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要 ヒ 日 ユ

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(1)

(23)

原著 :秋 田大学医学部保健学科紀要

13

( 1 ):

23‑33,2005

DV

被害女性 が体験 した支援 と回復 に関す る一考察 一回復過程 における支援 の現状 と医療機 関の役割‑

米 山 奈奈子

要 ヒ 日 ユ

本研究 は, 自らを

DV

(ドメスティック ・バイオ レンス)被害者であると認識する女性を対象に,彼 らの体験 した 支援 と回復についての諸相を明 らかに し,保健医療関係者の

DV

被害者支援に関する役割を検討 し,報告するもの である.対象者は,首都圏地域で開催 された民間相談機関が主催する集会 に参加 した

DV

被害女性である.調査に 協力が得 られたのは

7

名で,自記式質問用紙による.被害者は,

DV

被害によって受 けることになった支援の中でも,

さらに傷つ く体験を しており,また同居する未成年の子どものさまざまなス トレス症状に悩んでいた. しか し, 自助 グループに参加することが回復に重要な役割を果た していると答えていた.

Ⅰ.

は じめ に

DV

(ドメ ス テ ィ ック ・バ イオ レンス) は,親 密 な 関係 にお ける男性か ら女性 に対す る暴力 の ことであ る.

わが国で も 『女性 に対 す る暴力』及 び 『配偶者 か らの 暴 力 』 につ いて は, 平 成

9

年 に行 わ れ た東 京 都 の調 査1 ) , 平 成

11

年 度 及 び

12

年 度 に行 わ れ た 内 閣 府 の調 査

2)

な どか らその実態 が明 らか にな り, 平成

13

年 に は

「配偶者 か らの暴 力 の防止 お よび被 害者 の保護 に関す る法律」 が成立 し施行 され るに至 った.平成

16

年 には 前述 の法律 が改正 され,相談 の対象 が事 軍婚 や元配偶 者 な どに も拡大 され た り,

DV

被害女性 の同居 す る未 成年 の子 ど もの保護 が含 まれ た りす るよ うにな った二 王 ) .

このよ うに被害者支援対策 は少 しずつ拡大 して い るよ うに感 じられ るが,被害者 の声 を実際 に聞 いてみ ると, 被害者支援 策 はいまだ十 分 で はな く,支援 の中で彼 ら が不用意 にあ るいは理不 尽 に傷 っ け られて い る ことが 少 な くない.

WHO

( 世 界保健機 構 ) は

2002

年 に, 人 間 に対 す る 暴 力 は公衆 衛生 の問題 で あ ると し,暴力被害 を受 けた

数億人以上 の人 々が外傷 や精神疾患 を病 み, リブ ログ クテ ィブ ・ヘルスや精神保健上 の重要 な問題 で あ ると 報 告 して い る4 ) . っ ま り,

DV

被 害 女 性 た ちの抱 え る 困難 は,健康被害 の問題 で もあ るのだが一般 的 に はな か なか理解 されず, 医療 関係者 で さえ も,

DV

に関す る知 識 が不 十 分 で あ った り, 患 者 の症 状 と

DV

被 害 との関 係 性 を理 解 で きて い な い と指 摘 す る報 告 もあ る

5

・ 6 , 7 ) .特 に,

DV

被 害女性 の医療機 関 にお ける受 け 入 れ に関 して は,東京都 内の医療機 関 にお ける実 態調 査 が試 み られて お り, 被 害者 理 解 で は, 「暴 力被 害者 に も落 ち度 が あ る とす る理解傾 向」 が あ った と報 告 さ れて い る

8).

そ こで, この た び

DV

被 害女 性 の傷 っ いた体 験 と,

DV

被 害女性 の回復 を支 え る医療 関係者 の役割 を検討

したので報告 す る.

Ⅲ.

用語 の定義及 び解説

1.DV

(ドメ ス テ ィ ック ・バ イオ レ ンス):親 密 な 関 係で起 こる男性 ( 夫) か ら女性 ( 妻) へ の暴 力 の

秋 田大学医学部保健学科看護学専攻

秋 田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第

1

KeyWords:

ドメスティック ・バイオ レンス 自助グループ

二次被害

二次的外傷性ス トレス 法看護師

23

(2)

(24)

米山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復 に関す る一考察

こと.身体的暴力のみな らず,精神的暴力や性的暴 力を含む.

2.DV被害女性 :DV被害を受 けている女性の こと.

調査用紙 で は,DVサバ イバ ー (生存者,被害 を生 き抜 いた者 の意味) とい う用語を同義で使用 してい

る.

3. バ クラー :ここで はDV加害者 と同義 で, 女性 (妻) やその子 ど もに暴力を振 るう男性 (夫) の こ

.

4.シェル ター:DV被害者 (女性やその子 ども)が,

DV加害者 (男性)か ら一時的に逃れ るために利用 す る避難所 の こと.公的な ものとそれ以外 によるも のがあるが,利用方法等 は設置主体 によって異 なる.

利用者の安全を守 るために,非公開のところが多 い.

5. 自助 グループ :定期 的 に開かれて い るDV被害 女性当事者 による自助 グループを示す. 自分がDV

被害女性であるとい う認識があれば,誰で も参加で きる緩やかな形 をとっているが,当事者以外 は参加 で きないクローズ ド・グループとな っている.基本 的 には自分 の体験 を 『言 い っぱな し』,他者 の体験 を 『聞 きっぱな し』 に し,相互の安全 を守 るルール がある. グループの初心者向けに,専門家講師を招 きレクチ ャーを行 うこともある. グループの推進役 は, ファシ リテ一夕 (司会役) として グループ経験 の長 いメ ンバーが担 うことが多い. また, グループ に関す る照会 は,民間相談機関や ク リニ ックの電話 や相談等で行われている. グループの規模 は,その つ ど異 なるが,

1

回のグループの参加者 は十数人で ある.

6.二次被害 :DV被害者が,加害者か ら直接受 ける 被害 を一次被害 とす ると,被害者が一次被害の こと で相談や支援 を求 めた際 に,支援者や関係者か ら受

ける被害の こと.

7.回復:DV被害女性がDV被害を受 けた人間関係 か ら離れて,暴力 によ らない人間関係 を新 たに構築 し,心身および社会的な健康を取 り戻 してい くこと.

