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地方法人課税の安定性と普遍性

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Academic year: 2021

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○須藤 皆さま、本日はお集まりいただきましてありがとうございます。経済学研究科の研究会を始めさせ ていただきます。本日は、関西大学より石田和之教授をお招きし、「地方法人課税の安定性と普遍性」と いうテーマでご報告いただきます。石田先生は、 年に論文「資産保有課税における課税標準の選択:

固定資産税(日本)とレイト(香港)の比較分析の視点」で第 回租税資料館賞を受賞され、また、

年には単著『地方税の安定性』を出版されるなど、租税の経済分析で幅広くご活躍されています。それで は、よろしくお願い致します。

獨協大学大学院経済学研究科研究会

地方法人課税の安定性と普遍性

The Stability and Distribution of Local Corporate Tax Revenue

講師 関西大学商学部商学科 石田 和之 教授

司会 獨協大学大学院経済学研究科主事 須藤 時仁 教授

日時 年 月 日㈬ : 〜 :

場所 獨協大学中央棟 階共同研究室

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ごあいさつ

ただいま過分なご紹介をいただきました石田と申 します。関西大学商学部からやってまいりました。

専門は、こちらにいらっしゃる野村先生と同じく財 政学、その中でも租税論という分野でございます。

また、租税の中でも私自身の興味が地方税でござい ますところに、今日はこのような機会を与えていた だきました。自分自身の頭の中を整理するというこ とも兼ねて、地方法人課税をめぐる議論の現状など お話しさせてもらいたいと思います。

最近の地方税の改正について

「地方法人課税の安定性と普遍性」というタイト ルで今日のお話を進めていくわけですが、ちょうど 現在、来年度の税制改正に向けた議論が、国、政府 で行われており、最も高い関心を集めている、まさ に今もっとも注目を浴びているテーマであろうかと

思います。

先日、総務省の報告書なども公表されたばかりで ございます。まさに議論の最中でして、来年度に向 けた具体的な改正案が決まりそうな時期でこういう お話をしております。 カ月、 カ月後であれば、

既に改正案がわかった後ですから、こうなりました と確定的なことが言えますが、今はそのようなこと の言えない、タイミングとしては最も話をしにくい タイミングかもしれません。

税制改正に向けた議論の渦中ということですから、

世間ではいろいろな議論がにぎやかでございます。

そこで、まずは、どのような議論の様子になってい るのかを少し確認しておきます。そもそも、この税 制改正で地方法人課税の安定性であったり、あるい は普遍性に関わるような議論をしましょうというこ とになったのは、特に今年やりましょうということ の直接的な契機は、「平成 年度与党税制改正大綱」

にあります。

ここでは、「偏在性が小さく税収が安定的な地方 税体系を構築することはますます重要性を増してい る。特に偏在度の高い地方法人課税における税源の 偏在を是正する新たな措置について、消費税率 % 段階において地方法人特別税・譲与税が廃止され法 人事業税に復元されること等も踏まえて検討し、平 成 年度税制改正において結論を得る」となってお

【講演】

地方法人課税の安定性と普遍性

関西大学商学部商学科 石田 和之教授

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ります。ちょうど今、「結論を得る」ための議論が 佳境に入っています。

その結論の方向は、「偏在性を小さく、安定性を 高く」ということですから、おおむねの方向性は既 に決まっているといえます。ただ、具体的な中身は これからでして、関係者がそれぞれに議論していま す。

いろいろの議論の中で一番の中心にいるのが総務 省の「地方法人課税に関する検討会」です。今年度 に入って議論を積み重ねていましたが、ちょうど先 日、報告書をまとめ、大臣に改革案を提案をしたと ころでございます。

そこで提案された内容は、具体的な税収の規模な どは、今後政府、与党で決めてくださいねというこ とで検討会としては示していないわけですが、基本 的な方向性としては、このようなことを提案してお ります。

まず、「地方法人課税における税源の偏在を是正 する新たな措置」として、対象税目を法人事業税と するということを挙げております。具体的には、「法 人事業税(所得割・収入割)の一部を分離して新た な税(国税)を創設」するということです。これは、

