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高校野球に関する意識・イメージについて

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高校野球に関する意識・イメージについて

野田 洋平*・小林 悟樹林・西長 良洋*触田所 秀紀**杭大貫 和徳****・矢幅 春彦****

(1990年9月14日受理)

Perce童ved Images of High School Baseball

Yohei NoDA, Satoki KoBAYAsm, Yoshihiro NlsmNAGA Hidenori TAToKoRo, Kazunori ONuKI and Haruhiko YAHABA

(Received September 14,1990)

は じ め に

高校生の野球部活動の規範は,昭和21年に学生野球基準要項Dとして制定されたものを,同25年 学生野球憲章2)と改正されたものに拠っている。その理念3)を試合を通じてフェアの精神を体得す る事,幸運にも驕らず非難にも屈せぬ明朗強靱な情意を酒養する事,いかなる銀難をも凌ぎうる強 健な身体を鍛練する事とし,これこそ実にわれらの野球を導く理念でなければならない。この理念

を想望してわれらここに憲章を定めると規定している。

協会会長武田4)が記している学生野球の本義は,学生野球に,あくまでも人間形成の一環として 学校が認めた野球であって,学生仲間の単なる遊びとして行なわれるものを指すものではない,野 球という団体スポーッを通じて,きびしい練習と試合により,身心の鍛練をはかることはもちろん 社会生活にたいせつな協同精神とか,団体の中における自己の責任の重大さや,機敏さや沈着な動 作の必要など,眼に見えないいろんなことを実践をもって教えこむことを主眼としている。勝利に むかって適進するために,平素,技術の練磨とその向上に真剣な努力を払い,不断の研究と闘魂の 養成が不可欠なものとなってくる(スポーツの醍醐味)。教育され,訓練された学生チームが,ひ とたび学校の名をかざして試合にのぞめば,ひたむきに応援する学友たちとひとつの心に溶けあい,

精神の限り勝利の獲得に奮闘する。ここに学生野球の真髄と若人学生の誇りがある。観る人を感動 させ,学生野球に魅力をもたせるのも,まったくこのためにほかならない。学生野球は,どこまで

*茨城大学教育学部保健体育教育研究室(Laboratory of Method of Physical Education, Faculty of Education, Ibaraki University, Mito 310 Japan).

**

}間高校(Kasama High Schoo1, Kasama,309−16 Japan).

***

?ヒ短大附属水戸高校(Attached Mito High School of Mito College, Mito 310 Japan).

****

コ和63年度保健体育教育研究室(Laboratory of Method of Physical Education, Faculty of Education,

Ibaraki University, Mito,310 Japan).

(2)

も教育を主眼とするものであって,ショーであってはならないと本義を述べている。

また,名誉会長の天野5)も学生野球を「野球はスポーッとして,それ自身意味と価値をもち,そ の技術も明朗な快楽も尊重すべきであるが,学生野球はその上に人間形成に寄与することが必要で あって,ここに学生野球をして学生野球たらしめる本質が成立する。事実またこの本質を会得した 学生野球が人間形成に及ぼす極めてよい影響はひとのあまねく承認するところであろう」と述べ,

その内容に,責任感を養う,試合の体験から成功してもおごらず,失敗にも屈しない心情を養う,

団体精神を会得する,社会において法を守る精神を会得する(ルール厳守)をあげ,この諸徳を養 わないなら,学生野球は,その存在理由を失うと明言している。

先の高野連会長故佐伯は,佐伯の思想を「高校野球は,教育の一環である」6)という言葉で表わ している。高野連で起ったたびかさなる不祥事への対応は,すべてこの言葉を思想的背景にして行 なわれていることは当然である。

紹介したような理念,思想があるにしても,高校野球が,学生憲章にすべての行動規範を統率さ れているにしても,昭和56年度 58件(警告30件),57年度 32件(警告19件)の不祥事が発生し ている。しかし,近年は,出場禁止が減り,警告処分が多いと指摘し,その原因を ①指導者研 修会の成果②連盟時報「はつらつ」を通じての部員との対話にあることを報告7)している。

中条8)は,新聞記者の立場から高校野球を問い直し,高校野球が美談風のストーリーに脚色され すぎ,美化されすぎて高校野球しか美しいものはないという騒ぎ方をするのは不幸なことであると 述べ,高校野球が巨大になりすぎ,華やかになりすぎて表面的なケバケバしさを追うあまり,いろ いうな問題「病根」を発生させていることを指摘している。その病根を ①野球を学校の宣伝に 利用するいわゆる「野球学校」の出現②極端な勝利主義と「教育の一環」を無視する指導者

③他県からも引き抜くスカウト合戦④後援会の圧力団体化と何千万円もの寄付金集めのトラ ブル⑤過度の合宿練習,県外の遠征の増加,有料試合に伴う興行化,そして授業への影響⑥ 選手のスター化と過保護と他生徒への影響⑦暴力事件,シゴキのトラブル,および出場辞退 の問題⑧チーム,選手,あるいは高校野球全体の美化に伴う弊害であると列挙している。

著者は,高校現場の体育授業で,野球部員の体育の授業に対する態度を見ていると,授業として の水泳への参加が消極的である。全力を出して行なう,体力を消耗する運動に忌避感をあらわす。

授業では出来るだけ体力を温存する。校内の体育行事への参加に積極的でない。高校生としての,

高校生らしい生活を送っていない。自由な時間が少ない。練習が朝から夜にまで連続している傾向 がみられ,授業中は休養となっている者もみられる。年中練習に追われ,休みはほとんどない。野 球部以外との仲間つき合いが少ないようにみえる。午前中の体育の授業では,何かはつらつとして いない。野球以外のスポーツ技術の習得に癖がみられるなどの状況を散見する。これらのどちらか と言えば,マイナス条件の他に数多くのプラス条件をもっていることを認めることもまた然りであ

る。

そこで,本研究では,高校野球を生態学的枠組みの視点で分析・検討するねらいで,①高校野 球に関するイメージ②高校野球部員のスポーツ観体育観③甲子園大会に関するイメージ

④野球に関する意識⑤野球部員の生活調査を実施し,統計的手法により,イメージの因子構

造(野球に関して,甲子園大会に関して),意識(健康・体力・運動部活動,授業,スポーツ,価

値意識,意欲,環境)の因子構造,生活状況(練習,通学,学習,生活,自由時間,生活態度,故

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障など)の実態を明らかにし,高校野球をエコロジカルな方向から検討することを目的とした。対 象は,大学生(一般学生,野球経験者,運動部所属学生),高校生(一般高校生,野球部員)であ