Ⅲ.研究 目的

DV被害女性が傷っいた体験 と,回復過程 における 二次被害の体験および′支援 に対す る反応を明 らかに し, 今後 のDV被害女性 の回復 を支 え る医療 関係者 の役 割 を検討す る.

Ⅳ.対象 と方法 1.対

本研究の対象 は,DV被害 を受 けた経験がある女性 で, 自助 グループへの参加経験がある当事者である.

200412月,民間相談機関の主催す る集会 に参加 した 人 の中で,筆者 の研究 の趣 旨を口頭および書面で説明 し,了解が得 られた もの.筆者 は民間相談機関の支援 者 の一人 として集会 に参加 してお り,本研究の調査協 力依頼 を参加者 に呼 びかけることを,集会 の主催者 に

も事前 に説明 し了解 を得ていた.

2.

筆者が作成 した自記式質問紙 (

1‑ 1

,

2)

によ る.集会 の参加者 の うち, 口頭で調査協力への了解 が 得 られた当事者 に直接質問用紙 を配布 し,後 日郵送 に て回収 を行 う.質問紙 の内容 は要約す ると,(1)冒らを

DV被害者であると特定するに至 ったプロセス,(2)シェ ル ター利用 に関す る情報,

( 3)

子 ど もへの影響,(4)DV

被害 による医療機関受診の実際

, ( 5)

医療機関以外での 傷っ き体験

, ( 6)

自助 グループ参加 の意味,の大 き く

6

点 に集約 され る.分析方法 は単純集計 による.

r

3.調査期間

平成1612月〜平成172 4.倫理的配慮

対象者 には調査結果 を研究 に用 いること,発表 に当 た り個人が特定 されないことを, 口頭及 び書面 によ っ て説明 した. また,調査研究への協力 は,対象者 のボ ランタ リーな精神 によることを述べ,協力で きない場 合であ って も対象者 には不利益が出ないことを確約 し

た.

Ⅴ.

調査用紙 は15名 に配布 し,7名か ら回収 され,回収 率 は46.7%であ った. 回答者 の年齢構成 は,20歳代1 名,30歳代2名,40歳代3名,50歳代1名 で あ った

(2). また,すべての回答者が現在家族 と同居 して お り,6名 は未成年の子 どもと同居 していた (3).

1. 自 らをDV被害女性 であ る と特定す るに至 った プ ロセス

回答者 が 自 らをDV被害女性 で あ ると認 識 す るま でにかか った時間 は,1年以内が1名,1年か ら5 以内が3名,5年か ら10年以内が3名であった. また,

(3)

米山奈奈子

/DV

被害女経が体験 した支援 と回復 に関す る一考察

1‑ 1

アンケー ト調査票

(25)

DV サバ イバ ー の 支 援 に関 す る ア ンケ ー ト

あなた と同居 されているご家族 についてお伺 い します。

ト1 .あなたの年齢 はおい くつですか。 ( )才

12.

あなた と現在同居 されて いる家族 はいますか ? いる ・いない

同居 されている御家族 のいる方 は、年齢、続柄 をお知 らせ ください。 ( 例 ;長女

8

才)

( 続柄 ・年齢);( 、 才)( 、 才)( 、 才)( 、 才)( 、 才) ( 、 才)

2.

あなたが ご自分の ことを、バ ター ドウーマ ンだ と認識 し始 めたのはおい くつのときですか ? ( )才

3.

ご自分がバ ター ドウーマ ンであると認識す るようにな った情報 は、何か ら得 ま したか ?もっとも当てはまるものをひとっをお選 び く だ さい。 ( )

①本や雑誌 ②新聞記事 ③ テ レビ ・ラジオ ④

AWS/AKK

の相談電話 ⑤

saya‑saya

の相談

⑥公共相談機関 ( 保健所 ・福祉事務所や女性 セ ンターなど) ⑦④以外の民間相談機関 ⑧医療機関受診

⑨保健所 など行政の講座 ⑲民間の講座 ⑪知人 ・友人 ⑫警察 ⑬ その他 (

4.

あなたが、バ クラー (‑夫 など)か ら、離 れて暮 らす ことを決意 した (あるいは考え始 めた) のは誰 の影響ですか ?もっとも近 い も のをひ とっお選び ください。 ( )

①知人や友人のすすめ ②医療機関のすす め ③相談機関のすすめ ④子 どものすすめ ⑤親兄弟 ・親類 などのすすめ

⑥警察 のすすめ ⑦ その他 ( )

5

1 .あなたが、バ ター ドウーマ ンであることを認識 してか ら、バ クラーと離れて暮 らす ことを決意す るまで どの くらいの時間がかか りま したか ? ( )年

52.

上記 の時間がかか った理 由を、 よろ しければ教えて くだ さい。

6

1 .あなたはシェル ターを利用 したことがあ りますか ? あ る ・ない

6‑2.

その時、お子 さんなどの ご家族 も一緒で したか ? はい ・いいえ

7.

シェル ターに関す る情報 はどこか ら得 ま したか ?有力 な助 けにな った ものを三つ選んで くだ さ

い 。 (

①本や雑誌 ②新聞記事 ③ テ レビ ・ラジオ ④

AWS/AKK

の相談電話 ⑤

saya‑saya

の相談

⑥公共相談機関 ( 保健所 ・福祉事務所や女性 セ ンターなど) ⑦④以外 の民間相談機関 ⑧医療機関受診 ⑨保健所など行政の講座

⑲民間の講座 ⑪知人 ・友人 ⑫警察 ⑬ その他 ( )

8.

シェル ターを利用 している間、 どんな ことが一番心配で したか ?ひとつだ け、選んで くだ さ

い 。 ( )

①経済的な こと ②バ タラーが追 いかけて くるのではないか とい う精神的不安 ③今後の生活全般‑の不安 ④子 どもの こと

⑤利用者同士 の トラブル ⑥ その他 ( )

9.

シェル ターではどんな ことが安心で きま したか ?当てはまるものを三つ選んで ください。 ( 、 、 )

①夜眠れた こと ②仲間がいたこと ③ 自助 グループの情報 を得 られた こと ④暴力を振 るう人がいなか ったこと

⑤ スタ ッフがいた こと ⑥ その他 ( )

10.

