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外国人留学生の進学先選択に影響を与える要因

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Academic year: 2021

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研究論文

外国人留学生の進学先選択に影響を与える要因

福元健志1,Feng Shuo Chang2

(西九州大学短期大学部 地域生活支援学科1,広東石油化工学院 法学部2

(令和 3 年 3 月 2 日受理)

(Accepted March 2, 2021)

Abstract

Fukumoto T

AKESHI1

, Feng Shuo Chang

2

( Nishikyushu University Junior College, Department of Local Life Support

1

Guangdong University of Petrochemical Technology, Department of Law

2

Factors Influencing International Student Choice of Study

Key words: 留学生

進路選択

(2)

1. はじめに

世界規模の留学生の国際移動が見られるようになった 昨今、消費者としての留学生の動きを把握することが先 進国における人材獲得競争の中でますます重要になって いる。その主な要因として、国内の若年人口の減少、国 際貢献としての教育の提供、高度人材の卵の育成などが 挙げられる。これらの要因の中でもとりわけ高度人材の 卵として留学生を受け入れることは大学だけでなく地域 社会全体にかかわることとして理解されるようになって いる。なぜなら、留学生の場合、受入れ国に滞在する間 にその国の文化や習慣を体験したりアルバイトをしたり することによって、卒業後にその国で就職したあとも文 化や言語的障壁を感じることが少なく、自然と社会統合 できると考えられているからである。

このことを背景にして、留学生の獲得競争は世界中 の高等教育機関で行われている。例えば、Binsardi and Ekwulugo(2003)によると英国においては留学生の受 入れと国際教育は国策として理解され、留学生の獲得が 戦略的に議論されている。米国や豪州などの国において も留学生と高等教育機関を市場と捉え、留学生の受入れ に積極的に努めている。これら英語圏の大学における留 学生の獲得は教育機関の経営維持のためにも欠かせない 要素となっており、留学生獲得に関する研究の蓄積は少 なくない。そして、近年ではアジアにおける経済成長と 若年層の高学歴化が新たな関心分野となり、留学生を送 出する地域でありながらも、自国の経済発展のための高 等教育レベルの向上を実現する方策として海外からの留 学生を獲得するようになっている。日本においてはこの ような世界状況の中で、教育の質の向上を図りつつ、上 記の計画を実現してグローバル社会を生き抜く人材の育 成に取り組む必要がある。また、留学生の受入れは高等 教育機関のみならず、地方自治体にとっても人口減少問 題が叫ばれる現況において多様性の象徴としての活躍が 期待されている。

これらのことから、留学生にかかわる戦略立案者は留 学生の受入れに関して、留学生がどのように留学先を選 んでいるか、またどのような目的意識をもって来日して いるのかを理解する必要がある。そこで本稿は、留学先 を選択するにあたって重視される要因は何か、また、そ れらの要因に国籍による違いはあるのかという点を明ら かにすることを目的とする。まず、先行研究によって留 学生の国際移動理論と諸外国における留学生調査を用い て比較項目や検討事項を整理する。そして、調査方法と 分析方法を示し、課題と検討事項をまとめる。

2. 先行研究

国境を越えて教育を受ける人口が増えることによって 起こる社会の変化や経済効果が研究対象として注目され る一方で留学生の意思決定に関する先行研究はさほど多 くない。この分野における先行研究を調査したところ、

大別して留学生の送出国と受入れ国の push-pull 要因や 経済学的観点などマクロ要因を分析するものと、留学生 への量的・質的調査を通じてミクロ的に実証する研究が 行われている。また、留学生個人の push-pull 要因を探 索する研究においては、留学する「国」の選択要因に関 する研究と「地域・大学」の選択要因に関する研究に分 けることができる。

一般的に push-pull 理論は移民の送出国における push 要因(紛争、悪政等)と受入れ国における pull 要因(経 済成長、生活環境、教育レベル等)をもとに移民の国家 間移動を説明したものである。国境を越えた移動はよい 教育を受けるという目的があっても国家間の関係によっ てはビザの問題や生活環境・文化風習の違いなど、国家 間の移動を自由または不自由にする要因が存在する。こ こでは、その要因を社会経済学的に検証したものを紹介 する。

