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外国事業体の法人該当性と課税 ⑴

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第1章 本論の概要

1 本論の目的

 本論の目的は,法人以外の事業体の日本租税法上の法人該当性の判定と  253 商学論纂(中央大学)第59巻第12号(2017年9月)

外国事業体の法人該当性と課税 ⑴

矢 内 一 好

   目   次 第1章 本論の概要  1 本論の目的

 2 事業体課税2つの区分  3 租税回避との関連

第2章 日本における事業体課税の沿革と概要  1 米国LLCの課税(外国事業体の法人該当性)

 2 航空機リース事案(国内事業体の組合該当性)

第3章 米国デラウェア州LPSに係る判決  1 裁決(平成18年2月2日)

 2 裁判の動向

第4章 バミューダLPS事案に係る判決

 1 バミューダLPS事案の東京地裁判決・東京高裁判決等  2 デラウェアLPS事案とバミューダLPS事案の比較検討 第5章 米国における法人該当性の判例等

 1 分析の視角

 2 モリセイ事案最高裁判決

 3 キントナー事案判決とキントナー規則  4 チェック・ザ・ボックスルール  5 米国租税条約等における動向

(2)

課税及び外国における同様の問題に関する比較法の観点からの研究であ る。

 法人,組合等の多くの事業体は,日本だけではなく,世界各国それぞれ の国において様々な形態で活動をしている。これらの事業体を大別する と,事業体自身が納税主体となるものと,その事業体自体は納税主体とな らずにその構成員が課税になるいわゆるパススルーの形態の事業体に分け ることができる。

 このパススルー形態の事業体は,構成員が同じ国に所在する場合と異な る国に所在する場合の2つのケースに分けることができるが,後者の場 合,さらに,その事業体が,構成員所在地国で構成員課税で事業体所在地 国で団体課税の場合と,構成員所在地国で団体課税で事業体所在地国でパ ススルーの場合のいずれかになる場合,団体構成員の課税に関して,その 構成員の所在地国はその事業体が設立国と同じ性格でよいのか,或いは,

団体・法人として課税すべきかどうかという問題に直面する。このよう な,事業体を自国の租税法上団体・法人として扱うのかどうかの判断基準 を法人該当性という。

 国内或いは外国事業体の租税法上の法人該当性に関しては,米国LLC

Limited Liability Company,米国LPSLimited Partnership等に関するわが 国の税務訴訟において関心が高まったが,特に,米国デラウェア州LPS に関する東京,大阪,名古屋における裁判が並行して審理され,地裁,高 裁においても異なる判決が出たことで注目され,平成27年7月17日の最高 裁判決(以下「LPS最高裁判決」という。)により,租税法上の法人該当性に 関する最高裁の判断が出たことで,それまでの議論が収斂したという判断 もできるが,いくつかの問題が未だに解決といえる状態ではないというの が筆者の認識である。

 第1は,LPS最高裁判決における法人該当性に関する最高裁判決の吟味

(3)

である。

 第2は,LPS最高裁判決とそれ以前の米国LLC判決において,これら の事業体は日本において法人と判定されたことから,国内法との関連性の 問題がある。米国不動産投資にこれらの事業体を利用して租税回避を図る スキームについては,平成17年度税制改正により個人,法人の双方につい て法改正が行われ,これらのスキームの税削減効果は減少したが,それ以 外の領域,例えば,タックスヘイブン対策税制,移転価格税制等への影響 が想定できるのである。

 第3は,外国事業体の租税法上の法人該当性問題に直面しているのは,

日本ばかりではないということである。諸外国の例と比較して,LPS最高 裁判決に示された法人該当性の基準が,どのようなレベルにあるのかとい う点も検討が必要である。本論では,第3章から第5章で米国,カナダ,

英国の状況が検討対象となる。

 第4は,上述のLPS最高裁判決以降,法人該当性の問題はどのような 展開があるのかということを検討する。

 以上の事項は,本稿を含めて3回で検討する予定である。

2 事業体課税2つの区分

 法人以外の各種事業体の課税では,国内事業体の組合該当性等の問題と 外国事業体の法人該当性の問題がある。

 前者の例としては,航空機リース事案があり1),後者の例は,前述の米 LLC事案或いは米国デラウェア州LPS事案等である。

 両者に共通する事項は,私法からの借用概念の問題であり,後者は,こ

1) 名古屋地裁平成16年10月28日判決,名古屋高裁平成17年10月27日判決,で あり,民法上の組合該当性を争点とした事案で,いずれも納税義務者側勝訴 となっている。

(4)

れに国際私法及び租税条約等の適用も加わることになる。例えば,米国に おいて設立された事業体の場合,米国の私法は連邦法ではなく州法である ことから,該当する州法と課税関係が生じる日本の私法の適用関係を検討 することになる。また,日米租税条約を始めとして,租税条約には事業体 課税に係る規定があることから,その適用関係もある。

日本における事業体課税関連年表 判決日等

平成11年9月16 国税庁通達「レバレッジド・リース取引に係る税務 上の取扱いについて(法令解釈通達)」

平成13年2月26 裁決(裁決事例集 No. 61102頁)

米国で設立されたLLCはわが国の租税法上「法人格」

を持った法人であるという判断が示された。

平成13年6月 国税庁が「米国LLCに関する税務上の取扱い」を公 表し,LLCが米国の税務上,法人課税又はパス・ス ルー課税のいずれを選択するにせよ,原則的にはわ が国の税務上,外国法人として取り扱うこととなっ た。

平成1511月6日 第3次日米租税条 約署名

条約4条6項に事業体課税に係る租税条約の適用の 条文が創設された。

平成161028 名古屋地裁(航空機リース)

平成17年4月 平成17年度税制改正 平成171027 名古屋高裁(航空機リース)

平成171221 ケイマンLPS(名古屋地裁)船舶リース 平成18年2月2日

( 裁 決 事 例 集No.

