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      対する血管新生阻害剤の影響

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岩医大歯誌 21232−241,1996

マウス扁平上皮癌の増殖および実験的肺転移に

      対する血管新生阻害剤の影響

         古内 秀幸

岩手医科大学歯学部口腔外科学第二講座

    (主任:関山 三郎 教授)

    (受付:1996年10月15日)

    (受理:1996年11月27日)

 Abstract:SinCe angiogenesis is critical to the proliferation of solid tumors, the inhibition of this process may provide a new approach for cancer therapy. TNP−470(0−(chloroacetyl−carbamoyl)

fumagillol), a novel semisynthetic analogue of fumagillin isolated from.4Sρθ㎎元〃μs允励gαωs, has potential as an antiangiogenic agent, which selectively prevents endothelial cell proliferation

through inhibition of DNA synthesised. In the present study, the effects of TNP−4700n tumor−induced angiogenesis, tumor proliferation and experimental pulmonary metastasis were

examined using a weakly immunogenic squamous cell carcinoma of the WHT/Ht mouse. TNP−470 inhibited the angiogenesis induced by the murine tumor dose−dependently, and the number of blood vessels orientated towards the intradermal tumor was maximally reduced by 45%compared to the control. In the tumor proliferation assay, TNP−470 significantly inhibited proliferation of the subcutaneously inoculated tumor, and reduced the tumor volume by 29%(80㎎/kg)and 46%(40㎎/

kg)compared to the control. A similar inhibitory effect on tumor proliferation was observed in the experimental pulmonary metastasis assay, and the number of metastatic foci(diameter≧LO皿m)

after intravenous inoculation of tumor cells was lowered by 13%(80㎎/㎏)and 42%(40㎎/kg)

compared to the control with injection of TNP−470.

 These results suggest that TNP−470 has strong inhibitory activities against仇〃初o tumor−induced

angiogenesis and proliferation of murine squamous cell carcinoma at the subcutaneous and

rnetaStat1C SIteS.

Key words:angiogenesis, angiogenesis inhibitor, TNP−470, murine squamous cell carcinoma

緒 言

 癌は自律的異常増殖と,標的臓器における転 移巣形成という二つの側面をもっている。癌の 制御を考える場合,これらを切り離すことはで きない。癌の発生と進展が複数遺伝子異常の蓄 積を伴う多段階過程として理解されるようにな

り,また,その後期に属する転移の多段階で複

雑なカスケードの詳細についても,次第に解明 されつっあるが,解析が進むほど多様な細胞形 質を有する癌細胞を正常細胞と区別し,標的と

して制御することは非常に困難であることが浮 き彫りにされている。しかし,そうした癌で あっても栄養,酸素,増殖因子などを補給せず に生き続けることは不可能である。

 原発巣あるいは転移巣のいずれにおいても,

Effect of angiogenesis inhibitor on proliferation and experimental pulmonary metastasis of

mUrine SqUamOUS Cell CarCinOma.

Hideyuki FuRuucHI

(Second Department of Oral and Maxillofacial Surgery, School of Dentistry, Iwate Medical University, Morioka,020 Japan)

岩手県盛岡市中央通1丁目3−27(〒020)       De砿ノ伽ατeル彪d.σ励り.21:232−241,1996

(2)

扁平上皮癌に対する血管新生阻害剤の影響

活発な増殖を継続する場合には,こうした栄 養,酸素,増殖因子などを既存の血管からの拡 散だけで充分に補給することができないため,

癌細胞は直接あるいは間接的に内皮細胞を刺激 し1〜8)血管新生を誘導しなければならない9・10)。

これに対し正常個体では,一部の生殖関連組織 を除き血管新生は観察されないω。このことよ り血管の新生を阻害すれば正常組織への影響が 少なく癌の増殖を抑制できる可能性が期待され

