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論文の内容の要旨 氏名:伊

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Academic year: 2021

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論文の内容の要旨

氏名:伊 藤 聖

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名: ニコチンによる口腔上皮における低比重リポタンパク受容体およびインターロイキン 8 の発現誘導

喫煙は, 心血管疾患および歯周病の主要な危険因子の一つである。心血管疾患と歯周病の発症に, 脂質 代謝異常が関与する可能性のあることが多くの報告によって示唆されている。しかし, 喫煙, 歯周病およ び脂質代謝異常の三つの因子の関連性についてほとんど知られていない。好士らは, 口腔扁平上皮癌細胞 株をニコチンで刺激した後, DNA マイクロアレイ法によって網羅的に遺伝子の発現を解析した結果, 炎症 性サイトカイン, シグナル伝達分子あるいは酵素を含めた多くの遺伝子発現の上昇を認め, とくに low-density lipoprotein receptor (LDLR) 遺伝子発現が約 4 倍に上昇していることを明らかにした。そ こで著者は, ニコチンによる LDLR 遺伝子発現誘導のシグナル伝達経路の解明を目的とするとともに炎症 性サイトカイン interleukin-8 (IL-8) の発現について検討を加えた。

実験には, 口腔扁平上皮癌細胞株である Ca9-22 および HSC-3 を用い, 通法に従って培養した。LDLR と nicotinic acetylcholine receptor (nAChR) のサブユニットの発現は, real-time polymerase chain reaction 法によって測定した。LDLR のタンパク発現は, 免疫蛍光染色によって観察した。nAChR が関与 する LDLR 誘導は, 細胞に nAChR の特異的阻害薬である α-bungarotoxin (α-Btx) を用いて検討した。

LDLR 遺伝子調節領域を組み込んだプラスミド (WT) を用いルシフェラーゼアッセイを行った。WT のプ ラスミドを使用して, Region1, 2 および 3 (R1, R2 および R3) を欠く欠失変異体を作製し, ルシフェラ ーゼアッセイに供した。

specificity protein 1 transcription factor (Sp1) の機能的重要性については Ca9-22 をミトラマイ シンによる前処理によって, また Sp1 に対する siRNA トランスフェクションによって検討した。

LDLR 遺伝子調節領域における Sp1 と R3 の特異的結合は, electrophoretic mobility shift assay (EMSA) およびストレプトアビジンアガロース沈降法に続くウエスタンブロッティングによって検討した。

歯肉上皮組織における LDLR タンパク発現については, 喫煙者および非喫煙者から採取した歯肉上皮組 織を使用し, 免疫蛍光染色を行うことによって観察した。

ニコチン刺激による IL-8 発現の誘導は, 培養上清を用いた enzyme-linked immunosorbent assay によ って測定した。

その結果, ニコチン刺激が LDLR の発現に及ぼす影響では, 100 µM のニコチン刺激でコントロールに比 べて 2.2 倍の発現増加が認められ, HSC-3 においても同様な発現増加が認められた。さらに, Ca9-22 を ニコチンで 12 時間刺激した後に免疫蛍光染色したところ, LDLR の有意な発現増強が確認された。

Ca9-22 と初代培養ヒト歯肉上皮細胞の両者で, nAChR の α7 サブユニットの発現が認められ, これに 対する特異的阻害薬である α-Btx による前処理で, α-Btx の濃度依存的に LDLR 遺伝子の発現は減少し た。

LDLR 遺伝子調節領域を用いたルシフェラーゼアッセイでは, ニコチン添加によってルシフェラーゼ活 性が増加し, 3 時間後にコントロールの 2.8 倍となり, 6 時間後まで維持されていた。R1 欠失変異体に おいて, ニコチン刺激によるルシフェラーゼ活性の変化は認められず, R2 欠失変異体ではコントロールの 2.7 倍に増加した。一方, R3 欠失変異体においては, ニコチン刺激の有無にかかわらず, WT と比較して ルシフェラーゼ活性の著明な減少が認められた。

Sp1 の特異的阻害薬であるミトラマイシンによる処理で, ルシフェラーゼ活性がミトラマイシンの濃度 依存的に減少した。さらに, siRNA による RNA サイレンシングにおいても, LDLR 遺伝子の発現は siRNA の濃度依存的に減少した。

Sp1 と R3 の結合については, ニコチンで刺激された細胞の核抽出物と R3 プローブを泳動した場合に のみ移動度の遅いバンドが検出された。また, R2 プローブを用いた EMSA においてもバンドが検出された が, ウエスタンブロッティングから, Sp1 の結合は R3 のみに確認された。

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非喫煙者の歯肉上皮組織では, 主にケラチン層と有棘層で LDLR の弱い発現が観察された。一方, 喫煙 者の歯肉組織では, 上皮全層の細胞膜に LDLR の強い発現が観察された。

ニコチンによる IL-8 発現は, ニコチン刺激後, 24 時間で未刺激群の 45.2 倍, 48 時間で 98.2 倍に 上昇した。

以上のように, 本実験の結果から, ニコチンは Ca9-22 の細胞膜表面に発現している nAChR を介しシ グナル伝達を引き起こし, LDLR の発現を転写レベルで誘導することが明らかとなり, この現象は喫煙者の 歯肉上皮組織においても確認された。

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