る。

結果と考察

1 高校野球に関するイメージの因子構造

1 研究と内容 高校野球をイメージする60語を用意し,各項目を7段階に分けそれぞれの評点 を○印で囲んでもらう。

2 方 法 60項目の調査結果を因子分析(バリマックス法)で解析し,解釈・命名をし,分類 した群間の比較をする。

3 対 象 茨城大学教育学部学生 男子 153名 女子 166名  計 319名

4 結果と考察(表1)

イ 高校野球経験者からみたイメージ(N=27)

因子負荷量の有意性について検定し,0.380以上は5%水準で有意性がみとめられた。1%,0.1

%についてもそれぞれ検定した。

被験者が少ないこともあり必らずしも一般的な経験者と規定するには危険性が伴うことも考えら れる。今回はそれらの範囲の中で考えることにする。

野球経験者からイメージされる高校野球は,陽気な,明るい,良い,好む,愛される,複雑な,

積極的な,鋭い,面白い,大規模な,大切な,情け深い,得意な,美しい,なじみのあるに高い負        

ラ量を示し,部員の経験する野球の本質的価値観や野球観,野球に対する態度,友晴などの要素を 含んでいる。野球への価値・態度の因子と言える(第1因子)。同様な解釈・命名を加えてイメー ジをさぐると,寛大な受容・充足と技巧の因子(第H因子)は,野球を寛大に,お・らかに歓迎し 受容している様子と野球そのものが上手さや丁寧さを追いかけ満足感をみたし,地味な,真直な努 力はしなやかな,鋭い,複雑な野球を達成し,それが尊敬に価することとイメージしている。努力

・達成と尊敬の因子(第皿因子)。野球は苦しく,せわしいものの,それらは慎重さや勢い,すご さが克服してくれることとイメージし,克服・パワーの因子(第W因子)。野球のもつ一面性とし ての容易さ,素直さ,温和さ,男らしさ,大差感は,部員の心情をイメージし,男性的温和の因子

(第V因子)。しかし,一方では,野球のもつマイナス面を指摘している。すなわち,部活動や部 員間,監督との関係,生活等が排他的,疎遠,飾った,乱れている,冷淡,憎悪,かくすなどの状 態をイメージし,排他・憎悪の因子(第班因子)。解釈不可能(第W因子)。野球のもつ爽やかさ,

速さ,いきいきさや気丈さ,積極さ,おおらかさから,活気・積極性の因子(第皿因子)。8因子

は,68.63%の寄与率があり,これらの因子が高校野球をかなり鮮明に説明しうると思われる。また

その中でもとくに第1因子が全体の22%を説明しうる要素になり,高校野球部員は,野球部の活動

に高い価値観や野球観をもち,野球に対する態度は,野球を好み,積極的に練習に打ちこむ様子が

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明るく,陽気な心でなされ,自分も野球を愛し,美しいと感じ,自分にとって得意であり,大切な 価値意識が強いとイメージしている。しかし一方では,野球のもつ虚構・虚飾の世界を認識し,レ ギュラーになる経過の中で,監督や部員同志,上級生・下級生などの関係に排他性や疎遠感,冷淡 さが存在していることを意識している。また,野球が非常に男性的であるとしていながらも,素直 さや温和さが伴なった男らしさを意識しているとも思われる。野球が技術や作戦に長けるために追 いかけつづけるスポーツ,苦しさやせわしさに慎重に対処しながらもそれらをパワーで克服するス ポーツ,鋭く,複雑な野球ゲームを地味に素直な態度でクリヤーしていくスポーツとイメージして いると考えられ,佐伯の言う教育の一環としての野球は,第1因子に鮮明であると言える。

ロ ー般学生からみた高校野球のイメージ(男子 N=39女子 N=79)

男子学生は,高校野球に対する価値観を一つは,美しいもの,大切なもの,好きなもの,愛され るもの,男らしいもの,感動的なもの,誠実なものととらえ(高い負荷量)同世代の部員の活動を あたたかい目で,きわめて意義ある活動と位置づけ,高校野球を大切にすること,好きになること 誠実であることが,結果行動としての美・感動・男性的な面を醸成する,創造する,演出すること につながることと認識している。二つには,積極性,いきいきさ,集中する,慎重ななど野球に対 するひたむきな態度,三つには,高校野球のもつ面白さ,明朗さ,開放性,のんびりさ,おおらか さなどの雰囲気の良さ,四つには,親密さ,温情な,なじみなど仲間関係のいたわり,団結,協調 など人間関係の良さ,以上,四つの要素を含み,これらは全体の32%の寄与率を占めている。四つ の要因が一つの因子としてあらわれており,更に高い寄与率があることから,真・善・美の価値因 子と言える。第H因子以下は第珊因子まで全体の10%以下の寄与率であり,軽重はつけがたい。第

H因子は,未成熟・未統制の因子。ぎこちなさ,あらけずり,陰険,乱れを含んでいる。第皿因子 は,複雑さ・個性,強情・派手をイメージし,パフォーマンス因子。第IV因子は,野球のもつ多面 性の中でかなり極端な意見とも思える気弱さ,すたれ,鈍さ,軽さがイメージされ,負の力量性の 因子。第V因子は,広い,うまい,くつろぎに高い負荷量があり,ゆとり因子。第W因子は,もろ い,飾った,歪んだがイメージされ,虚飾の因子。第粗因子は不可。第田因子は,陰気,不振,不 満で陰湿・不満因子とした。一般学生は,ほとんどが第1因子で高校野球の良い面をイメージし,

それらは,いろいろな要素を含む,かなり幅の広いイメージとして表現される。トータルに野球を 見,野球が高校生活に価値あるものと評価し,結果の美しさや感動が,積極的な姿勢や,明るい雰 囲気,仲間関係のきずなの親密さに裏打ちされている様子が読みとれる。一方では,野球のもつマ イナス要因,見る者としての不満足感裏側にあるみにくさ,軽視,虚飾,虚像を見のがしていな いo

女子学生は,男子ほどトータルで多要素を含む因子は見当らない。8因子とも同じような寄与率

(8%〜15%程度)を示し,固有値のトータルも男子より低く,8因子の説明力は男子の方が高い。

第1因子は,価値・尊敬の因子。第靱因子に積極的克服・パワフル因子が見られ,野球への価値は 感動,美しさ,愛,大切さを含み,それらが野球の良さ,尊敬に関連していると思われる。また,

野球のもつ困難さ,苦しさを粘りつよく,積極的に,激しく克服しているとイメージし,活動遂行

や課題解決への態度をみとめている。一方第皿因子と第班因子にそれぞれ野球のマイナス面をイメ

一ジした陰湿・狭あいの因子,単純・未熟の因子がみられ,暗さ,歪み,卑屈さ,閉鎖性などや鈍

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さ,単純さ,あらけずりなどの一面が指摘されている。なお,男子に比べ女子の方に陰気・陰険,

