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鋼の機械的性質におよぼす繰返し荷重の影響*

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Academic year: 2021

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(1)

鋼の機械的性質におよぼす繰返し荷重の影響*

藤 妙 華*

Effect of Cyclic Loading on Mechanical Properties of Steel

Satoshi FUJIWARA

 As a basic research for the study on the effect of cyclic loading on mechanical properties of steel were carried out the fatigue tests in the low cycle fatigue region and the static tensile tests at the low temperature for SM41 steel.

 Main results Qbtained are as follows;

 (1) The upper and lower yield stress disappears with cyclic loading and the proof stress gradually raises due to   increase of cycle ratio N/Nf

 〈2) ln the case of without fatigue crack, mechanical properties can be considered that there is no effect of cycle   ratio N/Nf, but the strength at low testing temperature is influenced significantly fatigue crack.

1.ま え が き

 構造物において最も重大な事故は破壊である。破壊が静 的な荷重のみで起ることはまれで,破壊の約80%は繰返し 荷重負荷に基因するものであるといわれている。

 疲労破壊については低サイクル疾労,高サイクル疲労さ らには疲労き裂進展に関するものなど膨大な研究成果があ る。また,破壊防止の観点から,疲労過程での破壊に対す る重要な情報が得られることより,鋼が繰返し負荷を受け た際の機械的性質ならびに物理的性質の変化が調べられて おり,古くから数多くの研究が行われている(i)一[3)。しかし,

これらは疲労限近傍のいわゆる高サイクル領域で繰返し応 力を作用させた材料の降伏応力,引張り強さ,衝撃値の変 化などを調べたものである。

 圧力容器コンポーネントなどにおいては低サイクル疲労 設計が行われていること,さらには,破壊事故調査によれ ば応力集中部に疲労によると思われるき裂が発生し,この き裂が破壊の直接の要因となっている例が多くあると報告 されている。疲労被害が繰返し塑性ひずみによる材質の変

化や,疲労き裂の発生といった点で脆性破壊事故の発生傾 向を促進させるであろうことは容易に想像されることであ るQ

 このような背景から,本研究は低サイクル疲労領域で繰 返し負荷を受けた材料の機械的性質の変化を調べることを

目的とした一連の研究の一環である。

 使用した鋼材は溶接構造用軟鋼で,平滑丸棒試験片とし 低サイクル領域での完全両振りひずみ制御疲労破壊試験に より破壊繰返し数Nfを求め,繰返し数比N/Nfを変化さ せたものについて,室温ならびに低温にて静的引張り試験 を実施し,繰返し数比が鋼の機械的性質におよぼす影響に ついて検討したものである。

*機械工学科

        2.実 験 方 法

 Zl供試材料ならびに試験片形状

 供試材料としては,Table 1に示す化学組成ならびに機 械的性質を有する板厚22mmの溶接構造用軟鋼(SM41)を 用いた。

 試験片は疲労試験ならびにその後の引張り試験での破壊 位置を規定し,かつ平滑材に近い条件を持たせるため Fig.1に示すような砂時計型試験片とした。この試験片形

(2)

Table. 1 Chemical compositions and mechanical properties of material used,

ptth IC ton(%)

C Si Mn P S

0.15 0.22 0.53 0,018 0,013

Mechanical Properties   σy

ikgf/mm2)

  σu ikgf/mm2)

El*

i%)

30.0 45.6 29.0

Knife Edge

\Gauge/

Diametra{ Strain Detector

*G, L. =200mrn

Fig. 2 Diametral deflection detector.

3    M2。P.2,

o

42

国   56

42 140

Kt =1.03

Fig. 1 Dimension and shape of test specimen.

状での応力集中係数はPerterson線図によればKt=1.03 に相当し,平滑材とみなしうる。試験片採取方向は圧延方 向と試験片長平方向とが一致するようにした。機械加工し た後にエメリー紙で長手方向に充分研磨したものを実験に 供した。

 2. 2疲労試験装置

 疲労試験機は当研究室で試作したものであり,試験片に 荷重を負荷する油圧シリンダと試験荷重またはひずみを制 御する自動制御系とからなっている。本装置*は電気・油 圧サーボ制御方式にて三角波,正弦波および矩形波状の荷 重またはひずみ制御の繰返し験が行うことができるもので ある。本装置の荷重容量は±10tonfである。

 低サイクル疲労においては,通常ひずみ制御試験が行わ れ,最小断面に関する平均的な軸方向真ひずみ一定の繰返

*日本溶接協会原子力研究委員会で,これまで共同研究を 行ってきているが,他機関の市販の試験機による試験結 果と比較しても,本装置は試験速度が若干遅いものの低 サイクル疲労試験には何ら問題ないことがわかってい