既に分離して、国税としてやっているわけでして、

―地方法人特別税ですね―、こちらを、当初の予定 では消費税率 %のタイミングでやめてしまう、そ して事業税に復元するという話だったのですが、や はり復元はしない、恒久的に国税としてやっていこ うということになろうかと思います。

ここで、法人事業税を国税として取り上げるのは、

地方税を減らそう、地方財源を減らそうというので はありません。いったん国が吸収した上で地方団体 の税源として活用していこうということです。そこ

で、それでは、どんな形で地方団体に配分しようか ということになるわけですが、当初は、一つは譲与 税の方式で都道府県に配っていくという案、もう一 つは地方交付税の財源に繰り入れていくという案と いう具合に二つの案がありました。そこからさらに 検討して、結局、譲与税でやっていこうというのが

「検討会」の方針のようでございます。

こんな方向で、つまり新たに「税源の偏在が小さ く、安定的な地方税の体系を目指すんだ」という方 向で総務省の検討会の報告書が出ているわけですが、

これに対して、周囲からは、多少、批判的な意見も あったりします。ここでは、二つばかり紹介してお きたいと思います。

ひとつは、日経新聞の社説が批判的な見解を載せ ています。私は、日経新聞のスタンス、立場がどこ にあるのかよく分からないので、批判しているのだ というふうな形でもって受け止めたのですが、内容 としては、「税収の格差が小さいというのは確かに 望ましい。けれども、なぜ法人 税、地方法人課税 なのですか。地方法人課税に責任を負わせる必要も なければ、法人課税を変更する必要はないのではな いですか」というようにして批判的な見解を述べて います。

本来あるべきやり方はと言えば、社説の後半にな りますが、「法人税収に開きがあるのは企業が東京 などに集中しているためだ。格差をならすなら、企 業の本社機能の地方移転や地方での起業などを後押 しするのが筋だろう」として、ここでは、税制を変 更することによって格差に対応するのではなく、そ もそも企業の立地が東京に集まっているのが原因で あり、そして、その原因への対処として地方創生の 施策をやっているのであれば、なおさら、地方移転

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をきちんと実現させることで対応するべきではない か、そういう見解であろうかと思います。

これは社説ですが、次はもう少し切実な立場から の批判と言いますか、反対意見になろうかと思いま す。

これは「平成 年度東京都税制調査会答申」です。

この 年度は、 年度に出した答申という意味で使 われており、したがって、先ほどの国の税制改正の 際とは年度の使い方がずれています。ですから、こ れは本年度、具体的には先月、東京都が出した反対 意見ということになります。

東京都の意見によりますと、このような感じにな ります。「国が偏在是正の名の下に講じてきた地方 法人課税における国税化措置(譲与税化、交付税化)

は、地方自治体の自主財源である地方税を縮小する ものである。こうした手法は地方税の存在意義その ものを揺るがし、地方自治の根幹を脅かす行為にほ かならず、そのような偏在是正措置を新たに行うべ きではない」。

反対ということがはっきりと打ち出されているか と思います。これは、また後でお話していく中でも 触れていきますが、地方税の議論において税源の偏 在を是正していこうというのは、すなわち実質的に は東京都の税収を減らして、それを東京都以外の地 方団体で使えるようにしていくことになります。ど うしても現実は、そのようなことになってしまいま す。

そういうこともあって、常々、東京都はこの種の 税源偏在の是正という議論には反対し続けてきたわ けですが、またここでも反対しているということに なります。「地方自治の根幹を脅かす」というふう な強い表現まで使って反対しています。

ただ、おそらくですが、政治的な状況を考えると、

ある意味では、現在は、国にしてみれば最もやりや すい状況にあるのではと思います。ご存じのように、

東京都知事さんは与党自民党とけんかをしています。

ですから、東京都は政府与党から守ってもらえない 状況にあるといえます。そうだとすれば、これまで にないぐらいと言いますか、政治的には千載一遇の チャンスといっていいぐらいかもしれないです。東 京都の反対を無視して税制改正ができる、そういう 政治的な環境は、政府にしてみれば、非常にやりや すい状況になっているかと思われます。ですから、