る。

 TNP−470はかびの一種であるAsρθγgゼ〃μs アμ〃2 gαZμ∫から分離同定したfumagillinの誘

導体であり,血管内皮細胞に対し選択性のあ

る,強力な増殖阻害活性を有している12・13)。近年 各種の腫瘍に対しこのアナログが抗腫瘍活性,

転移抑制活性をもっことが報告されている14〜19)

が,扁平上皮癌に関する報告は極めて少ない加)。

 そこで本研究では近交系WHT/Htマウスに 自然発生した移植可能な扁平上皮癌の増殖およ び実験的肺転移に対するTNP−470の影響に ついて検討したので報告する。

材料および方法 1.実験動物

 当教室で近交系マウスとして維持している WHT/Htマウス21)(H−2Kq, H−2D不明)22)

の雌,8週齢から12週齢を1群あたり5匹と

して使用し,固形試料(オリエンタル酵母工業)

と水を自由に与え飼育した。

2.腫瘍

 近交系WHT/Htマウスに自然発生し,胸部 皮下に継代移植している扁平上皮癌を使用し た。この腫瘍は50%の動物に腫瘍を発生させ るたあに必要な細胞数であるtumorigenic

dose rate 50(TD50)値が14.4と極めて低免疫 原性の腫瘍である23)。

3.細胞浮遊液の調整

 近交系WHT/Htマウスに継代移植している 腫瘍を無菌的に採取し,滅菌した少量の

Dulbecco s phosphate buffered saline(一),

(Ca2+, Mg2+free, pH7.4, Nissui;−PBS)を加

233

えたシャーレ中で勇刀にて細切し,#150白金 meshで濾過した。これに一PBSを加えて細胞 を洗浄し,0.25%trypsin(GIBCO BRL)にて 処理した。回収した細胞浮遊液は,800rpmで 3回遠心洗浄し,−PBSに再浮遊して使用し た。生細胞数の算定は,0.2%trypan blue染色 を行い,細胞のviabilityは各ロットとも90%

以上であった。

4.使用薬剤

 血管新生阻害剤TNP−470は,武田薬品工 業より供与された。TNP−470の濃度は第1群 は40㎎/kg,第2群は80㎎/kgとし,濃度の調 節は100%ethano1および5%arabic gumを添 加した生理食塩水(注射用,大塚製薬)を用い て行った。対照群には生理食塩水を使用した。

5.TNP−470の血管新生に対する影響の検討  腫瘍細胞により誘導される血管新生に対する TNP−470の影響をKreisleおよびErshlerの 方法24)に準じて検討した。−PBSにて1×106 個/0.1mlに調整した腫瘍細胞浮遊液を,剃毛し たマウスの脇腹部皮内2ヵ所へ接種し,これを

0日とした。接種後1日目,2日目にTNP−

470を各濃度で背部皮下に投与し,接種後3日 目にマウスを屠殺した。誘導された血管新生を 評価するため腹部中央より皮膚を切開し,腫瘍 の生着した皮膚を皮下組織より剥離し,移植部 周囲の生体血管より腫瘍に向かって走行する血 管の数を手術用顕微鏡(20倍,Carl Zeiss)を 用いて測定し,2ヵ所の平均血管数を求めた。

同時に腫瘍のサイズを評価するため長径(a)と 短径(b)をノギスを用いて測定し,腫瘍体積を a×b2×0.5の式より算出し,2ヵ所の平均腫 瘍体積を求めた。

6.TNP−470の腫瘍増殖に対する影響の検討  一PBSにて1×106個/0.1皿1に調整した腫 瘍細胞浮遊液をマウスの胸部皮下へ接種し,腫 瘍の触知が可能となる長径7mmから8m皿に達し

た時点より,TNP−470を各濃度で隔日背部皮

下に投与した。投与開始時より3日ごとに移植

腫瘍の長径と短径を測定し,腫瘍体積を前述の

式より求め,TNP−470投与後21日目には屠

(3)

古内 秀幸

Table 1.Effect of TNP−4700n angiogenesis induced by squamous cell carcinoma.