シェル ターを出て、困 った ことはどんな ことですか ?当て はまるものを三つ選んで くださ

い 。 (

①仕事 の こと ②経済的な こと ③親類 との関係 ④子 どもの こと ⑤学校 の こと ⑥住民票 などの問題

⑦バ クラーとの関係 ( 別居継続あるいは離婚 などのすすめ方 など) ⑧仲間 との距離が遠 くな った こと

⑨ 自助 グループに出 られな くな った こと ⑩ その他 ( )

ll .お子 さん と同居 されている方 にお聞 きします。現在、お子 さんの ことで心配 なことがあ りますか ?お子 さん、それぞれについてお答 え くだ さい。 ( 例 長女 ある ・次女 ない) ( ) ( ) ( ) ( )( ) その理 由 ;当てはまるもの全てを選んで ください。 ( )

①不登校 ②引 きこもり ③ い じめ ・い じめ られ体験 喜子 どもの暴力 ⑤子 どもの暴言⑥爪かみ ・チ ック ⑦夜尿症

⑧かん しゃく ⑨親 に付 きまとう ⑲ よい子過 ぎる 電感情 をL 出さない ⑫ その他 ( )

秋 田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第 1号

25

(4)

(26)

米山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復に関す る一考察

1‑ 2

ア ンケー ト調査票 ( 続 き)

12.

お子 さんの ことで相談す る場がありますか ? ある ・ない

一番助 けにな っている相談機関 はどんなところですか ? ( )

①児童相談所 ②民間 ク リニ ック ( 卦保健所 ④ シェル ターのスタッフ ⑤ 自助 グループ仲間 ⑥学校 の担任 の先生

⑦保健室の先生 ⑧福祉事務所 の母子相談員 ⑨心理相談室 ⑲配偶者暴力相談支援 セ ンター ⑪不登校の子 どもの会

⑫児童館 ス タッフ ⑬ その他 ( )

13

1 .あなたが暴力を受 けて いたとき、医療機関を受診す ることがあ りま したか ? ある ・ない

13‑2.

受診 したのは何科で したか ?あてはまる受診 した科 目、すべてをお答え くだ さい。 (

①外科 ②眼科 ③産婦人科 ④歯科 ⑤救急外来 ・救命救急 セ ンターなど ⑥整形外科 ⑦ 内科 ⑧精神科 ⑨小児科

⑲ その他 ( )

14.

それはどんな症状で したか ? ( 当て はまるもの全てに丸 をつ けて ください。)

①骨折 ②歯 を折 る ③打撲 ④不正 出血 ⑤切迫流早産 ⑥切創 ( 刃物 などでの切 り傷) ⑦不眠 ・抑 うつ ⑧ 自殺未遂

⑨消化器潰療 ⑲薬物 ・アル コールなどの依存 ⑪心臓神経症 ⑫高血圧症 ⑬子 どもの症状 ( 不登校 ・摂食障害 ・ア レルギーなど)

⑭夫の症状 ( 暴力の他 にアル コールやギ ャンブルなどの依存問題) ⑮ その他 (

15.

医療機関では

、DV

につ いて理解 していた と思 いますか ?当てはまるものに丸 をっけて くだ さい。

① よ く理解 していた ②理解 していた ( 診少 し理解 していた ④理解 していなか った ⑤不明

⑥ 自分 自身が症状 と

DV

との関連が理解で きなか った ⑦ その他 (

16.

受診 した医療機関で

、DV

について相談す ることがで きま したか ? はい ・いいえ それはなぜですか ?

1) はいの とき‑ ( 理 由 ;

2

) いいえの とき‑ ( 理 由 ;

17.

あなたの力 にな った医療関係者 は、いま したか ? いた ・いなか った それはどんな職種ですか ?当てはまるもの全てに丸をっ けて ください。

①医師 ②看護師 ( 看護婦) ③保健師 ( 保健婦) ④助産師 ( 助産婦) ⑤臨床心理士 ⑥ 医療社会福祉士 ⑦精神保健福祉士

⑧ その他 ( )

18.

あなたは医療関係者の関わ りで傷っいた ことがあ りま したか ? はい ・いいえ それはどんな職種 ( )の どんな言動で したか ?全てを選んで ください。

① あなたが悪 いといわれた ②軽蔑す るよ うな態度をとられた ③なぜ逃 げないの といわれた ④夫 に連絡す るといわれた

⑤夫の面会 を許可 した ⑥ あんなに良 い人 なのにといわれた ⑦子 どもの為 に我慢 しなさいといわれた

⑧ その他 ( )

19.

医療関係者以外のかかわ りで、 あなたが傷 っいた ことがあ りま したか。 はい ・いいえ それはどんな職種のどんな言動で したか ?自由にお書 きくだ さい。

20.

あなたは現在、 自助 グループに参加 していますか ? はい ・いいえ

はいの方 は、 どれ くらい参加 していますか ? ( )年 または ( )か月

2

1 . あなたにとって 自助 グループはどんな意味があ りますか ?重要性 の高 い ものか ら三つを選んで ください。 (

①新たな情報が得 られ る ②安心で きる ③ 自分の ことを客観視で きる ④勇気を もらえる ⑤共感 しあえ る ⑥相談 しあえ る

⑦ 自分 を評価で きる ⑧ その他 ( )

22.

あなたが 自助 グループに参加 して、 よか ったと思 うことはどんな ことですか。 自由にお書 き ください。

23.

その他

、DV

サバイバーの支援 について ご意見、行政 ・諸機関に対 して ご希望等があ りま した ら自由にお書 き ください。

◎ ご協力あ りが とうございま した。

(5)