暗さなどに対するイメージがつよい。第H因子には,プレーの男性的・鋭敏さがイメージされる。

運動部経験学生(男 N=87女 N=95)では,表1のような因子がみられ,男子では,野球 に壮大な広がりや開放性,素直さや温情さから壮大・温厚の因子・訓練・ゲーム・部生活を通して

  、 フきびしさ,激しさ,すごさ,苦しさ,速さ,むずかしさから困難・パワフルの因子がみられ,同 様の部活動をやる者同志の厳しさやすごさ,苦しさ,野球のもつ壮大さ,温情性を高くイメージし ている。解釈不可能の因子もあるが,マイナス要因とイメージしているのは,排せきする,不満,

個性のない,逃げる,陰気,不誠実,つまらないなどであり,負の協調・排せきの因子と言える。

女子では,野球に対して明るさ,うまさ,頑張り,尊敬,爽やかさなどに高い負荷量があり,雰囲 気の良さや外面的姿勢等をイメージする傾向がみられる。マイナス面では,軽視,逃げる,閉鎖的 などに高い負荷量を示すものの男子に比べやや表面的イメージ感がつよい。回避・逃避をイメージ していると考えられる。

表1 高校野球に対するイメージ

高校野球経験者 一般学生男子 一般学生女子 運動部経験者男子 運動部経験者女子

FI 愛好・明朗 真・善・美価値 価値・尊敬 壮大・温厚 明朗・素直

FH 寛大・充足と巧技 未成熟・未統制 男性的・鋭敏 困難・パワフル 軽視・温和

F皿 努力・達成と尊敬 パフォーマンス 陰湿・狭あい 解 釈不 可 鋭敏・集中

FIV 克服・パワー 負の力量性 解 釈不 可 解釈不 可 解 釈 不 可

FV 男性的温和 ゆ  と  り 解釈不 可 解釈不可 巧技・頑張り

F班 排他・憎悪 虚    飾 単純・未熟 負の協調・排斥 広大・しなやか

FW 解釈不 可 解 釈不 可 積極的克服・ 解 釈不 可 向   避

パ  ワ フ ル

F皿 活気・積極性 陰湿・不満 解 釈不 可 軽     薄 爽快・気丈

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皿 高校野球部員の部活動,スポーツ観,授業,運動欲求について

1 研究内容 運動部に対する考え方(30項目),スポーツに対する考え方(51項目),体育の 授業に対する考え方(49項目),運動欲求について(30項目)。

2 方 法 各項目に対して5段階による評定尺度で回答,結果を因子分析(バリマックス法)。

3 対 象 茨城県高校野球部 10校 307名(1年 106,2年 105,3年 96)

4 期 間 昭和61年11月

5 論議

①運動部に対する考え方

佐伯の言う「野球は教育の一環」とすれば,部員の運動部活動への考え方は,まさに正鵠を射て いる。すなわち,1年〜3年を通して共通的に社会的規範,生活規範,人間形成,体力・技能の発 達,協調・協同の態度,心身の発達の助長等の項目にきわめて高い負荷量がみとめられるからであ る。しかし,1年生では,やや目先の規範性(規律ある態度,心身の発達,修業の場,社会的人間)

に重点化されているのに対し,2年では,技能を役立てる,人間性,節制などが加わり,更に3年 では,忍耐つよい,協調,学校教育,望ましい人間関係など教育の一環という方向をむいた考え方 に形成されている(寄与率は,3年生がもっとも高い)。一年では,部生活がもたらすマイナス要 因としての,時間の有効利用,封建性,勝敗観,排他性,強制,人間形成,社会観などが必ずしも 育成されづらいことを示唆している。同様の傾向は,2年に同じ形ではあらわれないものの,学力 低下,無理,社会観の貧困をあげ,1年とことなる傾向がみられる。3年では,これまでのマイナ ス要因を現状認識と打開という二つの方向性をもっている。練習に追われて社会情勢にうとくなり,

このことは,学校代表として部活動に専念していれば仕方のないことという認識があり,それでも 一般学生と同様に勉強すべきという意欲があることがみとめられる。

運動部存続に関する因子では,1年生で,特定の生徒の入部,部活動は派手な生活をつくる,考 えずに行動する人間をつくるに負の高い負荷量がみとめられ,存続要因には,これらの反対傾向が,

部存続の一因を形成しているものと思われる。2年では,不良学生をつくりがちである,特定の人 の入部をさせるべきである,試合に負けている部は解散させるべきであるに高い負の負荷量がみと められ,部活動が不良学生の温床,特定な選手がセレクションで入部,負ける部解散の原因などと する考え方を否定している。3年では,負けている部の解散,運動部は必要ない,運動部の経費負 担は自分達でとする傾向の逆を意識している。高校野球部(本県では)の構成,存続,部生活にと

って,特定の生徒の入部もなく,派手な生活にはしることも,不良学生になるとも思っていない。

また,負けつづけている部に対しても解散すべきではなく,運動部の必要性は充分に意識している。

1,2年では運動部の必要性や経費負担に高い負荷量はなく,3年で考え方がかわることが示唆さ れよう。その他では,3年生に民主的因子(封建的でない,勝敗にこだわらない,強制がない),

2年に社会的規範因子が単独にみとめられるのに特色がある。3年生では,教育の一環としての野

球の成果が色濃く形成されていることを認めることができる。

(7)

② スポーツに対する考え方

全学年に共通して抽出された因子に人間形成の因子がある。含まれる項目が1年と2年では,ほ とんど同傾向であるのに対し,3年では,心身の発達を妨げない,不具者にしない,だらくさせな

ハがみとめられず,常識的・一般的人間形成の要因を特に意識していない。1年と2年に,スポー ッは身を守るのに役立つ,規律ある生活,社会を明るくする(1年)が高い負荷量を示したのに,

2年では,この要素が人を明朗にする,公正な人格の養成,共同精神の啓発とのグルーピングで主 に人格形成の立場と気分転換,人間性,夢中になるなど人格・人間性の再創造とグルーピングする ことに違いがみられる。しかし,3年では,これらの項目はもっと大きなグループを形成する。

すなわち,3年では,社会規範,人格形成,文化的価値意識,スポーツ観の広がりの中に位置づけ られ,スポーッの効用を広い,大きい視野で認識している姿勢がうかがえる。その他1年では,第 皿因子に,公正な人格形成,共同精神,意志,純真,鋭敏,敏活,明朗,寛大などが高い負荷量で 因子を構成(人格形成因子)。2年では,純真,鋭敏,敏活と体力,寿命,姿勢,筋肉などが組合 って因子を構成(健康・体力の因子)と因子構造の違いがみられる。