東京都としては不本意ながらかもしれませんが、ニ ュースなどによりますと、都議会の自民党会派に知 事が詫びをするなどといったことになっています。

この辺りまでが、今の状況、つまり地方法人課税 や地方税改正の周辺の状況を確認をしたということ になります。

それで、そもそもということですが、この地方税 の改革といいますか、改正の基本的な考え方。これ は地方分権一括法以降と言いますか、地方分権の推 進という中で、どういう方向で改正を進めてきてい るのかということですが、基本的な考え方として、

税源の偏在が小さく、税収の安定性を備えた地方税 体系を志向していくというのが 年以降一貫した 方向性であろうかと思います。

ですから、この表現ですね、「税源の偏在が小さ く、税収の安定性を備えた」という表現が至る所に 出てくるということになります。与党の税調(税制 調査会)の答申にも出てきますし、政府の税調の答 申にも出てきます。その他にも、いろんな、税制改 正の解説であったり、方針であったり、つまり総務 省からも財務省からもということになるわけですが、

この「税源の偏在が小さく、税収の安定性を備えた」

という方向をずっと基本的な考え方として掲げて、

地方税改革を行い、毎年の地方税改正を行ってきた 結果、もう 年になろうとしているということでご ざいます。

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この基本的な考え方と既存の地方税の税目の関係 について、やや断定的ですが、細かなことは割り切 って、両者の関係をまとめたのが、この表 「地方 基幹税の特徴」になります。

いろんな地方税の中で、税収の規模がそれなりに 大きくて、都道府県や市町村の税として存在感があ るものにここに挙げてある税があります。個人住民 税、法人住民税、法人事業税、地方消費税、固定資 産税、だいたいこういう税が地方税の中では、税収 の調達確保という意味で中心的な役割を果たしてお ります。もちろん、それ以外にも地方税はたくさん あるのですが、こういう税で 割〜 割程度の地方 税収になっております。

これらの税は、それぞれ、税収の変化の仕方とか、

地域的な税収の所在の状況など、それぞれに特徴が あって、それらが伝統的にどのように認識されてき たかを表 ではマル・バツで表しています。

例えば個人住民税ですと、現在のように比例税率 になって以降のことですが、税源の偏在は比較的少 ないとされております。これは、かつての累進的な 税率構造であったときと比べて、 %比例税率化を するときに、偏在も少なくなるんですよというふう な触れ込みがあり、このような趣旨も踏まえた比例 税率化であったという経緯があります。

その次の二つは、今日のテーマである、法人住民 税と事業税です。これらは、かねてから、税源の偏 在については駄目です、偏在が大きいんですと言わ れていて、税収の安定性についても、不安定ですよ、

変化が大きいんですよと言われてきました。ですか ら、この税源の偏在といいますか、税収の普遍性、

そして税収の安定性という つの尺度、観点から評 価したときには、この法人課税というのは、あまり 成績がよろしくない、望ましい性質を兼ね備えてい

るわけではない、という評価をされてきたわけです。

このような評価は、今に始まったわけではなく、昔 からそのような評価だったわけです。

ただ一方で、いい面を見たら、景気が良くなった ときにそれなりに税収が増えていくというところで して、とくに高度経済成長期であったり景気のいい とき、経済成長をしているときには、それなりに税 収が増えるという意味で重宝されると言いますか、

期待されてきた時代もありました。

その次が地方消費税ですが、こちらは「清算後」

と書いてあります。税収の普遍性であったり、もし くは税源の偏在という意味では、この「清算後」と いうのが重要でして、地方消費税は都道府県の収入 になるわけですが、一定の基準で都道府県に配分さ れることになっています。それぞれの都道府県で発 生した地方消費税がそのままそれぞれの収入になる のではなく、消費に関する基準であったり、人口に 関する基準で配分されるわけです。これを地方消費 税の仕組みの中では清算制度と呼んでおりますが、

