看護師がとらえた慢性疾患をもっ学童への看護ケアの意味
奈良県立医科大学医学部看護学科 別 所 史 子
3山 田 晃 子
3上本野口昌子
Meaning ofnursing care from nurses' point ofview for school children with chronic diseases
Fumiko BESSHO
,
Ak:iko YAMADA and Shoko KAMIMOTONO Faculty ofNursing, School ofMedicine, Nara Medical University要旨
本研究は,慢性疾患をもっ学童への看護ケアの意味を看護師の体験から明らかにすることを目的 と し ,
16名の看護師に半構成面接を行った。その結果, [子どもに寄り添う関係], [慢性疾患、をも っ子どもとかかわることへの喜びの実感], [慢性疾患をもっ子どもの看護の本質に触れる], [子ど
もの成長発達の一過程へのかかわり], [慢性疾患をもちながら成長する子どもの将来的な見通し]
の
5カテゴリーが抽出された。看護師がとらえた慢性疾患をもっ学童への看護ケアの意味は,学童 との関係構築のありようによって変化していた。
慢性疾患をもっ学童との関係構築の方法は,まず,最初の手がかりとして《子どもを知る》ため に《子どもの身近な存在》としてかかわりながら子どもとの距離感を縮めていくこと
3この最初の 段階を越えることにより《子どもの抱えている問題が複雑》であることの影響を受けながらも《表 面的なものではなく子どもの気持ちに近づく》ことを可能にしていた。そして,子どもや先輩看護 師などの人的要因の影響を受けて看護ケアに対する振り返りを行ったことにより,すぐに成果を求 めるのではなく[成長発達の一過程へのかかわり]における看護の意味を考え, ((すぐには日に見え ない看護ケアの成果》への気づきを促進したと考えられた。
キーワード・小児慢性特定疾患,学童期,看護ケア
7関係構築
1.はじめに
かつて小児慢性疾患の代表とされていた端息や 慢性腎疾患
1糖尿病は治療法の進歩により,現在 は外来治療が主になっている。一方,重症例。難 治性の場合には
3依然長期入院治療が必要である (日本小児アレノレギー学会,
2002;日本糖尿病学会 ,
2001)。また,最近の傾向として,摂食障害,
不登校などの心身医学的アフ。ローチを要する小児 の入院が増えており,慢性疾患に対する概念も変 化してきた(五十嵐ら,
1999) 0そのため,看護 においても以前にも増して多様な対応が求められ ている。
このような慢性疾患をもっ子どもの入院状況や 疾病構造の変化を看護師のストレスとして捉えた 研究
(Ramjan,
2004)や
p子どもとの間に生じる 距離感のタイプとその特徴について検討した研究
(鈴木,
1998)はあるが,看護師が慢性疾患をも っ子どもに対してどのようなケアを行い, どのよ うに子どもとの関係を構築しているのか,ケアの 実態に関する研究は少ない。
そこで,本稿では看護師がとらえた慢性疾患を もっ子どもへの看護ケアからその意味を明らかに することを目的とした。
なお,本研究では
3健全な自己概念を発達させ ていく時期(舟島,
2005)である学童期の患児へ の看護ケアに焦点を当てることとした。
本研究では, I 小児慢性疾患 J を小児慢性特定疾
患治療研究事業の対象となる疾患および、医療また
は生活規制のために継続して
1ヶ月以上の入院を
要する疾患とし, I 体験」を看護実践を通じて看護
師が子どもや看護に対して抱いた感情
3考えと定
義した。
ll.
方 法 L 対象者および調査期間
対象者は過去
3ヶ月以内に小児慢性疾患児が入 院する病棟で勤務経験があり,口頭と文書で同意 の得られた看護師
16名(男性
1名,女性
15名)
で、あった。調査期間は 2004 年 6 月 ~7 月であっ
た 。
2.
調査方法
先行研究(中野,
1996)と多くの慢性疾患児が 入院する病棟で臨床経験のある看護師
2名(臨床 経験年数
5年程度)の意見をもとに面接内容を選 定した。
次に同意を得た看護師 1名にプレテストを実施 した。面接内容と結果について母子保健領域の研 究者らと協議し,面接内容を修正して本調査を実 施した。主な面接内容は, 日頃慢性疾患をもっ学 童とのかかわりの中で感じていること,慢性疾患 をもっ学童に対して行っている看護ケアと看護に ついての考えとし,対象者の同意を得て
MDに録 音した。面接終了後,再度データの使用について 確認を行い
3逐言酎還を作成した。
3.
