親子関係把握のための測定尺度
の作成 (1)*
教育心理学研究室 中 原 弘 之
家族変数のうち,とりわけ,どのような親子関係が如何なる児童変数に結合するかについての 研究は,単に心理学の領域にとどまらず,他の近接科学領域においても強い関心が寄られてきた。
したがって,その研究件数は彪大な数にのぼっている。中原(1969c)が行なった研究ですでに 指摘したことであるが,1959〜1968年の10年間に日本心理学会における報告だけでも165篇にの ぼっている。
それにもかかわらず,いまだ十分な成果が得られていないのは,国の内外を問わず,この種の 研究には(1肝究仮説に基づく組織的研究によるものが少なく,断片的な相関分析が多いこと,(2劇 定用具の不備,(3)実験的研究の不毛などの問題点が指摘されるためである。そこで筆者は,実験 的に状況を構成し,そこでの具体的な親子の反応を捉える尺度を開発し,組織的かつ厳密に諸要 因を統制した実験的研究を試みつつある。しかし,(2)に指摘したように,測定用具の開発(とり わけ言語レベルでのデータを求めることの困難な幼児の態度・行動に関する用具の開発)がなさ 勝 れていない現状である。
それでも児童変数を捉えんとする試みがないわけではない。Radke(1946)は親の権威と幼児 の行動や態度との関係をみる研究において,教師による幼児の行動観察を試みている。このよう に集団内での教師又は研究者による行動観察によって児童変数を捉えんとした研究には,Baldwin
(1949),Nowlis(1952), Moustakas et a1.(1956), Rheingold(1956), Watson (1957),
Crandall et aL(1958), Kagan(1958)などがあり,面接法を導入して幼児の行動を捉えんと したものには,Radke(1946), Now l i s(1952), Behrens(1954)などの研究がある。さらに projective techniqueやdoll playなどの手続を用いたものに, Radke(1946), Kagan(1958)
などがある。
しかし,いずれも評定者の主観の介入によるデータの信頼性の欠如や,標準化されていないこ とによる一般化の制約などがあり,幼児の行動を客観的に評定しうる尺度の開発が急を要する作 業となる。
中原(1962)は,母子関係と幼児の集団内適応との関係を明らかにするため,幼児の集団内行 動を反映する60のstatementsを用意し,母親や教師にQ・sortingさせたが,その後Q・technique によって因子分析を試み,Chance(1955)の示したpositive−negative, active.passiveの代 表的な2因子を見出した(1963,1964)。さらにこれらに再検討を加え,Inventory形式の40項 目からなる幼児の集団内行動評定尺度を作成した(1965,1969a,1969b)。その後,さらにセン
* 本研究は昭和45年度文部省科学研究費によってなされた研究の一部である。
62 教育研究所紀要第三号
ト。イド解と主因子解とによる因子分析の結果を上ヒ較し,現在・自己統合的適応性泊律的統率 性泊己中心的攻撃性,社会的内向性の4つの因子瀧をもつ36囎の尺度へとリファインしつ
っある。
この尺度とは別に,幼児の集団内行動を,親,教師,研究者などが現実評定や理想評定という ような撫な視点から評定したり,これ引・親の幼児への態度・行動についての重貝1度を関連づけ たりするためには,同じ次元での尺度を用いることが望ましい。この点については・小嶋(1966)
が指摘しているようにSD渤・適していると思う.ただ, SD法は・きわめて抽象的で・母親な どに適用する際には,やや困難が予想されるが,実施時における工夫がこの問題を解決するであ ろう。それはさておき,このSD法の意味次元と上述したInventoryの因子との関係を明らかに することは興味深いことである。
小嶋は,小学校6年生に対する親の態度・行動のもつ意味次元をさぐるために・SDを作成し ているが,筆者は幼児の集団内行動についてのSDを必要とするので,あらたな手続きで作成を 試みることにした。
研 究 目 的
親子関係が幼児の集団内行動に如何なる影響を及ぼすかという10ng term inveStigatiOnの一 環として,幼児の集団内行動を母親轍師力・評定するためのi・…umen・を醗すると共に・その
