の中心か ら放射状 に配置 して燃焼 を 行 った (72日).薪 には太 い枝 を主 に使用 した が,最初の うちは細 い枝を多 く用いた.

平窯ではで きるだけ伏せ焼 きによる炭の製法 ( 田山林会編纂,1925)に近づ けるよう,実験前 に窯 を乾燥 させ るために空焚 きを行 った.平窯では燃焼 実験を2回行 った.1回 目は円形 ・方形両平窯 で, 2回 目は方形平窯で燃焼 を行 った.1回 目の平窯実 験 において,円形 の窯で は太 い薪を縦に立てて入れ, 方形 の窯で は太い薪を井型 に組んだ.隙間に細 い薪 を入れて火がまわ り易 い様 に した.円形の平窯で は 1.6時間後,方形平窯では1.7時間後 に火の勢 いが安 定 したところで トタンを上か らかぶせ,さ らに, そ の上 に土をかぶせて天井 を作 った. トタンは,かぶ せた土が崩れない様 にす るためである. この状態 は 完全な密閉状態で はな く,窯の南北 には20cm程度 の隙間が開いている (7月3日).

二回 目の燃焼実験 は方形平窯でのみ行 った.薪 は 1回 目と同様,楢,桜材 を使用 し, その組 み方 も1 回 目と同 じに した.1.2時間後,火 の勢 いが安定 し たところで窯全面 に トタンをかぶせ,さらにその上 か ら土をかぶせて密閉状態を作 った (7月8日).

2.4 焼土採取法

焚火用炉跡 の焼土 の採取 は燃焼実験 の7日後 の7 9日に, 円形平 窯で は燃焼7日後 の7月10日に, 方形平窯で は73,8日の2回 の燃焼後2日経 過 した7月10日に行 った.

採取 には,焼土遺構の試料採取 と全 く同 じ方法 を 用 いた.具体的にはポ リカーボネイ ト製で,一辺24 mmの立方体のサ ンプルホルダーをオ リエンテークー

を用 いて方位を定 め,土中に打 ち込み試料を採集す る. このときオ リエンテークーの長軸 は走向方向 と

(4)

(a)

7 mラ・ . . ! G l 1 6 c m ド ? 7 7 7 7 7 7 叩

Z*

'7777Zj

c7m5

G

I 16 cm 7777ア

C (3cm)

B(6crn)

A (10cm)

Pu

『 7 7 F ( 0 c m ,ド / } / / / =

● C〔

/ /

3cm)

/ / r / / / / : , / / / / / / /

● B(6C叫

● A(10c叫

Fig.2 A rougharrangementofthepositionofthermo‑couples. VertlCalandhorizontal scalesaremodified. (a)Sixposltionsroytheopenairfire.(b)Sixpositionsforthe

plainrectanglekllnandoneposltionfortheplalnCirclekiln. (C)Sevenpositionsfor theplainrectanglekilnlnthesecondheatingexperlment.

一致 させ るよ うに し,中に挿入 したサ ンプルホルダー の一辺 もこれ と平行 にな るよ うにす る.試料 の走 向 はク リノメーターで測定 し,傾斜 はプラン トンコ ン パ スを用 いて測定 した.採取場所 は窯 ・炉の床お よ び壁面 と炉 の周縁部分であ る (Fig.3).

2.5帯磁率測定

帯磁率の測定 にはBISON INSTRUMENTS社製 MODEL3101Aを用 いた. セ ンサーは直径約16cm

の円盤状 の もので あ り,燃焼実験前後 に窯 ・炉 の床 面及 び窯 ・炉 の周囲を20cm間隔 のメ ッシュで測定

した.壁面 は部分的 に数 カ所測定 を行 った.

3. データ処理

3.1 温度測定データ処理方法

温度 の測定 は熱電対 を用 いて行 ったため,実際 に 得 られ る値 は起電力であ る. このため起電力 として

(5)

上谷地遺跡における熱残留磁化獲得実験

Z

0 50cm

Ll■̲̲

.

