静岡大学教育学部研究報告 (人 文 。社会科学篇 )第 54号 (2004.3)347〜 372 347
小 0中学校事務職員の力量形成 と専門性に関する研究 (2)
A Resettch on Shaping professional competence and professionability among School Clerical Staffs(2) ・
藤 原 文 雄 0山 崎 準 二
Fumio FuЛ wARA、 Junji YAMAZAKI ‐
(平 成 15年 10月 1日 受理 )
1.本 調査のね らい
2.学 校事務職員の職務実態 0職務態度 (1)多 忙感 │
(2)職 務満足感
(3)ワ ー ク・ モテ ィベー ション
(4)ス ト レ ッサ ー (5)バ ー ンア ウ ト
3.学 校事務職員の職業選択 と力量形成 (1)職 業選択の理 由 とその時期 (2)入 職後の実感
(3)職 務遂行上の転機 と離職の危機
④ 力量形成 と研修 ニーズ
4.学 校事務職員の職への愛着 と将来展望 (1)学 校事務職員 というの職 に対する愛着 (2)事 務研究会への愛着
(3)将 来展望 終わ りに
1日
本調査のね らい
ここで報告す るア ンケー ト調査は、われわれが三カ年 にわた り取 り組んでいる『 ライフコースアプ
ローチに基づ く学校事務職員の職務 と専門的力量 に関する実態調査研究 (研 究代表者 :山 崎準二 )』 の
二部をなすものである。われわれが明らかにしようとしている基本的な主題は、①学校事務職員の職
務実態と職務態度の把握 (学 校事務職員はどのような仕事をどのように行っており、仕事に対 してど
のような態度を持っているのか )、 ②学校事務職員の専門的力量の把握 (学 校事務職員はどのょうな専
348 藤 原 文 雄・山 崎 準 二
門的力量を持 ってお り、それはどのように形成 されるのか )と いうものである。
尚、学校事務職員は県費負担 と市町村費負担 という二種類 に区分 される。われわれは、市町村費負 担の学校事務職員 (Dの 果た している役割を十分 に認識 しているが、今回のニ カ年間の調査の対象 はわ れわれの時間や能力 という観点か ら、県費負担の学校事務職員に限定 した。 こうした ことか ら、本稿 でいう学校事務職員 とは特 にことわ りのない限 り県費負担の学校事務職員を指す ことをお ことわ りし ておきたい。
今回報告す るアンケー トは、 これまでわれわれが行 って きた基礎的な調査の積み重ねの上 に計画 さ れた ものであ り、 S県 の小・ 中学校事務職員全員を対象に行われた ものである ° L調 査は 2003年 1月 〜
2月 に調査対象者本人に宛てたアンケー トヘの協力依頼 とアンケー ト用紙を学校宛て郵送 し、 15日 以内 に同封 した封筒で返送 して もらうよ う依頼 した。調査対象者は、 851名 であ り、回答者 は 588名 であ っ た。有効回答率は 69。 1%で あった。回答者の属性構成 0は 《 表 1》 の通 りである。
1
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24
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23
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*性 別不明者 14名 は未表記 *下 段の取値は平成 14度 4月 1日 現在の実取
われわれが調査 した質問項 目は以下の通 りである。
<属 性 など >
「勤務校の現状 (質 問 1)」 、 「勤務実態 (質 問 2)」 、 「動務する地域の現状 (質 問 3)」 、 「個人属性 (質
問 20)」
<職 務実態・ 職務態度 について >
「職務・ 生活満足度 (質 問 12)」 、 「 やる気 (質 問 13)」 、 「課題対応傾向 (質 問 14)」 、 「 バー ンアウ ト
(質 問 15)」 、 「 ス トレッサーの種類 と頻度 (質 問 16)」 「職、勤務校、事務研究会への愛着や将来展 望 (質 問 19)」 、
<専 門的力量の内実 と形成 について >
「受験区分 (質 問 4)」 、 「職業選択理由 (質 問 5)」 、 「職業選択時期 (質 問 6)」 、 「 リア リティー ショッ ク (質 問 7)」 、 「離職の有無 と理由・ 時期 (質 問 8)」 、 「職業 についての考え方の転換の有無、変化 の内実、きっかけ (質 問 9‑11)」 、 「力量形成施策 (質 問 17)」 、 「教室形式での研修 ニーズ (質 問 18)」
これ らの質問項 目は膨大であり、到底 この論文だけで全てを報告することはできない。 そ こで今回 は各質問群の相関関係 (例 えば満足度 とワーク 0モ ティベー ションのように )を 把握するというた こ とには踏み込 まず、主 に性別及び経験年数別を分析視点 として、単純基本集計や幾つかの クロス集計 を行い、それ らの分析結果 について報告するものとす る。
2: 学校事務職員の職務実態・職務態度
(1)学 校事務職員の多忙感
学校事務職員 と同 じ学校で働いている教師が強い多忙感を抱 いていることはよく知 られている。 ま
小・中学校事務職員の力量形成と専門性に関する研究 (2) 349
た、多忙感を引 きおこす要因については研究 も数多 く行われてきた 0。 これに対 して、学校事務職員 の多忙感の有無については、ほとんど調査が行われて こなかった。教職員の勤務実態 と題する調査報 告 も、実は調査対象者は教師のみであったとい うもの も多 い。直接教育活動を行 う教師の多忙への関 心 と学校事務職員の多忙への無関心 という「偏 った関心構造」が長年続 いてきた、また、形成 されて きたと言えよ う。 こうした「偏 った関心構造」それ自体に憤 りを覚えてきた学校事務職員 も多いと思 われる
(り。
では、実際には、学校事務職員はどの程度、多忙感を抱いているのであろうか。われわれは、 「 あな たは現在の仕事 に多忙を感 じますか」 0と いう質問を行い、
「強 く感 じる」 ―「 やや感 じる」 一「 あま り感 じない」 一「全 く感 じない」 という四段階の選択肢を設 けた。 この質問の方式で明 らかにされ る のは、回答者の主観 に基づ く多忙感である。 この多忙感は、事実 としての多忙を反映 しつつ も、必ず しもそれと一致 しない場合 もある。例えば、周 りか らみて非常に多忙に見える人 も、本人の主観では 充実感 に満 ち、多忙感をそれほど感 じていない場合 もある。そ ういうずれを含んだ質問項 目である。