ような幼児の行動に関する意味次元を明らかにすることを目的とする。
研究方法と結果
本研究は,(1修飾語の収集,(2)反意語の収集,(3暫定尺度の作成・(4)因子分析の4つのステッ プをふみ,それぞれの結果に考察を加えながら論述を進める関係上洛ステ・プ毎に記述をまと めることにした。これらは,昭和43年度から45年度にかけて順次すすめられた一連の研究の一部 である。
Step 1修飾語の収集
方法(1)対象:茨城大学学生50名,茨城県立保育専門学校学生86名,水戸赤十字高等看護学院 学生64名,計200名(いずれも心理学受講の女子学生)。
(2鯛査用紙:4才頃から就学前までの幼児の印象から連想される修飾後を,次の①〜⑩の10概 念別にそれぞれ最高5つまで記述できるようにした用紙を用いる。①男の幼児の動作,②男の幼 児の能力,③男の幼児の性格,④男の幼児の言葉,⑤男の幼児のからだ・容姿,⑥女の幼児の動 作,⑦女の幼児の能力,⑧女の幼児の性格,⑨女の幼児の言葉,⑩女の幼児のからだ・容姿。
(3)実施:200名の学生を対象に,上記調査用紙を配布し,1週間後に回収した。
結果と処理 これによって,幼児について連想された修飾語が965語収集されたので・次の基
準によってstep 2のための修飾語189語を選定した。①連想出現頻数が3以上であること,②10
概念のうち,いずれかの概念に特有の修飾語でないこと(特に性別によって偏らぬこと),③幼児
の集団内での行動を捉えるために適切であること,④母親でも容易に評定しうる平易な語である こと,⑤極端に価値的なイメージを与えない語であること,⑥より一般的・日常的であること。
Step 2 反意語の収集 方法 (1)対象:step 1と同じ。
(2)調査用紙:step 1で選定された189語のそれぞれについて,その反意語を記入できるように 印刷された用紙を用いる。
(3)実施:4才児から就学前児について連想される修飾語であり,かつ189語の反対の意味をあ らわすと思う修飾語について,200名の学生に回答を求め,1週間後に回収した。
結果と処理 189語のうち,「めざましい」,「向うみずな」の2語は,いずれも反意語はゼロで
あるのに対し,「あらっぽい」,「いそがしい」,「さっぱりした」,「のんびりした」,「ゆっくりした」
の5語は,いずれも6種類の異なった反意語を得て最高であった。そこで次の基準によってstep 3のための修飾語対を46対選定した。①step 1にお』ける連想出現頻数が189語のうち50%ile以上 であること(連想出現頻数8以上がこれに該当する),②200名の学生のうち30%以上が共通反意 語として記述していること,③可逆的に反意語となること,④幼児の集団内での行動を捉えるの
に適していること,⑤近似した対語がある場合は,より適切な方を選定すること。
Step 3 暫定尺度の作成
方法(1)尺度の構i成:step 2にお』いて得られた46対の修飾語対を,乱数表によってランダムに 配列し,次のような7段階評定尺度を構成し,これを暫定尺度とした。
(2)実施:この暫定尺度を用い,
と か や どわ や. か と
次の4種類の評定を母親と教師を 葱か
て な でら な て 対象として実施した。①母親によ 毒な
も り や いい や り も
る幼児の幼稚園内での現実像につ 愉快な 不愉快な いて,②母親による幼児の幼稚園内での理想像について,③教師による幼児の幼稚園内での現実 像について,④教師による母子場面にお』ける幼児の現実像について。
①,②は310名の幼稚園児について,その母親が自宅で記入し,③は8名の教師が協議的に評 定を行なった。④は310名の園児の中から一定の基麟抽出された67名の園児とその母親を対象
として,実験者の不在場面で,1組ずっの母子にゲーム形式の作業を与え,これをVTRによっ て録画したものを8名の教師に協議評定させた。
結果と処理以上4種類の評定をすべて行なわれた67名の幼児に関するデータ(67×4−268)
に基づいて,46対の尺度ごとに反応の分布を調べた結果,7段階尺度の中点に反応の30%以上が 集中したものは,無てっぽうな一しんちょうな,未発達な一発達した,しっこい一さっぱりした の3尺度であった。これらは 評定しにくい尺度 と思われるので除外することにし,43対の尺 度が残された。
● rtep 4因子分析