N

・31

●̲・

21●●

● 1 4

15 0I‑ ・・⊥ ⊥ ⊥J 1m

19

42

6

30

● 9

+

2422

2

●2

1

3

0 1m

Fig・3 PosltlOnOrCOllectedspecimensforpale

〇magneticstudy. (a)Dotted llneindi catestheedgeoftheopen‑airfire. (b)the plainclrClekiln. (C)theplainrectangle kiln.

得 られた値を,温度 に変換す る必要がある. この変 換には理科年表 (1994)のクロメル ・アル メル熱電 対の基準起電力表を用いた.個 々の熱電対の起電力 のば らつ きは氷水の温度を測定 して補正 を行 った.

3.2 考古地磁気試料のデータ処理方法

考古地磁気用試料 に対す るデータ処理の方法 は遺 跡の焼土遺構か ら採集 した試料 に対 して用 いる方法 と同 じである.残留磁化 の測定 にはPRINCETON APPLIED RESEARCH社製SPINNER MAGNE

55

TOMETER MODELSM‑2を使用 した.試料採集 時の走向,傾斜を もとに,測定値を試料採集地点 の 座標系 に変換 して残留磁化三成分を求める. これで 残留磁化強度,偏角,伏角が得 られ る.個 々のデ ー タのまとまり具合を表 す数値 と してFisher (1953) による精密度パ ラメーター (k)および95%信頼 区 95)を用 いる.kの値が大 きいほど,また α95 の値が小 さいほどデータのまとまりが良 いことを示 す.処理の手順 は西谷 (1991)に詳 しい.

4. 実額結果 4.1 温度測定結果

測定開始時点か らの経過時間を横軸 にとって各熱 電対で得 られた温度変化をグラフに示 したのがFig.

4‑Fig.6である.Fig.4には焚火用炉 の燃焼実験

0005

(uo)aJnlt2JadaJ

.

E

D

0 1 2 3 4 5 6

Tlme(hour)

Fig・4 Temperaturevarlationintheopen‑air fireexperlment.

000000004321

(uo)aJnlt2JaduJa1

0 2 4 6 8

Tlme(hour)

Fig.5 Temperaturevariationintheplain rectangleandcirclekiln.

(6)

00000∩)0∩)00000654321

(oo)aJntt=Jada

0

2 4 6

Tlme(hour)

Fig.6 Temperaturevariationintheplaln rectanglekilnforthesecondtime.

の結果を示 してある.図のA・B・C等 の記号 は各 熱電対の記号 と一致す る.Fig.5は方形平窯の一 回 目の燃焼実験の温度変化 で あ る.熱電対Fは同時 に実験を行 った円形平窯の温度変化 で あ る.Fig.5 の2.5‑3.5時間 の部分 は変化 が直線 的 にな って い るが, これ は豪雨のため測定を中断 したためである.

6.4時間後 に全 ての点 で温度 の減少 が見 られ るが, これは測定器の不具合 によるもので実際には温度の 低下 は起 こっていない.Fig.6は方形平窯で一 回 目 の燃焼実験 を終えた後,二度 目の燃焼実験 を行 った 時の温度変化である.計測開始後5時間30分 で薪 を 取 り出 したため5.5時間の位置で温度 が急 に下 が っ ている.

最高到達温度 は焚火用の炉の床表面(E)147℃, 1回 目方形平窯燃焼実験の壁面 (G)で310℃,同 じ

く床表面 (E)で491℃,二回 目の方形平窯燃焼実験 の壁面 (F)が594oC,床表面 (D)が524〇Cとな っ た,温度 は最初急激 に上昇 したが,その後の変化 は 緩やかであ った.全体的に温度 は床 よりも壁面で高 くなる傾向にあった.平窯で行 った2回の実験では, ある程度火がまわ ったところで窯を密閉 して還元状 態を作 る予定であ った. これは酸化状態での燃焼 よ りも高い温度を実現す るためであ った.残念なが ら 密閉後 に温度 は上昇 しなか った.密閉後 に温度が上 昇 している中島正志 ら(1976)の結果 とは異 な って いる.窯の構造 に問題があ ったのか,密閉方法 が悪 か ったのか,原因 ははっきりしない.