われわれの問いに対 して、 「強 く感 じる」 という人が 40。 1%、 「 やや感 じる」 という人が 48.6%と い う結果 とな った。 さらに、自分が就職 した頃 と比較 した多忙化の進行について も聞いたところ、 「非常 に多忙化 していると思 う」と答えた人が 59.4%、 「 やや多忙化 していると思 う」と答えた人が 28.6%と な った。相当に多忙化が進行 していると受け止め られているのがわかる。
これまでわれわれが行 ってきたアンケー トや聞 き取 りにおいて も、教育改革が進行 し、小規模の事業 の数が増えていること、 ことに非常勤職員に関する事務が増えていること、 さらに、教育委員会か ら 学校 に仕事が下 ろされる傾向にあること、また ITの 普及 (メ ール等 )に より、短時間で処理が求め られ
る仕事が多 くなった こと等 により多忙化が進行 しているという話を聞いてきた。
では、 どのよ うな人がよ り多忙感を感 じているのだろうか。今回、われわれは、①校種や規模等 に よる違 い、②経験年数や職名による違 い、③男女・ 配偶者の有無 による違 いに注 目して分析 した。
<校 種や規模等 による違 い >
まず、中学校 に勤務する学校事務職員の方が多忙を「強 く感 じる」 という人の占める率 (小 学校 =
36.7%、 中学校 =46.6%)が 高 い。小・ 中学校を問わず、学級数が大 きいほど、 「強 く感 じる」という 人の率 (1‑5学 級 =25.0%、 6‑H学 級 =33.5%、 12‑17学 級 =43.3%、 18学 級以上 =49.7%)が 高 くな っ ている 0。 今回のデータによれば、小学校の方が学級数
(ノ lヽ学校 :1‑5学 級 =5。 9%、 6‑H学 級 =33.8%、
12‑17学 級 =28.4%、 18学 級以上 =31.9%、 中学校 :1‑5学 級 =12.7%、 6‑H学 級 =36.1%、 12‑17学 級 =
31.7%、 18学 級以上 =19.5%)が 多 い傾向にある。 したが って、学級数 という要因だけを考えれば、小 学校の方がよ り多忙感を感 じて も不思議 はない。現実 には、中学校の方が多忙感を感 じているのであ るか ら、影響力を持つ別の要因があるはずである。別の要因には、例えば、中学校の方が校内会計が 多 いな どの理 由があるが、 日立 った要素 として、常勤の教職員数が挙げられる。常動職員の数が多 い ほど多忙感を「強 く感 じる」 という人の率 (1‑10人 =3211%、 H‑20人 =31.3%、 21‑30人 =44.0%、 31
人以上 =50.0%)は 高 くな っているのである。 また、臨時教職員の数が多いほど、多忙感 (い ない =
36.4%、 1名 =34.1%、 2名 =42.0%、 3名 =44.1%、 4名 以上 =43.7%)は 増す傾向にある。 こうした こ とか ら、学級数 とともに、教職員数 も学校事務職員の多忙感 と関連性を持 っていることがわかった。
<経 験年数や職名 による違 い >
次 に多忙感が経験年数 によりどのように違 うのか考察 してみた。多忙感を「強 く感 じる」 と答えた
350 藤 原 文 雄・ 山 崎 準 二
人の率 (3年 目未満 =18.8%、 3‑10年 未満 =12.9%、 10‑20年 未満 =23.9%、 20‑30年 未満 =51.5%、 30年 以上 =61.9%)は 経験年数が増すごとに増加 している。 3年 目未満の学校事務職員の中に「 強 く感 じる」
と回答 した率が18.6%と やや高 くなっているが、 これは一人で十分な研修や支援体制のないまま配属 されることによる多忙感の高 まりであると解釈できる 0。
経験が増す ごとに多忙感が増す ことについてはどう解釈できるだろうか。二つの解釈が論理的に可 能である。つまり、経験が増すごとに仕事の量や質が高 まるという仮説 と仕事 は同 じであるが経験が 少ないものの方が能力が高 いという仮説である。 どちらの仮説 も成立 し得 ると思われ る。
まず、経験年数が増すにつれて仕事の量や質が高 まるという点 について論 じる。学校事務職員は初 任者であれ、ベテランであれ、学校 に一人で配属 され る。 こうした配属のスタイルをみれば どの学校 事務職員 も同 じ仕事を しているよ うに考えるか もしれない。 しか し、実際には、学校事務職員は事務 研究会や検討会 という名で一つの学校を超えて仕事を しているのである。
事務研究会 とは後 に詳 しく論 じるが、 ここでは学校事務職員が自主的 に組織 した職能団体 というよ うに理解 してほ しい。 また、検討会 とは、 S県 で古 くか ら導入 されている県教委事務所主催の研修等を 行 う会議の ことをいう。事務研究会の負担 について間 うた質問に対 して「非常 に重 い」 +「 やや重 い」
と答えた人の率 (3年 目未満 =46.9%、 3‑10年 未満 =50.5%、 10‑20年 未満 =59.8%、 20‑30年 未満 =69.
0%、 30年 以上 =61.9%)と いうよ うに経験年数が増すにつれて負担感は高 い傾向にある。 こうした こ とか ら、経験年数が増すにつれて仕事の負担が増えるか ら多忙感が増すという考え方 も否定で きない。
二つ目の仮説である若 い学校事務職員の方が能力が高 いため、多忙感が低 いという点 につ いて論 じ る。今 日のよ うに新 しい技術や考え方が相次 いで導入 される時期 には、 もはや経験年数が長 ければ職 務遂行能力が高 いとは言えない。 ことに、今 日のホヮイ トカラー職の職務遂行能力の基礎 とも言え る パ ソコン等IT技 術は若 い人の方が高い可能性がある。今回の調査で も、パ ソコン等ITに ついて間 うた 質問で「非常 に得意」 「 まあまあ得意」と答えた人の率 (3年 目未満 =65.6%、 3‑10年 未満 =64.6%、 10
‑20年 未満 =43.6%、 20.‑30年 未満 =35.4%、 30年 以上 =20.6%)は 経験年数をお うごとに下が ってい る。 こうしたパ ソコン等IT技 術への不慣れが多忙感を引き起 こしている可能性は考え られる。後 に述 べ るが、 このパ ソコン等 IT技 術への不慣れは学校事務職員のス トレッサーになってお り、適切なサ ポー ト体制の確立が必要である。