この「清算」をすることによって、結果として税収 が普遍的である、つまり地域間の格差が少ない税に なっているということになります。

最後に、固定資産税です。これは、今日は全く触 れることはないのですが、一応、表 には挙げてお ります。税源の偏在が少なくて税収が安定的だとい うふうにされております。

それでは、なぜ偏在是正なのか、なぜ今の段階で これが注目されているんだろうというのを、ここで、

改めて確認をしてみたいのですが、地方分権という ことを考えれば、何も偏在是正だけではなく、例え ば、地方団体の自主財源の充実であったりとか、税 収の安定性を改善することであったりとか、いろん

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な問題があり、他にも大切なことはあるはずではな いかと思います。とくに当初の頃は、国と地方の税 源配分が問題だということで、両者の割合を 対 の比率まで持っていきましょうという議論があった りしました。現状、国と地方は 対 程度かなと思 います。いっとき、 .対 .ぐらいまで近づいたか なとは思うのですが、その後、やはり 対 は難し く、そこへ向かっていくという方向には今のところ なっていないと思います。

しかし、それでもなぜ関心が税源配分より、ある いは税収の安定よりも偏在是正なのかということで すが、これは私なりの理解ということで説明させて いただきます。

結局、たとえ地方税を充実させる、例えば地方消 費税の税率を引き上げる、住民税であれば所得割の 税率を引き上げる、何でもいいのですが、何をやっ ても東京一極集中という問題がどうしても顕在化し まうのかなと思います。これは、もしかしたら 年当初、地方分権推進の改革を始めた頃にはそこま で想定していなかったかもしれませんが、その頃に 思っていた以上に日本の経済や社会は一極集中であ るということです。

地方税源の充実に反対する地方団体はおそらくあ りません。東京都を含めて、地方税のウェイトを増 やしましょうというのには、誰も反対はしないと思 います。しかし、これが進まないのです。場合によ っては、地方税のウェイトを増やすことによって、

国でも交付税が減ることになり、国と地方の全体と して、税源を効率的に利用できるということになる かもしれません。それでも、地方税のウェイトを増 やそうということにはなりません。なぜでしょうか。

ネックは東京都なのかなと思います。

これはある文献に出ていた言葉で、その文献がど れだったか思い出せなくて出所の注釈を配布資料に 入れられていないのですが、これはいけないことで すが、東京都は「制度的不交付団体」であるという 言い方があります。これは、私は初めてその文献で そんな言葉があるのかと思ったのですが、なかなか 分かり易くて、そして実態をうまく表現していると 思います。つまり、地方交付税制度ができて以来、

確かに、ずっと東京都は不交付団体です。おそらく 今後もずっと東京都は不交付団体の予定でして、た

ぶん交付団体になるということは将来にもないだろ うと思います。

そういうことを前提にしますと、東京都は税収が 増えた減ったというときに、それらが地方交付税で 調整されるということにならず、東京都にとってみ れば、そのまま収入が増えたり減ったりすることに なります。他の言い方をすると、これは東京都が嫌 がる言い方ですが、税収が増えるときには、超過財 源が増えているということになります。それは、も し交付税をもらっている団体であれば、税収が増え た分だけ交付税が減ってキャンセルされるわけです が、東京都の場合にはそのようなキャンセルが制度 的に生じないということになります。

そうしますと、結局、どの税であっても、何をし ても、地方税のウェイトを増やすことは東京一極集 中が進むということになります。おそらく、地方消 費税でさえ、東京にこんなに集中してしまうのかと いうことになる心配があります。そうすると、今後 に向けたことを考えるときには、まずは偏在是正を 先にやっておかないとならない、そうしないと次に 何をやるにしても東京に収入が集まることがネック になってしまい、地方財政改革が先へ進めなくなる。