方法 67名についての4種類の評定による268データを用い,43変数間の相関係数を算出し,
* 2名同胞.両親健在,かつ他の諸データの整っているもののうち,幼児の性,幼児の出生順位,同胞の性,同胞との年令
@間隔,の4つの要因について,各2水準の16群を予定し,各群に該当するものを3〜5名抽出した。
[
64 教育研究所紀要第三号
主因子解法とセントロイド法とによってそれぞれ因子の抽出を行なった。この際共通1生の推定 値は各列の絶対値の最大値を用いた。つづいてVarimax法によって直交回転を行なった。これら の計算は,IBMのsystem 360−model 75電算機によった。
結果と考察 (1>主因子解法とセントロイド解法の比較:両解法共にTab・1に示す如く・4つ Tab.1 主因子の解乏セントロイド解の寄与率 の因子が得られ・この 4因子によって全分散
1
1 皿 皿
Iv h2の約60%を説明するこ
Σa2i 8,750
7,7816,474 3,019 26,024 とが出来た。紙数の関 主 因 子 解 全分散
20.3 18.1 15.1 7.0 60.5相対分散
33.6 29.9 24.9 11.6100.0 係で因子行列を割愛せ
Σa2i 11,734 6,092 6,703
1,38125,910 ざるを得ないがTab.1 セントロイド解 全分散
27.3 14.2 15.63.2
60.3の相対分散によれば,
相対分散
45.3 23.5 25.9 5.3 100.0セントロイド法の第IV 因子はわずかに5.3%であり,寄与率は著しく小さいのに対し,第1因子の寄与率は45・3%とな
り,アンバランスである。この点では,主因子解法では比較的4つの因子寄与率は均等であり,
日本語のsemantic structureを分析した相良ら(1961)の結果と矛盾しない。
さらに「4つの因子負荷量のうち,他の3つの負荷量がいずれも無視しうる程度の大きさ(0・300 未満)で,特定の因子にのみ大きな負荷量を示す」(因子を代表する尺度選定基準1)尺度数は,
Tab.2に示す如く,両解法ともきわめて少数Tab.2 各因子を代表する尺度数
(尺度選定基準1による場合) しか残らない。そこでやや基準を低め「他の因
因子 1 H 皿 lv 計 子に0.300以上の負荷量を有していても,特定 主 因 子 解 4 6 6 1 17 の因子負荷量が他の因子負荷量より少なくとも セントロイド解 8 5 3 0 16 0.150以上大である」(因子を代表する選定基準 m尺度数をみるとTab.3のようになる。 これによると,かなり尺度選定基準を落しても,セ
ントロイド法の場合は第IV因子を代表する尺度Tab.3 各因子を代表する尺度数
(尺度選定基準皿による場合) を得ることが出来ない。筆者は,日本語の意
因子 1 H 皿
IV計 味次元に関する従来の研究において,相良ら 主 因 子 解
1111 7 3 32 (1961)はMoral Correctness, Magnitude,
セントロイド解 19 8 7 0 34 Sensory Pleasure, Dynamismの4因子を見 出し,柏木(1964)はActivity, Potency, Sensory Pleasure, Moral Correctnessの4因子を もって説明していることをも考慮して,主因子解法によって得られた結果に基づき,因子の解釈 を試みることにした。
(2)因子の解釈:主因子解法での因子負荷量の絶対値0.300以上を示す尺度を,各因子別に示す
と,Tab.4〜7のようになる。
Tab.4 Activityの因子 Tab.5 Securityの因子 主因子解法による第1因子 主因子解法による第II因子
尺 度 負荷量 尺 度 負荷量
◎元 気 な 一元気のない 一.821 ◎あきっぽい 一しんぼう強い 一.748
○活 発 な 一不活発な 一.771 ◎落着のない 一落着いた 一.736
◎いさましい 一弱々 しい 一.758 ○鋭 い 一に ぶ い .720
◎き かない 一おとなしい 一.742 ◎甘えんぼうな 一しっかりした 一.689
◎おしゃべりな 一無 口 な 一.701 ◎不器用な 一器 用 な 一.687
○積極的な 一消極的な 一.671
○は や い 一お そ い .676陽 気 な 一陰 気 な 一.643 ○たどたどしい 一流ちょうな 一.670 明 る い 一暗 い 一.640 きびんな 一のろまな .646