2-1 国家間の push-pull 要因に関する研究

 Rosenzweig(2006)は人的資本の観点から学生の 国際移動を2つの理論によって説明した。まず、母国 の教育設備が十分ではないために留学するという理論

(school-constrained model)がある。この場合、母国と 受入れ国の教育レベルが同等であっても教育設備の格 差によって獲得する人的資本にも差が生じることにな る。もう一つの理論は留学後に受け入れ国に留まり、母 国よりも多い賃金を得ることを目的として留学するもの

(migration model)である。これらの理論が説明するこ とは、母国の教育レベルの向上によって母国で獲得でき る人的資本が多くなれば、留学する人口は減少するが、

受入れ国の留学生人口も流出することである。一方、李

(2016)は日本における中国人留学生の意思決定につい て、日中間の時代的背景を基に push-pull 要因を説明し た。

これらの研究から言えることは、留学生の送出国と受 入れ国の push-pull 要因は時代背景や経済状況によって 変化し、留学生人口に影響を与えるということである。

これらの要因は留学生を高度人材の卵あるいは市場とし て捉える際には最も検証されるべき要件である。そし て、国家間の push-pull 要因と個人の意思決定プロセス にも push 要因と pull 要因が存在するため、それらとと もに分析する必要がある。Cubillo et al.(2006)は“留学”

を留学生の購買意欲(purchase intention)の観点から

(3)

捉え、意思決定に影響を与える要因として、受入れ国へ のイメージ、個人的理由、教育機関へのイメージ、プロ グラムへの評価があるとし、これらの要因を基に実証研 究する必要性を説いている。

2-2 個人の push-pull 要因に関する研究

留学先を決めるにあたってまず検討することは、自分 の専門分野をどの国で勉強したいかということである。

国を選択するにあたっては前項で述べたように国家間の 関係によるビザ発給の容易さなどの要因が存在するが、

それがない場合には、個人が勉強する環境を選ぶことに なる。そこで、個人の意思決定プロセスを把握し、各受 入れ国や教育機関が適切な対策をとることで留学生の受 入れ戦略を地域社会の活性化することにつなげることが 可能となる。

Mazzarol and Hosie(1996)が豪州で行った調査によ ると、留学生が豪州を選んだ理由として、「出身国から の近さ(53%)」が最も重要な要因として挙げられてい る。次いで、 「気候(36%)」、 「よりよい教育機会(34%)」

が大きな要因となっている。Mazzarol and Soutar(2002)

は台湾、インド、中国、インドネシアの4か国の留学予 定者への調査によって留学先となる国の選択時に意識す る要因の重要度を分析した。27 項目に及ぶホスト国選 択の要因は回答者の国籍によって大きくことなる。例え ば、「友人や親戚の友人・親戚のすすめを重視するか」

については中国人:52%、インド人:60%、インドネシ ア人:80%、台湾人:67%、となり、「犯罪が少ない環境」

については中国人:65%、インド人:46%、インドネシ ア人:85%、台湾人:81% であった。

この結果から、留学先の選択要因について、留学生の 出身国を分けて分析することの重要性を理解することが 大学のマーケティング戦略に欠かすことができないこと がうかがえる。同様の研究を Shanka et al.(2005)は対 応分析を用いて検証した。彼らは豪州の留学生の留学地 選択要因を分析し、出身国によって留学地を選択する際 に重視する点が違うことを指摘した。例えば、シンガポー ル人学生が豪州(Perth)に留学するにあたって重視し た点が母国からの近さや教育の質・豊富さであったのに 対して、マレーシア人学生は安全さと教育の質を重視し ていた。この結果においても、留学先を選ぶ際のポイン トは留学生の出身国によって異なることを理解したうえ で高等教育機関のマーケティングをするべきであること が示唆される。