米 山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援と回復に関する一考察 表

2

回答者の年齢

20

歳 代

30

歳 代

40

歳 代

50

歳 代

名 名 名 名 1 2 ′3 1

3

同居家族の有無 あ り

7

名 な し

0

名 内訳 未成年 の子 どもが い る

成人 した子 どもと未成年 の子 どもが いる 成人 した子 どものみ

両親 と同居 してい る

名 名 名 名 ハhU 1 1 1

表 4 自らを

DV

被害者であると認識するに至った情報の入手先

共 問 ン

R 口 ロ ロ 木 ・ 木 夕 関 関 卜 誌

機 機

談 談 ネ 雑 L 名 名 名 名 3 つ .一 l 1

5 DV

加害者か ら離れて暮 らす ことを決意 させた機関 相談機関のすす め

医療機関のすす め 子 どものすすめ

イ ンターネ ッ ト

DV

被害者支援 サイ ト リサイクル業者 のすすめ

自分で決 めた

名 名 名 名 名 名 2 1 1 1 1 1

DV

に関 す る情 報 は公 共 相 談 機 関 が

3

名 で , 民 間 相 談 機 関 が 2 名 , 本 や 雑 誌 , イ ン タ ー ネ ッ トの

DV

被 害 者 サ イ トな どか らそ れ ぞ れ

1

名 が 情 報 を得 て い た ( 義

4

). ま た, 回 答 者 が 暴 力 加 害 者 と距 離 を と る こ と に 影 響 を与 え た の は, 相 談 機 関 のす す め が 2 名 , 医 療 機 関 の す す め , 子 ど もの す す め, イ ンター ネ ッ ト支 援 者 サ イ トの す す め, 危 険 を察 し自分 で 決 め た, 家 財 を処

(27)

分 す る と き の 業 者 の す す め , が そ れ ぞ れ

1

名 だ った (表

5

). ま た , 自分 が

DV

被 害 女 性 で あ る と認 識 し て か ら, 加 害 者 か ら離 れ て 暮 らす ま で にか か った 時 間 は

1

年 以 内 が

5

名 ,

1

年 か ら

3

年 以 内 が

2

名 で あ った.

加 害 者 と離 れ て 暮 らす まで にか か った 時 間 とそ の理 由 は表

6

に示 した.

2.

シ ェル タ ー利 用 に関 す る情 報

7

名 の うち シ ェル ター利 用 経 験 者 は

5

名 だ った ( 表

7).

シ ェル タ ー に関 す る情 報 は, 民 間 機 関 の相 談 電 話 が有 力 な助 け に な って い た ( 表 8 ). ま た シェル ター 利 用 時 に は,

5

名 の うち

3

名 が 「今 後 の生 活 全 般 へ の 不 安 」 が一 番 強 い不 安 で あ る と答 え て い た が , 「バ ク ラーが 追 いか けて くるの で は な

か とい う精 神 的 な不 安 」 を挙 げた

1

名 は, シェル ター外 で接 触 したバ ク ラー に首 を絞 め られ る経 験 を して い た ( 表

9).

シェル ター

7

シェルター利用経験 の有無

利用 あ り

5

名 利庸 な し

2

名 同居 している未成年 の子 どもの利用 もあ り

4

8

シェルター利用 に関する情報 の入手先

N‑5

本 や雑誌

新 聞記事

民 間相談機関の相談電話

(4)

民 間の講座

知人 ・友人

警 察

自助 グループ

表 9 シェルター利用中の一番 の心配

N‑5

今後 の生活全般への不安

(3)

利用者 同士 の トラブル

DV

加害者が追 いかけて くるのではないか という精神的不安

6

バ クラー と離れて暮 らす までにかか った時間 とその理 由

N‑6

離 れて暮 らす まで

1

年以内 n

‑4

: 離 れて暮 らす まで

1

〜3

年 n ‑

2

子 ど もの転校 生活力 子 ど もの反対

自分が長女で跡取 りのため両親 と二世帯住宅 に住んで い たが、夫がなかなか家 を出て行かなか った

自分がすべて悪 い と思 っていた

自分 さえ変 われば家族 の関係がよ くな ると思 っていた シェル ターなどの一 時避難所での生活 の中で も, 自分 の 孤独感等 か らよ りを もどそ うと して いた

バ クラー と接触 した際,通行人 の多 い駅 で首 を絞 め られ たので決意で きた

恐怖心が強 く絶対 に逃 げ られないと思 い込んでいた 夫が変わ って くれ るか もしれないとい う期待感 が少 しで

もあ った 経済的不安

子 どもが父親 を失 う 実家 の無理解 、

秋 田大学 医学部保健学科紀要 第

13

巻 第 1 号

27

(6)

(28)

米山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復 に関す る一考察

10

シェルターで安心できたこと

N‑5

夜眠れたこと(

3)

暴力を振るう人がいなかったこと(

3)

スタッフがいたこと(

3)

さまざまな情報提供警察 との信頼関係が得 られたこと 心が和んだこと

11

シェルターを出て困 ったこと

N‑5

子 どものこと(

3)

住民票などの問題(

3)

経済的なこと(

2)

親類 との関係(

2)

人 と接 した くなかったこと

近隣との関係

DV

加害者が追ってくるのではないかという不安 仕事のこと

子 どもの学校のこと 加害者か らの執扮な攻撃

12

子どものことでの心配の有無とその内容

N‑6

あ る

5

名 ない

1

( 内容) 不登校,引きこもり, いじめ・い じめ られ体験, 子どもの暴力,子どもの暴言,爪噛み ・チ ック,かん しゃ

く,親に付 きまとう,よい子すぎる

(4)

,感情を出さない パニックを起 こす(

2)

,怒 りの コントロールができない

表1 3 子どものことでの相談機関

N

‑ 6 あり

6

名 な し 0名

( 相談機関の種類) 民間クリニック(

2)

自助グループ仲間(

4)

青少年相談センター スクールカウンセラー

利用 時 には, 「夜眠 れ た こと

「 暴力 を振 る う人 が いな か った こと

「ス タ ッフが いた こと

「 警察 との信頼感 が得 られ た こと」 が,安心 で きた ことと して挙 げ られ た ( 表

10).

また, シェル ターを出た後 の困 った ことは表

11

に示 した.

3.

子 どもへの影響

現在,未成年 の子 ど もと同居 して い る

6

名 の うち,

5

名 が子 ど もの ことで心配 な ことが あ る と答 えて いた ( 表

12)

. そ の内容 は, 「不 登校

」「

引 き こも り

「い じ め ・い じめ られ体験

「 子 ど もの暴力

「 子 ど もの暴言」

「爪 噛 み ・チ ック

「かん しゃ く

「親 に付 きま と う」

「よい子過 ぎ る

「感情 を 出 さな い

「不安 感 が強 い」

「 記憶 を抑圧 して いる

「 怒 りの コン トロールが難 しい」

「周 囲 の不適 切 な対応 によ って フ ラ ッシュバ ックやパ

ニ ックを起 こす」 な ど,多 岐 にわ た って いた. しか し 末成年 の子 ど もを持

っ 6

名 がすべて,子 ど もの ことで 相談 で きる場 を持 って お り, 「自助 グル ープ

「ス クー ル カ ウ ンセ ラー

「民 間 ク リニ ック

な どが あ る と答 えて いた ( 表

13).

