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プレス加工性に優れた高潤滑 Cr(VI)フリー処理Zn-Niめっき鋼板

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Academic year: 2021

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(1)

*1平成14年 7 月29日原稿受付 *2技術研究所 表面処理研究部門 主任研究員(掛長) *3技術研究所 表面処理研究部門 主任研究員(課長) *4技術研究所 表面処理研究部門長・Ph. D − 49 −

1 はじめに

1980 年代後半に,プレス油を塗油せずにプレス加工が可能ない わゆる潤滑鋼板が開発され1–4),現在,家電・自動車部品メーカー で広く使用されている。川崎製鉄では純亜鉛めっき鋼板をベースと するリバージンク®FS,リバーゼット®FS を製造・販売し高い評価 を得てきた。さらに,耐食性に優れ,裸使用が可能な美麗な外観を 有する Zn-Ni 合金めっき鋼板に関しても潤滑鋼板と同様に,無塗油 でのプレス加工が可能な製品の開発が要求されてきた。 従来の表面処理鋼板に施されているクロメート処理は, キズ部か らの腐食の進行を抑制する自己修復機能を有する表面処理技術であ るが,皮膜中に Cr(VI) を含み環境への影響が懸念されている。欧 州では「廃電気電子機器回収 (WEEE) 指令に関する最終案」が発 令され,2007 年までに段階的に Cr(VI) の使用が禁止されることか ら Cr(VI) フリー化が必要である。 川崎製鉄ではこれらの要求に対応し,Cr をまったく含まない Cr(VI) フリー潤滑皮膜を開発した。 本報告では Zn-Ni 合金めっきに開発した潤滑皮膜を適用した材料 の特性について述べる。

2 開発材の特性

2.1 皮膜構成

開発材の皮膜構成を Fig. 1 に示す。開発材(以下 A 材)は Zn-Ni 合金めっき(付着量 19 g/m2,Ni: 12 mass%)上に膜厚が 4µm の 新規に開発した潤滑皮膜を塗装した。その特徴は,次の 3 点にあ る。 ( 1 ) 従来の潤滑鋼板と異なり,皮膜中に Cr をまったく含まない。 ( 2 ) 皮膜の潤滑特性を向上させたこと,かつ膜厚を従来の 1µm から 4µm にしたことにより,より優れたプレス加工性とプレ ス加工部の外観を確保した。 ( 3 ) リバージンク®FS と同様に,無塗油でのプレス加工が可能で ある。 Table 1 に以下の評価で使用した供試材を示す。評価したのは、 開発材の A 材と比較材の B 材である。B 材は Zn-Ni 合金めっき鋼 板にクロメート処理後 (Cr; 15 mg/m2),リバージンク®FS の潤滑皮 膜を 4µm 塗装したものである。

2.2 摺動性

平面摺動試験により,押え圧を 20∼80 MPa と変化させ,摩擦係 数を測定した結果を Fig. 2 に示す。A 材は,いずれの押え圧にお いても B 材より摩擦係数が低かった。押え圧を 80 MPa にした場 合, A 材の摩擦係数は B 材の約 50% で,優れた摺動性を示した。

2.3 プレス加工性

角筒絞り試験による限界絞り圧の試験結果を Fig. 3 に示す。A

プレス加工性に優れた高潤滑 Cr(VI) フリー処理 Zn-Ni めっき鋼板

*

1

Zn-Ni Precoated Steel Sheets with Cr(VI) Free Self Lubricating Film

川 崎 製 鉄 技 報

35 (2003) 1, 49–50

新 製 品 ・ 新 技 術

鈴木 幸子*

2

海野 茂*

3

加藤 千昭*

4

Sachiko Suzuki

Shigeru Umino

Chiaki Kato

Symbol Type Coating

Specimen A Cr(VI)-free Developed self-lubricating coating(4µm)

Specimen B Chromate

Chromate coating (Cr; 15 mg/m2)

 Conventional self-lubricating coating (4µm)