一方、Glover(2011)は豪州の留学生を対象に、豪州 を選んだ理由と大学(University of Queensland)+地 域(Brisbane)を選択した理由についてそれぞれ尋ねた ところ、豪州を選んだ理由については、「卒業後の仕事 の機会」(mean=3.71)、「安全」(mean=3.70)、「勉強に

よい環境」(mean=3.60)の順に高く、大学と地域を選 んだ理由については、「大学のランキングと勉強の環境」

(mean=3.44)、「気候」(mean=3.31)、「ブリスベンのラ イフスタイル」(mean=3.19)となった。

Nicholls(2018)の調査では留学先として米国を選 んだ際とミシガン州を選んだ際の二つについてそれぞ れ質問している。「友人や家族・親戚の影響」につい ては、「米国選択時」45.9%: まったく重視していない、

21.5% : 多少重視した(mean=2.06)、「ミシガン州選択 時」62.4%: まったく重視していない、16.7%: 多少重視し た(mean=1.74)であった。彼らの調査によって留学生 は大学の州や立地よりも教育の質や大学ランキングを重 視していること、また、留学先を選択する際に友人や家 族・親戚の影響が小さかったことを指摘した。そして、

この研究においても中国人留学生とその他の国出身留学 生、男性と女性の間でコスト意識や重視するポイントの 違いがあることが指摘された。

これらのように、留学先の選択に関する研究のほとん どは英語圏で実施されており、出身国の違いによる個人 の push-pull 要因を探る研究が蓄積されている。しかし ながら、国際的な共通言語とは言えない日本語を使用し て勉強・生活することが求められる日本留学においては、

留学地の選択を検証するにあたり、英語圏で実施された 調査と共通しない点が多々あると考えられる。日本にお ける留学生の意思決定に関する研究は留学先を選択する 際の要因よりも卒業後の進路に注目したものが多い

。 佐藤(2011)は留学生の日本への留学動機を出身地域や 留学期間、課程別に分析し、総合評価との比較を行って いる。しかし、調査対象者は日本に来ている短期留学生 であり、調査の目的は日本短期留学のニーズと課題を把 握するものであった。

これらの先行研究の結果から推測されることは、留学 生が留学先を選択する際に重視する点は留学生の国籍や レベル(学部または大学院)などの属性によって異なる ことと、どの国に留学するかによって判断基準が異なる ことである。これらの英語圏で行われた研究と日本での 調査の結果に違いがあるのかを検討した事例は見られな い。よって、以下の調査によって本稿では日本における 留学生の進路選択における要因を分析する。

3. 調査方法

本調査はオンライン調査と質問調査票を配布し直接記

入してもらう二つの方法で、2018 年 8 月から 2018 年 12

月まで実施した。本調査においては日本国内の大学、専

門学校、日本語学校に所属している留学生を対象者とし

て設定した(交換留学や研修等の1年以内の短期留学生

は対象外とした)。これらの日本で勉強している留学生

(4)

の中には日本に来て間もない人や、英語で履修できる コースに属している人などがおり、日本語の調査票に答 えることに不自由を感じる人がいることを考慮し、日本 語以外の言語の調査票を作成した。留学生数が最も多い 中国人と2番目に多いベトナム人の回答を比較するた め、中国語、ベトナム語、英語の調査票を用意した。ア ンケート調査項目は先行研究

に基づき作成した。留学 地選択の際に重視した要因について5件法で尋ねた。調 査で得られたデータは SPSS(ver.19)を使って分析した。

4. 調査方法

4-1 回答者の属性

表1が示すように、回答者は男性と女性の比率は男 性 99 名(55.3%)、女性 80 名(44.7%)であった。年 齢分布は 20 歳以下が 16 名(8.9%)、21 ~ 24 歳が 65 名

(36.3%)、25 ~ 29 歳 が 56 名(31.3%)、30 歳 以 上 が 42 名(23.5%)となった。過半数の回答者はベトナム人留 学生(29.6%)と中国人留学生(31.8%)であり、この二 か国以外の国(韓国・ネパール・インドネシア・台湾等)