4.DV

被害 による医療機 関受診 の実際

7 名 の うち 6 名 が,

DV

被 害 によ って医療機 関 を受 診 した ことが あ ると答 えて いた. その診療科 目は, 外 科受診 が 4 名,整形外科 を受診 したのが 3 名 で,他 で は産婦人科 ・歯科 ・内科 ・精神科 ・脳外科 ・心療 内科 ・ 小 児科 を受診 して い た ( 表

14).

一 人平均 , 約

2‑ 3

診 療科 目を受診 して いた. 受診 の 内容 で は, 「 骨折. 」

「 打撲

「切迫流早産

「 不 眠 や抑 うつ

消化器潰療 」

が挙 げ られ,夫 の精神 的 な症状 によ る相談受診 や子 ど もの症状 によ る受診 もあげ られて いた ( 表

15).

また, 受診 した医療機 関で

DV

につ いての理解 が なか った」

3

名 , 「自分 自身 が症状 と

DV

との関係 が理 解 で き なか った」 が 3 名 だ った. そ して, 6 名 の うち 4 名 が 受診 した医療機 関で は,

DV

につ いて相談 す る ことが で きなか った と答 え た. その理 由 と して, 「暴 力 を受 けて いた ことを告 げ ると, 医師が面倒 くさそ うな, か か わ りた くな い よ うな態度 に急変 した

「自分 自身 が

DV

だ と知 らなか った

「単 な る夫 婦 喧嘩 だ と思 って いた

「ケガの理 由を尋 ね られ, 『夫 に』 と答 え るとそ れ以上 踏 み込 まれ なか った」 が あ げ られ た ( 表

16).

他 の

1

名 は, 「不 眠 が続 いて過活動 にな り, 頭痛 が ひ 表

14

暴力被害による受診診療科目

N‑6

外科(

4)

,産婦人科,歯科,整形外科

(3)

,内科,精神科, 小児科,脳外科,心療内科

15

受診 したときの症状

N‑6

骨折

(2)

,打撲

(4)

,切迫流早産,切創(

2)

,不眠 ・抑 うつ, 消化器潰癌,子 どもの不登校 ・摂食障害 ・アレルギーなど の症状,ス トレスによって歯を食い しばっていたために歯 が欠けた

16

受診 した医療機関で

DV

について相談できなか っ た理由

N‑4

暴力を受けていたことを告げると医師が面倒 くさそうな 態度に急変 した

暴力 を振 るわれることはわか っていたが, 当時

DV

と は知 らなかった

単なる夫婦喧嘩だと思 っていた

自分が

DV

に関係 していると思 っていなかったため

医師 ・看護師にケガの理由を聞かれたが,「 夫に」 と伝

えたらそれ以上は踏み込まれなかうた

(7)

米山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復に関す る一考察

(29)

17

医療関係者からの対応で傷ついたこと

N‑7

18

自助グループに参加 してよかったと思う理由

N‑7

軽蔑するような態度をとられた(

2)

自分が惨めになるようなことを言われた

大変な話を しているのに,あくびを して真剣に聴いても らえなかった

根掘 り葉掘 り聴かれて,疲れたり,不快になった 夫の側の理由はわか らないのに,理由を問いただされた 夫が悪いといって くれたが,

DV

であることや情報を与 えて くれなかった

指の剥離骨折の治療で,夫の暴力でと伝えたら,適切な 治療を して もらえなかった

あなたは話が しっか りしているか ら,サポー ト体制はい らないといわれた

ど くな ったため に,過労死 が不安 で相談 した」 との こ とだ った. 医療機 関 に相談 で きた

1

名 は, 「診 断書 を 作成 して も らい警 察 へ行 くつ もりだ った」. また, 医 療関係者 のかかわ りで

7

名全員が 「 傷っいた経験があ っ た」 と答 え, 医師 ・臨床心理士 ・カ ウ ンセ ラーな どか

ら 「軽 蔑 す るよ うな態度 を と られ た

「十 分 な初 期治 療 を され なか った

「自分 が惨 め にな るよ うな ことを 言 われた

「あなたにサ ポー トは必要 な い といわれ た」

な どが あげ られ た ( 表

17).

5.

医療機 関以外 での傷 つ き体験

7

名全員が 「医療機 関以外 での傷っ き体験が あ った」

と答 えて いた. それ は, バ クラーに対応 して いた相談 良,民生委 員,警察,職場 の経営者 ,調 停委員,法律 扶助協会 の弁 護士,保健所 の職員,裁判所 の調査官, 子 ど もの担 任教 師,公営住 宅入居相談窓 口の職員 の言 動 による ものだ った.特 に,警察 に相談 した際 に,被 害者 で あ るに もかかわ らず尋 問 口調 や大声 で説教 され た ことで, 「保護 命令 申請 の ための書 類 を書 いて も ら

うことがで きなか った」 とい う答 え もあ った.

6.

自助 グループ参加 の意 味

回答者 が, 「自助 グル ープ参加 の意 味」 にお いて重 要 だ と考 え る理 由 は, 「共 感 しあえ る」 を

6

名 が挙 げ て もっと も多 く, 次 に

3

名 が 「安 心 で きる

「勇気 を もらえ る」,

2

名 が 「 新 たな情報 が得 られ る

「自分 の ことを客観 視 で きる」 を あ げて いた. また, 「自助 グ ル ープに参加 して よか った こと」 で は ( 表

18)

, 「同 じ よ うな経 験 や思 いを共 有 で きる

「他 の場 所 で は話 せ ない ことが話 せ る

「 否定 され る心配 が ない

「寂 しさ や孤独感 が襲 って きた と きに助 か った

「私一 人 じゃ な い, 仲 間 が い る, と うれ. しか った

「自分 のおかれ た状況 が理 解 で きるよ うにな った

「人 との交流 が復 活 で きた

な どが あ げ られ た.