71118頁)

請求人は米国LPSを投資事業有限責任組合と類似し ていることから民法上の組合と同様に扱うことを主 張したが審判所で採用されず,不動産所得ではなく 雑所得と判断された事案

平成19年3月8日 判決

ケイマンLPS(名古屋高裁)船舶リース

(5)

平成19年5月16日 さいたま地裁判決(平成17(行ウ)3)において,米国 ニューヨーク州で設立されたLLCは日本の租税法上 法人にあたるという判決が示されている。(東京高 裁:平成19年10月10日)

平成19年10月10日 米国ニューヨーク州LLC(東京高裁)

平成20年1月24日 ケイマンLPS(岐阜)

平成20年3月27日 ケイマンLPS(名古屋)船舶リース:最高裁不受理 平成22年12月17日 米国デラウェア州LPS(大阪地裁)(国側勝訴)

平成23年7月19日 米国デラウェア州LPS(東京地裁)(納税義務者勝訴)

平成23年12月14日 米国デラウェア州LPS(名古屋地裁)(納税義務者勝 訴)

平成24年7月2日 米国LPS裁決

平成24年8月30日 バミューダLPS(東京地裁)

平成25年1月24日 米国デラウェア州LPS(名古屋高裁)(納税義務者勝 訴)

平成25年3月13日 米国デラウェア州LPS(東京高裁)(国側勝訴)

平成25年4月25日 米国デラウェア州LPS(大阪高裁)(国側勝訴)

平成26年2月5日 バミューダLPS(東京高裁)(納税義務者勝訴)

平成27年7月17日 米国デラウェア州LPS(名古屋:最高裁)(国側勝訴)

平成27年7月17日 米国デラウェア州LPS(東京・大阪)最高裁上告不受

平成27年7月17日 バミューダLPS(東京)最高裁上告不受理決定

3 租税回避との関連

 日本では,節税,租税回避,脱税という3つの区分(以下「3分説」とい う。)が一般的であるが,英国では,脱税と租税回避の2分類(以下「2分 説」という。)から議論が始まっている。日本的な解釈では,節税は合法で 課税処理上問題がなく,脱税は違法であるから問題がある。租税回避につ いては,合法ではあるが問題があるという捉え方であるが,英国流の解釈

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では,租税回避自体は合法で問題なしという理解である。租税回避のう ち,立法趣旨に反する等の一定の要件に合致するものについてのみ税務上 の否認の対象となるというもので,単に,日本的解釈における節税と租税 回避が英国流の租税回避概念と同一というものではない。

 現在の英国における租税回避に関する研究としては,Rebecca Murray 氏の著書があるが,このMurray氏によると否認対象となる租税回避の要 件として,次のものが掲げられている2)

 ① 納税義務者が,立法趣旨に反して租税上の便益を得ることを探求し ている場合

 ② 納税義務者が立法上の抜け道を探すことにより租税上の便益を得る 場合

 ③ 納税義務者が人為的な取引により租税上の便益を得る場合

 上記の3つの場合について,②は,納税義務者にとって合法的な租税 計画ではないかと思われるが,同氏は,法律上にある抜け道を立法の意図 しない欠陥であるとしてこれを否認対象となる租税回避としている。税法 に立法技術的な点で問題があり,それを利用して納税義務者が税負担の軽 減を図ることは,その規定の立法趣旨の点から許容できないという考えで ある。

 繰り返しになるが,3分説では,租税回避はある意味,税負担を合法的 に軽減するために取引等を仕組むというニュアンスが感じられるが,2分 説では,租税回避avoidanceは合法であり,課税当局から否認の対象に はならないが,avoidanceのうち,取引が異常で,立法当局が想定してい ない解釈に基づく取引等を濫用abuseとして否認対象とする区分であ る。

2) Murray, Rebecca, Tax Avoidance 2nd edition, Sweet & Maxwell,2013. p. 1.

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第2章 日本における事業体課税の沿革と概要

1 米国LLCの課税(外国事業体の法人該当性)

 ⑴ 裁 決 事 例

 この事案は,平成13年2月26日裁決事例である3)。なお,LLCの性格は 後述する。

イ 事実関係

 以下の各項目は本事案の事実関係に属する事項である。

 ① 請求人は,不動産所得を有する日本居住者で,年分は平成8年及び 平成9年である。

 ② 請求人は,米国ニューヨーク州にLLC(以下「米国LLC」という。)

を設立し,平成8年6月24日に出資金100万ドルを送金し,構成員持 分は9分の4である。

 ③ 原処分庁は,米国LLCの不動産運用損失は,わが国の租税法上,

外国法人と認められる米国LLC自体に帰属するという理由から,請 求人の構成員持分に見合う不動産運用損失を請求人の他の所得金額と 損益通算して確定申告することはできないとして,平成11年2月3日 付で更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をした。