出身の留学生は 69 名 (38.5%)であった。日本学生支援 機構(2018)における留学生の比率によると中国人留学 生 38.4%(114,950 名)、ベトナム人留学生 24.2%(72,354 名)、その他 37.4%(111,676 名)であり、中国人とベト ナム人の比率の母数との差はさほどないが、その他の国 出身学生の構成は母集団とは大きな差があった。(表1)

4-1 留学先を選ぶ際重視した点について

表2は留学先を選ぶうえで重視した点について示した

ものである。もっとも点数が高い項目は、「専門分野を 深く学べる(mean: 4.35)」であり、次点は「大学のレベル・

ランキング(mean: 4.22)」であった。これらのような 大学の教育環境が重要視される一方で「家族・友人のす すめ(mean: 3.69)」や「家族・友人が同じ町に住んで いる(mean: 3.07)」といったネットワークに関する項 目の点数は低く、留学先の選択に与える影響が少ないこ とが窺える。「留学エージェントのすすめ(mean: 2.63)」

については唯一平均得点が 3.0 を下回る結果となった。

他の要因と比べて留学地選択の際にエージェントを頼る ことが一般化していないと考えられる。(表2)

次に属性ごとに見た留学地選択時に重視した点につい て以下に示す。国籍、所属機関を比較対象として設定し、

分散分析を行った結果、表3が示すとおり、中国出身・

ベトナム出身・その他国出身の留学生の留学先選択には 3つの項目で有意差が見られた。中国人留学生はその他 の国出身の留学生よりも留学先を選択する際に、「⑧大 学・学校のある町の生活費が安い(F(2,176)=3.468, p

< .05)」や「⑫大学・学校の寮に住むことができる(F

(2,176)=4.864, p < .05)」、「⑬大学・学校の学生数が多 い(F(2,175)=3.467, p < .05)」の項目で平均得点が有 意に低く、考慮する点が少ない。しかし、その他の項目 では有意差のある項目はほとんど見られず、国籍による 留学先の選択には大きな違いが見られないことが明らか となった。(表3)

性  別 男性:55.3%(99 名)、女性 44.7%(80 名)

年  齢 ~ 20 歳:8.9%(16 名)、21 ~ 24 歳:36.3%(65 名)、25 ~ 30 歳 31.3%(56 名)、

31 歳~ 23.5%(42 名)

滞在期間 1 年未満:22.9%(41 名)、1 ~ 2 年未満:20.7%(37 名)、2 ~ 3 年未満:22.3%(40 名)、

3 ~ 4 年未満:15.6%(28 名)、4 ~ 5 年未満:7.3%(13 名)、5 年以上:11.2%(20 名)

出 身 国 中国:29.6%(53 名)、ベトナム:31.8%(57 名)、その他:38.5%(69 名)

所属機関 大学院:49.2%(88 名)、大学 :34.6%(62 名)、短期大学等 16.2%(29 名)

所属機関での使用言語 日本語:60.9%(109 名)、英語:38.0%(68 名)、不明:1.1%(2 名)

奨学金の有無 あり:69.3%(124 名)、なし:30.7%(55 名)

日本語レベル 1 級レベル:31.3%(56 名)、2 級レベル:26.3%(47 名)、3 級レベル:7.3%(13 名)、

4 級レベル:10.1%(18 名)、5 級レベル:21.8 %(39 名)、不明:3.4%(6 名)

表1 回答者の属性

出所:アンケート調査回答者のデータより筆者作成   (注1)%は全回答者中の割合を示す。

  (注2)日本語レベルは日本語能力検定(JLPT)の資格の有無ではなく回答者の自己申告に基づくものである。

(5)

