歯車歯形試験装置の一機構について
堀 込 泰 雄 *
A M e c h a n i s m o f I n v o l u t e T e s t e r
Yasuo Horigome
l. 緒 昌
インポ T)ユー ト平歯車の歯形試験機 として,以前から多 くの楼塀が用いられている。歯形試験 機を構造上 より分煩すれば,1) 基礎円板を必要 とするもの,2) ピッチ円板を必要 とす るもの お よび
3)
基礎円板または ピッチ円板を必要 としない ものの三種塀がある。1)と2)では被測定 歯車の寸法が変 るごとに,精度の高い基礎円板または ピッチ円板を製作 しなければな らなLF、不便 さがある。 これに対 し3)は構造がやや複雑で高価ではあるが,基礎円板または ピッチ円板を製作 す る煩わ しさがないので,使用す る立場からは,便利であるといえる。 この方式に もさまざまな(1)(2) 楼店があ り,多 くの歯形試験機で用いられている。
本研究では,上記3)の方式で歯形試験機に採用できる‑機構を考案 し,この機構を用いた簡単 な歯形試験装置を試作 して検討を試みた。本校帯では,サ イソバーとブロックゲージで被測定歯 串の寸法 (基礎円直径)に見合 った角度を設定す ることに よって,測定範囲内における任意の寸 法の歯革の歯形を測定す ることができる。以下にその機構 と'iPJ定原理について説明 し,実際に歯 形を測定 して得 られた結果を示 し,かつ本機構に生ず る誤差についての考察を述べ ることにす る。
2.
原 理 お よ び 構 造基礎円板を用いた歯形試験枚の機構に,図
1
に示 され る方式がある。すなわち,被測定歯車を同心に取付けた 基礎円板を,固定 された直定規の上でころが り運動 させ る。静止 したインジケータの測定子を,直定規の上面 と 同一平面上で測定すべき歯面に押 し当てておけば,測定 子の変位が歯形誤差 としてインジケータに表われ る。 も ちろん この方式では,歯串の寸法が変れば,精密な基礎 円板を取 り替えなければならない。被測定歯車にこれ と全 く同じ運動を,基礎円板を用い ないで行なわせるため,図
2
に示 された構造の装置を考*横械工学科
図
1
歯形誤差測定の原理 (基礎円枚 を用いる場合)3 4
奏 し試 作 し た。図
2
にお いて直定規A
は, 4
個のポ ールベ ア 1)ソ グに よ り案内 され,左右に 軽 く移動す る こ と が で き る。直定規A
には,被測定 歯車を同心に 取 り付 け た 直 径1 7 0 , 0 0 0
mm
の精密円 板が, ころが り運動 できる長野工業高等専門学校紀要 ・第
2
号よ うにのって
い る。 また精 図
2
装置の原理密 円掛 こは,厚 さ
0. 0 5 mm
の鋼帯が巻 きつけ られている。鋼帯の他の一端は,偏心の少いプ‑1)を経 て,直定規
B
に固定 されてい る.直定規B
は案 内に よ り支持 され,精密に上下にスライ ド す るo今,直定規B
を下方へ動かせば,その移動量だけ鋼帯が引張 られ 精密円板は直定規A
の 上 を ころが りなが ら右方‑移動す る。直定規β上 には,サインバーが ブ ロックゲージに よ りあ る角度傾いて取 り付け られている。サ イ ンバ ーの傾斜面 は,直定規
A
に固定 させてい るピソに接 してい るため,直定規βが下方‑動 け ば サイ ンバ ーの傾斜面は直定規A
を左方‑押 しや ることにな る。そ こで,サインバーの角度を適 当 に作れば,図1
の場合 と全 く同 じ運動を被測定歯車 に与えてや ることができる。今,精密円板の直径
:刀
被測定歯車 の基礎円直径 :
d
g直定規
B
の移動量 (鋼帯の移動量 と等 しい。) :y直定規
A
の移動量 :∫精密円板の中心位置 の移動量 :W
サインバーの傾斜角
:¢
とす る。
図
2
の被測定歯車に,図1
の場合 と全 く同 じ運動を させ るには,次の式を満足 させなければな らない。歯申歯形試験装位の一掛 掛こついて
y‑9%: / gg / 2
・W ‑聖・ w x‑BBi/ d 2 g ! 2
・W‑誓g・ W (
】) ,( 2 )
式 よ り,サイ ソバ ーの憤斜角 砂は,t an¢ ‑
x,‑
B ‡d d
;ゆ えに被測定歯車の基礎 円直径
d
gがわかJuf,サイソノミーの慎斜角 aiが計算 で きる.(計罪 例) 被測定歯卑 It・)ユール
m‑3
歯 数2‑3 0
圧 力角α"‑2 00
∴dg‑zmcos
α
n‑3 0×3×c os 2 00‑84.
572/yLm試作 した精密円板 の直径は
,D‑1 7 0 , 0 0 0mm
であ るか ら,( 3 )
式 よ りt an珍
‑Bfd dg 8‑i 7 7 0 .