倫理的配慮
本研究の趣旨,目的,方法,研究協力の任意性 と拒否した場合も不利益を被らないとと,データ の取り扱い方法について文書と口頭で説明し,研 究協力を依頼した。文書で同意を得られた場合に,
面接を実施した。
なお
3本研究は広島大学大学院保健学研究科看 護開発科学講座倫理委員会の承認を受けて行った。
4.
分析方法
まず一事例毎にデータの中から「慢性疾患をも っ学童への看護」に関する文脈を抽出し,質的帰 納的に分析した。語られた内容の意味を損なわな いようラベル化し,ラベルの意味内容の類似性か らコード,サブカテゴリカテゴリーを抽出し た 。
次に統合分析を行った。 個別分析を行った全対 象者のデータを統合し,コード,サプカテゴリー
3カテゴリーを抽出した。そして,カテゴリー間の 関連性を図解化し,文章化した。
文章化については日をカテゴリーフ。をサプ
カテゴリ~ [Jをコード, I J を象徴的な言葉と
して示す。なお,コードは紙面の都合上,一部の み記述する。
分析過程では母子保健領域の研究者
3名から指 導・助言を受け,研究者聞の解釈が一致するまで 分析を重ね,妥当性を確保した。
E
結 果 1 . 対象者の背景
対象者の年齢は 24~55 歳 (32.6土9.9) ,臨床経
験は 2~24 年 (8.5土5.7) ,当該病棟での勤務経験
は 1~8 年 (3.8土2.2) で、あった。
2.
統合分析結果
データを意味内容の類似性に沿って分類し,統 合した結果,【子どもに寄り添う関係], [慢性疾 患をもっ子どもとかかわることへの喜びの実感],
I
慢性疾患をもっ子どもの看護の本質に触れる
1[子どもの成長発達の一過程へのかかわり], [ 慢 性疾患をもちながら成長する子どもの将来的な 見通し]という共通した
5カテゴリーと
15サブ カテゴリー,
43コードが抽出された(表
1)01 ) [子どもに寄り添う関係
1ここでは,慢性疾患をもっ学童に対する看護師 らの気持ちが述べられていた。
看護師らの《子どもの見方》は,当初「かわい そう j としづ感情を抱いていたが,子どもらしさ に触れ, I 病気だからって特別に見なくてもいいの かな J と感じるようになっていた。そして,近年 増加している心の問題を抱えたケースに対して
〔子どもにかかわる必要性を強く感じる〕一方で,
〔立ち入ることができないレベノレの問題に直面〕
し , ((子どもの抱えている問題が複雑》であること の影響を受けていた。しかし,看護師らは,意識 的にスキンシップロを図る,子どもと親との気持ち の橋渡しをするなどの方法で《表面的なものでは なく子どもの気持ちに近づく》努力をしていた。
また, ((白分の病気体験》を活かして子どもの気持 ちに近づくことができればし¥いと述べた看護師も いた。
2 ) [慢性疾患をもっ子どもとかかわることへの喜 びの実感]
ここでは,慢性疾患をもっ学童との関係構築の
方略について述べられていた。
看護師らは,家族から離れて入院する学童に対 して《子どもの身近な存在》としてかかわりなが ら関係構築を試みていた。そして,子どもとの距 離が近づいてくると《子どもを知る》ことができ,
「子どもの小さな変化や特徴がわかるようになっ てくる j と述べていた。看護師らは,子どもの成 長や回復していく姿から喜びや自分のかかわって きたことの成果を実感しており, ((子どもとの相互 作用》を通じて子どもとかかわるととへの喜びの 気持ちを表現していた。一方で,自分の言動が子 どもに与える影響力について「すごく責任がある」
と述べ, ((子どもとの相互作用》における自身の言 動の重みを自覚する看護師もいた。
3 ) 【慢性疾患をもっ子どもの看護の本質に触れ る
1ここでは,慢性疾患をもっ学童への看護に対す る考え方が変化していく様子や,影響を受けた体 験が述べられていた。
看護師らは,当初検査や処置の機会が少なく,
日常生活援助においても見守りが中心で、あった慢 性疾患をもっ学童への看護に対して戸惑い,その 時々の達成感がなく《すぐに目に見える成果がな しゅと感じていた。しかし,かかわっていくにつ れて子どもが心を開いてくれるようになった