Table 1 Specimens used in this study

Developed self-lubricating coating ; 4 µm

Zn-Ni plating layer ; 19 g/m2

, Ni: 12 mass% Steel substrate

Fig. 1 Cross sectional view of developed self-lubricating steel sheet

P; Pressure, 20∼80 MPa V; Sliding speed, 200 mm/s F; Sliding force measured µ; Coefficient of Friction calculated

by the equation µ  F/2P P R10 10 mm V Specimen F

Holding pressure (MPa)

20 40 60 80 Specimen A (developed) Specimen B Coefficient of friction 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0

Fig. 2 Relationship between coefficient of friction and holding pressure

(2)

ためと考えられる。

2.4 耐食性

エリクセン試験機で 7 mm 押し出したサンプルと円筒絞り加工を 施したサンプルについて塩水噴霧試験 (JIS Z 2371) を行った結果を Table 2 にまとめた。エリクセン押し出しサンプルは,いずれのサ ンプルも 5% 白錆発生に至る塩水噴霧時間が 200 h,円筒絞り加工 サンプルはいずれのサンプルも 120 h であった。このように A 材は Cr(IV) フリー材でありながら,B 材(従来のクロメート製品)と同 等の耐食性を示した。

3 おわりに

新規に開発した Cr(VI) フリー潤滑皮膜は優れた摺動性と強靭性 を有している。本皮膜を Zn-Ni 合金めっき材に適用した場合,優れ た無塗油加工性を示した。

4 用途例

特に深絞りを必要とする用途への適用が可能である。モーターカ バー・ケース類,燃料容器類への適用が期待される。 材は B 材より 80 kN 以上高い限界絞り圧を示した。また,実プレ スを想定して金型温度を 90°C に上昇させた場合でも,限界絞り圧 は低下しなかった。 加工後の皮膜の状態を SEM で観察した結果を Fig. 4 に示す。B 材の加工部皮膜には微細なクラックが観察される。一方,A 材の皮 膜はほとんどクラックが観察されず,加工による皮膜の損傷が極め て少なかった。 上述のとおり,A 材の限界絞り圧が高いのは, A 材の皮膜が優れ た摺動性と加工による皮膜の損傷を受けにくい強靭性を有している プレス加工性に優れた高潤滑 Cr(VI) フリー処理 Zn-Ni めっき鋼板 50 − 50 − 川崎製鉄技報 Vol. 35 No. 1 2003 Blank diameter; φ98 mm Punch diameter; 44  44 mm Blank holding force; 20∼180 kN Drawing speed; 200 mm/s Specimen Die Punch 3R Specimen Die temperature (°C) B A (Developed) 25 90

Limiting drawing force (kN)

160 120 80 40 0

Fig. 3 Limiting drawing force of specimens by the square

cylin-der drawing test

Blank diameter; φ98 mm Punch diameter; 44  44 mm Blank holding force; 20 kN Drawing speed; 200 mm/s 3R

Specimen A (Developed) Specimen B

5 µm

5 µm

Specimen Die Punch

Fig. 4 SEM images of coating surfaces after the square cylinder

drawing test 参 考 文 献 1) 鈴木幸子,戸塚信夫,栗栖孝雄,市田敏郎,毛利泰三:川崎製鉄技報, 23(1991)4, 340 2) 山下正明,杉本芳春,佐々木健一,高木 昭,熊谷正敏:NKK 技報, (1996)153, 32 3) 小田島寿男,菊池郁夫:鉄と鋼,77(1991)8, 1359 4) 辻 正規,引野真也,相良睦雄,土屋宏之:住友金属,48(1996)3, 55

Time to 5% white rust occurrence at salt spray test (JIS Z 2371)

Specimen A

(Developed) Specimen B

7 mm-Erichsen 200 h

Cylindrical cup drawing* 120 h

200 h 120 h

*Black diameter; φ74 mm

*Punch diameter; φ50 mm

*Blank holding force; 20 kN

*Drawing speed; 200 mm/s

Table 1 Specimens used in this study
Fig. 3 Limiting drawing force of specimens by the square cylin- cylin-der drawing test

参照

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