次 に、職名別 に多忙感をみてみよう。多忙について「強 く感 じる人」の率は経験年数 と同様 に職名 があがれば高 まるという傾向 (臨 時事務職員 =18.2%、 主事 =15.5%、 副主任 =27.1%、 事務主任 =
47.0%、 事務主査 =64.6%、 事務主幹 =50.0%)は 見受 けられる。事務主幹で多忙感が下が っているこ とについての解釈は分かれ るところであるが、後に述べるように事務主幹は仕事 に関する満足度が一 般 に高 い。 こうした ことが多忙感を押 し下 げている可能性 も考え られる。また、そテ ィベー ションに ついての質問群の中での「忙 しくてあっという間に勤務時間が終わる」かという質問項 目についての
「 まさにそ うである」、 「 だいたいそ うである」と答えた率 (臨 時事務職員 =57.6%、 主事 =57.7%、 副 主任 =68.3%、 事務主任 =73.8%、 事務主査 =81.1%、 事務主幹 =83.4%)は 職名があが るにつれて高
くな っている。
<男 女・配偶者の有無 による違い >
最後に、多忙感についての男女の差、配偶者の有無による差について論 じる。誤解のないように、念
のため強調 してお くが、結婚する、あるいは しないは個人の自由であ り、筆者等はどちらが望 ま しい
か とい うことについてはコ ミットしない。
小・ 中学校事務職員の力量形成 と専門性に関する研究 (2)
さて、女性の学校事務職員の方が多忙を「強 く感 じる」 という人の率 (女 性 =41.3%、 男性 =35。 1
%)が やや高 い。今回の調査では、男女を含めて、 68.0%が 配偶者を有 しているが、配偶者のいる人の 方が多忙を「強 く感 じる」という人の率 (配 偶者有 =45.3%、 配偶者無 =28.2%)は 高 い。 とくに、女 性で配偶者を持つ 331名 (588名 中の 52.9%を 占める )の うち、 46.5%が 多忙を「強 く感 じる」と答えて いる。 これに対 して、女性で配偶者を持たない 128名 (588名 中の 21.8%を 占める )の うち、多忙を「 強
く感 じる」 と答えたのは 28。 9%で ある。
さて、配偶者のいる女性 331名 は全学校事務職員の 5割 程度を占める多数派であるが、彼女 らの 85.5
%が 始業 15分 前か ら始業直前 に出動 し、 84.0%が 終業 1時 間後までに退動する。 また、彼女 らは、自宅 に仕事 を持 ち帰 ることがあるかという問 いに対 して、「 よ くある」「 ときどきある」を合わせ ると 57.7
%で ある。 この持 ち帰 りの数値は「男性 ―配偶者有 り (42.7%)」 、 「男性 一配偶者無 し (42.8%)」 、 「 女 性 ―配偶者無 し (50。 8%)」 という他のグループよりも高い。家事を中心的に担いなが ら、勤務時間は 全速力で仕事を行い、どうしてもの場合には仕事を持ち帰 ってこなすというのが、 この学校事務職員 の多数派の平均的な姿 として理解できる。性役割分業によって中心的に担わざるを得ない家事との両 立を図るという一 日の中で、多忙感を強 く持つ ことは理解できる。
われわれは、別の調査0:で、 「今日の出勤から退庁までの一 日がわかるように日記風に記述 して くだ さい」 というお願いをした。以下に引用するのは、その一例であるが、 この日記からも彼女 らの主観 レベルでの時間の流れの慌ただしさを理解できることだろう。
学校ではなかなか仕事に専念できない。市事務職員が事務室にいるが、 4月 に採用されたばか りのパー ト雇のため、
自分の仕事をおいて相手の仕事の面倒 も見な くてはいけない。まして今 日は、用務員が休みをとった。今日学校で仕事 はできないと思い昨夜家で頑張ってかなりやってきた。今週は週番なので、いつ もより 30分 早 く家を出た。学校に着い て非常通報スイッチを切 り替え、非常口をあけて校舎内をまわった後、生徒たちが待つ児童昇降口をあけた。いつ もな が ら元気のいい子 どもたちを迎え入れると私 も元気になる。学校に勤めて良かったと思 うのは生徒の元気な姿 といっ しょに過 ごせるか らである。朝の清掃 とお茶出 しで事務室の仕事 もスター トした。今日は 3年 生の保護者の授業支援ボ ランティアとその後、お年よりの授業参加ボランティアがある。来客に名札と授業の資料を渡さな くてはいけないので 準備をする。又、お年よりは予定より早 くみえるし、学校へのどの入 り口か らみえるかわか らないので気をつか う。来 校予定時刻の 30分 前か らあちこちをキ ョロキ ョロする。やっぱ り玄関でな く昇降口にみえた。人数 も多いので来客に は気をつかう。す ぐ時間は過ぎて しまう。お昼の準備を しなくてはいけない。私は給食の準備。級外職員 10人 分を 1人 で配膳 した。給食を食べることができやれやれと思 ったら、昼休みの時間には教室 と職員室か ら戻 ってきたお昼のお茶 のやかんの片付け 23個 分。やれやれ用務員がいないか ら仕方がないか。昼休みが終わ り清掃時間になれば教室か らの ゴ ミの世話。午後の授業が始まったと思 ったら PTA役 員さん 2人 が来校。こないだの PTAバ ザーの会計報告の打合せ にみえた。 PTA会 計担当者 としてまずお礼、そしてア ドバイスをする。 2人 は作業を してか ら帰 られたが、副会長の N さんが帰 りがけに 6年 生の長男の話 しをされた。昨年度に比べ遅刻 と欠席はかなり減 った。私か らも今 日の N君 との会 話の内容について話 しを した。 このまま皆 と卒業できるのを待つ楽 しみは母親 も職員の一人である私 も変わ りない。
夕方 4時 半になったので週番 として校舎内・外の戸締 りにまわる。 12月 は夕方が早 く、暗 く寒い。完了。勤務時間は終 わったが生徒が帰 ったこれか らが仕事ができる。昼間は、急な仕事に対応 していると時間はどんどん過ぎていって しま う。1人で事務室で仕事を していると A先 生が「そろそろ帰るよ」と声をかけにきて くれた。管理職はすでに帰 っていな い。居残 った職員数人と施錠をする。仕方がない今 日も仕事を持ち帰ることにした。先程、夫に今 日も遅 くなるか ら夕 食の買 い物を頼むと電話を してあるか ら少 し安心だが。
351
352 藤 原 文 雄・ 山 崎 準 二
(2)職 務満足感
職務満足感 とは、組織メンバーが自己の職務及び職務環境に対 して抱 く満足感のことである。組織 メンバーの職務満足は、給与、昇進、職場の同僚、上司の監督方式、仕事それ自体の満足の合成物 と 言われる (D。 われわれは、以上の観点に、学校事務職員が抱えてきた課題に対する満足度に関わる観 点を加えて、全部で 26の 職務に対する項目を設けた。 さらに、家族関係 という観点や余暇という観点 など全部で 7つ の生活に関する満足を測定する項目を別途設けた。今回は生活満足に関わる分析は割 愛する (1° 。