o弓垂 し》 長}i藝 し》 一.638
○不安定な 一安定した 一.643
噛Oうるさい 一静 か な 一633 ◎ていねいな 一乱 暴 な .615
朗らかな 一陰 気 な 一.623 ○模倣的な 一創造的な 一.553
○はっきりしない一はっきりした .610 小 さ い 一大 き い 一.543
○健康的な 一不健康的な 一.595 弓蚕 し、 一§§ し} .475
○愉快 な 不愉快な 一.578 積極的な 一消極的な .473 人なっこい 人みしりする 一.522 はっきりしない一はっきりした 一.431 きびんな 一のろまな 一.502 ◎こ ま かい 一あ ら い .428
は や い お そ い 一.470のびのびした 一こせこせした .424 さっぱりした 一ねちねちした 一.444 さっぱりした 一ねちねちした .413 小 さ い 一大 き い .443 単 純 な 一複 雑 な 一.348 のんびりした 一いそがしい .426 う る さい 一静 か な 一.345 のびのびした 一こせこせした 一.402 きれいな 一きたない .345 鋭 い 一に ぶ い 一.379 健康的な 一不健康的な .331 模倣的な 一創造的な .357 しんせつな 一不しんせつな .321 たどたどしい 一流ちょうな .343 ふくよかな 一ごっこっした .318
いじわるな 一やさ しい 一.310 活 発 な 一不活発な .305
◎ 因子を代表する尺度選定基準1に該当する尺度○ 〃 II
〃
}T曲.5,6,7についても同様 Tab.6 Childishnessの因子 Tab.7 Moralityの因子
主因子解法による第皿因子 主因子解法による第IV因子 尺 度 負荷量 尺 度 負荷量
◎お・となっぽい 一こどもっぽい .740 ◎正 直 な 一うそつきな .652
◎ま る い 一角ばった 一.723 ○しんせつな 一不しんせつな .560 Oふくよかな 一ごっこっした 一。705 ○きれいな 一きたない .542
◎子どもらしい一子どもらしくない一702 いじわるな 一やさ しい 一.504
◎やわらかい 一か た い 一.638 ていねいな 一乱 暴 な .423
◎かわ いい 一にくらしい 一.628 こまかい 一あ ら い .374
◎いじっばりな 一すなおな .607 朗らかな 一陰 気 な .349 いじわるな 一やさ しい .587 愉快 な 一不愉快な .318 陽 気 な 陰 気 な 一.529 のんびりした 一いそがしい .301 明 る い 一暗 い 一.528
さっぱりした 一ねちねちした 一.505
朗らかな 陰 気 な 一.487
人なっこい 一人みしりする 一.484
のびのびした 一こせこせした 一.448
しんせつな 一不しんせつな 一.416
単 純 な 複 雑 な 一.399
愉快 な 一不愉快な 一.371
不安定な 安定した .340
健康的な 一不健康的な 一.316
66 教育研究所紀要第三号
まず第1因子は,相対分散の33.6%を占めて寄与率の最高を示している。Tab・4に第1因子・
を代表する尺度がまとめられているが,このうち,◎印を付けた4尺度は第1因子を純粋に代表 するものである。したがって,この因子は活動性(activity)の因子と解すべきであろう。
第H因子は,相対分散29.9%を占め,第1因子についで高い寄与率を示している。Tab.5に 第H因子の負荷量の高い尺度をまとめたが,◎印の付してある6尺度からも伺えるように・この 因子は幼児の集団内における安定性(security)の因子と思われる。
第皿因子の相対分散は24.9%で,第3位とはいえ,まだかなり高い因子寄与率を有している。
この因子の高い負荷量を示す尺度をTab,6に示したが,純粋にこの因子を代表する尺度は,第 皿因子と同じく6尺度あり,これらから,集団内におけるこどもらしさ(childishness)の因子 として解釈することにした。
最後の第W因子は,4つの因子の中でも最も低い因子寄与率であり,相対分散はll.6%である が,正直な一うそつきなの尺度がこの因子を純粋に代表するものである。Tab.7の各尺度から,
この因子は集団内における幼児の道徳性(morality)をあらわす因子であると考える。 .