そういう懸念もあって、今は偏在是正に手を付けて おこうということかなと思います。

ただ、先ほど紹介しましたように、このような何 をしても東京集中という認識に対しては、少なくと も東京都は、それは間違った認識であるとしていま す。東京都自身は、「東京は財源がそんなに余って いるわけでもなければ、むしろ首都機能のための財 源としては足りないくらいだ」ということを常々言 っています。

地方法人課税の改正で実施されてきた主なものを

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確認しておくと、こんなものがあります。平成 年 度の所は予定となっておりますが、これは消費税率 を %に引き上げる段階で実施することが予定され ていたものです。ですから、既に延期されていて、

今のところ平成 年度と来年秋の予定になります。

この中で、「地方法人特別税・譲与税を廃止した 上で法人事業税へ復元する」というのがありますが、

この予定は変更されて、新たに国税として云々、と いうのが先ほどの総務省の検討会から出された提案 になります。

最近は地方法人特別税とか地方法人税とかいろい ろと紛らわしものが出てきています。どうも最近の 地方法人課税の改正は、少し混乱気味で分かりにく いなと思うものですから、その分かりにくさを解き ほぐすためにということで、 つの視点から整理し てみたいと思います。 つの視点は、最近の地方法 人課税のきっかけといえるものでして、この つの きっかけが合流して改正が積み重なり、その結果、

地方法人課税が分かりにくくなっているのかなと思 ったところです。

つのうちの つ目は、地方税ではなく、法人税 の改革です。そもそも法人税改革というのがあって、

法人課税の実効税率を引き下げていきましょうとい う議論がありました。これは法人実効税率を %台 まで引き下げていこうという議論です。そのときに、

法人税の税率だけではなく、事業税の税率にも実効 税率の引き下げに貢献してもらおうということにな ったのが、まずひとつあろうかと思います。このよ うな実効税率引下げの議論の背景は、国際的な租税 競争であったり、企業向けの経済対策であったりと いうところかなと思います。

つ目ですが、こちらは地方分権改革の一環とい

うふうに捉えてよいかもしれません。応益性という 地方税の課税の趣旨を踏まえて、法人事業税に外形 標準課税を導入しましょう、そして外形標準課税を 拡大しましょうという議論があります。これは別の 言い方をすると、税負担の公平に関わる視点といっ てもいいかもしれません。外形標準課税を増やして いきましょうというのは、つまり事業税で言います と所得割の部分、つまり所得課税の部分を減らして いきましょうということになります。そして、所得 割を減らして、その分を外形標準課税に置き換えて いきましょうということでございます。

つ目が、これは今日のテーマになりますが、偏 在是正ということでして、安定的に地方税収を確保 していくとして、まずはその前提として、税源の偏 在を是正しましょうという議論になります。地方税 で偏在是正となれば、やはり法人課税ということで して、ひとつは法人事業税の一部を国税化して地方 法人特別税としていく、そして譲与税の方式を使っ て、この財源を都道府県に譲与する。二つ目が、今 度はこちらは法人住民税でして、住民税の法人税割 の一部をここでも国税化して地方法人税にする。そ して、これを交付税の原資として繰り入れていく。

現在の状況は、これらの結果です。それぞれに背 景であったり、きっかけは異なるのですが、いずれ も地方税の中で法人所得課税を減らしていきましょ うというところに行き着くような流れになったとい うことかと思います。このような状況が、ここ数年 続いており、そして改正が積み重なって、その結果、

分かりにくくなっている。一体、何がどういうこと になっているか。さらには、消費税との絡みもあり、

消費税の税率引き上げのタイミングに合わせて改正 しましょうということになったりして、しかも消費 税の税率引き上げが延期される。このような一筋縄 ではいかない状況の中で税制改正が行われている。

今は、ちょうどその過渡期といいますか、落ち着く までの間は今少し混乱が続いているという時期なの かと思います。

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法人住民税について

ここからは、お手元の資料をご覧になっていただ きますと、ざっと地方法人課税の過去の沿革をまと めています。これは私自身、普段と言いますか、税 制を理解するときに自分で心がけているところもあ るのですが、税制は人が作った仕組みでして、そこ には全て理由があるはずだと思っております。です から、どんなに古い仕組みであれ、必ず制度という ものにはそこに理由があるはずだと考えています。