職務満足を測定する観点 26に ついての男女別のクロス集計 も含んだ結果が 《 表 2》 である。尚、質問 の際には「非常に不満足」から「非常に満足」まで五段階で測定 したが、理解のしやすさの観点か ら
「不満足」 ―「 どちらとも」 一「満足」の三段階に集約 した。
*熙 回番者は回答結果は未表記のため、「不洒足」、「どちらとも J、 「涸足」の合計は必ずしも 1∞ %に ならない 0 、
*「 不満足Jの 男女差 (男 性の方が不満が大きい)が 大きい順に並べてある。
<満 足度が高 い項 目 >
われわれが用意 した観点の中で満足度が高 い順 に 7項 目挙 げれば、 「責任が任 されているという観点 (60.0%)」 →「職場の雰囲気 (57.5%)」 →「校長 との関係 (56.5%)」 →「教頭 との関係 (54.9%)」
→「男女平等 という観点 (54.9%)」 →「他の職員達 との関係 という観点 (54.3%)」 →「教員達 との 関係 という観点 (53.4%)」 である。
このように、学校事務職員の職務満足に関わる項 目の うち、満足度が高いのは「責任が任 されてい るという観点」を除 けば、人間関係に関わるもので占め られている。
こうした人間関係 に関わ る項 目の後に、 「仕事を通 じて成長できるという観点 (51.5%)」 や「主体
性が発揮で きるとい う観点 (48.5%)」 、 「仕事 その ものという観点 (46.8%)」 、 「達成感があるとい う
観点 (46.4%)」 といった仕事その ものに関する項 目が続 く結果 となった。 ちなみに、後 に述べ るモテ
小・中学校事務職員の力量形成 と専門性に関する研究 (2) 353
ィベー ションに関する質問群の中に含 まれている質問「仕事がつまらな く思えて仕方のないことがあ る」に対 して「 まさにそ う」 「 だいたいそ う」と答えた人は 20。 1%で あ り、男性の場合 36.0%に も達 し ている。
こうした仕事 その ものに関する満足度を高 いとみるか、低 いと見 るかは判断に迷 うところである。
およそ、給料 という対価を受 け取 り仕事をするという関係 にある以上、仕事 その ものに全ての人が満 足す るというような職業はあって もまれであると考え られ る。 その ことを考えれば、以上の数値を ど
う評価すればいいのか迷 うところである。
しか し、他の職 と比較す ることによって相対的な位置づけを行 うことは可能である。ある小・ 中学 校教師を対象 とした調査では 79%の 教師が「仕事その もの」に満足を感 じている (la。 完全 に同 じ質問 項 目ではないので単純な比較は出来ないが、 この数値 に依拠すれば、学校事務職員の仕事 その ものに 関する満足度 は教師 よりも低 い。
<不 満足度が高い項 目 >
われわれが用意 した観点の中で不満足度が高 い順 に 5項 目挙 げれば、 「仕事の余裕・ ゆとりという観 点 (51.7%)」 →「給与水準 という観点 (34.7%)」 →「教育・訓練、能力開発支援 という観点 (33.7%)」
→「困 った際のア ドバイスという観点 (30.4%)」 →「給与の配分・昇進 という観点 (29.4%)」 である。
「仕事の余裕・ ゆとりという観点」での不満足度が他を引き離 して高 いことがわかる。 この観点 に関 する不満足度 は女性の方が男性 より高 くなっている。 ここで も、配偶者を持つ女性の不満度が一番高
くなっている。
残 りの 4つ の観点 に関 してはそれほど男女差は見受 けられない。そこで、 ここでは職名 による違 い により分析 してみよ う。 「給与水準 とい う観点 (臨 時事務職員 =51.5%、 主事 =50.0%、 副主任 =38。
8%、 事務主任 =28.5%、 事務主査 =24.4%、 事務主幹 =16.7%)」 につ いては不満足度は、職名があ が るにつれて低下する。
「給与の配分・ 昇進 という観点 (臨 時事務職員 =30。 3%、 主事 =32.8%、 副主任 =34.1%、 事務主 任 =28。 5%、 事務主査 =24。 4%t事 務主幹 =14.3%)」 については、副主任が ピークとなっている。
「 教育・訓練、能力開発支援 という観点 (臨 時事務職員 =24.3%、 主事 =35.4%、 副主任 =41.2%、 事 務主任 =36.3%、 事務主査 =27.5%、 事務主幹 =23.8%)」 、 「困 った際のア ドバイスという観点 (臨 時 事務職員 =15。 1%、 主事 =40.5%、 副主任 =44.7%、 事務主任 =26.8%、 事務主査 =23.6%、 事務主幹
=14.3%)」 というように副主任を ピークとなる山型曲線 となっている。今回は分析を割愛す るが、他 の項 目を含めて、 この副主任の不満足度が他の職名に比較 して高 いという傾向が見受 けられ る。副主 任 とは今回の調査回答者では 31〜 41歳 の学校事務職員であるが、気にかかるデータではある。
<満 足度が低 く、不満足度が高い男性 >
今回、われわれの興味を引いたのは女性 と比較 した際の男性の満足度の低 さと不満足度の高 さであ る。 26の 観点の うち、男性の方が女性 よりも満足度が高 い項 目は 6項 目にとどまっている。 「個人生活 への影響 という観点 (男 性 =26.1%、 女性 =22.7%)」 、 「仕事の余裕 0ゆ とりという観点 (男 性 =27.
0%、 女性 =18.8%)」 、 「校長 との関係 という観点 (男 性 =61.3%、 女性 =55.7%)」 、 「教頭 との関係 と いう観点 (男 性 =60.4%、 女性 =54.2%)」 、 「校長の監督の在 り方 という観点 (男 性 =40.5%、 女性 =
31.3%)」 、 「困 った際のア ドバイスという観点 (男 性 =29.7%、 女性 =28.3%)」 である。
また、男性の方が不満足度が女性 よ り低 い、つまり、女性の方が不満足度が高 い項 目は 5項 目にとど
354 藤 原 文 雄・山 崎 準 二
まっている。 「個人生活への影響 という観点 (男 性 =17.1%、 女性 =20.7%)」 、 「仕事の余裕・ ゆとり という観点 (男 性 =42.3%、 女性 =53.6%)」 、 「教頭 との関係 という観点 (男 性 =15.3%、 女性 =16.