表2 留学先を選択する際にどの程度重視したか

  1 2 3 4 5 Mean SD

①家族・友人のすすめ 10 12 45 68 44

3.69 1.086 5.6% 6.7% 25.1% 38.0% 24.6%

②母国の先生のすすめ 18 10 32 63 56

3.72 1.245 10.1% 5.6% 17.9% 35.2% 31.3%

③留学エージェントのすすめ 43 33 64 26 13

2.63 1.204 24.0% 18.4% 35.8% 14.5% 7.3%

④進路先の大学・学校の先生を知っている 24 21 47 56 31

3.27 1.262 13.4% 11.7% 26.3% 31.3% 17.3%

⑤家族・友人が同じ町に住んでいる 33 23 56 33 34

3.07 1.347 18.4% 12.8% 31.3% 18.4% 19.0%

⑥大学・学校のある町の文化が魅力的である 14 13 58 52 42

3.53 1.158 7.8% 7.3% 32.4% 29.1% 23.5%

⑦大学・学校のある町の治安がよい 8 9 19 63 80

4.11 1.073 4.5% 5.0% 10.6% 35.2% 44.7%

⑧大学・学校のある町の生活費 が安い 7 6 37 65 64

3.97 1.027 3.9% 3.4% 20.7% 36.3% 35.8%

⑨専門分野を深く学べる 4 3 18 56 98

4.35 0.895 2.2% 1.7% 10.1% 31.3% 54.7%

⑩大学・学校の教育レベル、ランキングがよい 4 7 20 63 85

4.22 0.950 2.2% 3.9% 11.2% 35.2% 47.5%

⑪大学・学校の設備がよい 4 11 31 61 72

4.04 1.013 2.2% 6.1% 17.3% 34.1% 40.2%

⑫大学・学校の寮に住むことができる 8 16 46 56 53

3.73 1.116 4.5% 8.9% 25.7% 31.3% 29.6%

⑬大学・学校の学生数が多い 15 32 70 44 17

3.09 1.070 8.4% 18.0% 39.3% 24.7% 9.6%

⑭大学・学校の授業料 11 11 35 59 63

3.85 1.154 6.1% 6.1% 19.6% 33.0% 35.2%

⑮自分の町からのアクセスが便利である 22 19 58 50 30

3.26 1.219 12.3% 10.6% 32.4% 27.9% 16.8%

出所:筆者作成

  (注)1= まったく重視しなかった、2= あまり重視しなかった、3= どちらともいえない、4= まあまあ重視した、

    5= とても重視した

(6)

一方、表4に示す所属機関別の平均値の差は2項目で 有意差が見られた。大学院や大学以外の短大・専門学校 に所属する留学生はそうでない留学生と比較して、「③ 留学エージェントのすすめ(F(2,176)=3.289, p < .05)」、

「⑬大学・学校の学生数が多い(F(2,176)=4.509, p < .05)」

の点を重視する傾向にあることが分析の結果から推測で きる。

また、性別、奨学金の有無、所属機関での使用言語な どの属性による平均値の比較の t 検定(両側検定、5%

水準)を行った結果が表5である。男女間では「母国の 先生のすすめ(t(177)=2.531, p < .05)」、「専門分野を 深く学べる(t(177)=2.258, p < .05)」、 「大学の授業料(t

(177)=2.560, p < .05)」の3項目で有意差が認められた。

一方、所属機関での使用言語の違いでは「大学・学校の ある町の生活費が安い(t(177)=2.139, p < .05)」「大 学の設備がよい(t(177)=2.673, p < .05)」など、教育 環境に関する 3 つの項目で有意差が認められた。英語の みで授業を履修する留学生にとっては言語の壁に悩まさ れることなく勉学に集中できる環境で生活することを留

学前から意識していたと考えられる。その他にも年齢層 や在住地域などの属性についても同様に分析したが、い ずれも有意差は見られなかった。(表4)(表5)

5. 考察

本研究では日本で勉強している多数の留学生に協力し てもらい、回答を分析することによって留学生の進路選 択要因を探った。留学先選択の際に重視した点について 尋ねた項目では、教育レベルや専門が最も重視されたが