 る。

.し試験が行われている。しかし,.本研究ではその目的から 試験片形状を砂時計型としたため,軸方向ひずみの制御が 困難である。このため,Fig.2に示すような試験部直径を バネを介した2個口ナイフエッヂではさみ込み,直径変化 をバネのたわみ変化に変え,バネに貼付したひずみゲー一一ジ により電気的出力に変換するような変位計を作製した。な お,ナイフエッヂ先端の間隔とひずみ計出力との較正はブ ロックゲージを用いて行った。

 2.3径方向ひずみ制御試験

 径方向ひずみ制御試験を実施するにあたり,軸方向ひず み制御試験との関係を調べると以下のようになる。

 いま,試験片の最小断面部の原直径,最大引張りおよび 最大圧縮荷重時の直径をそれぞれd。,d,, d。とすれば,引 張り側径方向真ひずみεtは

  Odd  n 遡

dtε 〈1)

となる。真応力と真ひずみの問にフックの法則が成立する と仮定すると,引張り側径方向弾性ひずみεまは

    レ

ε3・〒「iO・ (2)

 ここで,σtは引張り側軸方向真応力であり,E,レは それぞれヤング率,ポアソン比である。

 また,引張り側径方向真ひずみεtは引張り側径方向弾 性ひずみE9,と引張り側径方向塑性ひずみ綿,との和で

あるから

σ

E

dtε

dP

ε (3)

一34一

(3)

となる。いま塑性ひずみについては体積一定の仮定が成立 するとすれば,引張り側軸方向塑性ひずみεp,は

・・一一・・卜・・ ÷・,

で,引張り側軸方向弾性ひずみε。tは      σt

  ど  ニ     et E

であるから,結局引張り側軸方向真ひずみε,は   ・・一・pt+・e・一一・・9・(1一・・)寄

      d。     σt    一=2e ・t+(1『2v)T

となる。

 同様に圧縮側軸方向真ひずみε.は   ・。一24妾・(1−2・).音

となる。ここで,σ。は圧縮側軸方向真応力である。

(4)

(5)

(6)

(7)

 いま,引張り側径変位をδ,,圧縮側径変位をδ。とする と,(6),(7)式はそれぞれ

・・L・e。譜、t+(1一・・)÷

     d。十δc     σ。

         +(1−2り)

 ε。=2乏n       do

      E ここで   

e。義,一一e。心門δ絵・去・畜ア

       ・÷(6,do)・+÷(缶・・+・……・・

       ・畜

e.W +ac=t 一e(t )2+g(t )3

      一÷(1ご野・一…≒一寄

(8)

(9)

(10)

〈11)

 ここで,σt≒σ、と考えると,δ,=δ。=δとすること によりεt≒εcとなる。

 結局,軸方向真ひずみ範囲△εは        dc

       Aa   △ε=ε・+ε・=2e・−+(1一2り)E

    一轍圭1・(1一…㌔σ  吻

で表わされる。ここで△σは真応力範囲である。

 以上のことより,径方向変位δを制御することにより,

軸方向真ひずみ両振りの試験とみなすことができる。

 なお,本実験ではひずみ比R、=一1の完全両振り疲労 試験を行った。また,ひずみ条件としては全ひずみ振幅 εt。=0.28%の一条件だけとした。繰返し周波数は1Hz で,任意の繰返し数における荷重(P)と径変位(S)の 関係をX−Y記録計上にかかしたが,その際には0.2Hz

とした。

 2.4静的引張り試験

 繰返し荷重負荷が鋼の機械的性質におよぼす影響を調べ るため,任意の繰返し数比N/Nfで中断した試験片を,室 温,一78℃ならびに一196℃の低温で引張り試験を実施し,

降伏応力(σy),引張り強さ(σ。),破断強さ(σF)な らびに絞り(RA)を求めた。

 室温における試験には疲労試験と同様に径方向変位計を 取付け,降伏応力をP一δ線図から求めた。低温における 実験では,低温槽中に変位計が設置できないためこの計測 は行っていない。

        3。実験結果

 3.1疲労試験結果

 Fig. 3にひずみ制御(εt。==O.28%)完全両振繰返し試 験を行った際の荷重(P)と径方向変位(δ)とのヒステ リスループの変化の一例を模式的に示す。図から明らかな ように繰返し初期においては各サイクルでの引張り,圧縮 荷重のピーク値は増加する。その後の繰返しにおいてはヒ ステリシスループはほぼ安定し,最大引張り,圧縮荷重値 は一定となる。そして,破断直前になると引張り側荷重値

Strain ControUed

@P      P      p

       5

orirnaryPro(二ess  互nterrnedLate Pro.   FinaUy

δ

   δ

oro,

Fig. 3 Change of hysterisis loop for constant     strain testing

(4)

£ 40

) 20 言。

  エ 

 一40

o ooOoeO O o ooo oo oooa3 o Oo ooo

SM41

 Kt =1.03

O oooo oO Re=一1 Eta=O.28 to

O O Ooo oo ooooo o OO OOOC Clf [SP

loO ioT ioi io3 io4Number of Cyctes to Fa ure , Nt

Fig. 4 Relation between nominal stress and    number of cycles.