2%)」 、 「他の職員達 との関係 という観点 (男 性 =7.2%、 女性 =9.5%)」 、 「学校経営 に参画 しているか という観点 (男 性 =20.7%、 女性 =23.1%)」 である。
不満足に関 して、男女の差が最 も大 きい 5項 目は、 「権限が与え られているという観点 (男 性 =40.5
%、 女性 =24.6%)」 、 「仕事その ものという観点 (男 性 =27.9%、 女性 =12.9%)」 、 「達成感があると いう観点 (男 性 =28.2%、 女性 =15.6%)」 、 「仕事を通 じて成長できるという観点 (男 性 =22.5%、 女 性 =10。 4%)」 、賄ヒカが発揮で きるという観点 (男 性 =22.5%、 女性 =11.0%)」 であ った。女性 に比 較すれば、男性の学校事務職員は仕事 に直接関わることに関 して不満足度が高 いことがわか る。
(3)ワ ーク 0モ テ ィベーション
ここで扱 うモティベー ションとは、 ワーク・ モティベー ションの ことである。人間はワー ク =仕 事 以外 に も、 そティベー ションを持つ (例 えば育児や趣味 )の が普通である。 ワーク・ モティベー ショ
ンを考察する時には、数あるモティベー ションとの「バ ランス感覚」 (0が 必要なのである。尚、 ワー ク・ モティベー ションは比較的短 い期間 における仕事への意欲の ことであ り、生涯にわたつて変動す るのが普通である。
さて、われわれは、田尾雅夫の研究
(1→を参考 に全部で 14の 質問項 目を設 けた。職務満足・不満足 ほ ど明確 に男女の違 いがなか ったので、 ここでは経験年数別に分析を行な うものとする。経験年数別の クロス集計 も含んだ結果が表 3の 通 りである。尚、質問の際には「 まさにそ うである」か ら「 まった く そ うでない」まで五段階で測定 したが、理解の しやすさの観点か ら「 そうである」―「 どちらとも」一
「 そ うでない」の三段階に集約 した。
表 3を みてわか る通 り、 3年 目未満の学校事務職員を除けば、 そティベー ションは基本的 に経験年数 が上が るほど高 まっている。筆者 らも驚 いたが、見事 にこの傾向が成立 している ° 9。
例えば「例え残 業手当等が もらえな くて も、や り終えるまでは仕事を続 けたいと思 うことがある」か という問いに対 して、 「 そ うである」 と答えた人の率は、 3年 未満 =75.0%、 3‑10年 未満 =78.5%、 10‑20年 未満 =80.4
%、 20,30年未満 =83.5%、 30年 以上 =88.9%と なっている。
この例のように経験年数を経 るにつれて、そティベー ションは高 まる傾向にあるが、 10‑20年 未満の 経験年数を持つ学校事務職員のモティベー ションが低 い質問項 目も見受 けられる。例えば、 「 私は仕事
*表 の数値は「 まさにそうである J十 「 だいたいそうである」と答えた人のそれぞれの経験年数別の比率
小・ 中学校事務職員の力量形成と専門性に関する研究 (2) 355
よ りも、 もっと自分の生活の方を大切に したい」 という質問項 目では、 3‑10年 未満 =34。 4%、 10‑20年 未満 =46.2%、 20‑30年 未満 =29.2%、 30年 以上 =14。 3%と なっている。つまり、 10‑20年 未満の学校事 務職員は他の グループと比較 して、仕事以外にモティベー ションを向けているのである。 モティベー ションを向けている対象 として育児が考え られる。「育児・介護などで今は仕事に専念できない」とい う質問項 目に対 して「 そ うである」 と答えた率は 10‑20年 未満の学校事務職員が一番多 い。
尚、この 10‑20年 未満の学校事務職員が今後 ワーク・ モティベー ションを高めてい くのか、それ とも 私生活を大切 にする考え方が維持 されたままなのか興味がひかれる (0。
(4)ス トレッサー
ス トレッサー (ま たはス トレス源 )と は「 いやだな ぁと感 じる出来事」のことである。そ うしたス トレッサーの蓄積 により、心身に もた らされるよ くない症状のことをス トレス反応 という。
ス トレッサーは二つに区分できる。つまり、例えば親の死や離婚 といった「人生上のいやな出来事」
と、 「 日常的ないやな出来事」である
(1つ。後者は一回の出来事 による衝撃は少ないが、何度 も経験が重 なると大 きな負担 になる。
われわれは、以前 に行 ったアンケー ト調査か ら学校事務職員のいやな出来事 に関する記述を抜 き出 し、 22個 のス トレッサーを並べ、それに対する気持ちを「 とて も嫌」、 「 やや嫌」、 「気にな らない」とい う三段階で聞 いた。 また、それぞれのス トレッサーについてその発生頻度を聞いた。
颯度 =「 おおいにある Jと 答えた
1,含*憲 回告書は未
3a入の
FLめ、合計は10096に ならなしヽ ・
*「 とても日」 という率が高い願に触べ晟
その結果が 《 表 4》 である。学校事務職員が「 とて も嫌」と感 じるス トレッサーの上位 5項 目は「 相次 ぐ法改正に関する通知が理解できないこと (46.6%)」 、 「事務室内または他の教員以外の職員 との人間 関係が こじれた こと (37.4%)」 、 「 お金に無頓着な教員に対応す ること (35.7%)」 、 「 諸手当認定 に関 し て教員 と トラブルがおきたこと (35.5%)」 、 「県の旅費 システムが使 いづ らいこと (35.5%)」 であった。
ここで挙 げ られている県の旅費 システムであるが、 この調査が行われた平成 14年 度 に全県 に導入 さ れたパ ソコン端末 による入カ システムの ことである。当時、多 くの学校事務職員が これへの対応 に苦 慮 していたためこうした表現を したが、 これはパ ソコン等 IT関 連のス トレスの要素 も含んでいる。
われわれは、教育法規 とパ ソコンの得意・ 不得意 について質問 した。教育法規が「非常に得意」 と
い う人は 1%、 「 まあまあ得意」とい う人は 20.6%、 パ ソコンが、「非常に得意」という人は 1.7%、 「 ま
356 藤 原 文 雄・ 山 崎 準 二
あまあ得意」という人は 37.8%に とどまっている。相当に教育法規 とパ ソコンについての自信は低 い。
こうした ことが、 ス トレッサーとして上位にあがる原因になっていると考え られる。
また、表 4を 参照 して欲 しいが、一般に女性の方が「嫌だ」と感 じる傾向が強 い。 これは「嫌だ」と いうことを素直に口に出す ことによリス トレッサーがス トレス反応を引 き起 こす ことを防 ぐ対処行動
(コ ー ピング行動 )の 一種 とも考え られる。む しろ、 「 気にな らない」 ことが多 い男性の方が実際には ス トレス反応を引 き起 こす可能性 もある。
(5)バ ー ンアウ ト