3年生のスポーッに対する考え方は,どちらかと言えば,人間形成,社会的規範に関わる因子構 造が中核であり(この二因子だけが解釈・命名・寄与率も高く説明力が高い)。2年では,人間形 成因子は3年同様高い寄与率を示しているが,他の因子は10%前後である。健康・体力因子は2年 だけにみとめられた因子であり,人格形成の因子にしても1年より中身が多様であると思われる。

1年は,人間形成因子に他学年と同様高い寄与率を示し,他は,各要素が組合わさることがなく,

少ない項目での因子構成が多く,考え方が分散傾向にあることがうかがえる。

③体育の授業に対する考え方

1年部員は,10因子抽出したが3因子だけ解釈・命名できた。10因子の寄与率は,72.5%でかな り高い説明力があると思われる。3因子の中では,体育の目標やねらいとしている技能・体力・態 度,承認,連帯をあらわす項目に高い負荷量がみとめられ,体育の成果因子と命名できる。第W因 子には,利己主義,従属,実践と理論の不一致に負の高い負荷量がみとめられ,自主的行動の因子。

第IX因子には,リフレッシュ・親密の因子がみとめられた。うるおい,快,解緊,仲間,積極性な どに高い負荷量があり,体育が心身のため,生活のためリフレッシュされる場になっていることが 認められる。2年部員では,第1因子が健康・体力とモラルの因子。1年生の第1因子とかなりの 項目がダブッテいるが,ルールやマナーの遵守,責任感,精神力などとのグループが形成され,成 果を自らが積極的に追求していく姿勢がみえる。第H因子は,授業の目標と指導の因子。中途半端,

その場かぎり,一部が喜ぶ,狙い,チームワークがないなどに負の高い負荷量がみとめられ,体育 の授業の狙いや指導がしっかり行われていることがうかがえる。第皿因子は,技能の価値の因子。

第IV因子は,1年とまったく同じ項目で形成されているリフレッシュ・親密の因子。2年では特に 技能の因子が単純な形で抽出されているが,1年では,成果因子として多様なつながりがある。第

V因子は,自主・協調の因子。自分もみずから行動し,仲間とも協調して課題の解決にせまること がみとめられる。3年は,第1因子が自主・協調の因子(2年部員と同傾向)。第H因子は,リブ

レッシュ・親密の因子(全学年を通じて同傾向)。第皿因子は,健康・体力の因子(2年とことな

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るのは,マナー,モラルとのグループ形成でないことである)。第IV因子は,技能の承認と闘争の 因子。技能だけでなく闘争や承認を含んでいることが他学年とことなる。

体育の授業に対しては,各学年部員ともリフレッシュ感仲間との親密さには共通のものがある。

また,多少ことなるものの健康・体力を大きく概念的にとらえようとするのは同様の傾向である。

自主・協調も同様でこれら三つの共通性は,普遍的であり,体育の授業成立要因(部員側からみ た)であると言える。したがってこれらの因子構造にほとんどかわりがない。しかし,2年生が健 康や体力とモラルの関連,3年生の技能の承認と闘争の関連は学年に特色ある要因と言える。

④:運動欲求について

1年生部員と2年生部員は,高校生としての人間形成(精神力,達成感,自信,技能向上,勉強 との両立(とくに1年))に高い寄与率を示した。3年部員は更にこの項目により積極的スポーッ 活動,一定時間の身体活動を含めたより行動的な人間形成を目ざすことになる。2年生は競争や他 から承認をえてリーダーになりたい欲求はつよいが1年生はその傾向は希薄である。3年では,自 分からスポーツ行動をして,競争心を満足させ,承認をえて充実したリーダーを目ざしている。1 年生に高い負荷量を示した,健康のためにスポーッをするという傾向は,2年では負の方向を示し

1年生とはことなる傾向がみえる。3年では,ストレス解消,健康・体力増進を合せて広い意味か ら健康を考えてスポーツをする意識が高い。3年生で比較的高い寄与率を示した因子に,自己実現 欲求因子がある。しかし,この項目は負の負荷量を示していることから,技能の向上,精神力の養 成,自信を身につける,自己を知る,自己のベストをつくすと逆方向をむいていることもあり,3 年になるとこれらへのチャレンジ,自己実現の程度は弱化すると考えられる。1年生の自己実現欲 求は,日常的なスポーツ活動と同義であり,欲求がまだ弱いといえる。2年生に特徴的な欲求は自 分の日常的なスポーツ行動の中に仲間とのスポーッ活動を欲していることであり,1年生にはみら れない傾向である。3年生では,体力維持欲求がつよまり,再にスポーツと勉強の両立,計画性あ る生活を欲している。2年部員にはその傾向がうかがえない。そして,2・3年生は,仲間・友達 とのスポーッ活動は勿論のこと施設・指導者に恵まれること,すなわち人的,物的環境の良好な状 態への欲求がつよい。休日にスポーツをしたい欲求も全学年にあり,1年生では,休日でも技能を 高めたい欲求ももっている。野球部員が1年中練習に明けくれている中でも,休日を求め,その休 日に好きなスポーッ(野球とはかぎらない)をし,何かの技能を高めたいと願っている一面もうか がえる。同時に,よく眠り,気分転換をしたいとする欲求も高く,何らかの対策が講じられること がよいであろう。闘争心とか他からの承認を求めるのは,2年生から,ただし自信,精神力の養成 は1年から欲求がつよい。

皿 甲子園大会に対するイメージ

1 研究内容・方法 60語の形容詞対を作成,5段階で評定。茨城大学野球部員にプレテストと して甲子園のイメージを調査,それを元にして作成した。結果を因子分析し,負荷量の高い項 目から30語を選びSD法にて再度バリマックス法を用い処理し分析した。

2 対象 茨城県立高校 13校 野球部員 259名 一般学生(男子) 417名

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3 期間 昭和63年11月一12月

4 論議

野球部員は1年生,2年生。一般学生は,高校野球好き群,嫌い群に分類した。

  、 U0項目から,30項目に減少させたため各群は,同一の調査項目ではない。5因子を抽出した。

表2は,因子分析の結果を因子命名した表である。

一般学生の好き群(L群)と嫌い群(D群)を比較してみると,L群では清純の因子が寄与率も 高く全体の28%を占める。D群では純真の因子であり, L群のような礼儀正しさはイメージされて いない。L群は礼儀正しさを含めた清純さを, D群は,美しさを加えた純真さを甲子園のイメージ としてもっている。L群が個性のある自由さや自然体,気楽さを感じているのに, D群は慎重さに 根ざした自由さやのびのびさをイメージし,同じような自由,ゆとりでもことなる構造がみられる。