ロ 原処分庁の主張

 原処分庁の主張の概要は次のとおりである。

 外国の事業体については,外国の法律によって設立が認められ,その事 業体の成立時において権利・義務の主体となることができる特性を備える ことにより,わが国の私法上,法人格を有すると判断されたものについて は,わが国の租税法上も損益の帰属主体となる外国法人として取り扱うこ

3) 平成13年2月26日裁決(裁決事例集No. 61,102頁)。

(8)

ととなる。

 わが国の租税法上の法人に関する定義した規定は存在しない。したがっ て,わが国の租税法上の法人概念については,一般的に民法,商法といっ たわが国の私法上の概念を借用してこれと同義に取り扱うこととなる。わ が国の私法上の法人概念としては,わが国の私法上,法人とは「権利を有 し義務を負う能力を法律上有しているもの」をいうと解されている。ま た,外国法人について規定している民法第36条第1項の規定によれば,外 国の法律によって設立され当該外国の法律の下で法人格が与えられた商事 会社は,わが国の私法上,外国法人として認許されると規定されている。

この場合の外国法人としての認許とは,外国の法律で認められた法人格を わが国においても承認し,法人として活動することを認めることと解され ており,このことからわが国の私法上,法人格の認許に関しては,一般に 設立準拠法主義が採られていると解されている。

 この上記の原処分庁の主張は,その後の外国事業体の法人該当性におけ る主張と同様のロジックである。

ハ 請求人の主張

 請求人の主張の概要は次のとおりである。

 わが国の租税法上は,法人格の有無が納税義務者となる法人の判定基準 であるが,ニューヨーク州LLC法の解説マニュアルには,LLCは法人格 がない事業体Unincorporated Organizationであると明確に記載されてお り,ニューヨーク州弁護士が書いた雑誌においても,LLCには法人格が ないと記述されており,これは,法律に携わっている者なら周知の事実

(ないし常識)であるので,これについてわが国の行政府が異なる解釈をす ることは,設立準拠法主義に違反するものである。

 この設立準拠法主義の意義は,「その事業体に法人格があるかどうかは,

わが国の法律ではなく,その国又は州の法律でそうなっている(法人格が

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ある)かどうかで判断する。」ことであると理解するが,原処分庁は,設 立準拠法主義を「有限会社に有限会社法が,株式会社に商法があるよう に,LLCにはLLC法があるから,LLCは法人である。」というように解 釈しているように思われるが,法人格のないわが国の投資事業有限責任組 合にも準拠する法律はあるし,また,米国のパートナーシップにもパート ナーシップ法はあるのであるから,原処分庁の主張には根拠がない。

ニ 裁決

 法人該当性に係る判断

 法人該当性についての要約は,次のとおりである。

 法人とは,一般に「自然人以外のもので法律上,権利・義務の主体と なることのできるもの」である。すなわち「権利を有し義務を負う能力 を法律上有しているもの」をいうと解されている。

 この権利・義務の主体となることができる法律上の資格のことを法人 格と称している。

 外国の法律によって設立され,当該設立準拠法の下で権利・義務の主 体となることができる法律上の資格(法人格)が与えられた事業体は,

わが国の私法(租税法)上の外国法人に該当し,わが国の租税法上損益 の帰属主体となると解するのが相当である。

 外国の法律によって設立された事業体がわが国の租税法上損益の帰属 主体となるか否かについては,当該設立準拠法の下で権利・義務の主体 となることができる法律上の資格(法人格)が与えられているか否かが 判断基準であるが,ニューヨーク州LLC法には,法人格の存在を直接 規定した条項は存在しない。

 米国LLCが損益の帰属主体となるか否かについては,ニューヨーク LLC法の下で米国LLCに認められている権利・義務の内容から判断 しなければならない。

 米国LLCの法人該当性

 米国LLCは以下に掲げる特徴を有していることから同法の下で権利・

義務の主体となることができる資格を付与された事業体であると認められ

(10)

るという判断が下された。

 商行為をなすことを業とする目的でニューヨーク州LLC法に従った 設立手続を経て設立された事業体である。

 設立準拠法であるニューヨーク州LLC法の下で,契約,財産権の所有,

裁判,登記等において当事者となることができる資格を与えられている。

 ニューヨーク州LLC法で「LLCは(構成員とは別個の)独立した法 的主体である。」と規定されている。

 したがって,米国LLCは,その設立準拠法であるニューヨーク州LLC 法の下で,権利・義務の主体となることのできる法律上の資格を付与され た事業体であり,このような法律上の資格と実態を有する米国LLCは,

わが国の私法或いは租税法上の外国法人に該当し,当該LLCが行う事業 から生じる損益は,LLC自体に帰属すると認めるのが相当である,とい う判断が示されたのである。

 米国LLCに法人格がないことに関する裁決上の判断

 請求人は,ニューヨーク州LLC法の解説マニュアルには,LLCは法人 格がない事業体(Unincorporated Organization)であると明確に記載されてお り,LLCに法人格がないことは米国では周知の事実である旨主張する。