バー ンアウ トとは「長期間にわたる人間との密接な関わり合いと結びついた、持続的なあるいは断 続的に繰 り返 される感情的圧迫の結果」として生 じる「身体的、感情的、精神的な疲労困億状態」 (181の ことをいう。バー ンアウ トは、 日本語では「燃え尽 き」 と訳 されている。 この燃え「 尽 き」 るという 言葉が如実 に示すよ うに、バー ンアウ トのプロセスは漸進的に進行する。要す るに、長期間 にわた る
ス トレッサーの慢性化によ り、疎外感や無力感 に陥 ることである
(191。学校事務職員の仕事は、机 に向か って決め られた仕事を標準化 された手続 きに従 って機械的に行 う というイメー ジではとらえ られない部分を持 っている°°。先 に見たように、学校事務職員のス トレッ サーには対人関係の関連す るものが多 く含まれている。
教師のバー ンアウ トについては、 これまで少なか らず関心が集 まり、実態調査 も行われて きた。実 態調査の多 くは、教師にバー ンアウ トに陥 っている者が多いことを示す ものであ った ゛ 1ヽ では、学校 事務職員はバー ンアウ トという観点で見た際にどのような状態にあるのだろうか。
われわれは、教師 との比較を念頭に、パイ ンズ (Pineso A.M。 )の バー ンアウ ト尺度を採用 した。 この 尺度 は「疲れ る」、 「憂鬱」など調査協力者の状態を聞 く 20項 目を「
1。いつ もある」か ら「 7。 まった くな い」という七段階で答えて もらった。その結果をネガティブな (た とえば「疲れる」など )項 目では、
スケール 1〜 3が 1点 となる。 ポジティブな項 目 (た とえば「 いい一 日 )で はスケール 5〜 7に 1点 が与え
られる
1221。それ らの合計点 によ り、 0〜 1点 がバー ンアウ トの「 I低 度」、 2〜 4点 がバー ンアウ トの「 Ⅱ
中度」、 5〜 9点 がバー ンアウ トの「 Ⅲ高度」、 10点 がバー ンアウ トの「Ⅳ きわめて高度」という分類を行 った。
表 5 バ ー ンア ウ ト
男性 (N=111) 女性 (N=463) 全体 (N=588)
低 度 32.4% 27.1% 28.00/。
I 中度 28.6% 36̲40/。 35.00/0
Ⅲ 高度 200% 23.9% 23.0%
Ⅳ きわめて高度 19.0% 12.5% 14.0%
*性 別不明者の回答結果は未表記
その結果が 《 表 5》 である。 として、 「 I低 度」 =28.0%、「 Ⅱ中度」 =35.0%、「 Ⅲ高度」 =23.0%、
「 Ⅳ きわめて高度」 =14.0%と いう分布 となった。 これに対 して、岡東寿隆、鈴木邦治が教師に対 して 行 った調査では、 「 I低 度」=25.6%、「 Ⅱ中度」 =298%、 「 Ⅲ高度」=30.0%、 「 Ⅳ きわめて高度」 =
15.6%と いう分布 となっている。教師よりもややバー ンアウ トの程度は低いが、それほど大 きな差は
見受 け られない。
小・中学校事務職員の力量形成 と専門性に関する研究 (2) 357
3.学 校事務職員の職業選択 と力量形成
(1)職 業選択の理 由とその時期
職業の特徴を表す一つの指標 として、 その職業の選択のされ方がある。教師の場合、教員養成系学 部入学動機 として「教師にな りたいか ら」が、 「 自分の職業 として教職を心 に決 めた時期」 も「小 。中 学校の頃」及 び「高校 3年 の頃」が、それぞれ他の動機や時期を引き離 して多 く、そのいちばん大 きな
きっかけは自分が出会 った「小 0中・高校の教師の影響」であるという特徴を有 している ("L
<選 択理由 >
この点で、学校事務職員はどうであろうか。今回の調査では、「 公務員採用試験時の受験区分」 (問
4)、 「学校事務 という仕事を選択 した理由」 (間 5)、 そ して「学校事務 という仕事を選択 した時期」 (問
6)の 3つ の質問を設定 し、回答を求めた。その結果を表 した ものが、《表 6》 である。「受験区分」 と いう点では、男女 とも 90%近 くが「学校事務試験を受 けた」としているが、選択理由やその時期の点で は、男女の違 いがみ られる。
職業選択 ( 由、選択時
男性 (N=111) 女性 (N=463) 全体 (N=588) 受
験 区 分
1.行 政職合格後に自主選択 36% 2.2% 2.70/c
2.行 政職含格後 に命令赴任 6.3% 2.80/。 3.60/c
3。
学校事務職受験合格 87.4% 88.3% 87.80/c
4。
その他 2.7% 4.5% 4。 3%
選
択
理
由
1.公 務員志望で臓種こだわらない 41。 4% 26̲80/。 29.8%
2./AN務 員志望で一般行政職志望 20。 7% 8.9% 11.4%
3.公 務員志望で学校事務臓希望 8.1% 20.3% 18̲2%
4.学 校事務臓志向 7.2% 16.4% 14̲5%
5.民 間企業志望 1̲8% 4̲3% 3召
6.教 職希望 7.2% 6̲7% 6.60/0
7.女 性の能力発揮できる臓揚希望 0.0% 2.8% 220/0
8.その他 13.5% 11.9% 12.10/。
選 択 時 期
1.小 学校の順 00% 00% 00%
2.中 学校の頃 0.〇 % 0.9% 0.7%
3.高校
1・2年 の順 2.7% 2.8% 2.8%
4.高 校3年 の頃 7̲20/。 34.8% 29.3%
5.浪 人の頃 2.7% 〇 .9% 1.2%
6.短 大 。大学入学の頃 1.8% 4.8% 4.3%
7.短大 。大学卒業の頃 42.3% 20.3% 24.7%
8.他 の職業に就いていた頃 15.3% 17.1% 16.5%
9.公 務 員試験の後 16.2% 112% 12̲2%
10.そ の他 11.7% 60% 7.3%
*性 別不明者 14名 の回答は未表記
すなわち、選択理由は、男女 ともに「公務員を志望 してお り職種はこだわ らなかった」 とする者が 第 1位 の理由とな っているが、男性の場合、その数値は 40%を 越え、その次 には「公務員を志望 してお り本 当は一般行政職 にな りたか った」 とする者が 20%ほ どで続 いている。 それに対 して女性 の場合、
第 1位 の理 由「 公務員を志望 してお り職種はこだわ らなかった」の指摘数値は低 く 27%ほ どであ り、そ
358 藤 原 文 雄・ 山 崎 準 二
の数値 と大差ない指摘数値で「公務員を志望 しており学校事務職員にな りたか った (20%)」 や「 子 ど もや学校が好 きで学校事務職員にな りたか った (16%)」 とす る者が続 いている。男女 とも、 「 その他」
が 10%余 りお り、その具体的内容は、 「高校の先生か らすすめ られた」 「親か らすすめ られた」 「知人か ら学校事務職を紹介 された」 「臨時事務職員を していた」等々という事例であった。
<選 択時期 >
選択の時期 においては男女の違 いがいっそう明瞭であ り、男性の場合、 40%余 りが「短大・大学卒業 の頃」、続 いて「他の職業に就 いていた頃」や「公務員試験の後」が 15%余 りとなっている。それに対 して女性の場合、 35%ほ どで「高校 3年 の頃」が第 1位 とな ってお り、続 いて「短大・ 大学卒業の頃」