3退 院後近況を報告してくれたなどの体験から《すぐ には自に見えない看護ケアの成果》を実感するよ うになっていた。看護師らは,急性期と慢性期の 看護内容を比較しながら「すぐに結果が出なくて もそれでいいんだ」というように自分なりに慢性 疾患をもっ学童への看護に対する意味づけを行っ ていた。また,慢性疾患をもっ学童への看護に対 して戸惑いを感じていた看護師は,
1時間はかかっ ても子ども思いの看護師になれたらいいよねJ と いう先輩看護師の言葉を受けて,その時の気持ち
を「先輩の(慢性疾患をもっ子どもの)看護に対 する思いに触れた
J,
1慢性期の看護では処置など の看護技術よりも子どもとかかわることが大事な ことだと気がついた」と述べていた。
4 ) 【子どもの成長発達の寸晶程へのかかわり】
ここでは,慢性疾患をもっ学童の成長発達の一 過程にかかわることの重要性と成長発達を促すか かわりについて述べられていた。
看護師らは,社会性を発達させていく学童期に
長期入院を余儀なくされることについて, ((入院し ていても子どもにとっては大事な時期》であり,
入院生活の中で社会性を育むことができるよう意 識的にかかわっていた。例えば, 日常生活や遊び の中でノレーノレを守る,子ども同士のかかわりの中 で相手の気持ちを考える, 日常生活の中で「達成 感」を経験するなどであり,成長発達過程におい て学童が日常的に経験していくようなことであっ た。慢性疾患をもっ学童への日常生活援助におい て,看護師らは,子どもの成長発達段階を見極め,
時間を要しても自分でできることは自分でできる よう《成長発達を促す》かかわりを行っていた。
5 ) 【慢性疾患をもちながら成長する子どもの将来 的な見通し]
ここでは,慢性疾患をもちながら成長していく 学童の将来を見据えた看護ケアの視点が述べられ ていた。
多くの小児慢性疾患では,薬物・食事・運 動療法などのセルフケアを要するため,看護師ら
は〔行動レベルではなく知識レベルに働きかける〕
ことによって《子どものセルフケアに対する自覚 を育む》ことを意識しでかかわっていた。そして,
《これからもうまく病気とつきあっていけるよう に》するためには, [退院後の日常生活に即した指 導
J, [ストレスへの配慮〕が重要と考え,退院後 の日常生活にあわせたセルフケアの方法を子ども とともに考えながらかかわっていた。さらに,看 護師らは,外来診察やサマーキャンプの機会に退 院後の子どもの学校生活の様子を知り,今後病気 をもって思春期,進学,結婚などを迎える子ども の《身近な相談役》としてかかわっていきたいと いう気持ちを述べ,将来的な見通しをもった継続 支援の必要性を感じていた。
IV.
考察
看護師がとらえた慢性疾患をもっ子どもへの看 護ケアからその意味を分析した結果,その看護ケ アの意味は,学童との関係構築のありようによっ て変化していた。
カテゴリー聞の関係性(図 1 ) をもとに,慢性
疾患をもっ学童との関係構築の方法,看護ケアに
対する認識の変化のプロセスと関係する要素につ
いて考察する。さらに健康問題を成長発達過程
のなかでとらえた看護ケアの視点について考察す
る 。
図 1 カテゴリー間の関係性
1 . 慢性疾患をもっ学童との関係構築の方法 看護師らは,親元から離れて入院している学童 とのかかわりにおいて, ((子どもを知る》ことが大 切であり, ((子どもを知る》ことによって子どもの 特徴や小さな変化を感じ取るようになっていた。
そして,看護師らは,小児慢性疾患の場合,心理 面の問題が子どもの言動に現れていることが多い ととらえ, ((表面的なものではなく子どもの気持ち に近づく》ことが大切と考えていた。また, ( ( 自 分 の病気体験》を活かして子どもの気持ちに近づこ
うとする場合もあった。このように,看護師らは,
《子どもを知る》ことへの関心をきっかけとし,
《子どもの身近な存在》として[子どもに寄り添 う関係]構築をしようとしていた。しかし, [子ど もに寄り添う関係]構築を行っていくプロセスに おいて, ((子どもの抱えている問題が複雑》である ために子どもの気持ちに近づける部分左近づけな い部分があった。心身の問題を有する子どもとか かわる看護者に対する意識調査(土居ら,
1991)では,子どもとのかかわりについて約 4割の者が