燃焼実験後の窯の状態 は,温度 の測定結果を忠実 に反映 している.特 に顕著な温度差の現れた床面 と 壁面で は大 きな差がみ られた.窯 ・炉 は熱を受けた ために堅 く締 まっているが・その堅 さや色などは床 面 と壁面で大 きく異 なっていた・二つの平窯の床表 面 は黒褐色で,少 し削 ると内部 は明黄褐色を呈 した.

表面 は堅 く締 ま って いたが,2‑ 3cm下 の部分で は実験前 と堅 さは変わ らなか った. これに対 して二 つの平窯の壁面 は赤褐色 ・黒褐色 ・暗赤褐色を呈 し ていた.また焚火用炉の壁面及び周縁部 も明赤褐色 . 赤褐色 ・黒褐色を示 した.両者 とも表面下数cm内 部 まで同様の色を示 し,内部まで煉瓦状に堅 く締まっ ていた.ただ し,堅 さと色 は同 じ窯 ・炉であって も 部分的にかな り異な る状態を示 していた.焚火用炉 の壁面を見て も下郡 は黄色 っぽい色を呈す るのに対 して上郡 は赤みが強か った.また,方形平窯の床面 および壁面 の一部 は白色を示すが, この部分 は炭化 した薪 (燥)が土をかけたにもかかわ らず,翌 日ま で燃 え続 けていた部分である.

4,2残留磁化測定結果

二つの窯 ・炉の採集試料の走向 ・傾斜の値をもと に自然残留磁化 (NaturalRemanentMagnetiza‑

tion,NRM)の強度 お よび方 向を求 めた. これ ら

N

S

Fig・7 DlreCtlOnOfnaturalremanentmagnet 1Zation forallspecimens collected from theopen‑airfire.

(7)

上谷地遺跡における熱残留磁化獲得実験

/

Fig.8 DlreCtionornaturalremanentmagnet1 zatlOnforallspecimenscollectedfrom the plaincirclekiln.

N

+

' ' ・

J E

S

Flg.9 Directionofnaturalremanentmagneti zationforallspeclmenSCOllectedfrom the plalnrectanglekiln.

をシュ ミッ ト円上 に表 した ものが,Fig.7‑Fig.9 である.図中の ×印は平均値であ り, ここを中心 と

した楕円はα95を頂角 とす る円錐 と単位球面 との 交線を表 している.黒点 は下 向 きの伏角 を表 わ し, 白抜 き点 は上 向 き伏角 を表 わす. これ らのNRM には,燃焼時に獲得 した熱残留磁化以外 に,粘性 残

57

留磁化 ・等温残留磁化等の後で獲得 した二次的な残 留磁化成分が含 まれている. しか し燃焼実験か ら残 留磁化測定 まではわずかな時間であるため, この二 次的な磁化の影響 は小 さいと思われ る.

二次的磁化成分が本当に無視で きるほど小 さいか また地球磁場方向を記録 した残留磁化成分が どの程 度安定かを見 るために,名案 ・炉の試料の うちか ら 4‑ 6個ずつパイロッ トサ ンプルを選 び,段 階交流 消磁を行 った.交流消磁 とは,ヘルムホルツコイル 中の無磁場空間で試料を二軸 または三軸方向に回転 させなが ら交流磁場 をかけ,徐 々に交流磁場強度 を ゼ ロにす ることにより残留磁化を消去す る方法であ る. この手法を交流磁場強度を段階的に上 げなが ら 繰 り返す.それぞれの段階での残留磁化強度 と方 向 を検討す ることで,磁化の安定性 と二次磁化の消 え 方を知 ることが出来 る, これ らの試料の結果を見 る 限 り,NRMと各段階の交流消磁後 の残留磁化方 向 には大 きな違 いが見 られなか った.床面 ・壁面 の両 試料 とも,8(mT)以上の交流消磁 においては方 向 にば らつ きがみ られた. これは獲得 された残留磁化 がすべて消磁 されたためであろう.特 に壁面か ら採 取 した試料の場合 はほとんどが12(mT)付近 まで 磁化 は安定であ った.従 って二次的な磁化 は問題 と な らないと考え られ,すべての試料で 自然残留磁化 が一次磁化 と考えて も良 いと結論づ けられ る.