D群の第1因子(寄与率20.4%)では,緊張さや引き締ったやる気,チームとしてのまとまりをイ メージしているが,L群では,引き締った状態のなか全力で,たくましい活動意欲が一つの因子を 形成し,D群とはことなる緊張感への対応が感じられる。しかし, L群の第V因子に,積極的,生 き生きした,活発な,のびのびしたなどの項目に負の負荷量がみとめられ,消極的,不活発,しず んだ大人しいイメージを持っていると考えられる。D群では,同様のイメージはない。

野球部員の1年部員(1群)と2年部員(2群)との比較,この2群にもっとも大きな差異がみ とめられた因子は,1群に粗放・ゆがみの因子がみとめられたことであり,甲子園大会を新らしい 目でとらえた1年生らしい清潔な視点であると考えられる。すなわち,管理された感じ,無作法な,

ゆるんだ,濁った,不誠実な,不健全な,しみじみとした,ひねくれているなどに高い負荷量がみ とめられていて,これは,中条の言う病根をイメージしているとも言える。また1群は,甲子園を,

いきいきした,一生懸命な,活発,積極的な活動力や活動の場ととらえているのに対し,2群では,

きちんと,まとまった,協調的な積極性や気力感であり,1群が選手個々の活動性であるのに対し,

2群では,チームとしての活動性を甲子園でイメージしている。また1群が開放感自由感を甲子 園大会にイメージしているが,2群では,自主的,自発的な開放感を感じており,個々のチーム内 での責任,位置を確認していることが前提となるのびのび因子である。また,2群では1群にはみ

られない甲子園大会への尊敬(偉大さ),とぎすまされた集中力,慎重な・丁寧なプレーや行動が イメージされている。

その他,表2にあるような他群の比較も考えられる。特徴的なことについて記すと,野球部員で よく試合に出る群も出ない群も共通的に清純さやさわやかさを感じ,甲子園大会に好意を示してい ること,のびのび感や温厚な感じ,積極的態度や高い活動性をイメージしていることは同傾向であ るが,後者群に甲子園に対する憧れ(偉大なものへの憧れ)がみられることが少しことなる。

また,試合のためにはつらい練習も当然であると思っている群はそうでない群に比べ,協力・協 調,きちんとしたに高い負荷量がみとめられ,個人とチームとの融和をはかって活動しているのに 対し,後者群は,疎遠感,なじみのない,ひかえめな無関心感やむなしい仲間意識をイメージして

いる。

野球部員は甲子園を自分の当然行きつく目標のひとつと常にとらえてイメージしようとしている

のに対し,一般学生は,とにかく見るという客体化の視点でイメージしているようである。

(10)

表2 甲子園大会に対するイメージ

F   1 F   2 F  3 F   4 F   5

す   き 清   純 個性・ゆとり 緊張・熱中 解釈不可能 消 極 的 一 般

生徒

どちらでもない 清純・さわやか 個性・開放感 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 男

き ら い 緊張・活動意欲 解釈不可能 親   密 純   真 解釈不可能

1  年 活 動 性 開 放 感 粗放・ゆがみ 解釈不可能 解釈不可能

2  年 明朗・さわやか のびのび 統制・熱中 緊張・尊敬 解釈不可能

球 よく出る 明朗・さわやか 温   厚 積極的態度・統制 試合巧者 解釈不可能

部 あまり出ない 清純・さわやか のびのび・温厚 統制・活動性 あこがれ 解釈不可能

当   然 好感・さわやか 温   厚 統制・熱中 解釈不可能 解釈不可能

しかたない 活動意欲・清純 温   厚 活 動 性 解釈不可能 無 関 心

表3 高校野球部活動

F  l F 2 F  3 F 4 F 5 F 6 F 7 F 8

1 メンバー 学習,生活 練習態度

年 シップ

への負の効

の積極性 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能

高  校

2年

技術向上意

,技能向上の認識・

ュ揮

解釈不可能 メンバー

@ シップ

学習,生活への負の効

心技体

@向上目的 解釈不可能 施設不備 解釈不可能

出 る

メンバー

@ シップ

学習,生活への負の効

人的,物的 ツ境の効果

活動の積極

@性と発揮 施設満足 心技体

@向上目的 解釈不可能 解釈不可能 球

出ない

練習態度の

@ 積極性

学習,生活への負の効

メンバー

@ シップ 施設不満 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 部 当 メンバー 学習,生活 人的,物的 技能向上の

員 然 シップ

への負の効

ハ 環境の満足 認識・発揮

解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能 解釈不可能

知 練習態度の 学習,生活 技術,能力 チーム・家

た 積極性・自 への負の効 解釈不可能 施設満足 生活の自由 の向上と精 解釈不可能 族の人間関

漢 己能力発揮 果 神力 係

(11)

lV 運動部活動について(野球の練習について)

1 研究内容 部活動とくに野球の練習の状況について60項目の調査項目を作成,自分の程度を

 5段階に評定させる。㌧2 方法 結果を因子分析(バリマックス法)

3 対象 県内高校 13校 259名 1年生 138名 2年生 121名 4 期間 昭和63年11月〜12月

5 論議

8因子を抽出し,解釈命名をした(表3)。

解釈・命名のこまかい点は,省略して結果から概略を述べる。

1群・2群ともに部活動での礼儀,人間関係,責任感,積極性,協調性,連帯感,社会性を養う という項目に負荷量が高く,メンバーシップの因子と言える。1群では,2群に比べて,より連帯 感,社会性に負荷量が高い(寄与率は1群で9.73%,2群で8.70%)。両群に共通に学習・生活へ の負の効果の因子がみられる。すなわち,勉強にさしつかえる,進学に不利,つかれすぎ,学校生 活をエンジョイできない,自由時間が少ない,1群にのみ,休日が少ない,交友関係が狭いなどに 高い負荷量がある。このことは,野球部員としての部活動が高校生活全般にわたって,生活・学習 に対してマイナス要因となっており,1群ではそれらに休日,交友関係が関連していると思われる。

(寄与率 1群は8.40%,2群は6.27%)。2群でもっとも高い寄与率であった因子は,技術向上 意欲・定着・発揮の因子である。進んで練習する,できるまで練習する,思い切ってやる,用具の 手入れ,守備力,攻撃力がついた,集中力がついた,練習で身につけたことを試合で出すなどに高 い負荷量があり,技術向上への意欲的取り組み,技術を定着させ,その技術を試合で発揮できるこ とが部活動の狙いであることを意識している。1群は,練習への参加意欲に負荷量が高い。2群で は更に,心技体向上の因子がみられ,技術向上,体力向上,精神力の鍛練を部活動でするという認 識が高く,1群ではみられない。心技体をトータルに向上させることに強い意識があると言える。