 わが国と米国とでは税務上の法人概念の捉え方が著しく異なるところ,

米国の租税法上では構成員課税が適用されているLLCの場合,当該LLC は設立準拠法の下で法人格を与えられているが,税務取扱い上は法人とし て認められた事業体ではないと解することができるし,また,「LLCには 法人格あり」とする見解も少なからず存在しており,さらには,米国の租 税法上,現に法人課税の対象とされるLLCも存在するなど,請求人主張 の「LLCに法人格がないことは米国では周知の事実」と判断することは できず,この点に関する請求人の主張は採用できない。

 さらに,請求人は,契約主体となり得ることと法人格の有無とは全く別

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のものである,つまり,法人格があれば当然に契約主体となり得るが,契 約主体となり得るからといって法人格があるとは限らない旨主張する。

 確かに,契約主体となり得ることのみをもって法人格の有無を判断する ことはできないが,米国LLCが,わが国の租税法上,法人格を持った事 業体であると判断されるのは,設立準拠法の下で権利・義務の主体となる ことのできる法律上の資格が与えられている事業体であると認められるか らであって,契約主体となり得ることのみを根拠とするものではないか ら,この点に関する請求人の主張は採用できない。

 本裁決では,以上のような判断から,米国LLCが「人格のない社団等」

に該当するか否か,又は「民法上の組合」若しくは「匿名組合」に該当す るか否かについて検討するまでもなく,米国LLCはわが国の租税法上「法 人格」を持った法人であると認められ,米国LLCが行う事業から生じる 損益は米国LLC自体に帰属すると判断すべきである,と判断されたので ある。

 裁決

 米国LLCが行う不動産賃貸業から生じる損失のうち請求人の構成員持 分に見合う損失を請求人の他の所得金額と損益通算することはできないと された本件更正処分は適法である,とされた。

 小括

 上記の裁決事例における判断は,後述する裁判における原告及び被告の 主張と重なる部分も多いことから,その多くを引用したのであるが,以下 の法人該当性については,この裁決をベースにその相違点という形での理 解が必要となる。

 ⑵ LLCに関する国税庁通達

 平成13年6月に国税庁は,「米国LLCに関する税務上の取扱い」を公表 した。この通達では,LLCは,原則的にはわが国の私法上,外国法人に

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該当するものと取り扱われるとしており,その判断要素を次のように掲げ ている。

LLCは,商行為をなす目的で米国の各州のLLC法に準拠して設立さ れた事業体であること。

② 事業体の設立に伴いその商号等の登録(登記)等が行われること。

 事業体自らが訴訟の当事者等になれるといった法的主体となることが 認められていること。

 統一LLC法においては,「LLCは構成員(member)と別個の法的主 体(a legal entity)である。」,「LLCは事業活動を行うための必要かつ十 分な,個人と同等の権利能力を有する。」と規定されていること。

 結論として,LLCが米国の租税法上,法人課税又はパス・スルー課税 のいずれの選択を行ったかにかかわらず,原則的にはわが国の税務上,

「外国法人(内国法人以外の法人)」として取り扱うのが相当としている。こ の通達は,その発遣時期からして,上記 ⑴ の裁決の結果を踏まえて,

LLCに関する取扱いを統一する趣旨から定められたものと思われる。

 ⑶ 租 税 条 約

 現行の日米租税条約(以下「日米租税条約」という。)は,平成152003 年)11月6日に日米条約の改正署名が行われ,平成16年3月30日をもって 発効している。

 この日米租税条約第4条第6項には事業体課税に係る規定があるが,日 米租税条約の署名が,平成13年6月の国税庁LLC通達の後であることに 注意が必要である。

 すなわち,日本と米国の間には,米国のLLC,パートナーシップ等の ように,両国間において課税上の取扱いが同一でない事業体がある。この ような事業体の取得する所得について,日米租税条約の課税の減免を適用 する場合,どのようになるのかを明確にする必要があり,この規定が整備

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されたのである。換言すれば,同一の事業体に対して,租税条約上の一方 の国が構成員課税,他方の国が団体課税という事態になったことから,日 米租税条約は,その調整を行うことが必要になったのである。

 日米租税条約の適用対象者に関して,同条約4条(居住者条項)におい て,居住者とは,一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者 と規定されている。日本では,米国のLLCを外国法人とする取扱いであ るが,米国における当該米国LLCへの課税が構成員課税とすると,この 米国LLC自体は,米国において納税主体となっていないことから,租税 条約適用上の米国居住者とはならないことになる。では,米国における課 税が構成員課税であることから,構成員自体が米国居住者かどうかを判定 すればよいということにもなるが,わが国はすでに米国のLLCを外国法 人と定めていることから,外国法人である米国のLLCの取得する所得を その構成員の所得とすることはできない。

 このような隘路を解決するために,日米租税条約では,LLCが構成員 課税を選択した場合と,団体課税を選択した場合に分けて租税条約上の恩 典を受ける者について規定をしたのである。その結果,米国のLLCにつ いて,日本が法人課税,米国が構成員課税を採用しても,納税義務者の不 利にならないような措置が採用されたといえる。

 確かに,日米租税条約に限らず,租税条約には一般的定義を定めた条項 があり,日米租税条約第3条第1項に法人に関する定義がある。この 規定によれば,法人は,「法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有 する団体として取り扱われる団体をいう」,と定義されているが,これは,