4.3 帯磁率測定結果

燃焼実験前後 に床面および窯 ・炉 の周囲の帯磁率 測定を行 った.例えば,焚火用炉で行 った結果では, Fig.10が加熱前,Fig.11が加熱後の帯磁率である.

焚火の位置は図 に点線で示 した.加熱 によって帯磁 率 は10倍近 くにまで増大 していることがわか る.

2回の平窯燃焼実験で は実験前後で帯磁率の軍頁 著 な変化 は見 られなか った. この理由と して2つ の 可能性が考え られ る.1つには計2回 の平窯 の燃焼 実験 に比べて,焚火用の炉では酸化状態での燃焼 時 問がかな り長か った事が挙 げ られる.平窯で も燃焼 時間 自体 は焚火用の炉 とほとん ど変わ らないが,義 初の1,2時間以外 は密閉状態 で薪 と酸素 の供給 が 少ない燃焼であ った. この事が強磁性鉱物 の生成 に 違 いを生 じさせた可能性がある. もう一つの可能性

(8)

(uc?)LuJON

East(cm)

r ..一丁r r.・.・.一丁

o 1OO 200 3OO 400 500

SusceptlblHty(10‑6emu/cm3)

Fig.10 Susceptibllitymeasurementbeforethe heatingexperimentlntheopen‑alrflre.

Dotted circle indlCateS the position of itsflre.

C))LujON

150 200

East(cm) 258

O 1OO 200 300 400 500

SusceptbiHty(10‑8emujcm3)

Fig.ll Susceptlbility measurementafter the heatingexperiment.

は平窯 と焚火用炉 の床面 の土質 の違いが考え られる.

平窯 は深 く掘 りこんだため,床 は粘土層であ ったが 焚火用炉 の床 は浅 い掘 り込 みのため耕作土であった.

この土質 の違 いが帯磁率 の違 いに影響 してい るとも 考え られ る.実際,燃焼実験前 の帯磁率 は平窯 の ほ

うが焚火用 の炉 に比べて2倍以上大 きか った.

5.考察

5・1窯 ・炉の燃焼時の温度分布 とその時間変化 二つ の窯 ・炉 の温度分布傾向 は非常 に似 て いる.

温度測定場所 の うち,最高温度を示 した部分 は全て 壁面であ り,次 いで床表面,そ して床下の順である.

平窯 はあ る程度温度が上 が って密閉 した段階で温度 の上昇 は止 まって しまい,最高温度を示 していた時 間 はわずか数分であ った,平均的 に は床面 は100oc

〜150℃ 程度である. しか し窯 の密閉を行 わ なか っ たな らば最高到達温度 を保 っていた と思 われ る.焚 火用の炉 と比べ ると,同 じ燃焼方法であ るにもかか わ らず窯 の形態 によって温度 に差が出 るという事が 分か った.また,同 じ床表面で も場所 によ って温度 の差がかな りあることもわか った.薪 の燃 え方 には む らがあ り,同 じ窯 の中で も温度 は均一で はないの であろう. また薪が燃 えて床 に堆積 した灰 には断熱 効果があるよ うで,灰が厚 く堆積す ると温度上昇が 鈍 り,それを取 り除 くと温度 は上昇 した.同 じ床面 で も場所 によって温度 に差が出 るのは,灰 の堆積 し た厚 さの違 い も影響 しているのであろ う.

