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当院における急性血液浄化療法の実際
市立室蘭総合病院 臨床検査科
阿 部 直 之 菅 野 誠 山 田 洋 平 白 石 努 中 村 克 司
要 旨
平成9年6月の病院移転改築を受け、臨床工学係として血液浄化療法に携わる事となり、多数の症例を経験し た。当院では一般病棟の個室内に機器を持ち込み、長期間の治療を行ってきている。これまで得た経験により、
一般病棟の患者監視装置を変更するとともに、今後設置されるであろう集中治療室(ICU)に求められる医療環 境を考えてみた。
キーワード
集中治療室、持続緩徐式血液濾過透析、血漿交換療法
は じ め に
当院における血液浄化業務が通常の血液透析業務のみ ならず、急性血液浄化療法の分野まで広がってきている。
しかし臨床工学技士が現在4名しかいないということ、
又当院には集中治療室(ICU)が設置されていないとい うことにより、我々としては業務を遂行する上で困難な 状況にある。今回、我々が今まで担当してきた症例を振 り返り、今後設置が期待されるICUに血液浄化業務の観 点から何を求めていくべきなのかを検討した。
集 計 内 容
1)期 間
平成9年6月〜平成14年5月 2)症 例
42例(M:29例.F:13例)
3)年 齢
21歳〜80歳(平均:56.9±0.0歳)
4)診断名 a)急性膵炎
b)肝機能障害(劇症肝炎・肝硬変)
c)急性腎不全 d)その他 5)治療法
a)持続緩徐式血液濾過透析(CHDF)
b)持続緩徐式血液濾過(CHF)
c)血漿交換療法(PEX)
d)血漿吸着(PA)・ビリルビン吸着
集 計 結 果
1)治療法別集計
CHDF、CHFが合わせて104回と一番多く、次い でPEXが50回であった。(表1)
表 1 治療法別集計
2)疾患別集計
重 症 急 性 膵 炎 が 5 例 で 、 全 例 消 化 器 科 病 棟 で CHDFを実施した。劇症肝炎は6例で、そのうち2 例は同様に消化器病棟で実施した。術後腎機能低下、
薬物中毒及び横紋筋融解症症例はCCUにて実施され た。(表2)
市立室蘭医誌(第28巻 第1号 平成15年4月)
持続緩除式血液濾過透析(CHDF)
持続緩除式血液濾過(CHF)
血漿交換療法(PEX)
血漿吸着(PA)・ビリルビン吸着
回 数 治 療 法
93 11 50 31
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表2 疾患別集計3)年間施行症例数
CCUではほぼ一定の割合で実施されており、現時 点で17例を数えている。一方消化器病棟では症例が 増加し、平成13年には7例が行われた。これは、重 症急性膵炎及び劇症肝炎での治療症例数の増加が要 因となっていた。(表3)
表3 年間施行症例数
代表的症例の成績
1)重症急性膵炎
症例数は男4例、女1例の計5例で、平均年齢53 歳であった。全例CHDFを施行し、設定条件として は、血液ポンプ流量が80〜100ml/min、透析液流量 は300〜500ml/minとした。施行時間は平均58.6時 間であった。転帰は3例救命、1例札医大病院搬送、
1例は死亡となっている。
2)劇症肝炎
症例数は男3例、女3例の計6例で平均年齢53.2 歳であった。治療法としては併用も含めてCHDF2 例、PEX6例、吸着2例であった。また、CHDFと PEXを直列接続した際の持続血漿交換(CPE)とし ては新鮮凍結血漿(FFP)3.2Lを、緩衝剤であるク エン酸の急速負荷を避けるために8時間要して実施 した。
症 例 呈 示
1)背 景
54歳男性。平成元年より糖尿病、高血圧、B型肝 炎ウィルスキャリアーの診断のもと、近医に外来通 院していた。平成14年9月下旬より全身倦怠感、食 欲不振が出現し改善しないため、同年10月2日近医 受診した。GOT897、GPT1782と著明高値を指摘さ れ、精査、加療のため同日当院消化器入院となった。
入院時採血では、白血球:3640/μ1、赤血球:4.70