尺度の構成
以上のStep 1〜4によって,43対の尺度とその因子構造が明らかにされたのであるが, Step 4の因子分析の結果から,これら43対の尺度の中には因子的に純粋でない尺度が含まれているこ とが明らかにされた。したがって,これらの尺度を除外し,各因子を代表する尺度によって幼児 の集団内行動を評定するための尺度が構成される。
各因子を代表する尺度選定基準は,いうまでもなく当該因子にのみ大きな負荷量を有し,他の 3つの因子については著しく小さい負荷量を有しているような尺度であることを原則(前術した 因子を代表する尺度選定基準1)としたのであるが,この基準によるとTab.2に示した如く17 尺度しか得られず,かつ第IV因子を代表する尺度は1尺度となるため,やむなく選定基準皿によ って尺度構成を行なうことにした。したがって,Tab.3に示した32尺度が用いられることにな
る。
この32尺度を乱数表によって配列を決定し,7段階の評定尺度としたものが巻末の付表にある
「集団内における幼児の行動評定尺度」である。
考 察
因子分析によって,第1因子活動性(activity),第H因子安定性(security),第皿因子こど
もらしさ(childishness),第IV因子道徳性(morality)の4因子からなる尺度が得られたが,こ
れらの因子の命名は,あくまで被評定者である幼児の集団内での行動に焦点を置いて,その次元
を直観的にあらわそうとして命名された。しかし,本研究が扱っているデータは,幼児から直接
求めたデータではなく,母親や教師から求めた幼児に関するデータであることを忘れてはならな
い。いうなれば,得られた4つの意味次元は,おとなのみた幼児の集団内行動に関する意味次元
である。
ここにおいて,従来見出されている意昧次元との対応づけが必要となるであろう。すなわち集 団内における幼児の行動について評定する場合,おとなに存在する感晴的意味次元が,いかなる ものであるかを明らかにすることである。
この試みは,すでに筆者が幼児に対する親の養育行動の意味次元として,Excitability, ゆToughness, Rationality, Warmthの4次元を得ているので,これらとの関係を今後追求するた
めにも有意義である。
第1因子は,柏木の見出したActivityを代表する尺度や,相良らの1)ynamismを代表する尺 度とほぼ一致する尺度によって代表されているので,第1因子はそのままActivityの因子とみ てよいであろう。
第H因子を代表する尺度は,相良らのlarge−small, deep−shallow, heavy−lightなどの 尺度によって代表されるMagnitudeにほぼ近いが,本研究での修飾語収集手続が,幼児に関する imageに基づいているため,相良らの用いた尺度と一致するものがなく,むしろ, Tab.5の尺 度を幼児に関するimageからみるとき,これはOsgoodらがserious−humorous, dull−sharp
などの尺度によって代表させているPotencyではないかと思われる。
第皿因子を代表する尺度は,Tab.6に示されているように,相良らがsoft−hard,round−square などの尺度を代表とするSensory Pleasureと対応するといえよう。
第IV因子の代表尺度は少ないけれども,相良らのaccurate−inaccurate, right−wrong, 陰
superior−inferiorなどの尺度をもって代表とするMoral Correctnessとみてよいであろう。
以上,幼児の集団内行動に見あう因子名と幼児を評定するおとなの感情次元にそくした因子名 とを対比させると次の如くなる。
幼児の行動次元 おとなの感情次元 Activity Activity Security Potency
Childishness Sensory Pleasure Morality Moral Correctness
いずれの命名が適切であるかは,他の変数(児童変数や親の態度変数など)との関係をみた上 でなければ決論づけられないが,前述の如く,幼児の集団内行動を,おとなが評定したデータに 基づいている以上,さらには,幼児に対する親の養育態度と本研究での次元との関連づけを行な
うためにも,2種類の命名を行なっておくことが妥当である。
こうして得られた32対の尺度が,他の諸々の尺度と関連づけられ,さらに多数の評定を得るこ
とによって標準化しなければならないが,いずれも今後の研究課題である。
68 教育研究所紀要第三号
引用文献
Baldwin, A, L.1949 The effects of home environment on nursery school behavior. Cん∫1d 1)e θ かη2.,20,49−62.
Behrens, M.1954 Child rearing and the character structure of the mother. C配Jd Dωe ρ伽,
25,225−238.
Chance,E.1955 Measuring the potencia監inter play of factors within the family during treatment. C配 4 Dε εJp2π.,26,241−265.
Crandall, V, J.,Orleans, S.,Preston, A.,& Rabson, A.1958 The development of social compliance in young children. C配1d 1)θηθ1ρ蹴.,29,430−443.
