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実験用須恵器ミニチュア窯の制作

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Academic year: 2021

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(1)

大西智和!)

l)891‑0197鹿児島市坂之上8‑34‑1鹿児島国際大学

なるからである.

縮尺は実際の須恵器窯の遺構を参照し, おおよそ1/

10となるミニチュアを制作することにした.

焚口部は1種類焼成部は同じ種類のものを3個,排煙 部は横炎式のものと倒炎式のものを各1個作ることにし た. これによって,長さのバリエーション3種類×排煙部 のバリエーション2種類の構造の異なる窯の実験が可能と なる.

また,焼成実験時にはすべての部位を金属製の台に乗せ,

台ごと角度を変化させるようにする. これらによって,複 数構造の窯について,窯の角度を変化させて実験を行うこ とが可能となる.

l.はじめに

須恵器窯を制作したり実験窯を用いたりして,須恵器の 焼成を種々の視点から実験することは比較的さかんに行わ れている(木立2010,余語2010, など). これらの実験は 実物大もしくは実用サイズの窯を用いて,須恵器が実際に 焼成された温度まで上昇させることが前提となっているこ とが多い.須恵器の技術を解明するためには実際に須恵器 を焼成する,あるいは須恵器を実際に焼成できる窯を用い ることは重要であることは言うまでもない.

ところで,実際に使用された須恵器窯にはバリエーショ ンがあり,焚口部や排煙部の構造はもちろん,長さや幅,

傾斜などいくつもの要素が組み合わさりあって構成される が.実物大の窯を用いる場合は,多くのバリエーションに 対応した実験を行うことは難しい.

そこで,種々の部位によって構成するミニュチュア窯を 制作し, これらの組み合わせや,それらを配置する台の角 度を変化させることによって,種々のバリエーションに対 応した燃焼実験が可能であると考えた. もちろん, この窯 での実験では実際の窯での焼成温度を目指すものではな く, また,実際の窯と異なる点も多くある. しかし,種々 のバリエーションを疑似的にトレースできる, ミニュチュ ア窯による実験には意味があると思われる.実験をとおし て,窯体の構造や角度の組み合わせごとに,窯内の最高温 度,温度の変化などが明らかにできると考えているが,そ の数値が良好なものである場合, 同様の条件の実物大の窯 についても,効率が良いことを示すのではないかと予想す る.

本稿ではそのための実験用に制作した, ミニチュア窯の 制作過程および制作した窯を紹介する.

3.窯の制作

制作には可塑性が大きく, どの成形でも取り扱いやすい とされる並漉粘土を用いた.最初に木枠を3個作成した.

木枠のサイズは内側で20cm×20cm,厚さが4.5cmである.

この枠に粘土を充填しブロック状にしたものを部品として 用いた.木枠で部品を作ることによって,部位ごとのサイ ズの差や厚さの差を少なくすることを目指した. l個は木 枠に入れたまま床部とした.他の2個分は木枠から取り出 し,壁および天井部として用い,天井部分で接合した. な お,初期に制作した2個の焼成部は,壁や天井を補強する 目的で針金の芯を用いた.

ところが,天井部で接合する方法では,乾燥が進むと割 れてしまった(図l). また,鉄芯を用いると,乾燥し粘 土の収縮が進むにつれて,鉄芯が下方に押されて底から突 き出てしまった(図2). さらに,鉄芯が影響しているか どうかは断定できなかったが,床部と壁部も乾燥が進むに つれ大きく剥離してしまった.

そこで, 20cm×40cmの木枠を作成し,壁面と天井をそ こに充填した1枚の部品で作ることにした.併せて鉄芯を 用いるのをやめた. また,壁部と床部との接合を強固にす 2.窯制作のコンセプト

実験に用いる窯は,部位に分けて制作した.部位に分け

ることにより,長さや櫛造を変えて実験することが可能と

(2)

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図1天井の割れ 図2鉄芯が突き出た状況

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0 20cm

図3接合部分の調整

図4焚口・燃焼部実測図

図5焚口・燃焼部写真 I

0 20cm

図6焼成部実測図

(3)

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図7焼成部写真

0 20cm

図8排煙部1実測図

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図9排煙部1写真

0 20cm

図10排煙部2実測図

4号は鉄芯無しである.乾燥した状態での重量は2号が8.01 k9. 3号が7.9k9. 4号が7.93kgである2号が少し重たい のは. 2枚の部品を合わせた天井部であるために生じた割 れや.床部と壁部の剥離を補修するために粘土をより多 く使用することになったためである.天井中央部に温度セ ンサーのための穴をあけている.

