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臨界点前後の0.3モル分率メタノール─水混合系の密度測定

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Academic year: 2021

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1. 序論

 水の物理化学的性質は,臨界点(臨界温度Tc644 K,臨界圧力Pc22.1MPa)を境に大きく変化する.た とえば,水の誘電率は,常温常圧の~ 79 から,超臨 界状態(673K,30 ~ 40MPa)では 2 ~ 10 に減少す るので,超臨界水は有機化合物を 100%溶解するが,

無機化合物はほとんど溶かさない.水のイオン積は,

常温常圧では 1 × 10–14(mol/dm32であるが,34.5 MPa,~ 573K で 極 大 値 1 × 10–11(mol/dm32を と り,水素イオン濃度は常温常圧に比べて約 30 倍に増 加し,酸触媒の働きをする.さらに,超臨界水は圧縮

性流体であるので,これらの性質を温度や圧力を変数 として連続的に変えることができる.この超臨界水の 特性を利用して,1990 年代からダイオキシンなどの 有機塩素系環境汚染物質の分解,廃プラスチックのケ ミカルリサイクル,酸触媒を用いない有機合成,ナノ テクノロジーに利用される金属酸化物微粒子の合成,

植物バイオマスの化学資源化などの研究が国内外で活 発に行われている[1].このような超臨界水を用いた応 用研究において,その反応を理解し,制御するために は,複雑な多成分系の超臨界水溶液の臨界パラメータ

(臨界温度Tc,臨界圧力Pc,臨界密度ρc)や相挙動を 正確に推定することが重要である.また,超臨界流体

U字管を用いた高温高圧振動密度計の製作と

臨界点前後の0.3モル分率メタノール─水混合系の密度測定

石田  成1)・吉田 亨次1)・PopovVladimir2)・NikolaevichAlexey2)・山口 敏男1)

(平成 21 年 5 月 30 日受理)

Construction of a Vibrating U-tube Densimeter and Density Measurements of 0.3 Mole Fraction Methanol – Water Mixture

in the Vicinity of the Critical Point

Shigeru I

shIda1)

, Koji Y

oshIda1)

, V

ladImIr

Popov

2)

, A

lexeY

Nikolaevich

2)

, and Toshio Y

amaguchI1)

(ReceivedMay30,2009)

Abstract

A high-temperature and high-pressure densimeter with an oscillating U-tube for the measurement of supercritical fluid density was constructed. With the apparatus, we measured the density of 0.3 mole fraction methanol – water mixtures in the vicinity of the critical point

(TC

=587 K, P

C

=15.1 MPa) as well as toluene as a reference fluid at high temperatures and high pressures.

1) 福岡大学理学部化学科および高機能物質研究所

AdvancedMaterialsInstitute,andDepartmentofChemistry,FacultyofScience,FukuokaUniversity,Nanakuma, Jonan-ku,Fukuoka,814-0180,Japan

2) ロシア科学アカデミーレーザー及び情報科学研究所

InstituteonLaserandInformationTechnologies,RussianAcademyofSciences,2,Pionerskayastr.,Troitsk,Moscow Region,142190,Russia

(2)

の種々の物性を換算温度(T/Tc)と換算圧力(P/Pc あるいは換算密度(ρ/ρc)で整理することにより,物 質や濃度の違いにより複雑に見えている物性値が統一 的な理論により説明できることが期待される.しかし ながら,亜臨界・超臨界水溶液系は,高温高圧条件に 加えて極めて腐食性が高いなどの実験上の困難さのた めに,ほとんど測定データがないのが現状である. 

 従来用いてきた金属ベローズによる密度測定法で は,金属ベローズの伸縮長範囲が狭いために,わずか な温度圧力変化により密度が大きく変化する臨界点近 傍の測定には限界があった.また,これらの測定には 時間を要するために,多くの組成を変化させた系を測 定するにはあまり実用的ではない[2]

 流体の圧縮率は系の臨界点近傍で発散すること,す なわち,音速はゼロになることから,音速を測定する ことにより,超臨界流体の相挙動を明らかにすること が期待できる.Popov らは,この原理に着目して,超 臨界二酸化炭素の臨界パラメータ(Tc304K,Pc7.4 MPa)を測定する音響装置を試作している[3].しかし ながら,この装置は比較的穏やかな臨界点をもつ流体 には適用できるが,高い臨界点をもつ電解質や非電解

質の水溶液系には適用できない.