秋田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第 1号

同 じような経験・ 思いを共有できる仲間に出会い,他の 場所では話せないことが話せる

否定 される心配がない

孤独感 ・寂 しさが襲 って くるとき大変助かった 共感 しあえる

一緒にがんばってきたという仲間としての自覚

夫か ら暴力を受け私が悪いと思わされていて,私は悪 く て恥だと思 っていたが,グループに参加 し私一人 じゃな いと気づき,仲間がいてうれ しかった

自分のおかれた状況をおぼろげなが ら理解できるように なり,、ここ数年途絶えがちだった人 との交流が復活 した

DV

被害にあった人にしかわか らない心の痛みを共感 し あえ,自分だけが苦 しくてつ らいのではないと知 り,長 く関わって いく中で他人の成長を見て勇気付け られ, 冒 分 もがんばろうという気持ちになれる

自助グループがなかったら,やってこられなかったと思 う レクチャーも重要で,情報・ 勇気・ 気づきなどが多 くあった 仲間の話を聞 くことで,自分は悪 くないんだと思えた 人間関係の試行錯誤もさせて もらえ,多 くを学んだ 新 しい人 との出会い

共感でき安心 して行動できること 人 とのつなが りが広がること

「 一人ではない」 という気持ちをもらえること

つ らいときの自分がサポー トされているという,生 きて いる証人注1 ) がいるということ

原家族注2 ) か ら得 られない快適さを得 られる

注 1 ) 自助 グループに参加 し,自分の体験を語 るときに, 自分の体験を聞いている生 きている 『 証人』がいる という意味.

2

)原家族 と. は,

DV

被害女性がかつて生まれ育 った家 族 ( 結婚前まで過 ごした家族)を示す.

Ⅵ.

考 察

1.DV

被害女性 の体験

1)DV

被害女性 自身 の

DV

理解

DV

被害女性 は, 自 らの暴力被害 を

DV

で あ る と特定 し,加害者 か ら逃 れ るまで にあ る程度 の時 間がかか って いた. また, 自分 の家族 内での立場 や,家族 を維持す るため に女性 が我慢 すべ き とい う伝統 的 な役割 に と らわれ, やむを得 ず暴力 を受 け入れて いた場合 が あ った.

ウォーカーは,

DV

被 害女性 に見 られ る精 神状 態 に共通 した傾 向 を, バ ター ド ・ウーマ ン症候群 と して

1979

年 に報 告 した9 ) .

DV

被 害女 性 は, 加 害者 の暴 力行動 の変容 に期待 す る. あ るい は

DV

被害 の原因が 自分 にあ ると, 自責感 を強めさ らに, 自分 は絶対 に逃 げ られ ない と思 い込 む ことで うつ 状 態 に陥 る. ウォーカーは,学 習性無力感 が さ ら

29

(8)

(30)

米山奈奈子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復 に関す る一考察

DV被害女性 の 自尊心 や 自己効 力感 を低 めて い くと考え,暴力が継続的に繰 り返 され ることを

暴力 のサイクル理論」 で説明 した. またハ ーマ ンは,暴力 による被害 に長期間 さ らされている女 性 たちの新 たな診断名 と して,複雑性外傷後 ス ト

レス障害 を挙 げて いる5). 直接 的な暴力 よ りも, 脅 しや脅迫 といった恐怖 と,被害者 を孤立感 に追 い込む ことで,加害者 は被害者 を支配す ることが で きるとい う.

今回の調査では,DVに関す る知識や情報 ・支 援者が比較的短時間で得 られたため,被害者 は自 分 の身 に実 際 に起 こって いる ことがDVと特定 で き,支援 を求める行動 を起 こす ことがで きた女 性 もいる. しか し,情報が得 られなか った ことで 被害が長期化 した と考 え られ る女性で は, 「シェ ルターとい う施設があることす ら知 らなか った」

と答えていたため,情報 の偏在化 による問題 も考 え られ る. また 「加害者か ら離れ るまでにかか っ た時間」 の理 由として,子 どもの反対や転校 など の問題 を挙 げた回答者 が いるよ うに, 「子 ど もの ため」 とDV被害 か ら逃 れ られ な い女性 も少 な くない.DV被害女性 自身が 「子 どもや 自らの安 全 を守 ること」 よ りも, 「家族 を維持す ること」

に価値 を置いているか,社会的な通念 などの影響 を深 く受 けていることが考 え られ る. 「家族 はど んなことがあ って も維持すべ き」 とい う一般社会 通念か ら自由であるよ うに見える女性であって も,

母親 は こうあるべ き」 とい う外的 なメ ッセー ジ が 自分 の中に刻印され, 自己内部での不一致 に苦 しむ とい う,DV被害女性 とジェンダーの問題 を 指摘す る報告 もある10).

2

)子 どもの家族内 トラウマ

DV被害女性 の未成年 の子 どもたちは,母親 と ともにシェルターを利用 したり,暴力加害者 となっ た父親か ら逃れた りしていた. こうした子 どもた ちは,父親 と同居中 も別居後 も, さまざまな不適 応問題 を抱えていた.挙 げ られた子 どもの症状 は,

DVにさ らされて育 った結果のPTSD(心的外傷 後 ス トレス障害)の症状 として読み取 ることがで きる5,11・12).暴力的 な環境 で 自己の感情 を抑圧 し 否認 した経験 によって,不適切 な適応パ ター ンが 強化 され, ます ます人間関係の構築や社会適応へ の困難 につなが る場合 も考え られ る.つまり,千 ど ものDV被害 は, 世代 間 を伝達 す るとい う危 険性が高 くなる.DV被害女性 たちは,子 どもの 症状 に戸惑 いなが らも知識 を得 ることで,子 ども

と自らの回復のために相談機関や 自助 グループ等 を活用 していた. しか し, そ うした子 どもの症状

‑の理解がない周囲の対応 に,苦慮す る母親 も少 な くない.特 に教育現場では,子 どものス トレス 症状 に対す る理解 を深 めることがます ます重要 に なるのではないか.

このたびの 「児童虐待防止法の改正 を施行す る 要綱」(2004)で は,DVその ものが児童虐待 に 当たると,法律上明記 された.子 どもの虐待防止 の視点か らも,子 どもにとって家族が安全 な環境 となるよ う努 めるのが大人 の責任であ り,役割で もあるといえよ う.

3)DV被害女性 の受 ける二次被害

DV被害女性 は,支援 を受 ける中で もさ らなる 傷っ さを体験 していた.二次被害 といわれ るもの である.二次被害 によ って,DV被害女性 は回復 に向か うエネルギーが奪われ,保護命令 の申請 と い う正当な権利 の行使 を阻まれた例 もある.