は急激に低下する。これは引張り荷重をき二部を除いた実 断面で受け持つため,低い荷重値で径方向変位が制御値に 到達するためと思われる。一方,圧縮側荷重はき凹面も受 け持つため,そのピーク値はほとんど変化しないものと考 えられる。

 Fig.4はFig.3をさ.らにわかりやすくするために,繰 返しにともなう最大引張り,圧縮応力の変化を調べたもの である。これから.繰返し初期の約10数回まで応力のピー ク値は繰返しにともない増加し,その後一定値をとるよう になる。このことから,SM41鋼は繰返しひずみ硬化材で あることがわかる。

 繰返し全ひずみ振幅εt。=0.28%にて5本の試験片につ いて繰返し試験を行い,破断繰返し数Nfを求めたところ,

平均のNfは14,350回となった。その誤差の最大は6%で あった。そこで,この繰返し数を基準とし,繰返し数比 N/Nfを任意に設定し,試験片に疲労被害を与えた後に静 的引張り試験に供した。

 3.2室温における静的引張り試験結果

 繰返し硬化材であるSM41鋼に任意の繰返し数比(N/

Nf)を与えた材について室温における静的引張り試験を 実施し,荷重と径方向変位との関係曲線をもとに,機械的 諸特性の変化について調べた。

 Fig,5に一例としてN/Nf=o%すなわち,繰返し荷重 を受けていないものとN/Nf=ユ0%のものの荷重一変位線 図を示す。図より,わずかN/Nf=10%のものでも,上・

下降伏点が消失し0.2%耐力が上昇することがわかる。こ の結果はHoldenωが疲労限以下の応力で低炭素鋼にあら かじめ片振り引振りの繰返し加工を加えた場合,降伏点の 上昇とおどり場の消失という現象があると報告している が,その結果と傾向的にはよく似ている。本実験でおどり 場が小さいのは試験片が砂時計型であるがためと思われ

る。

︵tεこ9︶

60

40

e 20

SM41

 Kt =1,03 o

Test temp. 250C

Cycle Ratio NIM (olo)

(D o(oi.)

@ 10 (o/e)

 o       ε(%) L至≦玉]

Fig. 5 Nominal stress−Diametral strain diagram.

 Fig. 6はN/Nfと機械的諸特性との関係を示したもので ある。N/Nfの増加にともない加工硬化が進むためか,降 伏応力(σy),引張り強さ(σ。)は増加するが,破断強 さ(σF)および絞り(RA)は若干減少していく傾向があ ることがわかる。N/Nf・・80%で10倍のルーペで観察でき る微小疲労き裂が存在していたこと,またN/Nf=90%で 肉眼で確認できる程度のき裂が存在していたが,それ程の

靡山脚的︒\・︐︑L−識卜r夷

 3mC OeO −隔i54=引2M時忙

S

蛮︒ ●ム

0     0     

0

2     8     

4

︵︒\.δ㌃ξ9くに︑古.8.♂ 1

o

O 20 40 60 80 100

  Cyc(e Ratio,N/Nf (o/,)

Fig. 6 Relation between mechanical properties    and cycle ratio at 2s  c,

一36一

(5)

強度低下は起らなかった。このことは試験温度にも関係し ているものと思われる。

 3.3低温における静的引張り試験結果

 これまで,疲労被害材の低温における試験は衝撃値に関 するものが中心的であった。.そこで,3.2項と同様に同結 果をふまえて,繰返し荷重を受けた材の一78℃および一 196℃での機械的性質の変化を調べた。

 一般に,鋼は低温において延性破壊から脆性破壊へと変 化し,引張り強さ,破断強さ,降伏応力は上昇し,伸び,

絞りは減少することはよく知られている。

 Fig.7に一78℃における試験結果を示す。室温での結果 と比較すると,引張り強さ(o。),破断強さ(σF)とも に若干増すが,逆に絞り(RA)は若干減少する傾向にある。

N/Nf=80%以上でその大小の違いこそあれ疲労き裂が存 在し,aF,σ。, RAとともに急激に低下することがわか る。これは室温試験結果のそれと比較した場合,低温では き裂の存在の有無が強度に大きく影響することを示唆して いる。

 Fig.8は試験温度が一196℃の場合の結果である。延性 材料であるSM41鋼においても試験温度が一196℃となる

と絞りは非常に減少し脆性となっているのがよくわかる。

N/Nfとの関係をみると,室温および一78℃の結果と傾向 的にはよく似ており,疲労き裂が発生するN/Nf=80%程 度以上からσ。,σFともに急激に低下することがわかる。

120

120

80

(。A.︶﹂︒㌃∈こ9

SM41

 Kt =1.03  Test temp.