Treatment  Dose

       (mg/kg)

Tumor volume(mm3)

 (mean±SD)

No. of blood vessels

 (mean±SD)

Control

TNP−470 TNP−470

40 80

73.3±4.5

ll:1::::::]一

19.7±2.8      ウむ 11:1:1:1−]・

The statistical significance of differences between the groups was determined by applying Studenピs −test.(「ρ<0.01.★★ヵ<0.001.)

殺し腫瘍電量を測定した。

7.TNP−470の実験的肺転移に対する影響の  検討

 一PBSにて8×105個/0.2 mlに調整した腫 瘍細胞浮遊液をマウスの尾静脈より接種し,同 日よりTNP−470を各濃度で連日背部皮下に 投与した。投与後6日目に屠殺し肺を摘出した 後,肺表面の転移巣数を各サイズ(直径0.5mm 以上,直径1.Om皿以上)ごとに実体顕微鏡(8 倍,ニコン)下で測定した。

8.TNP−470のマウスの体重に対する影響の  検討

 全身毒性の指標として,腫瘍細胞を尾静脈よ り接種した各群のマウスにおける屠殺時の体重 を測定した。

9.統計学的検討

 統計学的検定はStudent s −testを用い,ρ

〈α05を有意の差異とした。

Tumor−induced angiogenesis.

(1)

(2)

(3)

Fig.1.Effect of TNP・470 0n angiogenesis    induced by murine squamous cell    carcinoma. Mice with intradermal tumors

   were treated with physiological saline(1)

   or 40㎎/kg(2)and 80㎎/kg(3)of TNP−

   470. The number of blood vessels    orientated towards the tumor and tumor    volume were significantly decreased by

   treatment with TNP.−470.

結 果

1.TNP−470の血管新生に対する影響の検討  WHT/Htマウスに皮内移植した扁平上皮癌 細胞により誘導された血管新生に対するTNP

470の影響を検討した。腫瘍移植後3日目に おいて移植部周囲の生体血管より分岐し,腫瘍 に向かって走行する血管の数はTNP−470を 投与した第1群(40mg/kg)では対照群の 64%,第2群(80mg/kg)では45%であり各群

間に有意な差異@〈0.01)を認めた。また,こ の時点における平均腫瘍体積は第1群では対照 群の82%,第2群では68%でありTNP−470 が血管新生を抑制すると同時に腫瘍の増殖も有 意に抑制することが示唆された@<0.001)。

また,この処置群におけるTNP−470の有意 な血管新生抑制効果および腫瘍増殖抑制効果は ともに用量依存的であった(Table 1, Fig.1)。

2.TNP−470の腫瘍増殖に対する影響の検討

(4)

扁平上皮癌に対する血管新生阻害剤の影響

235

6000

㎜  卿 ㎜ ㎜ ㎜

°

EE︶Φ∈⊇o>﹂oEコ↑

0

0369|2151821

  Days after treatment

十  Control

_O_TNP−470  (40mg/kg)

仁トTNP−470  (80mg/kg)

Fig.2. Effect of TNP−470 0n proliferation of

   murine squamous cell carcinoma. Mice

   with tumors of a similar size(7−8 mm in

   diameter)were selected and injection of

   TNP−470 was initiated on day O. TNP−470    was s. c. injected every other day. Control    mice received physiological saline. After

   initiation of treatment, the estimated

   tumor volume was calculated. Each point

   represents tumor volume. Vertical bars    indicate  standard  deviation.  The    statistical significance  of differences    between the groups was determined by

   applying Studenピs f−test.(*ρ<0.00L)