またDV被害女性 は,DV被害 によ ってあ らゆ る診療科 目を受診す る可能性がある. そ こでのか かわ りで,7名全員が 「傷っいた」 ことがあ った と答えていた ことは,注 目すべ きであろう. これ は,DV被害女性が 自分 の状況 を理解で きていな い ことやス トレスによる障害のために,適切 な形 で支援を求 めることがで きなか ったとい う,被害 者側の困難がひ とつ考え られ る.特 に最近では,

DV被害 とうつ病 との関係性 について も報告 され て いる13). しか し一方で は,医療者側 に危機介入 時の コ ミュニケー ション能力や,精神面での患者 理解 が不十分 で あ る場合 には, こう した患者 を

『厄介 な患者』 ととらえ,避 けよ うとす る力が働 くことも容易 に予想で きる14,15). このよ うな医療 者側の 「被害者 を非難 した り,見下 した りす るよ うな態度 や姿勢の背景 には, 医療者 のDV 関す る知識不足 や無理解 および偏見が存在 してい るのではないか.DV被害者 の支援 について は, 都道府県の配偶者暴力相談支援 セ ンターや市町村 に相談窓 口が設置 され,地方 自治体 は関係職員お よび相談員 の研修 に努 めな ければな らない と,

DV防止法で も明記 されている. しか し, もっと も危機的な状況で被害者が受診する可能性の高 い, 保健医療機関関係職員への研修等 はまだまだ遅れ ている.医療機関の設置主体 ・規模 ・DVに対す る取 り組 みの温度差など, さまざまな理 由が背景 にあると考え られ るが,救命救急 セ ンターや外科 系医療機関の職員 を対象 とす る研修の早期実現が

(9)

米山奈泰子

/DV

被害女性が体験 した支援 と回復に関す る一考察

望 まれ る. また,傷っ さの原因 とな った関係者が 多岐に及んでお り,特 に被害者 の人権擁護 および 保護 などに関わ りの深 い法曹関係者,加えて保健 福祉関係者 には重点的な研修が必要であると考え

る.

4) 自助 グループの意味

回答者すべてが 自助 グループの参加経験があり, 一時的に参加 を控えている1名 を除 く6名が現在

もグループに参加 していた.

外傷性ス トレスを調整する機能 として,ソーシャ ルサポー トの重要性 を挙 げた研究者 が複数 いるが

DV被害女性 の回復 につ いて も該当す ると考 え ら れる. フラナ リーはその ソー シャルサポー トの構 成要素 として

, ( a)

感情的支援

, ( b)

情報

,( C)

社会的 連帯感

,( d)

道具的支援,をあげた.またフィグ リー は,外傷性 ス トレスを受 けた家族 の研究か ら, ト ラウマを受 けた ものを効果的に支えた家族 に共通 するスキルを報告 している.それは

,( a)

特定のソー シャルサポー トのスキルだけでな く必要 な資源を 提供す るとい う形での具体的な援助

, ( b)

洞察 を明 確 にす る

, ( C)

認知 の歪 みを是正す る

,( d)

認知 の再 構成 を支援す る,である. カセロールはこれに加 えて

( e)

共感的な調和, をあげている15).

回答者 の考える 「自助 グループの意味」か らも, グループに参加す ることで 「共感」 や,安心や勇 気 とい った 「感情的支援」,新 たな 「情報」, 自分 の ことを客観視す ることか ら 「洞察」を深 め,認 知のゆがみを是正す ることで 自分 を評価す ること がで き,多 くの気づ さが得 られた ことか ら 「認知 の再構成」が支援 されていると考え ることがで き

る.

2.医療関係者の役割

1)医療関係者 のDV理解

DV被害者支援 に関わ る全ての支援者 は,被害 者 とその周囲で起 こっている問題 に対す る理解を さらに深めてい く必要があるだろう.特 に医療関 係者 は,DV被害女性 が生命 の危機 的状態や重篤 な健康状態であるときに,最初 に出会 う支援者 と なる可能性が高 い.DV被害女性 自身が,医療機 関受診 当時, 自分が 『被害者である』 ことを理解 で きていない場合 もあ ったことか ら,医療関係者 DVとい う暴力 が あ ること」「DVは被害者 には責任がな く,犯罪であること」 を理解 し, さ らにDV被害 の結果 を アセスメ ン トす る能 力 を 高 め,DV被害者 に説 明で きるよ うになることが

秋 田大学医学部保健学科紀要 第

13

巻 第

1

(3

1 )

望 まれ る.DV理解 のない医療関係者 との出会 い により,DV被害女性が二次被害 にあ う危険性 は 高 くなると考え られ る.医療関係者 との最初 の出 会 いが,DV被害女性 の回復への道筋 を左右す る とした ら,医療関係者 には大 きな責任があるので はないか.

医療 関係者 がDVを理解 す る視点 を持っ こと や,DV支援 に関す る情報 を持 っ ことで,DV 害女性 が よ り早 い時期 にDVに気づ き, 回復 へ 向か うための支援が得 られ ることを期待で きるの で はないか. もちろん医療関係者 による一方的な 価値観 の押 し付 けや,DV被害女性 に代わ って決 定や選択 をす るのがいけないことは言 うまで もな

い.

こうした ことか ら,DV被害者への医療関係者 の役割で は,①患者 の直接的 ケアを行 う,(診DV

に関す る基本的知識や安全のための重要 な情報 を 提供す る, あるいは専門相談機関を紹介す る,③ 特 に精神的なケアか ら集団精神療法 などにつなげ る場合 は,DV被害女性 の回復 には時間がかか る ことを理解 してすすめる等が重要であると考える.

2)医療関係者 のDV相談支援体制

DV被害女性 の体験 か らは,DV加害者 と離 れて暮 らす ことを後押 しした」 として,医療機関 をあげた人がいた. また,支えにな った医療関係 者 の存在が報告 された一方で,全員が医療関係者 のかかわ りに傷つ く経験 を していた. こうした こ とか ら, 医療 関係者 のDV被害者 へ の支援体制 には,ば らつ きがあると考 え られ る.加納 も,塞 力被害者の受 け入れに関 して,医療機関 によるば

らつ きがあることを報告 している8).