「教育レベル」(mean=4.22)、「専門分野を深く学べる」

(mean=4.35)、「安全性」(mean=4.11)や「母国の先生 のすすめ」(mean=3.27)も影響が比較的大きいことが 明らかになった。その一方で、「留学エージェントのす すめ」(mean=2.62)や「家族や友人が同じ町に住んで いること」(mean=3.07)は比較的重視されておらず、 「出 身国からのアクセスのしやすさ」(mean=3.26)も重視 されるポイントとはいえなかった。中国人留学生の間で は留学エージェントの活用が多いことが先行研究の結果

表3 留学先を選択する際にどの程度重視したか ( 国籍別 )

  国籍

  ①中国 ②ベトナム ③その他

①家族・友人のすすめ 3.96 3.58 3.58

②母国の先生のすすめ 3.70 3.81 3.67

③留学エージェントのすすめ 2.62 2.77 2.51

④進路先の大学・学校の先生を知っている 3.26 3.53 3.07

⑤家族・友人が同じ町に住んでいる 2.91 3.39 2.93

⑥大学・学校のある町の文化が魅力的である 3.36 3.72 3.51

⑦大学・学校のある町の治安がよい 4.04 4.11 4.16

⑧大学・学校のある町の生活費が安い 3.68* 4.07 4.12* ①<③

⑨専門分野を深く学べる 4.11 4.37 4.51

⑩大学・学校の教育レベル、ランキングがよい 4.13 4.25 4.26

⑪大学・学校の設備がよい 4.02 3.98 4.10

⑫大学・学校の寮に住むことができる 3.40* 3.68 4.01* ①<③

⑬大学・学校の学生数が多い 2.79* 3.32* 3.13 ①<②

⑭大学・学校の授業料 3.89 4.07 3.64

⑮自分の町からのアクセスが便利である 3.25 3.33 3.22 出所:筆者作成

  (注) *p<.05

(7)

表4 留学先を選択する際にどの程度重視したか ( 所属機関別 )

表5 留学先を選択する際にどの程度重視したか ( 性別、奨学金の有無、使用言語別 )