租税条約上において,「法人」について双方の締約国において認識を共有 するためのもので,条約相手国の事業体の法人該当性を判定する基準では ない。

 したがって,租税条約における法人該当性に関する理解は次のようにな

(14)

る。

 ① 租税条約に事業体の法人該当性を判定する機能はなく,双方の締約 国がそれぞれに異なる判定(団体課税と構成員課税)をした場合に,国 際的二重課税排除の観点から,租税条約は,その調整を行う役割を有 している。

 ② 租税条約は,その適用から所得の種類を判定する機能がある。この 機能が問題視されるのは,後述する英国の事例である。

 ⑷ 米国LLCに係る第一審判決

 この事案は,米国のLLCについて,わが国租税法上の法人該当性が争 われた事案であるが 4),平成13年2月26日裁決の事案と同様の内容(不動産 投資の損益の帰属)であり,かつ,LLCの設立した米国の州もニューヨー ク州(以下「NY」という。)と同じであるが,対象となる年分は平成10年か ら12年である。以下は,法人該当性に絞って原告及び被告の主張と裁判所 の判断を記述する。

イ 事案の基礎データ

 本事案の基礎データは次のとおりである。

 ① さいたま地方裁判所(第一審)

 ② 平成19年5月16日判決

 ③ 事件番号:平成17年(行ウ)第3号  ④ 事件名:所得税更正処分等取消請求事件  ⑤ 判決(請求棄却)

ロ 原告の主張

 原告の主張の要点は次のとおりである。

4) さいたま地裁(平成19年5月16日判決),東京高裁(平成191010日判 決)。

(15)

NYLLC法は,その定義規定において,LLCを非法人組織(unincorpo- rated organization)と位置付け,LLCが法人ではないことを明確にして いる。

NYLLC法の規定は,同法に基づき組成されるLLCが,出資金に関す

る責任,構成員間の分配,構成員の持分の譲渡,構成員の退会等につい て,構成員間の内部自治を原則とする組合的組織であることを明確にし ている。

 米国の租税法上,LLCは,その持分が公に取引されている場合を除 き,法人課税又はパートナーシップとしての構成員課税のいずれかを任 意に選択することができるところ(チェック・ザ・ボックス規則),本 LLCは,米国国内において,当初よりパートナーシップとして課税 されることを選択して納税している。

 法人概念についても,他の法概念と同様,各法律間でできる限り同一 に解釈されるべきことや,租税法上の法人概念は実態に即して判断すべ きであることからすれば,NYLLC法を設立準拠法とする本件LLCは,

その実質に鑑みれば,わが国における有限責任事業組合に相当するもの であり,わが国租税法上の法人に該当するとはいえない。

ハ 被告の主張

 被告の主張の要点は次のとおりである。

 法人該当性の判断基準

 法人該当性に関する判断基準は次のとおりである。

 ①  所得税法及び法人税法において,法人について明確な定義付けをし た規定はない。租税法上定義を置いていない用語については,別意に 解すべきことが租税法規の明文又はその趣旨から明らかな場合は別と して,それを私法上におけるのと同じ意義に解すべきところ,わが国 の私法上,法人とは「自然人以外のもので,法律上,権利義務の主体 たりうるもの」,すなわち,権利を有し,義務を負う能力を法律上有 しているものをいうと解される。

 ②  外国の法律によって設立され,当該設立準拠法の下で法人格を与え られた事業体は,わが国の私法上(租税法上)の外国法人に該当する

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と解される。

 ③ 外国の法律によって設立された事業体がわが国の租税法上の法人と なるか否かについては,係る事業体に当該設立準拠法の下で権利義務 の主体となることができる法律上の資格(法人格)が与えられている か否かが判断の基準となる。

LLCに係る規定

NYLLC法を準拠法として設立されているLLCについては,その内容は

次のとおりである。

  本 法 に 基 づ い て 設 立 さ れ たLLCは, 独 立 し た 法 的 主 体(separate

legal entity)とし,その法的主体としての存在は当該LLCの基本定款が

破棄されるまで継続するものとする。

② その名において,訴訟手続等の当事者となることができる。

 不動産や動産又はこれらに係る権利を取得するなど,不動産や動産に ついての取引をすることができる。

 その財産の全部又は一部を売却するなど,その財産の全部又は一部を 処分することができる。

⑤ 株式などの証券に係る取引をすることができる。

 保証契約等の締結,負債の負担,資金の借入れ,手形・債券の発行,

営業特許や利益を抵当に入れることができる。

 いかなる合法的な目的のためにも資金を貸し出し,LLCが保有する資 金を投資し,投資した資金の支払の担保として不動産や動産を占有し,

保有することができる。

 いかなる州,外国又はその他の管轄区域においても,その事業を実施 し,その業務を運営し,事務所を維持し,本法によって付与される権限 を行使することができる。

 いかなる団体,会社,パートナーシップ,リミテッド・パートナーシ ップ,LLC,合弁事業等その他の主体等の発起人,株主,パートナー,

構成員等になることができる。

 また,英米法上において法人格を有する団体の要件は,次のとおりであ

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る。

⒜ 訴訟当事者になること

⒝ その名において財産を取得し処分すること

⒞ その名において契約を締結すること

⒟ 法人印(corporate seal)を使用すること

 本件LLCは,構成員とは異なる権利義務の主体として活動しており,

権利義務の主体となり得る法律上の資格を有していることが明らかであ り,英米法上の法人格の要件である上記の要件 ⒜ から ⒞ を具備している と認められる。そして,本件LLCは,LLCの名称をA・LLCと定め,同 名を使用していることからして,上記 ⒟ の要件も具備していると考えら れる。その結果,本件LLCには,NYLLC法に基づき付与された権利義務 の主体となり得る広範な法律上の資格が与えられており,また,本件 LLCは,英米法上の法人格を有する団体の要件も具備することから,わ が国の租税法上の「法人」に該当し,これを前提としてされた本件各更正 処分等は適法である。