7,
830 .i8 8 J Jl . 宗2 2‑0・ 3 3 5 5 7
/ . s i nL b‑0. 31 81 4
試 作 した装匠に使用 したサイ ン/ミ‑の ローラ小心距離は,1
0 0mm
であ るので,31 814mm の ブ ロックゲージをあてがえば よい。測定子の形状
図
3
.試作した船形読取;hti匠の写作 図 4 測近丁・の形状以 上,図
2
をJT]いて原13里を説明 した.実際に試 lJFした装置 の写1
‑i:を図3
に示す。写真右 側が機 構部 分であ る。測定 には差動 変圧 器式 の電気 マイ クロメータを便川 し,史にl勾3
左側に見 え る レコー ダを併用 したo Lたが ってLEi定 規l
B
を一定速ほてlJL・;針 )なが ら.同時に L,コー ダの記 録歓 の 上に歯形誤差線 l朝をかかせ ることがで きる。(3)
歯形誤題を測定す る際,妓測定歯 車の歯面 に
:
I/lて る測'jii‑J'・の形状が閃題 とな るが,本装 匠に披 用 した測定子は,東京精密製電気 マイ クpメータに使用 されている レバ ー型検山器の測定 子先端を図4に示 された形状に加工 した ものを用 いた。
3 6
長野工洪高等専門学校紀要 .節 2
号Tl l ーI LL‑ 1i
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図
5
測定系 . I , = 只一
柳 玖LU主題記 録線 図 裾則
左胸fl T . 〃7 ‑3 Z‑3 0 α"‑200
歯車船形試験装置の‑機構について
3 7
3.
測 定 結 果図
5
は本装置を使用 して得 られた歯形誤差記録線図である。被測定歯車は
,m‑3 ,I‑3 0 ,α n ‑2 00
のホブ切 り歯車で,図5
の測定結果でa,b '
̲C'd
ほ それぞれ歯亭中心に対 して直角をなす4
方向の位置にある歯面を測定 した ものである。この記録された歯形誤差線図では
, 1
目盛が2
F叫こ相当 し,歯形のプロ7イルの全は うを十分表 わ しているし,かつ歯面の細かな凹凸もある程度記録されていることがわか る。ただ,本機構の欠点 として,かみあい線の長さ (歯形誤差線図の横軸)の拡大率が,被測定歯 車の基礎円直径の大小によって変 って くることがあげられ る。拡大率は次のように計算され る。
被測定歯車の中心の移動速度 :
〟1
記録紙の送 り速度 :
〝2
直定規
B
の速度 :が
とすれば,(1)式 よりill
‑d ‑
d7‑51
gd7 ・き
ざ‑嘉・ V
ゆえにかみあい線の長さの拡大率
E
は, E‑u j=B idg ・ u 2 ‑
u l d g v
本実験では,
‡ ′ 2
‑1 0 mm/ s e c v‑4. 8 7 mm/ s e e
ゆえに(4)式 より E‑6.18拡大率
E
を一定にす るため,
u2
または Vを無段に変速できるように してお くのも,欠点を補 う 一方法であろ う。4 .
誤差 につ いての考察4 ‑1
直 定 規Bの 真 置 度 誤 差 に よ る影 響 につ い て図
6
は直定規B
とサイン,:‑を模型的にかいた ものである。図を簡単にす るため,直定規B
は 直線BB
,サインバーは三角形DEF
で表わす ことにす る。 直定規B
の案内面がその実直度誤差 のため,運動の途中で ♂だけ傾斜 し, 正 しい位置BB
に対 してB′ B
′の位置になった とす る。当然サインバーも三角形
DEF
より三角形D′ E/ F
/の位置に動 く。 直定規A
に固定 してあるピソが
P
点で接触 していれば理想であるが, ♂傾斜 したた桝こP
′で接触することになる。 したが ってこのとき直定規Aの送 り誤差Axl
は,次式で 争え られ る.A x1 ‑ OPs i n o・ t a n
(¢+e)‑hs i ne・ t a n( ¢+o )
ここに βは微小であるので,A
x1%ht a n
Q・0( 5 )
上式 より,誤差は直定規の案内面 よりサインバーの傾斜面における接触点 までの距離h, サイ ンバーの傾斜角 中の正切お よび直定規
Bの真直度誤差 Or ad
に比例することがわか るO本装置において βを測定 した ところ
38
β‑4 ×1 0 6 r a d
であった。最悪の場合を 考慮 し,申‑4 50 h‑1 0 0mm
として も,Ax1 ‑0. 4
jLで 誤差 としての影響は極め て小 さい といえる。4 ‑2
直定規A
と 直定規Bとの直 角度誤差 による 影響について図 7
において,直定規A
に対 して直角な方向を長野工業高等専門学校紀要二第旦二蔓
直定規Bの兵直度誤差による影響 図 6
A C 直定規Aと直定規Bと
の
直角 度誤差による影響図 7
AA