「できれば避けたしリと感じていたと報告されて いる。しかし,今回の調査では,看護師らは,子 どもとスキンシップを図る,子どもと家族の気持 ちの橋渡しをするなど〔コミュニケーション技術 を駆使〕して,子どもの気持ちに近づこうとして いた。ととから,看護師らは, ((子どもの抱えてい
る問題が複雑》であることの影響を受けながらも,
子どもとの距離の取り方を模索しながら関係構築 を行っている現状が明らかになった。一方で, ( ( 子 どもの抱えている問題が複雑》であることは子ど もとの距離を遠ざけるばかりではなく, ((表面的な ものではなく子どもの気持ちに近づく》という距 離のとり方にも影響していることが明らかになっ た。このような関係構築の方法には,学童期とい う時期が((入院していても子どもにとっては大事 な時期》であるという認識や,生涯ゼノレフケアを 要する慢性疾患の特性が影響していた。
以上のことから,慢性疾患をもっ学童との関係 構築の方法は,まず,最初の手がかりとして《子 どもを知る》ために《子どもの身近な存在》とし てかかわりながら子どもとの距離感を縮めていく こと,そして,この最初の段階を越えることによ り《子どもの抱えている問題が複雑》であること の影響を受けながらも《表面的なものではなく子 どもの気持ちに近づく》ことを可能にしていた。
さらに,学童の[成長発達の一過程へのかかわり]
に対する認識が, [慢性疾患をもちながら成長する 子どもの将来的な見通し]をもった支援への認識
を高めていくと考えられた。
2.
看護ケアに対する認識の変化のプロセスと関 係する要素
学童期は,セルフケアにおいて日常生活面では 特別な援助を必要としなくなり,生活習慣の完成 期といえる(勝田, 2008)
0本調査でも慢性疾患 をもっ学童への看護ケアは日常生活の見守りが中 心であり,看護師らはこのような看護ケアに対し て,当初達成感が得られず戸惑いを感じていた。
しかし,看護師らは《子どもとの相互作用》を通 じて子どもの成長発達。回復過程に携わったとい う[慢性疾患をもっ子どもとかかわることへの喜 びの実感]を得ていた。また,先輩看護師の看護 観に触れたこと,先輩看護師の経験を学んだエピ ソードが述べられており, ((先輩看護師の存在》か ら影響を受けていたといえる。看護師らは,この ような周囲の影響を受けながら,慢性疾患をもっ 学童への看護ケアに対する意味づけを行い,自分 なりに「これでいいんだ」と思えるようになった としづ気持ちの変化を述べていた。このようにこ れまで、行ってきた看護ケアを振り返ったことは,
子どもの成長発達,回復過程にあわせて見守る行
為(勝田, 2008) も学童にとっては必要な看護ケ アであり,すぐに成果を求めるのではなく【成長 発達の一過程へのかかわけにおける看護の意味 を考え, ((すぐには目に見えない看護ケアの成果》
への気づきを促進したと考えられた。
今回の面接では,当該病棟での勤務経験年数
1‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 8 年(臨床経験年数 2 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 2 4 年)の幅広い対象者 が得られたが,経験年数による差や特徴は明らか ではなかった。これは,それぞれの対象者の体験 の内容が単に経験年数に比例するもので、はなく,
それぞれの学童や学童への看護に対する気持ちが 反映されたものと考えられる。星ら
(1996)は , 小児看護の経験年数が子どもとかかわる態度に影 響し,
3年以降に子どもと接する態度が受容的に変化する傾向があると報告している。しかし,今 回面接調査を実施したことにより,一概に経験年 数でとらえるのではなく,それぞれの対象者の体 験を意味づけていくプロセスが重要で、あることが 明らかになっだ。ここから,面接などの自分の体 験を言語化する機会は,日々の看護ケアに対する 意味づけを行うきっかけとなり【慢性疾患をもっ 子どもの看護の本質に触れる]体験に効果的な影 響をもたらすと推察された。
以上のことから,慢性疾患をもっ学童への看護 ケアに対する認識の変化のプロセスに関係する要 素として,子どもや先輩看護師といった人的要因 の影響が大きいといえる。
3.