床面か ら下 の深 さと温度 との関係 は直線的ではな く,表面 か らわずか下方 にゆけば温度上昇率 はかな り低 くな った.6cm以 上 の深 さにな ると温 度 の上 が り方 は極端 に鈍 くな り,熱が窯 の深部 まで伝わ り に くい とい う事がわか った.表面がいくら高温でも, 少 し内部 で は温度 は表面 ほど高 くはないと考えたほ

うがいいよ うであ る.表面 と異 な り,内部 の温度上 昇率 は非常 に鈍 く,内部 をあ る程度 の高温 にまで上 昇 させ るにはかな りの時間が必要 なよ うで ある.今 回 は半 日程度 しか燃焼 を続 けなか ったが,燃焼終了 後 も内部 の温度 は徐 々に上が り続 けていたので,煤 焼時間を もっと長 くすれば内部 の温度 はもう少 し上 が ったであろ う. この事 を考え ると,実際 の遺構で はその種類 によって内部 まで熱を受 けやす い ものと そ うでない もの とがあるといえ る.長時間連続 して 使用す る炭窯や土器を焼 くための窯で は,内部 まで

(9)

上谷地遺跡における熱残留磁化獲得実験

熱が伝導 しやすい環境 にあると言え るし,短時間 の 断続使用が多いと思われ る煮炊 き用の炉や焚火では, それ ほど内部 まで熟が伝導す る環境ではないと言え よう.

5.2残留磁化方向の精度 と温度の関係

加熱後 に採集 した試料か ら求めた残留磁化方向は ある程度のば らつ きがみ られた.理科年表(1994年) によると,1990年の上谷地遺跡 (北緯39016.1,東 140038.28′)の偏角 は‑7.780 (西偏),伏角 は 52.980である. これに対 して,測定により得 られた 平均偏角 は60‑ 110とな り20‑ 30の誤差,平均伏 角は540‑ 640とな り20‑ 120の誤差がある.

これ らの試料を壁面か ら採取 した ものと床面か ら 採取 した ものとに分 けて平均を求めた結果がTable

59

1である.円形平窯の例をFig.12,Fig.13に示す.

壁面か ら採取 した ものの方が明 らかにまとまりが良 く,残留磁化方 向の誤差 は偏角で お よそ20前後, 伏角でおよそ40前後であ り,考古地磁気試料 と し て十二分 に利用可能である.それに対 して床面か ら 採取 した試料の磁化方向はあまりまとまりが良 くな い結果 となった.床表面温度 はほとん ど100‑ 150oC で推移 したのに対 して,壁面は火炎のあたり方によっ 300‑ 600℃ にも達す る部分があ り, 床面 と壁面 の受 けた温度差が反映 された結果であろう.また燃 焼実験後の窯,炉の壁面では赤化 した部分が多 くあ り,堅 く締 まっているのに対 して,床面で は赤化 し た部分 はみ られず,堅 さも壁面 ほ どで はなか った.

このような見かけ上の焼 け具合 ともこの結果 は一致

Table1 MagnetlCparametersaftertheheattreatment NumberofNRMlntenSlty meanDec, meanlnc specimens (emu/ど) (°eg) (°eg) open‑alrflre(allspecimens)

collectedfrom thefloor co11ectedfrom thewall

x≧100×10 6emu/cm3 x<100×10p6emu/cm3

plalnClrCleklln(allspeclmenS) collectedfrom thefloor collectedfrom thewall x≧100×10 6emu/cm3 x<100×10 6emu/cm3

plalnrectanglekiln(allspeclmenS) collectedfrom thefloor co11ectedfrom thewall

x≧100×106emu/cm3 x<100×10 Semu/cm3

000 111

XXX

286123

01982322

ー9.55 13.61

3.86 2.91

‑1705

7︹∠9675410442

72291902304974955445 8350U10604027826111111111080325894265316=HH

o9811264634387067447

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330123

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ll.21 19.16

‑3.69

ll.34 23.92

9692411615 13693363671564511111

0913025098658CXj5

47931190954999754554

Note・ x:susceptibility,Dec・:decllnatlOn,Inc:1nClinatlOn,k:precisionparameter,andα 95:

95% confldencelimlt

DecllnationandinclinatlOnforthepresentEarth'smagnetlCfleld are‑7.78and52,98 degrees.

Tabl e1 Magne t l Cpar ame t e r saf t e rt hehe att r e at me nt Nu mbe ro fNRMl nt e nS l t y me a nDe c , me anl nc s pe c i me ns ( e mu/ ど) ( °e g) ( °e g) ope n‑ al rfl r e( al ls pe c i me ns ) c ol l e c t e df r om t hef l oor c o1 1 e c t e df r

参照

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