税制は風雨のような自然現象ではないのでして、ど うしてこうなっているんだろうということがあった としても、創ったときには必ず理由があるはずです。

その理由が納得できるかどうかは別にして、場合に よっては、取り敢えずえいやっと創るようなことも あるかもしれません。しかし、そういうえいやも含 めて、必ず理由があるだろうと思います。

そうすると、制度を分析したり理解するときには、

そもそもなぜ政府はそんなことをしたのかというの を確認しておくというのが、まずは大切かなと思い すので、地方法人課税の今のこういう議論をしてい るときにも、なぜこんなことになっているのか、ど ういう経緯で今に至ったのか、ということをざっと でも確認しておきたいと思い、年表の形式で法人税 割の税率の沿革をまとめています。

この資料は、今日ここで全てをお話しするという のではなく、参考資料としてみなさんに紹介させて いただいています。

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まず、法人住民税、とくに法人税割の税率の沿革 です。過去の経緯を振り返ると、基本的には、法人 税割の都道府県と市町村を合わせた税率として、別 の言い方をすれば、合わせた税負担としてこの程度 で行きましょうねというようにして、税率を設定し てきました。都道府県は都道府県、市町村は市町村 でそれぞれに何%という議論をするのではなく、住 民税として、都道府県、市町村を合わせて法人税割 としてこれだけの負担を求めましょうという感じで す。そして、それを都道府県と市町村、それぞれ税 収としてこのように按分をしましょう、そんなやり 方で、これまで、税率を設定してきたということに なります。

そのときに、制度設計の基本的なスタンスとして は、税収を安定的に確保したいということです。と くに減らしたくないということです。これはどうい うことかと言いますと、法人税割という名が表すよ うに、課税ベースが法人税額となりますので、例え ば法人税で減税をすると、それだけで自動的に課税 ベースが減ってしまう。そうすると、地方税、法人 税割にしてみたら、そのままでいると税収が減って しまう。例えば、法人税の税率を下げるのであれば、

法人税割の税収を維持するためには、それを調整す る分だけ法人税割の税率を引き上げておきたい、と いうことでして、できるだけ減らさないようにやっ てきたということでございます。

ただ実際には、それでは法人税の税率が上がった ときには、その分だけ税率を下げてもいいではない かと思うのですが、それはやらないで、結局、増え るほうはそのまま受け入れるけれども、減るときに は抵抗するというやり方をやってきたというところ があります。

法人税率の税率の変更に合わせて法人税割も調整

してきた、というのが過去の傾向ということになり ます。おおむねこんなところでございます。

そんなところですが、そこにこの度、平成 年度 の改正によって地方法人税というものが創設された ということになります。つまり一部国税化されたと いうことです。ですから、これまではどちらかとい うと法人税割といいますか、法人住民税について言 えば、税収を安定的に確保してこようというところ でやってきたというのはあっても、税源の偏在への 対応というところでいうと、そんなに正面からやっ てきたのはあまりなかったのかなと思います。

もちろん格差があるとは昔から認識されていて、

そういうことは言われてはいたのですが、法人課税 だとはいえ、法人税割もやはり住民税である。だか らこそ分割基準は従業者数を基準にしているという ようなところもあって、そんなに分割基準をこれ以 上調整しようという議論にはならずに、それなりに その地域地域で負担分任的に、応益的に費用負担し ていることの方が大切ですね、というようにしてき たわけです。ただ、税収が減らないようには配慮す る、という調整を中心にしてもっぱらやってきたの かなと思います。

それが、平成 年度の抜本税制改革法、いわゆる 税と社会保障の一体改革に関連する制度ですが、こ こで税源の偏在へ対応していきましょうということ になり、初めて、こんなふうなことになったわけで す。

そのとき、ここでの対処のやり方は、交付税に入 れていきましょうということになります。これは、

偏在是正の方法として、譲与税のやり方と交付税の やり方が先ほどから出てくるわけですが、ひとつ東 京都との関連でいうと、交付税に入れると東京には 入ってこないということになります。譲与税であれ ば、譲与基準によっては、一応、東京都にも何がし か返ってくることにはなります。