また,2群では,環境因子としての施設への負の負荷量が高く,練習用具,雨天時の練習,日没後 の練習,トレーニング施設等にマイナス方向がみとめられ,環境の中でも,施設・用具等に不満傾 向,気になる傾向が強い。1群では,2群にみられない,人的環境因子がみられる。2群は物的環 境のみであったものが,学校の協力・援助,先生の理解,OB会・後援会の協力・援助,練習用具

など部員をとりまく,人的な支援・理解・援助体制が必要であることが,1群につよく意識されて

いる。

1群と2群では,1群の方がメンバーシップをよりつよく意識し,学習や生活への負の方向は,

やはり1群に強い。しかし,2群では,技術向上意欲や技術の習得・定着への意識が高く,さらに それらをいかに効率よく発揮するかに強い意欲をもっている。1群では,それが,できるまで練習 する,ゆとりをもってグランドに出る,グランド整備をするなど練習条件と練習への参加意欲が高 いものの,技術向上定着・発揮への意識は2群ほどではないと言える。2群が物的環境への不満足 意識は高いが,1群にはそれらがみられず,人的環境の整備・支援・協力・理解・後援体制の条件

アップが問題とされている。

(12)

他に,試合によく出る群(R群)と出ない群(S群〉を比較してみると,メンバーシップを高く 意識し,両群とも学習・生活への負の効果の因子が同じようにみとめられる。しかし,S群は,前 の2群と同じく施設・用具への不満足の意識が高い。R群は,人的・物的環境の整備を高く意識し ているし,物的環境によって練習条件が良い傾向にあることがみとめられる。S群が練習条件の整 備と練習への意欲的参加に高い負荷量がみとめられるが,R群は,2群と同様,心技体向上の因子 がみとめられ,S群とことなる傾向を示している。またR群には, S群とことなり,練習への意欲 的参加というより,集中力をつけて,練習や試合での力の発揮に重点をおいている。

したがって,2群とR群はほとんど同じ因子構造を示し,1群とS群も同傾向に近い。

V 高校野球部員の生活に関する調査

生活調査については,回収された259名について単純集計,クロス集計を行ないクロス集計では二 項目間の関連性の有意性を検定した(カイ自乗)。

練習については,練習をしたくないと思う部員が96%をこえ,練習時間の短縮を願う部員も4人 に1人はいる。休み回数をふやす願いは61%の部員がもつ一方,現状支持も37%いる。部活動以外 の自主練習時間も30〜60分が3分の1を占め,90分行なう部員も4人に1人の割合いでいる。少な いながらも90分以上やるものが12%強いる。自主練習の内容は素振り,筋力トレーニング,ティー バッティングが多い。目的は,技術の向上(35%),体力向上(12%〉が高い方である。

通学については,7時30分〜8時00分の間に家を出る者が多く(30%),次いで7時00分〜7時 30分の24%である。3%弱ながら6時30分以前に家を出る者もいる。通学時間は,30分〜60分が最

も多く(50%),30分以内も35%いる。1時間〜2時間を要する者は14%である。通学距離は,5

〜10㎞が26%と多いが,20㎞以上の通学距離の者も20%いる。したがって,通学手段も自転車70%

が最も多く,電車の35%がそれに次いでいる。帰宅時間は,7時〜8時の間がもっとも多く(36

%)9時〜10時の間が17%,そして6時以前は,少ない。就寝時間は,11時〜12時が44%と多く,

12時以降も35%いて,朝7時30分〜8時の間に家を出ることを考えると自由な時間や学習時間,睡

眠時間も少ない傾向がうかがえる。しかし,睡眠時間も7時間〜8時間が52%と多く,不足気味の

者は,20%程度だろうか。その中で家庭学習も60分〜90分が32%と多く,2時間以上する者も4人

に1人強はいる。だとするとゆっくり,くつろぐ自由な時間が見当らない。食事もそこそこに机に

つかうのだろうか。家庭学習をしない者は38%いる。6割の者は,30分以上〜3時間程度の家庭学

習時間を確保している(本回調査の対象校は進学校中心である)。家庭学習の時間はもっと長くし

たいと望み,現状で満足する者は4分の1程度である。授業へ集中できない者は60%をこえ,i集中

できる者は全体の3分の1にすぎない。自分の成績(学業成績)に満足している者は9%にすぎず

大半が不満気味である。生活については,朝なかなか起きられない者は32%いて,いつも気持よく

起床できる者は,わずかに2%である。食事をかならず食べる者は73%いて,食べないことが多い

者はわずか4%である。著者の関係している高校では,朝食をとらない生徒は,クラスによって異

なるものの10%〜25%いる。いつも食べない者も15%を下らない。そこからみると一般高校生より

朝食をとらない者が少ないと言えよう。部員が食べない理由は,時間がないとか,食欲がない,用

意していないとかの理由ではないようである。家を出るときに時間的余裕のない者が多く(73%),

(13)

ある者は4分の1の部員にすぎない。学校へ来るときの気分は,学校へ来たくない者,しぶしぶく る者が70%をこえ,いつも元気に登校する部員は28%にすぎない。授業中は,ねむい者が47%で部 員の半数は眠さと戦っていることになる。頭や身体が活動的になるのは,午前中の者が45%と多い

唐烽「て,学校の授業中に眠い部員は,授業中目が覚めず,練習で覚醒する傾向がつよい。朝と帰 宅後にだるさや疲れを感じていて,すっきり元気で活動的な時間は何時なのか不明である。

自由時間を何に利用しているかについては,テレビ(79%),レコード・テープ鑑賞(58%),

休息(57%),新聞・雑誌・本(47%),友人との交際(37%)が主な方法であり,戸外や外出し て活動する傾向は余りみられない。野球部員としての生活向上を注意しているかについては,暴力 事件を起さない(32%),タバコ(19%),酒(17%),交通事故(9.6%),部員同志の暴力(8.1

%)が注意事項ファイブである。これは,そのまま部としての出場禁止と警告等の不祥事につなが る事柄である。故障またはケガについては,ケガをしている者が42%いて,ケガをしても練習に参 加する者が92%の高い率を示している。ケガの部位は,腰,膝,肩,肘,足首,手首の順である。