 WHT/Htマウスに皮下移植した扁平上皮癌 細胞の増殖に対するTNP−470の影響を腫瘍 体積および腫瘍重量により検討した。腫瘍は移 植後ほぼ球状に増殖し,その長径は6日目に7 皿mから8mmに達した。この時点よりTNP−470 の投与を開始し,腫瘍体積は第1群では投与後 9日目,第2群では3日目より対照群と比較し 有意な差異@〈0.01)を認めた。TNP−470投 与後21日目における平均腫瘍体積は第1群で は対照群の46%,第2群では29%であり,対 照群と処置群との間に有意な腫瘍増殖抑制効果

@<0.001)を認めた。このTNP−470による 腫瘍増殖抑制効果は腫瘍重量においても有意に

OE︶↑£9Φ︾︾﹂oEコ﹂−

4000

3000 2500

1500

1000

Control TNP−470 TNP−470

(40mg/kg)(80mg/kg)

Fig.3. The actual tumor weight proliferating in

   the WHT/Ht mice on day 21. Each bar    represents the mean ± standard

   deviation. The statistical significance of

   differences between the groups was

   determined by applying Student s −test.

   (*ρ<0.01.*「ρ<0.001.)

認あられ,TNP−470投与後21日目における 第1群の平均腫瘍重量は対照群の44%,第2群 では33%@<0.001)であった。また,この時 点での処置群におけるTNP−470の有意な腫 瘍増殖抑制効果は腫瘍体積,腫瘍重量ともに用 量依存的であった(Fig.2,3)。

3.TNP−470の実験的肺転移に対する影響の  検討

 扁平上皮癌細胞をWHT/Htマウスの尾静脈 より接種した実験的肺転移モデルに対する TNP−470の影響を,摘出した肺表面における 各サイズごとの転移巣数により検討した。第1 群における肺転移巣数は82±23個,第2群で は78±40個であり,両群ともに対照群(87±

35個)との間に有意な差異は認められなかっ た。しかし各サイズごとの測定において,直径 0.5㎜以上の転移巣数は第1群では28±7個,

第2群では23±9個であり,対照群(54±9 個)と比較し有意な減少@<0.001)を認め,

さらに直径1.0㎜以上の転移巣は第1群では13

±3個,第2群では4±3個で対照群(31±5

(5)

 236       占内 秀幸

Table 2. Effect of TNP−4700n experimenta[pulmonary metastasis.

Treatment  Dose

(mg/kg)

No. of pulmonary metastases(mean±SD)

丁otal 0.5mm≦Diameter 1.O mm≦Diameter Control

TNP−470 TNP−470

40 80

87±35 82±23 78±40

54±9

28±7★曹

23±9 ★★

31±5

    カカ

亮]・

The statistical significance of differences between the groups was determined by applying Studenrs〜−test.(「♪<O.01、★★メ)<0.001.)

Experimental pulmonary metastasiS.

(1)

(2)

(3)

Fig.4. Representative lungs from an experiment

   to show colonization by tumor cells in

   controls(1)or in the treatment with 40

   ㎎/kg(2)and 80㎎/kg(3)of TNP−470.

   Injection of TNP−470 markedly inhibited    tumor proliferation in lungs of WHT/Ht    mice,

個)と比較し,その減少@〈0.001)はより著 明に認められた。また,TNP−470投与による 直径1.Omm以上の肺転移巣における有意な個数 の減少は用量依存的であった (Table 2, Fig.

4)。

4.TNP−470のマウスの体重に対する影響の  検討

 TNP−470の全身毒性の指標として,各群の 実験的肺転移モデルにおける屠殺時の体重を測 定した。第1群における平均体市は対照群の 96%,第2群では91%であり,第2群と対照群

との間に有意な体市減少@<α05)を認めた。

25

20

15

10

5

⑨主⑦Φ≧>Uom

0

     Control TNP−470 TNP−470          (40mg/kg)(80mg/kg)

Fig.5. Body weight of WHT/Ht mice at killing.

   Each bar represents the mean ±    standard  deviation. The  statistical    significance of differences between the    groups was determined by applying

   Student s Z−test.(*ノ》〈0.05.)