健康問題を成長発達過程のなかでとらえた看 護ケアの視点
今回の面接において,看護師らは【慢性疾患を もちながら成長する子どもの将来的な見通し】を もった支援の必要性を感じていることが明らかに なった。看護師らは,入院中に学童の【成長発達 の一過程へのかかわり]の経験から,健康問題を 成長発達過程のなかでとらえた看護ケアの視点を 育んでいた。
そこで,将来慢性疾患をもちながら成人期に至 る患者が増えることが予測され,成人化を見据え た支援の必要性が提唱されていることからも(奈 良間, 2010;仁尾, 2008),成長発達過程のなか でとらえた看護ケアのあり方について考察する。
看護師らは,慢性疾患をもっ子どもの成長発達 過程において予測される問題に対して,子どもの
《身近な相談役》としてかかわっていきたいとい
う気持ちを有していた。このような考えは,看護 師らが入院生活の中で構築してきた《子どもの身 近な存在》としての関係が基盤となっていた。慢 性疾患をもちながら生活する学童について,特に 学校生活が始まってからの方が友達との違いを感 じてストレスが高くなる(中村ら,
1996)との報 告がある。一方で,病気をもちながらいかに生き ていくかを模索し,自分なりの対処行動を見出し ていくケースもある。慢性疾患をもちながら成長 していく子どもたちは,周囲との関係性のなかで 自らのアイデンティティーを確立していく過程を 経験すると思われ,この過程にかかわる意義は大 きいと考える。油谷ら ( 2 0 1 0 ) は,どの発達段階 にある小児で、あれ将来的には成人として自立して いくことを認識し,入院,外来を問わず継続性の なかでケアを展開することの重要性を述べており,
今回病棟看護師らが認識していた【慢性疾患をも ちながら成長する子どもの将来的な見通し]をも った看護ケアの視点を病棟一外来の連携システム に反映していくことが重要と考える。
v . 結論
本研究では,慢性疾患をもっ学童への看護ケア の意味を看護師の体験から明らかにすることを目 的とし,
16名の看護師を対象として半構成面接を 行い,データを質的帰納的に分析した。その結果,
看護師がとらえた慢性疾患をもっ学童への看護ケ アの意味が明らかになり,その意味は,学童との 関係構築のありようによって変化していた。
1.看護師がとらえた慢性疾患をもっ学童への看 護ケアは,【子どもに寄り添う関係], (慢性疾患
をもっ子どもとかかわることへの喜びの実感 1
[慢性疾患をもっ子どもの看護の本質に触れ る 】 , [子どもの成長発達の一過程へのかかわり 1
[慢性疾患をもちながら成長する子どもの将来 的な見通し]という
5カテゴリーと
15サブカ テゴリー,
43コードから構成されていた。
2.
慢性疾患をもっ学童との関係構築の方法は,
まず,最初の手がかりとして《子どもを知る》
ために《子どもの身近な存在》としてかかわり
ながら子どもとの距離感を縮めていくこと,そ
して,この最初の段階を越えることにより《子
どもの抱えている問題が複雑》であることの影
響を受けながらも《表面的なものではなく子ど
もの気持ちに近づく》ことを可能にしていた。
3.
看護ケアに対する認識の変化に関係する要素 として,子どもや先輩看護師といった人的要因 の影響が大きかった。
4.
看護ケアに
l対する振り返りを行ったことによ り,すぐに成果を求めるのではなく[成長発達 の一過程へのかかわり]における看護の意味を 考え, ((すぐには自に見えない看護ケアの成果》
への気づきを促進したと考えられた。
研究の限界と今後の課題
本研究は,病棟看護師がとらえた慢性疾患をも っ学童への看護ケアの認識を明らかにしたもので あり,外来看護師の立場からの検討は行われてい ない。今後外来看護師にも調査を行い,慢性疾患 をもちながら成長していく子どもへの看護ケアシ ステムについて検討していくことが課題である。
謝辞
本研究にご協力くださった看護師の皆様に深謝 いたします。そして,本研究にご理解をいただき,
調査の場を提供してくださった病院長様,看護部 長様,看護師長様に深謝いたします。
また,研究のご指導をいただきました広島大学 大学院保健学研究科故田中義人教授に深謝し¥たし ます。
文 献
油谷和子,大塚香,佐々木美和子他
(2010):成人移行期支援に関する院内システムづくり.小児 看護,
33 (9) : 1269司1274.土居久子,北島靖子,西村あをい他
(1991):心身の問題行動をもっ子どもの看護について.