クロス集計の結果,二項目間の関連を検討したのが以下である。

①練習をしたいか,したくないかと練習時間を長くしたいか,短かくしたいかとは関連があり,

練習をしたくないと思っている部員は,練習を短かくしてほしい,休日をふやしてほしい,学校 へくるときの気分がよくならないなどの傾向がある。

②練習時間をもっと長くするか,短かくするかと休みの日数への欲求には関連があり,もっと長 くしてほしいとする者は,休日も現状で満足しており,もっと短かくしてほしい者は,休日をも っと多くしてほしいと思っている。

③ 自分の学習時間をもっと長くしたいと思っている者は,自分の成績に不満の傾向が大である。

④授業に集中している者は,午前中に心身が活動的になり,集中していない者は,午後になる。

⑤朝いつも気持ちよく起きられる者は,家を出るときの時間的余裕をもっている。そして,いつ も元気よく学校へ登校してくる。

⑥家を出るとき時間的余裕のある者は,ない者より授業中眠らない傾向がつよい。

⑦帰宅時間が遅い者ほど練習時間を短かくしてほしいと思っている傾向がつよい。

⑧睡眠時間が短かいほど家庭学習を行なっている。9時間以上眠っているもので家庭学習をして いるのは11%にすぎない。

⑨学校へくるとき気分のよい者は,他の人より授業中ねむくならない。

⑩練習をしたくないと思う者は,他の者より授業への集中がよくない。

⑪練習休みを多くしてほしいと思っている者ほど学校へくる気分はよくない。

⑫ 家を出るときに時間的余裕のある者は,他の者よりいつも元気よく登校する傾向がある。

⑬ 家を出る時間が遅いほど家を出るときの時間的余裕がある。

⑭ 通学時間が短かいほど朝食をたべる習慣が高く,時間的余裕もある。

⑮ 睡眠時間が短かいほど学習時間を長くしたいと思っている。9時間以上睡眠時間をとっている 者の52%は現状で満足している。そして,家庭学習時間が長い者ほど今の学習時間をもっと長く

したいと思、っている。

(14)

ま  と  め

これまでの論議をふまえ次のような知見をえた。

1 大学生で高校野球経験者は,高校野球に対し,きわめて高い愛好の心情をもち,行為が美しく 感動的な感性をもつ。明るい,陽気な雰囲気を好み,活動に高い価値観・野球観をもっている。

克服,努力,達成感,積極性,男性的温和,寛大,充足,尊敬も大切な要因であるとイメージし ている。しかし,人間関係上での排他性・憎悪も意識している。

2 一般学生は,とくに男子は,野球を真・善・美を統禦した概念で把握しようとしており,非常 に美化した一面性がうかがえる。したがって野球は高校時代の意義ある,価値ある活動と位置づ けられている。その中では,美・感動・男性的な活動と演出・表現を高く評価し,そこにいたる 積極性,集中性,いきいきさなどの態度や部員問,監督との親密,温情,団結,協調などの人間 関係を強く認識している。マイナス要素として,野球の華やかさの裏にあるみにくい虚飾性,虚 像性を鋭く指摘している。

3 一般学生の女子では,男子ほど全能的把握はしていない。野球を感動的,美,愛,大切なもの ととらえ高い価値意識がみられる。困難な課題を積極的,パワフルな力で克服してパフォーマン スを高める態度と成果をイメージしている。プレーそのものは,男性的,鋭敏に把握する傾向が 男子よりは力感あふれるものとしてとらえている。しかし,男子より陰気,陰険,暗さ,歪み,

閉鎖性を深く感覚している。

4 運動部学生では,男子が野球に壮大な広がりをイメージし,開放性,素直さ,温情を意識して いる。同じ運動部活動をする同志として,活動の厳しさ,すごさ,苦しさ,困難さを認め,それ を超えるパワフルな活動力を期待している。マイナス要素として,無個性,排斥,逃避,不誠実 を意識している。

女子では,野球部活動の明るさ,頑張り,爽やかさ,うまさなど雰囲気的側面を意識している と思われる。活動を支える努力や克服に関するイメージが少し軽いようである。逃避,閉鎖性は 認めている。

5 野球部員が運動部に対する考え方

全学年の部員は,野球部活動が社会的規範,生活規範,人間形成,体力・技能の発達,協調・

協力の態度,心身の発達を助長させるという意識が強い。しかし,1年生では,少し先に目標を 置き,2年では,それらを役立てる,自己管理するに高まり,3年では,将来へのしっかりした

目標のための基礎づくりという認識がある。

部活動がもたらすマイナス要因を,1年は時間の使い方,封建性,排他性,間違った勝敗観,

強制,人間形成・社会観形成への遅れ,もどかしさなどをあげ,2年では,学力低下,無理,社 会観の貧困さをあげている。3年では,これらのマイナス要因を克服,打開する方向性が見えて 来ている。

野球部存続に関して,運動部は派手な生活をつくる,特定の選手が入部している,考えずに行

動する人間をつくるなどに対し反対の意識をもっている。2年では,不良生活をつくる,負けて

いる部は解散するなどを否定している。3年では,運動部は必要ない,経費自己負担に対し反対

(15)

意識をもち,3年で始めて運動部存続要因のひとつとしての経済負担に高い意識を示した。また,

3年生だけに部活動は民主的に運営されるべきとした因子(封建的でない,勝敗にこだわらない,

強制がない)が認められ,教育効果は3年で高められると推測される。

6 スポーツに対する野球部員の考え方

、スポーッ活動は人間形成をするのに有用であるとする考え方が全学年に共通するキーワードで あるが,1年では,身を守るのに役立つ,社会を明るくする,規律ある生活をさせるなど各項目 ばらばらに人間形成に有用としているが,2年では,人間・人格の再創造という(気分転換,共 同精神の啓発,公正・明朗,夢中になる)視点でとらえているようである。さらに,3年では,

社会規範,文化的価値意識,スポーツ観の広がりなどスポーッの効用を広い視野でとらえる傾向 が強い。

7 体育の授業に対する野球部員の考え方

全学年の部員が体育はリフレッシュ,仲間との親密活動であると位置づけている。そして健康・

体力の増進についても全学年部員にみられるが,1年部員は,体育の成果として,技能,態度と 同じ因子の中で説明される。2年部員は,健康や体力の発達がルール・マナーの遵守,責任感,

精神力との関連で養成され,3年部員は,体力・健康を獲得すると社会や生活習慣,協力し合う 習慣に役に立つと認識している。      ,

体育の指導が適切に行なわれ,体育の目標が達成されていることがうかがえる。授業に対して 目標を達成する努力を部員が意識していると予想される。

体育の授業で部員が自主・協調の精神を育てていることがうかがえ,授業場面では,自分みず から行動し,仲間との協調をはかって課題を解決している姿勢がうかがえる。

3年生だけに,技能の承認と闘争の因子がみとめられ,他から技能を的確に評価され,承認さ れ,それらが闘争場面で質的に向上するというパターンが予想できる。

8 野球部員の運動欲求

野球部員の運動欲求は,人間形成とのか・わりにあることに特色がある(精神力,達成感,自 信,技能向上,勉強との両立など)。3年生部員は,より積極的なスポーツ活動,身体活動を伴 なって高校生としての人間形成を目ざす意識がつよい。