排煙部

排煙部lは倒炎式の構造とした(図8.9).炎を下すこ とで窯内に対流を作る構造である排煙口および煙道の直 径は5cm弱.天井部の前寄りに温度センサー用の穴をあけ ている乾燥した状態での重量は9.37kgである.

排煙部2は横炎式の椛造とした(図10・11) 炎は壁や 天井に沿って走る構造である排煙口の直径は5cm弱,天 井前寄りに温度センサー用の穴をあけている.排煙部2は 排煙部lに比べて重たかったため最奥部の床をカットし た.その結果乾燥状態での重量は9.22kgになった.

るために互いの接合部分に調整を加えた(写真3)

それでも乾燥が進むとひびや割れ,粘土の欠けが見られ たが,軟らかい粘土を用いて修復したしかし.窯体力乾 燥した状態だと.修復のための粘土がなかなか接合せず.

修復は困難であった

各部位の乾燥が進むと.隣り合うことになる部位どうし が隙間なく合わさるように調整した.基本的には削ること によって行ったが. この調整にはかなり長い時間を要した 焚口・燃焼部(図4.5)

アルコールバーナーやガスバーナーを置くために.前面 部を半円形にくり抜いた.天井部奥寄りに温度センサー用 の穴をあけている乾燥した状態での重量は7.62kgである.

焼成部(図6.7)

最初に制作に取りかかったのは構造が簡単な焼成部で

あった上述したような試行錯誤を繰り返し,全部で5個

制作し, 3個(2.3.4号)が完成した. 2号は鉄芯入り, 3.

(4)

図11排煙部2写真

図12焚口部の覆い

図13煙突

図14各部位を連結した状態

焚口部の覆い(図12)

制作した焚口部は大きく開口しているが.実際の窯は焚 口部分が狭いのが通例である.焚口部の開口の度合いが.

燃焼効率にどのくらい影響するのかを確かめるために覆 いを作成した.作成したのは焚口部分を半分程度覆うもの で.厚さ2cmである.

煙突(図13)

煙突の有無により効率に相違があるのかを確認するため に作成した.排煙部2に用いる場合は.煙突部と併せて奥 壁を持つ構造と見なすこともできる.煙突の高さは約IO cm,直径は5cm程である.

他に,窯を傾けて燃焼実験を行う際にバーナーを水平に 保つための調整板なども作成した.図14は各部位を連結

した状態の写真である.

4.おわりに

どのような椛造や角度がもっとも窯の効率が良いのかを 実験的に確認する目的でミニチュア窯を制作し、その過程 と制作した窯を紹介した乾燥の過程で大きく割れてし まったり.ひびや割れを補修する際に粘土がうまく接合し なかったり.部位どうしを並べた際に隙間ができてしまっ たりと,制作は思った以上に困難であった

制作した窯は実物の窯のおおよそl/10のサイズにな ることを意図した窯の長さを変えて種々のサイズで実験 できるが,その際に天井までの高さは変えられないつま り,短い窯で実験する場合は長い窯の場合に比べて.高さ があり過ぎることになる. また.実際の窯は床面の角度が 部位によって変わっていることが多いが.制作した窯では 排煙部を除きすべて一定である. このように実際の窯と異

なる点は多くある

(5)

余語琢磨2010「古代窯業技術の基礎ノートー窯焚き・築 窯の経験的知を読み解くために−」 「古代窯業の基礎研 究一須恵器窯の技術と系冒筈』真陽社

独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所編2013「発 数回行って正確なデータの収集に努めたい.

本研究はJSPS科研費15HO1902の助成を受けたもので ある

掘調査のてぴき各種遺跡調査編」同成社

参照

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重複しており、たちあがり高が全体的にやや高めであることがわかる。窯跡資料のたちあがり形状