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TRIP 型複合組織鋼板の深絞り性に及ぼす温間加工の影響

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長野工業高等専門学校・紀要第31(1997) 19

TRIP型複合組織鋼板の深絞 り性 に及ぼす温間加工の影響

―第1報:コニカルカップ試験―

長坂明彦 和田一秀

Effects of Warm Forming on Deep Drawability of a TRIP‑aided  Dual‑phase Steel Sheet (1st report, Conical Cup test)

Akihiko NAGASAKA and Kazuhide WADA

Toimprovethedeepdrawingofahigh‑strengthTRIp‑aideddual‑phaserrDP)Steelsheet,theeffectsofwarm rormlngOnthedeepdrawabilitywereinvestigated.Deepdrawingtestswereperformedonanlnstronmachineto measureConicalCupValue(CClりandmaximumdrawingload(Pa .TheresultantlowerCCYandhigherpmax

areobtainedatloo‑150oCrortheTDPsteelbecausestraininducedtransformation(SIT)orretainedaustenite particlesisextremelysuppressedinthetemperaturerange.TheCCVortheTDPsteeldependedconsiderablyon t

hedeepdrawingtemperature,whichappearedhardlyforaferritebainitedualphase(BDP)steelwithoutretained austemiteThedeepdrawingor也eTDPsteelisimprovedbywam rom ingat100‑150℃.

キーワー ド:深絞 り性,残留オーステナイ ト,変態誘起塑性,温間加工,高強度鋼板

1. は じめに

近年,乗用車の車体軽量化と衝突安全性の 向上を 目的に開発された高強度鋼板の 中で,残留オ ーステ ナ イ ト (γR)の 変 態 誘 起 塑 性 (T RIP:

TransformationInducedPlasticity)1)を有効に利用 し TRⅣ型複合組紙鋼2‑14)(TDP鋼)はとくに優れた 伸びおよび張出し性6‑13)を有する.現在,軽量化効 果の最 も期待できるホイール ディスクやサ スペ ン ションアームなどの足回 り部品への適用研究 か墳梅 的に行われている.

伸び5)および張出し性8)と同様に,TDP鋼の深絞 り 性の改善は温間加工 によって改善されると予想され る.室温での深絞 り性 はγRTRIP効果により優れ ていることかすでに報告されている7,9)が,温間加工 についての研究はなされていない.そこで探絞り成 形のさらなる改善を目的として,深絞り性に及ぼす

本研究の一部は平成8年度 (財)谷川熟技術振興基金およ び平成9年度長野高専教育研究特別経費の助成を受けて行わ れた.

* 横桟工学科 ・助手

** 機械工学科 ・技官 原稿受付 19971031

温間加工の影響を詳細に検討 した.

2.実験方法

供試鋼には0.19C1.54Si1.52Mn‑0.098p‑0.0012Sl 0.039Al,mass%の化学組成を有する板厚1.2m の冷 延まま鋼板を用いた.製造条件は文献12に準 じた.

これ らの鋼板 に2台の塩浴炉を用 いて,760℃で 1200S2相域焼なまし後,400℃の塩浴中に急冷, その温度で1000S保持後油冷のオーステンパ処理を 施 し, af+ab+γR3相組紙を有す るTDP鋼 とした.

ここで,2相域焼なまし温度には,γR量かほぼ最大 となる温度を採用 した4).以下では, αb+γR相を第 2相と呼ぶ.比較 と して,0.14C‑0.21Si1.74Mn 0.013Ⅰ'0.OO∃S‑0.037Al,mass%か らなるγRを含まな af+ab組紙を有するフェライ ト・ベイナイ ト複合 組織鋼 (BDP鋼)を供 した.BDP鋼 も同様に780℃で 1200S2相域焼なまし後,400℃の塩浴中に急冷, その温度で1000S保持後空冷を施 した.

引張試験には,圧延方向に平行に作製 したJIS13B 号 引張試験片 (幅12.5mm,標点距離50mm)を用 い,イ ンス トロン型万能試験横 ((樵 )島津製作 ,Ⅰ℃S‑10T)によ り行 った.試験片の加熱 には,

(2)

20 炎板明だ ・和n I一

対 の プ レー トヒータ ー (70mmx90mm,100V, 200W)を用 い,試験前の保持 時間は30mjnと した.