出所:筆者作成

  (注) *p<.05

  所属機関

  ①学部 ②大学院 ③その他

①家族・友人のすすめ 3.66 3.68 3.79

②母国の先生のすすめ 3.69 3.84 3.41

③留学エージェントのすすめ 2.69 2.43* 3.07* ②<③

④進路先の大学・学校の先生を知っている 3.19 3.34 3.24

⑤家族・友人が同じ町に住んでいる 2.98 3.03 3.34

⑥大学・学校のある町の文化が魅力的である 3.58 3.38 3.90

⑦大学・学校のある町の治安がよい 4.03 4.07 4.38

⑧大学・学校のある町の生活費が安い 3.87 4.02 4.00

⑨専門分野を深く学べる 4.27 4.40 4.34

⑩大学・学校の教育レベル、ランキングがよい 4.08 4.28 4.31

⑪大学・学校の設備がよい 3.94 4.06 4.21

⑫大学・学校の寮に住むことができる 3.60 3.77 3.86

⑬大学・学校の学生数が多い 2.82* 3.14 3.52 ①<③

⑭大学・学校の授業料 4.03 3.69 3.93

⑮自分の町からのアクセスが便利である 3.24 3.23 3.41

  性別 奨学金 使用言語

  男性 女性 有 無 日本語 英語

①家族・友人のすすめ 3.68 3.71 3.64 3.82 3.72 3.62

②母国の先生のすすめ 3.52* 3.98* 3.77 3.60 3.72 3.71

③留学エージェントのすすめ 2.71 2.53 2.51* 2.89* 2.64 2.56

④進路先の大学・学校の先生を知っている 3.15 3.43 3.36 3.07 3.26 3.28

⑤家族・友人が同じ町に住んでいる 3.05 3.09 3.02 3.18 3.05 3.07

⑥大学・学校のある町の文化が魅力的である 3.42 3.66 3.44 3.73 3.52 3.53

⑦大学・学校のある町の治安がよい 4.01 4.23 4.09 4.15 4.02 4.25

⑧大学・学校のある町の生活費が安い 3.85 4.11 4.06 3.76 3.83* 4.16*

⑨専門分野を深く学べる 4.21* 4.51* 4.43 4.16 4.20* 4.57*

⑩大学・学校の教育レベル、ランキングがよい 4.17 4.28 4.23 4.20 4.11 4.38

⑪大学・学校の設備がよい 4.07 4.00 4.03 4.05 3.89* 4.28*

⑫大学・学校の寮に住むことができる 3.70 3.76 3.77 3.64 3.46** 4.12**

⑬大学・学校の学生数が多い 3.21 2.94 3.02 3.24 3.01 3.21

⑭大学・学校の授業料 3.66* 4.09* 3.82 3.91 3.89 3.75

⑮自分の町からのアクセスが便利である 3.13 3.43 3.22 3.36 3.11* 3.49*

出所:筆者作成

  (注) *p<.05

(8)

から予測されたが

、本調査の結果からみると留学エー ジェントよりも家族や友人の影響のほうが大きいといえ る。

豪州における先行研究では出身国からの近隣性は回答 者の国籍によって重視される場合があり、アジアからの 留学生が多い日本においても同様の結果になると考えら れたが、結果は異なった。本調査では中国人留学生とベ トナム人留学生の間では平均値に若干の差があるが、有 意差は認められなかった。日本にはほとんどの都道府県 に空港があり、アジア各国からの日本へのアクセスが容 易になっているため、出身国の違いによって留学生を受 け入れやすい県とそうでない県があるとは言えないとい う結果となった。

留学先の選択に関する国籍の違いによる回答の有意差 には、 「大学の寮に住むことができる(中国人留学生:3.40

<その他出身留学生:4.01) (F(2,176)=3.468, p < .05)」、

「大学・学校の学生数が多い(中国人留学生:2.79 <ベ トナム人留学生:3.32) (F(2,176)=3.467, p<.05)」といっ た項目での違いから、各グループが重要視する点が異な ることがわかるが、全体的に見ると国籍によって留学地 を選ぶうえで大きな違いがないといえる。

性別による回答には大きな違いは見られなかった が、使用言語の違いという観点から見ると、「大学・学 校の設備がよい(日本語:3.89 <英語:4.23) (t(177)

=2.673, p < .05)」、「大学・学校の寮に住むことができ る(日本語:3.46 <英語:4.12) (t(177)=4.128, p < .01)」

といった項目に有意差がみられた。現在、日本の多くの 大学で英語のみで受講して修了できるコースが用意され ているが、そのようなコースに在籍している留学生に とっては安心して勉強できる環境を用意することが入学 者数を増やす要因といえるようである。

6.おわりに

本研究では諸外国で行われた留学生の留学先選択時に おける要因分析を基に日本国内の留学生を調査対象とし て調査した。高度人材の卵である留学生をいかにして確 保するかは世界的に議論されていることであり、グロー バルな人材獲得競争が熾烈化している状況である。英語 圏の高等教育機関においては留学生獲得のためのマーケ ティング戦略に貢献するための調査の実施が進んでいる が、日本における調査事例はまだ少ない。本調査は日本 のこれからの高等教育のグローバル化を考えるうえでの 調査に貢献するための事例になることを期待するもので ある。本研究の課題としては、サンプル数が少ないこと が挙げられる。今後、継続して調査を行うなかでこのよ うな課題を解決していきたい。日本各地で留学生の獲得 が自治体を巻き込む形で進んでいるなか、留学生と大学・

自治体・企業のマッチングは留学生の地域選択において 一層考慮されていくものであるため、留学生の窓口戦略 やキャリアパスの構築に貢献できるような調査を次の研 究に期したい。

 注

⑴ 竇、 佐 藤(2017); 馬(2016); 志 甫(2009、

2013)等

⑵ Mazzral and Soutar(2002);Bodycott(2009)

⑶ Nicholls(2018) p.614

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76.

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