や「他の職業 に就 いていた頃」が 20%ほ どとなっている。 「 その他」の具体的内容は、 「大学・ 短大在 学中」 「就職浪人」 「臨時事務職員を していたとき」等々という事例であった。
このように、学校事務職員の職業選択 に関する特徴は、男性の場合がまず公務員志向型であ り、 そ れは短大 。大学卒業期 に選択が相対的に多 く行われているのに対 して、女性の場合は同 じ公務員志望 で も学校事務職志向型であ り、その選択時期は高校3年 の頃である。 この選択時期の違 いは、回答者 に おける男女の最終学歴の違 いを反映 していると思われ る (男 性の 64.0%が 大学卒であ り、女性の 50.8
%が 高校卒である )。 しか し同時に、男女 ともに学校教員の選択理由とは異なって、 「ノ
lヽ・ 中学校の頃」
はほとん どないことや「他の職業 に就 いていた頃」が 15%程 度ある事が特徴的である。職務経験年数 との関係 も考察 したが、男女 ともに特筆すべき違 いはみ られなか った。
(2)入 職後 の実感
どの職業 において も、入職後の リア リティ・ ショックは大 きいものがあり、 シヨックを受 けた具体 的内容は、その職業の性質を特徴づけているともいえる。教師の場合、 「仕事量の多 さ」、 「子 どもの能 力差の大 きさ」、 「管理・統制のきつ さ」、そ してそれにも関わ らず「世間の日の冷たさ」などが ショッ
クの具体的内容 として指摘 されることが多いという特徴を有 している°°。
同 じ職場 に勤務する学校事務職員の場合、それはいかなる内容であろうか。 「仕事 に実際に就 いた直 後か ら5年 間 ぐらいの間 に予想外であった こと、予想以上であった ことの うちで、もっとも印象的だ っ た こと」 (問 7)を 24項 目の中か ら3つ まで複数選択可で回答 して もらった。 その結果の一部を表 した
ものが 《 表 7》 である。
7 入 :3つ ま 可
男性 (N=111) 女性 (N=463) 全体 (N=588)
1.仕 事 内容広 く、様長な知識必要 414% 54.6% 52.0%
2.十 分な教育・訓練無いままに配属 40̲5% 黎 、 1% 434%
3.校 内に仕事 を教 えて <れ る人がいない 35.1% 34.8% 35.70/0
4.役 割や臓務があいまい 387% 2.8% 27.6%
5̲新 任者にとって責任が重い仕事 117% 29.60/0
6.学 校や教員の者え方やルールの特殊性 234% 21̲8% 21.9%
7.教 員が学校事務臓員を一段低 <見 る 21.6% 18.4% 19̲20/。
8.事 務圃 員 を先生 と呼ぶ 14.1% 9.5% 10.5%
9。 法規に基づいた仕事多い 8.1% 10.6% 100%
*性 別不明者の回笞結果は未表記
*選 択肢は「 その他」を含めて 24項 目 .回 答者全体結果が 10%以 上の 9項 目をここでは掲載 した。
小・ 中学校事務職員の力量形成と専門性に関する研究 (2) 359
全体 と して指摘の多か った上位項 目か ら学校事務職 のおかれて いる特徴が うかがわれ る。すなわ ち、いちばん多 く指摘 された「仕事内容が広 く、さまざまな知識を必要 とされること (52%)」 に もか かわ らず、 「十分 に教育・ 訓練がないまま配属 されること (43%)」 や「校内に仕事を教えて くれ る人 がいないこと (36%)」 や「役割や職務があいまいであること (28%)」 などの現状が浮かび上が って きているか らである。 これは、学校事務職の扱 う内容が幅広 いものであ り法規上のさまざまな知識を 必要 とするものであるにもかかわ らず、未だ専門職 としての認識が一般 に不十分であるため、初任者 は特別な研修 を保証 されないままに一人職場 に配置 されているという実態を反映 した結果であろ う。
とりわけ高校卒者が回答者の半数を占める女性の場合、 「仕事内容が広 く、さまざまな知識を必要 とさ れ る」や「新任者にとって責任が重い仕事を任 される」 という思 いは一層強いということではないだ ろ うか。 ̀
職務経験年数 との関連を考察 した結果では、女性 よりの男性回答者か らの指摘が多か った「役割や 職務があいまいであること」 という項 目のみ違 いが認 め られ、男女 ともに職務経験年数の多 い者 (入 職時期の古 い者 )ほ ど指摘率は高 くなっている。言 い換えるな らば、学校事務職 という職種の地位が 次第 に確立 されてきていることの反映 とも推測 される。
(3)職 務遂行上の転機 と離職の危機
ライ フコース・ アプローチにおいて、 ライ フコース上 に生み出されるさまざまな「転機」 に着 目す ることは重要である。なぜな らば「転機」に着 目することによって、職務遂行上の変化 とその内容を 把握 し、さらにそれを生み出 した時期や要因を探 ることができるか らである。 それは「離職の危機」と な って表れて くることによって、その職務及びそれに従事する者の抱える問題が一層鮮明に浮かび上 が って くる
1251。今回の調査では、 「学校事務職員 という職業 についてのあなたの考えや取 り組みのあ り方が大 きく変 わ った時期があったか」 (問 9)と「 ある」と答えた者だけに「 いつ頃 どのように大 きく変わ ったか」 (問 10)、 さらに「今 まで学校事務職員を辞めようと思 った ことあるか」 (問 8)と 「 もっとも辞 めようと思 った時期 とその理由」 (問 8‑1)を たずねている。 その結果の一部を表 した ものが 《表 8》 と 《 表 9》 で ある。
表 8 業上の転機の有無 とその内容 :複 数選択可
男性 (N=111) 女性 (N=463) 全体 (N=588)
有
無 1.転 機あった 61.30/0 59.4% 590%
2.転 ISlな か つた 27.90/。 29。 6% 294%
内
容
1.や る気にな った 23̲50/。 16。 70/。 18.20/。
2.や る気を失った 10.30/0 3.3% 4.9%
3.も っと学ばなければと思った
.32̲40/● 46.9% 80/0
4.学 ぶ意欲 をな <し た 0.0% 0.4% 0̲30/6
5.仕 事が楽 し <な つた 14.7% 17̲1% 167%
6.仕 事が楽 し <な <な った 4.4% 4.7% 4螺
7.責 任 を感 じるよ うにな った 50.0% 50.9% 504%
8.無 責任 にな った 0.0% 00% 00%
9.考 え方が変わ った 39.召 43.60/0 429%
10。 その他 0.0% 180/a 14%
*性 別不明者の回答結果は未表記
*「 転機あった」と回答した者のみ「 その内容」を複数選択可とした。
360 藤 原 文 雄 0山 崎 準 二
*回 笞者数は、「 今まで学校事務臓員を辞めようと思ったことがあるか」との問いに「ある」と奮えた者
322人 (全回笞者のうちの 54.8%)で ある。問年数の下にカ ッコ書きした人数は「辞めようと思 つた」