今回 は,それぞれの医療機関が どのよ うな支援 体制を もっていたかについては明 らかにす ること はで きなか った. しか し近年,大学病院などで, 児童虐待 やDVに関す る受 け入 れ委員会 な どを 立 ち上 げる動 きが見 られ ることか ら,医療機関 に おいて もチームで支援体制 を作 り, さ らに複数 の 医療機関を含 めた地域 ごとの支援体制 を確立す る 必要性があるので はないか.

3)医療関係者 による記録の重要性

医療関係者 には,DV被害の証拠 を,裁判 など に備えて確実 に記録す る役割が求 め られ る場合 も ある.今回の調査で も1名が,診断書を希望 して 受診 していた.救命救急 セ ンターを受診す るすべ ての女性へのスク リーニ ング項 目に,DVに関す

31

(10)

(32)

米山奈奈子 /DV 被害女性 が体験 した支援 と回復に関す る一考察

る質問を盛 り込 む動 きも欧米で は増 えている.

本で も医療 関係者 に,写真 ・レン トゲ ン写真 ・診 断書 な ど正確 な記録 を提 出 し, あるいは保管す る 役割が今後 さ らに求 め られる ので はないか.北米 で は特 に, こう した問題 を扱 うForensicNurse (法看護 師) の役割 が注 目されてお り, 司法関係 者 との共働 に期待が高 ま っている16).

3.支援者 のための支援 の重要性

最近 の研究 で は,DV被害者支援 につ いて支援者 が抱 え る困難」 につ いて も報告 されて いる17). そ こに は,支援者 の中での被害者理解が進 まない こと,被害 者 のみな らず被害者支援 を行 う関係者への支援が不十 分 な ことか ら生 じるバ ー ンアウ トなどのス トレス障害 の存在,被害者支援 に活用 で きる社会資源 の相変 わ ら ずの少 なさなどが挙 げ られている.今回の回答者 の中 で も,DV被害女性が,加害者 との対応 によるス トレ スを支援者 か らぶっ け られて傷ついた とい う例があ っ

た .

DVや虐待 な どの暴力被害者 を支援 す るには,支援 者が 「二次 的外傷性 ス トレス」 を受 ける危険 につ いて も, 多 くの研究者 か ら報告 されて い る15,18,19・20).そ う した被害 を支援者 自身が 自覚 し,被害 をよ り少 な くし 予防す るために も,支援者 のネ ッ トワークが重要 であ ろ う. そ してDV被害 か らの回復 をすす め るには, 支援者 にとって も自らの二次的外傷性 ス トレス障害 の 影響 を少 な くす るために も,支援者 のための グループ とい う方法が有効であるとい う知識 を広 めてい く必要 があると考 え る.

Ⅶ.結

DV被害女性が体験 した支援 と回復 に関す る調査で, DV被害女性7名か ら協力が得 られた.彼 らは,

1) さまざまな相談機 関 とのかかわ りの中で,DV 被害女性が二次被害 を受 けていた.特 に医療関係 者 の言動 は,DV被害女性 の自尊心 を傷っ けてい

た .

2)DV被害女性 の子 ど もは,家族 内 トラウマか ら さまざまなス トレス障害 を抱えて いた. しか し, すべて のDV被害女 性 は子 ど もの ことで相談 で

きる場所 を持 っていた.

3)DV被害女性 にとって 自助 グループは 「共感 し あえ る安心 で きる「勇気 を もらえ る」場 と し て重要 な意味があ り, 自己肯定感や 自己効力感 を 高 めることにつなが っていた.

以上 の こ とか ら, 医療 関係者 のDV理解 を深 め る

ための教育研修が実施 され ることが早急 に望 まれ る.

また,DV支援 に関わ る関係者 向 けの教育研修 で は, 被害者 の受 ける二次被害,支援者 の受 ける二次的外傷 性 ス トレスの危険性 について,知識 や経験 をよ り広 め てい く必要があ ると考 え る.

Ⅷ.おわ リに

今回 は標本数が少 ない ことか ら,DV被害女性 の経 験 を一般化す るには更 なる調査が必要 とな るだろ う.

しか しなが ら, 自らの体験を答え ることを快 く了承 し, 研究 に ご協力 いただ いた7名 のDV被害女性 の勇気 に心 か らお礼 を申 し上 げ, 今後 もさ らにDV被害者 への支援 や回復 にお ける医療関係者 の役割 を明確 に し ていきたいと考 え る.

文 献

1 )東 京 都生 活 文化 局 女性 青 少 年 部 女性 計 画課 編 集 :

「女性 に対 す る暴 力」調査報告書 .東京都政策報 道 室 都民 の声部情報公 開課,平成

10

3

2)

内閣府男女共 同参 画局 :配偶者等 か らの暴力 に関す る 調査. 内閣府男女共 同参画局推進課,平成

15

4

3)

内閣府 男女共 同参画局 :

STOPTHE

暴力.平成

16

12

4)WHO:World Reporton Violenceand Heallh 2002.

5)ジュディス・L・‑‑マン,中井久夫訳 :心的外傷 と

回復. みすず書房,東京

,1996

6)ベセルA.ヴァン・デア ・コルク アレキサンダーC.

マクファーレン ラース ・ウェイゼス 編 西洋 哲 監訳 :トラウマティック ・ス トレス.誠信書房,東京, 2001

7)

「夫 ( 恋人) か らの暴力」 調査研 究会 :ドメステ ィ

ク ・バイオレンス 新装版.有斐閣,東京,1998 8)

加 納尚美 ほか :医療機 関 にお ける性暴力 ・暴力被害

女性 の受 け入 れ に関す る実態調査. 日本公衆衛生学会

誌,第47巻,第5

号 ;

pp394403,2000

9)レノア・E・ウォーカー,斎藤学監訳 穂積由利子訳 : バター ドウーマン.金剛出版,東京,1997

10)宮地尚子編 :トラウマとジェンダー.金剛出版,東京, 2004,pp188201

ll)ベ ッセル・A・ヴァンダーコーク編著 飛鳥井望 ・前 田正治 ・元村直靖 監訳 :サイコロジカル ・トラウマ.

金剛出版,東京,2004

12)ランデイ・バ ンクロフト/ジェイ・G・シルバーマン, 幾島幸子訳:DVにさらされる子どもたち.金剛出版,

参照

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