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1.実験動物

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 内 容 の 要 旨

稲垣 慶則

(主 査) 朝日大学歯学部 教授 智原 栄一

(副 査) 朝日大学歯学部 教授 近藤 信夫

(副 査) 朝日大学歯学部 教授 柏俣 正典

鎮静薬が引き起こす刺激脾細胞の免疫応答変化

論文内容の要旨

【目 的】

臨床領域で日常的に行われている静脈内鎮静法は,単に不安・恐怖の除去だけでなく,全身疾 患を有する歯科患者の安全管理の一手段としても大きく寄与しており,今後もその頻度はますま す増加すると考えられる.その際用いられている鎮静薬は,呼吸器や循環系に影響を与えるのみ ならず,免疫機能にも抑制的に作用すると考えられており,好中球・単球系を中心に研究が進め られているが,未だそのメカニズムは十分に理解されていない.

本研究では,歯科臨床で頻用される

midazolam, propofol

および,局所麻酔薬として併用される ことの多い

lidocaine

が免疫細胞に及ぼす影響を,マウス脾細胞の刺激培養系を用いて検討した.

【材料および方法】

1.実験動物

C3H/HeN

マウス(雄,24 週齢)を購入し,朝日大学実験動物飼育施設において1週間以上飼

育し馴化したのち実験に使用した.実験は朝日大学動物実験専門委員会の承認のもとで実施さ れた(承認番号;18-025).

2.薬物

鎮静処置時に頻用される

lidocaine

(アストラゼネカ),

propofol

(和光純薬工業)および

midazolam

(富士製薬工業)について検討した.

3.細胞傷害性の検討

マウスより脾臓を摘出し脾細胞を単離した.脾細胞を各濃度の鎮静・麻酔薬存在下で培養し,

48

時間後に

PrestoBlue

生細胞試薬を用いて生細胞数の指標となる蛍光強度を測定した.生細

胞率は薬物未添加群の蛍光強度を

100

として算出した.

4.脾細胞のサイトカイン産生能の測定

マウス脾細胞を,固相化した抗マウス

CD3ε

抗体を用いて

T

リンパ球特異的受容体を刺激し,

鎮静・麻酔薬を含んだ培養液中で

37℃,5% CO

2 存在下にて培養した.刺激後

0~48

時間後ま で,経時的に培養上清を回収し,インターフェロン(IFN)-,インターロイキン(IL)-2,-4,

-6,-10

の濃度を酵素結合免疫吸着法 (ELISA法)にて測定した.

5.刺激脾細胞におけるサイトカイン mRNA

発現動態の解析

単離した脾細胞を,麻酔薬を含んだ培養液中で刺激培養し,48時間後まで経時的に脾細胞を回

(2)

2

収した.脾細胞から

Isogen

を用いて

RNA

を抽出し,定量的

PCR

法(SYBR Premix EX Taq,

TaKaRa)により各種サイトカインの転写量を解析した.

【結 果】

1.lidocaine

propofol

100 g/ml

未満の濃度,一方,midazolam

10 μg/ml

未満の低濃度領域に おいては,刺激脾細胞に対する細胞傷害性は認められなかった.

2.lidocaine

は少なくとも 80

g/ml

以下で, propofolは少なくとも

10 g/ml

以下では刺激脾細胞の

IFN-γ

および

IL-10

の産生能を抑制しなかった.一方, 10 g/ml

midazolam

は, IFN-γおよび

IL- 10

の産生能を顕著に抑制した.

3

5 μg/ml

midazolam

,

刺激脾細胞の

Il-2, Il-10

および

Il-4 mRNA

発現を

,

刺激後

3

時間

, 1

日およ

2

日以降において有意に抑制した.

4

5 μg/ml

midazolam

は,刺激脾細胞の

IL-2, IL-4

および

IL-10

産生をそれぞれの

mRNA

発現と同様 の様式で顕著に抑制した.

5.

刺激脾細胞の

Il -6

および

Ifn-γ mRNA

発現や,タンパク質産生量には,

5 μg/ml

midazolam

存在 下で有意な変化はみられなかった.

【考 察】

1.臨床的濃度では,lidocaine

propofol

による刺激脾細胞の

IL-10

および

IFN-発現抑制作用は観

察されなかったことから,歯科麻酔領域における

midazolam

の免疫改変作用の特異性が示唆され た.

2.臨床的濃度に近い低濃度の midazolam

は,刺激脾細胞の

IL-2, IL-4

および

IL-10

の発現を転写レ

ベルのみならずタンパク質レベルでも特異的に抑制し,それらサイトカインを介して

T

細胞系 の免疫活性化機構に影響を及ぼすことが示唆された.

3. IL-4

IL-10

は免疫抑制性サイトカインであることから,その発現低下は,自己免疫疾患や術後

の炎症症状の増悪化,さらには患者の長期的予後にも影響する可能性も考えられた.

【結 論】

midazolam

は,T リンパ球受容体刺激に呼応したマウス脾細胞における

IL-2,IL-4

および

IL-10

の発現を,タンパク質レベルで有意に阻害し,

mRNA

の発現も同時に低下させることを明らかにし た.本研究は

midazolam

のもつ免疫改変作用の一端をマウス刺激脾細胞の培養系をいて明らかにし たものであり,歯科を含めた臨床現場で日常的に施されている静脈内鎮静処置において,適切に薬 物を選択するための基礎的資料を提供するものと考える.

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