しかし第1群と対照群との間には有意な差異は 認められなかった。(Fig.5)

考 察

 癌が原発巣での増殖,浸潤から転移巣の形成

に至るまでの一連のカスケードをすべてクリア

するためには,生体内に幾重にも備わっている

異常な細胞増殖,あるいは組織破壊に対する防

御機構に打ち勝たなくてはならない。しかし長

(6)

扁平上皮癌に対する血管新生阻害剤の影響 期間遺伝子の変異を蓄積し,それらを突破しう

る細胞形質を獲得して選択的に生き残った癌細 胞は,悪性度が高くごく少数であっても増殖制 御から逸脱しているため,これが化学療法剤に 対し耐性を獲得すれば25)治療は極あて困難なも のとなる。これに対し単一な増殖内皮細胞を標 的とし,この様な癌細胞集団を制御するという 新たな治療概念は臨床的視点から非常に興味深

いo

 Folkmanら頒)により,腫瘍細胞が血管から 150μmから200μmの範囲より離れると酸素が拡 散して到達できないため壊死すること,また,

固形腫瘍が微小な時点では血管新生を必要とし ないが1m㎡から2m㎡以上に急速に増殖する場合 には,血管の新生が必要であること27)などが報 告され,原発巣や転移巣において誘導される血 管新生が,癌細胞の増殖に対し極めて重要な役 割を果たしていることが明らかとなってき

た28〜32)。

 血管新生は次の様な幾つかの秩序正しい現象 の進行33)により成立すると考えられている。す なわち,何らかの血管新生刺激により血管新生 因子が放出され,これが内皮細胞からの各種プ ロテアーゼの分泌を刺激し内皮細胞下の基底膜 が分解される。次にこの基底膜間隙より内皮細 胞が遊走を開始し,後続の内皮細胞は増殖を繰 り返す。さらにこれらは管腔を形成し,っいで 基底膜構成物質を分泌し基底膜を形成する。最 終的に基底膜に沿った周皮細胞の遊走により,

3層の血管壁構築が完成し,近隣の新生血管と の吻合が生じ血管網が形成される。腫瘍細胞は 増殖を維持するため,さまざまな血管新生因子 を分泌して1〜8)周囲の生体血管から血管新生を 誘導して腫瘍組織内に取り込んでいると考えら れている。固形腫瘍におけるこの血管新生は活 発であり,内皮細胞の増殖も日単位と急速であ る34)。 しかし正常個体において内皮細胞は通常 静止期の状態にあり,一部の生殖関連組織を除

き増殖しない。このため充進した内皮細胞の増 殖を特異的に阻害できれば正常組織への影響が 少なく腫瘍の増殖を抑制できると考えられる。

237

また,増殖内皮細胞を標的とすることによって 薬剤に対する耐性獲得が少なく,血流と直接に 接するので薬剤のアクセスが容易であるなど,

既存の治療法にはなかったメリットが期待され

る。

 Ingberら12)は,かびの一種、4sρe㎎i〃μs 允励g砿μsが分泌する天然の抗生物質であり,

血管新生阻害活性を有するfumagillinについ て報告した。fumagillinはマウスの皮下に移植 したsarcoma−180細胞によって誘導される 血管の新生を阻害し, また, Lewis lung carcinoma細胞およびB16 melanoma細胞の 増殖を抑制したが体重に対する減少作用が強 かったため,長期の投与には限界があった。

TNP−470はこの副作用と活性の分離を目標 に合成された高活性誘導体であり,彼ら12)に よってこのアナログがfumagillinよりも強い 血管新生阻害活性をもち,副作用も僅かである

ことが示された。また,Kusakaら35)はニワト リの胚発生に伴う漿尿膜の血管新生,ラット角 膜においてbasic fibroblast growth factor