試験温度はT=20‑250℃の範臥 ク ロスヘ ッ ド速度 1mm/minと した.

深絞 り試験 には,直径60mm,板厚1.2mmの円盤状 小型試 験片を用 いた .円盤状小 型試験片は打 抜 きに よる機 械加工 に より製作後.熱 処理 を施 した ,試験 装置 には,JISZ224911963の コニ カル カ ップ試験 に 準 じ.図1600の 円錐 ダイ ス (SKDll)を 用いた 探絞 り成形装置 と した.試験片 両面 に冷 ・温 間絞 り 加 工用 水溶 型 乾燥 潤 滑剤 (n木 工作 油 (樵 ), G‑

2576)を 使用 した. 絞 り温度 はT=20‑250℃の範 [乱 絞 り速度はV=5mm/minの加工 条件 と した.試 験片の 加熱は環状炉 によって行 い.試験片の バ リ部 を球頭ポ ンチ (SKDll,ポ ンチ直径¢20.64)側 と し た.なお .試験 温度 は試験片裏面 温度 を意味 す る.

深絞 り性 は コニ カル カ ップ値 (CCV)で評 価 し た。 CCV(1)式か ら試験片 を絞 り成形 し.ポ ンチ頭 部か 破断 した時 点での 外径の 値Dで. 外径は方 向に よって異 な るので平均 した値 で示 した. こ こで.Do .D45,D90はそれ ぞれ圧延方 向 に対 し.平行,450 お よび直角である.

D=(Do+2D45+D90)/4

1 探絞 り成形装置

(1)

:/

A J

50mm

7Rの初)的体掛率′70はX線回折法 (Mo‑Ka漁) に よ り.(200)a,(211)a,(200)7,(220)γ,(311)

TknWrlq20の5ピー ク払 15)を用 いた.γR中の炭素 温度 CTo(mass%)は 式(2)を利用 して,Cr‑Ka線の (220)γbJllJ20ピー クに て測 定 され た格 子定 数 a,o(×10‑Om)か ら鵬'ji:した16)I

a γ

o=3・5467+0・0467×('To (2)

また,7・RMs点 (℃ )はJt(3)か ら推定 した. ここ ・ γR中 の マ ンガ ン狼此70はSp¢icb17).

Gilmour18)らの報告か ら添加 辰の1.51一仮定 して計 算 に用いた.

Ms=550‑(360×Cγo卜 (40×Mn70) (3)

さ らに .走 査碍 子 紙 微銑 (SEM)観群 お よび ビ ッ カース硬 さ測定 も必晋 に応 じ行 った.

3.実験結果および考察

3‑ 1 微細租税 と引張特性

2TDP鋼の微細組織のSEM写真を示す.本鋼 で は第2相 (αb+ TR) か αr粒界 に沿 って存在す る.

γRabと隣接 または孤立 して粒子状 に存在 し.図3 γR因子 (γO,仁γO)2相域温度 (rα+γ)の関 係 よ りその休 せ率E,O12・4vo1%,炭 素濃度C70は 130mas5%であ る. このか らγRMs点は9・2℃

と計算 され る.図4TDf'鋼の引張特性の変形温度依 存性 を示す .変形温 度 (r)か20℃ にお いて,TDP 鋼 は904MPaの引張強 さ (TS)と約28%の大きな全

2 TDP鋼組織のSEM写真

(3)

TRIP型複合組織鋼板の深絞り性に及ぼす温間加工の影響

′042000′U42̲I一l(aibTO^)OLJ

l l l

rTo ̲

/C ,o

80070060050040030050403(t2dM)S1.S^(aib)TEItロLt

I.40 logE7‑ loglro ‑ k・ C

( ここでITOは初斯 γR量である拙 ひずみ誘起変態定 135 敷で・その値はγRのひずみ誘起変態が抑制されるは と小さ くなる.k値は破断材の一様変形部のγR量と

(:I

1.30uh そのひずみを用いて求めた・引張変形下において・A 倍の加工温度依存性を調査 したところ.図4のよう に,T8=150‑200℃でk倍の最小値kdnか得られ,こ 125 の温度はTELか最大とな る温度 (図3)とほぼ一致 し 740 760 780 800 820

T γ (℃ )