ニ 裁判所の判断

 わが国租税法上の外国法人に該当するかについての裁判所の判断は次の とおりである。

 ① わが国の租税法上,法人そのものについて定義した規定はない。

 ②  租税法上の法人は,民法,会社法といった私法上の概念を借用し,

これと同義に解するのが相当である。

 ③  わが国の租税法上,「法人」に該当するかどうかは,私法上,法人 格を有するか否かによって基本的に決定されていると解するのが相当 である。

 ④  本件LLCが法人格を有するか否かについては,米国ニューヨーク

(18)

州法の内容と本件LLCの実質に基づき判断するのが相当である(民法

36条,会社法933条,旧商法479条,法の適用に関する通則法等参照)

 ⑤ 本件LLCを被告の主張する英米法上において法人格を有する団体 の要件に当てはめると,本件LLCは,NYLLC法上,法人格を有する 団体として規定されており,自然人とは異なる人格を認められた上 で,実際,自己の名において契約をするなど,原告等からは独立した 法的実在として存在していることが認められ,わが国の私法上或いは 租税法上の法人に該当すると解するのが相当である。

 ⑥ 原告は,NYLLC法に基づき設立されたLLCは,有限責任制,内部 自治原則及び構成員課税を採用している点で,日本版LLCとされる 合同会社ではなく,むしろ有限責任事業組合に相当するもので,わが 国の租税法上の法人には該当しない旨主張するが,わが国における有 限責任事業組合は,民法上の組合の特例として創設されたものであ り,出資者が有限責任を享受するとしても,組合であって,法人では なく,組合自体の名義で財産を所有したり,契約を締結したりするこ とはできない。そうすると,本件LLCがわが国における有限責任事 業組合に相当するとはいえず,原告の上記主張は採用できない。

 ⑸ 米国NYLLCに係る控訴審判決 イ 事案の基礎データ

 本事案の基礎データは次のとおりである。

① 東京高等裁判所

② 平成19年10月10日判決

③ 事件番号:平成19年(行コ)第212号

④ 事件名:所得税更正処分等取消請求事件

⑤ 判決(控訴棄却)

ロ 判決

(19)

 高裁の判断は,原判決と同様であることから控訴棄却となった。

2 航空機リース事案(国内事業体の組合該当性)

 ⑴ 事案の基礎データ(第一審)

 本事案の基礎データは次のとおりである。

① 名古屋地方裁判所

② 平成16年10月28日判決

③ 事件番号:平成15年(行ウ)第26号〜第30号等

④ 事件名:申告所得税更正処分等取消請求各事件

⑤ 判決(取消請求認容)

 ⑵ 事案の基礎データ(控訴審)

 本事案の基礎データは次のとおりである。

① 名古屋高等裁判所

② 平成17年10月27日判決

③ 事件番号:平成16年(行コ)第48号

④ 事件名:申告所得税更正処分等取消請求各事件

⑤ 判決(控訴棄却)

 ⑶ 航空機リース事案の概要

 航空機リース事業の概要は次のとおりである。

 野村バブコックアンドブラウン株式会社(以下「NBB」という。)は,

平成11年6月ごろから,個人を対象として,民法上の組合による航空 機リース事業を行った。

 本件6組合から業務委託を受けたNBBの100パーセント子会社(本 件各業務執行会社)は,それぞれの出資金と金融機関からの借入金を用 いて,航空機を所有する会社から航空機1機を購入し,これを航空会 社にリースして,本件各航空会社から得るリース料収入を上記借入金

(20)

の元本・利子の返済に充てるとともに,残余を本件各組合員に分配 し,リース期間終了後の本件各航空機売却時には,売却代金をもって 借入金残額の返済に充て,なお余剰が生じた場合には,本件各組合員 に分配することが予定されていた。

 ⑷ 当裁判所の判断 イ 本事案の問題点

 本事案の問題点は次のとおりである。

① 当事者の締結した契約解釈の在り方

② 契約書等の外形的資料から離れた「真意」の認定の可否等

 原告らは,いずれも,業務執行会社を含む他の組合員らとの連名によ り,「任意組合契約書」と題し,前文に,日本国の民法上の組合を設立す る旨が記載されている本件各組合契約書を作成,取り交わしている。

 原告らの達成しようとする経済的目的に照らして,そのような契約類型 を選択することが著しく不合理といえるか,それらの契約の意味が,真実 は民法上の組合契約を締結するものではなく,利益配当契約にとどまるも のと解し得るという被告側の主張に対して,原告側は本契約が民法上の組 合契約であり,航空機リース事業による収益が不動産所得に区分されると いうことが争点となっている。