  一780c

o

扉σし駄

一一一〇●△

o軸. ONo

一●一●「Ne璽ρ

一ト̲撰

       X)〉,,iti

       へ

SM41

 Kt = 1,03

0 4

くに

8.

o

 O 20 40 60 80 100

  Cyc{e Ratio , NINf (o/e)

Fig. 7 Relation between mechanical properties    and cycle ratio at 一78 ℃.

Test temp.

 一1960c

10

 \8      ll−llーーllll  5 (。A︒︶くに

づ畔諏

○●   ○●ム

i

  80︵宅∈こ9︶古.

8 40

o

A 一一.AxA

「△馬

O 20 40 60 80 100

Cycle Ratio N/Nf(e/e)

Fig. 8 Relation between mechanical properties    and cycle ratio at 一196  C.

 3.4破面観察

 いずれの試験温度においても,N/Nfが80%以上で機械 的諸特性値が減少することから,マクロ破面観察を行った。

 Photo 1に試験温度が一78℃の場合の結果を示す。 N/

Nf=80%で試験片表面部に微小疲労破面が観察され,85%

から95%へとN/Nfの増加にともない疲労によるつめ状に 拡つた疲労破面が増加していることがわかる。また,疲労 破面の増加が絞りと関係し,絞りが非常に小さくなってい るのがよくわかる。

 一般に,平滑試験片による疲労試験では,全寿命の約15%

程度がき裂進展寿命であるとされていることと比較すれ ば,本研究により得られた結果がN/Nfが約80%でき裂が 発生していることからそれはよく一致している。いずれに

しても,本研究の範囲内では試験温度に関係なくN/Nfの 増加にともない,σ。,σFは増加しRAは減少すること がわかり,それらの急激な低下は疲労き裂発生,成長と関 係することがわかった。

 切欠き材では全寿命の大部分をき裂進展寿命が占めるこ とから,今後は円周切欠き付試験片を用いて実験し,疲労 き裂面積と諸特性値との関係を詳細に調べ,繰返し荷重を 受けた材料の機械的性質の変化を調べる必要があるものと 考える。

(6)

(a) NINf・80。ノ・

(b) N/Nf = 85 0/o

        4.む  す  び

 電気・油圧サーボ方式の疲労試験機を試作し,溶接構造 用軟鋼から平滑丸棒試験片を加工して低サイクル疲労領域 で繰返し荷重を受けた材の機械的性質の変化を室温および 低温にて調べた。

 得られた結果を要約すると以下のようになる。

 (1)径方向変位を制御し,軸方向ひずみ制御試験とほぼ   同一の試験が行えることを確認した。

 (2)SM41銅は繰返し硬化材である。

 (3)繰返し荷重を受けることにより,降伏応力は上昇し,

  おどり場が消失する。

 (4)疲労き裂が存在しない場合の強度変化は少ないが,

  低温においてき裂の存在が強度低下に大きく影響す

  る。

引 用 文 献

(1) 且olden, J., Acta meta!lurgica, voL 7, No,6,1959,

  p,p, 380 一一 390.

(2) Kussmaul, K. and Htinsel, G., Z. fur Werkstofftech−

  nik, Bd, 2, Nr, 4, 1971, S. 183−i 188.

(3) Oates, G., J. lron and Steel lnst,, vol, 204, No, 10,

  1966, p.p. 991 一996,

(c)

Photo. 1

N/Nf=950/o

Macroscopic appearance of fractured surface at 一78 ℃,

一38一

Fig. 4 Relation between nominal stress and    number of cycles. は急激に低下する。これは引張り荷重をき二部を除いた実 断面で受け持つため,低い荷重値で径方向変位が制御値に 到達するためと思われる。一方,圧縮側荷重はき凹面も受 け持つため,そのピーク値はほとんど変化しないものと考 えられる。  Fig.4はFig.3をさ.らにわかりやすくするために,繰 返しにともなう最大引張り,圧縮応力の変化を調べたもの である。これから.繰返し初期の約10数回

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