3 2相域温度とγR因子の関係

l l l l I l

TS

0‑0‑‑o YSO (フ ー‑‑0

l l l l l l

TEl

〇一一

′私 UE, 一〇

l l l r l

0 100 200 300 T(℃ )

3 TDP鋼の引張温度依存性

伸び (TEL)を有する.変形温度か高 くなるにつれ て全伸びは大 き くな り,変 形温度が約150℃で最大 となる.引張強さは これと逆の変形温度依存性を示 し.この温度範囲でほぼ最小となる.このような引 張特性の変形温度依存性は安定なγRを含むTDP鋼に 特有の現象であ り,他の複合組械鋼には現れない8)

.同様に.BDP鋼のTS653MPa,TELは17.0%で変 形温度か高 くなるにつれてTSおよびTELは低下し, 変形温度依存性 を示さなか った.また,TDP鋼の一 様伸び (UEJ)か大 きく,局部伸び (LEI‑TEL‑

UEJ)か極めて小さい特異な材料であ り,降伏応力 (YS)は434MPaより,降伏比 (YS/TS)か0.48 05以下と低降伏比を示 し,形状凍結性か高いことか わかる.

一般に,Ms点以上の温度範囲では.TDP鋼のγR Eγは真ひずみ Cとともに(4)式にしたがって減少する

3).

た . したが って. 150‑200℃ にお い ては . γRのひずみ誘起変態か くびれの生ずる高ひずみ域で 効果的 に起こり,これによるひずみ硬化率の増加お よび母相/第2相界面でのボイ ドの発生 ・成 長か抑 制されることによ り,TEJbl著 しく改善された と考 えることかできる35).同時に生ずる低いTSは.硬い a血相か低ひずみ域でわずか しか生 じなか った(a tn 硬化か小さかった) ためと考え られる.なお,準安 定オーステナイ ト鋼ではひずみ誘起変態はMs点とMd

点の間の温度範囲で起 こり,高 温ほどひずみ 誘起マ ルテンサイ ト変態 (SIMT)は抑制される13).TDP ではMd点以下の200℃以上でひずみ誘起ベ イナイ ト 変態 (SIBT)を生するため3),これ と異なる現象か 生 じたものである.

arLTel・Jk 1.川5

l l l l l

' ●

■l

sⅠBT‑‑〉 .チ.̀‑ SⅠMT 0 100 200 300

T(℃)

4 TDP柄のk値の引張温度依存性

3‑2 深絞 り特性

深絞 り特性はコニカルカ ップ試験か ら求めた.こ の試験借は深絞 り限界以上の直径の試験片を用いる ことな らびに球頭ポ ンチを使用することのために.

材料の純粋な深絞 り性を示すものではな く,材料の 深絞 り‑張 出 し複合成形 性を示すもの とな ってい る.円錐ダイスであ るので, しわ押え圧な しで絞 り か行われ. しわ押え圧の影響か入 らないこと.1個の 試験片で一つの試験借が得 られ,限界絞 り比 (1♪R

(4)

22 li坂 明彦 ・和 田一 方

:LlmitingDrawlngRatio)に比べ簡便な点である.

しか し, しわ押えか働かないことは. しわの出やす い材料 では. しわを防げず試験 億か得 られない難点 かある.CCVでは値の小さいほど絞 り性か良いとい

う評価になる.

5T=20100℃で成形後 の外観を示す.明 ら かに100℃で絞 りこまれ温間加工 の効果か観察 され ・20℃では成形試験中のき裂発生時に,一味にき 裂か進展 し,試験片か割れて しまった.また.その 際のス トロークー荷重曲線を図6に示す.図5と同

RollingDireclion

T=20 T=100

5 TDP鋼のコニカルカップ試験成形後の外観 世『 10mm

00000543(Zq)a

l l l l l

T=100C T=20C

\ ′

/

JC

10 0 10 20 30 40 50 11(mm)

6 TDP鋼のストローク‑荷重曲線

樵,温間加工により絞 りこまれることか ら,荷重 (P ) ・変位 (JD ともに増加 している.以上か ら.図7 に深絞 り性の変形温度依存性を示す.深絞 り加工温 皮 (T)に及ぼす限界成形高 さ (Hm x).限界成形 荷 重 (Pmax),コニカルカ ップ値 (CCV)の関係 ,TDP鋼は100‑150℃でCCVか減少 し,逆にILal .P.mxは上昇 した.このような深絞 り性の変形温度 依存性はγRを含 まないBDP鋼には現れ なかった.

