論文の内容の要旨
氏名:梅 田 直
専攻分野の名称:博士(医学)
論文題名:コンカナバリンA誘導性急性肝炎マウスにおけるVDRの肝免疫調節作用
【目的】活性型ビタミンDは、核内受容体であるビタミンD受容体 (vitamin D receptor, VDR) に作用す ることにより、骨・カルシウム代謝調節や細胞増殖・分化など多岐にわたる作用を及ぼしている。VDRは 腸管や腎臓などの標的臓器において様々な遺伝子の発現制御を行うが、肝臓における機能には不明な点が 多い。近年、VDRはラットにおいて肝細胞ではなく肝常在マクロファージであるKupffer細胞や間葉系星 細胞などの非実質細胞で発現することや疫学的な報告から血中ビタミンD濃度と肝障害との関連が明らか となり、肝臓における自然免疫応答に対するVDRシグナルの関与が示唆された。そこで本研究では、野生 型およびVDR欠損マウスにおける急性肝炎の病態の比較を行い肝臓免疫細胞の機能を解析した。
【方法】野生型またはVDR欠損マウスより肝臓免疫細胞を含む単核球 (mononuclear cells, MNC) を単 離し、リアルタイムPCR法を用いて肝MNCにおける遺伝子発現解析を行った。また、それらのマウスに おける肝臓免疫細胞組成をフローサイトメトリーにて測定した。次に急性肝障害の比較を行うためにコン カナバリンA (concanavalin A, Con-A) を投与し、血中トランスアミナーゼ値の測定および血中または肝 MNCにおける炎症性サイトカインなどの発現解析をELISA法またはリアルタイムPCR法を用いて行っ た。さらに、Con-A投与後の肝組織の観察および活性酸素種産生能を評価した。
【結果】肝MNCにおけるVDRの発現確認と機能解析の結果より、VDRは肝MNCに発現し転写因子と しての機能を保持することが示された。VDR欠損マウスの肝臓において、Kupffer細胞などの免疫細胞群 は野生型と同程度の分布を認めた。Con-A誘導性肝障害の比較の結果、VDR欠損マウスの血中トランスア ミナーゼ値の増加は野生型と比較し軽微であった。また、肝組織を比較した結果、VDR欠損マウスにおい て肝障害は軽減した。一方、インターフェロンγなどの血中サイトカイン濃度は両マウスで差を認めず、
肝MNCにおける炎症性サイトカインなどの発現はVDR欠損マウスでむしろ増加した。これらの結果か ら、VDR欠損マウスにおいてもCon-A刺激に応答しサイトカイン産生能を有することが示された。最後
にCon-A誘導性活性酸素種産生能を評価した結果、VDR欠損において有意な減少を認めた。
【考察】VDR欠損マウスにおいて、サイトカイン産生は正常であるのに対し活性酸素種産生が抑制される ことによりCon-A肝炎が軽減することが明らかとなった。Con-A刺激による活性酸素種産生はKupffer細 胞が担うことから、本研究により肝常在Kupffer細胞でのVDRの機能及び肝炎の病態への関与が示され た。