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ヒメマルカツオブシムシ幼虫の繊維への嗜好性1諏訪晴香

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147 帝京科学大学紀要 Vol.9(2013)pp.147-149

1. はじめに

 ヒメマルカツオブシムシ

Anthrenus verbasci

は 甲虫目カツオブシムシ科に属し、世界中に分布して いるカツオブシ類の一種である1)。幼虫は乾燥した 動物性蛋白質を好むが、植物性ステロールの利用能 力を持ち1)、乾燥した物質であれば何でも食してみ るという習性を持つ2)。屋外では鳥の巣やカマキリ の卵から見つかっている3)。屋内では主に衣類繊維 や一部の食品を摂食するため衣類害虫や貯穀害虫と して知られている1)。通常は 1 年に 1 回の発生であ るが、栄養状態によっては幼虫の状態で 2 年以上生 存するものもいる4)

 さらに本種は、化学性繊維(以下、化繊と呼ぶ)

なども摂食すること1)、嗜好性が羊毛、絹、化繊の 順に高いことが知られており5)、食害抑制に関する 研究もおこなわれている6)。したがって、それらの 防除のために幼虫の行動・生態を明らかにすること は重要である。

 本研究では、幼虫の繊維に対する嗜好性を明らか にするために動物性繊維、植物性繊維、および化繊 に誘引される個体数について調査した。

2. 材料と方法

 実験に供した幼虫は、2009 年から 2012 年に山梨 県上野原市の家屋内で採取した個体を継代飼育した 個体より、3,4 齢虫を主として用いた。齢は脱皮回 数をより確認した。繊維への嗜好性を調べるために

動物性繊維 2 種(ウールモスリン(以下、モスリン と呼ぶ)・絹)、植物性繊維 2 種(綿・麻)、および 化繊 2 種(レーヨンスフモスリン(以下、レーヨン と呼ぶ)・ポリエステル)の合計 6 試料 100%未染 色の素材を使用した。

 縦 3.0 cm ×横 1.5 cm にした各試料をプラスチッ クシャーレ(φ 150 ㎜、高さ 1.5 cm)の端に放射 状に並べ、幼虫 30 個体を中央から放虫した。(図 1)。

放虫 24 時間後、試料上にいる個体(頭部が載って いる個体も含む)を計数した。

 実験は合計 12 回実施した。試料間での観察され た個体数の差は多重比較(ボンフェローニ法)によ り検討した。また、ランダムにシャーレ上を動いた 場合に想定される各試料上にいる期待個体数(それ ぞれの面積をもとに算出)と比較して、実際に観察 された個体数が有意に多いかどうかはχ2乗検定に より検討した。統計解析は StatView 5.0(SAS 社)

を用いた。

3. 結果と考察

 繊維上にみられた個体数は、動物性繊維の 2 種が もっとも多く、次いで、植物性繊維の 2 種、化繊 の 2 種と続いた。また、動物性繊維の中ではモスリ ンが絹よりも嗜好性が高く、それ以外のいずれの試 料より有意に多くの個体が集まっていた(棄却基準 p 値 =0.0033、全ての試料に対して p<0.0001)。ま た、面積比をもとに算出した各試料上の期待個体

ヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasci 幼虫の繊維への嗜好性

1 諏訪晴香  2 木村悟朗  3 篠原正典

1

帝京科学大学大学院 理工学研究科 環境マテリアル専攻

2

イカリ消毒株式会社 技術研究所 

3

帝京科学大学 生命環境学部 自然環境学科

Behavioral research on food preference of varied carpet beetle (

Anthrenus verbasci

) larvaes

1

Haruka SUWA 

2

Goro KIMURA 

3

Masanori SHINOHARA

Abstract:

 Larvaes of varied carpet beetle ( Anthrenus verbasci ) are well known as insects injurious to clothes and crops, and their food preference have been researched well and known to inclinable toward animal fiber. Here, we widely invested their preference to six clothes including wool, silk, cotton, hemp, rayon and polyester from their gathering behavior. As the results, they gathered on wool most and their preferences to plant fiber were intermediate between those to animal and artificial fiber.

Key word:ヒメマルカツオブシムシ、嗜好性、動物性繊維、植物性繊維、化学性繊維

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諏訪晴香 木村悟朗 篠原正典

図 1. 実験装置。黒い点状にみえるのがヒメマルカツオブシムシの幼虫。

図 2. 各試料別の平均個体数。エラーバーは標準偏差を示す。黒は動物性繊維、チェックは植物性繊維、白は化繊を示す。

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149 ヒメマルカツオブシムシ Anthrenus verbasci 幼虫の繊維への嗜好性

数(0.764 匹)と比して有意な差がみとめられたのも、

平均 12.5 匹であったモスリンのみであった(χ2=7.83, p<0.01)。

 本実験の結果から植物性繊維を含めた場合でも、

動物性繊維が最も嗜好性が高く、特にモスリンへ の嗜好性が強いことが明らかとなった。本実験は 個体数を計測しているが、中村(1978)では喫食 量を測定するために、実験期間は 1 週間以上であっ たことを報告している。今後は喫食量についても 検討したい。

4. 謝辞

 本研究を進めるにあたりご指導下さったイカリ消 毒株式会社技術研究所の谷川力博士、日本大学生物 資源科学部・西村知良博士に心より感謝いたします。

また、貴重な助言や協力をしてくれた篠原研究室の 同僚に謝意を表します。

5. 引用文献

1) 安富和男 , 梅谷献二:

原色図鑑 改訂新版 衛 生害虫と衣食住の害虫

, 全国農村教育協会 , pp.310, 2007.

2) 中元直吉:衣類害虫の生態とその防除 ,

家屋害 虫

1, 74-92, 1984.

3) 桐谷圭治:屋内害虫の自然の棲息場所 ,

新昆虫

12, 2-6, 1959.

4) 桐谷圭治:ヒメマルカツオブシムシの成育を支 配する要因 ,

防虫科学

23, 137-146, 1959b.

5) 中村茂子・立石勝朗:ヒメマルカツオブシムシ 幼虫の羊毛 , 絹 , 化繊に対する食害性(予報),

日本応用動物昆虫学会大会講演要旨

22, 126, 1978.

6) 加藤弘・秦珠子・塚田益裕:天然色素抽出物に よるヒメマルカツオブシムシ幼虫の食害抑制効 果 ,

日本蠶絲學雜誌

72(2), 55-63, 2002.

図 1. 実験装置。黒い点状にみえるのがヒメマルカツオブシムシの幼虫。

参照

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