(bFGF)により誘導された血管新生,ラットお よびマウスの皮下に移植したbFGFを含んだ ペレット入りのスポンジ内部に誘導される血管 新生,およびフィブリンゲル中で器官培養した ラット血管のフラグメントからの血管新生に対 しTNP−470が阻害活性を示すことを報告し た。また,彼らは各種の正常および腫瘍細胞に 対するTNP−470の増殖抑制活性を比較検討

し,血管内皮細胞が最も高い感受性を有し,そ の特徴が仇 θ仇oで細胞の発育を50%抑制す

る薬剤濃度であるmedian inhibitory

concentration(IC50)値が15 pg/皿1という非常

に低い静細胞的増殖抑制であることを示し

た13)。TNP−470のこうした血管内皮細胞に対

する増殖抑制の機序にっいては解明されていな

かったが,ヒト贋帯静脈血管内皮(HUVE)の

細胞周期に関する研究において,Horiら鵠)は

TNP−470がG1中期におけるcyclin D 1の

発現を抑制していることを報告し,これにより

細胞周期がS期へ移行するのを阻害している

(7)

古内 秀幸 ものと考えている。他にも血管基底膜の分解,

内皮細胞の遊走などのステップを阻害し血管新 生阻害作用を示す物質があるが,抗腫瘍活性お

よび転移抑制活性を十分に示したという報告は 多くない。こうした活性が報告されているもの の多くは内皮細胞の増殖阻害に基づいた血管新 生阻害物質である。

 TNP−470は扁平上皮癌を用いた本実験に おいても,WHT/Htマウスに移植した腫瘍細 胞により誘導される血管新生を有意に抑制し た。腫瘍細胞をマウスに皮内移植し,TNP−

470を2日間各濃度で投与し,投与後3日目に 周囲の生体血管より分岐し腫瘍に向かう走行が 認められた血管の数は,第1群(40㎎/㎏)では 対照群の64%,第2群(80㎎/kg)では45%で

あり,TNP−470投与用量に依存的に著明な新 生血管数の減少が認あられた。またこの時点に おける平均腫瘍体積は,第1群では対照群の 82%,第2群では68%であり,TNP−470が 血管新生を抑制すると同時に本腫瘍の増殖も用 量依存的に有意に抑制することが示唆された。

さらにこの腫瘍増殖に対する抑制効果は移植し た腫瘍が十分に触知可能となった時点から TNP−470投与を開始した場合においても認 められた。マウスに皮下移植した腫瘍細胞が増 殖し,その長径が7mmから8m皿に達した6日目 よりTNP−470投与を開始した結果,平均腫 瘍体積は投与後21日目において,第1群では 対照群(わ46%,第2群では29%,平均腫瘍重量 は第1群では対照群の44%,第2群では33%

であり,著明な腫瘍体積,重量の減少および各 群間に有意な差異が認められた。

 血管新生は標的臓器に到達した腫瘍細胞が再 び急速に増殖する転移形成の最終段階において も必要とされる。現在の一般的な診断技術では 2mm以下の転移巣を検出するのは困難であるた め,臨床的に認められる大部分の転移巣は血管 新生依存性の増殖期にあると考えられてい

る37)。TNP−470は今回の腫瘍細胞をマウスの 尾静脈より接種した実験的転移モデルに対し,

転移した肺における腫瘍増殖を有意に抑制し

た。腫瘍細胞をマウスに接種後,TNP−470を 異なった濃度で投与し6日目に摘出した肺の平 均転移巣数では,各群間に有意な差異は認めら れなかった。しかし転移巣の各サイズごとの測 定において,直径0.5mm以上の転移巣数は第1

群では28±7個,第2群では23±9個であ

り,対照群(54±9個)と比較し有意な転移巣 数の減少を認めた。さらに直径1.Omm以上では

第1群では13±3個,第2群では4±3個で

あり,対照群(31±5個)と比較し転移巣数の 減少はより著明であり,TNP−470の投与用量 に依存的であった。また,TNP−470の全身毒 性の指標として,各群の実験的肺転移モデルに