TDP鋼は100‑150℃で絞 り性か良 く.その温度域で ひずみ誘起変態が最 も抑 制され, CCVを小さくした と思われる.図4k値は150‑200℃か最小であるに も関わ らず,約50℃ CCVの最小値か低温側にシフ ト

した理由として,張出 し (等2棚引張 り)成分か nl.̲I: れることで.コニカルカ ップの平均垂直応ノJanかrft 軸引張 りのそれより大 きい分低 温側にシフ トしたも のと考え られ る.

つきにフランジ部 の半径絞 り変形過程における板 揮変化を調 査 した.ブ ランクの外縁か ら,2および 4mmの位置での板厚 fの変化JHを測定 し.その変化 Al/tを板の圧延方向と直角方向の平均化 したもの について示 した. (図8)TDf'鋼とBDP鋼 とも.変化 料 まブランクの外縁 か ら内側になるほど小さ くなっ た. しか し.TDP鋼の変 化率はBDP鋼にAE/(=0.2 政 人き くな る傾 向にあった. またTDP鋼のA t/t 100‑150℃で小さくな り.その温度域でブランクか より均 I放 りこまれていると考え られる. これは TDP鋼の(YVかAi小 となる温度 と一致 してお り, γR SITの抑制効兄によるものとほぼ一致する.

そこで. T=125℃でコ̲カルか yプ試験後の試料を 圧延方向に切断 し.ビッカース硬さ (アカシ,AVK‑

^Ⅲ,荷重9・81N)により加 T̲硬化 を調査 した.外縁 か ら内側 に5mm間附で付 の中央 を測定 したとこ ろ.外線か ら内側に向かって加工硬化程度はlIV40 度軟化するか,ポンチ接触部で硬化 し,き裂 の発生 箇所で最高硬 さを程 した. (9)

45

3530 252

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、 ロ ー 1 丁 ← 、 ⊂ 】 ー 一 一 q ‑ T j

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l l I l l l

̲ 一 口 J ユ ー 一 口 一

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lll

l

100 200 300 T(℃)

7 TDP鋼の深絞り変形温度依存性

(5)

TRIP型複合組織鋼板の深絞 り性に及ぼす温問加工の影響

(a)TDPsteel (b)BDPsteel 0.14

0.12

̲ 0.10

1 q o.08

0.06 0.04

0 100 200 300 0 100 200 300 T(℃ )

図8試料の板厚変化

(tO.815) Vickershardness

(I:thikness)

RollimgDirection 図9試料の硬さ変化

4.おわ リに

TDP鋼の深絞 り性 に及 ぼすの加 工温度の影 響を詳 細に調査 した.主な結果は以下の通 りであ る.

(1) TDP鋼の深絞 り性は100‑150℃の温間加工によ り著 しく改善 された.

(2)温間加工により得 られ るTDI'鋼のコニカル カ ップ 低 くCCV)は.BDP鋼を下回 った. この事実 は.本 質的 にはTDP鋼は伸びお よび張 出 し性 ととも に深絞 り性に も優れた高強 度鋼板であ ることか明 らかにさ れた.

(3)温間深絞 りはγRPSITを抑制 し,加工硬化 および ボイ ドの発生頻度を小 さ くす る.

(4) 温間深絞 りは効果的なTRIPにより高ひずみ域で のひず み低下を抑制 す るとともに,ボイ ドの 成長を 抑制す る.

最後 に,本研究を 御支援いた だきま した (財)谷 川熱技術振興基金にな らびに平成9年度長野高専教育 研究特別経費に対 し,深 く感謝の意を表す るととも

23

に.供 試鋼 を提供頂 いた (樵)神戸製鋼所加 古川製 鉄 所 (現 : (財) 近 故高 エネル ギー加 工技 揃研 究 所)の 白沢秀則氏, 潤滑剤 を提 供頂いた 日本 工作油 (樵)および平成9年度卒業研究生の鈴木健二氏 ・山 岸弘和氏 ・湯原正行氏 に併せてお礼 いた します.

参考文献

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参照

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