)1国天 堂医療短期大学紀要,
2: 55‑63.舟島なおみ
(2005):看護のための人間発達学第
3版,医学書院,東京.
星直子,小林八代枝,霜田敏子
(1996):入院児に接する看護婦の態度の検討. 日本小児看護研 究学会誌,
5: 67開70.五十嵐勝朗,黒沼忠由樹,小出信雄他
(1999):小 児慢性病棟の役割.医療,
53: 524‑527.勝田仁美
(2008):子どもの成長@発達と看護.中 野綾美編集.小児の発達と看護.メディカ出 版 , 東京.
中村伸枝
3兼松百合子
3武田淳子他
(1996)慢性疾患患児のストレス 小児保健研究,
55・55幽60.
中野綾美
(1996):慢性状態の子どものケアに対する看護者の専門職としての姿勢.高知女子 大学紀要(自然科学編),
45: 115‑125.奈良間美保
(2010):子どもと家族を主体としたセルフケアの発達支援.小児看護,
33(9): 1252・1256.日本小児アレノレギー学会・編
(2002):小児気管支瑞息治療
a管理ガイドライン.協和企画,
東京.
日本糖尿病学会
a編
(2001):小児・思春期糖尿病管理の手びき
E南江堂,東京.
仁尾かおり
(2008):先天性心疾患をもちキャリ オーバーする人の成育看護.駒松仁子編集.キ ャリーオーバーと成育医療.八るす出版'東京.
Ramj戸an
九 1 . , し ,
L.(但
2004): Nurses and theRelationship' : caring for adolescent with anorexia nervosa
,
Journal of Advanced Nursing,
45 (5) : 495‑503.鈴木千衣
(1998):小児がん患者ー看護婦関係
における看護婦の心理的な距離感の構成因
子と意味.看護研究,
31 (2): 179‑188.カテゴリー サブカテゴリー コード
子どもの見方 病気の子ども/普通の子ども/看護師以外の視点からみた子ども
子どもの抱えている問題が コミュニケーション技術を駆使する/親子をつなぐパイプ役になる/子どもにかかわる必要性 を強く感じる/立ち入ることができないレベルの問題に直面する/看護師へのサポート体制
複雑 構築の必要性
子どもに寄り添う関係
表面的なものではなく子ど 慢性疾患をもっ子どもへの看護における心のケアの重要性/子どもの言動の意味を読み もの気持ちに近づく 取る努力をする
自分の病気体験 息苦しさの体験がわかる/私の強み
子どもの身近な存在 子どもの身近な存在となる関係の築き方/子どもとともに過ごす時間の重要性 慢性疾患をもっ子どもと 子どもを知る 子どもの変化に敏感になる/子どもの特徴がわかるようになる
かかわることへの喜びの
実感 子どもが成長する喜びを実感する/子どもの生活に貢献できる/自分が子どもに与える影 子どもとの相互作用
響を自覚する/子どもとの相互作用の実感/看護師としての存在意義を見出す すぐに自に見える成果がな 日々の看護における達成感のなさ/すぐに結果がみえない看護へのジレンマ/抱いていた
い 看護師の仕事とのギャップ 慢性疾患をもっ子どもの
看護の本質に触れる すぐには自に見えない宥 退院後も双方の記憶に残る関係性がある/人と人との関係性を構築することの重要性を確 護ケアの成果 認する/急性期とは異なる慢性期ならではの看護があることに納得する
先輩看護師の存在 先輩看護師の看護観に触れる/実践につながる先輩看護師の体験
入院していても子どもに 子どもにとって大事な時期であるという認識/入院治療中でも日常生活を重視する/入院に 子どもの成長発達のー とっては大事な時期 よる影響を最小限にする/入院生活の中にも社会がある/患児同士の関係性を重視する
過程へのかかわり
成長発遼を促す 退院後の生活に適応できることを目標にする/子どもの自立への支援 子どものセルフケアに対す
る自覚を育む 行動レベルではなく知識レベルに働きかける/子ども自身のこととして意識させる 慢性疾患をもちながら成
これからもうまく病気とっき
長する子どもの将来的な 退院後の日常生活に即した指導/ストレスへの配慮 見通し あっていけるように
身近な相談役 学校生活における療養行動上の問題/子どもにとっての支援者の不足/成長発達段階の 特性を踏まえた対応の仕方
L一一一一一一