また、この議論のときには、地方消費税とのいわ ゆる税源交換みたいな話もあったりもしました。

平成 年度のところは、来年度にはこういうふう になる予定ということでして、地方法人税の割合を 今の .%相当分というところから増やして行こう という予定になっているということです。

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法人事業税について

次は、法人事業税です。地方法人課税の改革と言 いますか、とくに地方税での税源の偏在への対応は、

もっぱら事業税で議論してきたかなと思います。事 業税と法人住民税との違いと言いますと、ともに都 道府県の収入になりますが、事業税は道府県税であ り、市町村にはない、しかし住民税は都道府県、市 町村の両方で課税していることになります。

こちらも年表で過去の経緯を紹介してあります。

これも資料としてご覧になっていただければいいか なと思います。

まず、税率変更の沿革です。法人事業税の税率は、

基本的には、基本税率があって、そこに中小企業へ の配慮のために軽減税率を使うという仕組みになり ます。これまでの経緯を大雑把に言えば、中小企業 への配慮のための軽減税率の拡充をずっとやってき ました。基本水準を変更して引き下げたのは、平成

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ここには院生さんがいらっしゃるということです から、こういう資料が役に立つこともあるかなと思 って、作りました。

税率の変更の経緯に加えて、ここでは、もうひと つ、分割基準の沿革もあります。税源の偏在との関 係でいうと、実は、税率よりも分割基準のほうが重 要です。この分割基準は法人住民税にもあるのです が、事業税の方がいろいろな議論が行われてきたと いう経緯があります。

ここで、そもそも、この分割というのはどういう ことなのかというと、結局、法人課税を所得課税、

利潤課税でやると、本店、本社のある所に収入が行 ってしまうということになります。でも、事業税は 地方税ですし、しかも応益負担を根拠にしています よねということになります。そうだすると、例えば、

会計の計算上は利益をわが町で計上するわけではな いけれども、やはり利益の獲得にわが町も貢献はし ていますよね、行政サービスとしてはわが町の行政

(12)

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事業税は、課税の趣旨として事業活動に着目して いるとされています。事業活動をやっていますね、

そこに着目して課税をするのであれば、事業活動の 規模に応じた税収をもらう権利がありますよね、そ れぞれの地域に事業活動の規模に応じて税収が帰属 するはずですね、ということになり、それでは事業 活動をなるだけ反映したかたちで税収を分割しまし ょうということになります。

このような考え方で、事業を製造業であったり、

非製造業であったりと分けながら、またその他にも、

ちょっと特殊な、大規模な固定資産を必要とするよ うな業種にあっては、また別枠を設けたりというこ とで、でも基本的な趣旨としては、事業活動がそれ ぞれの地域でどれだけ行われているかというのを反 映して分割基準を決めているということになります。

ここでは、過去の経緯の中から、興味深い議論と して、 つを紹介します。

ひとつが事業税からです。事業税は税率の改正を 何度もやってきたわけですが、この標準税率の変更 そのものより、制限税率を設けた時になかなか興味 深い議論がありました。というのも、事業税は標準 税率で定められていますが、通常、地方税の世界で すと、標準税率のあるところには制限税率があると いうのが地方税の標準的な制度設計でした。現在は、

地方分権ということもあって、制限税率そのものが どんどんなくなってきているのですが、従来は、標 準税率であれば制限税率がある、という組み合わせ

が多かったわけです。ただ、事業税には制限税率が なかった、というところから話が始まります。

それが、昭和 年に制限税率が新たに設けたられ たわけです。その際の議論がこちらで紹介している 議論になります。昭和 年に東京都が超過課税をや ったわけですが、それへの対応として制限税率を設 けたということになります。これは東京都以外の地 方団体から反発があって、そんなことをしてくれる な、つまり東京都の超過課税に対して批判があった、