とし,実際に直定規B
を組立てた場合 これ とPだけ傾斜 してCCの方向に向いて作動するものとする。直定規B
がyだけ下方に移動すれば,サイン,:‑の位置は三角形
DEF
が三角形D' E′ F
′に移動するこ と に なる。直定規A
に固定 してあるピソは最初P
点で接触 している。直定規B
がyだけ動けば ピソの 接触点はQ
〝になる。 したが って直定規B
の動 きPQ
〝ほ次式 となる0pQ〝 ‑yt a n¢・
品≒yt a n"1・t a n
‑ゆえに Pのために生ず る直定規
B
の送 り誤差をAx2とすれば, Ax2 ‑PQ〝 ‑PQ
′≒yt a n2 ¢ ・ p
試作 した装置で Pを測定 した ところ,
9‑1 ×1
0 4r a d
y‑3 0mm ,¢‑4 5
0とすれば,Ax2 ‑3
FL4 ‑3
サインバーの傾斜角誤差による影響についてサインバーの傾斜角誤差を
A
少,そのために生ず る直定規A
の送 り誤差をAx3
とすれば,(6)読 を少で微分L d少を乗 じて次式を得 る。Ax3 ‑yS e C 3 ¢( 1 +2 t a n¢・ t a ng)A¢
*ys e c 2
4・AQ( 8 )
( 8 )
式 よりAx3
は 少が大 となる程増加する。 またA
¢ 自身 も少が大 となる程大 き くなるので,オズ3
はます ます大 き くなる可能性がある。いま,仮 りに
A¢‑5 × 1 0 1 5 i a d ¢‑4 5 o y‑30mm
とすれば,Ax3 ‑3
FEとなる.歯串歯形試験装置の̲一機構Fこつ…
3 9
4 ‑4
装 置 の 綜 合 誤 差本装置た生ず る誤差の原因 として
,4‑1‑4‑3
まで検討 してきたOその他の原因 としては, 直定規 と精密円板 との転勤のス リップ,精密円板の工作誤差,測定子位置の誤差等があげられ る が,いずれ も測定誤差に与える影響は十分小 さいので省略する。 したがって直定規A
の送 り誤差Ax
は,Ax
‑A x l + Ax2 +ASS
ただ し
4‑1
で検討 した ように,Ax
lは十分小 さいので これを無視すれば,Ax
≒Ax2 +Ax3
‑y(ta
n2 ¢ ・ p+s e c 2 ¢・ A¢) ( 9 )
A x
は直定規A
の送 り誤差であるが,測定子の歯面に接 している位置での誤差を Sとすれば,6 ‑ ‑ を( 1・d
Dg
‑)Ax
‑‑
;‑y
(1 ・ d b g ‑ )
(t
an2W ・s
ec 2
如 ¢) 的
これが本横棒に生ずる誤差であるが,被測定歯車の大小に よって生ずる誤差が変化す る。そ し
て,dg
が小 さい方が誤差は大 きい。仮にdg‑
0 とすれば,¢‑4 5
0で, Eは最大 とな り,
e ma x ‑一 芸I y( 什 2 A¢)
ul)
4‑ 2, 4‑ 3
で検討 した ように,¢‑4 5
0の とき,本装置に生ず る誤差は,Ax2 ‑3
FL,Axュ ‑3
FE であるので,E ma J ‑3
fLとなるOこのことを確かめるために,次のよう な実験を行なっT=
。¢‑4 5
0にセ ットし, 直定規B
を下方に送 り歯車の中心軸 の動 きを最小 目盛 1FLのイソジケ‑タで測定 した。その結果を図8
に示す。 これによ ればE ma x
‑1
.5
FLであ り,本装置の歯形 誤差測定の精度は十分高いことがわかる。5.
結的 = ・ o ・ 5 0 0 = ▲・‑ ・⊥ ‑ 綿 di 中
心の移如上EかA丈
図
8 や‑4 5
'の場合、 直 定規 B
の動 きに対する僻市中心の移動量Fa
以上のことをまとめると,
(1)本機構によ り,精密円板直径 より小 さい基礎 円直径を もつ任意の歯車の歯形誤差 を測定す ることができる。
( 2 )
電気マイ クロメ‑クとレコーダの併用に より,歯形誤差記録線図をかかせ ることができる。 ( 3 )
かみあい線の長 さ (歯形誤差記録線図の横軸)の拡大率は,被測定歯車の基礎円直径に よって変 り,(4)式に よって計算できる。
(4)本装置で測定する際に生ず る誤差の主な原田は,直定規
A
と直定規B
との直角度誤差お よ びサイソ,:‑の憤斜角誤差 である.測定結果の誤差は(10式で与えられろ.( 5 )
基礎円直径dg
が小 さい程, 同じ値のyに対 して誤差は大 となる。試作 した 装置でd8 ‑0
の場合
,y‑3 0 mm
の範囲で測定値に与える誤差は1. 5
FLであ り,十分小 さい ことを確かめた。
4 0
長野工業高等専門学校紀要 ・第2
号おわ りに本装置の試作には,本校機枕工学科斉藤光邦講師はじめ機械工場の方方を煩わせたこ と,また試作から実験に至 るまで市川和男君に並並ならぬ御努力を願 ったことを付記 し,惑謝の 意を表する次第である。
参 考 文 献