ロ 原告,被告に異論がない事項

 原告,被告双方に異論がない事項は次のとおりである。

 租税法は国民の私的経済活動ないし経済現象を課税対象とするもの であるが,これらについては,第一次的に私法によって規律されてい るから,その意味内容も,まず私法によって解釈されなければならな い。

 国民が一定の経済的目的を達成しようとする場合,私法上は複数の 手段,形式が考えられる場合があるが,私的自治の原則ないし契約自

(21)

由の原則が存在する以上,当該国民は,どのような法的手段,法的形 式を用いるかについて,選択の自由を有するというべきである。

 特段の合理的理由がないのに,通常は用いられることのない法的手 段,形式を選択することによって,所期の経済的効果を達成しつつ,

通常用いられる法律行為に対応する課税要件の充足を免れ,税負担を 減少させ或いは排除する場合には,租税回避行為としてその有効性が 問題となり得るが,租税法律主義の観点からは,このような場合であ っても,当該法的手段,形式が私法上は有効であることを前提としつ つ,租税法上はこれを有効と扱わず,同一の経済目的を達成するため に通常用いられる法的手段,形式に対応する課税要件が充足したもの として扱うためには,これを許容する法律上の根拠を要すると解すべ きである。

ハ 組合契約に関する判示事項

 本判決では,以下の項目について次のような判断が示された。

 民法上の組合契約の成立要件について

 民法第667条第1項は,「組合契約ハ各当事者カ出資ヲ為シテ共同ノ事業 ヲ営ムコトヲ約スルニ因リテ其効力ヲ生ス」と定め,組合契約が有効に成 立するためには,①2人以上の当事者の存在,②各当事者が出資をする ことを合意したこと,③各当事者が共同の事業を営むことについて合意 したことの各要件が必要であることを明らかにしている。このうち,本件 各組合がの要件を満たしていることは,原告らを含む本件各組合 員らが,共同で出資することを約し,現にその出資をしていることから明 らかである。

 ところで,③の合意が認められるためには,次の2つの要件を満たす 必要がある。

① 共同で営む事業の内容(組合の目的)についての合意

(22)

② その事業を共同で営むことについての合意を要する。

 ①の事業内容の合意については,本件各組合契約2条によってその存 在を認めることができるが,②の「事業を共同で営む」というためには,

第1に,各当事者が当該組合の事業の遂行に関与し得る権利を持つことが 必要というべきであるから,同法第673条に基づいて組合の業務や財産状 況を検査する権利と,業務執行を1人又は数人の組合員に委任したとき に,正当の事由がある場合には同法第672条第1項に基づいて業務執行組 合員を解任する権利を有している必要があると解される。

 第2として,各当事者が事業の成功に何らかの利害関係を有することが 必要であるから,例えば,営利事業を目的とする団体が,これによる利益 を特定の者だけで配分し,他の者が全くこれに関与しない場合は,共同事 業性が否定され,民法上の組合としての性格を有しないとことになる。こ れに反し,内部的に出資額以上の損失を負担しない当事者がいたとして も,共同事業性に反するものとはいえない。

 したがって,本件各組合契約が民法上の組合契約の性質を有するかは,

原告らを含む一般組合員らが上記の検査権及び解任権を有するか否か並び に事業の成功に利害関係を有するか否かに係るというべきである。

 検査権について,原告ら一般組合員は,前記検査権を保有していると認 めるのが相当である。そして,解任権について,本件各契約においては,

原告ら一般組合員が本件各業務執行会社の解任権を認めておらず,仮に法 的には認めていたとしても,否定している場合と同視すべきである旨の被 告らの主張は採用できない。

 本件各事業の成功についての利害関係について,本件各組合においては,

本件各事業から生ずる利益及び運用収入は,本件各組合員の出資割合に応 じて分配されることになっているから,原告らを含む組合員全員が,本件 各組合の事業の成功について利害関係を有していることが明らかである。

(23)

 利益配当契約該当性について

 被告らは,①本件各組合においては,原告ら一般組合員の責任が制限 されていること,②本件各組合が購入する本件各航空機は,本件各業務 執行会社の単独所有に属し,原告ら一般組合員は所有者としての権能を有 しないこと,③原告ら一般組合員は,本件各事業に積極的に参加する意 思を欠き,投資家として経済的利益を獲得することにしか興味がなく,

NBBや本件各業務執行会社側もそのようなものとして扱っていること等 を理由に,本件各組合契約は,民法上の組合契約とは別個の契約類型であ る利益配当契約の性質を有する旨主張する。被告らのこのような主張は,

本件各組合契約が民法上の組合契約の成立要件を欠くとの主張であるの か,利益配当契約であることを推認させる間接事実としての主張であるの か,必ずしも明確ではないものの,以下の検討結果のとおり,どちらであ っても採用することができない。

 判断

 以上の検討結果によれば,本件各組合契約は,民法上の組合契約の成立 要件を充足しており,これとは契約類型の異なる利益配当契約と認めるこ とはできない。

 ⑸ 小   括

 高裁判決は,被控訴人の主張を採用せず,控訴棄却の判決を下してい る。この判決は,後述する平成17年税制改正により,個人については「特 定組合員の不動産所得に係る損益通算等の特例」(租税特別措置法第41条の 4の2,1項)の創設となり,法人については,「民法上の組契約等による 組合事業に係る損失がある場合の課税の特例」(租税特別措置法第67条の12  1項)という個別規定が整備されるという結果となった。