Kagan, J,1958 Socialization of aggression and the perception of parents in fantasy. Cゐ畝1
DθσeJρ2η.,29,311−320.柏木繁男 1964 SD法による意味構造の因子論的研究,心理学研究,35,27−31.
小嶋秀夫1966セマンティック・ディファレンシャルによる親の態度・行動の情緒的意味の記述の次 元,金沢大学教育学部紀要,15,59−75.
Moustakas,C. E.,Sige1,1.E.,&Sc}1alock, H. D,1956 An objective method for the measurement and analysis of child−adult interaction. Cん記d 1)ε ε1P7η.,27・109−134・
長島貞夫,藤原喜悦,原野広太郎,斉藤耕二,堀洋道1966自我と適応の関係についての研究(1)−Self一 Differential作製の試み一,東京教育大学教育学部紀要,12,85−106.
長島貞夫,藤原喜悦,原野広太郎,斉藤耕二,堀洋道1967自我と適応の関係についての研究(2>−Self一 Differenti al作製の試み一,東京教育大学教育学部紀要,13,59−83.
中原弘之 1962母子関係と幼児の適応に関する一研究,日本心理学会第26回大会発表論文集,264.
中原弘之 1963 Q−Techniqueによる幼児の適応に関する一研究(1),茨城大学教育学部紀要,12・
31−52.
中原弘之 1964 Q−Techniqueによる幼児の適応に関する一研究(H),茨城大学教育学部紀要,13・
1−22.
中原弘之 1965幼児の集団内行動に関する教師の評価と幼児の相互評価との関係,日本保育学会第18 回大会発表論文抄録,36−37.
中原弘之 1969a教師評定と幼児の相互評定との関係,日本保育学会第22回大会発表論文抄録,30.
中原弘之 1969b 幼児の集団内行動を捉えるための評定尺度の作成,日本心理学会第33回大会発表論 論文集,289.
中原弘之 1969c 親子関係の児童の性格形成に及ぼす影響についての実験心理学的研究,日本学術振 興会流動研究報告.
Nowlis,V.1952 The search for significant concepts in the study of parent−child relationships.
A7ηer.」.0γ」んoρs鯉cんゴα彦.,22,286−299.
中原:親子関係把握のための測定尺度の作成(1) 69
Radke,M.J.1964 The relation of parental authority to children/sbehavior and attitudes.
1π3ム Ch∫表f レレ eJ1二 1しfo7209γ., 22.
Rheingold, H. L 1956 The modification of social responsiveness in institutional babies.
ル10πog7°.50c.Reε.Cんゴ{J Dee1ρ鋭.,31.2. r
Sagara,M.,Yamamoto,K.,Nishimura, H.&Akuto, H.1961 A study on the semantic structure of Japanese language by the semantic differential method.」αρ. P3〃cゐρ1.,、配e5.,3,146−156.
Trapp, E. P.& Kausler, D. H.1958 Dominance attitudes in parents and adult avoidance behavior in young children. Cゐ 14 Dε e ρ7π.,29,507−513.
Watson,G.19与7 Some personality differences in children related to strict or permissive p◎rental discipline.訊Pε雪cん01.,44,227−249.
σ ←
70 教育研究所紀要第三号
付表 集団内における幼児の行動評定尺度
と か や ど や か と Act.
ち Pot.
ら
て な で な て S.P.
も
な M.C.
も り や い や り も
1 た ど た ど し い 流 ち ょ う な
2 不 器 用 な [ 器 用 な
3 強 い 1 弱 い
4 落 着 い た 落 着 の な い
5 創 造 的 な } 模 放 的 な
6 お し ゃ べ り な 1 1無 口 な
7 し っ か り し た 甘 え ん ぽ う な
8 元 気 な 元 気 の な い
9 不 活 発 な 活 発 な
10 消 極 的 な 積 極 的 な
11 は っ き り し た はっきりしない
12角 ば っ た ま る い
13 す な お な い じ っ ば り な
14 き た な い き れ い な
15 安 定 し た 不 安 定 な
16 に ぶ い 鋭 い
17 い さ ま し い 弱 々 し い
18 は や い お そ い
19愉 快 な 不 愉 快 な
20 う そ つ き な 正 直 な
21 や わ ら か い
かた い
22 し ん ぼ う 強 い あ き っ ぽ い
23 ふ く よ か な 1 ご
っ ごっ し た
24 に く ら し い か