 一方,U 字管を用いた振動密度計が,管内を流れて いる溶液の熱力学特性を連続的にモニタリングできる ことから幅広く利用されている.しかしながら,従来 の装置では,永久磁石の磁束が温度上昇に伴い減少す る問題があり,高温において測定が困難であった[4,5]  本研究では,最大 773K,50MPa までの超臨界流体 の密度を測定できる,U 字管を用いた振動密度計を設 計製作した.本装置を用いて,亜臨界から超臨界状態 における 0.3モル分率メタノールー水二成分流体の密 度を測定した.また,参照溶媒としてトルエンの高温 高圧の密度を測定した.

2. 測定原理

 本研究で設計製作した U 字管振動密度計(SCFP2)

の概念図を Figs.1 と 2 に示す.U 字管の振動数fnは,

U字管の質量Mtと流体の質量Vρ(Vρはそれぞ れ U 字管中の流体の体積と密度)に依存し,(1)式 で表される.

Fig.1SchematicdiagramfortheSCFP2system.

(3)

  (1)

 ここで,Kは装置定数,nは振動モードの数を示す.

密度についての式に変換すると,(2)式が得られる.

(2)

 ここで,κとνは,それぞれ(3)式と(4)式で 表される値である.

(3)

(4)

 ここでκは温度Tで測定した空キャピラリーの振 動周波数f0から,(5)式で得られる.κの圧力依存 性は,実用的には無視できる.

(5)

 また,νは測定試料と同じ温度圧力条件で測定した 密度既知の試料の振動周波数f1と密度ρ1を用いて,

(6)式から得られる.

(6)

 本研究では,密度既知試料としてトルエンを使用し [4]

2.2 試料調製

 脱気したメタノール(関東化学,特級,99.8%)と 脱気した蒸留水を用いて,重量法により 3:7 のモル 比に混合して,0.3 モル分率メタノール─水二成分溶 液を調製した.密度既知試料としてトルエン(和光純 薬,特級,99.8%)を用いた.

2.3 測定手法

 温度コントローラで SCFP2 本体とプレヒータ部を 測定温度に設定する.真空ポンプを用いて,U字管内を 排気して真空にする.その後,U 字管を窒素ガスでパー ジして,1 気圧に保ち,周波数が安定するまで待ち,

その周波数をf0とする.空気の密度ρ0は,0.00g/cm3 とした.次に,真空ポンプを用いて装置全体を真空に した後,手動ポンプでトルエンを SCFP2 内部とプレ ヒータ部の管内に注入する.手動ポンプでトルエンの 圧力を 10MPa まで増加させた後,周波数が安定にな るまで待ち,得られた周波数をf1とする.熱力学状 TPにおけるトルエンの密度ρ1の値は文献[6]

Fig.2SchematicdiagramofathermostatwithU-tubeoscillator.

(4)

ら引用した.次に,手動ポンプで内部のトルエンを可 能な限り除き,最後に真空ポンプで排気して完全にト ルエンを取り除く.装置全体を真空にした状態で,測 定試料を手動ポンプで SCFP2 とプレヒータ部に注入 する.目的の温度と圧力に設定した後,SCFP2 が十 分熱平衡に達したことを確認して試料の周波数を測定 する.

2.4 温度校正

 U 字管中の試料温度と熱電対温度の誤差を,以下の 方法により校正した.

 任意の温度Tmにおいて 10 および 40MPa におけ るトルエンの密度を測定する.測定したトルエンの 密度をそれぞれρ10ρ40とすると,密度比ρT(=ρ40/

ρ10)を算出する.次に,NIST(NationalInstituteof StandardsandTechnology)によるトルエン密度の [7]を用いて,密度比ρTvsTプロット(Fig.3)を 作成する.このプロットを用いて,実測の密度比ρT

に対応する真の温度Trを求める.

3.結果と考察

3.1 トルエン

 408,505, および 618K におけるトルエンの密度の 圧力依存性を Fig.4 に示す.温度は校正済みである.

408 および 505K では文献値[5]と 0.3%以内の誤差で,

618K では 1.2%以内で一致した.