1年生は,運動欲求がリーダー養成の基礎になるとは思っていないが,2年生では,競争や他 からの承認をえてリーダーになろうとする傾向はつよい。3年では更に,自分自身の努力的活動 や競争場面での承認をえて質の高いリーダーを目ざすという欲求がつよい。

運動欲求が健康に関連しているのは,1年生で,2年生では,健康と運動欲求が重ならない。

もっと言えば,健康のために運動をする欲求は少ない。3年生では,ストレス解消,体力増進を ねらった意識がつよい。

自己実現欲求は,全学年を通じて必ずしも高いとは言えない。3年生では,現状認識ができて いて,チャレンジ精神は鈍化する。2年生は,仲間とのスポーッ活動欲求がつよく,2,3年生 が,仲間や監督など人的環境,施設・用具などの物的環境の良好な状態を熱望している。

1年生から,自信,精神力の養成への欲求がつよく,2年生から,闘争とそれに伴う承認を求 める欲求がつよくなる。

9 甲子園大会に対する野球部員と一般学生のイメージ

(16)

一般学生の高校野球好き群と嫌い群では,その因子構造に違いがみられる。

L群は甲子園大会を礼儀正しさを含めた清純なイメージ,D群は,美しさを加えた純真なイメ 一ジで受けとめている。また,L群は,引き締った状態の中で,全力でのたくましい活動意欲が 表出されると意識しているのに反しD群では,引き締った雰囲気で,チームのまとまりに注目し ている。L群が大会を個性のある自由さ,自然体,気楽さととらえているのにD群は,慎重さに 根ざした自由さを意識している。L群に消極的,不活発のイメージがあり, D群にはない。

野球部員は,甲子園大会の病恨を指摘するような意識は1年部員にある。1年部員は,甲子園 大会が選手個々の一生懸命な,積極的な活動力や場としてとらえているのに対し,2年生は,チ 一ムとしての一人の責任の中での協調的な全力発揮が中心である。また,甲子園大会への畏敬が

2年生部員にある。

10 野球の練習に対する野球部員の考え

野球の練習は,部員にとっては,メンバーシップの確立ということが大きな問題である。

野球部の練習は,学習や高校生としての日々の生活に対してマイナスに働くと意識している。

1年部員は,練習への参加意欲は高い。しかし,2年部員は,自分の技能を向上させるために 意欲的にとりくみ,技能を定着させ,それを試合で発揮しようとする意識がつよい。

1年部員は,部員をとりまく人的環境(人的支援,援助,理解)をつよく意識し,2年部員は 物的環境に意識がある。

11 高校野球部員の生活に関する調査(特徴的な項についてまとめる)

①練習をしたくないと思う部員は90%をこえる。     

②練習時間の短縮を願う部員は4人に1人の割合でいる。

③部活動以外自主的に行なう練習時間も30分〜60分が30%を占める。

④部活動を終えて6時までに帰宅するものはほとんどいない。

⑤通学時間に1〜2時間を要するものが14%いる。

⑥帰宅時間が9〜10時のものが17%いる。

⑦就寝時間が12時以降のものが35%いる。11〜12時が44%ともっとも多い。

⑧睡眠時間は7〜8時間が52%,不足気味の者も20%はいる。

⑨家庭学習をする時間は,60〜90分が32%,2時間以上するものも4人に1人の割合でいる。

⑩家庭学習をしないものは38%。60%のものは,30分〜3時間の家庭学習をやっている。

⑪ 家庭学習をもっと長くしたいと望んでいる。

⑫ 学校での授業に集中できないものが60%をこえる。集中できるものは約30%である。

⑬ 自分の学業成績に満足しているものは9%で残りは不満である。

⑭ 朝なかなか起きられないものは32%,いつも気持ちよく起きるものはわずか2%である。

⑮ 朝食を必ず食べるものは73%,食べないことが多い』ものは4%いる。

朝食を食べない理由は,食欲がない,時間がない,用意されていないなどが主な理由である。

⑯ 学校へしぶしぶ登校するものは70%をこえる。

⑰ いつも元気に登校する部員は28%である。

⑱ 自由時間は消極的な方法ですごすものが多い(TV 79%,テープ58%,休息57%など)。

⑲ 頭や身体が活動的になる時間帯は,午前中 45%,練習前 22%。

(17)

⑳ 学校の授業中にねむいものは,練習間近かに覚醒する傾向がある。

⑳ 故障やケガをしているものは,42%,その92%はケガでも練習に参加している。

12高校野球部員の生活に関する調査(クロス集計の結果から)

①練習をしたくないと思っている部員は,練習短縮休日増加を望み,学校へくるときの気分 ㌧ もよくない傾向がある。

②練習時間の短縮を望んでいる部員は,休日をもっとふやしたいと思っている。

③学習時間をもっととりたいと思っている部員は,自分の成績に不満な傾向がある。

④授業に集中できるものは,午前中に心身が活動的になり,そうでない者は午後になる。

⑤朝いつも気持ちよく起きられる部員は,家を出るまでの時間的余裕があり,いつも元気よく 登校してくる。

⑥家を出るとき時間的余裕のある者は,ない者より授業中眠らないし,元気よく登校する。

⑦帰宅時間が遅い者ほど練習時間短縮を希望している。

⑧睡眠時間が短かい者ほど家庭学習をしている。9時間以上の睡眠時間をとっている者で家庭 学習をしている者は11%にすぎない。そして,学習時間を長くしたいと思っている。

⑨ 登校時気分のよい者は,他の人より授業中ねむくならない。

⑩練習をしたくないと思っている者は,他の人より授業への集中がわるい。

⑪ 練習休みを多くしてほしいと思っている者ほど,学校へ来る気分はよくない。

⑫ 通学時間が短かい者ほど朝食を食べる習慣が高く,時間的余裕もある。

1)日本学生野球協会『学生野球要覧』 (萩原印刷,1977),p.5.

2)同書,PP.5−10.

3)同書,P.5.

4)同書,PP.1−2.

5)同書,PP.3−4.

6)松下茂典「高野連とは何か」 『別冊 宝島』 (JICC出版局,1989), pp.162−179.

7)同書,PP.162−179.

8)中条一雄「高校野球を問い直す」 『学校体育』32,1979,pp.58−61.

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