×106/μ1、血小板:110×103/μ1、T-Bil:2.0mg/dl、
D-Bil:1.2mg/dl、GOT:678IU、GPT:1529IU、
Ch−E:128IU/ 、BUN:19.4mg/dl、Cr:0.93mg/
dl、NH3:32 μg/dlであった。
2)臨床経過
血液浄化としての治療は、平成14年10月22日より CHDFを主体とした治療法を施行し、症状は一時期 改善した。しかしながらその後徐々に意識レベルが 低下し、同年12月22日に永眠された。治療中に CHDFを27回施行し、延べ時間338時間で、CPEは 間欠的に16回施行した。いずれも消化器科病棟で実 施し、CHDF施行時には技士が病院内に泊り込む体 制で臨んだ。この時点では病棟個室には各種モニ ターは充分に揃っておらず、各部署より周辺機器を 集めて実施した。(図1)
図1 臨床経過
患者監視装置構築
ICUが設置されていないこと、消化器科病棟での長時 間に亘る治療が増加傾向にあることを踏まえて、一般病 棟における患者監視装置の構築に着手した。
装置をフィリップス社製の患者監視装置M3(図2.a)
に変更し、詰所にはセントラルモニター(図2.b)を設置 するとともに病棟全体を無線LANで接続した。同装置は 重症急性膵炎
劇症肝炎 肝硬変・肝癌 薬物中毒 術後腎機能低下 SLE
横紋筋融解症 ギランバレー症候群 その他
例数 診 断 名
5例 6例 9例 4例 8例 1例 1例 1例 7例
消化器病棟 透析室:4例 消化器病棟:2例 透析室:7例 消化器病棟:2例 CCU CCU 透析室 CCU 透析室 透析室・CCU 消化器病棟 循環器病棟
CHDF CHDF・PEX・
ビリルビン吸着 CHDF・PEX
・ビリルビン吸着 HDF・PEX・PA CHDF・CHF DFPP CHDF・PEX PEX
CHDF・CHF・
PEX・ビリルビン 吸着
施行場所 治 療 法
平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 合 計
合計 CCU症例 透析室 消化器病棟 循環器病棟
3 8 5 11 11 4 42 2
5 1 4 3 2 17
1 2 3 7 1 0 14
0 0 1 0 7 2 10
0 1 0 0 0 0 1
300 200 100 0 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0
10/22 11/5 11/19 12/3 12/17
GPT GOT GRP 300
250 200 150 100 50 0
CHDF CPE
Consciousness
(日)
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心電図・呼吸・非観血及び観血的血圧・酸素飽和度の測 定が可能であり、かつ「バッテリー」又は「予備電源」搭 載タイプなので搬送用にも使用する事が可能である。病棟での配置は棟全体で使用できるように無線LANを配 備、個室には有線LANを設置することにより無線・有線 のどちらでも使用できるようにした。
図 2a 患者監視装置 M3
図 2b セントラルモニター M3
ま と め
一般病棟における劇症肝炎及び重症急性膵炎などの重 症例増加が、CCU以外での症例増加に反映していた。今 回、一般病棟での血液浄化療法施行に対応できるような 体制を構築することはできたが、臨床工学技士の人員配 置が限界に達していること、ICUが設置されていない為
に重症例を病棟個室で施行しなければならない現状が明 らかになった。今後、集学的な治療の場が設置される際 に次の要点を血液浄化療法を担当する者から望みたい。
1)血液浄化療法からICUに望むこと
a)心電図・呼吸・カフ圧・SpO2・Aラインの測定。
b)透析装置を理解できるスタッフ教育の実施。
c)医師・パラメディカルとの密な連携を図れるよ うな環境整備。
d)ICU(又は当直)担当臨床工学技士の確立。
我々臨床工学技士も更なる研鑽を積むことが必要であ る。