時期として回答 した人数であ り、第1〜 5位 までの各項目にカ ッコ書きした数字はそれぞれの日年数に 対応した理由の指摘数である。「 辞めようと思つた職年数」を目くのは三つ以内、その問年数電に理由を 指摘するのも三つ以内とした。
<転 機 >
男女 ともに 60%ほ どの者が「転機があった」と答えてお り、その内容は「 自分の仕事の責任を感 じる ようになった (50%)」 、 「 もっと学ばなければと思 った (44%)」 、そ して 、 「学校事務職員 という職や仕 事 についての考え方が変わ った (43%)」 と回答 した者が多か った。 いずれ も積極的な方向への変化を 語 っているが、それは回答者 自身 にとって自己の成長の手 ごたえ とともに、前向きで喜ば しい印象 と して強 く記憶 されているか らであろ う。「考え方が変わった」との回答を寄せた者には、その具体的内 容の記述を求 めたが、 「標準事務職の通知が出て、事務職員が学校経営 に参画す るという意識が高 ま り、自分の考えが管理職や教員にも聞いて もらえるようになった」 「 当時の若 き校長が行政感覚を持 ち 合わせた指導力抜群の方で、¨0学 校事務 とは何か、生徒のための事務 とは何かを学んだ」 「 自分が学 校教育 目標を達成 させ るためのスタッフの一員 として自覚するよ うにな った」 という声 に代表 され る 学校経営への参画意識の強まりを契機 としている事例、あるいは「 (地 区での )事 務職員についての職 務 についての研修を管理職を巻 き込む形で深めてきた こと」 「事務研で推進委員 となって」 「先輩の工 夫 している仕事のや り方や、パ ソコン業務への取 り組みで仕事の合理化を地域単位で効果をあげてい るのを見て」などを契機 としている事例などが、仕事に前向きな形での変化事例 として語 られていた。
それ とは逆 に、 「 どんなに努力 して も教師中心の学校では理解 されることな く、いつまで も『縁 の下の 力持 ち』で終わ るというあきらめが生 じた」 「毎 日あまりに忙 しく、毎 日 9時 頃まで仕事を していた時 期があ り心身共 に疲れ切 っていた。¨ (海 外旅行をする中で時間の感覚の違 いを感 じ )人 間 らしく行 き たいと思 い、 それか ら仕事 は時間内に、それ以後は自分のために時間を使 っている」 という、学校事
孤独感・支援体制の欠 10 子育てとの両立の難しさ
子育てとの両立の難 しさ
子育てとの両立の難 しさ
*指 摘率の高い項 目 5位 まで表記
小・ 中学校事務職員の力量形成 と専門性に関す る研究 (2) 361
務職員のおかれている現状の一側面を語 っている事例 も見 られた。
また、その変化の時期 については、回答者の職務経験年数に違 いがあるため回答結果読み取 りには 制約があるものの、 「 もっと学ばなければと思 うた」時期は職務経験年数 1〜 5年 間が (同 回答者の うち
30。 9%)、 「 自分の仕事 に責任を感 じるようになった」時期は同上6〜 10年 間が (27.4%)、 「 学校事務職 員 という職や仕事 についての考え方が変わ った」時期は同上 11〜 15年 間が (22.8%)、 それぞれ ピーク を形成 している (未 表記 )。
<離 職危機 >
次 に「離職の危機」であるが、 「学校事務職員を辞めよ うと思 った ことがあるか」との問 いには、全 体では 54.8%(男 性 =55.0%、 女性 =54.9%)の 人が「 ある (実 数 322人 )」 と回答 している。 その「 あ る」 と回答 した者のみに対 して「 もっとも辞めようと思 った時期 とその理由」をたずねた結果の整理 であるが、その回答の仕方 は、 「辞 めようと思 った時期」を具体的に経験年数○〇年 目の頃 と記入 して もらい (3つ まで回答可能 に した )、 そのそれぞれに対応 した理由を 21項 目の中か ら3つ まで回答 して もらうという形式 に した。《 表 8》 は、その職務経験年数時期 とそれに対応する理由を整理 した もので あるが、職務経験年数 1〜 5年 間に関 しては指摘が集中 したので 1年 ごとに細か く整理 し、あとは相対 的に指摘が集中 した 10年 目、 15年 日、 20年 日、 25年 目という節 目ごとに整理 した ものである。
まず、職務経験年数 1〜 5年 間にみ られる特徴は、 「他の職業への憧れ」と「孤独感・支援体制の欠如」
の2つ の項 目の相対的多 さである。 これは、職業選択一般にありがちな リア リティ 0シ ョックを伴 う選 択結果への迷 いを、そ して単数で配置 されている学校が多 いという学校事務職員固有 の困難 さを、 そ れぞれ反映 した結果であるように思われる。職務経験年数 10年 目及 び 15年 目には、 「 子育て との両立 の 難 しさ」が第 1位 となっている。全回答者のおよそ8割 近 くが女性であることか ら、彼女 らの 30歳 代 に おける出産・ 育児の時期の困難 さを反映 した結果であるように思われる。そ して職務経験年数 20年 目 及 び 25年 目には、 「仕事の多忙 さ」や「責任の重 さ」が目立 ってきているが、 これは回答者が事務主任 や事務主査 といった職階に就 く時期の困難 さを反映 した結果であるといえよう。
職務経験年数 10年 目及 び 15年 目、同 20年 目及び 25年 目の特徴は、年齢的にみて、それぞれ家庭 と職場・
で求め られることになる役割・立場か らもた らされる結果であ り、学校教員の場合 ともほぼ同様であ る。 しか し、職務経験年数 1〜 5年 間の特徴は、学校教員の場合において圧倒的に多 く指摘 されている
「仕事の過重負担」を上回 って、 「他の職業への憧れ」と「孤独感・支援体制の欠如」とい う2つ の項 目 が指摘 されていることである° 6ゝ
(4)力 量形成 と研修 ニーズ
職業選択や入職後の実感及 び抱える困難 さなどの特徴把握を通 して学校事務職員のおかれている現状 を うかがい知 ることができたわけであるが、次 に彼 (女 )ら の力量形成 に向けた要望や研修 ニーズに ついてみていこう。
今回の調査では、これ らの点 に関 して、 「学校事務職員の力量をさらに向上 させ る上での行政施策 と
して最 も効果的であると思われるもの (26項 目の中か ら3つ まで複数選択可 )」 (問 17)と「勤務場所か
ら離れた教室・講義室などでの研修の うち、最 も研修 したい内容はどのような ものか (21項 目の中か ら
1つ だけ選択 )」 (問 18)と いう2つ の問 いを設定 し、回答を求めた。《表 10》 と 《 表 11》 がそれ らの結
果を表 した ものである。
表 10 カ量向上のため に望 む :3つ まで複数選択
=
π リ
男性 (N=111) 女性 (N=463) 全体 (N=588)
1.他 の事務臓 員の仕事 を見る機会 を増 加 18.9% 33.0% 29.80/c
2.県 教委等主催の研修を改善・充実 13.5% 27.0% 24.7%
3.学 校事務職員担当の指導主事を配置 30.6% 25.5% 26.2%
4.初 任者 を lytず 複数配置校に勤務 207% 24.2% 24.2%
5。