反対があったということです。でも、東京都として は、自分たちのための収入確保ということで超過課 税をやったわけです。

このスライドには示していませんが、このとき、

東京都は %から %に税率を引き上げています。

制限税率として、ここでは .倍と書いてあります。

この .倍というのは、制限税率の相場感としては

.倍なのですが、このときは、とくにということ で .倍にしたということになります。

.倍というのはどういうことかというと、 % の税率が制限税率を超える水準になってしまうとい う意味になります。そのため、この後、東京都は超 過課税を引き下げなければいけなくなったというこ とになります。そのようなこともあって、 .倍で はなくあえて .倍にしたことに対して、「東京都に 対する報復」というふうな言葉が、とくに東京都の 周辺から出てきたというのが当時の状況です。この スライドは、しかし、そんなことはないんです、と いうふうな話でございます。

もうひとつは、法人事業税の分割基準についてで す。分割基準は過去に何度も見直しをしてきている わけですが、その度にしばしばあったのが、分割基 準の変更は東京都いじめではないのですかという反

(13)

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発とそれに対する違いますよという反論です。事業 税ですから、本来、その事業活動の規模に応じて税 収が地域に帰属しているはずです。そうすると、経 済状況、社会状況、企業経営の状況が変わると、そ の経済環境の変化に合わせて分割基準を見直してい るというのが分割基準見直しの表向きの趣旨でござ います。

それぞれの地域における事業の規模を適切に反映 できるような分割基準を、その都度、設けているだ けですよということですが、東京都にしてみれば、

その度にうちの税収は減る、大都市いじめではない ですかという議論が分割基準見直しの度にありまし た。最後の分割基準見直しは平成 年ですが、この ときも、やはり東京都は、「実質は、税収が集中す る東京都などに対する財源調整の手段として用いた のは明白だ」と、批判をしているということになり ます。

かつては、確かに、税源偏在への対応というとき に、法人課税の世界では分割基準を調整することを やってきました。もちろん、表向きは違います。偏 在への対応ではなく、経済環境が変わったので変更 するのだということです。これは、どちらが本音か 建前かよく分からない、そこは追及のしようがない わけですが、ただ、それでも分割基準で税源偏在に 対応してきたという面はある程度は否定できないの かと思います。

まとめ(地方法人課税改革への視点)

ところが、ここにきて、税源偏在への対応が新た な段階に至ったと言えるわけでございます。

どういうことかと言えば、地方税原則で伝統的に 認識していたことが変わってきたかなということで す。これまでの通説的な地方税原則の理解では、安

定性と普遍性、もしくは税源に偏在がないというの は両立すると言われていました。つまり、安定性を 高めることは、同時に税源の偏在も解消されるし、

税収が普遍的にもなる、というような理解が標準的 な理解でありました。

ところが、そうでもないんだというような状況に なってしまったというのが現状であろうかと思いま す。つまり、安定性を高めるような、例えば消費税 のウェイトを高めていきます、地方消費税を増やし ますと言っても、必ずしもそれによって普遍性が高 まるかといえばそうでもない。むしろ、そうではな くて格差が広がってしまうということが起こってき たということかと思います。

ですから、素朴に安定性と普遍性が両立するんだ というわけにはいかなくなった。安定性を高めるよ うな改正をしましょうというときにも、では税収の 格差はどうなりますかということに配慮をしなけれ ばいけないというところが、これまでと変わってし まった状況かと思います。

そのとき、格差、格差と言いますが、格差の捉え 方にはいろいろあるかと思います。総務省などが出 してくる格差のデータでは、基本的に、住民一人当 たりの税収額を都道府県間で比較して、その最大と 最小によって格差をみるというのがもっともよく利 用されるやり方です。そのときに、最大と最小とい うことになると、最大が東京都になり、最小は税目 によっていろいろということになりますが、法人課 税の税目でいうと奈良県が最小になっていることが 多かったりします。

ですから、結局、東京と、最も一人当たりの税収 が少ないその他の県との比較によって、最大と最小 を比較するというところに限界はあるのですが、そ

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