 その結果,個人の場合は,特定の対象となる特定組合員が,特例の対象 となる組合契約から生ずる不動産所得の損失について,これは生じなかっ

(24)

たものとみなされることになった。また,法人の場合,民法組合,匿名組 合等の所定の法人組合員の組合損失額は損金にしないという特例が創設さ れた。

第3章 米国デラウェア州LPSに係る判決

1 裁決(平成18年2月2日)

 ⑴ 事 実 関 係

 本事案は,請求人が平成11年,12年,13年分の確定申告で外国に設立し たリミテッド・パートナーシップLPSを通じての不動産投資による損 失額を申告したが,原処分庁は,請求人に対して利益の配当がなされたと 認定したことにより争いとなったものである。

 ⑵ 法人該当性に関する原処分庁の主張

 原処分庁は,本件LPSの法人該当性について,法人であるとする根拠 について次のように主張している。

 州LPS法に基づき,法人として設立された事業体であり,法主体性 があること。

② 訴訟当事者及び財産登録の当事者などになり得ること。

 その事業実態から,わが国の「私法上の法人」と同様に取り扱うべき である。

 ⑶ 裁決における判断

 裁決における判断は次のとおりである。

 わが国の租税法上「法人」は,私法上の「法人」の概念と同様に「自 然人以外のもので法律上,権利・義務の主体となることのできるもの」

すなわち「権利を有し義務を負う能力を法律上有しているもの」をいう と解されている。

② 州LPS法に準拠する本件LPS契約においては,本件LPSが自らの名

(25)

 で,本件LPSの全財産を所有することとされ,また,本件LPSは,州 LPS法上,取引や訴訟の当事者となることができ,現に本件財産LPS の契約当事者となる等,わが国の法律でいう権利義務の帰属主体である という意味においては,わが国の法律でいう「法人」の要素を備えてい るということができる。

 本件LPS契約においては,本件LPSはその名で所有する財産を「GP

(General Partner)とLP(Limited Partner)のために,又は,それらに よって,各々の資本拠出割合により保有されているとみなす」と明記し て,本件LPSはその名義の財産をパートナーのために保有することを 契約の内容としているのであるから,本件LPSがその名義で財産を所 有しているとしても,それをもってわが国の法人がその名義で自らのた めに財産を所有する場合と同視することはできない。

 請求人が本件LPSから分配ないし配分を受けた本件年分配額及び損 益は,所得税法第24条にいう「法人から受ける利益の配当,剰余金の分 配に係る所得」に当たるということはできず,配当所得には当たらない というべきである。

 本件不動産を賃借人に対して賃貸していたのは本件財産LPSであり,

本件LPSは本件財産LPSから本件財産LPSに係る契約に基づいて分配 額及び損益の分配ないし配分を受け,本件LPSLPである請求人は本 LPSから本件LPS契約に基づいて本件年分配額の分配及び損益の配 分を受けていたものということができることから,請求人が,自ら又は 本件LPSないし本件財産LPSを代理人として,主体的に本件不動産を 賃借人に対して賃貸していたとか,それによる収益の稼得や費用の負担 を行っていたということはできないということになり,本件年分配額は,

雑所得に該当するものというべきである。

 ⑷ 本裁決の特徴

 本裁決の特徴は,前述した米国LLCの法人該当性における判定基準と は異なる解釈をしている点である。すなわち,本件LPSはその名で所有 する財産を「GPGeneral PartnerLPLimited Partnerのために,又は,

それらによって,各々の資本拠出割合により保有されているとみなす」と 明記して,本件LPSはその名義の財産をパートナーのために保有するこ とを契約の内容としていることを指摘して,LPSがその名義で自らのため

(26)

に財産を所有するとはしていない点である。なお,本裁決は,法人該当性 に基づく不動産投資の損失の扱いではなく,当該損失の所得区分により請 求人の訴えは認められない結果となっているが,上記の理由により米 LPSの法人該当性についてはこれを認めている。

 前出のさいたま地方裁判所平成19年5月16日判決において示された,米 LLCが英米法上において法人格を有する団体の要件は,次のとおりで ある。

⒜ 訴訟当事者になること

⒝ その名において財産を取得し処分すること

⒞ その名において契約を締結すること

⒟ 法人印(corporate seal)を使用すること

 また,以下の要件は,「法人該当性基準」という。

① 自らの名で,本件LPSの全財産を所有することができる。

② 取引や訴訟の当事者となることができる。

③ 本件財産LPSの契約当事者となることができる。

 したがって,上記 ⒜ から ⒞ と上記 ① から ③ は同様な要件といえる。

 この「法人該当性基準」の前提には,次のようなものがある。以下に掲 げた事項は,いわゆる「法人借用概念説」といえるものである。

租税法上定義を置いていない用語については,別意に解すべきことが租税 法規の明文又はその趣旨から明らかな場合は別として,それを私法上にお けるのと同じ意義に解すべきところ,わが国の私法上,法人とは「自然人 以外のもので,法律上,権利義務の主体たりうるもの」,すなわち,権利 を有し,義務を負う能力を法律上有しているものをいうと解される。

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