おける屠殺時の体重を測定した結果,第1群に おける平均体重は,対照群の96%,第2群では 91%であり,対照群と第2群との間に有意な体 重減少が認められたが,第1群との間には有意 な差異は認められなかった。Yanaseら銘)はヒ ト腫瘍細胞株をヌードマウスに移植した実験に おいてTNP−470の投与による体重の減少は なかったと報告し,また,Yamaokaら39)は数種 の詔歯類の腫瘍を用いた検討において,腫瘍を 移植された実験動物の体重に対するTNP−

470の影響は腫瘍のタイプに依存する様である と報告している。体重の減少はTNP−470の 知られている唯一の副作用であるが,今後,検 討が必要と思われる。

結 論

 近交系WHT/Htマウスに自然発生した可移 植性扁平上皮癌の増殖および実験的肺転移に対 する血管新生阻害剤(TNP−470)の影響につ いて検討した結果,以下の結論を得た。

1.WHT/Htマウスの皮内に移植した扁平上  皮癌細胞により誘導された血管の数は,腫瘍  移植後3日目において第1群(40㎎/㎏)で  は対照群の64%,第2群(80㎎/kg)では  45%であり,TNP−470投与用量に依存的  に有意な血管新生抑制効果が認められた。

2.WHT/Htマウスの皮下に移植した扁平上

 皮癌細胞が増殖し長径が7mmから8mmに達し

(8)

扁平上皮癌に対する血管新生阻害剤の影響

た時点よりTNP−470の投与を開始した結 果,腫瘍体積は第1群では投与後9日目,第  2群では投与後3日目より対照群と比較し有

意な差異を認あ,21日目における平均腫瘍体 積は第1群では対照群の46%,第2群では 29%であり,TNP−470投与用量に依存的 に有意な腫瘍増殖抑制効果が認められた。ま た,この効果は各群の平均腫瘍重量の比較に  おいても同様に認められた。

3.扁平上皮癌細胞をWHT/Htマウスの尾静 脈より接種した実験的肺転移モデルにおい て,摘出した肺の平均転移巣数では各群間に 有意な差異は認められなかった。しかし転移 巣の各サイズごとの測定において,直径0.5

㎜以上の転移巣数は第1群では28±7個,

第2群では23±9個であり,対照群(54±

 9個)と比較し有意な転移巣数の減少を認  」5,さらに直径1.Omm以上では第1群が13±

 3個,第2群が4±3個で対照群(31±5 個)と比較し,転移巣数の減少はより著明に 認められた。また,TNP−470による直径 1.Omm以上の肺転移巣数における有意な減少 はTNP−470投与用量に依存的であった。

4.TNP−470の全身毒性の指標として,各群  の実験的肺転移モデルにおける屠殺時の体重 を測定した結果,第1群における平均体重は 対照群の96%,第2群では91%であり,第  2群と対照群との間に有意な体重の減少が認

められたが,第1群との間には有意な差異は 認められなかった。

5.以上の結果よりTNP−470は本腫瘍の血 管新生および,皮下または転移した肺におけ  る増殖に対し,強力な抑制活性を有している  ことが示唆された。

謝 辞

 稿を終えるにあたり,終始ご懇篤なご指導,

ご校閲を賜りました恩師関山三郎教授に深甚な る謝意を捧げます。また,貴重な器材の使用を ご快諾頂きご懇切なご助言を賜りました本学口 腔病理学講座佐藤方信教授に衷心より謝意を捧

239

げます。さらに本研究の遂行に際しご親切なご 指導,ご鞭燵を頂きました当講座杉山芳樹助教 授に深く感謝するとともに口腔外科学第二講座 医局員各位に心より謝意を表します。

 本論文の要旨は,1996年11月7日,第41回日 本口腔外科学会総会において発表した。

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参照

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