Table1. SpecificationsofSCFP2

Operatingtemperaturerange 403~773K Uncertaintiesintemperaturecontrol ±0.1K Operatingpressurerange 0.1~50MPa Operatingdensityrange 0.001~5g/cm3 Uncertaintiesindensitymeasured ±0.0005g/cm3 Timeneededtostartmeasurements: 90min.at473K 

~180min.at773K Dataacquisitiontime 1min.

Fig.4Densitiesoftolueneatvariousthermodynamic states. The filled triangles and circles denote thosemeasuredwithSCFP2andtheliterature datafromNIST,respectively.

Fig.5Densities of the 0.3 mole fraction methanol – water mixture at various thermodynamic states.

Fig.3Temperature dependence of density ratioρT (=ρ4010)fortoluene.Thedensitiesoftoluene weretakenfromtheNISTdatabase[7].

(5)

3.2 0.3 モル分率メタノール-水二成分流体

 各熱力学条件で測定した,0.3 モル分率メタノール

─水二成分流体の密度を Table2 および Fig.5 に示す.

臨界点(TC=587K,PC=15.1MPa)から離れた亜 臨界温度 573K,および超臨界温度 613K においては,

それぞれ気液平衡および超臨界状態の密度傾向から予 測される値を示した.一方,臨界点近傍である 583 ~ 603K,15MPa においては,密度揺らぎが大きくな るために,密度を精度よく測定できなかった.

4. 結 論

 最大温度 773K,最大圧力50MPa までの流体密度 を測定できる U 字管を用いた振動密度計を製作した.

本装置を用いて,405 ~ 618K の各温度について,10

~ 50MPa におけるトルエンの密度を測定した結果,

文献値と 0.3 ~ 1.2%の誤差内で一致した.また,臨界 点(TC=587K,PC=15.1MPa)前後の熱力学条件 において 0.3 モル分率メタノール-水混合系の密度を 測定した.臨界点近傍を除いた熱力学状態において,

気液平衡線や超臨界状態の密度傾向から予測される密 度が得られた.一方,臨界点近傍では密度ゆらぎのた めに密度を精度よく測定できなかった.本装置により,

亜臨界や超臨界状態における多成分系溶液の臨界挙動 や相平衡を簡便に測定できることがわかった.

謝 辞

 本研究は,科学研究費補助金(萌芽研究)(19655007)

および大学院高度化推進特別経費の助成を受けたもの である.

文 献

[₁] 超臨界流体のすべて,荒井康彦 監修,テクノ システム,東京,2002.

[₂] 山口敏男,山本信隆,下平 誠,吉田亨次,福 岡大学理学集報,34(2),23(2004).

[₃] V. K. Popov, V. N. Bagratashvili, K. P.

Bestemyanov,V.M.Gordoenko,andA.N.

Konovalov.Chem. Eng. Trans.,2,1013(2002).

[₄] H. J. Albert and R. H. Wood, Rev. Sci.

Instrum.,55,589(1984).

[₅] R.H.Wood,C.W.Buzzard,andV.Majer, Rev. Sci. Instrum.,60,493(1989).

[₆] E.U.Franck,Ber. Bunsenges. Phys. Chem.,102, 1794(1998).

[₇] Thermophysicalpropertiesoffluidsystems, National Inst. Standard and Tech., http:/

webbook.nist.gov/chemistry/fluid/

Table2. Densities(g/cm3)ofthe0.3molefractionmethanol–watermixtureoveratemperaturerangeof573~

613Kandapressurerangeof5~50MPa.

P/MPa 573K 583K 593K 603K 613K

5.0 0.0888 0.0326 0.0248 0.0466 0.0664

7.5 0.106 0.0541 0.0438 0.0595 0.0838

10.0 0.138 0.0784 0.0608 0.0747 0.0967

12.5 0.247 0.125 0.169 0.100 0.126

15.0 0.667 0.518 0.272 0.151 0.151

17.5 0.682 0.592 0.510 0.276 0.213

20.0 0.692 0.623 0.535 0.437 0.326

25.0 0.708 0.662 0.561 0.496 0.466

30.0 0.717 0.684 0.581 0.545 0.518

35.0 0.732 0.699 0.596 0.569 0.550

40.0 0.738 0.717 0.608 0.587 0.573

45.0 0.746 0.721 0.619 0.604 0.587

50.0 0.751 0.730 0.627 0.611 0.605

(6)

参照

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